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板状体表面の分析用治具及びそれを使用した金属分析方法
説明

板状体表面の分析用治具及びそれを使用した金属分析方法

【課題】石英ガラス板状体の表層に含有される金属をエッチング液で溶解して定量分析する際、エッチング液が漏出しないようにする。
【解決手段】板状体分析用治具1の下側シート材21に分析すべき板状体試料40を載せ、その板状体試料40の表面にリング10を載せ、更に上側シート材20をリング10の上に載せる。固定手段3のボルト30を穴26に通し、ナット31によって上下のシート材20、21を締め付けて上下シート材20をリング10に密着させる。開口25からエッチング液をリング10と上側シート材20で画定された貯留空間に注入し、板状体試料40の表層部分を溶解させ、溶解液を採取し、採取した溶解液中の金属またはイオンを分析定量する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は板状体の表面または内部(以下、表層という)に含有される金属またはイオン成分(以下、金属等という)の分析用治具及びそれを使用した分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、電子工業分野で使用される装置部品、原材料、または、ウエハは、可能な限り清浄にする必要がある。特に半導体の集積度が増加するにしたがい、高い清浄度の表面が要求されるようになってきたため、表層に含有される汚染物質である金属等を正確に定量することが必要である。
【0003】
従来、表層に含有される金属等の分析方法として、試料をエッチング液または抽出液(以下、エッチング液等という)に浸漬させて試料表層を溶解し、この溶解液中の金属等を誘導結合プラズマ質量分析法やイオンクロマトグラフ法によって定量分析することが知られている。しかしながら、エッチング液等に試料を浸漬させる方法では、試料全体を浸漬させてしまうため、選択した特定の面や任意の個所だけの金属等を定量することができず、汚染個所の特定もしくは汚染の分布を知ることは不可能であった。
【0004】
表面が平滑な平面である試料の選択した特定の面、または、任意の個所をシリコン樹脂製のパッキンを介在させて容器で覆い、容器をクランプで固定し、選択した特定の面、もしくは任意の個所の表面のみに抽出液を接触させる方法が特許文献1(特開2001−059834号公報)に提案されている。(図3参照)
しかしながら、クランプでは、パッキンを試料表面に押し付けて固定する力を調節することができず、パッキンの固定が不十分な場合、試料の選択面または任意の個所をエッチング液等で前処理する際、試料選択面を溶解中にエッチング液等を保持することができないため、パッキンの隙間からエッチング液等が漏出してしまい金属等を正確に定量することができなかった。更に、分析に従事する作業者が漏出したエッチング液等に曝される危険性があり、作業者に危害が及ぶ恐れがあった。
一方、クランプの固定力が試料の強度に対して過剰な場合、ウエハのような薄板は割れて破損してしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2001−059834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に述べた状況の下、板状体の表層に含有される金属等を定量分析する方法において、エッチング液等が漏出しないようにし、表層に含有される金属等を正確、かつ、簡単に定量できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
下側シート材と上側シート材及び樹脂製リングとからなり、上側シート材にはエッチング液を注入及び取出しするための開口が設けられており、両シート材を上下から締め付ける締付力が調整可能な固定手段とからなる板状体の分析用治具であり、樹脂製リングをフッ素ゴム製とするのが好ましく、シート及び固定手段をフッ素樹脂製とするのが好ましい。
【0007】
また、板状体分析用治具の下側シート材に分析すべき板状体を載せ、その分析すべき板状体の表面にリングを載せ、上側シートの開口がリング内に位置するように載せ、固定手段で上下のシート材を締め付け固定させて上側シートをリングに密着させ、エッチング液または抽出液を開口を通じてリング及び上側シートで画定された貯留空間に注入し、板状試料の表層部分を溶解させた液を採取し、原子吸光分析法、誘導結合プラズマ発光分析法、誘導結合プラズマ質量分析法またはイオンクロマトグラフ法のいずれかによって、採取した溶解液中の金属またはイオン成分を分析する板状体の表層に含有される金属またはイオン成分の分析方法である。
【0008】
本発明の分析治具の樹脂製リング、上下シート材及び固定具の材質は、特に制限されないが、エッチング液等との接触中に金属等の溶出が少ない材料が好ましく、例えば、樹脂製リングはフッ素ゴム、上下シート材及び固定具は、フッ素樹脂製とするのが好ましい。
【0009】
樹脂製リングは、エッチング液等の貯留空間を形成するためのものであり、形状は円形だけでなく、三角形、四角形等の多角形としてもよい。
上下シート材は2枚から構成され、上側シート材の任意の位置にエッチング液等を注入するための開口が設けられているが、開口の数は複数にしてもよい。
開口の位置はサンプリングが容易な個所が望ましく、開口のサイズは、エッチング液等の注入及び採取が可能な大きさが必要であるが、開口を通じて汚染物が混入することを極力回避するため、開口のサイズは可能な限り小さい方が望ましい。
【0010】
固定具は、分析対象の板状体とリングを上下から挟む2枚のシート材を固定するもので、締付力が調整可能であることが必要であり、具体的にはネジにより固定力の調節をおこなっている。締付力を調整することにより樹脂製リングを板状体の試料表面にエッチング液等が漏出することがないように密着させることができると共に、過剰な締付力によって脆弱な板状試料が割れないようにすることができる。
【0011】
固定具としてネジを使用した場合、上下シート材の4つのコーナーに設けた穴にネジを通して4ヶ所で固定するのが好ましい。
【0012】
板状体の試料の被分析面の形状は、本発明に係る分析用治具を取り付けることができ、エッチング液等の貯留空間が形成可能であれば特に制限されるものではなく、例えば平面、曲面などをあげることができる。
【0013】
前記板状試料の被分析面が曲面でかつ凹面の場合、被分析面の曲率が大きくなるとリングと上側シートの接触が妨げられエッチング液等の貯留空間の形成が困難になる問題が発生するが、リングの線径を大きくし上側シートと接触させる方法、または板状試料を曲率の影響が出ないような小さいサイズに切出す方法で前記の問題を回避することができる。
【0014】
板状試料の厚みについては、特に制限されないが、ウエハのような薄板を取り扱う場合、試料割れを防止する必要がある。薄板を分析用治具の上下シートに設けられている4隅のネジで固定する際、上下のシートが湾曲するため、板状試料に応力が発生し、試料割れが発生する可能性がある。前記試料割れは樹脂製の薄板専用ケースを用いて回避することができる。前記ケースの上に板状試料の薄板を載置し使用するが、該ケースの側面は薄板の厚みよりも大きく、且つリングの線径よりも小さいものが好ましい。この薄板専用ケースを使用することにより、上下シートの湾曲に伴う薄板試料への応力を抑制し、試料割れを回避することができる。
【0015】
本発明における分析対象の板状体の試料としては、特に制限はないが、本発明の優れた効果を十分に享有し得るものの一つとして、表面が平滑な平面、または研削面のように粗い平面を有する石英ガラスである。更に、半導体、電子工業分野で使用される装置部品、原材料、またはウエハにも適用することができる。
【0016】
本発明の分析方法は、前述の分析用治具を板状体の試料に取付け、樹脂製リングで包囲された試料表面に上側シートの開口を通じてエッチング液等を注入し、被分析面を所定の時間エッチング液等で溶解した後、溶解液を採取して溶解液中の金属等を直接分析する。または、溶解液を更に分離、濃縮などの前処理を施した後分析する。
金属等を定量する場合の分析装置は、誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、原子吸光分析装置、イオンクロマトグラフなどである。
【0017】
分析に使用するエッチング液等は、試料被分析面をエッチングする液または試料表面に存在する金属等を抽出する液であればよく、特に制限されないが、例えば板状体の試料が石英ガラスの場合、エッチング液は、フッ化水素酸単独、またはフッ化水素酸と他の酸水溶液との混合液を使用する。また、抽出液としては、超純水をあげることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、板状試料の強度に応じ、エッチング液等が漏出しない締付力で上下のシート材を固定することによって、板状体試料を破損することなくエッチング液等を貯留する空間を形成することができ、板状体試料の表層に含有される金属等の定量を正確におこなえるようになり、半導体製造において使用する装置の表層が不純物に汚染されているかを正確、かつ迅速に知ることができるようになったので、汚染された装置による半導体の製造歩留まり低下を排除できるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下の実施例により、具体的に本発明を説明するが、実施例によって本発明は何等限定されるものでない。
実施例
図1及び2に示すように、板状体の分析用治具1は、170mm角、厚さ5mmのフッ素樹脂製シートの上下シート材20,21とリング内径99.6mm、リング外径111mm、線径5.7mmのフッ素ゴム製リング10からなり、上側シート材20の中央部付近に長軸25mm、短軸15mmの楕円形の開口25が形成してある。また、上下シート材の4つのコーナー部には、固定具のボルトを挿通する円形の穴26が形成してある。
固定具3のボルト30及びナット31はフッ素樹脂製であり、締付力を細かく調整できるようにするため、ネジのピッチを細かくしてあり、一例を挙げるとピッチ1.25mm(ネジ規格M8)である。ネジのピッチはこの値に限定されない。
【0020】
試験例1
この分析用治具1を使用して不純物を人為的に表面に付着させた合成石英板状体で本発明の分析用治具及び分析方法を用いて分析した結果を以下に示す。
表面を洗浄した150mm角の高純度合成石英ガラス板の片面中央部に、表1記載の各金属元素0.2ngを滴下し、清浄な空気で乾燥した。この石英ガラス板を本発明の分析の供試体とした。
【0021】
図2に示すように、供試体の高純度合成石英ガラス板40表面中央部に内径100mmのフッ素ゴム製リング10を載置し、170mm角の2枚のフッ素樹脂製シート材20、21で石英ガラス板40及びリング10を上下から挟み、上下シート材20、21に設けられた4隅のネジ穴にボルト30を通してナット31で締め付けて固定し、リング10を石英ガラスの表面と上側シート材20に押し付けて密着させ、液漏れの生じないエッチング液の貯留空間を形成した。
上下シート材20,21と石英ガラス板40の大きさがあまり変わらず、相互の辺を平行にすると、4隅に設けた固定具のボルト30を通す穴26に石英ガラス板40が干渉するので、図2に示すように石英ガラス板40を90度位相をずらして、穴26に石英ガラス板がかからないようにした。
【0022】
この貯留空間にエッチング液として10重量%のフッ化水素酸を開口25から10ml注入し、石英ガラス板の表面を1μm相当が溶解するまで放置した。所望のエッチング深さを得るためのエッチング液の接触時間は、予め石英ガラステストピースなどを用いて実測したエッチング速度に基づき、目的のエッチング深さに対応する時間を求め、溶解深さを制御する。
溶解液の一部を開口25から採取して分析試料とし、誘導結合プラズマ発光分析法によって溶解した石英量を定量した。また、残りの溶解液を蒸発乾固後、蒸発残渣を希硝酸で溶解して回収液を得た。この回収液中の金属量を誘導結合プラズマ質量分析法により定量した。
試験例1で表面に添加した金属量と定量値から算出した回収率[(定量値/添加量)×100]を表1に示す。表1に示されるように、全ての元素が定量的に回収されていることがわかる。
【0023】
【表1】

【0024】
試験例2
表面を洗浄した150mm角の溶融石英平板ガラスの片面中央部に、直径50 mmのフッ素ゴム製リングを載置し、試験例1と同様に本発明の分析用治具1を取り付け、形成した貯留空間にエッチング液として10重量%のフッ化水素酸を5ml添加した他は試験例1と同様に試験した。定量した金属量を溶解した石英量で除することにより、溶融石英平板ガラス表層中の金属濃度を求めた。同試験を3回繰り返し実施した結果を表2に示す。表2からわかるように、全ての金属元素について高い再現性が示されている。
【0025】
【表2】

【0026】
試験例3
表面を洗浄した曲率がφ200mmで35mm角の溶融石英ガラス板の表面中央部に直径20mmのフッ素ゴム製リングを載置し、80mm角のフッ素樹脂製シート材2枚で石英ガラス板及びリングを挟み、上下シート材の4隅の穴にボルトを通し、ナットで上下シート材を締め付けてリングを石英ガラス板の表面に押し付けてエッチング液の貯留空間を形成した。この貯留空間にエッチング液として10重量%のフッ化水素酸を0.5ml添加した他は試験例2と同様に試験した。同試料について同試験を2回繰り返し実施した結果を表3に示す。
表3に示されるように、全ての金属元素について再現性が得られており、曲面石英ガラス板についても本発明が適用できることが示されている。
【0027】
【表3】

【0028】
試験例4
両面を鏡面研磨処理した50mm角の合成石英ガラス平板の全面をフッ化水素酸に浸漬し1μm相当溶解した。この溶解液から試料を一部採取し、誘導結合プラズマ発光分析法によって溶解した石英量を定量した。また、残りの溶解液を蒸発乾固後、蒸発残渣を希硝酸で溶解し回収液を得た。この回収液中の金属量を誘導結合プラズマ質量分析法により定量した。定量した金属量を石英量で除することにより、合成石英平板ガラス表層中の金属濃度を算出した。
【0029】
同試料を超純水にて洗浄後、同試料の片面を3μm溶解する他は試験例3と同様に試験した。定量した金属量を石英量で除することにより、金属濃度を求めた。
以上、従来の試料をエッチング液に浸漬する分析方法と本発明の分析方法との比較を表4に示す。表4に示すように定量値が得られた元素については従来の分析方法と同等の分析値が得られており、従来技術と変わらない精度で金属を定量できることが示されている。
【0030】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の分析用治具の分解斜視図。
【図2】本発明の分析用治具の使用状態の平面図及び断面図。
【図3】従来の分析用治具の使用状態の断面図。
【符号の説明】
【0032】
1 板状体分析用治具
10 リング
20 上側シート材
21 下側シート材
25 開口
26 穴
3 固定具
30 ボルト
31 ナット
40 板状体試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側シート材と上側シート材及び樹脂製リングとからなり、上側シート材にはエッチング液を注入及び取出しするための開口が設けられており、両シート材を上下から締め付ける締付力が調整可能な固定手段とからなる板状体の分析用治具。
【請求項2】
請求項1において、固定手段はボルト及びナットであり、両シート材にはボルトを通す穴が形成してある板状体の分析用治具。
【請求項3】
請求項1または2において、樹脂製リングがフッ素ゴム製リングであり、シート及び固定手段がフッ素樹脂製である板状体の分析用治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の板状体分析用治具の下側シート材に分析すべき板状体を載せ、その分析すべき板状体の表面にリングを載せ、上側シートをその開口がリング内に位置するように載せ、固定手段で上下のシート材を締め付け固定させて上側シートをリングに密着させ、エッチング液または抽出液を開口を通じてリング及び上側シートで画定された貯留空間に注入し、板状試料の表層部分を溶解させた液を採取し、原子吸光分析法、誘導結合プラズマ発光分析法、誘導結合プラズマ質量分析法またはイオンクロマトグラフ法のいずれかによって、採取した溶解液中の金属またはイオン成分を分析する板状体の表層に含有される金属またはイオン成分の分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−145150(P2010−145150A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320574(P2008−320574)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(507130912)株式会社 東ソー分析センター (6)
【Fターム(参考)】