説明

杯細胞過形成を抑制するための抗ヒスタミン剤含有医薬組成物2

【課題】
優れた気道の杯細胞過形成を抑制するための抗ヒスタミン剤を含有する新規な医薬組成物を見出すこと。
【解決手段】
フマル酸ケトチフェンを含有する医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気道の杯細胞過形成を抑制するための抗ヒスタミン剤を含有する医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な気道の表面の多くは線毛上皮細胞で被われており、その中に気道粘液を産生する杯細胞が散在し、気道分泌液と線毛との協調作用により異物を排除している。しかし、気道分泌が亢進すると、気道内にそれらが貯留して細菌増殖の温床となるため、気道感染を反復したり気道閉塞をきたしたりすることが知られている。また、喫煙、種々の大気汚染物質又はアレルゲンの吸入、気道感染等で、気道分泌亢進のみならず杯細胞の過形成等が惹起され、これが長引くと急性呼吸器疾患から慢性難治性呼吸器疾患へ移行してしまう恐れがある(以上、例えば、非特許文献1参照)。このような悪循環を防ぐためには、急性期における通常の去痰剤による治療のみならず杯細胞過形成を抑制するための対処も必要である。
【0003】
フェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤は、医療用医薬品として解熱・鎮痛目的で広範囲に使用されている。この中でも、例えば本邦では、ロキソプロフェン、イブプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸又はプラノプロフェン等は、急性上気道炎の解熱等の適応を有する(例えば、非特許文献2参照)。また、イブプロフェンは一般用医薬品として、解熱鎮痛剤及び感冒薬に配合されている(例えば、非特許文献3参照)。
抗ヒスタミン剤のフマル酸ケトチフェンは、医療用薬として気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、皮膚掻痒症の適応を有する(非特許文献2参照)。しかし、感冒時にフマル酸ケトチフェン単剤を処方されることは現状では考え難いし、そのような報告もない。
【0004】
抗ヒスタミン剤のフマル酸クレマスチンは、医療用薬としてアレルギー性鼻炎及びアレルギー性皮膚疾患(蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、掻痒症)の適応を有する(例えば、非特許文献2参照)。また、一般用医薬品(所謂OTC薬)では、感冒に伴う鼻炎症状(鼻水、鼻閉、くしゃみ)に対して処方される(例えば、非特許文献4参照)。しかし、感冒時にフマル酸クレマスチン単剤を処方されることは現状では考え難いし、そのような報告もない。
【0005】
抗ヒスタミン剤の塩酸アゼラスチンは、医療用薬として気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、湿疹・皮膚炎、アトピー性皮膚炎、皮膚掻痒症、痒疹の適応を有する(非特許文献2参照)。しかし、感冒時に塩酸アゼラスチン単剤を処方されることは現状では考え難いし、そのような報告もない。
抗ヒスタミン剤のメキタジンは、医療用薬として気管支喘息、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患に伴う掻痒(湿疹・皮膚炎、皮膚掻痒症)の適応を有する(例えば、非特許文献2参照)。また、一般用医薬品(所謂OTC薬)では、抗ヒスタミン主薬製剤として配合され、蕁麻疹、湿疹・かぶれによる痒み、鼻炎の効能を有し、また、感冒に伴う鼻炎症状(鼻水、鼻閉、くしゃみ)に対して処方された例がある(例えば、非特許文献5参照)。しかし、感冒時にメキタジン単剤が処方されることは現状では考え難いし、そのような製品も存在しない。
【0006】
これまでの薬理学的知見からでは、抗ヒスタミン剤自体に杯細胞過形成抑制作用が有ることは予想し難く、また、そのような効果を示唆した文献も存在しない。
【0007】
また、フェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤と、抗ヒスタミン剤又は抗アレルギー剤との併用については、イブプロフェンと、クロルフェニラミン、クレマスチン又はメキタジンとを配合した製剤が知られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0008】
しかし、これまでにフェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤とアゼラスチンとを含有する医薬組成物は知られておらず、それらを併用したという報告も見当たらない。
【0009】
さらに、ロキソプロフェン及びアゼラスチン各単剤の杯細胞に対する作用についての報告も見当たらない。なお、イブプロフェンについては単剤投与試験において杯細胞数に変化を与えなかったという報告がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2002/096406号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】医薬ジャーナル、2002年、第38巻、第12号、p121−126
【非特許文献2】日本医薬品集 医療薬 2006年版、じほう、2005
【非特許文献3】大衆薬辞典 第9版、じほう、2004
【非特許文献4】一般用医薬品製造(輸入)承認基準1995、薬事時報社
【非特許文献5】2004−05 一般薬 日本医薬品集、じほう
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
優れた気道の杯細胞過形成抑制作用を有する新規な医薬組成物を見出すことが本発明の課題である。これまでに、当該分野における研究は十分になされてきたとはいえず、本発明の成果により、新規な予防又は治療効果を有する医薬組成物が提供できるものと考えられる。特に本発明は、呼吸器疾患等の予防又は治療、更には感冒等の予防又は治療に役立つと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、気道の杯細胞過形成抑制作用を有する医薬組成物について長年にわたり鋭意研究を行った結果、意外にも、特定の薬物又はその組み合わせにおいて気道の杯細胞過形成が顕著に抑制されること、ひいては優れた鎮咳及び/又は去痰作用がもたらされることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、(1)気道の杯細胞過形成を抑制するための抗ヒスタミン剤を含有する医薬組成物であり、好適には、
(2)フェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤並びにアゼラスチン及び/又はアゼラスチンの薬理上許容される塩を含有する医薬組成物、
(3)気道の杯細胞過形成を抑制するための(2)に記載の医薬組成物、
(4)気道の杯細胞過形成を抑制するためのフェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤及び抗ヒスタミン剤を含有する医薬組成物。
(5)さらに鎮咳及び/又は去痰を同時に行うための(1)、(3)又は(4)に記載の医薬組成物、
(6)抗ヒスタミン剤が、ケトチフェン、クレマスチン、アゼラスチン、メキタジン及びそれらの薬理上許容される塩から選ばれる1又は2以上である(1)、(4)又は(5)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(7)抗ヒスタミン剤が、フマル酸ケトチフェン、フマル酸クレマスチン、塩酸アゼラスチン及びメキタジンから選ばれる1又は2以上である(1)、(4)又は(5)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(8)フェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤が、ロキソプロフェンナトリウム、イブプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸、プラノプロフェン、オキサプロジン、フェノプロフェンカルシウム、ザルトプロフェン及びフルルビプロフェンからなる群より選ばれる1又は2以上である(2)〜(7)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(9)フェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤が、ロキソプロフェンナトリウム又はイブプロフェンより選ばれる1又は2以上である(2)〜(7)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(10)感冒剤として用いるための(1)〜(9)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物、
(11)急性又は慢性気管支炎の治療に用いるための(1)〜(9)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物及び
(12)慢性気道疾患における急性呼吸器感染時の症状の治療に用いるための(1)〜(9)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物である。
【0015】
さらに、本発明は、
(13)有効成分を同一の医薬組成物中に含有する(2)〜(9)から選択されるいずれか1項に記載の医薬組成物の製造方法及び
(14)哺乳動物に(1)〜(9)から選択されるいずれか1項に記載された医薬組成物の有効量を投与する感冒の治療方法を提供する。
【0016】
本発明の「フェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤」とは、フェニルプロピオン酸構造をもつ解熱鎮痛消炎剤及びその薬理上許容される塩のことであり、例えば、ロキソプロフェン、イブプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸(5‐ベンゾイル‐α‐メチル‐2‐チオフェン酢酸)、プラノプロフェン、オキサプロジン、フェノプロフェンカルシウム、ザルトプロフェン、フルルビプロフェン及びそれらの薬理上許容される塩であり、好適には、ロキソプロフェンナトリウム、イブプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸(5‐ベンゾイル‐α‐メチル‐2‐チオフェン酢酸)、プラノプロフェン(又はそのカルシウム塩)、オキサプロジン、フェノプロフェンカルシウム、ザルトプロフェン及びフルルビプロフェンであり、更に好適には、ロキソプロフェンナトリウム、イブプロフェン、アルミノプロフェン、チアプロフェン酸及びプラノプロフェン(又はそのカルシウム塩)であり、より更に好適には、ロキソプロフェンナトリウム及びイブプロフェンである。ロキソプロフェンナトリウムとして、好適には、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物である。
【0017】
本発明の「抗ヒスタミン剤」とは、一般に、ヒスタミン受容体に対してヒスタミンと拮抗的に働く、アレルギー反応などヒスタミンの関与する過剰反応を抑える目的で用いられる薬剤であり、例えば、ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、ジフェンヒドラミン、ロラタジン、トリプロリジン、アザタジン、セチリジン、シプロヘプタジン、フェキソフェナジン、ヒドロキシジン、プロメタジン、ケトチフェン、アゼラスチン、メキタジン及びそれらの薬理上許容される塩であり、好適には、ケトチフェン、クレマスチン、アゼラスチン、メキタジン及びそれらの薬理上許容される塩である。
【0018】
本発明のケトチフェン又はその薬理上許容される塩として、好適には、フマル酸ケトチフェンである。
本発明のクレマスチン又はその薬理上許容される塩として、好適には、フマル酸クレマスチンである。
本発明のアゼラスチン又はその薬理上許容される塩として、好適には、塩酸アゼラスチンである。
本発明のメキタジン又はその薬理上許容される塩として、好適には、メキタジンである。
【0019】
本発明の有効成分である「フェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤」及び「抗ヒスタミン剤」は、大気中に放置したり又は再結晶をすることにより、水分を吸収し、吸着水が付いたり、水和物となったりする場合があるが、そのような水和物も本発明に使用される。
【0020】
本発明の「薬理上許容される塩」とは、本発明の有効成分である「フェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤」又は「抗ヒスタミン剤」が、酸性基または塩基性基を有する場合に、塩基又は酸と反応させることにより、塩基性塩又は酸性塩にすることができるので、その塩を示す。
【0021】
「塩基性塩」としては、好適には、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;N−メチルモルホリン塩、トリエチルアミン塩、トリブチルアミン塩、ジイソプロピルエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N−メチルピペリジン塩、ピリジン塩、4−ピロリジノピリジン塩、ピコリン塩のような有機塩基塩類又はグリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩であり、更に好適には、アルカリ金属塩であり、より更に好適には、ナトリウム塩である。
【0022】
「酸性塩」としては、好適には、フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリ−ルスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマ−ル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及び、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩であり、更に好適には、無機酸塩又は有機酸塩であり、より更に好適には、塩酸塩又はフマル酸塩である。
【0023】
本発明の「慢性気道疾患」とは、例えば、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、気管支喘息、肺結核、塵肺症、肺気腫、びまん性汎気管支炎等が挙げられる。
【0024】
本発明において、フェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤とアゼラスチンとは、同時に、順次又は別個に投与することができるが、一般に、臨床上は同時に投与するのが便利であり、それゆえ、フェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤とアゼラスチンとは、配合剤として投与することが好ましい。また、製剤技術上、当該両化合物を物理的に混合することが好ましくない場合は、それぞれの単剤を同時に、順次又は別個に投与することもできる。
【0025】
本発明における、「同時に」投与するとは、全く同時に投与することの他、薬理学上許される程度に相前後した時間に投与することも含むものである。その投与形態は、ほぼ同じ時間に投与できる投与形態であれば特に限定はないが、単一の組成物であることが好ましい。
【0026】
本発明における、「順次又は別個に」投与するとは、異なった時間に別々に投与できる投与形態であれば特に限定はないが、例えば、1の成分を投与し、次いで、決められた時間後に、他の成分を投与する方法がある。
【0027】
本発明における、「治療する」とは、病気又は症状を治癒させること又は改善させること或いは症状を抑制させることを意味する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の医薬組成物は、杯細胞の過形成を顕著に抑制し、ひいては優れた鎮咳及び/又は去痰作用を有することから有用である。
【0029】
本発明の医薬組成物は、一般に考えられる感冒等の症状の治療又は予防に有用であるが、好適には、急性又は慢性気管支炎等の症状の治療又は予防に有用であり、更に好適には、急性呼吸器感染症患者における急性気管支炎等の症状又はCOPD、気管支拡張症、気管支喘息、肺結核、塵肺症、肺気腫、びまん性汎気管支炎等の慢性気道疾患を有する患者における急性気管支炎等の症状の治療又は予防にも有用である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
フェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤のうち、イブプロフェン及びロキソプロフェンナトリウムは第15改正日本薬局方に収載されている。
【0031】
フマル酸ケトチフェン(ケトチフェンフマル酸塩)、フマル酸クレマスチン(クレマスチンフマル酸塩)及びアゼラスチンは第15改正日本薬局方に記載されている。
【0032】
その他のフェニルプロピオン酸系解熱鎮痛消炎剤や抗ヒスタミン剤も医薬品として市販されており容易に入手でき、また、公知の方法で製造することもできる。
【0033】
塩酸アゼラスチンは医薬品として市販されており、容易に入手できる。例えば、(株)
三洋化学研究所から購入できる。
【0034】
ロキソプロフェンナトリウムの1回投与量は、適応症や年齢により異なるが、通常、20〜180mgであり、これを1日に、1〜3回投与する。
【0035】
イブプロフェンの1回投与量は適応症や年齢により異なるが、通常、50〜250mgであり、好適には、60〜200mgであり、これを1日に1〜3回投与する。
【0036】
ケトチフェン、クレマスチン及びアゼラスチンの1回投与量は、適応症や年齢により異なるが、通常、0.1〜5mgであり、これを1日に、1〜3回投与する。
【0037】
また、メキタジンの1回投与量は、適応症や年齢により異なるが、通常、0.5〜20mgであり、これを1日に、1〜3回投与する。
【0038】
固形製剤の場合において、ケトチフェン、クレマスチン及びアゼラスチンの含有量は、通常、0.2〜2mgであり、好適には、0.4〜2mgである。また、メキタジンの含有量は、通常、1.0〜20mgであり、好適には、2.0〜10mgである。
【0039】
ロキソプロフェンナトリウム、ザルトプロフェン、フルルビプロフェン又はプラノプロフェンの含有量は、通常、3〜600mgであり、好適には、15〜120mgである。
イブプロフェン、アルミノプロフェン又はチアプロフェン酸の含有量は、通常、10〜2000mgであり、好適には、50〜400mgである。
【0040】
フェノプロフェンカルシウムの含有量は、通常、20〜4000mgであり、好適には、100〜800mgである。
【0041】
液剤の場合において、ケトチフェン、クレマスチン及びアゼラスチンの含有量は通常、0.05〜4mg/mLであり、好適には、0.1〜2mg/mLである。また、メキタジンの含有量は通常、0.2〜20mg/mLであり、好適には、0.5〜10mg/mLである。
【0042】
ロキソプロフェンナトリウム、ザルトプロフェン、フルルビプロフェン又はプラノプロフェンの含有量は、通常、1.5〜120mg/mLであり、好適には、3〜60mg/mLである。
【0043】
イブプロフェン、アルミノプロフェン又はチアプロフェン酸の含有量は、通常、5〜400mg/mLであり、好適には、10〜200mg/mLである。
フェノプロフェンカルシウムの含有量は、通常、10〜800mg/mLであり、好適には、20〜400mg/mLである。
【0044】
本発明においては、上記有効成分の他、必要に応じて気管支拡張薬、鎮咳薬、去痰薬、抗コリン薬、消炎酵素、カフェイン、ビタミン類、生薬、制酸剤などを本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0045】
本発明の具体的な剤形としては、例えば、錠剤、細粒剤(散剤を含む)、カプセル、液剤(シロップ剤を含む)等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基材を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
【0046】
これらの具体的な剤形としては、例えば、錠剤、細粒剤(顆粒剤、散剤を含む)、カプセル、液剤(シロップ剤を含む)等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基材を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
【0047】
上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。例えば、賦形剤、安定化剤、コーティング剤、滑沢剤、吸着剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、着色剤、pH調節剤及び香料等を添加することができる。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例等を示し、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0049】
(実施例1)錠剤
(1)成分
(表1)
1乃至2錠中(mg) (1a) (1b) (1c)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塩酸アゼラスチン 2 2 2
ロキソプロフェンNa、ザルトプロフェン、 60 − −
フルルビプロフェン又はプラノプロフェン
イブプロフェン、アルミノプロフェン − 200 −
又はチアプロフェン酸
フェノプロフェンカルシウム − − 400
乳糖 70 70 70
ステアリン酸マグネシウム 4 5 8
ヒドロキシプロピルセルロース 20 40 60
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0050】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。
【0051】
(実施例2)顆粒剤
(1)成分
(表2)
1包中(mg) (2a) (2b) (2c)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塩酸アゼラスチン 2 2 2
ロキソプロフェンNa、ザルトプロフェン、 60 − −
フルルビプロフェン又はプラノプロフェン
イブプロフェン、アルミノプロフェン − 200 −
又はチアプロフェン酸
フェノプロフェンカルシウム − − 400
乳糖 900 800 600
ポリビニルピロリドン 25 35 45
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0052】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造する。
【0053】
(実施例3)カプセル剤
(1)成分
(表3)
1乃至2カプセル中(mg) (3a) (3b) (3c)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塩酸アゼラスチン 2 2 2
ロキソプロフェンNa、ザルトプロフェン、 60 − −
フルルビプロフェン又はプラノプロフェン
イブプロフェン、アルミノプロフェン − 200 −
又はチアプロフェン酸
フェノプロフェンカルシウム − − 400
乳糖 200 140 60
ポリビニルピロリドン 20 20 20
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0054】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造した後、カプセルに充てんして硬カプセル剤を製造する。
【0055】
(実施例4)シロップ剤
(1)成分
(表4)
10mL中(mg) (4a) (4b) (4c)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塩酸アゼラスチン 2 2 2
ロキソプロフェンNa、ザルトプロフェン、 60 − −
フルルビプロフェン又はプラノプロフェン
イブプロフェン、アルミノプロフェン − 200 −
又はチアプロフェン酸
フェノプロフェンカルシウム − − 400
安息香酸ナトリウム 70 70 70
グリセリン 100 250 350
ポリビニルアルコール 80 80 80
白糖 1200 2000 2000
精製水 残部 残部 残部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0056】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「シロップ剤」の項に準じてシロップ剤を製造した後、褐色ガラス瓶に充てんしてシロップ剤を製造する。
【0057】

(実施例5)錠剤
(1)成分
(表5)
1錠中(mg) (5a) (5b) (5c)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フマル酸ケトチフェン、 1 0.5 −
フマル酸クレマスチン、
又は、塩酸アゼラスチン
メキタジン − 3 5
乳糖 90 90 90
ステアリン酸マグネシウム 8 8 8
ヒドロキシプロピルセルロース 10 10 10
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0058】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製造する。
【0059】
(実施例6)顆粒剤
(1)成分
(表6)
1包中(mg) (6a) (6b) (6c)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フマル酸ケトチフェン、 1 0.5 −
フマル酸クレマスチン、
又は、塩酸アゼラスチン
メキタジン − 3 5
乳糖 800 800 800
ポリビニルピロリドン 25 25 25
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0060】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造する。
【0061】
(実施例7)カプセル剤
(1)成分
(表7)
1乃至2カプセル中(mg) (7a) (7b) (7c)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フマル酸ケトチフェン、 1 0.5 −
フマル酸クレマスチン、
又は、塩酸アゼラスチン
メキタジン − 3 5
乳糖 200 200 200
ポリビニルピロリドン 25 25 25
トウモロコシデンプン 適量 適量 適量
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0062】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製造した後、カプセルに充てんして硬カプセル剤を製造する。
【0063】
(実施例8)シロップ剤
(1)成分
(表8)
10mL中(mg) (8a) (8b) (8c)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フマル酸ケトチフェン、 1 0.5 −
フマル酸クレマスチン、
又は、塩酸アゼラスチン
メキタジン − 3 5
安息香酸ナトリウム 70 70 70
グリセリン 10 10 10
ポリビニルアルコール 20 20 20
白糖 1200 1200 1500
精製水 残部 残部 残部
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0064】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「シロップ剤」の項に準じてシロップ剤を製造した後、褐色ガラス瓶に充てんしてシロップ剤を製造する。
【0065】
(試験例1)杯細胞形成抑制効果試験
(1)被験物質
ロキソプロフェンナトリウム・2水和物は三共(株)製のものを、イブプロフェンはSigma Chemical製のものを、塩酸アゼラスチンは(株)三洋化学研究所製のものを使用した。
各被験物質は、試験当日に0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)液を加えて被験薬を調製して投与し、対照群には0.5%CMC液を投与した。投与液量はいずれの場合も5mL/Kgとなるようにした。
【0066】
(2)動物
F344/DuCrj雄性ラットの10週齢を日本チャールズリバー(株)から購入し、温度20〜26℃、湿度30〜70%、照明時間7時〜19時に制御されたラット飼育室内でラット用ブラケットテーパーケージに5匹ずつ入れ、飼料(マウス・ラット飼育用F−2、船橋農場製)および水フィルターを通した水道水を自由に摂取させて約1週間予備飼育した。試験開始日に肉眼で動物の健康状態を観察し良好なことを確認して体重を測定し無作為に1群6匹に群分けして用いた。
【0067】
(3)方法
ラットにペントバルビタール50mg/Kgを腹腔内投与して麻酔させ、仰臥位に固定し、頚部喉頭側皮膚を正中に切開して、気管露出部から確認しながら気管内に挿入し、1%リポポリサッカライド(LPS)溶液を100μL投与した。直ちに、気管周囲筋肉と切開部皮膚を縫合して気道粘膜障害動物を作成した。
試験開始日の午前中に被験物質(対象群にはCMC液)を経口投与した後に、上述の方法でLPS溶液を気管内投与し、その日の16:00以降に再度被験物質(対象群にはCMC液)を経口投与した。
4日目に体重を測定した後、ペントバルビタール麻酔下で頚動脈を切断して放血安楽死させてから、喉頭蓋部より肺までの気管を採取し、生理食塩水で洗浄後、10%中性緩衝ホルマリン液に浸漬し充分に固定した。
充分に固定後、気管を左右主気管支分岐部より上部約10mmで横断し、さらに上方に6mm以上の長さで横断し、管状の気管を切り出し観察材料とした。
常法により、管状の気管を縦断して短冊状の薄切気管標本を作製し、これをアルシアン青・PAS染色で染色後、6mm長の範囲内の杯細胞数を顕微鏡下で計測した。なお、1例について2本の短冊状気管組織標本の杯細胞合計数を計測数とした。
【0068】
杯細胞形成抑制率(%)を次式より求めた。
(数1)
杯細胞形成抑制率(%)=[1−B/A]×100
A:CMC投与群の杯細胞数の平均値
B:被験物質投与群の杯細胞数の平均値
【0069】
(4)試験結果
得られた杯細胞形成抑制率の結果を表9に示す。なお、各値とも1群7匹の平均値である。
(表9)
被験物質(投与量:mg/Kg) 杯細胞形成抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塩酸アゼラスチン(0.2) 8.7
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
メキタジン(1.0) 8.6
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LxNa(15) 8.2
LxNa(15)+塩酸アゼラスチン(0.2) 33.9
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イブプロフェン(50) −2.2
イブプロフェン(50)+塩酸アゼラスチン(0.2) 19.7
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
LxNa(15)+メキタジン(1) 32.0
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
表9中、LxNaはロキソプロフェンナトリウム・2水和物を示す。
表9より、塩酸アゼラスチン又はメキタジンに、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物又はイブプロフェンを併用した場合には、顕著な杯細胞過形成抑制作用が発現することが判明した。
【0070】
(試験例2)杯細胞形成抑制効果試験
(1)被験物質
フマル酸ケトチフェンは(株)ワイアイシー製のものを、フマル酸クレマスチンはSIGMA社製のものを、塩酸アゼラスチンは(株)三洋化学研究所製のものを、メキタジンは住化ファインケム(株)製のものを使用した。
各被験物質は投与液量が5mL/Kgになるように、試験当日に0.5%カルボキシメ
チルセルロース(CMC)液を加えて調製した。
【0071】
(2)動物
F344/DuCrj雄性ラットの10週齢を日本チャールズリバー(株)から購入し、温度20〜26℃、湿度30〜70%、照明時間7時〜19時に制御されたラット飼育室内でラット用ブラケットテーパーケージに5匹ずつ入れ、飼料(マウス・ラット飼育用F−2、船橋農場製)および水フィルターを通した水道水を自由に摂取させて約1週間予備飼育した。試験開始日に肉眼で動物の健康状態を観察し良好なことを確認して体重を測定し無作為に1群7匹に群分けして用いた。
【0072】
(3)気道粘膜障害モデルの作製方法
ラットにペントバルビタール50mg/Kgを腹腔内投与して麻酔させ、仰臥位に固定し、頚部喉頭側皮膚を正中に切開して、筋肉を鈍性に分離し気管を露出させた。口腔からラット用の液体気管内投与器具を用いて、気管露出部から確認しながら気管内に挿入し、1%リポポリサッカライド(LPS)溶液を100μL投与した。直ちに、気管周囲筋肉を縫合して切開部皮膚をアロンアルファで接着させて気道粘膜障害動物を作成した。
【0073】
(4)試験
試験開始日の午前中に被験物質(対象群にはCMC液)を経口投与した後に、上述の方法でLPS溶液を気管内投与し、その日の夕刻に再度被験物質(対象群にはCMC液)を経口投与した。2日目と3日目は1日2回(午前と夕刻)被験薬(対象群にはCMC液)を経口投与した。
4日目に体重を測定した後、ペントバルビタール麻酔下で頚動脈を切断して放血安楽死させてから、喉頭蓋部より肺までの気管を採取し、生理食塩水で洗浄後、10%中性緩衝ホルマリン液に浸漬し充分に固定した。
充分に固定後、気管を左右主気管支分岐部より上部約10mmで横断し、さらに上方に6mm以上の長さで横断し、管状の気管を切り出し観察材料とした。
常法により、管状の気管を縦断して短冊状の薄切気管標本を作製し、これをアルシアン青・PAS染色で染色後、6mm長の範囲内の杯細胞数を顕微鏡下で計測した。なお、1例について2本の短冊状気管組織標本の杯細胞合計数を計測数とした。
【0074】
杯細胞形成抑制率(%)を次式より求めた。
(数2)
杯細胞形成抑制率(%)=[1−B/A]×100
A:CMC投与群の杯細胞数の平均値
B:被験物質投与群の杯細胞数の平均値
【0075】
(5)試験結果
得られた杯細胞形成抑制率の結果を表10に示す。なお、各値とも1群7匹の平均値である。
(表10)
被験物質(投与量:mg/Kg/回) 杯細胞形成抑制率(%)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
塩酸アゼラスチン(0.2) 8.7
メキタジン(1.0) 8.6
フマル酸ケトチフェン(0.25) 23.4
フマル酸クレマスチン(0.25) 19.9
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表10より、フマル酸ケトチフェン、フマル酸クレマスチン、塩酸アゼラスチン及びメキタジンに気道杯細胞の過形成を抑制する作用が発現することが判明した。特に、フマル酸ケトチフェン及びフマル酸クレマスチンでは顕著な気道杯細胞形成抑制効果が発現することが判った。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の医薬組成物は、杯細胞の過形成を顕著に抑制し、ひいては優れた鎮咳及び/又は去痰作用を有することから有用である。
本発明の医薬組成物は、一般に考えられる感冒等の症状の治療又は予防に有用であるが、好適には、急性又は慢性気管支炎等の症状の治療又は予防に有用であり、更に好適には、急性呼吸器感染症患者における急性気管支炎等の症状又はCOPD、気管支拡張症、気管支喘息、肺結核、塵肺症、肺気腫、びまん性汎気管支炎等の慢性気道疾患を有する患者における急性気管支炎等の症状の治療又は予防にも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気道の杯細胞過形成を抑制するためのフマル酸ケトチフェンを含有する医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物を含有する感冒剤。
【請求項3】
請求項1に記載の医薬組成物を含有する鎮咳及び/又は去痰剤。

【公開番号】特開2012−214512(P2012−214512A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−177589(P2012−177589)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【分割の表示】特願2007−112535(P2007−112535)の分割
【原出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】