説明

板状体の搬送用容器

【課題】フレキ部付きの板状体を平置き状態で収納して搬送する搬送用容器として、フレキ部の保護を良好になし、容器全体の厚みを低く抑えることができる搬送用容器を提供する。
【解決手段】1枚もしくは複数枚のフレキ部付き板状体Bを平置き状態で収納して搬送する搬送用容器で、容器本体1における主収納部10の1辺部に内底面10aからアール曲面で連続して、板状体Bに連設されたフレキ部b2を収納するフレキ収納部15を形成し、フレキ収納部15の内底面15aを外方に向かって下方向きの傾斜面をなすように凹設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素板ガラス、液晶表示用やプラズマ表示用のガラス基板等の各種のガラス基板やパネル、特にはパネルの一辺にフレキシブル配線板を形成するフレキ部を備える板状体を搬送、保管するのに使用する板状体の搬送用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、素板ガラス、液晶表示用のガラス基板等の比較的大型のガラス基板、あるいは太陽電池パネルやタッチパネル等のパネルその他の衝撃に弱い板状体を収納して搬送するための搬送用容器として、緩衝性を有する合成樹脂発泡体製の容器本体と蓋体とよりなる容器で、容器本体の一方の相対向する側壁内面に等間隔に並設された縦溝に、前記の板状体を1枚ずつ挿入して相互に接触させないように直立状態に支持して収納するようにしたものが一般に使用されていた。
【0003】
しかし、従来の側壁内面の縦溝によりガラス基板等の板状体を直立状態にして収容する方式では、板状体自体の自重によって曲げ変形したり、板状体の重量が容器本体の底部に集中して負荷されることで、容器底部が圧縮変形し、クッション機能や衝撃緩和機能が損なわれるおそれがあった。
【0004】
かかる問題を生じさせないために、特許文献1〜3に例示するように、容器本体内に、ガラス基板等の搬送対象の板状体と防護用のシートとを交互に重ねて水平状態で収納し、各板状体を防護用のシートを介して面で受けるようにした搬送用容器が出現している(特許文献1〜3)。ガラス基板等の板状体を水平状態で収納する搬送用容器の場合、収納された板状体は、その周縁部や隅角部が、輸送時の振動や衝撃による影響を受け易く、容器本体の底面や側壁内面との接触により損傷が生じるおそれがある。そのため、例えば、隅角部の側壁との接触を回避し、板状体の周縁を柔軟性のある当接部材に当接させて支持するとか、ガラス基板の周縁の側壁内面に対する接触を少なくする等、様々な工夫がなされている。
【0005】
ところで、搬送対象のタッチパネルや液晶表示用パネル等の板状体には、図18,図19に例示するように、パネル本体部b1の一辺部に、フレキシブルプリント配線板を有するフレキ部b2が連設されている場合があるが、このようなフレキ部b2を備えるパネル等の板状体Bを搬送するための搬送用容器としての工夫は十分になされていない。
【0006】
すなわち、パネル本体部b1の一辺部に連設されるフレキ部b2は、フレキシブルプリント配線板のコア材の表面に、金属導板や保護層を設けて構成した配線基板部b3をフレキシブルな連接部b4でパネル本体部b1に連接して付設してなるものであり、パネル本体部b1に比して振動や衝撃により破損し易く、また折り曲げにより変形が生じ易いものである。しかも、フレキ部b2の配線基板部b3には、電子部品が付設されて該フレキ部b2の厚みt2がパネル本体部b1の厚みt1よりも大きくなっているのが普通である。そのため、フレキ部付き板状体Bの搬送用容器としては、前記フレキ部b2の保護のために、該フレキ部b2にはできるだけ負荷をかけないように収納状態を工夫する必要があるが、従来の搬送用容器では、フレキ部の保護については十分に配慮がなされていないのが実情である。
【0007】
例えば、フレキ部付き板状体の搬送用容器の場合、パネル本体部を収納する主収納部の1辺部にフレキ部を収納するためのフレキ収納部が形成されることになるが、このフレキ収納部において、パネル本体部の厚みより大きくなる前記フレキ部の厚みを逃がす凹部が必要になる。仮に、図20のように、前記板状体Bのパネル本体部b1より厚みが大きくなるフレキ部b2を厚みを逃がすために、蓋体103の天井部130の内面に凹部136を形成すると、天井部130が薄肉になって、蓋体103の変形によりフレキ部b2に当接したりして破損が生じる虞がある。そうかといって、天井部130の肉厚を大きくすると、容器本体101と蓋体103による容器全体の厚みT2が大きくなり不経済であり、多数の搬送用容器を段積み状態にして積載する場合の効率が低下することにもなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−314236号公報
【特許文献2】特開2008−239210号公報
【特許文献3】特開2009−269610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記の問題を解決するために、フレキ部付きの板状体を平置き状態で収納して搬送するための板状体の搬送用容器として、収納された板状体の保護、特にはフレキ部の保護を良好になし得るとともに、蓋体の厚みを過度に大きくする必要がなく、容器全体の厚みを低く抑えることができる板状体の搬送用容器を提供するものであり、特に、この種の搬送用容器は、落下テストにおいて本体底角落下、底稜落下があり、所定の強度が求められることから、容器本体の底部の肉厚が蓋体の天板部の肉厚より大きくなっていることに着目し、容器本体の底部の肉厚を利用してフレキ部の肉厚の逃がし部を形成することにより、前記課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する本発明の板状体の搬送用容器は、合成樹脂発泡体から成形され、上方に開口する主収納部が形成された平面矩形の容器本体を有し、前記主収納部に、1枚もしくは複数枚のフレキ部付き板状体を平置き状態で収納して搬送する搬送用容器であって、容器本体における前記主収納部の少なくとも一辺部に連続して、前記板状体に連設されたフレキ部を収納するフレキ収納部が形成されるとともに、該フレキ収納部の内底面が外方に向かって下方向きの傾斜面をなすように凹設されてなることを特徴とする。
【0011】
この搬送用容器によれば、容器本体の主収納部に板状体を収納するとともに、板状体に連設されたフレキ部をフレキ収納部に収納することにより、板状体のパネル本体部より肉厚の大きいフレキ部が、傾斜した内底面に沿ってパネル本体部よりも高くならずに安定性よく保持され、フレキ部が容器本体や蓋体に接触して変形したり、破損することがなく、フレキ部の保護を良好になし得る。特に、容器本体の収納部に複数枚の板状体を重ねた状態で平置き状態にして収納し、蓋体を被着して包装する場合においても、蓋体の天板部の肉厚を大きくする必要もないため、容器全体の厚みの増大を抑えることができる。
【0012】
前記各発明の板状体の搬送用容器において、フレキ収納部の内底面が容器本体の前記主収納部の内底面からアール曲面で連続して傾斜面をなしているものが好ましい。これにより、フレキ収納部に収納されたフレキ部が、パネル本体部側の基部で折れ曲がったり、屈曲変形するおそれなく保持される。
【0013】
前記搬送用容器において、フレキ収納部の内底面から連続する側壁内面が下端部から上端に向かって外方へ傾斜した傾斜面をなしているのが好ましい。これにより容器の水平方向の振動や落下衝撃によって水平方向の変位が生じた場合にも、フレキ部が側壁に対し当接するのを回避でき、フレキ部の保護をさらに良好になし得る。
【0014】
前記板状体の搬送用容器において、前記容器本体が、一つの主収納部に複数枚の板状体を重ねた状態で平置き状態にして収納するものであり、該容器本体の側壁上端部に対し被嵌自在な合成樹脂発泡体製の蓋体を備えてなるものとすることができる。この場合において、前記のようにフレキ収納部を形成したことにより、複数の板状体を重ねて収納した場合のフレキ部の厚みが下方への傾斜面で吸収でき、パネル本体部より高くなることがなく、蓋体の天井部の肉厚を大きくする必要がないため、容器全体の厚みを抑えることができる。
【0015】
前記板状体の搬送用容器において、前記容器本体が、複数の主収納部が間隔をおいて形成されるととともに、各主収納部の1辺部に連続して、それぞれフレキ部を収納するフレキ収納部が形成され、前記各フレキ収納部の内底面が各主収納部からみて外方側ほど下方に傾斜した傾斜面をなすように凹設されてなるものとすることができる。この場合も、容器本体の各主収納部にパネル本体部を収納するとともに、各フレキ収納部にフレキ部を収納することにより、フレキ部が傾斜した内底面に沿って保持され、フレキ部をパネル本体部より高くなることがなく、そのため主収納部を過度に深くする必要がない。
【0016】
前記の搬送用容器においても、上記同様に、各フレキ収納部の内底面が前記各主収納部の内底面からアール曲面で連続して傾斜面をなしているのが好ましく、フレキ収納部に収納されるフレキ部の折れ曲がりや屈曲変形を防止できることになる。
【0017】
前記板状体の搬送用容器において、前記容器本体の外周部における側壁上端部には、内側に凸部を残して外周側に切欠段部が形成され、容器本体の底部下面の周縁部には、同形の容器本体の前記側壁上端部の切欠段部に嵌合できる突縁が設けられ、複数の容器本体が前記側壁上端部の切欠段部と底部下面の突縁とが嵌合状態で段積み可能に設けられてなるものとすることができる。これにより、板状体を収納した複数の容器本体を蓋無しで段積みして搬送することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の板状体の搬送用容器によれば、フレキ部が付設されているガラス基板等のフレキ部付きの板状体のパネル本体部を容器本体内の主収納部に収納し、パネル本体部より肉厚の大きいフレキ部を、底部の肉厚を利用して外方に向かって下方への傾斜面をなすように凹設したフレキ収納部に収納して支持することにより、フレキ部に負荷をかけることなく安定性よくかつ変形や破損のおそれなく保持でき、その保護を良好になすことができる。
【0019】
しかも、フレキ収納部に収納したフレキ部をパネル本体部より高くせずに保持できるため、1枚の板状体を収納する場合はもちろん、複数の板状体を重ねた状態で収納する場合においても、容器全体の厚みの増大を抑え、以て輸送車両等への積載効率を低下させずに効率良く搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の板状体の搬送用容器の1実施例を示す容器本体と蓋体の斜視図である。
【図2】容器本体の平面図である。
【図3】容器本体の底面図である。
【図4】蓋体の平面図である。
【図5】蓋体の底面図である。
【図6】容器本体と蓋体のL1−L1線の断面図である。
【図7】容器本体と蓋体のL2−L2線の断面図である。
【図8】板状体を重ねて収納した使用状態の断面図である。
【図9】同上の一部の拡大断面図である。
【図10】他の実施例を示す板状体を収納した使用状態の一部の拡大断面図である。
【図11】さらに他の実施例を示す使用状態の一部の拡大断面図である。
【図12】本発明の収納形態を異にする他の実施例を示す容器本体の斜視図である。
【図13】同上の容器本体の平面図である。
【図14】同上の容器本体の底面図である。
【図15】同上の容器本体のL3−L3線の断面図である。
【図16】同上の容器本体のL4−L4線の断面図である。
【図17】同上の板状体を収納した使用状態の断面図である。
【図18】フレキ部付き板状体の正面説明図である。
【図19】同上のフレキ部の側面拡大説明図である。
【図20】従来の搬送用容器の板状体を収納した状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図9は、本発明にかかる板状体の搬送用容器の1実施例を示している。この実施例の搬送用容器A1は、上方に開口し、収納対象のガラス基板やパネル等の板状体B、特に図18に例示するフレキ部付きの板状体Bを、各板状体間にスペーサー用の保護シート(図示せず)を介して重ねた状態で収納できる平面長方形や正方形の平面矩形の容器本体1と、該容器本体1に対し被着自在な蓋体3とからなる。
【0023】
容器本体1に対する蓋体3の被着構造として、前記容器本体1の外周を形成する側壁の上端部には、内側に凸状縁11を残して外側に切欠段部12が形成され、他方、前記蓋体3の周縁部31の下面側には、前記開口端部における凸状縁11の外側の切欠段部12に嵌合し当接する下方向きの嵌合壁部32が垂設されており、この嵌合壁部32による嵌合により、蓋体3を容器本体1に被着した状態に保持できるようになっている。
【0024】
容器本体1は、主として緩衝性のある合成樹脂発泡体により成形されてなり、底部13より立ち上がった四周の各側壁14a,14b,14c,14dにより、上方に開口して前記板状体Bのパネル本体部b1を収納できる一つの主収納部10が形成されている。前記主収納部10は、保護シートを介して重ねた所要数枚の板状体Bのパネル本体部b1を収納できる深さに形成されている。通常、板状体Bの厚みによっても異なるが、例えば厚み2〜5mmのガラス基板等の板状体Bの場合、10枚以上、好ましくは10〜数10枚程度を収納できるように比較的浅く形成される。
【0025】
前記主収納部10の1辺部、例えば側壁14c側の1辺部には、前記板状体Bのパネル本体部b1に連設されたフレキ部b2を収納するフレキ収納部15が連続して形成されている。フレキ収納部15は、その内底面(底部上面)15aが、底部13の肉厚の大きさを利用して、前記主収納部10の内底面(底部13の上面)10aから連続して外方に向かって下方向きの傾斜面をなすように凹設されており、収納されたフレキ部b2の厚みが高くなるのを回避できるようになっている。前フレキ収納部15の内底面15aの傾斜面による凹設の範囲は一部で、かつ凹設の程度も僅かであるため、容器本体1の強度には殆ど影響を与えない。
【0026】
通常、前記板状体Bは、パネル本体部b1の辺部の長さより短いフレキ部b2が該辺部の両側端部を残余させて中央部に連接されて付設されている。そのため、前記フレキ収納部15は、前記フレキ部b2の付設形態に対応して、前記収納部10の1辺部の両側端部を側壁と同高さで残余させるようにして、フレキ部b1よりやや広く形成されるとともに、前記残余部分が、収納された板状体Bのパネル本体部b2の両側端部が当接する受け部16としての役目を果たすように形成され、フレキ収納部15に収納されたフレキ部b2が側壁14cに当接しないように形成されている。
【0027】
前記フレキ収納部15の内底面15aの傾斜は、板状体Bの最大の収納枚数分のフレキ部b2を重ねたときの積み重ね高さH1を考慮して、最大枚数を重ねて収納したときに、前記フレキ部b2が、重ねて収納した板状体Bのパネル本体部b1よりも高くならないように設定しておくのが特に好ましい。
【0028】
前記フレキ収納部15の内底面15aから連続する側壁14cの内面は、図1〜図9のように底部13に対して垂直面(成型上の抜き勾配を有する場合を含む)をなすものであってもよいが、図10や図11のように、下端部から上端に向かって外方へ傾斜した傾斜面をなしているのが好ましく、これにより、容器の水平方向の振動や落下により、複数枚を重ねた状態で収納した板状体Bが上層側ほど大きくフレキ収納部15の側に変位したときにも、フレキ部b2が容器本体1の側壁14cの内面に接触し難く、フレキ部b2の保護を良好になし得る。
【0029】
また、前記フレキ収納部15の内底面15aは、前記主収納部10の内底面10aとの境界部近傍で屈曲して連続した傾斜面をなすものとするほか、図11のように、主収納部10の内底面10aから連続した水平状態から徐々に下方向きに傾斜するアール曲面部17を介して所定の傾斜角度の傾斜面をなすように形成しておくことができる。前記アール曲面部17は、収納した板状体Bのフレキ部b2の基部に相当する部位、すなわち主収納部10の内底面10aとフレキ収納部15の内底面15aとの境界部の下方位置を支点にして円弧状の曲面とするほか、底部上面10aに連続する水平部を経てアール曲面となるように形成する等、フレキ部b2の自然な曲り具合を考慮して設定することができる。
【0030】
このようにアール曲面部17を形成しておくことにより、収納された板状体Bのフレキ部b2が自然な曲がり状態でフレキ収納部15の傾斜した内底面15aに接することになり、重ねて収納される板状体のうちの下層の板状体Bのフレキ部b2の折り曲がりを防止できる。また、フレキ収納部15の内底面15aが、主収納部10の内底面10aとの境界部で屈折して形成された傾斜面ではないため、フレキ部b2のパネル本体部側の付け根部から折れ曲がり変形した状態に形付けされることもない。
【0031】
なお、この実施例の場合も、フレキ収納部15の側壁14cの内面は、底部13に対して垂直面に形成しておくことも、また図のように上端に向かって外側に傾斜した傾斜面に形成しておくこともできるが、傾斜面に形成しておくことで、上記と同様に、容器の水平方向の振動や落下により、収納した板状体Bが変位したときにも、フレキ部b2が側壁14cの内面に接触し難くなり、フレキ部b2の保護を良好になし得る。
【0032】
上記いずれの実施例の場合も、図示はしていないが、前記フレキ収納部15の内底面15aを側壁14cの内面に曲面で連続させておくのが、撓み変形が生じた場合の前記連続部からの亀裂発生を抑制でき好ましい。
【0033】
図1〜図9の実施例の場合、前記容器本体1の主収納部10の内底面10aの四周の各側壁14a,14b,14c,14dに沿う周縁部には、底部13上に収納される板状体Bのパネル本体部b1の周縁の当接を回避するための凹部18が前記フレキ収納部15との連続部分を除いて連続して形成されている。そして、前記凹部18の底面18aの外縁側が、側壁14a,14b,14c,14dの外方への弾性変形時の応力集中を回避できるアール曲面で側壁内面に連続している。
【0034】
また、前記容器本体1の各側壁14a,14b,14c,14dによる主収納部10の四隅部には、側壁内面側より拡張形成された上下方向の切欠部19が形成され、該切欠部19の底部が前記凹部18から該凹部18と同深さで連続して拡張形成されている。該切欠部19の底部もアール曲面で側壁内面に連続している。
【0035】
さらに、前記容器本体1の四方の側壁14a,14b,14c,14dのうちの少なくとも一方の相対向する両側壁、例えば図のようにフレキ収納部15が形成された辺の側壁14cを除く各側壁14a,14b,14dの内面には、辺の長さ方向の中央部等の所要の個所に、上下方向の凹溝状をなす板状体Bの収納及び取り出し操作用の切欠凹部20が少なくとも一つ設けられている。前記切欠凹部20は、側壁上端から底部13の凹部18の底面18aに至る深さの凹溝状をなしており、板状体Bの収納及び取り出し操作の際に、該切欠凹部20の部分で挿入して最下層の板状体Bの下に指先を掛けることができるように、あるいは機械的な係止手段を底部13上の部分にまで挿入して最下層の板状体Bの下に係止できるようになっている。
【0036】
前記切欠凹部20の個所においても、前記の凹部底面18aから切欠凹部20の内面への境界部は、前記同様のアール曲面で連続するように形成しておくのが望ましい。
【0037】
前記蓋体3は、前記容器本体1と同様の緩衝性のある合成樹脂発泡体により成形され、上述したように、前記容器本体1の開口端部の嵌合用の凸条縁11に対する嵌合壁部32の嵌合により被着できるように設けられている。
【0038】
図の場合、前記蓋体3の周縁部31の下面の前記嵌合壁部32の内面に沿う周縁部分には、前記容器本体1の内底面10aの凹部18と同様に、収納した板状体Bのパネル本体部b1の周縁の当接を回避する凹部33が周方向に連続して形成されている。フレキ収納部15に対応する辺の側では、該フレキ部b2の当接も回避できる幅で形成されている。前記蓋体3を容器本体1に対して被嵌した状態においては、容器本体1の各側壁14a,14b,14c,14dの上端が前記凹部33の内底面(天井部の下面)に当接するようになっている。蓋体3の周縁部31の上面3aには、段積み時の嵌合用の凸縁34が設けられており、搬送用容器Aを段積みする際に容器本体1の底部13の下面周縁部の切欠部21が嵌合するように形成されている。
【0039】
前記容器本体1及び蓋体3の構成材料としては、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−エチレン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等の各種合成樹脂の発泡体を用いることができる。中でも、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂を含む複合樹脂のビーズ発泡体による成形体が好適に用いられる。ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂を含む複合樹脂のビーズ発泡体は、ポリオレフィン系樹脂粒子にスチレン系単量体を重合させた後、発泡剤を含浸させた発泡性樹脂粒子を、蒸気加熱することにより成形体を得ることができる。
【0040】
上記した実施例の板状体の搬送用容器A1によれば、素板ガラス、液晶表示用のガラス基板等の板状体B、特にパネル本体部b1の1辺部にフレキ部b2を連設したフレキ部付き板状体Bを収納する。この際、厚み0.2〜5.0mmのスペーサー用の保護シートと板状体Bのパネル本体部b1を交互に重ねて、容器本体1内の底部13上の主収納部10に収納し、またフレキ部b2をフレキ収納部15に収納する。このようにして板状体Bを収納した後、容器本体1に対し蓋体3を被着する。
【0041】
このような使用において、搬送用容器A1内に収納された板状体Bは、容器本体1の主収納部10にパネル本体部b1を収納するとともに、パネル本体部b1に連設されたフレキ部b2をフレキ収納部15に収納して傾斜した内定面15aに沿わせるようにすることにより、板状体Bのパネル本体部b1より肉厚の大きいフレキ部b2が、容器本体1内でパネル本体部b1より高くなることなく保持されることになり、そのため、蓋体3の天井部の肉厚を従来と同様に形成しておくことで、板状体B、特にはフレキ部b2の保護を良好になし得る。
【0042】
すなわち、図8、図9のように、10〜数10枚の板状体を重ねて収納した場合に、パネル本体部b1より厚みの大きいフレキ部b2の重なった部分の高さがパネル本体部b1の重ね部分よりも高くなることがなく、所定位置に安定性よく保持される。そのため、フレキ部b2が、蓋体3に接触したり、側壁内面に接触したりすることなく、接触等によるフレキ部bの破損のおそれがなく、その保護を良好になし得る。特に、図10や図11のように側壁14cの内面が外方へ傾斜した傾斜面をなしている場合、図11のように各フレキ収納部15の内底面15aが前記各主収納部10の内底面10aからアール曲面で連続して傾斜面をなしている場合、フレキ部b2の側壁14cへの接触や、折れ曲がり変形等を防止でき、その保護をさらに良好になし得る。
【0043】
しかも、容器本体1の収納部10に複数枚の板状体Bを重ねた状態で平置き状態にして収納し、蓋体3を被着して包装する場合においても、前記のようにフレキ収納部15に複数の板状体Bのフレキ部b2の厚みを下方への内底面15aの傾斜面で吸収して収納でき、蓋体3の天井部の肉厚を大きくする必要がないため、容器全体の厚みT1の増大を抑えることができる。例えば、図20のように、蓋体103の天井部130の内面にフレキ部b2の厚みを逃がす凹部136を形成した容器の場合、蓋体103の天井部130の肉厚確保のために、容器全体の厚みT2が大きくなるが、本発明の容器の場合は、もともと肉厚の大きい容器本体1の底部13の肉厚を利用してフレキ収納部15を形成するので、底部13の肉厚を大きくする必要がなく、容器全体の厚みT1は小さくなる。従って、本発明の容器を使用することにより、容器の輸送車両等への積載効率を低下させずに効率良く搬送することができる。
【0044】
図12〜図17は、本発明に係る板状体の搬送用容器の他の実施例を示している。この実施例において、上記した実施例と同じ構成部分については、同符号を付して具体的な説明を省略する。
【0045】
この実施例の搬送用容器A2は、上記同様の合成樹脂発泡体から成形された平面矩形の容器本体1よりなる容器であって、該容器本体1が、収納対象のフレキ部付きの板状体Bのパネル本体部b1を収納できる複数の主収納部10が間隔をおいて形成されるととともに、各主収納部10の1辺部に連続して、それぞれフレキ部b2を収納するフレキ収納部15が形成されており、前記各フレキ収納部15の内底面15aが各主収納部10からみて外方側ほど下方に傾斜した傾斜面をなすように凹設されてなる場合を示している。
【0046】
図の場合は、容器本体の4つの主収納部10が前後左右に各2つずつ並列して形成されるとともに、前後方向に並列する2つの主収納部10の各フレキ収納部15が、前後方向中央で対向して形成されており、傾斜面をなす内底面15aの最低位部で連続して形成されている。左右に並列する二つの主収納部10、10間及びフレキ収納部15,15間に、外周部の側壁14a〜14dと同高さの仕切り壁24が設けられている。前後に並列する主収納部10,10間の部分は、板状体Bのフレキ部b2の両側端部の受け部26となる部分を残して、フレキ収納部15,15が連続して形成されているが、両フレキ収納部15,15間にも仕切り壁を形成しておくことができる。
【0047】
この実施例の容器本体1の前記主収納部10及びフレキ収納部15は、通常1枚の板状体Bのパネル本体部b1及びフレキ部b2を収納できる深さで比較的浅く形成されるが、数枚の板状体Bを収納できるように形成して実施することもできる。
【0048】
なお、前記主収納部10及びフレキ収納部15の配置数、配置方向は、図示するものには限らず、各主収納部10と各フレキ収納部15を同方向にして配置することも、また、2枚の板状体のみを並列して収納できるように配置形成して実施することもできる。
【0049】
いずれの場合も、各主収納納部10に連続するフレキ収納部15の内底面15aを、主収納部10から外方側に傾斜した傾斜面をなすように形成して実施する。好ましくは、上記した実施例の場合と同様に、前記各フレキ収納部15の内底面15aが前記各主収納部10の内底面10aからアール曲面で連続して傾斜面をなしているものとする。これにより、フレキ収納部15に収納されるフレキ部b2の折れ曲がりや屈曲変形を防止できることになる。
【0050】
前記の搬送用容器A2の場合、容器本体1の側壁上端部には、内側に凸状縁11を残して外側に切欠段部12が形成されるとともに、容器本体1の下面側の外周部には、段積みの際に下段容器の前記側壁上端部の前記切欠段部12に嵌合する凸部25が設けられており、該凸部25が前記切欠段部12に嵌合した状態で段積みできるようになっており、この嵌合状態において、主収納凹部10の底部13上に板状体Bを収納できる空間を確保できるように形成されている。通常、前記空間は、1枚の板状体B、特には表裏面にフィルムや紙等の保護シート(図示せず)を重ねて保護した状態の板状体Bを段積み荷重を負荷させないようにして収納保持できて、かつ板状体Bの過度の浮き上がりを規制できるように形成される。
【0051】
この実施例の場合も、各主収納部10の底部13の周縁部には、底部13上に収納される板状体Bのパネル本体部b1の周縁の当接を回避するための凹部18が形成され、各主収納部10の四隅部には上下方向の切欠部(図示省略)が必要に応じて形成される。さらに左右の側壁14b,14d及び仕切り壁24には、上下方向の凹溝状をなす板状体Bの収納及び取り出しに利用できる切欠凹部20が形成されている。
【0052】
前記搬送用容器A2の場合は、例えば表裏面にフィルムや紙等の保護シートが貼着され保護された複数のフレキ部付き板状体Bのパネル本体部b1を、容器本体1の複数の各主収納部10に収納するとともに、該パネル本体部b1に連設された各フレキ部b2を前記各主収納部10に連続して形成された各フレキ収納部15に収納する。このようにして板状体Bを収納した容器本体1を図17のように、上層の容器本体1の下面側の外周部に形成された凸部25を、下層の容器本体1の側壁上端部に有する切欠段部12に嵌合した状態で段積みする。必要に応じて、最上段には板状体を収納していない空の容器本体1を蓋として段積みしておく。こうして段積みした容器全体にベルト掛け(図示省略)して輸送等に供する。
【0053】
この実施例においても、パネル本体部b1に連設されたフレキ部b2をフレキ収納部15の内底面15aに沿わせるように収納することにより、パネル本体部b1より肉厚の大きいフレキ部b2を、パネル本体部b1より高くすることなく収納保持でき、容器本体1の底部13の肉厚を過度に大きくしなくても、フレキ部b2の保護を良好になすことができる。また、容器全体の厚みの増大を抑えることができるため、輸送車両等への積載効率を低下させずに効率良く搬送することができる。
【符号の説明】
【0054】
A1,A2…搬送用容器、B…板状体、b1…パネル本体部、b2…フレキ部、b3…配線基板部、b4…連接部、1…容器本体、3…蓋体、10…主収納部、10a…内底面、11…凸条縁、12…切欠段部、13…底部、14a,14b,14c,14d…側壁、15…フレキ収納部、15a…内底面、16,26…受け部、17…アール曲面部、18…凹部、18a…凹部の底面、19…切欠部、20…切欠凹部、21…切欠部、24…仕切り壁、25…凸部、31…周縁部、32…嵌合壁部、33…凹部、34…凸縁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂発泡体から成形され、上方に開口する主収納部が形成された平面矩形の容器本体を有し、前記主収納部に、1枚もしくは複数枚のフレキ部付き板状体を平置き状態で収納して搬送する搬送用容器であって、
容器本体における前記主収納部の少なくとも一辺部に連続して、前記板状体に連設されたフレキ部を収納するフレキ収納部が形成されるとともに、該フレキ収納部の内底面が外方に向かって下方向きの傾斜面をなすように凹設されてなることを特徴とする板状体の搬送用容器。
【請求項2】
フレキ収納部の内底面が容器本体の前記主収納部の内底面からアール曲面で連続して傾斜面をなしている請求項1に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項3】
フレキ収納部の内底面から連続する側壁内面が下端部から上端に向かって外方へ傾斜した傾斜面をなしている請求項1又は2に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項4】
前記容器本体が、一つの主収納部に複数枚の板状体を重ねた状態で平置き状態にして収納するものであり、該容器本体の側壁上端部に対し被嵌自在な合成樹脂発泡体製の蓋体を備えてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の搬送用容器。
【請求項5】
前記容器本体が、複数の主収納部が間隔をおいて形成されるととともに、各主収納部の1辺部に連続して、それぞれフレキ部を収納するフレキ収納部が形成され、前記各フレキ収納部の内底面が各主収納部からみて外方側ほど下方に傾斜した傾斜面をなすように凹設されてなる請求項1に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項6】
各フレキ収納部の内底面が前記各主収納部の内底面からアール曲面で連続して傾斜面をなしている請求項5に記載の板状体の搬送用容器。
【請求項7】
前記容器本体の外周部における側壁上端部には、内側に凸部を残して外周側に切欠段部が形成され、容器本体の底部下面の周縁部には、同形の容器本体の前記側壁上端部の切欠段部に嵌合できる突縁が設けられ、複数の容器本体が前記側壁上端部の切欠段部と底部下面の突縁とが嵌合状態で段積み可能に設けられてなる請求項5または6に記載の板状体の搬送用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−60204(P2013−60204A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198255(P2011−198255)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】