説明

杭芯位置の確認方法

【課題】本発明は、既存の冶具を用いた、建て込み前と建て込み中の杭の杭芯位置確認を、正確且つ容易に行うことが出来る杭芯位置の確認方法を提供することを可能にすることを目的としている。
【解決手段】検尺棒4を杭芯1の直角方向の2箇所に合わせ、逃げ芯2を検尺棒4の端部に取る。検尺棒4の方向を確保するために、逃げ芯3を逃げ芯2と杭芯1との間で検尺棒4に接する位置に1箇所以上取る。杭5を杭芯1にセットし、検尺棒4を水平にして、逃げ芯2に合わせながら杭5に当てて杭芯1位置を確認することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の冶具を用いた、建て込み前と建て込み中の杭の杭芯位置の確認を、正確且つ容易に行う杭芯位置の確認方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から図5に示す様に杭5または掘削ロッド6やヤットコ8を埋設する際に杭芯1に対してそれらが正しく設置されているか、または、掘削終了後に杭5または掘削ロッド6やヤットコ8が正確に杭芯1位置にあるかどうかを確認するために、直角2方向に逃げ芯2を設置している方法が知られている。
【0003】
しかしながら、この様な管理方法では杭5の建て込み中、杭芯1位置の確認時に、以前と同位置に検尺棒4を当てるのが困難であり、且つ検尺棒4の水平方向の精度が悪いという問題があった。
【0004】
前述の図5に示す従来の問題を解決するために、最近になって例えば、特開2006−348592号公報(特許文献1)に示す如く、開閉可能に枢着した1対の棒状体を略直角位置で固定可能に設け、略直角にした棒状体の角部に杭芯棒を挿入する杭芯棒穴を形成するとともに、一対の棒状体に杭芯棒穴から同じ距離をおいた位置に逃げ芯棒を挿入する逃げ芯棒穴をそれぞれ形成する杭芯管理冶具が開発されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−348592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の発明に於いては、1対の棒状体を略直角位置で固定可能に設けている杭芯管理冶具を用いる事によって、建て込み前の杭芯位置の確認は容易に行うことはできるが、この杭芯管理冶具杭の建て込み中の杭あるいは掘削時のロッドの正確な杭芯位置が確認できず、また、掘削中のロッドは地中障害物によって正しい杭芯位置からずれる場合があり、芯ずれの発生原因になる。
【0007】
また、前記特許文献1の発明では杭芯管理を行うのに新たな冶具が必要となり、冶具の製作、管理に手間を要するという問題があった。
【0008】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、既存の冶具を用いた、建て込み前と建て込み中の杭芯位置の確認を正確且つ容易に行う方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明に係る杭芯位置の確認方法の第1の構成は、検尺棒を杭芯の所定の複数の角度方向で且つそれぞれの方向において少なくとも2箇所に設けた逃げ芯に合わせ、杭或いは掘削ロッドを前記杭芯にセットし、前記検尺棒を水平になるように前記各逃げ芯に合わせながら該検尺棒の端部を杭或いは掘削ロッドに当てて杭芯位置の確認を行うことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る杭芯位置の確認方法の第2の構成は、前記第1の構成において、前記逃げ芯に前記検尺棒を遊動可能に支持する支持部材を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る杭芯位置の確認方法の第3の構成は、前記第1、第2の構成において、前記検尺棒に水平器を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る杭芯位置の確認方法の第4の構成は、前記第1〜第3の構成において、前記検尺棒に前記逃げ芯位置に対応する指示手段を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る杭芯位置の確認方法の第5の構成は、前記第1〜第4の構成において、杭の建て込み中に前記逃げ芯を用いて杭芯位置の確認を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る杭芯位置の確認方法の第1の構成によれば、杭の埋設前、埋設中に関わらず、検尺棒がずれることなく同位置に当てることが出来、正確な杭芯位置とのずれを確認することが可能である。また、構成が簡単で安価に芯ずれの発生を防止できる。
【0015】
また、本発明に係る杭芯位置の確認方法の第2の構成によれば、逃げ芯に設けた支持部材により検尺棒を遊動可能に支持することができ、人が検尺棒を持たなくとも該検尺棒の端部を杭に当てて杭芯位置の確認ができる。
【0016】
また、本発明に係る杭芯位置の確認方法の第3の構成によれば、検尺棒に設けた水平器を視認することにより該検尺棒の水平度を確認することが出来る。
【0017】
また、本発明に係る杭芯位置の確認方法の第4の構成によれば、検尺棒に設けた指示手段を逃げ芯位置に合わせることで、逃げ心から杭までの検尺棒の長さを確認することができ、芯ずれの距離を正確に把握することができる。
【0018】
また、本発明に係る杭芯位置の確認方法の第5の構成によれば、前述の逃げ芯を用いて杭の建て込み中に杭芯位置の確認を行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図により本発明に係る杭芯位置の確認方法の一実施形態を具体的に説明する。図1(a),(b)は本発明に係る杭芯位置の確認方法を説明する平面図及び側面図、図2及び図3は逃げ芯に設けられた検尺棒を遊動可能に支持する各種の支持部材の構成を示す図、図4(a)は既製杭を埋設するための掘削ロッドの杭芯位置の確認方法を説明する側面図、図4(b)は本杭の上部に接続されるヤットコ(雇杭)の杭芯位置の確認方法を説明する側面図である。
【0020】
図1〜図5において、杭芯1位置を確認するに際して、一端部4aが杭5、ヤットコ(雇杭)8或いは掘削ロッド6の回転軸表面に当接する検尺棒4を杭芯1の所定の複数の角度方向で且つそれぞれの方向において少なくとも2箇所に設けた逃げ芯2,3に合わせ、杭5、ヤットコ8或いは掘削ロッド6を杭芯1にセットし、検尺棒4を水平になるように各逃げ芯2,3に合わせながら該検尺棒4の一端部4aを杭5、ヤットコ8或いは掘削ロッド6に当てて杭芯1位置の確認を行うことが出来る。
【0021】
本実施形態では、検尺棒4を杭芯1の直角方向の2箇所に合わせた一例を示すが、他の種々の角度に設定された他の複数の数の検尺棒4を用いる構成とすることが出来、各方向において、2箇所以上の他の複数の逃げ芯を設けることでも良い。
【0022】
逃げ芯2,3は予め設定された杭芯1位置に対応して地盤Gに立設されており、該逃げ芯2,3には検尺棒4を遊動可能に支持する支持部材7a,7bが設けられている。なお、逃げ芯2,3には丸型水準器(図示せず)が取り付けられており、これにより逃げ芯2,3の鉛直度を確認することが出来る。
【0023】
図2に示す支持部材7a,7bは、断面コ字形状の板材で構成され、逃げ芯2側に設けられる支持部材7aは、該逃げ芯2が挿通される貫通孔7a6が設けられた水平片7a3の一方の端部から垂直片7a2が垂下し、該垂直片7a2を貫通して設けられた雌ネジ部7a4に留めネジ7a5が螺合され、水平片7a3の貫通孔7a6に逃げ芯2を挿通して支持部材7aを所望の高さに設定すると共に、雌ネジ部7a4に留めネジ7a5を螺合締結することにより逃げ芯2の表面に該留めネジ7a5の先端が当接して逃げ芯2に支持部材7aが固定される。水平片7a3の他方の端部からガイド片7a1が垂下し、該ガイド片7a1と逃げ芯2との間に検尺棒4が遊動可能に拘束される。
【0024】
一方、逃げ芯3側に設けられる支持部材7bは、該逃げ芯3が挿通される貫通孔7b6が設けられた水平片7b3の一方の端部から垂直片7b2が起立し、該垂直片7b2を貫通して設けられた雌ネジ部7b4に留めネジ7b5が螺合され、水平片7b3の貫通孔7b6に逃げ芯3を挿通して支持部材7bを所望の高さに設定すると共に、雌ネジ部7b4に留めネジ7b5を螺合締結することにより逃げ芯3の表面に該留めネジ7b5の先端が当接して逃げ芯3に支持部材7bが固定される。水平片7b3の他方の端部からガイド片7b1が起立し、該ガイド片7b1と逃げ芯3との間に検尺棒4が遊動可能に拘束される。
【0025】
そして、逃げ芯3の位置よりも重心が杭芯1側にある検尺棒4を支持部材7a,7bの各水平片7a3の下面及び水平片7b3の上面に当接させて該水平片7b3上に載置することで、支持部材7a,7bにより検尺棒4が安定して遊動可能に支持される。
【0026】
図3では、図2の逃げ芯3側に設けられた支持部材7bを逃げ芯2側にも前述と同様に設けて構成したものであり、逃げ芯3の位置よりも重心が逃げ芯2側にある検尺棒4を一対の支持部材7bの各水平片7b3の上面に載置することで、該一対の支持部材7bにより検尺棒4が安定して遊動可能に支持される。尚、支持部材7a,7bは上下反転することにより図2及び図3に示すように、共通に使用することが出来る。
【0027】
なお、図2及び図3に示される支持部材7a,7bは、開放された形状であるため、開放端から検尺棒4を容易に遊動可能に支持することが出来る。また、図2及び図3に示される支持部材7a,7bをより閉じた形状とすると、検尺棒4をより安定して遊動可能に支持することが出来る。
【0028】
検尺棒4には水平器9が設けられており、該水平器9を目視することにより検尺棒4の水平度を確認することが出来る。
【0029】
また、検尺棒4の逃げ芯2,3位置に対応する部位には、図1(a)に示すように、ライン、指標、マーク、テープ等の指示手段10a,10bが設けられている。
【0030】
また、杭5の立て込み前だけでなく、該杭5の建て込み中にも逃げ芯2,3を用いて杭芯1位置の確認を行うことが出来る。
【0031】
図1に示す杭5は既製コンクリート杭または鋼管杭を示しており、杭5本体の先端部外周に少なくとも1周以上の螺旋状羽根5aを設けている。また、図1に示す杭5以外にも杭5本体の先端部外周に螺旋状羽根5aを設けないストレート杭や図4(a)に示す様に地盤Gの掘削時に用いる掘削ロッド6や図4(b)に示す様に杭を埋設するときに用いる本杭の上部に接続されるヤットコ8も含まれる。
【0032】
支持部材7a,7bを有さない構成においては、検尺棒4を水平に持ち、一端部4aを杭芯1に当て、図1に示す様にもう一つの検尺棒4を前述の検尺棒4と直角方向になるように一端部4aを杭芯1に当て、それぞれの他端部に逃げ芯2を取る。逃げ芯3は杭芯1と逃げ芯2との間に検尺棒4に接して1つ以上取る。
【0033】
逃げ芯2,3および検尺棒4は一般的な冶具を使用するので安価且つ容易に管理できる。
【0034】
杭5の埋設中または掘削ロッド6を用いて地盤Gの掘削中やヤットコ8を用いた杭5の埋設中に杭芯1位置を確認する場合は、埋設や掘削を中止し、静止状態の杭5または掘削ロッド6やヤットコ8に検尺棒4を前述と同様の手順で当てる。これより、正確な杭芯1位置とのずれを確認できる。
【0035】
検尺棒4を2本以上の逃げ芯2,3に沿わせる事によって、検尺棒4を同位置に当てることができる。
【0036】
従来例に於いては新たな杭芯管理冶具が必要であるが、本発明は、既存の冶具のみで正確な杭芯1位置を確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の活用例として、既存の冶具を用いた、建て込み前と建て込み中の杭の杭芯位置の確認を、正確且つ容易に行う杭芯位置の確認方法に適用出来る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a),(b)は本発明に係る杭芯位置の確認方法を説明する平面図及び側面図である。
【図2】逃げ芯に設けられた検尺棒を遊動可能に支持する各種の支持部材の構成を示す図である。
【図3】逃げ芯に設けられた検尺棒を遊動可能に支持する各種の支持部材の構成を示す図である。
【図4】(a)は既製杭を埋設するための掘削ロッドの杭芯位置の確認方法を説明する側面図、(b)は本杭の上部に接続されるヤットコ(雇杭)の杭芯位置の確認方法を説明する側面図である。
【図5】従来例を説明する図である。
【符号の説明】
【0039】
1…杭芯
2,3…逃げ芯
4…検尺棒
4a…一端部
5…杭
5a…螺旋状羽根
6…掘削ロッド
7a,7b…支持部材
7a1…ガイド片
7a2…垂直片
7a3…水平片
7a4…雌ネジ部
7a5…留めネジ
7a6…貫通孔
7b1…ガイド片
7b2…垂直片
7b3…水平片
7b4…雌ネジ部
7b5…留めネジ
7b6…貫通孔
8…ヤットコ
9…水平器
10a,10b…指示手段
G…地盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検尺棒を杭芯の所定の複数の角度方向で且つそれぞれの方向において少なくとも2箇所に設けた逃げ芯に合わせ、杭或いは掘削ロッドを前記杭芯にセットし、前記検尺棒を水平になるように前記各逃げ芯に合わせながら該検尺棒の端部を杭或いは掘削ロッドに当てて杭芯位置の確認を行うことを特徴とする杭芯位置の確認方法。
【請求項2】
前記逃げ芯に前記検尺棒を遊動可能に支持する支持部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の杭芯位置の確認方法。
【請求項3】
前記検尺棒に水平器を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の杭芯位置の確認方法。
【請求項4】
前記検尺棒に前記逃げ芯位置に対応する指示手段を設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の杭芯位置の確認方法。
【請求項5】
杭の建て込み中に前記逃げ芯を用いて杭芯位置の確認を行うことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の杭芯位置の確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−174124(P2009−174124A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11040(P2008−11040)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】