説明

板状建材

【課題】互いに実接合される板状建材同士の接合部表面における清掃性を向上し得る板状建材を提供する。
【解決手段】少なくとも一方の両側端部に実接合部2a,2bを備えた板状建材10であって、隣接された板状建材との実接合が相互になされた際に、これら板状建材同士の側端部間に目地溝9が形成される構成とされ、前記目地溝は、底部7a,8aが略平面形状或いは湾曲面形状とされて面一状に連続面とされるとともに、両側壁部7b,8bが底部から拡開する形状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実接合部を備えた板状建材に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の床材や内壁材、天井材等の内装材に用いられる板状(パネル状)の建材としては、少なくとも一方の両側端部(例えば、長手方向に沿う両側端部等)に、実接合部を備えた板状建材が汎用されている。
このような板状建材は、複数枚の板状建材を、互いの実接合部を実接合させて床下地或いは壁下地等に敷き詰めるようにして施工される。
【0003】
上記実接合には、種々の接合態様があるが、一般的には、一方を側端面から突出させた雄実部とし、他方を凹溝状に切り欠いた雌実部として互いに嵌合させて接合する態様(本実接合)や、両側端面を凹溝状に切り欠いてそれぞれに雇いほぞを形成し、該雇いほぞに雇い実を嵌め入れて接合する態様(雇い実接合)等がある。
例えば、下記特許文献1では、床材の長手部に形成された雄実部と雌実部とを互いに突き合わせて実接合する構成とされた床材が提案されている。
また、下記特許文献2では、長手部に形成された雄実部と雌実部とを互いに突き合わせて実接合する構成とされた板材が提案されている。
【特許文献1】特開2007−113244号公報(図2参照)
【特許文献2】特開2007−154424号公報(図2参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような実接合がなされる板状建材は、上記各特許文献に開示されているように、一般的に、実接合部が設けられた両側端部の表面側縁部に、面取り部がそれぞれ形成されており、隣接された板状建材との実接合が相互になされた際に、これら板状建材同士の側端部間には、該面取り部によって、V溝状の目地溝が形成される構成となっている。
このようなV溝状の目地溝が、実接合された板状建材同士の側端部間に形成されるものでは、この目地溝内に塵埃や汚れ等が溜まり易く、また、塵埃や汚れ等が付着した場合には、拭き取り難く、清掃性の改善が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、互いに実接合される板状建材同士の接合部表面における清掃性を向上し得る板状建材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る板状建材は、少なくとも一方の両側端部に実接合部を備えた板状建材であって、隣接された板状建材との実接合が相互になされた際に、これら板状建材同士の側端部間に目地溝が形成される構成とされ、前記目地溝は、底部が略平面形状或いは湾曲面形状とされて面一状に連続面とされるとともに、両側壁部が底部から拡開する形状とされていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記板状建材においては、木粉・プラスチック複合材で製された基材と、該基材の表面に貼着された化粧材とを備えた構成として、前記目地溝の底部を、前記基材の表面或いは層内に達する構成にしてもよい。
上記基材は、当該基材の全質量に対して、40質量%以上の無機フィラーと、5質量%〜30質量%の木粉とを含有した構成としてもよい。
また、上記基材を、押出方向が前記目地溝の長手方向と同方向になるよう押出成形により形成するようにしてもよい。
【0008】
本発明に係る前記板状建材においては、前記目地溝を、横断面が略逆等脚台形状とされた構成にしてもよい。
或いは、本発明に係る前記板状建材においては、前記目地溝を、横断面が凹湾曲形状とされた構成にしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る前記板状建材は、隣接された板状建材との実接合が相互になされた際に、これら板状建材同士の側端部間に形成される目地溝の底部が、略平面形状或いは湾曲面形状とされて面一状に連続面とされており、また、該目地溝の両側壁部が底部から拡開する形状とされている。これにより、互いに実接合された際に形成される側端部間の目地溝に、塵埃や汚れ等が付着した場合にも、拭き取り易く、清掃性を向上させることができる。すなわち、接合部表面に形成される目地溝が、従来のようなV溝状の目地溝ではなく、目地溝内に直角部や鋭角部等が形成されない清掃のし易い形状とされているので、清掃性が向上される。
また、隣接された板状建材同士は、互いの実接合部が実接合される構成とされているので、板厚方向へのズレが低減され、上記目地溝の底部に段差等が形成されることがなく、面一状に連続面とできる。
【0010】
本発明に係る前記板状建材において、木粉・プラスチック複合材で製された基材と、該基材の表面に貼着された化粧材とを備えた構成として、前記目地溝の底部を、前記基材の表面或いは層内に達する構成にすれば、以下のような効果を奏する。
すなわち、上記目地溝を、木粉・プラスチック複合材で製された基材の表面或いは層内に底部が達する構成にすることで、当該板状建材の両側端部の表面側縁部に、接合された際に上記形状となる目地溝を構成するための段部を形成する場合に、木質材料に形成するものと比べて、ささくれ立ち等が生じ難い。これにより、目地溝の底部での拭き取り性がより向上される。
また、上記基材は、木粉・プラスチック複合材で製されているので、木質材料で製されたものと比べて、吸放湿や温度変化による当該板状建材の膨張、収縮が低減され、施工後に寸法変化等が生じ難い板状建材となる。これにより、施工後に、吸放湿や温度変化等があった場合にも、上記のように接合部表面に形成される上記目地溝の底部において、ズレや隙間等が生じ難く、上記底部を面一状に連続面とできる。
【0011】
上記基材を、当該基材の全質量に対して、40質量%以上の無機フィラーと、5質量%〜30質量%の木粉とを含有した構成とすれば、比較的、多量の無機フィラーが含有されているので、表面硬度が高められ、耐クラック性や耐傷付性、耐キャスター性等に優れたものとなる。従って、高い表面硬度が要求される建物の内装材、特に、踏み込みやキャスター等によって、繰り返し荷重が加えられるような箇所に施工される床材や腰壁、内壁等に好適なものとなる。
また、上述のような吸放湿や温度変化による当該板状建材の膨張、収縮を、より効果的に低減させることができ、高い寸法安定性を有したものとなる。また、木粉の含有量が比較的、少量であるため、上記同様、目地溝を構成するために基材に形成された上記段部におけるささくれ立ちが、より効果的に低減され、拭き取り性がより向上される。
【0012】
また、上記基材を、押出方向が前記目地溝の長手方向と同方向になるよう押出成形により形成するようにすれば、該基材に含有されている木粉等の配向方向が、目地溝を構成するための上記段部の長手方向と同方向となる。これにより、化粧材を貼着した後、該段部を形成した際に、該段部の表面へ露出する木粉の露出率が他方向(斜めや直交する方向等)に形成した場合と比べて減少し、該基材に形成された上記段部におけるささくれ立ちを、より効果的に低減でき、拭き取り性をより向上させることができる。
【0013】
本発明に係る前記板状建材において、前記目地溝を、横断面が略逆等脚台形状とされた構成にすれば、上記同様、目地溝内に直角部や鋭角部等が形成されない清掃のし易い形状となり、清掃性が向上される。
或いは、本発明に係る前記板状建材において、前記目地溝を、横断面が凹湾曲形状とされた構成にすれば、上記台形状とされた目地溝や、他の鈍角部等を有した形状の目地溝と比べて、より清掃性が向上される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1(a)、(b)は、いずれも第1実施形態に係る板状建材を模式的に示し、(a)は、同板状建材の概略縦断面図、(b)は、同板状建材の施工状態の一例を模式的に示す概略縦断面図、図2(a)〜(d)は、いずれも同板状建材の形成工程の一例を説明するための概略縦断面図である。
尚、以下で説明する各部材の表面は、例えば、板状建材を床材に適用した場合は、上面を指し、内壁や腰壁等に適用した場合は、室内空間側の面(手前側面)を指している。
また、各断面図は、長尺形状とされた板状建材の長手方向に直交する短手方向の断面を示している。
【0015】
本実施形態に係る板状建材10は、図1(b)に示すように、複数枚の板状建材10を、相互に実接合させて、根太や捨て張り合板等の床下地bs上に施工される床材10とされている。
該床材10は、平面視して長方形状とされており、例えば、1尺(303mm)×6尺(1818mm)程度の長尺板状体とされている。該床材10は、図1(a)に示すように、大略的に、床基材1と、該床基材1の表面3aに紙材5を介して貼着された化粧材を構成する突板4と、長手方向に沿う両側端部の表面側縁部に、長手方向に沿ってそれぞれ形成され、実接合された際に後記する目地溝9を構成する段部7,8と、該突板4の表面及び段部7,8の表面に形成された塗膜層6とを備えている。
尚、板状建材10は、床材として施工されるものに限られず、実接合がなされて施工がなされる腰壁材や内壁材、天井材等としてもよい。
【0016】
上記床基材1は、木粉・プラスチック複合材(WPB(ウッドプラスチックボード))で製された基材を構成する表面側複合基材3と、該表面側複合基材3の裏面に貼り合わせられた木質基材2とを備えている。
上記木質基材2は、合板やパーティクルボード、MDF(Medium Density Fiberboard(中密度繊維板))等の木質繊維板などの木質系材料で製されており、長手方向に沿う両側端部には、それぞれ実接合部2a,2bが設けられている。これら実接合部2a,2bは、一方が側端面から突出した雄実部2aとされ、他方が側端面に凹溝状に切欠形成された雌実部2bとされている。尚、図示省略しているが、短手方向に沿う両側端部にもそれぞれ実接合部2a,2bが設けられている。また、図において、符号2cは、床材10を床下地bsに固着するための釘等の固定止具nsが打ち込まれる固定止具の受け部である(図1(b)参照)。
【0017】
上記表面側複合基材3は、熱可塑性樹脂、無機フィラー、木粉、相溶化剤、及び着色剤を所定の含有割合で含有しており、これらを混練して、押出成形によって形成されている。
上記熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、AS(アクリロニトリルスチレン)、アクリルなどが挙げられる。
特に、性能やコスト面等の観点からポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系樹脂が好ましく採用される。
【0018】
上記無機フィラーとしては、アスペクト比(粒子状無機物の直径を厚みで除した値)が10以上の鱗片状の微粒子が好ましく、無機物の種類としては、マイカ、アルミナ、タルク等が好ましい。
上記木粉としては、例えば、製材工場等で排出される製材屑や、廃木材を破砕、粉砕して得られたもの、合板、MDF、パーティクルボード等のサンダー粉等が採用される。このような木粉としては、成形性及び分散性の観点から、その平均粒径が、10〜150メッシュ程度のものが好ましい。
上記相溶化剤としては、上記熱可塑性樹脂や上記無機フィラー等の物性に応じて、適宜、選択可能であるが、オレフィン系の熱可塑性樹脂を採用した場合には、マレイン酸変性オレフィン樹脂としてもよい。例えば、ポリプロピレン樹脂を採用した場合には、マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂としてもよい。
【0019】
上記所定の含有割合としては、表面側複合基材3の全質量に対してそれぞれ、上記無機フィラーを40質量%以上、上記木粉を、無機フィラーよりも少量となる5質量%〜30質量%程度、上記相溶化剤を1質量%〜10質量%程度としてもよい。また、これに所定量の着色剤を添加して含有させるようにしてもよい。
このように、木粉の含有量を比較的、少量にすることで、後記する目地溝9を構成する各段部7,8の段底面部7a,8aにおいて、ささくれ立ちが生じ難くなり、目地溝9の底部の拭き取り性を向上させることができる。
また、比較的、多量の無機フィラーを含有させることで、当該床材10の表面硬度を効果的に高めることができる。また、多量の無機フィラーを含有させた場合においても、上記のような割合で、木粉及び相溶化剤を添加することで、分散性及び成形性に優れ、表面側複合基材3自体の物性が高められる。
【0020】
上記着色剤としては、当該表面側複合基材3が、後記する塗膜層6と同系色となるような染料や顔料等としてもよい。
このように、表面側複合基材3の色調を、塗膜層6の色調に合わせることで、表面側複合基材3に後記するように形成された各段部7,8の段底面部7a,8aに、塗膜層6が形成された際にも、その部位において、突板4の表面に形成された塗膜層6との色調の不連続性等が形成されず、意匠性に優れたものとなる。すなわち、従来のように、木質材料を基材とした場合は、その種類にもよるが、突板よりも黒い、或いは、白い等、突板とは色調が異なる場合が多々ある。このように基材と突板との色調が異なる積層体に対して、該基材の表面或いは層内に達するように各段部を形成し、これら各段部及び突板の表面に塗装を施して塗膜層を薄く形成する場合においては、塗料が各段部において染み込むことと相俟って、各段部に形成された塗膜層の色調と、突板の表面に形成された塗膜層の色調とが不連続となることが考えられるが、本実施形態によれば、上述のように、このような問題が生じることを効果的に低減できる。
尚、上記着色剤は、突板4の素材感をより自然なものとするために、例えば、塗膜層6を、無色透明のものとした場合には、表面側複合基材3の色調が、突板4と同系色となるような着色剤としてもよい。
【0021】
上記表面側複合基材3は、本実施形態では、押出成形によって成形されており、当該床材10の長手方向と、該表面側複合基材3の押出方向とが同方向となるように成形されている。
尚、該表面側複合基材3の成形方法としては、例えば、公知の二軸混練押出機を用いて、混練と押出しとを同時に行う押出成形によって成形するようにしてもよく、混練した後に、押出成形によって成形するようにしてもよい。或いは、カレンダー加工により表面側複合基材3を成形するようにしてもよい。
また、この表面側複合基材3の厚さは、当該板状建材の使用・施工箇所等に応じて適宜、設定可能であるが、本実施形態のように、木質基材2の表面に貼着されて床材10として適用される場合においては、0.5mm〜10.0mm程度、より好ましくは、0.5mm〜6.0mm程度の薄板状のものとしてもよい。これにより、高い表面硬度を有しながらも比較的安価なものとなる。本実施形態では、表面側複合基材3の厚さを、0.6mm程度としている。
【0022】
上記突板4は、天然銘木を、厚さが100μm〜1.0mm程度に薄くスライスして形成された薄シート状とされており、本実施形態では、突板2の厚さを、0.2mm程度としている。
上記突板4と上記表面側複合基材3との間に介在された紙材5は、該表面側複合基材3と突板4とを接合する接合層として機能し、坪量が10〜80g/m程度で、厚さが100μm以下のものとされている。このような紙材5を、突板4と表面側複合基材3との間に介在させることで、特に湿式の突板4を熱プレスにて接着する際に、エマルジョン系接着剤や突板4から生じる水蒸気が紙材5を介して除去される。従って、本実施形態のように、突板4が貼着される基材を、熱可塑性樹脂を含有した水蒸気の逃げ難い表面側複合基材3とした場合でも、水蒸気の膨張により生じる恐れがある突板4の膨れや破裂等のパンクを防止できる。
【0023】
上記突板4の表面及び後記する各段部7,8の表面(段底面部及び段壁面部)に形成された塗膜層6を形成するための塗料は、適宜、公知のものが採用可能であるが、生産性や環境面等の観点から無溶剤の紫外線硬化型塗料とし、突板4の素材感を阻害することがないよう低光沢(艶消し仕上げ)のものとしてもよい。
また、上記塗料により形成される塗膜層6の塗膜厚は、10μm〜100μm程度としてもよい。
これにより、突板4が本来有する木目の美観性、素材感を阻害することなく、床材10の表面の耐水性や耐汚染性等を向上させることができる。上記塗膜層6の塗膜厚が、10μm未満であると、耐水性や耐汚染性等が低減する傾向があるとともに、使用状況等によっては剥離し易くなる傾向がある。また、上記塗膜層6の塗膜厚が、100μmを超えると、肉持ち感が出てしまい、突板4が本来有する素材感(木質感)が損なわれる傾向があるからである。
【0024】
上記各段部7,8は、上記のように積層された床基材1、紙材5及び突板4からなる積層体の両側端部(図例では、長手方向に沿う両側端部)の表面側縁部を、切削加工等によって切り欠いて形成されている。つまり、これら長手方向に沿って形成された各段部7,8は、上記表面側複合基材3の押出方向と同方向に沿って形成されている。尚、短手方向に沿う両側端部の表面側縁部にもそれぞれ同様の段部を設けるようにしてもよい。
また、これら各段部7,8は、段底面部7a,8aがそれぞれ略平面とされるとともに、段壁面部7b,8bがそれぞれ突板4の表面から両側端部に向けて傾斜する傾斜面とされている。換言すれば、平坦面とされた段底面部7a,8aと傾斜面とされた段壁面部7b,8bとのなす角が鈍角となる形状とされている。
【0025】
また、本実施形態では、上記各段部7,8は、上記段底面部7a,8aが、それぞれ上記表面側複合基材3の表面3aに達するように形成されている。すなわち、表面側複合基材3の表面3aが上記段底面部7a,8aを構成している。このように、表面側複合基材3の表面3aが上記段底面部7a,8aを構成するようにすることで、例えば、木質材料からなる基材に段部を形成したものと比べて、これら上記段底面部7a,8aにささくれ立ち等が生じ難く、後記する目地溝9の底部の拭き取り性を向上させることができる。すなわち、薄い塗膜層6を形成した場合にも該段底面部7a,8aが平滑となり、清掃性が向上される。
さらに、表面側複合基材3の表面3aが上記段底面部7a,8aを構成するようにすることで、上記塗膜層6を形成する際に、例えば、木質材料からなる基材に形成された段部に塗膜層を形成する態様としたものと比べて、当該箇所において、塗料が染み込むようなことが低減される。これにより、各段部7,8においても均一な塗膜層6が形成されるので、耐水性、耐汚染性等を向上させることができるとともに、清掃性を向上させることができる。
【0026】
上記構成とされた各段部7,8は、図1(b)に示すように、複数枚の床材10が、隣接された床材10との実接合が相互になされた際に、これら床材10同士の側端部間に形成される目地溝9を構成する。
上記各段部7,8の各段底面部7a,8aが目地溝9の底部7a,8aを構成し、上記各段部7,8の各段壁面部7b,8bが目地溝9の両側壁部7b,8bを構成する。
本実施形態では、上記形状とされた各段部7,8によって、目地溝9は、その底部7a,8aが略平面形状とされて面一状に連続面とされるとともに、両側壁部7b,8bが該底部7a,8aから拡開する形状とされ、かつ、その横断面(当該目地溝9自体の長手方向に直交する方向の断面)が、略逆等脚台形状とされている。
【0027】
上記目地溝9の深さや幅は、目地溝9が形成される表面側複合基材3及び突板4の厚さに応じて、適宜、設定可能であるが、本実施形態のように板状建材10を床材に適用した場合においては、0.2mm〜2.0mm程度としてもよい。本実施形態では、上述のように、表面側複合基材3の表面3aが、各段底面部7a,8aを構成しているので、該目地溝9の深さは、突板4の厚さと同程度の0.2mm程度の深さとされ、また、該目地溝9の幅は、1.5mm程度とされている。
尚、該目地溝9の底部を構成する各段部7,8の段底面部7a,8aが、表面側複合基材3の層内に達するように形成してもよい。すなわち、これら段底面部7a,8aが、突板4の層内で止まらず、かつ、木質基材2まで達しないような深さに、各段部7,8を形成するようにしてもよい。
【0028】
次に、本実施形態に係る床材10の製造方法の一例を図2(a)〜(d)に基づいて説明する。
まず、図2(a)に示すように、表面側複合基材3を製造する。本例では、ポリプロピレン(熱可塑性樹脂)及びマレイン酸変性ポリプロピレン(相溶化剤)に、マイカ(無機フィラー)、木粉及び着色剤を添加して、二軸混練押出機にて0.6mm厚の成形板を成形するようにしている。
上記各材料の配合割合は、例えば、ポリプロピレンを37質量%、マレイン酸変性ポリプロピレンを3質量%、マイカを50質量%、45メッシュの木粉を10質量%としてもよく、これに、所定量の着色剤を添加するようにしてもよい。この着色剤は、上述のように、塗膜層6と同系色となるようなものとすることが好ましい。
【0029】
次いで、上記成形板の表面に、接着剤の接着性及びぬれ性を向上させるための表面処理として、コロナ放電処理を施し、厚さ50μmの紙材5に湿気硬化型ウレタン系接着剤を塗布して、例えば、ロールラミネーターを用いて圧締して、図2(b)に示すように、上記成形板の表面に上記紙材5を貼着する。
このように紙材5が貼着された成形板を、所望する床材10の大きさに合わせて、所定の大きさに裁断して、紙材5が表面3aに貼着された表面側複合基材3が形成される。
【0030】
次いで、図2(c)に示すように、合板等の木質基材2の表面に、水性ビニルウレタン系接着剤を塗布し、上記表面側複合基材3を載置して、常温で硬化させて木質基材2の表面に表面側複合基材3を貼着する。
さらに、上記表面側複合基材3の表面3aに貼着された紙材5に、ラテックス系接着剤等のエマルジョン系接着剤を塗布し、突板4を、紙材5上に載置して、熱プレスにて硬化させて貼着し、積層体を形成する。
次いで、図2(d)に示すように、上記のように形成された積層体の長手方向に沿う両側端部及び短手方向に沿う両側端部に、実接合部2a,2b及び固定止具の受け部2cを形成するとともに、長手方向に沿う両側端部の表面側縁部に、上記各段部7,8を形成する。
【0031】
次いで、上記のように長手方向に沿う両側端部の表面側縁部に各段部7,8が形成された上記積層体の表面(突板4の表面及び各段部7,8の表面)に、ロールコーターによって塗装を施して、図1(a)に示すように、塗膜層6を形成する。
該塗膜層6の形成は、例えば、以下のように重ね塗りにより形成するようにしてもよい。
下塗りとして、無溶剤の紫外線硬化型塗料を、スポンジロールで塗布した後、金属リバースロールでかきとって、2.5g/尺塗布し、さらに、ゴムロールにて、同塗料を、0.8g/尺塗布した後、公知の紫外線光源を用いて紫外線を照射して硬化させる。
上記塗料を硬化させた後、表面の未硬化分の塗料を除去するため、また、後記する中塗り塗料を効果的に定着させるために、例えば、320番手程度の研磨紙(サンドペーパー)等によりサンディング処理をして、表面処理をするようにしてもよい。
【0032】
次いで、中塗りとして、無溶剤の紫外線硬化型塗料を、ゴムロールで1.0g/尺塗布した後、紫外線を照射して硬化させ、上記同様の表面処理をする。
さらに、上塗りとして、無溶剤の艶消しの紫外線硬化型塗料を、ゴムロールで0.8g/尺塗布し、上記同様、紫外線を照射して硬化させる。
このように重ね塗りされて形成された塗膜層6の塗膜厚は、本例では、50μm程度としている。
以上の工程を経て、図1(a)に示す床材10が製造される。
尚、上記例で示した製造工程の順序や表面側複合基材3を構成する各材料の配合割合、各部材を接合するための接着剤の種類、塗料の塗布方法等は、一例であり、他の順序、他の配合割合としてもよく、また、接着剤の種類、塗料の塗布方法等についても適宜、公知の接着剤、塗布方法の採用が可能である。
【0033】
上記構成とされた床材10は、図1(b)に示すように、床下地bs上に敷き詰めて施工される。
例えば、紙面左側の床材10の裏面に適宜、接着剤等を塗布して、床下地bs上に載置し、受け部に釘等の固定止具nsを打ち込んで固定する。次いで、該床材10の雄実部2aに、紙面中央の床材10の雌実部2bを嵌合させ、上記同様、該床材10の受け部に固定止具nsを打ち込んで固定し、さらに、該床材10の雄実部2aに、紙面右側の床材10の雌実部2bを嵌合させる。このようにして、順次、床材10を実接合して、床下地bs上に施工するようにしてもよい。
上記のように施工された状態では、隣接された床材10同士の側端部間、すなわち接合部表面には、各段部7,8が対向するように配置され、これら各段部7,8によって上記のように目地溝9が構成される。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る床材10によれば、隣接された床材10との実接合が相互になされた際に、これら床材10同士の各段部7,8によって、その側端部間に形成される目地溝9の底部7a,8aは、上記したように略平面形状とされて面一状に連続面とされ、また、該目地溝9の両側壁部7b,8bが底部7a,8aから拡開する形状とされている。これにより、互いに実接合された際に形成される側端部間の目地溝9に、塵埃や汚れ等が付着した場合にも、拭き取り易く、清掃性を向上させることができる。
また、隣接された床材10同士は、上記のように、互いの実接合部2a,2bが実接合される構成とされているので、板厚方向へのズレが低減され、上記目地溝9の底部7a,8aに段差等が形成されることがなく、面一状に連続面とできる。
【0035】
さらに、本実施形態では、床基材1を構成する表面側複合基材3を、上記のように木粉・プラスチック複合材で製されたものとしているので、木質材料で製されたものと比べて、吸放湿や温度変化による当該床材10の膨張、収縮が低減され、施工後に寸法変化等が生じ難い床材10となる。これにより、施工後に、吸放湿や温度変化等があった場合にも、上記のように接合部表面に形成される上記目地溝9の底部7a,8aにおいて、ズレや隙間等が生じ難く、上記底部7a,8aを面一状に連続面とできる。
また、上記表面側基材3は、当該表面側複合基材3の全質量に対して、40質量%以上の無機フィラーと、5質量%〜30質量%の木粉とを含有した構成としているので、比較的、多量の無機フィラーが含有されているため、表面硬度が高められ、耐クラック性や耐傷付性、耐キャスター性等に優れたものとなる。
【0036】
さらに、上記各段部7,8は、その長手方向が、上記表面側基材3の押出方向と同方向になるよう形成されているので、該表面側複合基材3に含有されている木粉等の配向方向が、目地溝9を構成するための上記各段部7,8の長手方向と同方向となる。これにより、突板4を貼着した後、該段部7,8を、例えば、これらの段底面部7a,8aが表面側複合基材3の層内に達するように切削形成した場合に、各段部7,8の表面へ露出する木粉の露出率が他方向(斜めや直交する方向等)に形成した場合と比べて減少する。従って、該表面側複合基材3に形成された上記各段部7,8におけるささくれ立ちを、より効果的に低減でき、拭き取り性をより向上させることができる。
【0037】
次に、本発明に係る他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図3(a)〜(c)は、いずれも第2実施形態に係る板状建材を模式的に示し、(a)は、図2(d)に対応させた図、(b)は、図1(a)に対応させた図、(c)は、同板状建材の施工状態の一例を模式的に示す概略縦断面図である。
尚、上記第1実施形態との相違点は、主に、目地溝を構成する各段部の構成であり、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略あるいは簡略に説明する。また、上記第1実施形態と同様の製造工程及び接合工程(施工工程)については、その説明を省略あるいは簡略に説明する。
【0038】
本実施形態に係る床材11は、図3(a)、(b)に示すように、上記同様の積層体を形成した後、上記同様の実接合部2a,2b、受け部2c等を形成するとともに、各段部17,18を切削形成している。
これら各段部17,18は、凹湾曲面形状とされており、段底面部17a,18a及び段壁面部17b,18bが連続した凹湾曲面とされている。このような態様では、実質的には、段底面部17a,18aと段壁面部17b,18bとの境界が形成されないが、比較的、木質基材2側に近い部位を、段底面部17a,18aとして把握し、比較的、突板4の表面側に近い部位を、段壁面部17b,18bとして把握するようにすればよい。
また、本実施形態では、上記各段部17,18は、上記段底面部17a,18aが、それぞれ上記表面側複合基材3の層内に達するように形成されている。このような態様によっても、上記第1実施形態と同様、例えば、木質材料からなる基材に段部を形成したものと比べて、これら上記段底面部17a,18aにささくれ立ち等が生じ難く、後記する目地溝19の底部の拭き取り性を向上させることができる。
【0039】
上記構成とされた各段部17,18は、上記同様、図3(c)に示すように、複数枚の床材11が、隣接された床材11との実接合が相互になされた際に、これら床材11同士の側端部間に形成される目地溝19を構成する。
本実施形態では、上記形状とされた各段部17,18によって、目地溝19は、その底部17a,18aが凹湾曲面形状とされて面一状に連続面とされるとともに、両側壁部17b,18bが該底部17a,18aから拡開する形状とされ、かつ、その横断面(当該目地溝19自体の長手方向に直交する方向の断面)が、凹湾曲形状とされている。
上記構成とされた目地溝19によれば、目地溝19の表面全体が連続した凹湾曲面形状となっているので、上記第1実施形態に示した目地溝9や、他の鈍角部等を有した形状の目地溝と比べて、より清掃性が向上される。
【0040】
尚、上記各実施形態では、目地溝9,19を、横断面が略逆等脚台形状或いは凹湾曲形状とされたものを例示しているが、該目地溝は、底部が略平面形状或いは湾曲面形状とされて面一状に連続面とされるとともに、両側壁部が底部から拡開する形状とされたものであれば、どのようなものでもよい。例えば、上記目地溝9の底部を、該目地溝9の略平面形状とされた底部7a,8aに代えて、上記目地溝19の凹湾曲面形状とされた底部17a,18aとしたり、上記目地溝19の底部を、該目地溝19の凹湾曲面形状とされた底部17a,18aに代えて、上記目地溝9の略平面形状とされた底部7a,8aとしたりしてもよい。或いは、上記目地溝9の両側壁部の形状を、傾斜面とされた段壁面部7b,8bに代えて、複数の傾斜面を互いのなす角が鈍角となるように連成させた屈曲面形状等としてもよい。また、凹湾曲面形状とされた底部の形状に代えて、凸湾曲面形状とされたもの等としてもよい。
【0041】
また、上記各実施形態では、床基材1を、木質基材2と、該木質基材2の表面に積層した木粉・プラスチック複合材で製された表面側複合基材3とを備えた構成としているが、このような積層構造に限られず、例えば、木質基材2或いは表面側複合基材3のみで、床基材1を構成するようにしてもよい。または、木粉・プラスチック複合材で製された表面側複合基材3に代えて、例えば、MDF等の木質材料で製された表面側基材を、木質基材2の表面に積層して床基材を構成するような態様としてもよい。
さらに、上記各実施形態では、表面側複合基材3の表面3aに紙材5を介して突板4を貼着した例を示しているが、紙材5を介さずに、表面側複合基材3の表面3aに直接、突板4を貼着するようにしてもよい。
【0042】
さらにまた、上記各実施形態では、各段部7,8,17,18の形成対象を、突板4と、表面側複合基材3とを積層して構成した板状体としているが、このような積層された板状体とせずに、化粧単板等の単板に、各段部7,8,17,18を形成するような態様としてもよい。或いは、上記のような突板4や化粧単板等に、各段部7,8,17,18を形成する態様に代えて、上記のような床基材1に、各段部7,8,17,18を形成し、塗膜層6を形成したり、塗膜層6を形成せずに、段部を含んで表面の全面に亘って合成樹脂シートを貼着するようにしたりしてもよい。
【0043】
また、上記各実施形態では、隣接された床材10同士を実接合する態様を、雄実部2aと雌実部2bとを嵌合させる本実接合の態様とした例を示しているが、他の態様としてもよい。例えば、床材10の両側端部に、凹溝状の雇いほぞをそれぞれ形成し、該雇いほぞに、雇い実を嵌め入れて実接合する態様等としてもよい。このような実接合部の態様は、隣接された床材10同士が相互に実接合された際に、板厚方向へのズレの生じ難い態様とすることが好ましい。
さらに、上記各実施形態では、上記各目地溝9,19は、床材10同士が実接合された際に、接合部表面に形成されるものとしているが、このような目地溝9,19に加えて、上記積層体の表面の他部位に、上記目地溝9,19と横断面が略同寸同形状とされた目地溝を設けるようにしてもよい。このような目地溝は、一般的に、意匠性の観点や、突板等の表面化粧材の突き合わせ接合部における段差等の吸収のため等の観点から設けられているが、一般的には、V溝形状とされており、このような目地溝を、上記同様の目地溝9,19とすることで、デザインの統一性が図れるとともに、当該目地溝部位における清掃性も向上される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】(a)、(b)は、いずれも本発明に係る板状建材の一実施形態を模式的に示し、(a)は、同板状建材の概略縦断面図、(b)は、同板状建材の施工状態の一例を模式的に示す概略縦断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、いずれも同板状建材の形成工程の一例を説明するための概略縦断面図である。
【図3】(a)〜(c)は、いずれも本発明に係る板状建材の他の実施形態を模式的に示し、(a)は、図2(d)に対応させた図、(b)は、図1(a)に対応させた図、(c)は、同板状建材の施工状態の一例を模式的に示す概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
2a 雄実部(実接合部)
2b 雌実部(実接合部)
3 表面側複合基材(基材)
3a 表面側複合基材の表面
4 突板(化粧材)
9,19 目地溝
7a,8a,17a,18a 段底面部(目地溝の底部)
7b,8b,17b,18b 段壁面部(目地溝の側壁部)
10,11 床材(板状建材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の両側端部に実接合部を備えた板状建材であって、
隣接された板状建材との実接合が相互になされた際に、これら板状建材同士の側端部間に目地溝が形成される構成とされ、
前記目地溝は、底部が略平面形状或いは湾曲面形状とされて面一状に連続面とされるとともに、両側壁部が底部から拡開する形状とされていることを特徴とする板状建材。
【請求項2】
請求項1において、
木粉・プラスチック複合材で製された基材と、該基材の表面に貼着された化粧材とを備え、前記目地溝の底部が前記基材の表面或いは層内に達する構成とされていることを特徴とする板状建材。
【請求項3】
請求項2において、
前記基材は、当該基材の全質量に対して、40質量%以上の無機フィラーと、5質量%〜30質量%の木粉とを含有していることを特徴とする板状建材。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記基材は、押出方向が前記目地溝の長手方向と同方向になるよう押出成形により形成されていることを特徴とする板状建材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記目地溝は、横断面が略逆等脚台形状であることを特徴とする板状建材。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記目地溝は、横断面が凹湾曲形状であることを特徴とする板状建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−48004(P2010−48004A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213915(P2008−213915)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】