説明

板状体梱包容器及びその積層方法

【課題】空の板状体梱包容器を輸送する際に、板状体梱包容器の占有体積を低減し、保管効率及び輸送効率を上げる。
【解決手段】板状体を載置する板状体載置部と、前記板状体載置部を載置する載置面を有する台座と、前記載置面の周縁部の少なくとも一部に立設され、高さ方向の形状が非対称の支柱と、前記載置面の周縁部の少なくとも一部に形成され、前記支柱を立設する支柱立設部と、を備え、前記支柱は、前記支柱の一端部を前記支柱立設部に向けて前記支柱を立設させたときと、前記支柱の他端部を前記支柱立設部に向けて前記支柱を立設させたときとで、前記載置面から突出する前記支柱の高さが異なることを特徴とする板状体梱包容器を提供することにより前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状体梱包容器及びその積層方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイ(FPD)用ガラス基板等のガラス板は、大型化とともに薄肉化が要請されている。このような大きく薄いガラス板をガラス板製造工場内における製造工程間で輸送する際、又はガラス板製造工場からFPD製造工場へ輸送する際、ガラス板に破損が生じないように梱包することが重要となっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数枚のガラス板を平置きで積層したガラス板積層体の底面を支持するガラス支持面を有する基台部と、基台部のガラス支持面よりも上方に突出した突出状態でガラス板積層体の周囲に配置され、ガラス板積層体の梱包に使用される梱包部品とを備えたガラス板梱包用パレットが記載されている。このガラス板梱包用パレットにおいては、ガラス板積層体の積み降ろし作業をするときには梱包部品を取り外して所定の収容部に収容することにより、梱包部品の高さが突出状態よりも低くなるようにして、ガラス板積層体の積み降ろし作業の邪魔にならないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2010/070969A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のガラス板梱包用パレットは、ガラス板積層体を積み降ろした後の空のガラス板梱包用パレットをガラス板製造工場等に返却する際の輸送のことは考慮されていない。
【0006】
従って、空のガラス板梱包用パレットを返却する際には、再び梱包部材を基台部に取り付けて空のガラス板梱包用パレットを積層して輸送するため、ガラス板梱包用パレットは空の場合もガラス積層体を積んでいる場合と同じだけの体積を占有しており、空のガラス板梱包用パレットの輸送に無駄があり、空のガラス板梱包用パレットを返却する際の輸送効率が悪くなる。また、空のガラス板梱包用パレットを倉庫等に保管する際も、梱包部材を基台部に取り付けて空のガラス板梱包用パレットを積層して保管するため、保管効率が悪くなる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、空の板状体梱包容器を輸送及び保管する際に、板状体梱包容器の占有体積を低減し、保管効率及び輸送効率を上げることのできる板状体梱包容器及びその積層方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の板状体梱包容器は、板状体を載置する板状体載置部と、前記板状体載置部を載置する載置面を有する台座と、前記載置面の周縁部の少なくとも一部に立設され、高さ方向の形状が非対称の支柱と、前記載置面の周縁部の少なくとも一部に形成され、前記支柱を立設する支柱立設部と、を備え、前記支柱は、前記支柱の一端部を前記支柱立設部に向けて前記支柱を立設させたときと、前記支柱の他端部を前記支柱立設部に向けて前記支柱を立設させたときとで、前記載置面から突出する前記支柱の高さが異なることを特徴とする。
【0009】
これにより、支柱を用いる方向により支柱立設部から上方に突出する高さを変えることができるので、板状体を載置する場合には支柱の高さが高くなるように支柱を用いて板状体の積層高さを確保するとともに、板状体を載置しない場合には、支柱の高さが低くなるように支柱を用いて複数の板状体梱包容器を積層することにより空の板状体梱包容器の占有体積の低減と、保管効率及び輸送効率を向上させることができる。
【0010】
また、一つの実施態様として、前記支柱は、その高さ方向に、細径部と太径部とからなる2段構造を有するとともに、前記支柱立設部は、前記太径部をその内側に嵌合可能な嵌合部と、前記嵌合部の底部に形成され、前記細径部を収容可能な穴と、を有し、前記支柱は、前記太径部を前記支柱立設部側にして前記太径部を前記嵌合部に嵌合させたときと、前記細径部を前記支柱立設部側にして前記太径部を前記嵌合部に嵌合させたときとで、前記支柱立設部の開口面から突出する前記支柱の高さが前記細径部の長さの分だけ異なることが好ましい。
【0011】
このように、支柱と細径部と太径部からなる2段構造とすることにより、支柱を引っくり返すだけで支柱立設部から突出する支柱の高さを変えることができる。
【0012】
また、一つの実施態様として、前記下張り材の下面の前記支柱立設部に対応する位置に係合凹部が形成され、前記支柱の細径部及び太径部のそれぞれの端面に、複数の前記板状体梱包容器を積層する際、上に積層される前記板状体梱包容器の前記下張り材に形成された係合凹部と係合する係合凸部が形成されたことが好ましい。
【0013】
このように複数の板状体梱包容器を積層する際、係合凹部と係合凸部を係合させることにより、複数の板状体梱包容器を確実に積層することができ、横ずれ等を防止することができる。
【0014】
また、同様に前記目的を達成するために、本発明の板状体梱包容器の積層方法は、上張り材及び下張り材ならびにこれらの間に空間を形成する空間形成部材を有する台座と、前記台座に載置されその上に板状体を載置する板状体載置部と、細径部と太径部からなる2段構造を有する支柱と、前記台座の四隅に設けられ前記支柱の太径部を嵌合可能な嵌合部と該嵌合部の底部に前記細径部を収容可能な穴を有する支柱立設部と、を備え、前記板状体載置部に前記板状体を載置する場合には、前記支柱の前記細径部を上にして前記太径部を前記支柱立設部の嵌合部に嵌合させ、前記細径部を前記嵌合部より上方に突出させて前記板状体を載置する高さを確保するとともに、前記板状体載置部に前記板状体を載置しない場合には、前記支柱の前記細径部を下にして前記太径部を前記支柱立設部の嵌合部に嵌合させるとともに前記細径部を前記穴に収容させて、前記嵌合部よりも上方に突出する前記支柱の高さを低くするようにして、複数の前記板状体梱包容器を積層することを特徴とする。
【0015】
これにより、支柱を細径部と太径部からなる2段構造とすることにより支柱を引っくり返すだけで支柱立設部から上方に突出する支柱の高さを変えることができるので、板状体を載置する場合には支柱の高さが高くなるように支柱を用いて板状体の積層高さを確保するとともに、板状体を載置しない場合には、支柱の高さが低くなるように支柱を用いて複数の板状体梱包容器を積層することにより空の板状体梱包容器の占有体積の低減と、保管効率及び輸送効率を向上させることができる。
【0016】
また、一つの実施態様として、前記下張り材の下面の前記支柱立設部に対応する位置に係合凹部が形成されるとともに、前記支柱の細径部及び太径部のそれぞれの端面に、複数の前記板状体梱包容器を積層する際、上に積層される前記板状体梱包容器の前記下張り材に形成された係合凹部と係合する係合凸部が形成され、前記係合凹部と前記係合凸部とを係合させることにより前記板状体梱包容器を積層することが好ましい。
【0017】
このように複数の板状体梱包容器を積層する際、係合凹部と係合凸部を係合させることにより、複数の板状体梱包容器を確実に積層することができ、横ずれ等を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、支柱を用いる方向により、支柱が支柱立設部の頂部の外側に突出する高さを変えることができるので、板状体を載置する場合には支柱の高さが高くなるように支柱を用いて板状体の積層高さを確保するとともに、板状体を載置しない場合には、支柱の高さが低くなるように支柱を用いて複数の板状体梱包容器を積層することにより空の板状体梱包容器の占有体積の低減と、保管効率及び輸送効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る板状体梱包容器の一実施形態を示す斜視図
【図2】複数の板状体梱包容器を重ねる場合の支柱の結合構造を拡大して示す断面図
【図3】複数の板状体梱包容器を積層した様子を示す斜視図
【図4】トラックの荷室に板状体梱包容器を3段に積み上げた状態を示す側面図
【図5】(A)は、ガラス基板を積層した状態の板状体梱包容器の断面図、(B)は、空の状態の板状体梱包容器の断面図
【図6】トラックの荷室に空の板状体梱包容器を5段に積み上げた状態を示す側面図
【図7】従来の板状体梱包容器の支柱を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る板状体梱包容器及びその積層方法について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る板状体梱包容器の一実施形態を示す斜視図である。
【0022】
なお、本発明は、大型化、薄型化されたあらゆる板状体の梱包に適用することができるが、ここでは、特にFPD用のガラス基板の梱包を例にとって説明することとする。
【0023】
図1に示すように、板状体梱包容器10は、台座12と、板状体載置部14と、4本の支柱16(16A、16B、16C、16D)を有している。台座12の形態は特に限定されるものではないが、上張り材18と、下張り材20と、空間形成部材22とを組み合わせて構成されていることが好ましい。空間形成部材22は、上張り材18と下張り材20との間にフォークリフトのツメ(フォーク)が挿入される空間24を形成するためのスペーサである。なお、台座12は、上から見ると矩形状を有している。
【0024】
各支柱16(16A、16B、16C、16D)は、それぞれ台座12の上張り材18の周縁部の少なくとも一部に形成されるが、特に四隅に形成することが好ましい。各支柱16(16A、16B、16C、16D)は、それぞれスタンド26(26A、26B、26C、26D)を用いて立設される。なお、詳しくは後述するが、各支柱16(16A、16B、16C、16D)は、それぞれ上段と下段で径が異なる2段構造を有しており、スタンド26(26A、26B、26C、26D)に対して自由に取り付け取り外しができるようになっている。
【0025】
上張り材18の上面には板状体載置部30が載置されている。このとき、上張り材18と板状体載置部14との間に、シリコン樹脂などの弾性高分子体からなる振動吸収部材28を設置するようにしてもよい。
【0026】
各支柱16(16A、16B、16C、16D)は、上張り材18の上面の四隅に形成されたスタンド26(26A、26B、26C、26D)によって起立して配置されている。さらに、各支柱16(16A、16B、16C、16D)の下方には、上張り材18と下張り材20との間を連結するように連結部材17a、17b、17c、17dが起立している。
【0027】
板状体載置部14には、例えば、板状体として板状に形成されたFPD用のガラス基板Gが載置される。ガラス基板Gは、予め紙又は樹脂フィルムからなる緩衝部材を介して積層されており、板状体の積層体として梱包されている。また、各ガラス基板Gの側面には、ガラス基板Gのずれ防止用のストッパ部材29を適宜配置するようにしてもよい。
【0028】
台座12の上張り材18の左右縁部の下面には、掛止部32が一対ずつ、計4箇所に形成されている。この掛止部32は、ラッシングベルトを掛止するものであり、トラックの荷室の底面にもこれと同様の掛止部が形成されていることが好ましい。
【0029】
また、各支柱16(16A、16B、16C、16D)の上端には、それぞれ係合凸部34が突出して形成されている。この係合凸部34は、ガラス基板Gが載置された複数の板状体梱包容器10を積み重ねるときに用いるためのものである。次に、複数の板状体梱包容器10の積層構造について説明する。
【0030】
図2に、複数の板状体梱包容器10を重ねる場合の支柱の結合構造を、拡大した断面図で示す。
【0031】
図1に示す4つの各支柱16A、16B、16C、16Dについて、その結合構造は全て同じなので、特に支柱16Aの部分について図2に示すこととする。
【0032】
図2は、一つの板状体梱包容器10Aの上にもう一つの板状体梱包容器10Bを重ねた状態を表している。なお、図2に示すのは、それぞれにガラス基板Gを積層した板状体梱包容器10A及び板状体梱包容器10Bを積層する場合である。
【0033】
図2に示すように、支柱16Aは、細径部16A−1及び太径部16A−2の2段構造となっており、細径部16A−1及び太径部16A−2の端面にそれぞれ同じ形状の係合凸部34及び係合凸部34’が互いに反対方向に突出して形成されている。細径部16A−1及び太径部16A−2は角柱形状で形成されているが、これに限定されず、円柱状であってもよい。
【0034】
また、支柱16Aは、上張り材18の上面に形成されたスタンド(嵌合部)26Aに太径部16A−2を嵌め込んで立設されている。スタンド26Aは、太径部16A−2を嵌め込んだときに、太径部16A−2の姿勢を安定させるため、スタンド26Aの内径は、太径部16A−2の外径と同じ、又は外径よりも大きく形成されている。
【0035】
また、スタンド26Aの底面及び上張り材18には細径部16A−1が収まるような径を有する穴19が形成されている。従って図2に示すように、太径部16A−2の端面から突出して形成された係合凸部34’は、この穴19に収まるようになっている。太径部16A−2を嵌合するスタンド(嵌合部)26Aと細径部16A−1を収容する穴19とで支柱立設部が構成される。
【0036】
また、板状体梱包容器10Aの上に積層される板状体梱包容器10Bの連結部材17aの下端にあたる下張り材20の底面には、板状体梱包容器10Aの支柱16Aの細径部16A−1に形成された係合凸部34が嵌合する係合凹部36が形成されている。
【0037】
この係合凸部34は、例えば図1にも示したように、下部が直方体でその上部が四角錐形状に形成されている。また、係合凹部36は、係合凸部34を嵌合できるように、係合凸部34の外形寸法をわずかに上回る凹形状である。ただし、これら支柱16A、係合凸部34及び係合凹部36の形状はこれらに限定されるものではなく、下部が円柱形状でその上部が円錐形状であってもよい。
【0038】
フォークリフトを用いて下段の板状体梱包容器10Aの上に上段の板状体梱包容器10Bを重ねるときは、上段の板状体梱包容器10Bの下張り材20の底面に形成された係合凹部36を、下段の板状体梱包容器10Aの各支柱16A、16B、16C、16Dの上端に突出する係合凸部34に対向するように位置合わせを行う。そして、板状体梱包容器10Bを降下させることで、下段の板状体梱包容器10Aの各支柱16A、16B、16C、16Dの上端に形成された係合凸部34と、上段の板状体梱包容器10Bの各連結部材17a、17b、17c、17dの下端に形成された係合凹部36とが嵌合した状態となり、輸送中に水平方向の力を受けても上段の板状体梱包容器10Bの脱落を防止することができる。
【0039】
このようにして、複数の板状体梱包容器10を積層した様子を図3に斜視図で示す。
【0040】
図3には、3段の板状体梱包容器10A、10B、10Cをトラックの荷室に積層し固定する様子が示されている。
【0041】
図3に示すように、3段の板状体梱包容器10A、10B、10Cを積層した梱包容器積層体40は、各板状体梱包容器10A、10B、10Cの支柱16A、16B、16C、16Dがそれぞれ係合凸部34と係合凹部36とが嵌合された状態(図2参照)となっている。従って、輸送中に水平方向への力が作用した場合でも各板状体梱包容器10A、10B、10Cが横方向にずれることが防止され、荷崩れを生じない構造を維持することができる。
【0042】
また、複数の板状体梱包容器10A、10B、10Cが積み重ねられることで、トラックの荷室内の限られたスペースを有効に活用することが可能となり、かつ、より多くのガラス基板Gを輸送することができる。
【0043】
梱包容器積層体40は、最上段の板状体梱包容器10Cに結合された複数のラッシングベルト42を介して、各板状体梱包容器10A、10B、10Cがトラックの荷室の床面44に拘束されている。なお、図3においては、梱包容器積層体40のL方向(図3上部に矢印で示す)の側面は隠れて見えないがR方向の側面と同様に一対のラッシングベルト42が連結されている。
【0044】
各ラッシングベルト42は、第1端(上端)に台座12の上張り材18の底面に形成された掛止部32に掛止される鉤部(図示省略)が形成され、第2端(下端)にはトラックの荷室の床面44上に固定された掛止部46に掛止される鉤部48が形成されている。
【0045】
なお、各ラッシングベルト42の上端の鉤部及び下端の鉤部48は、掛止部32の掛止溝(図示省略)に挿入されて掛止される鉤部を有している。また、掛止部46は、各ラッシングベルト42の鉤部48が係合される掛止溝50が露出され、かつ、掛止部46の上面が床面と同じ高さとなるように取り付けられている。
【0046】
また、各ラッシングベルト42の下端の鉤部48は、荷室の床面44に固定された掛止部46に容易に掛止される形状になっている。掛止部32は、エアラインレールタイプの構造であるが、荷室の床面44に固定された掛止部46も同様にエアラインレールタイプの構造とすることにより、省スペース化が図られるため好ましい。
【0047】
梱包容器積層体40をトラックの荷室の床面44に積載した場合には、梱包容器積層体40の最上段の板状体梱包容器10Cを、各掛止部32に掛止された各ラッシングベルト42を介して荷室の床面44に連結することにより、梱包容器積層体40が輸送時の振動により上下動しないように保持される。
【0048】
これにより、複数の板状体梱包容器10A、10B、10Cを積み重ねた梱包容器積層体40は、上下方向の振動が生じた場合でも各板状体梱包容器10A、10B、10Cが分離せず、荷崩れを防止することができる。
【0049】
なお、図3において、前述した図1あるいは図2と同じ構成要素については図中に同じ符号を付すことにより、その説明を省略する。
【0050】
図4は、トラックの荷室内に板状体梱包容器を3段に積み上げた状態を示す側面図である。
【0051】
図4に示すように、トラック52は、荷室の床面44に開閉式の荷室壁部54を有する。荷室壁部54は、各板状体梱包容器10(10A〜10C)を荷室の床面44に積み込み・積み降ろし作業を行う際に、上方に回動して荷室の左右両側(運転手席側及び助手席側)を開放した状態となる。
【0052】
そのため、フォークリフトは、荷室の側方から板状体梱包容器10を積み込み・積み降ろし作業を行うことができる。各板状体梱包容器10の質量は、例えば、第8世代サイズのガラス基板(奥行き寸法×横幅の寸法が2.5m×2.2m、又は2.4m×2.1m、約10kg/枚)×120枚のガラス基板積層体を載置したときには、ガラス基板積層体の質量と梱包ユニットの質量とを合わせて、およそ1.5t〜1.6tとなる。
【0053】
そのため、例えば、板状体梱包容器10を複数積み重ねてフォークリフトの輸送能力限界に接近した場合や、積み重ねた板状体梱包容器10の重心が高くなる場合は、積み込み時のフォークリフトによる持ち上げ動作のバランスが安定しなくなる虞がある。そこで、フォークリフトのオペレータは、1回目の積み込み作業では、輸送可能な2段重ねの板状体梱包容器10A、10Bを持ち上げてトラック52の荷室の床面44の前側に積み込む。
【0054】
図4に示すように、フォークリフトのオペレータは、2回目の積み込み作業で板状体梱包容器10A、10Bの上に板状体梱包容器10Cを積み上げて3段重ねとする。このように、トラック52の荷室の床面44には、板状体梱包容器10(10A〜10C)を3段に重ねた梱包容器積層体40が積み上げられる。
【0055】
この2回に分けたフォークリフトによる積み込み作業を繰り返すことでトラック52の荷室の床面44の中央、後側にも3段に重ねた複数の梱包容器積層体40が順次積み込まれる。
【0056】
次に、本発明のポイントである、積み降ろしをした後、空の板状体梱包容器10を返却するために輸送する場合の積層方法について説明する。
【0057】
図5(A)にガラス基板Gを積層した状態の板状体梱包容器を、また図5(B)に空の状態の板状体梱包容器を断面図で示す。
【0058】
図5(A)は、図2において上段に積層される板状体梱包容器10Bを省略したものと同じである。図5(A)に示すように、ガラス基板Gを積層した板状体梱包容器10を複数個積層する場合には、細径部16A−1及び太径部16A−2の2段構造に構成された支柱16Aの太径部16A−2をスタンド26Aに向けながら、該太径部16A−2をスタンド26Aに挿入して、細径部16A−1がスタンド26Aの頂部から外側に突出するように支柱16Aを立設させる。
【0059】
そして、図2で説明したように、板状体梱包容器10Bの係合凹部36を板状体梱包容器10Aの細径部16A−1の端面に突出した係合凸部34と嵌合させて、板状体梱包容器10Bを板状体梱包容器10Aの上に積層させる。
【0060】
一方、ガラス基板Gを積み降ろして空になった板状体梱包容器10を返却するために輸送する場合には、図5(B)に示すように、支柱16Aを引っくり返して細径部16A−1と太径部16A−2との位置を上下入れ替え、細径部16A−1をスタンド26Aに向けながら、該細径部16A−2をスタンド26Aに挿入して、支柱16Aを立設させる。
【0061】
このとき、下側に位置した細径部16A−1は、スタンド26Aの下の上張り材18に形成された穴19の中に収容される。そして、スタンド26Aより上に太径部16A−2が少しだけ出ている状態となる。このときスタンド26Aの頂部よりも外側に突出する支柱16Aの高さは、図5(A)の場合に比べて、略細径部16A−1の長さ分dだけ低くなる。
【0062】
太径部16A−2の端面には上方に向けて突出するように係合凸部34’が形成されている。係合凸部34’の上に他の板状体梱包容器10Bを載せる場合には、板状体梱包容器10Bの下張り材20の底面に形成された係合凹部36を、上記下側の板状体梱包容器10の太径部16A−2の係合凸部34’と嵌合させることで、板状体梱包容器10Bを板状体梱包容器10の上段に積層することができる。
【0063】
このように、板状体梱包容器10が空のときには、支柱16Aを引っくり返して用いることにより、細径部16A−1が穴19に収容され、嵌合部(スタンド26A)の頂部よりも外側に突出する支柱16Aの高さが細径部16A−1の長さの分だけ低くなる。このように、図5に示すように略細径部16A−1の長さ分dだけ積層高さを低減することができる。このように支柱16Aをある方向に用いた場合と逆方向に用いた場合とで簡単に積層高さを変えることができ、荷室における板状体梱包容器10が占有する体積を低減することができる。
【0064】
このように空の板状梱包容器10の体積を低減することができるので、空の板状体梱包容器10を積層する場合には、ガラス基板Gを積載した場合よりもより多くの板状体梱包容器10を積層することができる。
【0065】
図6に、トラック52の荷室の床面44に、空の板状体梱包容器10(10A〜10E)を5段に積み上げた梱包容器積層体40の状態を示す。
【0066】
図6に示す梱包容器積層体40の高さは、図4に示す梱包容器積層体40の高さと同じとする。つまり、荷室における梱包容器積層体が占有する体積は、図4及び図6共に同じである。この体積において、図4に示す板状体梱包容器10(10A〜10C)の充填率を100%したとき、図6に示す板状体梱包容器10(10A〜10E)の充填率は167%となり、充填率が67%向上している。
【0067】
なお、図4及び図6においては、ガラス基板Gのずれ防止用のストッパ部材は表示を省略している。
【0068】
また、比較のため、図7に従来の板状体梱包容器110の支柱構造部分を示す。
【0069】
図7に示すように、従来は、板状体梱包容器110からガラス基板Gを積み降ろす場合には、積み降ろし作業の邪魔にならないように支柱116を取り外すようにしていたが、空の板状体梱包容器110を返却するために輸送する場合には、空の板状体梱包容器110を積層するために再び支柱116を前と同じように立設させていた。従って、板状体梱包容器110にガラス基板Gを積載するしないにかかわらず、支柱116の高さは同じであり、空の板状体梱包容器110も同じ体積を占めていたため、空容器の輸送、保管に無駄が存在していた。
【0070】
これに対して、本実施形態においては、支柱16Aを太さの異なる2段構造としている。そして、ガラス基板Gを積載する場合には、図5(A)に示すように、支柱16Aの細径部16A−1を上方に突出させて支柱16Aを長く使用してガラス基板Gの積載高さを稼ぐようにする。また、空の板状体梱包容器10を運ぶときには、支柱16Aを引っくり返して細径部16A−1を下にして細径部16A−1を上張り材18の穴19に収容するようにする。これにより、細径部16A−1の分だけ体積を圧縮し、積層高さを低減することができる。
【0071】
以上示したように本実施形態によれば、空の板状体梱包容器を返却する際には、空の板状体梱包容器を積層した体積を圧縮して輸送効率を向上させることができる。
【0072】
以上、本発明に係る板状体梱包容器及びその積層方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0073】
10…板状体梱包容器、12…台座、14…板状体載置部、16(16A、16B、16C、16D)…支柱、17(17a、17b、17c、17d)…連結部材、18…上張り材、19…穴、20…下張り材、22…空間形成部材、24…(フォークリフトのツメが挿入される)空間、26(26A、26B、26C、26D)…スタンド、28…振動吸収部材、ストッパ部材29、30…板状体載置部、32…掛止部、34、34’…係合凸部、36…係合凹部、40…梱包容器積層体、42…ラッシングベルト、44…荷室、46…掛止部、48…鉤部、50…掛止溝、52…トラック、54…荷室壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体を載置する板状体載置部と、
前記板状体載置部を載置する載置面を有する台座と、
前記載置面の周縁部の少なくとも一部に立設され、高さ方向の形状が非対称の支柱と、
前記載置面の周縁部の少なくとも一部に形成され、前記支柱を立設する支柱立設部と、を備え、
前記支柱は、前記支柱の一端部を前記支柱立設部に向けて前記支柱を立設させたときと、前記支柱の他端部を前記支柱立設部に向けて前記支柱を立設させたときとで、前記載置面から突出する前記支柱の高さが異なることを特徴とする板状体梱包容器。
【請求項2】
前記支柱は、その高さ方向に、細径部と太径部とからなる2段構造を有するとともに、
前記支柱立設部は、前記太径部をその内側に嵌合可能な嵌合部と、前記嵌合部の底部に形成され、前記細径部を収容可能な穴と、を有し、
前記支柱は、前記太径部を前記支柱立設部側にして前記太径部を前記嵌合部に嵌合させたときと、前記細径部を前記支柱立設部側にして前記太径部を前記嵌合部に嵌合させたときとで、前記支柱立設部の開口面から突出する前記支柱の高さが前記細径部の長さの分だけ異なる請求項1に記載の板状体梱包容器。
【請求項3】
前記台座は、前記載置面に対向する底面のうち、前記支柱立設部に対向する位置に係合凹部が形成され、
前記支柱は、両端面に、前記係合凹部と係合する係合凸部が形成されている請求項1又は2に記載の板状体梱包容器。
【請求項4】
板状体を載置する板状体載置部と
前記板状体載置部を載置する載置面を有する台座と、
細径部と太径部からなる2段構造を有し、前記載置面の周縁部の少なくとも一部に立設される支柱と、
前記載置面の周縁部の少なくとも一部に形成され、前記支柱の太径部を嵌合可能な嵌合部と該嵌合部の底部に前記細径部を収容可能な穴を有し、前記支柱を立設する支柱立設部と、
を備え、前記板状体載置部に前記板状体を載置する場合には、前記支柱の前記細径部を上にして前記太径部を前記支柱立設部の嵌合部に嵌合させ、前記細径部を前記嵌合部の頂部よりも外側に突出させて前記板状体を載置する高さを確保するとともに、前記板状体載置部に前記板状体を載置しない場合には、前記支柱の前記細径部を下にして前記太径部を前記支柱立設部の嵌合部に嵌合させるとともに前記細径部を前記穴に収容させて、前記嵌合部の頂部よりも外側に突出する前記支柱の高さを、前記支柱の前記細径部を上にして前記太径部を前記支柱立設部の嵌合部に嵌合させた場合よりも低くするようにして、複数の前記板状体梱包容器を積層することを特徴とする板状体梱包容器の積層方法。
【請求項5】
前記台座は、前記載置面に対向する底面のうち前記支柱立設部に対向する位置に係合凹部が形成されるとともに、前記支柱は、両端面に、前記係合凹部と係合する係合凸部が形成され、前記係合凹部と前記係合凸部とを係合させることにより前記板状体梱包容器を積層することを特徴とする請求項4に記載の板状体梱包容器の積層方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−254807(P2012−254807A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128457(P2011−128457)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】