説明

板状体の検出装置とケースポート及び保管装置

【課題】 板状体の正面を塞がずに、かつ光源と受光素子とを備えている投受光センサを用いて、板状体を確実に検出する。
【構成】 検出装置は板状体が所定位置に存在するか否かを検出する。検出装置は、板状体の一側面へ向けて斜めにスポット状の検出光を投光する光源と反射光を受光する受光素子とを備えている投受光センサと、投受光センサから見て板状体よりも遠方にあり、かつ板状体が存在しない場合、検出光を拡散反射する拡散反射部と、投受光センサへ入射する反射光の所定の強度以下であることから、板状体を検出する検出部、とを備えている。板状体の側面が透明の場合、板状体の側面へ入射した検出光は板状体の内部で複数回反射し投受光センサとは異なる方向へ出射し、板状体の側面が鏡面状の反射面の場合、板状体の側面へ検出光は斜めに入射して投受光センサとは異なる方向へ正反射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は板状体の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(JP4215079B)はレチクルの保管装置について開示し、レチクルは半導体等の露光に用いる板状のマスクである。特許文献2(JP2001-22053A)はケース内のレチクルの有無を検出するため、ケースの開口の正面からLED光をレチクルの側面へ投光し、レチクルの反対側の側面を通ってケースの最も奧の面で反射した光を検出することを開示している。しかしながらケースの正面にLED等を配置すると、ケースからのレチクルの出し入れを妨げる。そこで光源をケースの正面に対して斜めに配置し、受光素子をケースから見て光源と反対側に配置すると、光源と受光素子との位置合わせが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JP4215079B
【特許文献2】JP2001-22053A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の課題は、板状体の正面を塞がずに、かつ光源と受光素子とを備えている投受光センサを用いて、板状体を確実に検出することにある。
この発明の他の課題は、このような検出装置を備えたケースポート及び保管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、板状体が所定位置に存在するか否かを検出する板状体の検出装置であって、
前記板状体の一側面へ向けて斜めにスポット状の検出光を投光する光源と、反射光を受光する受光素子とを備えている投受光センサと、
投受光センサから見て板状体よりも遠方にあり、かつ板状体が存在しない場合の検出光の光路上にある拡散反射部、とを備え、
板状体の側面が透明の場合、板状体の側面へ入射した検出光は板状体の内部で複数回反射し投受光センサとは異なる方向へ出射し、板状体の側面が鏡面状の反射面の場合、板状体の側面へ検出光は斜めに入射して投受光センサとは異なる方向へ正反射するように、投受光センサが配置されていることを特徴とする。
【0006】
この発明の検出装置では、板状体が存在しないと検出光は拡散反射部へ入射し、検出光の一部は拡散反射により投受光センサに戻る。板状体は側面が透明でも鏡面でもよく、鏡面の場合斜めに入射した検出光は投受光センサとは逆向きに正反射し、投受光センサに戻ることはない。また透明の場合、板状体の内部で複数回反射して検出光が入射した面から出射し、出射光は投受光センサとは逆向きに進んで、投受光センサに戻ることはない。そして検出部は、投受光センサへ入射する反射光の所定の強度以下であることから、板状体を検出する。従って板状体の正面に投受光センサを配置せずに、板状体の有無を確実に検出できる。
【0007】
またこの発明は、前記板状体を収納しかつ正面に板状体の移載用の開口部を備えているケースを保管するケースポートであって、
ケースの収納部とこの発明の検出装置とを備え、
検出装置の投受光センサは、ケースの開口部からケースの内部へ斜めに検出光が入射するように配置され、
ケースの内側の左右の側面で、板状体が存在しない場合にケースの開口から入射した検出光が入射する位置に、前記拡散反射部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この発明では検出光は板状体の側面に斜めに入射するので、投受光センサをケースの開口部の正面を塞がない位置に配置できる。従って投受光センサはケースへの板状体の移載を妨げない。なおこの明細書で投受光センサを所定の条件を充たすように配置するとは、投受光センサの位置と検出光の光軸とが所定の条件を充たすように配置することを意味する。
【0009】
好ましくは、透明な板状体の内部へ入射した検出光が、検出光の光路に沿って板状体の開口部側の次の側面へ臨界角よりも大きな角度で入射するように、検出装置の投受光センサが配置されている。なお検出光が臨界角でこの面に入射すると、板状体の側面に沿って検出光が進んで、ケースの最も奧の面で正反射し、投受光センサへ戻る光路が生じる。検出光を板状体の開口部側の次の側面へ臨界角よりも大きな角度で入射させると、投受光センサへ戻る検出光は僅かで、誤検出を起こし難い。
【0010】
この発明はさらに、この発明のケースポートを備えた保管装置であって、
前記板状体をケースから取り出した状態で保管する保管部と、
前記ケースポートのケースから板状体を出し入れする移載部と、
検出装置の検出部による判定に基づいて移載部を制御する制御部、とをさらに備えていることを特徴とする。
【0011】
この保管装置ではケース内の板状体の有無を確実に検出でき、例えば板状体を既に収納しているケースにさらに別の板状体を収納しようとしたり、空のケースから板状体を取り出そうとしたりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例の保管装置の水平方向断面図
【図2】実施例でのケースポートの鉛直方向断面図
【図3】実施例で用いるケースの側面図
【図4】実施例でのケース内の板状体の検出を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に基づき、明細書の記載とこの分野での周知技術とを参酌し、当業者の理解に従って定められるべきである。
【実施例】
【0014】
図1〜図4に実施例を示す。図1は保管庫2を示し、4はケースポートで、ケースを出し入れすると共に保管するポートで、6はロードポートで、ポッドを出し入れするポートである。ケースもポッドも共にレチクルを保管し、形状は共に薄い直方体状で、ケースとポッドはレチクルを出し入れする際の手順と規格が異なる。ポート4,6は主として作業者がアクセするポートであるが、無人搬送車、天井走行車等もアクセスできるようにしても良い。また保管装置2の上部に、天井走行車等がアクセスするポートを別個に設けても良い。保管物品はレチクルに限らず、半導体ウェファー等でも良く、板状でケースに収納され、高度にクリーンな環境で保管するものである。
【0015】
8は回転棚で、ケース及びポッドから取りだしたレチクルを保管し、高さ方向に多段で、かつ鉛直軸回りに回転する。10はレチクル移載装置で、昇降ガイド13に沿ってターンテーブル15が昇降し、スカラーアーム等の伸縮自在なアーム17を備えて、アーム17の先端のハンド18でレチクルを移載する。12はポッド移載装置で、昇降ガイド14に沿ってターンテーブル16が昇降し、スカラーアーム等の伸縮自在なアーム18を備えて、アーム18の先端のハンド20でポッドを移載する。22はポッドオープナーで、図示しないポッドの内部へレチクルを保管したインナーケースを出し入れし、24はポッド棚でポッドを保管する。レチクル移載装置10は回転棚8の任意の間口とポッドオープナー22とケースポート4とにアクセスでき、移載装置12はポッド棚24の任意の間口と、ポッドオープナー22とロードポート6とにアクセスできる。移載装置10,12の構造と種類は任意である。
【0016】
26はコントローラで、保管装置2の各部を制御し、保管しているポッド、ケース、及びレチクルのIDと所在の位置、例えば回転棚8での間口アドレス、ケースポート4での棚内のアドレスを在庫ファイルに記憶する。そしてポッド、ケース、レチクルの出入りを記憶する。27,28は操作パネルで、ポッド及びケースの出し入れに関する入力を行い、コントローラ26は操作パネル27,28からの入力に従って、移載装置10,12と回転棚8及びポート4,6を制御する。無人搬送車、天井走行車等との間でケース及びポッドを搬出入する場合、コントローラ26は図示しない上位コントローラと通信し、その指示に従って保管装置2を制御する。
【0017】
図2はケースポート4の構造を示し、30はケース装填部で、例えば作業者は扉39を開けてケースを複数段に装填でき、ケースを装填する代わりに単に棚にケースを収納するようにしても良い。32は移載装置で、昇降ガイド33に沿って昇降する昇降台34と、昇降台上のスカラーアーム、スライドフォーク等の伸縮するハンド35とを備えている。移載装置32は、ケース装填部30内のケースとケース装填部30の例えば最上段のレチクル置場38との間で、レチクル等の保管物品を移載する。移載装置32の種類と構造は任意である。例えばレチクル移載装置10が直接にケース装填部30内のケースへアクセスするようにしても良い。
【0018】
ケースポート4内の支持体37に沿って、ケース装填部30の各段毎に検出装置36が設けられ、検出装置36は図3,図4に示すケースの正面の開口部42に対して斜めに検出光を投光する位置に配置されている。ケース装填部30の各段に別々の検出装置36を設ける代わりに、1個の検出装置を支持体37に沿って昇降させても良い。36’はレチクル置場38に設けた検出装置で、ハンド35等と干渉しない位置に配置され、例えばレチクルの端面へレーザ光等を照射して反射光を検出することにより、レチクルを検出する。検出装置36,36'はコントローラ26にレチクルの有無を報告し、コントローラ26はこの報告に基づいて移載装置32とレチクル移載装置10を制御する。しかし移載装置32はケースポート4内のローカルなコントローラで制御しても良い。
【0019】
図3はケースポート4で扱うケース40とハンド35とを示し、この明細書では図3の右側を前方と呼び、ケース40の前方の側面を正面と呼ぶ。またケースポート4等では、図2の右側を前方と呼ぶ。ケース40の正面には開閉自在な扉41があり、ケース装填部30の図示しない機構により開閉し、42は扉41により開閉する開口部である。ケース40は内部にレチクル44等の板状の物品を収納する。ケース40の内面は光の反射面で鏡面状ではなく、入射光の少なくとも一部が入射光の方向へ逆向きに反射する。なおこの明細書で鏡面とは拡散反射が無視できる面で、透明か不透明かと関係がない。またケースの内面が鏡面状の場合、検出光が最初に入射する位置に検出光を拡散反射もしくは回帰反射するフィルム、塗膜等の部材を設ける。
【0020】
レチクル44は平面視で矩形状で、材質は石英、ガラス、合成樹脂等の透明材料で、その4側面は鏡面状であるが、レチクル44の4側面は透明な場合も不透明な場合もある。レチクルの屈折率は1よりも高く、例えば40度付近に臨界角がある。なお保管物品はレチクルに限らず板状体、特に側面が鏡面状の板状体であれば良い。
【0021】
ケース装填部30内での、検出装置36とケース40との位置関係を図4に示す。検出装置36は半導体レーザ、気体レーザ等のレーザ50と受光素子52とを備え、レーザ50と受光素子52とで投受光センサを校正する。検出部54は、受光素子52で受光した反射光の強度が所定値以下でレチクル44が存在するものとし、反射光の強度が所定値を越えるとレチクル44が存在しないものとする。なおレーザ50に変えて、LED等の光をレンズでスポットのサイズがレチクル44の厚さ以下の平行光線に変えても良い。受光素子52はフォトダイオード等で、レーザ50からの光とほぼ逆向きの反射光を検出する。
【0022】
側面が透明なレチクルが存在すると、検出装置36からの光は光路L1に沿ってケース40の前面の開口部42から内部に斜めに入射角γで点P1に入射し、出射角βでレチクル44内に屈折する。また検出光の一部は点P1で出射角γで正反射し、光路L2に沿って進む。なおレチクル44の屈折率をnとすると、nsinβ=sinγである。点P2での入射角をαとすると、α=π/2−βで、入射角γを選ぶことにより、αを臨界角よりも大きくすることができる。検出光は点P3でレチクル44から出て、点P4でケース40の最も奧の面で反射し、点P5でレチクル44内に戻り、点P6でも入射角はαで臨界角よりも大きく、P7でレチクル44から出て、光路L3に沿って進む。光路L3は検出装置36とは逆向きである。ここで点P2での入射角αを臨界角よりも大きくすることの意義を説明する。入射角αが臨界角と等しいと、レチクル44の側面に沿って進む光が生じ、この光は光路L4を辿って、例えば元の点P2から一部が検出装置36へ戻り、誤検出の原因となる。これに対して角度αが臨界角よりも大きいと、点P4で検出光の一部が拡散反射して点P3へ戻り、光路L1を逆向きに辿ることがあるが、大部分の検出光は点P5へ進み、検出器36へは戻らない。レチクル44内で検出光は、開口部42に隣接する側面S1へ臨界角よりも大きな入射角αで入射して反射し、次に開口部42とは反対側の側面S2で反射する。検出光は次いで、側面S1とは反対側の側面S3でも臨界角よりも大きな入射角αで入射して反射し、開口部42側から検出器36とは逆向きに出射角γで出射する。
【0023】
側面が不透明で鏡面状のレチクルが存在すると、検出光は点P1で反射角γで正反射して光路L2を辿り、検出装置36には戻らない。レチクル44が存在しないと、検出光は拡散反射部43で拡散反射し、一部が検出装置36へ戻る。
【0024】
以上のように、検出装置36へ検出光が強く戻るのは、レチクル44が存在しない場合だけであり、反射光の強度を検出部54で判定すると、レチクル44の有無が分かる。しかも検出装置36はケース40の開口部42の前方を塞がず、移載装置32等と干渉しない。また透明なレチクルに対して、検出光が開口部42の次の側面へ臨界角よりも大きな入射角で入射するようにすると、検出装置36へ戻る検出光を特に少なくできる。さらに検出光がレチクルの3側面で順に反射して開口部44側の面へ戻るようにすると、簡単に検出光を検出装置36とは反対側へ出射させることができる。

【符号の説明】
【0025】
2 保管装置
4 ケースポート
6 ロードポート
8 回転棚
10 レチクル移載装置
12 ポッド移載装置
13,14 昇降ガイド
15,16 ターンテーブル
17,18 アーム
19,20 ハンド
22 ポッドオープナー
24 ポッド棚
26 コントローラ
27,28 操作パネル
30 ケース装填部
32 移載装置
33 昇降ガイド
34 昇降台
35 ハンド
36 検出装置
37 支持体
38 レチクル置場
39 扉
40 ケース
41 蓋
42 開口部
43 拡散反射部
44 レチクル
50 レーザ
52 受光素子
54 検出部

L1〜L3 光路
P1〜P7 点
S1〜S3 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体が所定位置に存在するか否かを検出する検出装置であって、
前記板状体の一側面へ向けて斜めにスポット状の検出光を投光する光源と、反射光を受光する受光素子とを備えている投受光センサと、
投受光センサから見て板状体よりも遠方にあり、かつ板状体が存在しない場合、検出光を拡散反射する拡散反射部と、
投受光センサへ入射する反射光の所定の強度以下であることから、板状体を検出する検出部、とを備え、
板状体の側面が透明の場合、板状体の側面へ入射した検出光は板状体の内部で複数回反射し投受光センサとは異なる方向へ出射し、板状体の側面が鏡面状の反射面の場合、板状体の側面へ検出光は斜めに入射して投受光センサとは異なる方向へ正反射するように、投受光センサが配置されていることを特徴とする、板状体の検出装置。
【請求項2】
前記板状体を収納しかつ正面に板状体の移載用の開口部を備えているケースを保管するケースポートであって、
ケースの収納部と請求項1の検出装置とを備え、
検出装置の投受光センサは、ケースの開口部からケースの内部へ斜めに検出光が入射するように配置され、
ケースの内側の左右の側面で、板状体が存在しない場合にケースの開口から入射した検出光が入射する位置に、前記拡散反射部が設けられていることを特徴とする、ケースポート。
【請求項3】
透明な板状体の内部へ入射した検出光が、検出光の光路に沿って板状体の開口部側の次の側面へ臨界角よりも大きな角度で入射するように、検出装置の投受光センサが配置されていることを特徴とする、請求項2のケースポート。
【請求項4】
請求項2または3のケースポートを備えた保管装置であって、
前記板状体をケースから取り出した状態で保管する保管部と、
前記ケースポートのケースから板状体を出し入れする移載部と、
検出装置の検出部による判定に基づいて移載部を制御する制御部、とをさらに備えていることを特徴とする、保管装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−74012(P2013−74012A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210451(P2011−210451)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】