説明

板状チーズ積層体及びその製造方法

【課題】板状チーズ積層体として一体化されているが、消費時に各板状チーズを容易に1枚ずつ分離でき、かつ効率的に製造できる板状チーズ積層体を提供する。
【解決手段】複数枚の板状チーズ110が積層された板状チーズ積層体100において、積層方向に貫通する貫通孔20、及び積層方向に略直交する第一の端面112から第二の端面114にかけて伸びる凹条120の双方又はいずれか一方が形成されていることよりなる。前記板状チーズ110は平面視矩形であり、2つ以上の貫通孔20が形成され、貫通孔20は、第一の対角線Q1を含む領域で、交点P1の両側に形成されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状チーズ積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、板状チーズは、板状チーズを積層して厚板状の積層体(板状チーズ積層体)として市場に流通されており、消費者は、板状チーズ積層体から1枚ずつ剥離した板状チーズを調理又は喫食に供している。板状チーズは、調理時あるいは喫食時等の消費時に室温下に置かれることが多い。このような条件下においては、板状チーズ積層体から板状チーズを1枚ずつ剥離しにくいことがある。
そこで、板状チーズ積層体から板状チーズを容易に剥離するため、1枚ずつ交互に2mm程度の幅でずらして積層したものや、1枚ずつフィルムで包装して積層したものが知られている。また、複数の板状チーズを調製し、調製した板状チーズの全面を燻煙処理し、これを積層した板状チーズ積層体が知られている。
【0003】
上述した板状チーズ積層体は、消費者が逐一チーズを切断する必要がないため、極めて利便性が高いものであるものの、消費時には以下のような問題点があった。
(1)1枚ずつ交互にずらして積層することにより、ずらさない場合に比較して板状チーズを剥離するのは多少容易になるものの、消費時の温度が20℃を超えると、板状チーズがその周縁部を含めて軟らかくなり、周縁部を把持して剥離することが困難になる。
(2)1枚ずつフィルムで包装する場合は、製造工程が煩雑になることに加えて、消費時の温度が20℃を超えると、板状チーズが軟らかくなり、フィルムに結着してしまい剥離することが困難となる。
(3)全面が燻煙処理されている板状チーズは、剥離性には問題はないものの、各々の板状チーズの内奥まで燻煙が染み渡り、強い独特の風味を有し、チーズ全体の食感も硬くなる。加えて、この板状チーズ積層体は、板状チーズを1枚ずつ燻煙処理するため、燻煙処理が律速になり、大量生産が困難である。
【0004】
こうした問題に対し、複数枚の板状チーズが積層された板状チーズ積層体であって、各板状チーズの少なくとも一方の面が周縁部にのみ燻煙処理された燻し部を有する板状チーズ積層体が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の発明によれば、消費時に板状チーズを容易に1枚ずつ剥離でき、かつ通常のチーズとほぼ同等の風味と食感を維持した板状チーズを得られる。加えて、特許文献1の発明によれば、効率的に板状チーズ積層体を製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−044972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術のように、燻煙処理を必須とすると燻煙処理により着色した部分が形成され、用途によっては着色部分の存在が不都合な場合がある。加えて、特許文献1の技術では、燻煙処理を施す設備が必要である。さらに、より効率的に製造できる板状チーズ積層体が求められている。
そこで、板状チーズ積層体として一体化されているが、消費時に各板状チーズを容易に1枚ずつ分離でき、かつ効率的に製造できる板状チーズ積層体及びその製造方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の板状チーズ積層体は、複数枚の板状チーズが積層された板状チーズ積層体において、積層方向に貫通する貫通孔、及び積層方向に略直交する一方の端面から他方の端面にかけて伸びる凹条の双方又はいずれか一方が形成されていることを特徴とする。
前記板状チーズは平面視矩形であり、2つ以上の前記貫通孔が形成され、前記貫通孔は、積層方向に略直交する端面における任意の対角線を含む領域で、かつ前記任意の対角線と他の対角線との交点の両側に形成されていることが好ましい。
【0008】
本発明の板状チーズ積層体の製造方法は、本発明の前記板状チーズ積層体の製造方法であって、複数枚の前記板状チーズを積層して未処理積層体を得る積層工程と、前記未処理積層体の積層方向に抜き型を押し込んで、前記貫通孔及び前記凹条の双方又はいずれか一方を形成する型抜工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の板状チーズ積層体は、全体として一体化されているが、消費時に各板状チーズを容易に1枚ずつ分離でき、かつ効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第一の実施形態にかかる板状チーズ積層体の斜視図である。
【図2】本発明の第二の実施形態にかかる板状チーズ積層体の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる板状チーズ積層体の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる板状チーズ積層体の平面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる板状チーズ積層体の平面図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる板状チーズ積層体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の板状チーズ積層体について、以下に例を挙げて説明する。
本発明において「チーズ」とは、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、チーズフード等、乳等省令(昭和26年12月27日厚生省令第52号)、公正競争規約の成分規格等において規定されたものの他、当該技術分野においてチーズが通常の意味を有する範囲のものを全て包含するものとする。また、一成分としてチーズを含有して加工された食品、例えば、プロセスチーズ、チーズフード等を主原料として、チーズの風味・食感を付与した各種食品等も包含するものとする。
【0012】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態にかかる板状チーズ積層体について、以下に図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態の板状チーズ積層体1の斜視図である。図1の板状チーズ積層体1は、平面視略正方形の板状チーズ10が複数枚積層され、積層方向を含む面(側面)16が略面一とされたものである。略面一とは、目視にて、概ね面一と認識できる程度を意味する。
板状チーズ積層体1には、積層方向に略直交する一方の端面である第一の端面12から、積層方向に略直交する他方の端面である第二の端面14に貫通する貫通孔20が2つ形成されている。2つの貫通孔20は、第一の端面12における第一の対角線Q1を含み、第二の対角線Q2を含まない領域に形成され、かつ第一の対角線Q1と第二の対角線Q2との交点P1の両側に形成されている。また、本実施形態において、貫通孔20の輪郭は平面視略真円形とされ、貫通孔20の内面は略面一とされている。
【0013】
板状チーズ積層体1における板状チーズ10の積層枚数は、板状チーズ10の厚さT1や大きさ、チーズの組成(水分、脂肪/タンパク質比率等)、製造機器、市場適正等を考慮して決定することができ、例えば、5〜50枚とされる。
【0014】
板状チーズ積層体1の高さH1は、板状チーズ1枚の厚みや大きさ、チーズの組成(水分、脂肪/タンパク質比率等)、製造機器、市場適正等を考慮して決定することができる。板状チーズ積層体30の高さH1が200mm以下であれば、積層体全体の変形をより抑制できる。
一般に、面積が広く厚みが厚い板状チーズほど、板状チーズの枚数を多くし高さH1を高くすることができる。一方、面積が小さく厚みの薄いものほど、枚数を少なくし高さH1を低くすることが好ましい。これらの事情を鑑み、板状チーズ積層体1の変形防止に好ましい板状チーズ10の枚数及び板状チーズ積層体1の高さH1を設定することが好ましい。
【0015】
板状チーズ10の大きさは、用途に応じて決定できる。例えば、1辺の長さL1と厚さT1との関係において、1辺の長さL1を長くすると厚さT1を厚くしなければ、板状チーズ積層体1から板状チーズ10を破損せずに剥離するのが困難になる。また、1辺の長さL1が短ければ、厚さT1を薄くしても板状チーズ積層体1から板状チーズ10を破損せずに容易に剥離できる。
従って、板状チーズ10の大きさは、板状チーズ10の用途や強度等を勘案して決定でき、例えば、厚さT1=2〜3mm、長さL1=10〜100mmのいわゆる「スライスチーズ」としたり、厚さT1=3〜30mm、長さL1=10〜100mmのいわゆる「切れてるチーズ」とすることができる。
【0016】
貫通孔20は、例えば、第一の端面12から第二の端面14にかけて、開口径R1が略同一であってもよいし、第一の端面12から第二の端面14に向かうに従い縮径する形状であってもよい。ただし、各板状チーズ10の質量を略均一にする観点から、貫通孔20は、第一の端面12から第二の端面14にかけて、開口径R1が略同一であることが好ましい。なお、「略同一」とは、その差異が±10%未満であることをいう。
【0017】
貫通孔20の開口径R1は、チーズの組成や板状チーズ10の大きさ等を勘案して決定できる。例えば、長さL1が30〜100mmであれば、開口径R1は、5〜35mmが好ましく、5〜15mmがより好ましい。上記下限値以上であれば、板状チーズ10同士の接触面積が小さくなって相互の粘着力が弱くなり、板状チーズ10をより剥離しやすくできる。上記上限値以下であれば、各板状チーズ10の強度が確保され、剥離する際に板状チーズ10が破損されにくくなる。なお、本実施形態において、2つの貫通孔20は、開口径R1が略同一とされている。
【0018】
また、貫通孔20の開口面積の合計は、第一の端面12の面積の2〜30%が好ましく、3〜10%がより好ましい。上記下限値以上であれば、板状チーズ10同士の接触面積が小さくなって相互の粘着力が弱くなり、板状チーズ10をより剥離しやすくできる。上記上限値以下であれば、各板状チーズ10の強度が確保され、剥離する際に板状チーズ10が破損されにくくなる。
【0019】
本実施形態において、貫通孔20は、第一の端面12における第一の対角線Q1を含み、かつ第二の対角線Q2を含まない領域に形成されていればよいが、第一の端面12のいずれかの辺に近すぎると、剥離する際に板状チーズ10が破損されやすくなるおそれがある。一方、貫通孔20が第一の端面12のいずれの辺からも離れすぎていると、板状チーズ10同士の粘着力が強く、剥離しにくいおそれがある。
このため、例えば、長さL1が30〜100mmであれば、貫通孔20と第一の端面12の任意の辺との離間距離D1は、2〜30mmが好ましく、5〜15mmがより好ましい。
【0020】
板状チーズ積層体1の製造方法の一例について説明する。
まず、貫通孔20が形成されていない板状チーズ(以下、未処理板状チーズということがある)を得る(板状化工程)。この板状化工程は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
板状化工程は、例えば、直方体形状のチーズ製品を調製し、これをピアノ線が備えられた切断機等によって切断して、複数枚の平面視略正方形の未処理板状チーズを得る方法が挙げられる。
あるいは、溶融したチーズを任意の厚さのシート状に伸展し、これを任意の幅とピッチで切断して、複数枚の平面視略正方形の未処理板状チーズを得る方法が挙げられる。
【0021】
未処理板状チーズの水分含量は、特に限定されないが、例えば、30〜50質量%が好ましく、35〜45質量%がより好ましい。上記下限値以上であれば、後述する型抜工程で、未処理積層体に抜き型を容易に押し込むことができる。上記上限値以下であれば、押し込んだ抜き型を抜き出しやすい。
【0022】
未処理板状チーズの脂肪含量は、特に限定されないが、20〜40質量%が好ましく、25〜35質量%がより好ましい。上記下限値以上であれば、後述する型抜工程で、未処理積層体に抜き型を容易に押し込むことができる。上記上限値以下であれば、押し込んだ抜き型を抜き出しやすい。
【0023】
任意の枚数の未処理板状チーズを積層して、未処理板状チーズの積層体(以下、未処理積層体ということがある)を得る(積層工程)。未処理積層体の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
【0024】
未処理積層体における未処理板状チーズの積層方向に略直交する面(板状チーズ積層体1の第一の端面12又は第二の端面14に相当)に、円筒形の抜き型を押し当て、次いで前記積層方向に抜き型を押し込む。未処理積層体に抜き型を貫通させた後、抜き型を抜き出して貫通孔20を形成する(型抜工程)。抜き型は、特に限定されず、例えば、ステンレス等の金属製のものが挙げられる。
型抜工程における未処理積層体の温度は、チーズの組成等を勘案して決定でき、例えば、0〜30℃が好ましい。上記下限値以上であれば、後述する型抜工程で、未処理積層体に抜き型を容易に押し込むことができる。上記上限値以下であれば、押し込んだ抜き型を抜き出しやすい。
【0025】
次に、板状チーズ積層体1の使用方法の一例について説明する。
一方の手で板状チーズ積層体1を把持する。この際、第二の端面14が手の平に向くように、板状チーズ積層体1を把持する。第一の端面12における貫通孔20の周縁に他方の手の人差し指を当接させると共に、親指を側面16に当接させ、第一の端面12を形成している板状チーズ10のみをめくるように把持する。手指で把持した板状チーズ10を板状チーズ積層体1から離れる方向に牽引して、板状チーズ積層体1から剥離する。この際、板状チーズ10同士は、貫通孔20が形成されている分だけ接触面積が小さいために相互の粘着力が小さいものとなっている。このため、板状チーズ積層体1から板状チーズ10を容易に剥離できる。
【0026】
上述の通り、本実施形態によれば、積層方向に貫通する貫通孔が形成されているため、板状チーズを1枚ずつ容易に剥離できる。
加えて、燻煙処理を施す設備を要することなく、未処理積層体に抜き型を押し込むという簡便な設備で、効率的に板状チーズ積層体を得られる。
【0027】
本実施形態によれば、板状チーズ積層体から剥離された板状チーズは、燻煙処理等による着色部分が形成されていないため、着色部分が不適な用途に使用できる。
加えて、板状チーズは、貫通孔が形成されているため、エメンタールチーズのような外観を演出でき、意匠性が高められている。例えば、プロセスチーズであっても、エメンタールチーズのように貫通孔が形成された板状チーズを得ることができる。
さらに、板状チーズは、所望する任意の位置に貫通孔が形成されているため、例えば、板状チーズをトッピングに用いる場合、貫通孔を目安に位置決めできる。
【0028】
本実施形態によれば、第一の対角線を含む領域で、かつ交点の両側に貫通孔が1つずつ形成されているため、より容易に板状チーズを剥離できる。例えば、交点と第一の端面の任意の頂部との間の領域にのみ貫通孔を形成すると、抜き型を押し込んだ位置で未処理積層体が積層方向に圧縮される。圧縮された状態で貫通孔が形成されると、貫通孔の内面における各板状チーズの密着性が高まる。これに対し、第一の対角線を含む領域で、かつ交点の両側に貫通孔を形成すると、抜き型による圧力が分散され、抜き型を押し込んだ位置での未処理積層体の圧縮の度合いが軽減される。このため、貫通孔の内面における各板状チーズの密着性が軽減され、板状チーズは、板状チーズ積層体から剥離されやすくなる。加えて、任意の対角線を含む領域に複数の貫通孔を形成することで、貫通孔が第一の端面の頂部の近傍に形成されることとなり、板状チーズを把持しやすくなる。
【0029】
本実施形態によれば、未処理積層体に抜き型を押し込むという簡便な方法で、板状チーズ積層体として一体化されているが、消費時に各板状チーズを容易に1枚ずつ分離できる板状チーズ積層体を得られる。
加えて、本実施形態の製造方法は、燻煙処理等の工程を要しないため、より効率的に板状チーズ積層体を得られる。
【0030】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態にかかる板状チーズ積層体について、以下に図面を用いて説明する。なお、第一の実施形態と同一の構成には同一の符号を付してその説明を省略し、主に第一の実施形態と異なる点について説明する。第一の実施形態と異なる点は、積層方向に伸びる凹条が側面に形成されている点である。
【0031】
図2の板状チーズ積層体100は、平面視略正方形の板状チーズ110が複数積層され、側面116が、略面一とされたものである。
板状チーズ積層体100の4つの側面116には、第一の端面112から第二の端面114にかけて伸びる凹条120がそれぞれ形成されている。即ち、板状チーズ積層体100には、板状チーズ110の積層方向に伸びる複数の凹条120が形成されている。
【0032】
凹条120は、積層方向に直交する面の輪郭形状(以下、凹条断面輪郭ということがある)が略半円形とされ、内面が略面一とされたものである。即ち、板状チーズ積層体1は、凹条120により平面視略半円形の切欠きが形成されたものである。
【0033】
凹条120は、例えば、第一の端面112から第二の端面114にかけて、幅W1が略同一であってもよいし、第一の端面112から第二の端面114に向かうに従い縮幅する形状であってもよい。
加えて、凹条120は、例えば、第一の端面112から第二の端面114にかけて、深さD1が略同一であってもよいし、第一の端面112から第二の端面114に向かうに従い縮小する形状であってもよい。
ただし、各板状チーズ110の質量を略均一にする観点から、凹条120は、第一の端面112から第二の端面114にかけて、幅W1及び深さD1が略同一であることが好ましい。
【0034】
凹条120の幅W1は、チーズの組成や板状チーズ110の大きさ等を勘案して決定でき。例えば、長さL1が30〜100mmであれば、幅W1は、5〜35mmが好ましく、5〜15mmがより好ましい。上記下限値以上であれば、板状チーズ110同士の接触面積が小さくなって相互の粘着力が弱くなり、板状チーズ110をより剥離しやすくできる。上記上限値以下であれば、各板状チーズ110の強度が確保され、剥離する際に板状チーズ110が破損されにくくなる。
【0035】
凹条120の深さD1は、チーズの組成や板状チーズ10の大きさ等を勘案して決定できる。例えば、長さL1が30〜100mmであれば、深さD1は、2〜18mmが好ましく、3〜8mmがより好ましい。上記下限値以上であれば、板状チーズ110同士の接触面積が小さくなって相互の粘着力が弱くなり、板状チーズ110をより剥離しやすくできる。上記上限値以下であれば、各板状チーズ110の強度が確保され、剥離する際に板状チーズ110が破損されにくくなる。
【0036】
凹条120の凹条断面輪郭の面積の合計は、第一の端面112の面積の2〜30%が好ましく、3〜10%がより好ましい。上記下限値以上であれば、板状チーズ110同士の接触面積が小さくなって相互の粘着力が弱くなり、板状チーズ110をより剥離しやすくできる。上記上限値以下であれば、各板状チーズ110の強度が確保され、剥離する際に板状チーズ110が破損されにくくなる。
【0037】
また、凹条120の凹条断面輪郭の面積と貫通孔20の開口面積との合計は、第一の端面112の面積の2〜35%が好ましく、3〜15%がより好ましい。上記下限値以上であれば、板状チーズ110同士の接触面積が小さくなって相互の粘着力が弱くなり、板状チーズ110をより剥離しやすくできる。上記上限値以下であれば、各板状チーズ110の強度が確保され、剥離する際に板状チーズ110が破損されにくくなる。
【0038】
板状チーズ積層体100の製造方法は、例えば、積層工程で得られた未処理積層体に貫通孔20の形状に対応した抜き型、及び凹条120の形状に対応した抜き型を積層方向に押し込む型抜工程を有するものが挙げられる。
【0039】
本実施形態によれば、凹条が形成されているため、板状チーズ同士の接触面積がさらに小さくなり、より容易に板状チーズ積層体から板状チーズを1枚ずつ剥離できる。
加えて、板状チーズ積層体から剥離された板状チーズは、切欠きが形成されているため、さらなる意匠性の向上が図れる。
【0040】
(その他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
第一及び第二の実施形態では、板状チーズが平面視略正方形とされているが、本発明はこれに限定されず、板状チーズが、平面視長方形、平面視五角形等の多角形、平面視真円形、平面視楕円形等であってもよい。
【0041】
第一及び第二の実施形態では、板状チーズ積層体の側面が略面一とされているが、本発明はこれに限定されず、例えば、図3に示す板状チーズ積層体200のように、各板状チーズ210が、積層方向に略直交する方向に、交互にはみ出して積層されていてもよい。各板状チーズ210が交互にはみ出して、はみ出し部分212が形成されていることで、板状チーズ210を剥離する際に、板状チーズ210を容易に把持できる。加えて、板状チーズ210の接触面積がさらに小さくなるため、板状チーズ210をより容易に剥離できる。なお、はみ出し部分212の長さL2は、特に限定されず、例えば、1〜10mmとされる。
【0042】
第一及び第二の実施形態では、貫通孔が平面視略真円形とされているが、本発明はこれに限定されず、貫通孔が平面視三角形、平面視矩形等の多角形、平面視楕円形とされていてもよい。
【0043】
第一及び第二の実施形態では、2つの貫通孔が形成されているが、本発明はこれに限定されず、貫通孔の数は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0044】
第一及び第二の実施形態では、第一の対角線を含みかつ第二の対角線を含まない領域に、2つの貫通孔が形成されているが、本発明はこれに限定されず、第一の対角線を含む領域と第二の対角線を含む領域との双方に貫通孔が形成されていてもよいし、第一の対角線及び第二の対角線を含む領域に貫通孔が形成されていてもよい。このような貫通孔が形成された板状チーズ積層体について、図4を用いて説明する。
【0045】
図4は、板状チーズ積層体300の平面図である。板状チーズ積層体300は、複数枚の板状チーズ310が積層され、積層方向に貫通する貫通孔20が4つ形成されたものである。
板状チーズ積層体300は、第一の対角線Q1のみを含む領域に2つの貫通孔20が形成され、第二の対角線Q2のみを含む領域に1つの貫通孔20が形成され、交点P1を含む領域に1つの貫通孔20が形成されたものである。
【0046】
このように、貫通孔の数を増やすことで、貫通孔の開口径を大きくすることなく、板状チーズ同士の接触面積を小さくできる。この結果、板状チーズ積層体から、板状チーズをより容易に剥離できる。加えて、貫通孔を分散して形成することで、貫通孔の内面における各板状チーズの密着性が軽減され、板状チーズをより剥離しやすくできる。
【0047】
第一及び第二の実施形態では、2つの貫通孔の開口径が略同一とされているが、本発明はこれに限定されず、2つの貫通孔の開口径が略同一でなくてもよい。2つの貫通孔の開口径が略同一でない板状チーズ積層体の一例について、図5を用いて説明する。図5は、板状チーズ積層体400の平面図である。
板状チーズ積層体400は、複数枚の板状チーズ410が積層され、積層方向に貫通する貫通孔20及び貫通孔420が形成されたものである。貫通孔20は、第一の対角線Q1のみを含む領域に形成され、貫通孔420は、交点P1を含む領域に形成されている。
【0048】
貫通孔420は、輪郭形状が平面視略真円形とされ、内面が略面一とされたものである。
貫通孔420の開口径R2は、板状チーズ410の大きさ等を勘案して決定でき、例えば、貫通孔20の開口径R1の1.1〜5倍が好ましく、2〜4倍がより好ましい。上記下限値以上であれば、貫通孔420を形成した効果が得られやすく、上記上限値以下であれば、板状チーズ410の強度が維持され、板状チーズ410を剥離する際に、板状チーズ410が破損されにくくなる。
【0049】
例えば、頂部414近傍を把持して板状チーズ410を剥離する操作を例にして、板状チーズ積層体400の効果を説明する。頂部414は、第一の端面412の頂部の内、貫通孔20に最も近接するものである。頂部414近傍を把持して板状チーズ410を剥離する場合、剥離し始めは、開口面積が小さく(即ち、接触面積が大きく)比較的高い強度を有する部分を剥離し、その後は、開口面積が大きく(即ち、接触面積が小さく)板状チーズ410同士の粘着力が小さい部分を剥離することとなる。このため、板状チーズ410にかかる負担が軽減され、板状チーズ410を破損することなく、板状チーズ積層体400からより容易に剥離できる。
【0050】
第一及び第二の実施形態では、第一の対角線を含む領域に貫通孔が形成されているが、本発明はこれに限定されず、対角線を含まない領域にのみ貫通孔が形成されていてもよい。このような板状チーズ積層体について、図6を用いて説明する。図6は、板状チーズ積層体500の平面図である。
【0051】
板状チーズ積層体500は、複数枚の板状チーズ510が積層され、積層方向に貫通する貫通孔20が4つ形成されたものである。各貫通孔20は、第一の対角線Q1と第二の対角線Q2とで分割された4つの領域に、各々1つずつ形成されたものである。即ち、貫通孔20は、第一の対角線Q1及び第二の対角線Q2を含まない領域に形成されている。
【0052】
第二の実施形態では、貫通孔及び凹条が形成されているが、本発明はこれに限定されず、貫通孔が形成されず、凹条のみが形成されていてもよい。ただし、板状チーズの剥離性をより向上させる観点から、貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0053】
第二の実施形態では、凹条断面輪郭が略半円形とされているが、本発明はこれに限定されず、例えば、凹条断面輪郭が、三角形、矩形等の多角形とされていてもよい。
【0054】
第二の実施形態では、4つの凹条が形成されているが、本発明はこれに限定されず、凹条の数が3つ以下であってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0055】
第一及び第二の実施形態では、平面視略正方形の未処理板状チーズを積層した未処理積層体を抜型工程に供しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、シート状のチーズを任意の幅で切断して帯状(平面視長方形)のチーズとし、この帯状のチーズを積層する。帯状のチーズが積層されたものに抜き型を押し込んで貫通孔又は凹条を形成した後、任意のピッチで切断して板状チーズ積層体を製造してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1、100、200、300、400、500 板状チーズ積層体
10、110、210、310、410、510 板状チーズ
12、112、412 第一の端面
14、114 第二の端面
20、420 貫通孔
120 凹条
Q1 第一の対角線
Q2 第二の対角線
P1 交点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の板状チーズが積層された板状チーズ積層体において、
積層方向に貫通する貫通孔、及び積層方向に略直交する一方の端面から他方の端面にかけて伸びる凹条の双方又はいずれか一方が形成されていることを特徴とする板状チーズ積層体。
【請求項2】
前記板状チーズは平面視矩形であり、2つ以上の前記貫通孔が形成され、
前記貫通孔は、積層方向に略直交する端面における任意の対角線を含む領域で、かつ前記任意の対角線と他の対角線との交点の両側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の板状チーズ積層体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の板状チーズ積層体の製造方法であって、
複数枚の前記板状チーズを積層して未処理積層体を得る積層工程と、
前記未処理積層体の積層方向に抜き型を押し込んで、前記貫通孔及び前記凹条の双方又はいずれか一方を形成する型抜工程とを有することを特徴とする板状チーズ積層体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−152157(P2012−152157A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15111(P2011−15111)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】