説明

板状体の欠陥検出方法及び欠陥検出装置

【課題】板状体のエッジ部の欠陥を検出することができる板状体の欠陥検出方法及び欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】欠陥検出方法は、板状体11の出射面12側から撮像して得られた画像をデジタル処理することで板状体11の欠陥を検出する。板状体11の出射面12に隣接している入射面13に、板状体11の内部を透過した透過光が入射面13から出射されるように光を照射し、透過光を結像させることにより板状体11の画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体の欠陥検出方法及び欠陥検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、感光体上のトナーを除去するために透明または半透明の板状体であるクリーニングブレードが用いられる。このような画像形成装置では、クリーニングブレードのエッジ部でトナーを掻き落とすことによってトナーを除去する。したがって、クリーニングブレードのエッジ部に欠陥がある場合には、良好にトナーを除去できないことがある。そのため、画像形成装置用のクリーニングブレードに用いられる板状体では、製造時に、特にエッジ部における欠陥の有無を判別することが重要である。
【0003】
板状体の欠陥の有無を判別する方法として、人手で行う方法や視覚による方法などの検査員による方法があった。人手で行う方法に関しては、板状体の製品の高精度化に伴い、微小な欠陥を発見する必要が生じ、そのために検査員が長時間集中しなければならない根気のいる作業となり、検査員の精神的な負担も肉体的な疲労も増大することになる。また、視覚による検査は、検査員の主観的な検査判定であって、検査員の判断に依存し、検査員が異なる場合や、極端な場合において同じ検査員であっても、検査時間の推移によって、検査水準が変化する可能性がある。
【0004】
上述した検査員による方法に代わる方法として、CCDカメラなどの電子撮像装置による欠陥検出方法も明らかにされている(特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0005】
撮像装置を用いた欠陥検出方法では、一般的に、板状体に光を照射し、板状体の表面に光を入射させ、撮像装置が板状体の表面に反射された光を結像させることにより、板状体の表面を撮像する。この方法では、板状体の表面に欠陥があった場合には、その欠陥部分で光の乱反射が起こることを利用して板状体の表面における欠陥の有無を判別することができる。すなわち、撮像装置によって撮像した画像を、映像信号化し、その映像信号を二値化処理して、欠陥を検出することができる。
【特許文献1】特開平2−257007号公報
【特許文献2】特開平4−305144号公報
【特許文献3】特開2007−198761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した板状体の表面で反射させた光を結像させる方法では、板状体の表面の欠陥は検出することができるが、板状体の内部の欠陥は検出することはできない。
【0007】
さらに、板状体の表面の欠陥を良好に検査することができるのは板状体の表面に歪みが無い場合に限られる。
【0008】
図7〜図9は板状体の表面に入射された入射光及び板状体の表面に反射された反射光の軌道を示した図である。図中において、入射光の軌道を実線で示し、反射光の軌道を破線で示している。
【0009】
図7に示すように、板状体111の表面に歪みが無い場合には、光を入射させる板状体111の入射面113において光が一方向に反射されるため、板状体111の入射面113を良好に撮像することができる。したがって、この場合には、板状体111の表面の欠陥を良好に検出することができる。
【0010】
しかし、板状体の表面に歪みがある場合には、板状体の表面を良好に撮像できない場合がある。板状体の表面の歪みは、たとえば、図8に示すように、板状体211の入射面213に隣接している面が表面処理され表面処理材料217で覆われている場合に発生する。すなわち、このような場合には、板状体211が正確に加工されていても、板状体を形成している材料と表面処理材料との熱膨張率の差などにより、板状体211のエッジ部が変形する。
【0011】
板状体211のエッジ部が変形することにより入射面213が歪んでいると、この部分に入射した入射光が様々な方向に反射される。また、図9に示すように、入射面213に光を入射させる方向を変更した場合にも、同様に、入射光は様々な方向に反射される。このような場合、撮像装置が反射光を結像させて画像を得ても、得られた画像により板状体211の欠陥の有無を判別することが困難である。
【0012】
そこで本発明は、板状体のエッジ部の欠陥を検出することができる板状体の欠陥検出方法及び欠陥検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本実施形態の欠陥検出方法は、板状体を該板状体の第1の面側から撮像して得られた画像をデジタル処理することで前記板状体の欠陥を検出する欠陥検出方法において、前記板状体の前記第1の面に隣接している第2の面に、前記板状体の内部を透過した透過光が前記第1の面から出射されるように光を照射し、前記透過光を結像させることにより前記画像を得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
板状体のエッジ部の欠陥を検出することができる板状体の欠陥検出方法及び欠陥検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本発明の一実施形態に係る板状体の欠陥検出方法においては、撮像装置によって撮像する板状体の第1の面である出射面にほぼ直交して隣接している第2の面である入射面に対し、投光装置によって光を照射する。投光装置は、照射した光が入射面から板状体に入射して、内部を透過した透過光が、出射面から出射されるように配置する。また、撮像装置は、板状体の出射面から出射された透過光を受光できるように板状体の第1の面側である出射面側に配置する。これにより、撮像装置が板状体の出射面から出射された透過光を結像させた画像を得ることができる。
【0017】
投光装置よりの光が通過する板状体の入射面、出射面または内部に欠陥があった場合には、欠陥のある部分は、光が透過しにくいため、撮像装置が撮像した画像に影成分として写し出される。本実施形態に係る欠陥検出方法では、撮像装置が撮像した画像の中の影成分を板状体の欠陥に対応する部分として認識することにより、板状体の欠陥を検出する。
【0018】
この欠陥検出方法では、板状体の一辺である入射面と出射面との境界線付近の板状体の部分であるエッジ部の欠陥も良好に検出することができる。その際、板状体の表面に反射された反射光でなく、板状体の内部を透過した透過光を結像させた画像を用いるため、板状体のエッジ部が製品公差内で変形し、板状体の表面に歪みがある場合であっても、その影響を受けにくい。
【0019】
本実施形態に係る欠陥検出方法では、撮像装置と、板状体の入射面を含む平面との間になす角度θ1を0度以上20度以下に設定して撮像装置を設置し、投光装置と、板状体の入射面との間になす角度θ2を15度以上60度以下に設定して投光装置を設置する。以下により詳しく説明する。
【0020】
ここで、板状体の出射面から離れる方向に延び、入射面に平行な平面との間になす角度θ1が0度以上20度以下である第1の軸をm軸とする。本実施形態においては、撮像装置によって板状体を出射面側からm軸に平行な向きに撮像する。また、本実施形態においては、m軸は、出射面及び入射面にほぼ直交する平面内にあり、板状体の出射面から離れるとともに入射面を含む面からも離れる方向に延びている。
【0021】
また、板状体の入射面から離れる方向に延び、入射面との間になす角度θ2が15度以上60度以下である第2の軸をn軸とする。本実施形態においては、投光装置によって板状体の入射面にn軸に平行な方向から光を照射する。また、本実施形態においては、n軸は、出射面及び入射面にほぼ直交する平面内にあり、板状体の入射面から離れるとともに出射面を含む面からも離れる方向に延びている。
【0022】
このように構成することにより、透明または半透明の板状体のエッジ部の欠陥を良好に検出することができることがわかった。また、板状体に透過させた透過光を結像させた画像を用いることにより、板状体の入射面の欠陥のみでなく、板状体の出射面及び内部の欠陥も同時に検出することができる。
【0023】
本実施形態においては、対象となる測定物は、透明または半透明の板状体である。板状体の製品公差の観点から、撮像した画像において製品の表面の荒れ具合及び反射率のばらつきに関わり無く、画像処理による欠陥の有無の判別が可能なように構成する必要がある。そのために投光装置の配置位置及び撮像装置の配置位置、また、これらと画像処理との合体構成を可能にする条件を詳細に検討した。
【0024】
その結果、単に、投光装置よりの光を受光できる位置に撮像装置を配置すればよいのではなく、投光装置及び撮像装置には検査する板状体の欠陥を良好に検出できる適合配置があった。すなわち、前述したように投光装置及び撮像装置を配置することにより板状体の欠陥を良好に検出できることがわかった。
【0025】
なお、撮像した画像において板状体の出射面や入射面の粗さ、板状体の入射面の光の反射率のばらつきによる影響を軽減できるような条件や、投光装置の配置位置及び撮像装置の配置位置との関係の最適な条件は実験的に得られている。
【0026】
また、検査の対象である板状体は、入射面に照射する光量に対する出射面から出射される光量の比率、すなわち入射面から出射面への光透過率が10%以上50%以下である場合に板状体の欠陥を特に良好に検出できることがわかっている。
【0027】
次に、本実施形態に係る欠陥検出方法に用いる欠陥検出装置の各要素を説明する。
【0028】
撮像装置としては、CCDカメラを使用し、撮像装置は撮像範囲内に板状体の出射面の検査対象範囲が入るように設置する。
【0029】
本実施形態において撮像装置として用いたCCDカメラはカメラの画素配置が2次元平面のものとなっている2次元用のカメラを用いた。カメラには1画像につき約30万画素のもので、1画像に含まれる約30万の画素は各々アナログ階調となっており256段階の光量に分割されているものを選択した。しかし、撮像装置は、透明または半透明の板状体の出射面を撮像可能な撮像装置であればこのカメラ仕様に限定するものではない。
【0030】
撮像装置に用いるカメラレンズとしては、ディストーション(歪曲)が低減された高解像度型のレンズを用いる。本実施形態においては、TVディストーションが0.3%以内で、フォーカスとアイリス絞りは手動で調整可能なレンズを用いた。しかし、カメラレンズは、板状体の出射面を撮像可能なカメラレンズであればこの仕様に限定するものではない。
【0031】
撮像装置の焦点は、板状体の出射面を撮像可能な位置に配置する必要がある。また、板状体の内部を透過した光が出射される出射面が、撮像装置の被写界深度内に入ることを要する。なお、被写界深度に関しては、フォーカスとアイリス絞りにより、手動で調整することにより調節可能である。
【0032】
検査時には板状体をステージ部により移動させることによって、板状体の出射面の撮像装置の撮像範囲内にある部分を変更させながら、撮像装置によって撮像範囲内にある部分を逐次撮像し、板状体の出射面の検査対象範囲全域を撮像する。撮像装置によって撮像された各部における画像がつなぎ合わされることにより、板状体の出射面の検査対象範囲全域の画像が得られる。
【0033】
そして、撮像装置によって撮像された画像を取り込み、取り込んだ画像をデジタル処理し、欠陥がある場合には、ステージ部より出されているトリガ信号と取り込み画像の画像番号とを照合する。これと同時に欠陥が発見された画像における画像番号と、画像内での位置情報を算出し、これらを組み合わせることによって検査物である板状体における不良箇所の位置情報を得る事を可能にさせている。同時に、欠陥の大きさ、1回の検査における欠陥の数等も記録して表示可能としておく。
【0034】
投光装置には、板状体の表面の光の反射率のばらつきの影響及び光の照射ムラを軽減できるようにするため、検査する板状体側にフィルタを設けている。このフィルタは、光を拡散させるための拡散板であり、透過率が85%、拡散角度10°のものを使用した。しかし、フィルタは、板状体の表面及び内部の欠陥を認識させることを損なうものでなければ、この条件に限定するものではない。
【0035】
また、投光装置には、検査する板状体側に集光レンズを装備させる。集光レンズは集光レンズの出射端より150mmの位置において、集光比率124.5%、集光径φ48[mm]のものを使用したが、板状体の表面及び内部の欠陥を認識させることを損なうものでなければ、この条件に限定するものではない。
【0036】
撮像装置には、投光装置以外からの外乱光が撮像装置へ入射することを軽減できるようにするため偏光フィルタを設けている。本実施形態において、偏光フィルタは撮像装置に設けられたカメラレンズの光の入射端側に配置した。このような条件にすることによって、画像取り込み、エッジ部の位置の抽出、検査領域の抽出を行い、輝度変換をし、ノイズ軽減のために平滑化処理を行い、板状体の表面及び内部の欠陥検出が良好に行えるようになる。
【0037】
取り込んだ画像には、データの伝送時に発生する外因的な影響によるノイズ、カメラの画素欠けによるノイズ等を低減させる為、平滑化処理を行う。そして平滑化処理に関しては、製品の表面粗さの影響を軽減させるように条件設定している。したがって、平滑化処理において、検出条件、設置条件の違いにより調整可能なように設定値の数値変更が可能なようにしておく。
【0038】
このとき、取り込み画像の平滑化処理の画素調整値、つまり平均化する際の隣り合う画素の範囲は、取り込み画素数内において任意の数値に設定可能である。この画素調整値は、製品の表面粗さの影響を軽減し、かつ表面の凹凸形状の欠陥を検出可能にさせるという観点より3〜5付近が望ましい。しかし、製品の欠陥を検出可能であれば、この数値に限定するものではない。
【0039】
上述した平滑化処理を行った後、欠陥を検出する為、二値化処理及び光量差分処理等を行う。
【0040】
二値化処理とは、画像内の、設定した光量以下の部分を影成分と判断し、その部分を板状体の欠陥に対応する部分と認識させるものである。
【0041】
光量差分処理とは、取り込んだ1つの画像を、設定された数の互いに大きさの等しい枠によって分割し、その分割した各枠内の領域における平均光量を算出する。次いで、各枠における平均光量と、その枠に隣り合う枠における平均光量との差分値を計算する。その差分値の最大値を算出し、設定された基準値とその最大値とを比較することにより欠陥を有する板状体を見つけることができる。
【0042】
この光量差分処理においては、互いに隣り合う枠における平均光量を比較するかわりに、1画像前の画像を用い同じ場所での枠の平均光量の差分を用いて算出してもよい。
【0043】
このような処理を、取り込んだ画像に対し、逐次行っていくことにより、板状体の不良箇所を見つけ出すことが可能となる。なお、二値化処理及び光量差分処理等を用いた方法は、透明または半透明の板状体の表面及び内部の欠陥の検出に適するものであるから、画像形成装置におけるクリーニングブレード部材として用いるものの欠陥検出方法として優れたものでもある。
【実施例】
【0044】
以下実施例に基づき本実施形態のより具体的な実施の形態を説明する。
【0045】
図1は、本実施形態に係る欠陥検出方法に用いることができる欠陥検出装置の概略構成図である。図1は、検査の対象である板状体11の出射面13及び入射面12にほぼ直交する側面側から見た図である。
【0046】
欠陥検出装置100は、投光装置39と撮像装置31とを有している。投光装置39は、光源38と、投光ファイバ部35と、集光レンズ36と、拡散フィルタ37と、を備えている。また、撮像装置31には、カメラレンズ32と、偏光フィルタ33と、が設けられている。拡散フィルタ37は、光を拡散させるための拡散板である。
【0047】
また、欠陥検出装置100は、ステージ部20と、処理装置21と、表示装置22と、駆動制御装置23と、モータードライバ24と、微動ステージ25a,25bと、を備えている。処理装置21は、撮像装置31が撮像して得られた画像をデジタル処理することによって板状体11の欠陥を検出する処理手段である。
【0048】
処理装置21、表示装置22、駆動制御装置23、モータードライバ24、撮像装置31、光源38は図示しない電源によって電力が供給される。
【0049】
図2は、図1に示した欠陥検出装置の撮像装置、投光装置及びステージ部を拡大して示した図である。ここで、検査対象である板状体11の各部分を、図2に示すように、出射面12、入射面13、エッジ部15、とする。
【0050】
図2に示した第1の軸であるm軸は、板状体11の出射面12から離れる方向に延び、入射面13に平行な平面との間になす角度がθ1である軸である。撮像装置31は、板状体11を出射面12側からm軸に平行な向きに撮像するように配置されている。また、欠陥検出装置100において、m軸は、図2に示すように、板状体11の出射面から左斜め下向きに延びている。
【0051】
また、図2に示した第2の軸であるn軸は、板状体11の入射面13から離れる方向に延び、入射面13との間になす角度がθ2である軸である。投光装置39は板状体11の入射面13にn軸に平行な方向から光を照射するように配置されている。また、欠陥検出装置100において、n軸は、図2に示すように、板状体11の入射面13から右斜め上向きに延びている。
【0052】
透明または半透明の板状体11のエッジ部15に照射された光の軌道を図3、図4に示している。図中において、入射光及び透過光は実線で示し、反射光は破線で示している。表面処理材料17は板状体11の出射面12に塗布された透明なウレタン材料である。
【0053】
図3に示した板状体11は、出射面12に表面処理材料17が塗布されているためエッジ部15の形状が製品公差内で変形している。図4は出射面に表面処理材料を塗布せず製品設計通りの形状の板状体のエッジ部を示している。欠陥検出装置100は図3及び図4の双方に示した形状の板状体のエッジ部において良好な撮像を可能にさせる光学配置になるように構成されている。
【0054】
図1に示すように、投光装置39は、光源38より発せられる光が、投光ファイバ部35、集光レンズ36、拡散フィルタ37を通過し、板状体11の入射面13に照射されるように構成されている。
【0055】
投光装置39から板状体11の入射面13に照射された光は、板状体11の入射面13にて反射される成分と、板状体11の内部を透過する成分と、に分かれる。板状体11を透過する透過光は、板状体11の出射面12から出射される。その際、板状体11の表面の欠陥や内部の欠陥部16では光が透過しにくい為、それらの部分で光成分が弱められ、撮像される画像における影成分となる。また、板状体11の表面や内部の欠陥が存在しない場合においては、板状体11の出射面12を撮像した画像には影成分は発生しない。
【0056】
本実施例の欠陥検出装置100では、投光装置39の焦点位置は、撮像装置31の焦点位置と異なる位置である、板状体11の入射面13上に設定されている。しかし、投光装置39の焦点位置はこれに限らず様々な位置に設定することが可能である。
【0057】
また、投光装置39の光の照射角度θ2は本実施例において、板状体11の入射面13の製品公差に関わり無く、板状体11を非常に良好に検査可能にする観点より42°に設定した。しかし、この照射角度θ2は、板状体11の表面及び内部の欠陥を良好に撮像可能な角度である15度以上60度以下であればよい。また、板状体11の出射面12を良好に撮像させるという観点より、板状体11の製品寸法公差は±150[μm]以下であることが好ましい。
【0058】
カメラレンズ32は、近接撮像時に最良な光学性能が得られるような近接撮像専用レンズを用い、フォーカス機能及びアイリス絞り機能を有し光量を調節可能なものを使用した。撮像装置31には、像がハレーションを起こすことなく、精度よく結像できるようなものを選択した。
【0059】
撮像装置31の焦点位置は、板状体11の製品公差に関わり無く良好な画像を撮像するという観点より、板状体11の出射面12上に設定している。また、撮像装置31の被写界深度は、板状体11の出射面12の製品公差によるばらつき幅を十分にカバーできる範囲となるように設定する必要がある。被写界深度の幅の大きさはカメラレンズ32付随の絞り機能により変更可能である。本実施例において被写界深度の幅の大きさは0.5[mm]程度に設定したが、板状体11の表面及び内部の欠陥を認識できる範囲であればよいので、この大きさに限定するものではない。
【0060】
撮像装置31の撮像角度θ1は、取り込み画像において板状体11を非常に良好に検査可能にする観点より、本実施例において8°に設定した。しかし、この撮像角度θ1は、板状体11の表面及び内部の欠陥を良好に検出できる角度である0度以上20度以下であればよい。
【0061】
処理装置21は、内蔵する記憶装置に記録された画像データをもとに、デジタル処理を行う所であり、画像処理の流れとしては、取り込んだ画像を、まず初めにノイズ等を取り除く為、フィルタ処理(平滑化処理)を行っている。これは、1つの画素が突発的に周囲の隣り合う画素と大きく異なる光量を示すなど、ノイズであると判断される画素がある場合に、このようなノイズを除去するために行う。さらに、フィルタ処理によって、板状体11の表面粗さの画像への影響を軽減させることもできる。
【0062】
また、板状体11の製品公差に関わり無く欠陥の有無の判別を可能にするため、画像中の平均光量値を算出し、得られた平均光量値を元に、画像全体の光量を増減させる処理を加えている。
【0063】
これらの画像をもとに、板状体11の表面及び内部の欠陥箇所を認識できるため、板状体11の表面及び内部に存在する欠陥箇所の検出が可能である。
【0064】
検査の際には、カメラレンズ32の倍率、撮像装置31の設置角度、撮像可能範囲の位置などの設定情報はあらかじめ処理装置21へ登録しておく。これらの情報を元に、欠陥の位置情報、欠陥の大きさを処理装置21上で算出し、その結果を記憶装置に記録し、同時に表示装置22へ出力する。
【0065】
また処理装置21は、駆動制御装置23と連動し、設定した計測分解能に従ってモータードライバ24を制御し、板状体11の検査位置を順次変えていくことで、板状体11の出射面12の検査領域全域を検査することが可能になっている。
【0066】
図5は、図1に示した欠陥検出装置の全体の動作の流れを示したフローチャートである。欠陥検出装置100の動作については図5に示すようなフローで処理されていくものである。図5を参照して欠陥検出装置100の動作のフローの概略について説明する。
【0067】
欠陥検出装置100は上述したような検査を行う検査部以外に、図示しないハンド部と、図1等に示したステージ部20と、を備えている。ここで、ワークとは、透明または半透明の板状体11などの検査対象物を指す。
【0068】
ハンド部はワークをステージ部20のワーク台に載せる機能と、検査部の結果を受けてワーク台より検査を終えたワークを取り外し、それぞれのコンベアに載せる機能と、を有するものである。ステージ部20は、ワークがワーク台に載せられた際にワークを一定位置に把持可能なようにする為の突き当て機能や、移動中にワークがずれないようにするチャック機構を有するものである。検査部は、ワークの表面及び内部の欠陥を検出する機能以外に、ハンド部及びステージ部20の制御を行う制御機能も有している。
【0069】
ステージ部20は、撮像装置31が撮像すべき領域、つまりワークの検査領域全てを撮像装置31に撮像させるためにワークを移動させるように構成されている。ステージ部はワーク台を保持しているリニアステージを移動させることにより、ワーク台に載せられたワークを移動させる。
【0070】
ステージ部20では、はじめに、ハンド部によって搬送されたワークがワーク台にセットされる。そして、セットされたワークを位置決めするために、突き当てを前進させる。その後、チャック機構でワークを把持することにより、ワークを固定し、移動中にワークがずれないようにする。チャック機構が閉じ、ワークを把持している状態になったら、チャック機構以外からの力が働かないようにするという観点より、突き当てを後退させる。
【0071】
突き当てが後退させた後、ステージ部20では、駆動制御装置23よりの制御信号がモータードライバ24に送られワーク台を載せたリニアステージが移動を開始する。リニアステージが移動することによりワークを載せたワーク台を、撮像装置31が撮像すべき領域、つまりワークの検査領域全てを撮像装置31に撮像させるように移動させた後、リニアステージは移動を終了する。
【0072】
リニアステージが完全に停止した後に、チャック機構が開きワークの取り出しを可能にさせ、検査部の結果を待ってワークはハンド(2)によりワーク台から取り外される。ワーク台からワークが取り出された後、ワーク台はステージ開始位置に戻り、別のワークを載せられるために待機する。ワーク台から取り出されたワークは、検査部の結果を待ってハンド(2)によりそれぞれの結果に応じたコンベアに分別されるようになっている。
【0073】
検査部は、ステージ部20にワークを載せられた際、発信されるトリガ信号を受けて、画像処理の為のメモリの初期化、ウインドウの設定等の初期設定を開始する。また、検査部は、ステージ部20が動作を開始し、ワークの撮像すべき領域が撮像装置31に接近してきた際に発信されるトリガを受けて、画像の取り込みを開始する。撮像装置31が撮像すべき領域、つまりワークの検査領域全てを撮像し、画像処理を行い、結果を集計する。集計した結果を結果I・Oとして、ハンド部に結果別のコンベアに運ばせる為の信号を送る。
【0074】
ハンド部、ステージ部及び検査部がそれぞれ連携しこれらの動作を繰り返すことにより、複数本のワークを短時間に撮像することを可能にしている。
【比較例】
【0075】
比較例として、本実施形態において用いた投光装置及び撮像装置と同様の投光装置及び撮像装置を図6のように配置する方法にて検査を行った。この欠陥検出方法では、投光装置から板状体の入射面に光を照射し、撮像装置が板状体の入射面に反射された反射光を結像させることにより板状体の入射面を撮像する。これにより、板状体の入射面の欠陥を検出する。
【0076】
検査に用いた板状体サンプルとしては、入射面にスジ状の凹凸形状の欠陥があるもので、表面の粗さ及び光透過率が各々のサンプルにより違うものを100本用意した。また、スジ状の凹凸形状の高さ方向の大きさはレーザー測長器による測定により、高さ方向5[um]〜10[um]程度であったものを用いた。
【0077】
この方法によって、板状体の入射面に歪みがない場合、板状体のエッジ部における入射面の欠陥の検出が可能であった。しかし、板状体の出射面が表面処理され、エッジ部が良品製品の寸法公差内で変形した形状の場合には、板状体のエッジ部における入射面の欠陥を良好に撮像できない条件のサンプルがあることが確認された。このような条件のサンプルを含めたサンプルを用い検査を行った場合、板状体の表面粗さ及び光透過率に関わらず100本中47本のサンプルにおいてスジ状の凹凸形状の欠陥の検出が可能であった。
【0078】
一方、実施例における板状体の欠陥検出方法にて検査を行った場合、板状体の寸法公差内の形状の変形量、表面粗さ及び光透過率に関わらず100本中98本のサンプルにおいてスジ状の凹凸形状の欠陥の検出が可能であった。
【0079】
このことより、実施例における欠陥検出方法は比較例における欠陥検出方法より正確に板状体の検査が可能であるということがわかった。さらに、実施例における欠陥検出方法は、板状体の入射面だけでなく、板状体の内部及び出射面の欠陥も同時に検出できる点でも、比較例における欠陥検出方法より優れている。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る欠陥検出方法に用いることができる欠陥検出装置の概略構成図である。
【図2】図1に示した欠陥検出装置の撮像装置、投光装置及びステージ部を拡大して示した図である。
【図3】板状体のエッジ部に照射された光の軌道を示した図である。
【図4】板状体のエッジ部に照射された光の軌道を示した図である。
【図5】図1に示した欠陥検出装置の動作の流れを示したフローチャートである。
【図6】本願発明に関連する欠陥検出装置の概略構成図である。
【図7】板状体のエッジ部に照射された光の反射光の軌道を示した図である。
【図8】板状体のエッジ部に照射された光の反射光の軌道を示した図である。
【図9】板状体のエッジ部に照射された光の反射光の軌道を示した図である。
【符号の説明】
【0081】
11 板状体
12 出射面
13 入射面
15 エッジ部
17 表面処理材料
20 ステージ部
21 処理装置
22 表示装置
23 駆動制御装置
24 モータードライバ
31 撮像装置
32 カメラレンズ
33 偏光フィルタ
35 投光ファイバ部
36 集光レンズ
37 拡散フィルタ
38 光源
39 投光装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体を該板状体の第1の面側から撮像して得られた画像をデジタル処理することで前記板状体の欠陥を検出する欠陥検出方法において、
前記板状体の前記第1の面に隣接している第2の面に、前記板状体の内部を透過した透過光が前記第1の面から出射されるように光を照射し、前記透過光を結像させることにより前記画像を得ることを特徴とする欠陥検出方法。
【請求項2】
前記第1の面から離れる方向に延び、前記第2の面に平行な平面との間になす角度が0度以上20度以下である第1の軸に平行な向きに、前記板状体を前記第1の面側から撮像する、請求項1に記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
前記第2の面から離れる方向に延び、前記第2の面との間になす角度が15度以上60度以下である第2の軸に平行な方向から、前記第2の面に光を照射する、請求項1または2に記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記板状体は、画像形成装置用のクリーニングブレードである、請求項1から3のいずれか1項に記載の欠陥検出方法。
【請求項5】
前記板状体の前記第2の面から前記第1の面への光透過率は10%以上50%以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の欠陥検出方法。
【請求項6】
板状体を該板状体の第1の面側から撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像して得られた画像をデジタル処理することによって前記板状体の欠陥を検出する処理手段と、を有する欠陥検出装置において、
前記板状体の前記第1の面に隣接している第2の面に、前記板状体の内部を透過した透過光が前記第1の面から出射されるように光を照射する投光手段を有し、前記撮像手段は前記透過光を結像させることにより前記画像を得ることを特徴とする欠陥検出装置。
【請求項7】
前記撮像手段は、前記第1の面から離れる方向に延び、前記第2の面に平行な平面との間になす角度が0度以上20度以下である第1の軸に平行な向きに、前記板状体を前記第1の面側から撮像する、請求項6に記載の欠陥検出装置。
【請求項8】
前記投光手段は、前記第2の面から離れる方向に延び、前記第2の面との間になす角度が15度以上60度以下である第2の軸に平行な方向から、前記第2の面に光を照射する、請求項6または7に記載の欠陥検出装置。
【請求項9】
前記投光手段に、光を拡散させる拡散板が設けられている、請求項6から8のいずれか1項に記載の欠陥検出装置。
【請求項10】
前記撮像手段に偏光フィルタが設けられている、請求項6から9のいずれか1項に記載の欠陥検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−122155(P2010−122155A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297996(P2008−297996)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】