説明

板材

【課題】吸放湿性を向上させることができる板材を提供する。
【解決手段】板材11は、4枚の単板31〜34が積層された合板を用いてなる基板3の下面3aに溝35,35,…が形成されてなる。各溝35の長手方向は、単板34の繊維方向に直交する。各溝35の内面3b〜3cを含む下面3aには、吸放湿性を有する調湿剤が付加してある。内側面3c,3cは木口面であるため、内側面3c,3cの単位面積当たりの吸放湿量及び調湿剤の付加量は、木口面ではない下面3a及び内天面3bの単位面積当たりの吸放湿量及び調湿剤の付加量よりも多い。このため、板材11は、溝35,35,…が形成されていない従来の板材よりも、同一の見付面積当たりの吸放湿性が向上されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材を用いてなる板材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調湿建材として、無機系板材又は木質系板材等が用いられている(特許文献1参照)。
木質系板材は、無機系板材に比べて吸放湿速度が遅い(即ち、単位時間当たりの吸放湿量が少ない)。そこで、尿素水のような調湿剤を木質系板材の表面に塗布し含浸させることによって吸放湿性を向上させた調湿建材が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−31494号公報
【特許文献2】特開2009−209651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、調湿剤の含浸量が多いほど、調湿建材の吸放湿性は向上される。しかしながら、木質系板材の表面に含浸可能な調湿剤の量には限りがあり、特に、吸水性がよくない木質系板材(例えば合板又は木質繊維板等)に大量の調湿剤を塗布したとしても、調湿剤は木質系板材に含浸されることなく木質系板材から漏出してしまう。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、その内面に調湿剤が付加してある凹部が形成されていることにより、吸放湿性を向上させることができる板材を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、調湿剤が付加してある木口面をその内面に含む凹部が形成されていることにより、基板が無垢材又は合板等を用いてなる場合に、吸放湿性を更に向上させることができる板材を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、凹部が形成されている面の逆側の面に平滑層が配されていることにより、吸放湿性のみならず、表面平滑性をも向上させることができる板材を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、凹部が形成されている面とは逆側の面に平滑層が配されており、しかも、積層された複数枚の単板の内、最も外側に位置する単板に凹部が形成されていることにより、基板が合板を用いてなる場合に、無用な変形の発生を抑制することができる板材を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、最も外側に位置する単板に、凹部としての溝が、該溝の長手方向が単板の繊維方向に交差するように形成されていることにより、基板が合板を用いてなる場合に、基板を容易に加工することができる板材を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、積層された3枚以上の単板の内、最も外側に位置する第1の単板及び第1の単板に隣接する第2の単板に、その長手方向が第2の単板の繊維方向に交差している溝が形成されていることにより、基板が合板を用いてなる場合に、吸放湿性を更に向上させることができる板材を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、調湿剤が付加してある低密度面をその内面に含む凹部が形成されていることにより、基板が木質成形板を用いてなる場合に、吸放湿性を更に向上させることができる板材を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、凹部の内面及び凹部が形成されている面に調湿剤が付加されており、これらが外気に露出していることにより、吸放湿性を更に向上させることができる板材を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、凹部が形成されている面を、透湿シートが被覆していることにより、吸放湿性を犠牲にすることなく、美観を向上させることができる板材を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、凹部が形成されている面に、凹部を除いて化粧層が積層されていることにより、吸放湿性を犠牲にすることなく、美観を向上させることができる板材を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、凹部としての溝が複数条並設されていることにより、基板の美観を向上させつつ基板を容易に加工することができる板材を提供することにある。
【0016】
本発明の更に他の目的は、基板を貫通している溝が複数条並設されている面とは逆側の面に可撓層が配されていることにより、美観を向上させつつ取り扱いを容易にすることができる板材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1発明に係る板材は、木材を用いてなる基板を備える板材において、前記基板の少なくとも一面に凹部が形成されており、少なくとも前記凹部の内面に、吸放湿性を有する調湿剤が付加してあることを特徴とする。
【0018】
第2発明に係る板材は、前記基板は、無垢材、集成材、合板、LVL(Laminated Veneer Lumber )、OSB(Oriented Strand Board )、又はPB(Particle Board)を用いてなり、前記凹部の内面には木口面が含まれており、少なくとも該木口面に、前記調湿剤が付加してあることを特徴とする。
【0019】
第3発明に係る板材は、前記一面の逆側の面に、平滑層を更に備えることを特徴とする。
【0020】
第4発明に係る板材は、前記基板は、複数枚の単板が積層された合板を用いてなり、前記凹部は、最も外側に位置する単板に形成されていることを特徴とする。
【0021】
第5発明に係る板材は、前記凹部は、その長手方向が前記単板の繊維方向に交差している溝であることを特徴とする。
【0022】
第6発明に係る板材は、前記基板は、3枚以上の単板が積層された合板を用いてなり、前記凹部は、最も外側に位置する第1の単板と、該第1の単板の内側に隣接する第2の単板とに亘って形成されている溝であり、該溝の長手方向は、前記第1の単板の繊維方向に沿っており、前記第2の単板の繊維方向に交差していることを特徴とする。
【0023】
第7発明に係る板材は、前記基板は、木質繊維又は木質チップと接着剤とを混合して熱圧成形してなり、表面側の密度が厚み方向中央側の密度よりも高い木質成形板を用いてなり、前記凹部の内面には、前記木質成形板の厚み方向中央側の低密度部分が露出している低密度面が含まれており、少なくとも該低密度面に、前記調湿剤が付加してあることを特徴とする。
【0024】
第8発明に係る板材は、前記凹部の内面を含む前記一面は、外気に露出している面であり、前記調湿剤は、前記凹部の内面を含む前記一面に付加されていることを特徴とする。
【0025】
第9発明に係る板材は、前記凹部の内面を除く前記一面に形成されている接着層と、該接着層を介して前記基板に接着してあり、前記一面を被覆する透湿シートとを備えることを特徴とする。
【0026】
第10発明に係る板材は、前記凹部の内面を除く前記一面に形成されている接着層と、該接着層を介して前記基板に接着してあり、前記凹部を除く前記一面を化粧する化粧層とを備えることを特徴とする。
【0027】
第11発明に係る板材は、前記凹部は、複数条並設されている溝であることを特徴とする。
【0028】
第12発明に係る板材は、可撓性を有し、前記一面の逆側の面を被覆する可撓層が、前記一面の逆側の面に接着されており、前記凹部は、前記基板を貫通していることを特徴とする。
【0029】
第1発明にあっては、板材が備える基板の少なくとも一面に凹部が形成されている。また、少なくとも凹部の内面に、吸放湿性を有する調湿剤が付加してある。このため、本発明の板材は、このような凹部が形成されていない基板を備える従来の板材よりも、調湿剤を付加し得る面積が大きい。つまり、本発明の板材は、従来の板材よりも、同一の見付面積に対する調湿剤の付加量が多い。
【0030】
第2発明にあっては、板材が備える基板の少なくとも一面に凹部が形成されており、凹部の内面には木口面が含まれている。このため、本発明の板材は、このような凹部が形成されていない基板を備える従来の板材よりも、木口面の面積が大きい。
更に、少なくとも木口面に、吸放湿性を有する調湿剤が付加してある。
【0031】
木口面には、木材の導管又は仮導管の横断面が含まれている。このため、木口面は、柾目面又は板目面と比べて、単位面積当たりの吸放湿性及び吸水性が非常に高い。従って、木口面に付加可能な調湿剤の量は、柾目面又は板目面に付加可能な調湿剤の量よりも多い。つまり、本発明の板材は、従来の板材よりも、同一の見付面積に対する調湿剤の付加量が多い。
【0032】
基板は、無垢材、集成材、合板、LVL、OSB(配向性ストランドボード)、又はPB(パーティクルボード)を用いてなる。無垢材と、集成材を構成している個々の木片と、合板又はLVLを構成している個々の単板とは、木口面を有する。一方、OSBとPBとは、これらを構成している木質チップが木口面を有する。故に、OSB又はPBを用いて基板となす場合には、OSB又はPBが、十分な面積の木口面が得られるような大きいサイズの木質チップで構成されていることが好ましい。
【0033】
第3発明にあっては、凹部が形成されている一面の逆側の面(以下、他面という)に、平滑層が配されている。
往々にして、木材には窪み又は割れ等の無用な凹凸が存在するため、本発明の板材においても、基板の他面に無用な凹凸が存在する可能性は高い。
ところが、たとえ基板の他面に無用な凹凸が存在していたとしても、平滑層には無用な凹凸が存在しておらず、しかも、平滑層が他面に配されているため、本発明の板材は、平滑層を備えていない板材よりも、表面平滑性が高い。
【0034】
第4発明にあっては、板材が基板及び平滑層を備え、基板は、複数枚の単板が積層された合板を用いてなる。
凹部は、最も外側に位置する2枚の単板の内、少なくとも一方に形成されている。即ち、凹部が形成されている一面は、最も外側に位置する2枚の単板の内の少なくとも一方が有する。
凹部が1層のみに形成されている基板は、凹部が複数層に亘って形成されている基板よりも強度が高い。このため、吸放湿又は温度変化等によって基板及び平滑層が夫々変形したとしても、両者の変形量の差に起因する基板の反り又は捩れ等の無用な変形は生じ難い。
【0035】
第5発明にあっては、合板を用いてなる基板に形成されている凹部が溝であり、溝の長手方向は、単板の繊維方向に交差している。
このような溝を形成するための基板の加工は容易である。
【0036】
第6発明にあっては、板材が備える基板は、3枚以上の単板が積層された合板を用いてなる。
本発明の板材に形成されている凹部は溝である。溝は、最も外側に位置する2枚の単板の内、少なくとも一方(以下、第1の単板という)と、第1の単板の内側に隣接する第2の単板とに亘って形成されている。即ち、溝が形成してある一面は、第1の単板が有する。
【0037】
溝の長手方向は、第1の単板の繊維方向に沿っており、第2の単板の繊維方向に交差している。従って、溝の内面の内、第1の単板に位置する内側面は柾目面又は板目面であり、第2の単板に位置する内側面は木口面である。このため、単位面積当たりの吸放湿性及び吸水性は、第1の単板に位置する内側面よりも第2の単板に位置する内側面の方が非常に高い。
【0038】
しかも、第2の単板に吸収された湿気は、第2の単板に隣接する2枚の単板へ容易に拡散する。ところが、第1の単板に吸収された湿気は、第2の単板へ拡散することしかできない。このため、第2の単板に位置する内面から吸湿することが可能な量は、第1の単板に位置する内面から吸湿することが可能な量よりも多い。
以上の結果、溝の内面の内、第1の単板に位置する内側面が木口面であり、第2の単板に位置する内側面が柾目面又は板目面である基板よりも、本発明の板材が備える基板の方が、吸放湿性が高い。
また、このような溝を形成するための基板の加工は容易である。
【0039】
第7発明にあっては、板材が備える基板は、木質成形板を用いてなる。木質成形板は、例えば天然木材又は加工木材を解繊又は破砕等することによって木質繊維又は木質チップを生成し、生成した木質繊維又は木質チップと、接着剤とを混合し、熱圧成形することによって得られる。具体的には、木質成形板は、例えばインシュレーションボード、MDF(中密度繊維板)、若しくはハードボード等のファイバーボード、又はパーティクルボード等である。
【0040】
木質成形板は、製造過程において表面側に合成樹脂が偏倚し、熱圧時に、厚み方向中央側よりも表面側の方が強く圧縮されるため、表面側の密度が高く、厚み方向中央側の密度が低い。木質成形板の表面側の高密度部分は、吸放湿性及び吸水性が低い。従って、高密度部分が露出している高密度面(例えば木質成形板を用いてなる基板の表面)に、大量の調湿剤を塗布することは困難である。一方、木質成形板の厚み方向中央側の低密度部分は、高密度部分に比べて吸放湿性も吸水性も高い。
【0041】
このため、本発明にあっては、板材が備える基板の少なくとも一面に凹部が形成されており、凹部の内面には、木質成形板の厚み方向中央側の低密度部分が露出している低密度面が含まれている。更に、少なくとも低密度面に、調湿剤が付加してある。そして、低密度面に付加可能な調湿剤の量は、高密度面に付加可能な調湿剤の量よりも多い。つまり、本発明の板材は、従来の板材、又は凹部の内面に低密度面が含まれていない板材よりも、同一の見付面積に対する調湿剤の付加量が多い。
【0042】
第8発明にあっては、凹部の内面を含む一面は、外気に露出している。このため、本発明の板材が備える基板は、凹部の内面、凹部の内面を含む一面、又は凹部の内面を除く一面が外気に露出していない場合よりも、外気からの吸湿及び外気への放湿に有利である。
しかも、凹部の内面を含む一面に調湿剤が付加されている。そして、凹部の木口面(又は低密度面)のみの面積、凹部の内面のみの面積、又は凹部が形成されていない基板の一面の面積に比べて、凹部の内面を含む一面の総面積は大きい。
【0043】
従って、本発明の板材は、凹部の木口面(又は低密度面)のみに調湿剤が付加されている場合、凹部の内面のみに調湿剤が付加されている場合、又は凹部が形成されていない基板の一面に調湿剤が付加されている場合よりも、同一の見付面積に対する調湿剤の付加量が非常に多い。
【0044】
第9発明にあっては、凹部の内面を除く一面は、外気に露出していない。何故ならば、この一面に接着層が形成されているからである。一方、凹部の内面には接着層が形成されていない。このため、凹部の内面(特に木口面又は低密度面)が接着層によって覆い塞がれることはない。
【0045】
透湿シートは基板の一面を被覆するが、接着層を介して基板に接着してあるため、透湿シートと凹部の内面との間には空隙が生じる。しかも、湿気は透湿シートを透過する。換言すれば、凹部の内面は、透湿シートを介して間接的に外気に露出している。このため、本発明の板材が備える基板は、凹部の内面を含む一面が外気に露出していない場合よりも、外気からの吸湿及び外気への放湿に有利である。
以上の結果、凹部の内面を介した吸放湿が大幅に阻害されることはない。
【0046】
また、透湿シートが基板の一面を被覆することによって、この一面に形成してある凹部が目隠しされる。従って、透湿シートに被覆されている一面を、板材の裏面として用いても、板材の表面として用いても、格別の問題は生じない。ただし、透湿シートに被覆されている一面を、板材の表面として用いる場合には、透湿シートが彩色又は塗装等されていることが望ましい。この場合、透湿シートは化粧層を兼ねる。
仮に、透湿シートが基板の一面を被覆していない場合、この一面は、板材の裏面として用いる方が適している。何故ならば、基板に形成されている凹部が、板材の美観を損ねる虞があるからである。
【0047】
第10発明にあっては、凹部の内面を除く一面は、外気に露出していない。何故ならば、この一面に接着層が形成されているからである。一方、凹部の内面には接着層が形成されていない。このため、凹部の内面(特に木口面又は低密度面)が接着層によって覆い塞がれることはない。
化粧層は接着層を介して基板の一面に積層されているが、凹部を覆い塞いではいない。換言すれば、凹部の内面は外気に露出している。このため、本発明の板材が備える基板は、凹部の内面を含む一面が外気に露出していない場合よりも、外気からの吸湿及び外気への放湿に有利である。
以上の結果、凹部の内面を介した吸放湿が大幅に阻害されることはない。
【0048】
また、化粧層が基板の一面に積層されていることによって、この一面が化粧される。従って、化粧層が積層されている一面は、板材の表面として用いるのに好適である。
【0049】
第11発明にあっては、基板に形成されている凹部がV字状又はU字状等の溝であり、溝は複数条並設されている。
複数条の溝を複数条並設するための基板の加工は容易である。
また、溝が複数条並設されている面は意匠性が高い。
更に、溝が十分に深ければ、基板は溝の並設方向に容易に変形する。
【0050】
第12発明にあっては、凹部としての溝が基板を貫通しているが、溝が複数条並設されている一面の逆側の面(即ち他面)に可撓層が接着されているため、本発明の板材が無用に分解することはない。しかも、基板は可撓層と共に溝の並設方向に更に容易に変形する。
【0051】
また、可撓層が基板の他面を被覆することによって、他面側の凹部が目隠しされる。従って、可撓層に被覆されている他面を、板材の裏面として用いても、板材の表面として用いても、格別の問題は生じない。ただし、可撓層に被覆されている他面を、板材の表面として用いる場合には、可撓層が彩色又は塗装等されていることが望ましい。この場合、可撓層は化粧層を兼ねる。
【発明の効果】
【0052】
第1発明の板材による場合、調湿剤の付加量を増大させることができるため、板材の吸放湿性を向上させることができる。この結果、例えば調湿建材としての板材の商品性を向上させることができる。
【0053】
第2発明の板材による場合、木口面の面積が大きく、しかも調湿剤の付加量を増大させることができるため、板材の吸放湿性を更に向上させることができる。この結果、例えば調湿建材としての板材の商品性を更に向上させることができる。
【0054】
第3発明の板材による場合、基板の一面側で板材の吸放湿性を向上させることができ、基板の他面側で板材の表面平滑性を向上させることができる。この結果、板材の商品性を更に向上させることができる。
【0055】
第4発明の板材による場合、合板を用いてなる基板に反り又は捩れ等が生じ難いため、板材に無用な変形が生じることを抑制することができる。この結果、板材の商品性を更に向上させることができる。
【0056】
第5発明の板材による場合、溝を形成するための基板の加工は容易であるため、板材の吸放湿性を容易に向上させることができる。
【0057】
第6発明の板材による場合、合板を用いてなる基板の吸放湿性が向上されるため、板材の吸放湿性を更に向上させることができる。
【0058】
第7発明の板材による場合、低密度面に調湿剤が付加される分、調湿剤の付加量を増大させることができるため、板材の吸放湿性を更に向上させることができる。この結果、例えば調湿建材としての板材の商品性を更に向上させることができる。
【0059】
第8発明の板材による場合、外気から容易に吸湿し、且つ、外気へ容易に放湿し、しかも、調湿剤の付加量を大幅に増大させることができる。このため、板材の吸放湿性を更に向上させることができる。
【0060】
第9発明の板材による場合、外気から比較的容易に吸湿し、且つ、外気へ比較的容易に放湿し、しかも、基板の一面に形成されている凹部が透湿シートによって目隠しされている。このため、板材の吸放湿性を犠牲にすることなく、板材の美観を向上させることができる。この結果、板材の商品性を更に向上させることができる。しかも透湿シートの表面の外観によっては、透湿シートが化粧層を兼ねることができる。
【0061】
第10発明の板材による場合、外気から比較的容易に吸湿し、且つ、外気へ比較的容易に放湿し、しかも、基板の一面が化粧層によって化粧されている。このため、板材の吸放湿性を犠牲にすることなく、板材の美観を向上させることができる。この結果、板材の商品性を更に向上させることができる。
【0062】
第11発明の板材による場合、溝を複数条並設するための基板の加工は容易であるため、板材の吸放湿性を容易に向上させることができる。
また、溝が複数条並設されている面は意匠性が高いため、基板の美観を向上させることができる。
更に、基板が溝の並設方向に容易に変形する場合には、本発明の板材は、基板若しくは板材の搬送、又は板材の躯体への貼り付け等の際の利便性を向上させることができる。
以上の結果、板材の商品性を更に向上させることができる。
【0063】
第12発明の板材による場合、接着によって一体化されている基板と可撓層とが、溝の並設方向に容易に変形する。このため、板材の搬送又は板材の躯体への貼り付け等の際の利便性を向上させることができる。
しかも、基板の他面側の凹部が可撓層によって目隠しされている。このため、板材の美観を向上させることができる。しかも、可撓層の表面の外観によっては、可撓層が化粧層を兼ねることができる。
以上の結果、板材の商品性を更に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態1に係る板材の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る板材の構成を模式的に示す下面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る板材、溝なし板材、溝のみ板材、及び未塗布板材夫々の重量の経時変化を示す図表である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る板材、及び溝平行板材の重量の経時変化を示す図表である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る板材の構成を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る板材、下面塗布板材、及び溝なし未塗布板材夫々の重量の経時変化を示す図表である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る板材、及び溝異方向板材の重量の経時変化を示す図表である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る板材、及び溝異方向板材の重量の経時変化を示す他の図表である。
【図9】本発明の実施の形態3に係る板材の構成を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る板材、及び塗布省略板材の重量の経時変化を示す図表である。
【図11】本発明の実施の形態4に係る板材の構成を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態5に係る板材の構成を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、本発明を、その実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0066】
実施の形態 1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る板材11の構成を模式的に示す断面図である。以下では、図1中の上下方向、左右方向、及び紙面に垂直な方向を、板材11の上下方向、左右方向、及び前後方向という。
図2は、板材11の構成を模式的に示す下面図である。図2中の上下方向、左右方向、及び紙面に垂直な方向は、板材11の前後方向、左右方向、及び上下方向である。
図1に示すように、板材11は、化粧層21と、平滑層22と、4枚の単板31〜34が積層されたスギ合板を用いてなる基板3とを備えている。単板31〜34は、上からこの順に積層されている。
【0067】
化粧層21は、例えば樹脂含紙製の化粧シートを用いてなり、図示しない接着層を介して、平滑層22の上面に積層されている。
平滑層22は、例えばMDFを用いてなり、図示しない接着層を介して、基板3の上面(即ち単板31の上面)に積層されている。平滑層22の厚さは3mmである。平滑層22の少なくとも上面は、基板3の上面よりも平滑である。
ここで、化粧層21(又は平滑層22)を平滑層22(又は基板3)に接着している接着層は、酢酸ビニル樹脂エマルジョンのような水性の接着剤を用いてなる。
【0068】
ところで、基板3の上面には、往々にして、窪み、割れ、及び合板を形成する板部材同士の繋ぎ目の隙間等の無用な凹凸が存在する。このため、仮に、基板3の上面に直接的に化粧層21を接着させた場合、化粧層21の表面平滑性に基板3の凹凸が悪影響を及ぼす可能性が高い。
一方、平滑層22の上面には、無用な凹凸は存在しない。従って、本実施の形態のように、平滑層22の上面に直接的に化粧層21を接着させれば、化粧層21の表面平滑性に基板3の凹凸が悪影響を及ぼすことはない。
また、平滑層22の硬度は基板3の硬度よりも高い。
以上の結果、板材11は、平滑層22を備えていない場合よりも、美観及び硬度が向上されている。
【0069】
なお、化粧層21は、平滑層22の上面に突板を接着すること、又は平滑層22の上面を塗装すること等によって形成されていてもよい。
また、平滑層22は、MDFを用いてなる層に限定されるものではない。例えば、平滑層22は、樹脂含浸紙を用いてなる層であってもよく、水性パテ又はUV硬化型樹脂等を用いてなる目止め層であってもよい。
基板3の厚さは12mmであり、単板31〜34の夫々の厚さは3mmである。隣接する単板31〜34同士は、フェノール樹脂を用いて接着されている。
単板31〜34夫々の上面及び下面は、何れも板目面である。単板31,33夫々の繊維方向は前後方向であり、単板32,34夫々の繊維方向は左右方向(図1及び図2中白抜矢符方向)である。
【0070】
図1及び図2に示すように、基板3の下面3aには、左右方向に10mmのピッチで、複数条の溝35,35,…が前後方向に形成されている。即ち、溝35,35,…は、基板3の最も外側に位置する単板31,34の内、単板34に形成されている。各溝35は、上下方向長さ(以下、深さという)3mm、且つ左右方向長さ(以下、横幅という)3mmである。従って、溝35,35,…は、単板34のみに、左右方向1m当たり約76条形成されている。
【0071】
各溝35の内面の内、水平方向に沿う面(以下、内天面という)3bは単板33の下面(従って板目面)である。一方、鉛直方向に沿う面(以下、内側面という)3c,3cは木口面である。何故ならば、溝35の長手方向が、単板34の繊維方向に直交しているからである。このため、各内側面3cには、スギ材の仮導管の横断面が含まれている。
このような溝35,35,…は、例えば3mmの切削幅を有するカッターを備えた木工機械を用いて容易に形成することができる。
以下では、溝35の内天面3b及び内側面3c,3cをまとめて、溝35の内面3b〜3cという。
【0072】
各溝35は、本発明の実施の形態における凹部として機能する。また、基板3の下面3a(又は上面)は、本発明の実施の形態における一面(又は一面の逆側の面)として機能する。
溝35の内面3b〜3cを含む基板3の下面3aは、外気に露出している面である。そして、溝35の内面3b〜3cを含む基板3の下面3aには、吸放湿性を有する調湿剤が付加してある(図1中クロスハッチングで示した部分)。換言すれば、板材11において、調湿剤が付加してある面には、基板3そのものによる吸放湿、又は調湿剤による吸放湿を阻害するような部材は積層されていない。
【0073】
本実施の形態における調湿剤は尿素水である。板材11の製造者は、溝35の内面3b〜3cを含む基板3の下面3aに、適宜の濃度の尿素水を塗布することによって、基板3に尿素水を含浸させる。
尿素水を塗布するためには、製造者は、例えば、スポンジローラ、フローコータ(カーテンコータ)、又はスプレーガン等を用いる。なお、製造者が刷毛を用いて手動で塗布してもよい。また、製造者は、ゴムローラを用いて尿素水を塗布してもよい。ただし、ゴムローラを用いる場合には、溝35の内面3b〜3cに十分に尿素水を塗布することができない可能性があるため、ゴムローラによる塗布と共に、各溝35へ直接的に尿素水を注入してもよい。
【0074】
ここで、尿素水の濃度は、10%以上且つ40%以下であることが望ましい。何故ならば、濃度10%未満の尿素水は吸放湿性が低すぎるからである。また、濃度40%超過の尿素水は、水に溶解しきれない尿素が析出する可能性があるからである。
以上のような板材11は、吸放湿性を有する尿素水を付加してある上に、柾目面又は板目面よりも吸放湿性が高い木口面が外気に露出しているため、尿素水が付加されていない板材、又は木口面が外気に露出していない板材よりも、吸放湿性が高い。
【0075】
しかも、板材11は、同一の見付面積を有し、且つ溝が形成されていない板材に比べて、内側面3c,3c,…の分だけ、尿素水を塗布し得る総面積が広い。このため、付加される尿素水の量が多い。更に、各内側面3cは吸水性が高い(従って尿素水を吸収し易い)木口面であるため、内側面3cが柾目面又は板目面である場合よりも、尿素水の付加量が多い。
このような板材11は、例えば化粧層21側が表側、基板3側が裏側である調湿建材として用いられる。このとき、板材11は、基板3の下面3aが躯体(即ち、建造物の壁又は柱等)に対面し、基板3の下面3aと躯体との間が適長(例えば15mm)離隔した状態で、躯体に取り付けられる。何故ならば、基板3の下面3aが躯体に接触していると、板材11の吸放湿が阻害されるからである。
【0076】
ところで、基板3が湿気又は水滴等を吸収した場合、基板3に含まれているフェノール樹脂によって、基板3の上面又は下面3aが赤くなることがある。しかしながら、基板3の上面は化粧層21及び平滑層22によって目隠しされており、基板3の下面3aは躯体側に向けられているため、赤くなった基板3が使用者の目に触れて美観を損ねることはない。
ここで、溝35,35,…のピッチは、3mm以上、30mm以下であることが望ましい。何故ならば、3mm未満のピッチで溝35,35,…を形成することは困難だからである。また、30mm超過のピッチで溝35,35,…を形成すると、形成可能な溝35,35,…の条数が減少する分、吸放湿性の向上に有用な木口面の露出面積が減少するからである。
【0077】
各溝35の横幅は、0.5 mm以上、20mm以下であることが望ましい。何故ならば、0.5 mm未満の横幅を有する溝35を形成することは困難だからである。また、20mm超過の横幅を有する溝35を形成したとしても、木口面の露出面積は増大せず、そればかりか、基板3の強度を劣化させる虞があるからである。
各溝35の深さは、1mm以上であることが望ましい。何故ならば、1mm未満の深さを有する溝35を形成しても、木口面の露出面積が狭すぎるため、吸放湿性の大幅な向上が望めないからである。
また、各溝35の深さは、3mm以下であることが望ましい。換言すれば、溝35は、合板である基板3の1層のみ(具体的には単板34のみ)に形成されていることが望ましい。
【0078】
仮に、3mm超過の深さを有する溝35を形成した場合、溝35は、例えば単板33,34に亘って形成されることになる。ところが、単板33に位置する溝35の内面には、木口面が含まれていないため、木口面の露出面積は増大せず、そればかりか、溝35,35,…によって基板3の強度が劣化する虞がある。このとき、単板32〜34に亘って溝35を形成すれば、木口面の露出面積は増大するが、基板3の強度は非常に劣化する。
強度が劣化した基板3は変形し易い。特に、板材11の場合、基板3よりも変形し難い平滑層22が基板3が接着されているため、基板3の大幅な変形が、板材11の無用な変形、又は破損(例えば平滑層22と基板3との剥離)につながりかねない。
【0079】
なお、基板3は、合板に限定されず、無垢材を用いてなる構成でもよい。この場合、各溝35は、無垢材である基板3の繊維方向に直交するように形成される。すると、基板3の強度が無用に劣化しない程度に各溝35が深ければ深いほど、板材11の吸放湿性は向上する。
また、基板3は、集成材を用いてなる構成でもよい。この場合、各溝35は、その内面に木口面が含まれるようにして、少なくとも、厚み方向の最も外側に位置する木片に形成される。
更に、基板3は、LVLを用いてなる構成でもよい。この場合、各溝35は、その内面に木口面が含まれるようにして、最も外側に位置する単板に形成される。
【0080】
更にまた、基板3は、OSBを用いてなる構成でもよい。OSBには配向性があるため、木質チップが略同一方向に並置されている夫々の部分の内、最も外側に位置する部分に、その内面に木口面が含まれるようにして各溝35が形成される。
また、基板3は、PBを用いてなる構成でもよい。PBには配向性がないため、基板3の強度が無用に劣化しない程度に各溝35が深ければ深いほど、溝35の内面に含まれる木口面の面積が大きくなる。
【0081】
次に、尿素水未塗布の板材11、及び、溝35,35,…が形成されていないことを除けば板材11と同様の構成を有する尿素水未塗布の板材(以下、溝なし板材という)夫々に、濃度20%の尿素水を、塗布量を変えて塗布する第1〜第3の実験について述べる。
表1は、第1〜第3の実験夫々の結果をまとめたものである。
【0082】
【表1】

【0083】
板材11及び溝なし板材夫々は10cm×10cm角であり、両者の見付面積は等しい。しかしながら、尿素水を塗布することが可能な面積は、内側面3c,3c,…の総面積分だけ板材11の方が溝なし板材よりも広い。
第1の実験では、実験者は0.7gの尿素水を塗布した。この場合、板材11及び溝なし板材の両方に尿素水を全て塗布することができ、しかも、塗布された尿素水は短時間で吸収された(以下、塗布状況「良好」という)。
【0084】
第2の実験では、実験者は2.0gの尿素水を塗布した。この場合、板材11の塗布状況は「良好」であった。一方、溝なし板材の場合、尿素水を全て塗布することはできたが、塗布された尿素水は完全には吸収されなかった。このため、溝なし板材を傾斜させれば、吸収されなかった尿素水が溝なし板材から漏出する虞があった(以下、塗布状況「困難」という)。
第3の実験では、実験者は5.0gの尿素水を塗布した。この場合、板材11の塗布状況は「良好」であった。一方、溝なし板材の場合、尿素水を全て塗布することができず、敢えて塗布すると、尿素水が溝なし板材から漏出した(以下、塗布状況「不可能」という)。
【0085】
以上のようにして尿素水を塗布した後で、実験者は、第1の実験に係る板材11及び溝なし板材、第2の実験に係る板材11及び溝なし板材、並びに第3の実験に係る板材11夫々の吸放湿量を測定した。
このために、実験者は、各板材11及び溝なし板材を、まず、温度60℃の雰囲気下に静置し、質量が恒量に達するまで乾燥させてから、重量W0 を測定した。
次に、実験者は、各板材11及び溝なし板材に吸湿させるために、これらを温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下に4時間静置してから、重量W4 を測定した。このときの重量の増加量Wa (=W4 −W0 )は、この4時間の間に各板材11及び溝なし板材が吸収した湿気の重量(即ち、各板材11及び溝なし板材の吸湿量)である。
【0086】
更に、実験者は、各板材11及び溝なし板材に放湿させるために、これらを温度40℃、相対湿度30%の雰囲気下に2時間静置してから、重量W6 を測定した。このときの重量の減少量Wr (=W4 −W6 =Wa −{W6 −W0 })は、この2時間の間に各板材11及び溝なし板材が放出した湿気の重量(即ち、各板材11及び溝なし板材の放湿量)である。
放湿率とは、吸湿量に対する放湿量の割合(=Wr /Wa ×100 )である。
表1からわかるように、第1及び第2の実験共に、溝なし板材よりも板材11の方が、吸湿量、放湿量、及び放湿率は大きい。即ち、溝35,35,…が形成されている板材11は、吸放湿性が向上している。
【0087】
また、表1からわかるように、尿素水の塗布量が少ない板材11よりも、多い板材11の方が、吸湿量、放湿量、及び放湿率は大きい。即ち、尿素水の塗布量が多い板材11は、吸放湿性が向上している。
次に、尿素水未塗布の板材11、及び、各溝35の長手方向が、単板34の繊維方向に平行であることを除けば板材11と同様の構成を有する尿素水未塗布の板材(以下、溝平行板材という)夫々に、濃度20%の尿素水を、塗布量を変えて塗布する第4及び第5の実験について述べる。
表2は、第4及び第5の実験夫々の結果をまとめたものである。
【0088】
【表2】

【0089】
板材11及び溝平行板材夫々は10cm×10cm角であり、両者は見付面積も尿素水を塗布することが可能な面積も等しい。
第4の実験では、実験者は2.0gの尿素水を塗布した。この場合、板材11及び溝平行板材共に、塗布状況は「良好」であった。
第5の実験では、実験者は5.0gの尿素水を塗布した。この場合、板材11の塗布状況は「良好」であったが、溝平行板材の塗布状況は「不可能」であった。
ここで、表中には記載していないが、溝平行板材に4.0gの尿素水を塗布した場合、塗布状況は「困難」であった。即ち、溝平行板材においては、4.0gが尿素水の塗布量の上限値である。
【0090】
以上のようにして尿素水を塗布した後で、第4の実験に係る板材11及び溝平行板材、並びに第5の実験に係る板材11夫々の吸放湿量を、第1〜第3の実験と同様にして測定した。
表2からわかるように、第4の実験においては、溝平行板材よりも板材11の方が、吸湿量、放湿量、及び放湿率は大きい。即ち、溝35の長手方向が単板34の繊維方向に直交している板材11は、吸放湿性が向上している。
また、表2からわかるように、尿素水の塗布量が少ない板材11よりも、多い板材11の方が、吸湿量、放湿量、及び放湿率は大きい。即ち、尿素水の塗布量が多い板材11は、吸放湿性が向上している。
【0091】
次に、尿素水の塗布量が各0.7gである第1の板材11及び第1の溝なし板材、尿素水の塗布量が各2.0gである第2の板材11及び第2の溝なし板材、尿素水の塗布量が5.0gである第3の板材11、尿素水が塗布されていないことを除けば板材11と同様の構成を有する板材(以下、溝のみ板材という)、並びに尿素水が塗布されていない溝なし板材(以下、未塗布板材という)夫々の重量変化を測定する実験について述べる。
第1〜第3の板材11、第1及び第2の溝なし板材、溝のみ板材、並びに未塗布板材夫々は10cm×10cm角である。尿素水の濃度は20%である。
【0092】
まず、実験者は、各板材11、溝なし板材、溝のみ板材、及び未塗布板材(以下、各実験板材という)を、温度60℃の雰囲気下に静置し、質量が恒量に達するまで乾燥させ、次に、乾燥剤である塩化カルシウムで被覆した状態で、室温に達するまで冷却してから、重量を測定した。そして、実験者は、このときの測定結果を基準値“0”とした。
次に、実験者は、各実験板材に吸湿させるために、各実験板材を、温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下に4時間静置した。
更に、実験者は、各実験板材に放湿させるために、各実験板材を、温度40℃、相対湿度30%の雰囲気下に2時間静置した。
【0093】
次いで、実験者は、各実験板材に再び吸湿させるために、各実験板材を、温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下に1時間静置した。
更に、実験者は、各実験板材に放湿させるために、各実験板材を、温度40℃、相対湿度30%の雰囲気下に1時間静置した。
以上のような状況下で、実験者は、各実験板材の重量を1時間毎に測定した。
図3は、第1〜第3の板材11及び溝なし板材、溝のみ板材、並びに未塗布板材夫々の重量の経時変化を示す図表である。横軸は、各実験板材を、温度40℃の雰囲気下に投入した時点からの経過時間[hr]であり、縦軸は、各実験板材の重量[g ]である。ただし、各実験板材の重量は、基準値“0”からの増加量で示されている。
【0094】
図3中では、第1の板材11及び第1の溝なし板材の測定結果と最良あてはめ曲線とが黒丸印及び白丸印と実線とで示されている。また、第2の板材11及び第2の溝なし板材の測定結果と最良あてはめ曲線とが黒三角印及び白三角印と実線とで示されている。更に、第3の板材11の測定結果と最良あてはめ曲線とが黒四角印と実線とで示されている。第3の溝なし板材に相当するものは、塗布状況が「不可能」であったため、存在しない。
更にまた、図3中では、溝のみ板材の測定結果と最良あてはめ曲線とが「×」印と破線とで示され、未塗布板材の測定結果と最良あてはめ曲線とが「+」印と破線とで示されている。
【0095】
図3中、重量変化を示す曲線の傾きの緩/急は、吸放湿速度の遅/速(即ち、単位時間当たりの吸放湿量の少/多)に相当し、傾きが急激であるほど吸放湿速度は速い。そして、吸放湿速度が速いほど、吸放湿性は高い。
表3は、各実験板材の4時間経過時点の吸湿量、6時間経過時点の放湿量、及び放湿率を示したものであり、表1における吸湿量、放湿量、及び放湿率に対応する。
【0096】
【表3】

【0097】
図3及び表3からわかるように、5.0gの尿素水が塗布されている第3の板材11(図中黒四角印)の吸放湿性が最も高く、2番目に、2.0gの尿素水が塗布されている第2の板材11(図中黒三角印)の吸放湿性が高い。
次いで、0.7gの尿素水が塗布されている第1の板材11(図中黒丸印)の吸放湿性が3番目に高く、尿素水が塗布されていない溝のみ板材(図中「×」印)の吸放湿性が4番目に高い。ただし、第1の板材11と溝のみ板材とは、略同程度の高さの吸放湿性を有している。この理由は、第1の板材11に塗布されている尿素水の量が少ないため、吸放湿性に対する尿素水の寄与分が小さいからである。ここから、尿素水の塗布量が多ければ多いほど、吸放湿性が大幅に向上されることがわかる。
【0098】
更に、2.0gの尿素水が塗布されている第2の溝なし板材(図中白三角印)の吸放湿性が5番目に高く、0.7gの尿素水が塗布されている第1の溝なし板材(図中白丸印)の吸放湿性が6番目に高い。
そして、尿素水が塗布されていない未塗布板材(図中「+」印)の吸放湿性が最も低い。
次に、尿素水の塗布量が各2.0gである第4の板材11及び第4の溝平行板材、並びに、尿素水の塗布量が5.0gである第5の板材11夫々の重量変化を測定する実験について述べる。
第4の板材11、第4の溝平行板材、及び第5の板材11夫々は10cm×10cm角である。尿素水の濃度は20%である。
【0099】
まず、実験者は、各板材11及び溝平行板材を、温度60℃の雰囲気下に静置し、質量が恒量に達するまで乾燥させ、次に、乾燥剤である塩化カルシウムで被覆した状態で、室温に達するまで冷却してから、重量を測定した。そして、実験者は、このときの測定結果を基準値“0”とした。
次に、実験者は、各板材11及び溝平行板材に吸湿させるために、これらを温度40℃、相対湿度90%の雰囲気下に4時間静置した。
更に、実験者は、各板材11及び溝平行板材に放湿させるために、これらを温度40℃、相対湿度30%の雰囲気下に4時間静置した。
以上のような状況下で、実験者は、各実験板材の重量を1時間毎に測定した。
【0100】
図4は、第4及び第5の板材11、並びに第4の溝平行板材夫々の重量の経時変化を示す図表である。横軸は、各板材11及び溝平行板材を、温度40℃の雰囲気下に投入した時点からの経過時間[hr]であり、縦軸は、各板材11及び溝平行板材の重量[g ]である。ただし、各板材11及び溝平行板材の重量は、基準値“0”からの増加量で示されている。
図4中では、第4の板材11の測定結果が黒三角印で示され、第4の溝平行板材の測定結果が白菱形印で示され、第5の板材11の測定結果が黒四角印で示されている。第5の溝平行板材に相当するものは、塗布状況が「不可能」であったため、存在しない。
【0101】
図4中、重量変化を示す曲線(最良あてはめ曲線)の傾きの緩/急は、吸放湿速度の遅/速に相当し、傾きが急激であるほど吸放湿速度は速い。そして、吸放湿速度が速いほど、吸放湿性は高い。
表4は、各板材11及び溝平行板材の4時間経過時点の吸湿量、6時間経過時点の放湿量、及び放湿率を示したものであり、表2における吸湿量、放湿量、及び放湿率に対応する。
【0102】
【表4】

【0103】
図4及び表4からわかるように、吸放湿性は、5.0gの尿素水が塗布されている第5の板材11(図中黒四角印)が最も高く、次いで、2.0gの尿素水が塗布されている第4の板材11(図中黒三角印)が高く、2.0gの尿素水が塗布されている溝平行板材(図中白菱形印)の吸放湿性は最も低い。
なお、板材11に対する尿素水の塗布量を増大させるために、製造者は、水分の浸透性を向上させる浸透剤を尿素水に添加する、或いは、板材11及び/又は尿素水の温度を上昇させる等の手段を講じてから、板材11に尿素水を塗布してもよい。
【0104】
また、調湿剤は尿素水に限定されるものではないが、吸湿性があり、しかも、そのまま又は水に溶かすことによって、木材に含浸させることが可能であるものが望ましい。例えば、調湿剤は、水と相性がいい官能基(アミノ基、水酸基、又はカルボニル基等)を多く持つものである。或いは、調湿剤は、アルカリ金属の水酸化物(水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等)、水溶性高分子(例えばポリエチレングリコール)、グリコール類(グリセリン又はエチレングリコール等)、尿素誘導体、無機塩類(例えば塩化ナトリウム)、水溶性アミン類(例えばトリエタノールアミン)、アクリル酸塩(アクリル酸ソーダ又はポリアクリル酸ソーダ等)、ポリビニルアルコール類、酸ヒドラジド類、又は糖類等である。
【0105】
実施の形態 2.
図5は、本発明の実施の形態2に係る板材12の構成を模式的に示す断面図である。以下では、図5中の上下方向、左右方向、及び紙面に垂直な方向を、板材12の上下方向、左右方向、及び前後方向という。また、以下では、板材12と、実施の形態1の板材11との差異について説明する。
板材12は、4枚の単板41〜44が積層されたスギ合板を用いてなる基板4を備えている。単板41〜44は、上からこの順に積層されている。
基板4の厚さは12mmであり、単板41〜44の夫々の厚さは3mmである。隣接する単板41〜44同士は、フェノール樹脂を用いて接着されている。
【0106】
単板41〜44夫々の上面及び下面は、何れも板目面である。単板41,43夫々の繊維方向は左右方向(図中白抜矢符方向)であり、単板42,44夫々の繊維方向は前後方向である。
基板4の下面4aには、左右方向に10mmのピッチで、複数条の溝45,45,…が前後方向に形成されている。即ち、溝45,45,…は、基板4の最も外側に位置する単板41,44の内、単板44に形成されている。各溝45は、深さ5mm、且つ横幅3mmである。従って、溝45,45,…は、単板44と単板44の内側に隣接する単板43とに亘って、左右方向1m当たり約76条形成されている。
【0107】
各溝45の内面の内、単板43に位置する内天面4bと、単板44に位置する内側面4c,4cとは板目面であり、単板43に位置する内側面4d,4dは木口面である。何故ならば、溝45の長手方向が、単板44の繊維方向に平行であり、且つ、単板43の繊維方向に直交しているからである。このため、各内側面4dには、スギ材の仮導管の横断面が含まれている。
このような溝45,45,…は、実施の形態1の溝35,35,…と同様に、容易に形成することができる。
以下では、溝45の内天面4b及び内側面4c,4c,4d,4dをまとめて、溝45の内面4b〜4dという。
【0108】
各溝45は、本発明の実施の形態における凹部として機能する。また、基板4の下面4aは、本発明の実施の形態における一面として機能する。
溝45の内面4b〜4dを含む基板4の下面4aは、外気に露出している面である。そして、溝45の内面4b〜4dを含む基板4の下面4aには、調湿剤である尿素水が付加してある(図中クロスハッチングで示した部分)。換言すれば、板材12において、尿素水が付加してある面には、基板4そのものによる吸放湿、又は調湿剤による吸放湿を阻害するような部材は積層されていない。
板材12の製造者は、溝45の内面4b〜4dを含む基板4の下面4aに、適宜の濃度の尿素水を塗布することによって、基板4に尿素水を含浸させる。
【0109】
ところで、尿素水を塗布するために、例えば刷毛又はスポンジローラ等を用いたとしても、溝45の内面4b〜4dに十分に尿素水を塗布することができないかもしれない。何故ならば、実施の形態1の溝35に比べて、本実施の形態の溝45は、深さが深いからである。このような場合、製造者は、各溝45へ直接的に尿素水を注入してもよい。
以上のような板材12は、実施の形態1の板材11と同様に、吸放湿性が高い。
なお、基板4は、LVLを用いてなる構成でもよい。この場合、各溝45は、最も外側に位置する第1の単板と、第1の単板の内側に隣接する第2の単板とに亘って形成される。このとき、木口面は第2の単板に位置する。
【0110】
また、基板4は、OSBを用いてなる構成でもよい。OSBには配向性があるため、木質チップが略同一方向に並置されている夫々の部分の内、最も外側に位置する第1の部分と、第1の部分の内側に隣接する第2の部分とに亘って各溝45が形成される。このとき、木口面は第2の部分に位置する。
【0111】
次に、濃度40%の尿素水を塗布してなる板材12、並びに、各後述する下面塗布板材及び溝なし未塗布板材夫々の重量変化を測定する実験について述べる。ここで、下面塗布板材とは、溝45の内面4b〜4dを除く基板4の下面4aにのみ濃度40%の尿素水を塗布した(即ち、溝45の内面4b〜4dに尿素水を塗布していない)ことを除けば板材12と同様の構成を有する板材であり、溝なし未塗布板材とは、溝45,45,…が形成されておらず、且つ、尿素水が塗布されていないことを除けば板材12と同様の構成を有する板材である。
板材12、下面塗布板材、及び溝なし未塗布板材夫々は250 mm×250 mm角である。
【0112】
ここで、板材12には、852.0 g/m2の尿素水が塗布されているが、下面塗布板材には、83.0g/m2しか尿素水が塗布されていない。このような塗布量の差異は、板材12の方が下面塗布板材よりも、溝45の内面4b〜4dの面積分だけ尿素水が塗布されている面積が広く、しかも、内側面4d,4dが尿素水を吸収し易い木口面であることから生じる。
まず、実験者は、板材12、下面塗布板材、及び溝なし未塗布板材を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で養生させてから、重量を測定した。そして、実験者は、このときの測定結果を基準値“0”とした。
次に、実験者は、板材12、下面塗布板材、及び溝なし未塗布板材に吸湿させるために、これらを温度23℃、相対湿度75%の雰囲気下に12時間静置した。
【0113】
更に、実験者は、板材12、下面塗布板材、及び溝なし未塗布板材に放湿させるために、これらを温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に12時間静置した。
図6は、板材12、下面塗布板材、及び溝なし未塗布板材夫々の重量の経時変化を示す図表である。横軸は、板材12、下面塗布板材、及び溝なし未塗布板材を、温度23℃の雰囲気下に投入した時点からの経過時間[hr]であり、縦軸は、各実験板材の重量[g ]である。ただし、板材12、下面塗布板材、及び溝なし未塗布板材の重量は、基準値“0”からの増加量で示されている。
図6中では、板材12の重量変化を示す曲線が直線で示され、下面塗布板材の重量変化を示す曲線が破線で示され、溝なし未塗布板材の重量変化を示す曲線が二点鎖線で示されている。
【0114】
図6中、重量変化を示す曲線の傾きの緩/急は、吸放湿速度の遅/速に相当し、傾きが急激であるほど吸放湿速度は速い。そして、吸放湿速度が速いほど、吸放湿性は高い。
図6からわかるように、板材12(図中直線)の吸放湿性が最も高く、2番目に、下面塗布板材(図中破線)の吸放湿性が高く、溝なし未塗布板材(図中二点鎖線)の吸放湿性が最も低い。
【0115】
次に、尿素水未塗布の板材12、及び、単板41,43夫々の繊維方向が前後方向であり、単板42,44夫々の繊維方向が左右方向であることを除けば板材12と同様の構成を有する尿素水未塗布の板材(即ち、各溝45の長手方向が単板44の繊維方向に直交しており、且つ、単板43の繊維方向に平行である板材。以下、溝異方向板材という)夫々に、濃度40%の尿素水を、塗布量を変えて塗布する第6〜第9の実験について述べる。
表5は、第6〜第9の実験夫々の結果をまとめたものである。
【0116】
【表5】

【0117】
板材12及び溝異方向板材夫々は10cm×10cm角であり、両者は見付面積も尿素水を塗布することが可能な面積も等しい。
第6の実験では、実験者は板材12及び溝異方向板材の何れにも尿素水を塗布しなかった。以下では、これらを第6の板材12及び第6の溝異方向板材という。
第7の実験では、実験者は0.8gの尿素水を、板材12及び溝異方向板材夫々の溝45の内面4b〜4dを除く基板4の下面4aに塗布した。この場合、板材12及び溝異方向板材共に、塗布状況は「良好」であった。以下では、これらを第7の板材12及び第7の溝異方向板材という。
【0118】
第8の実験では、実験者は4.0gの尿素水を、溝異方向板材の溝45の内面4b〜4dを除く基板4の下面4aに塗布した。この場合、溝異方向板材の塗布状況は「良好」であった。以下では、これを第8の溝異方向板材という。
ここで、表中には記載していないが、4.5gの尿素水を、溝異方向板材の溝45の内面4b〜4dを除く基板4の下面4aに塗布した場合、溝異方向板材の塗布状況は「困難」であった。
【0119】
第9の実験では、実験者は8.5gの尿素水を、板材12及び溝異方向板材夫々の溝45の内面4b〜4dを含む基板4の下面4aに塗布した。この場合、板材12の塗布状況は「良好」であったが、溝異方向板材の塗布状況は「不可能」であった。以下では、尿素水が8.5g塗布されている板材12を第9の板材12という。
ここで、板材12には8.5gの尿素水を塗布することができたのに対し、溝異方向板材には8.5gの尿素水を塗布することができなかった理由について述べる。
【0120】
図5に示すように、単板44に位置する内側面4c,4cの面積は、単板43に位置する内側面4d,4dの面積より広い。また、板材12においては、狭い方の内側面4d,4dが木口面であり、溝異方向板材においては、広い方の内側面4c,4cが木口面である。このため、一見すれば、溝異方向板材の方が板材12よりも大量の尿素水を塗布され得るかのように思える。
【0121】
しかしながら、尿素水は液状であるため、尿素水を塗布する際には、基板4は下面4aを上側に向けて載置される。すると、溝45に塗布された尿素水の多くは、重力に従って内天面4b上に一時的に貯留される。従って、尿素水は、内側面4c,4cに接触して含浸される可能性よりも、内側面4d,4dに接触して含浸される可能性の方が高い。つまり、尿素水の塗布量を増大させるためには、吸水し易い内側面4d,4dを有している方が、吸水し易い内側面4c,4cを有しているよりも有利である。この結果、板材12に対する尿素水の塗布可能量の方が、溝異方向板材に対する尿素水の塗布可能量よりも多くなる。
【0122】
以上のようにして尿素水を塗布した後で、第6の実験に係る板材12及び溝異方向板材、第7の実験に係る板材12及び溝異方向板材、第8の実験に係る溝異方向板材、並びに第9の実験に係る板材12夫々の重量変化を、実施の形態1における第4の板材11、第4の溝平行板材、及び第5の板材11夫々の重量変化を測定した実験と同様にして測定した。
【0123】
図7は、第6、第7及び第9の板材12、並びに第6〜第8の溝異方向板材夫々の重量の経時変化を示す図表であり、実施の形態1の図4に対応する。横軸は、各板材12及び溝異方向板材を、温度40℃の雰囲気下に投入した時点からの経過時間[hr]であり、縦軸は、各板材12及び溝異方向板材の重量[g ]である。ただし、各板材12及び溝異方向板材の重量は、基準値“0”からの増加量で示されている。
【0124】
図7中では、第6の板材12の測定結果が黒丸印で示され、第6の溝異方向板材の測定結果が白丸印で示され、第7の板材12の測定結果が黒三角印で示され、第7の溝異方向板材の測定結果が白三角印で示されている。また、第8の溝異方向板材の測定結果が白菱形印で示され、第9の板材12の測定結果が黒四角印で示されている。第9の溝異方向板材に相当するものは、塗布状況が「不可能」であったため、存在しない。
表5には、各板材12及び溝異方向板材の4時間経過時点の吸湿量、8時間経過時点の放湿量、及び放湿率(この場合、4時間経過時点の吸湿量に対する8時間経過時点の放湿量の割合)が示してある。
【0125】
図7及び表5からわかるように、吸放湿性は、8.5gの尿素水が塗布されている第9の板材12(図中黒四角印)が最も高く、次いで、4.0gの尿素水が塗布されている第8の溝異方向板材(図中白菱形印)の吸放湿性が高く、更に、0.8gの尿素水が塗布されている第7の板材12(図中黒三角印)が高い。更にまた、吸放湿性は、尿素水が塗布されていない第6の板材12(図中黒丸印)、0.8gの尿素水が塗布されている第7の溝異方向板材(図中白三角印)、及び尿素水が塗布されていない第6の溝異方向板材(図中白丸印)の順に低くなっていく。
【0126】
ここで、吸湿量及び放湿量は、第6の板材12の方が第7の溝異方向板材よりも大きいが、第6の板材12の放湿率は、第7の溝異方向板材の放湿率より小さい。この理由は、実験誤差が生じたからか、又は、吸湿量が多い分、基板4に吸収された湿気が基板4の内部へ浸透しており、放湿され難くなることがあるからだと思われる。
【0127】
第6及び第7の実験からわかるように、木口面の面積が狭い板材12の方が、木口面の面積が広い溝異方向板材よりも吸放湿性が高い。この理由は、板材12の場合、木口面である内側面4d,4dから吸収された湿気は、単板43のみならず単板42,44へも容易に拡散するが、溝異方向板材の場合、木口面である内側面4c,4cから吸収された湿気は、単板43,44へ拡散することしかできないからである。換言すれば、板材12の吸湿可能量が、溝異方向板材の吸湿可能量よりも多いからである。
以上の結果、溝45の内面4b〜4dを含む基板4の下面4aに同量の尿素水が塗布されているならば、板材12の吸放湿性は、溝異方向板材の吸放湿性よりも向上することが推測される。
【0128】
このことを確認すべく、実験者は、尿素水の塗布量が各4.0gである第10の板材12及び第10の溝異方向板材、並びに尿素水の塗布量が8.0gである第11の板材12夫々の重量変化を、第6、第7及び第9の板材12並びに第6〜第8の溝異方向板材夫々の重量変化を測定した実験と同様にして測定する実験を行なった。
このために、実験者は各板材12及び溝異方向板材夫々の溝45の内面4b〜4dを含む基板4の下面4aに尿素水を塗布した。この場合、第10及び第11の板材12夫々の塗布状況は「良好」であったが、第10の溝異方向板材の塗布状況は「困難」であった。
【0129】
図8は、第10及び第11の板材12、並びに第10の溝異方向板材夫々の重量の経時変化を示す図表であり、図7に対応する。横軸は、各板材12及び溝異方向板材を、温度40℃の雰囲気下に投入した時点からの経過時間[hr]であり、縦軸は、各板材12及び溝異方向板材の重量[g ]である。ただし、各板材12及び溝異方向板材の重量は、基準値“0”からの増加量で示されている。
図8中では、第10の板材12の測定結果が黒丸印で示され、第10の溝異方向板材の測定結果が白丸印で示され、第11の板材12の測定結果が黒三角印で示されている。第11の溝異方向板材に相当するものは、塗布状況が「不可能」であるため、存在しない。
【0130】
表6は、各板材12及び溝異方向板材夫々の4時間経過時点の吸湿量、8時間経過時点の放湿量、及び放湿率を示したものであり、表5における吸湿量、放湿量、及び放湿率に対応する。
【0131】
【表6】

【0132】
図8及び表6からわかるように、吸放湿性は、8.0gの尿素水が塗布されている第11の板材12(図中黒三角印)が最も高く、次いで、4.0gの尿素水が塗布されている第10の板材12(図中黒丸印)が高く、4.0gの尿素水が塗布されている第10の溝異方向板材(図中白丸印)の吸放湿性が最も低い。
ここで、吸湿量及び放湿量は、第10の溝異方向板材、第10の板材12、及び第11の板材12の順に大きくなるが、第10及び第11の板材12夫々の放湿率は等しく、第10及び第11の板材12夫々の放湿率よりも第10の溝異方向板材の放湿率の方が大きい。この理由は、実験誤差が生じたからか、又は、吸湿量が多い分、基板4に吸収された湿気が基板4の内部へ浸透しており、放湿され難くなることがあるからだと思われる。
【0133】
以上の結果、同量の尿素水が塗布されているならば、板材12の吸放湿性は、溝異方向板材の吸放湿性よりも向上することが裏付けられた。
ところで、4.0gの尿素水が塗布されている第8の溝異方向板材の塗布状況は「良好」であり、4.0gの尿素水が塗布されている第10の溝異方向板材の塗布状況は「困難」である。また、8.0gの尿素水が塗布されている第11の板材12の吸湿量及び放湿量は、8.5gの尿素水が塗布されている第9の板材12の吸湿量及び放湿量よりも大きい。この理由は、実験誤差が生じたからか、又は、各板材12及び溝異方向板材夫々を構成している基板5そのものの性質(具体的には吸水性及び吸放湿性)にバラつきがあるからだと思われる。
【0134】
実施の形態 3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る板材13の構成を模式的に示す断面図である。以下では、図9中の上下方向、左右方向、及び紙面に垂直な方向を、板材13の上下方向、左右方向、及び前後方向という。また、以下では、板材13と、実施の形態1,2の板材11,12との差異について説明する。
板材13は、透湿シート23と、接着層24と、4枚の単板51〜54が積層されたスギ合板を用いてなる基板5とを備えている。単板51〜54は、上からこの順に積層されている。
【0135】
透湿シート23は、和紙又はコピー用紙等の湿気を透過する紙を用いてなり、接着層24を介して、基板5の上面5aに積層されている。なお、透湿シート23は、透湿性を有していれば、紙に限定されず、多孔質体、織布、又は不織布等でもよい。
接着層24は、酢酸ビニル樹脂エマルジョンのような水性の接着剤を用いてなり、後述する溝55の内面5b〜5dを除く基板5の上面5aに形成されている。このような接着層24は、透湿性を有していない。
製造者は、水性の接着剤を溝55の内面5b〜5dを除く基板5の上面5aに塗布してから基板5の上面5aに透湿シート23を載置することによって、透湿シート23で上面5aを被覆する。
【0136】
なお、接着層24を形成すべき接着剤は、透湿シート23を基板5に接着させることができるものであれば、酢酸ビニル樹脂エマルジョンに限定されるものではない。
基板5の厚さは12mmであり、単板51〜54の夫々の厚さは3mmである。隣接する単板51〜54同士は、フェノール樹脂を用いて接着されている。
単板51〜54夫々の上面及び下面は、何れも板目面である。単板51,53夫々の繊維方向は前後方向であり、単板52,54夫々の繊維方向は左右方向(図中白抜矢符方向)である。
【0137】
基板5の上面5aには、左右方向に10mmのピッチで、複数条の溝55,55,…が前後方向に形成されている。即ち、溝55,55,…は、基板5の最も外側に位置する単板51,54の内、単板51に形成されている。各溝55は、深さ5mm、且つ横幅3mmである。従って、溝55,55,…は、単板51と単板51の内側に隣接する単板52とに亘って、左右方向1m当たり約76条形成されている。
【0138】
各溝55の内面の内、単板52に位置する内底面5bと、単板51に位置する内側面5c,5cとは板目面であり、単板52に位置する内側面5d,5dは木口面である。何故ならば、溝55の長手方向が、単板51の繊維方向に平行であり、且つ、単板52の繊維方向に直交しているからである。このため、各内側面5dには、スギ材の仮導管の横断面が含まれている。
このような溝55,55,…は、実施の形態1の溝35,35,…又は実施の形態2の溝45,45,…と同様に、容易に形成することができる。
以下では、溝55の内底面5b及び内側面5c,5c,5d,5dをまとめて、溝55の内面5b〜5dという。
【0139】
各溝55は、本発明の実施の形態における凹部として機能する。また、基板5の上面5aは、本発明の実施の形態における一面として機能する。
溝55の内面5b〜5dを除く基板5の上面5aには、調湿剤は付加されていない。何故ならば、ここは接着層24によって外気が遮蔽されているため、ここから吸放湿されることはないからである。
一方、溝55の内面5b〜5dには、調湿剤である尿素水が付加してある(図中クロスハッチングで示した部分)。このために、板材13の製造者は、溝55に適宜の濃度の尿素水を注入することによって、基板5に尿素水を含浸させる。
【0140】
溝55の内面5b〜5dと透湿シート23との間には空隙が存在する。また、透湿シート23は湿気を透過する。つまり、板材13において、尿素水が付加してある面には、基板5そのものによる吸放湿、又は調湿剤による吸放湿を阻害するような部材は積層されていない。
このため、外気に含まれる湿気は、透湿シート23を透過して空隙へ移動してから板材13に吸収され、板材13から空隙へ放出された湿気は、透湿シート23を透過して外気へ移動する。つまり、溝55の内面5b〜5dは、いわば透湿シート23を介して間接的に外気に露出している。
【0141】
以上のような板材13は、吸放湿性の向上に最も寄与する木口面(即ち内側面5d,5d)が外気に露出しており、しかも、ここには尿素水が付加されている。このため、板材13の吸放湿性は高い。
一方、溝55の内面5b〜5dを除く基板5の上面5aは、吸放湿性の向上における寄与度が低い板目面であるため、ここが外気に露出しておらず、また、ここに尿素水が付加されていなくても、板材13の吸放湿性を大幅に損なうことはない。
【0142】
このような板材13は、例えば透湿シート23側が表側、基板5側が裏側である調湿建材として用いられる。この場合、板材13は、基板5の下面が躯体に対面した状態で、躯体に取り付けられる。このとき、基板5の下面と躯体との間に空隙を設ける必要はない。また、この場合には、透湿シート23が化粧層を兼ねることができる。このためには、少なくとも透湿シート23の上面が化粧されていることが望ましい。具体例としては、表面の美粧性が高い(例えば美しい模様が印刷されている)紙を透湿シート23として用いればよい。
また、板材13は、基板5の下面側に図示しない化粧層を積層してから、化粧層側が表側、透湿シート23側が裏側である調湿建材として用いられる。このとき、透湿シート23と躯体との間に空隙を設ける必要がある。
【0143】
いずれにせよ、基板5に形成されている溝55,55,…は、透湿シート23によって目隠しされているため、溝55,55,…が使用者の目に触れて美観を損ねることはない。
更に、透湿シート23は、基板5の反り又は捩れ等、延いては板材13の無用な変形を抑制することができる。
なお、基板5は、無垢材、集成材、LVL、OSB、MDF、又はPBを用いてなる構成でもよい。
【0144】
ところで、実施の形態1,2の板材11,12に、基板3,4の下面3a,4aを被覆する透湿シートを追加すれば、板材11,12の吸放湿性を大幅に阻害することなく、板材11,12の美観を向上させ、しかも、板材11,12の無用な変形を抑制することができる。
なお、板材は、基板の両面に溝を形成し、溝の内面に尿素水を付加し、且つ、基板の両面を透湿シートで被覆したものであってもよい。このような板材は、両面をリバーシブルに用いることができる。
【0145】
また、板材は、基板の両面に溝を形成し、一面に形成されている溝の内面に尿素水を付加し、且つ、この一面を一面を透湿シートで被覆し、更に、溝の内面を含む他面に尿素水を付加したものであってもよい。このような板材は、一面側で吸放湿性及び美観を向上させつつ、他面側で板材の吸放湿性を大幅に向上させることができる。
【0146】
次に、尿素水の塗布量が8.0gである板材13、尿素水未塗布の板材13(以下、塗布省略板材という)、溝55,55,…が形成されていないことを除けば塗布省略板材と同様の構成を有する板材(以下、溝省略板材という)、及び、透湿シート23を備えていないことを除けば溝省略板材と同様の構成を有する板材(以下、基板のみ板材という)夫々の重量変化を、実施の形態1における第4の板材11、第4の溝平行板材、及び第5の板材11夫々の重量変化を測定した実験と同様にして測定した。ただし、質量が恒量に達するまで夫々を乾燥させたときの温度は、60℃ではなく105 ℃である。
【0147】
板材13、塗布省略板材、溝省略板材、及び基板のみ板材夫々は10cm×10cm角である。尿素水の濃度は40%である。また、透湿シート23は坪量30g/m2の薄紙を用いてなる。
表7は、板材13、塗布省略板材、溝省略板材、及び基板のみ板材夫々の4時間経過時点の吸湿量、8時間経過時点の放湿量、及び放湿率を示したものであり、実施の形態2の表5における吸湿量、放湿量、及び放湿率に対応する。
【0148】
【表7】

【0149】
図10は、板材13、及び塗布省略板材の重量の経時変化を示す図表であり、実施の形態1の図4に対応する。横軸は、板材13及び塗布省略板材夫々を、温度40℃の雰囲気下に投入した時点からの経過時間[hr]であり、縦軸は、板材13及び塗布省略板材夫々の重量[g ]である。ただし、板材13及び塗布省略板材夫々の重量は、基準値“0”からの増加量で示されている。
図10中では、板材13の測定結果が黒三角印で示され、塗布省略板材の測定結果が黒四角印で示されている。
【0150】
表7からわかるように、溝省略板材の吸放湿性は、基板のみ板材の吸放湿性より低い。何故ならば、透湿シート23を備えている溝省略板材は、基板5の上面5aが、接着層24に覆われているため外気に露出していないが、透湿シート23を備えていない基板のみ板材は、基板5の上面5aが、外気に直接的に露出しているからである。即ち、溝省略板材においては、接着層24が吸放湿を阻害するからである。
【0151】
一方、表7からわかるように、板材13及び塗布省略板材夫々の吸放湿性は、基板のみ板材の吸放湿性より高い。何故ならば、板材13及び塗布省略板材夫々は、溝55の内面5b〜5dが透湿シート23を介して間接的に外気に露出しているからである。
ここで、吸湿量及び放湿量は、塗布省略板材の方が基板のみ板材よりも大きいが、塗布省略板材の放湿率は、基板のみ板材の放湿率より小さい。この理由は、実験誤差が生じたからか、又は、吸湿量が多い分、基板5に吸収された湿気が基板5の内部へ浸透しており、放湿され難くなることがあるからだと思われる。
【0152】
また、図10及び表7からわかるように、板材13の吸放湿性は、塗布省略板材の吸放湿性よりも高い。何故ならば、板材13は、溝55の内面5b〜5dに尿素水が塗布されているからである。
【0153】
実施の形態 4.
図11は、本発明の実施の形態4に係る板材14の構成を模式的に示す断面図である。以下では、図11中の上下方向、左右方向、及び紙面に垂直な方向を、板材14の上下方向、左右方向、及び前後方向という。また、以下では、板材14と、実施の形態1〜3の板材11〜13との差異について説明し、その他、実施の形態1〜3に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
図11に示すように、板材14は、化粧層25と、接着層24と、木質成形板を用いてなる基板6と、可撓層26とを備えている。
【0154】
後述する各溝61は、本発明の実施の形態における凹部として機能する。また、基板6の上面6a(又は下面)は、本発明の実施の形態における一面(又は一面の逆側の面)として機能する。
接着層24は、各溝61の内面を除く基板6の上面6aに形成されている。
化粧層25は、接着層24を介して、各溝61の内面を除く基板6の上面6aに積層されている。この化粧層25は、例えばコート紙を用いてなり、上面の美粧性が高い(例えば美しく彩色されている)。また、化粧層25は、各溝61の内面を除く基板6の上面6aを化粧する。
基板6は、具体的には厚さ3mmのMDFを用いてなる。
【0155】
基板6の密度は厚み方向に不均一であり、具体的には、表面側の密度が高く、厚み方向中央側の密度が低い。基板6の場合、上面側部分6b及び下面側部分6dの密度が高く、中央側部分6cの密度が低い。つまり、上面側部分6b及び下面側部分6dは夫々高密度部分であり、中央側部分6cは低密度部分である。従って、中央側部分6cの吸水性及び吸湿性は、上面側部分6b及び下面側部分6dの吸水性及び吸湿性よりも高い。
基板6の上面6aには、左右方向に20mmのピッチで、複数条の溝61,61,…が前後方向に形成されている。各溝61はU字状になしてあり、深さ3mm、且つ横幅3mmである。従って、各溝61は基板6を貫通している。
【0156】
このような溝61,61,…は、例えば3mmの切削幅を有するカッターを備えた木工機械を用いて容易に形成することができる。
溝61の内面には、高密度部分である上面側部分6b及び下面側部分6d夫々が露出している高密度面と、低密度部分である中央側部分6cが露出している低密度面とが含まれている。溝61は基板を貫通しているため、溝61の内面に含まれている低密度面の面積は、基板を貫通していない溝の内面に含まれている低密度面の面積以上である。そして、溝61の内面には、調湿剤である尿素水が付加してある(図中クロスハッチングで示した部分)。
溝61の内面は、外気に露出している。
【0157】
一方、溝61の内面を除く基板6の上面6aには、調湿剤は付加されていない。何故ならば、ここは接着層24によって外気が遮蔽されているため、ここから吸放湿されることはないからである。
つまり、板材14において、尿素水が付加してある面には、基板6そのものによる吸放湿、又は調湿剤による吸放湿を阻害するような部材は積層されていない。
このように、板材14は、吸放湿性の向上に最も寄与する低密度面が外気に露出しており、しかも、ここには尿素水が付加されている。このため、板材14の吸放湿性は高い。
【0158】
一方、溝61の内面を除く基板6の上面6aは、吸放湿性の向上における寄与度が低い高密度面であるため、ここが外気に露出しておらず、また、ここに尿素水が付加されていなくても、板材14の吸放湿性を大幅に損なうことはない。
可撓層26は、例えば和紙を用いてなり、図示しない接着層を介して、基板6の下面に積層されている。
【0159】
板材14の製造者は、まず、基板6となすべき木質成形板の一面に、硬化後に接着層24となる接着剤を塗布してから、化粧層25となすべきコート紙を積層する。また、木質成形板の他面に、接着剤を塗布してから、和紙を接着して可撓層26となす 。次いで、製造者は、コート紙が積層されている面に溝61,61,…を形成すべく、コート紙、接着剤、及び木質成形板を、U字溝状に切削する。このとき、可撓層26である和紙は切削しない。更に、製造者は、溝61に適宜の濃度の尿素水を注入することによって、基板6に尿素水を含浸させる。以上の結果、板材14が得られる。
【0160】
板材14は、複数条の溝61,61,…が化粧層25、接着層24、及び基板6を貫通して左右方向に並設され、しかも、基板6の下面に可撓層26が接着されているため、溝61,61,…の並設方向に非常に容易に変形する。このため、例えば板材14をロール状に巻いた状態で板材14の搬送又は保管等を行なうことができる。
【0161】
このような板材14は、化粧層25側が表側、可撓層26側が裏側である調湿建材として用いられる。この場合、板材14は、可撓層26の下面が躯体に対面した状態で、躯体に取り付けられる。このとき、可撓層26の下面と躯体との間に空隙を設ける必要はない。また、躯体の板材14を取り付けるべき面が湾曲していても、板材14を溝61,61,…の並設方向に変形させることによって、板材14と躯体との間に無用な空隙が生じる不都合を抑制することができる。
このように用いられている板材14の表側は、化粧層25によって化粧され、更に、溝61,61,…によって意匠性が向上されている。従って、板材14の美観が向上されている。
【0162】
化粧層25、接着層24、及び基板6は、溝61,61,…によって分割されているが、互いに分割されている各部分を可撓層26が連結しているため、これらが無用に分解する虞はない。
なお、基板6は、MDF以外の木質繊維板(インシュレーションボード又はハードボード等)を用いてなる構成でもよい。このような木質成形板は、木質繊維と接着剤とを混合して熱圧成形してなる。また、基板6は、例えばPBを用いてなる構成でもよい。このような木質成形板は、木質チップと接着剤とを混合して熱圧成形してなる。
【0163】
ここで、PBを用いてなる基板6と、実施の形態1で説明した、PBを用いてなる基板3とを比較する。この基板3を構成する木質チップのサイズは、十分な面積の木口面が得られるような大きいサイズであることが望ましい。一方、基板6を構成する木質チップのサイズは、中央側部分6cの吸水性及び吸湿性が十分に高いならば、特に制限はない。
更に、基板6は、無垢材、集成材、合板、LVL、又はOSBを用いてなる構成でもよい。この場合、溝61の内面に木口面が含まれていればよい。
更にまた、可撓層26が透湿性を有していてもよい。この場合、可撓層26の下面と躯体との間に空隙を設ける必要がある。
【0164】
また、溝61の断面形状はU字状に限定されるものではなく、例えばV字状又はコ字状等でもよい。
更に、可撓層26の下面の美粧性が高い場合には、可撓層26が化粧層を兼ねることができる。この場合、板材14は、化粧層25側及び可撓層26側の何れを表側にしてもよいリバーシブルな調湿建材として用いることができる。ただし、化粧層25側を裏側として用いる場合には、板材14と躯体との間に空隙を設ける必要がある。
化粧層を兼ねた可撓層26側を常に表側にする場合には、板材14は、接着層24及び化粧層25を備えている必要はない。また、この場合には、溝61の内面を含む基板6の下面6aに調湿剤が付加してあってもよい。
【0165】
本実施の形態の板材14には化粧層25及び可撓層26が備えられているが、板材14は、化粧層25に替えて、実施の形態3の透湿シート23が基板6に積層されている構成でもよい。この場合、板材14は可撓層26を備えている必要はない。
次に、尿素水未塗布の板材14に、濃度40%の尿素水を、塗布量を変えて塗布する第10〜第12の実験について述べる。
表8は、第10〜第12の実験夫々の結果をまとめたものである。
【0166】
【表8】

【0167】
第10の実験では、実験者は尿素水を塗布しなかった(換言すれば、尿素水の塗布量は0.0gである)。
第11の実験では、実験者は25cm×25cm(即ち625cm2)当たり5.6gの尿素水を塗布した。
第12の実験では、実験者は25cm×25cm当たり7.7gの尿素水を塗布した。
第11及び第12の実験では、板材14の塗布状況は「良好」であった。
以上のようにして尿素水を塗布した後で、実験者は、第10〜第12の実験に係る板材14夫々の吸放湿量を測定した。
【0168】
このために、実験者は、各板材14を、まず、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下に静置し、質量が恒量に達するまで乾燥させてから、重量W0 を測定した。
次に、実験者は、各板材14に吸湿させるために、これらを温度23℃、相対湿度90%の雰囲気下に24時間静置してから、重量W24を測定した。そして、実験者は、重量W24から重量W0 を減算することによって、各板材14の吸湿量を求めた。
更に、実験者は、各板材14に放湿させるために、これらを温度23℃、相対湿度45%の雰囲気下に24時間静置してから、重量W48を測定した。そして、実験者は、重量W24から重量W48を減算することによって、各板材14の放湿量を求めた。
【0169】
更に、実験者は、求めた放湿量の吸湿量に対する百分率を演算することによって、放湿率を求めた。
表8からわかるように、第10、第11、及び第12の実験夫々の板材14は、この順に吸湿量と放湿量と放湿率とが大きい。即ち、板材14は、尿素水の塗布量が多くなるほど吸放湿性が向上している。
【0170】
実施の形態 5.
図12は、本発明の実施の形態5に係る板材15の構成を模式的に示す断面図である。以下では、図12中の上下方向、左右方向、及び紙面に垂直な方向を、板材15の上下方向、左右方向、及び前後方向という。また、以下では、板材15と、実施の形態1〜4の板材11〜14との差異について説明し、その他、実施の形態1〜4に対応する部分には同一符号を付してそれらの説明を省略する。
図12に示すように、板材15は、化粧層25と、接着層24と、木質成形板を用いてなる基板7とを備えている。
【0171】
後述する各溝71は、本発明の実施の形態における凹部として機能する。また、基板7の上面7aは、本発明の実施の形態における一面として機能する。
接着層24は、各溝71の内面を除く基板7の上面7aに形成されている。
化粧層25は、各溝71の内面を除く基板7の上面7aを化粧すべく、接着層24を介して、各溝71の内面を除く基板7の上面7aに積層されている。
基板7は、具体的には厚さ3mmのMDFを用いてなる。
また、基板7は、密度が高く吸水性及び吸湿性が低い上面側部分7b及び下面側部分7dと、密度が低く吸水性及び吸湿性が低い中央側部分7cとを有する。
【0172】
基板7の上面7aには、実施の形態4の溝61,61,…と同様の溝71,71,…が形成されている。ただし、実施の形態4の溝61とは異なり、溝71は基板7を貫通していない。このため、基板7は容易に変形しない。また、図中の各溝71はV字状になしてあるが、U字状又はコ字状等になしてあってもよい。
【0173】
各溝71が基板7を貫通していない場合でも、溝71の内面に低密度面を含む必要がある。しかしながら、基板7の種類又は製造条件等によって、上面側部分7b(又は下面側部分7d)の厚みは異なる。とはいえ、溝71の深さを、少なくとも基板7の厚みの10%程度に設定すれば、溝71の内面に低密度面が含まれることが経験的にわかっている。具体的には、厚さ2.7 mmのMDFを用いてなる基板7の場合、溝71の深さが0.3mm以上、好ましくは0.5 mm以上であればよい。
【0174】
このような板材15は、溝71,71,…の並設方向に容易に変形しない点を除けば、実施の形態4の板材14と同様に用いることができる。
なお、板材15は、基板7の下面に、複数条の溝が左右方向又は前後方向に並設され、各溝の内面に調湿剤が付加されている構成でもよい。更に、複数条の溝が並設されている基板7の下面は、透湿シートで被覆してあってもよい。
また、基板7の上面7aを裏面側に、下面側を表面側にして用いる場合には、板材15は、接着層24及び化粧層25を備えている必要はない。この場合、板材15は、基板7の下面に化粧層が積層してあることが望ましい。また、接着層24及び化粧層25を備えていない場合には、溝71の内面を含む基板7の上面7a全体に調湿剤が付加してあってもよい。
【0175】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
また、本発明の効果がある限りにおいて、板材11〜15に、実施の形態1〜5に開示されていない構成要素が含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0176】
11,12,13,14,15 板材
22 平滑層
23 透湿シート
24 接着層
25 化粧層
26 可撓層
3,4,5 基板(合板)
34 単板(最も外側に位置する単板)
35,45,55 溝(凹部)
3a,4a 下面(一面)
43,52 単板(第2の単板)
44,51 単板(第1の単板)
5a,6a,7a 上面(一面)
6,7 基板(木質成形板)
61,71 溝(凹部)
6b,7b 上面側部分(高密度部分)
6c,7c 中央側部分(低密度部分)
6d,7d 下面側部分(高密度部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を用いてなる基板を備える板材において、
前記基板の少なくとも一面に凹部が形成されており、
少なくとも前記凹部の内面に、吸放湿性を有する調湿剤が付加してあることを特徴とする板材。
【請求項2】
前記基板は、無垢材、集成材、合板、LVL(Laminated Veneer Lumber )、OSB(Oriented Strand Board )、又はPB(Particle Board)を用いてなり、
前記凹部の内面には木口面が含まれており、
少なくとも該木口面に、前記調湿剤が付加してあることを特徴とする請求項1に記載の板材。
【請求項3】
前記一面の逆側の面に、平滑層を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の板材。
【請求項4】
前記基板は、複数枚の単板が積層された合板を用いてなり、
前記凹部は、最も外側に位置する単板に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の板材。
【請求項5】
前記凹部は、その長手方向が前記単板の繊維方向に交差している溝であることを特徴とする請求項4に記載の板材。
【請求項6】
前記基板は、3枚以上の単板が積層された合板を用いてなり、
前記凹部は、最も外側に位置する第1の単板と、該第1の単板の内側に隣接する第2の単板とに亘って形成されている溝であり、
該溝の長手方向は、前記第1の単板の繊維方向に沿っており、前記第2の単板の繊維方向に交差していることを特徴とする請求項2又は3に記載の板材。
【請求項7】
前記基板は、木質繊維又は木質チップと接着剤とを混合して熱圧成形してなり、表面側の密度が厚み方向中央側の密度よりも高い木質成形板を用いてなり、
前記凹部の内面には、前記木質成形板の厚み方向中央側の低密度部分が露出している低密度面が含まれており、
少なくとも該低密度面に、前記調湿剤が付加してあることを特徴とする請求項1に記載の板材。
【請求項8】
前記凹部の内面を含む前記一面は、外気に露出している面であり、
前記調湿剤は、前記凹部の内面を含む前記一面に付加されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の板材。
【請求項9】
前記凹部の内面を除く前記一面に形成されている接着層と、
該接着層を介して前記基板に接着してあり、前記一面を被覆する透湿シートと
を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の板材。
【請求項10】
前記凹部の内面を除く前記一面に形成されている接着層と、
該接着層を介して前記基板に接着してあり、前記凹部を除く前記一面を化粧する化粧層と
を備えることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の板材。
【請求項11】
前記凹部は、複数条並設されている溝であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の板材。
【請求項12】
可撓性を有し、前記一面の逆側の面を被覆する可撓層が、前記一面の逆側の面に接着されており、
前記凹部は、前記基板を貫通していることを特徴とする請求項11に記載の板材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate