説明

板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物を含む油性ゲル組成物、およびそれを用いたW/O型乳化組成物

【課題】 油分に対して優れた増粘・ゲル化能を発揮する有機変性粘土鉱物系増粘・ゲル化剤ならびにこれを用いた油性ゲル組成物、また、W/O乳化物に用いた場合に経時的な乳化粒子の凝集・合一を抑制するなどの優れた経時安定化効果を発揮し得る有機変性粘土鉱物系乳化剤ならびにこれを用いたW/O乳化物、さらには低粘度においてもW/O乳化安定性化効果を発揮し得る有機変性粘土鉱物系乳化剤ならびにこれを用いたW/O乳化物を提供する。
【解決手段】 (i)平均厚さが0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmである板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物、(ii)非イオン性界面活性剤、及び(iii)油分を含有する油性ゲル組成物、また、これを用いたW/O型乳化組成物及び化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物を含む油性ゲル組成物、及びW/O型乳化組成物に関し、特に、有機変性粘土鉱物の油分に対する増粘・ゲル化能やW/O乳化物における安定化能の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、W/O乳化系は様々な製品に使用されている。特にシリコーン油はなめらかな特性を有し、揮発性および撥水性に優れていることから、化粧料分野においては重要な油分であり、無論、W/O型の化粧料にも配合されることが望まれている。しかしながら、シリコーン油は安定なW/O乳化系を形成することが難しい。
【0003】
また、使用感、取扱性等の観点から、化粧品、医薬部外品のみならず、塗料、樹脂などの各種分野で油系での増粘、ゲル化が行われており、例えば高分子増粘剤、ないしワックスなどが用いられるが、油分の中でも特にシリコーン油は化粧料分野において重要である。
【0004】
これまで、シリコーン油のゲル化や、シリコーン油配合のW/O乳化系の安定化のために、シリコーン油をワックス類とともに固化する方法、シリカまたは親水化処理したシリカを併用する方法などがとられてきた。
【0005】
しかしながら、ワックス類とともに固化する方法はのびが重くべたつき等の使用感において問題があり、流動性に乏しいため応用範囲も制限されるものであった。またシリカを併用する方法は経時での安定性が悪いといった問題があった。
このような使用性、経時安定性の問題点を改善する方法として、ポリエーテル変性シリコーン化合物を用いて有機変性粘土鉱物を処理し、ゲル組成物やW/O乳化物に配合する方法が開発されている(例えば、特許文献1および2を参照)。
【0006】
しかしながら、前述のポリエーテル変性シリコーン化合物を用いて処理された有機変性粘土鉱物を含むゲル組成物のゲル形成能は持続性が低く、またW/O乳化物に配合した場合の乳化剤としての機能は、十分に満足いくものではなかった。
さらに、従来から使用される有機変性粘土鉱物を用いて、乳化物の安定性を確保しようとすると、該成分の必要量によってもたらされるゲル特性はその粘弾性が比較的高くなる傾向にあるため、低粘度でかつ安定性に優れた乳化物を得ることは非常に困難であった。
【特許文献1】特開昭61−114721号公報
【特許文献2】特開昭61−212321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前述の事情に鑑みなされたものであり、その目的は、一つには、油分に対して優れた増粘・ゲル化能を発揮する有機変性粘土鉱物系増粘・ゲル化剤、ならびにこれを用いた油性ゲル組成物を提供することである。
また、一つには、W/O乳化物に用いた場合に、経時的な乳化粒子の凝集・合一を抑制するなどの優れた経時安定化効果を発揮し得る有機変性粘土鉱物系乳化剤、ならびにこれを用いたW/O乳化物を提供することである。
また、一つには、低粘度においてもW/O乳化安定性化効果を発揮し得る有機変性粘土鉱物系乳化剤、ならびにこれを用いたW/O乳化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述のポリエーテル変性シリコーン化合物を用いて処理された有機変性粘土鉱物を含むゲル組成物のゲル形成能は持続性が低く、またW/O乳化物に配合した場合の乳化剤としての機能が不十分である点について、以下のように考えられた。
すなわち、粘土鉱物の形状は本来、厚みが数nmの板状粒子が層状化(積層)しているものであるが、市販の有機変性粘土鉱物ではその製造過程において凝集が生じるために、この層状の粘土鉱物がさらに凝集しており、その平均厚さは通常2μm以上となっている。したがって、ポリエーテル変性シリコーン化合物による処理のみでは、粘土鉱物の凝集体の微細化あるいは板状化はなされないために、有機変性粘土鉱物が十分に分散されず、その結果、油分中で安定なゲルネットワーク構造が十分形成されないと考えられた。そして、このことが、ゲル化剤や乳化剤としての機能が劣る原因になっているのではないかと考えられた。
【0009】
このような考えに基づいて本発明者らが検討を行ったところ、有機変性粘土鉱物の凝集体を機械的剪断力及び/又は衝撃力によって油分中で剥離処理して微細な板状粒子へその形状を制御することにより、非イオン性界面活性剤共存下での増粘・ゲル化能が著しく高くなることが判明した。また、W/O乳化物における乳化安定化効果も非常に高くなる。このため、有機変性粘土鉱物板状粒子及び非イオン性界面活性剤の使用量を減量することにより、比較的低粘度で安定性に優れたW/O乳化物を提供することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明にかかる油性ゲル組成物は、下記成分(i)〜(iii)を含有することを特徴とする。
(i)平均厚さが0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmである板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物、
(ii)非イオン性界面活性剤
(iii)油分
なお、本発明において、各々の板状粒子は実質的に凝集していない。
本発明の油性ゲル組成物において、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物が有機変性ヘクトライトであることが好適である。
また、本発明の油性ゲル組成物において、油分がシリコーン油を含むことが好適である。
【0011】
また、本発明の油性ゲル組成物において、平均厚さ2μm以上である層状構造を有する有機変性粘土鉱物の凝集体を、非イオン性界面活性剤の存在下、油分中で、機械的せん断力および/又は衝撃力によって剥離処理する方法で製造されることが好適である。
また、本発明の油性ゲル組成物において、非イオン性界面活性剤がポリエーテル変性シリコーン化合物であることが好適である。
【0012】
また、本発明にかかる油性ゲル組成物において、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物の配合量が油性ゲル組成物中0.25〜30質量%であることが好適であり、さらには、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物の配合量が油性ゲル組成物中0.25〜10質量%であることが好適である。
また、本発明にかかる油性ゲル組成物において、前記非イオン性界面活性剤の配合量が油性ゲル組成物中0.1〜10質量%であることが好適である。
本発明にかかるW/O型乳化組成物または化粧料は、前記いずれかに記載の油性ゲル組成物を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の板状粒子構造の有機変性粘土鉱物は、非イオン性界面活性剤との併用により油分に対して優れた増粘ゲル化効果を発揮する。また、W/O乳化物に対する乳化安定化効果にも優れるので、板状粒子構造の有機変性粘土鉱物及び非イオン性界面活性剤の使用量を低減することによって、低粘度で乳化安定性の高いW/O乳化物を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(1)有機変性粘土鉱物板状粒子
本発明にかかる油性ゲル組成物は、有機変性粘土鉱物粒子が油分中に分散した油性分散物であって、平均厚さが0.1μm以下、且つ平均長径が0.5〜50μmである板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物粒子を含む。なお、各々の板状粒子は実質的に凝集していない。
上記のような有機変性粘土鉱物板状粒子は、平均厚さ2μm以上である層状構造を有する有機変性粘土鉱物の凝集体を、油分中で、機械的せん断力および/又は衝撃力によって剥離処理することにより得ることができる。例えば、以下のような処理方法により、通常低粘度で流動性のあるゾル組成物として得られる。
【0015】
(処理方法)
市販の有機変性粘土鉱物(通常は平均厚さ2μm以上である層状構造を有する凝集体である)と油分との混合物に、直径1mm程度のガラスビーズ(またはジルコニアビーズなど)を同体積加え、ペイントシェイカー(浅田鉄工株式会社)、ビーズミル(DISPERMAT, VMA-GETZMANN GMBH Verfahrenstechnik)などを用いて機械的せん断力および/または衝撃力を加えることにより薄片化する。
【0016】
原料として用いた市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)のSEM写真図(図1)、およびこれを上記処理方法で処理して得られた板状粒子構造を有する有機変性ヘクトライトのSEM写真図(図2)を示す。
(デカメチルシクロペンタシロキサン:有機変性ヘクトライトが95:5の配合比率で分散させた後に、SEM
S−4500(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて撮影)
【0017】
本発明においては、上記処理方法を非イオン性界面活性剤の存在下で行う。
ずなわち、有機変性粘土鉱物凝集体(通常平均厚さ2μm以上)を、非イオン性界面活性剤の存在下、油分中で機械的剪断力及び/又は衝撃力によって剥離処理することによって、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物を油相中で形成する。
非イオン性界面活性剤の併用により、ゾル組成物に比して粘度が著しく上昇し、流動性が低下する。本発明においては、このような組成物をゲル組成物と言う。このように、本発明のゲル組成物は、前記ゾル組成物(ゲル組成物から非イオン性界面活性剤を除いた分散体)よりも増粘した油性分散物ということができる。
【0018】
本発明にかかる有機変性粘土鉱物は、前述の処理方法により、平均厚みが0.1μm以下である板状の形状を有するものである。従来の粘土鉱物は、板状粒子が層状化しており、これを有機変性処理して調製される市販の有機変性粘土鉱物は、その層状構造を有する粘土鉱物がさらに凝集体を形成しており、その様態は図1に示される。
【0019】
本発明においては、この凝集体を剥離処理することにより、平均厚みが0.1μm以下である板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物が単一粒子として独立に存在した分散体を得ることができる。一度得られた分散体は、シリコーン油などの油相中において、再度凝集することなく、良好な分散状態を維持することが可能である。凝集体が十分に剥離されずに厚みが大きいままであると、後述するような増粘ゲル化能やW/O乳化安定化能が十分に発揮されない。
また、本発明にかかる組成物に含まれる有機変性粘土鉱物は、平均長径が0.5〜50μmであることが好ましい。個々の粒子形状は、上記の厚みおよび長径の範囲においてシート構造をとっていれば、特に限定されず、角張っていてもいなくてもよい。
【0020】
本発明にかかる油性ゲル組成物に含まれる有機変性粘土鉱物の平均厚さ、平均長径は例えば、以下の測定方法により求められる。
(測定方法)
・平均厚さ
油性ゲル組成物をシリコーン油で十分希釈し、希釈液を乾燥したサンプルを走査型電子顕微鏡(S−4500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定する。
・平均長径
油性ゲル組成物をシリコーン油で十分希釈し、粒度分布測定機(Microtrac VSR、日機装株式会社製)を用いて測定する。
これらの測定のために、油性ゲル組成物中の非イオン性界面活性剤をシリコーン油で洗浄してもよい。
なお、本発明においては、上記の平均厚さおよび平均長径の測定は、有機変性粘土鉱物をシリコーン油中に分散および希釈させたゾル組成物を測定サンプルとして用いることも可能なものとする。
また、前記有機変性粘土鉱物の形状はSEM写真により決定される。
【0021】
本発明にかかる板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物を調製しようとする場合、その原料となる有機変性粘土鉱物は、化粧料に一般に使用されるものであれば特に制限されず、いずれのものも使用することが可能である。具体的には、水膨潤性粘土鉱物の層間カチオンをアルキル4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤でイオン交換して得られるものであり、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムイオンで交換されたもの、ジメチルジステアリルアンモニウムイオンで交換されたもの等が挙げられる。また水膨潤性粘土鉱物は具体的にはモンモリロナイト、スメクタイト、ヘクトライト等が挙げられる。本発明において、好ましく用いられる有機変性粘土鉱物は、前述の有機変性されたヘクトライトであり、市販の有機変性粘土鉱物としては、例えばベントン27、ベントン38(エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)等が挙げられる。
【0022】
(2)油分
また、前述の処理方法において用いる油分は、特に限定されない。化粧料や医薬品等に通常配合される油分を1種または2種以上用いることが可能であるが、全体として常温(20℃)で液状の油分であることが好適である。特に本発明においてはシリコーン油が好ましく用いられる。
【0023】
シリコーン油としては、化粧料に一般的に使用されるものであれば特に限定されない。具体的に示すと、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサンの他、特に問題のない限り、3次元網目構造を形成しているシリコーン樹脂、シリコーンゴム各種ポリシロキサン(アミノ変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等)等が挙げられる。
本発明において、シリコーン油の1種または2種以上を選択して用いることも可能である。
【0024】
本発明の板状構造を有する有機変性粘土鉱物は、特にシリコーン油を主成分とする油分中で良好に分散することができ、ポリエーテル変性シリコーン化合物などの非イオン性界面活性剤とともに増粘・ゲル化を効果的に行うことが可能である。また、シリコーン油を主成分とするW/O乳化組成物においても優れた乳化安定化効果を発揮することができる。
【0025】
シリコーン油以外の油分としては、例えば、炭化水素油、エステル油、植物性油脂、動物性油脂、高級アルコール、高級脂肪酸等が挙げられる。
炭化水素油としては、流動パラフィン、パラフィン、スクワラン、スクワレン、オゾケライト、プリスタン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
【0026】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリン、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル等が挙げられる。
【0027】
植物性油脂としては、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、落花生油、アーモンド油、大豆油、茶実油、ホホバ油、胚芽油等が挙げられる。
動物性油脂としては、タートル油、卵黄油、ミンク油等が挙げられる。
高級アルコールとしては、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、ホホバアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール等が、高級脂肪酸としては、オレイン酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0028】
(3)非イオン性界面活性剤
本発明にかかる油性ゲル組成物中において、非イオン性界面活性剤は、前記板状構造を有する有機変性粘土鉱物の板状粒子表面に吸着し、安定なゲルネットワークの形成に寄与する。微細な板状粒子表面に非イオン性界面活性剤が吸着しているため、吸着率が向上し、従来の凝集体の有機変性粘土鉱物を用いたゲル組成物よりも少ない非イオン性界面活性剤量でその配合効果が発揮される。
また、本発明にかかる油性ゲル組成物を用いてW/O型乳化組成物を調製した場合、非イオン性界面活性剤によって表面改善された有機変性粘土鉱物の微細分散粒子が乳化粒子の膜壁を形成し、安定性に優れた乳化組成物となる。
【0029】
本発明において用いる非イオン性界面活性剤としては、通常医薬品、化粧料等に用いられるものが挙げられる。
具体的には、例えば、POE(2〜50)オレイルエーテル、POE(2〜40)ステアリルエーテル、POE(2〜50)ラウリルエーテル、POE(1〜50)アルキルフェニルエーテル、POE(5〜30)ベヘニルエーテル、POE(5〜25)2−デシルペンタデシルエーテル、POE(3〜20)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(5〜25)2−オクチルドデシルエーテル等のエーテル型活性剤、およびPOE(4〜100)硬化ヒマシ油、POE(3〜60)ヒマシ油、POE(2〜150)脂肪酸モノエステル、POE(2〜150)脂肪酸ジエステル、POE(5〜20)ソルビタン脂肪酸エステルなどのエステル型活性剤、さらにPOE(2〜60)グリセリルモノイソステアレート、POE(3〜60)グリセリルトリイソステアレート、POE(5〜60)硬化ヒマシ油トリイソステアレート等のエーテルエステル型活性剤などのエチレンオキシド付加型界面活性剤、およびデカグリセリルテトラオレート、ジグリセリルジイソステアレート、デカグリセリルテトライソステアレート、デカグリセリルテトラステアレート、デカグリセリルヘプタオレート、デカグリセリルデカオレート、デカグリセリルデカイソステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノイソステアレート、グリセリルモノオレート等のグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤などが挙げられる。非イオン性界面活性剤は、1種または2種以上を選択して用いることができる。
【0030】
本発明において好ましい非イオン性界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン化合物が挙げられる。ポリエーテル変性シリコーン化合物としては、下記の一般式(I)〜(VII)で表されるポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0031】
【化1】

【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
【化4】

【0035】
【化5】

【0036】
【化6】

【0037】
【化7】


(一般式(I)〜(VII)中、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはフェニル基、R’は水素または炭素数1〜12のアルキル基、pは1〜50の整数、mおよびaは1〜100の整数、n,q,x,zは1〜50の整数、tおよびyは0〜50の整数。)
【0038】
上記一般式(I)〜(VII)で表されるポリエーテル変性シリコーン化合物を用いると、本発明にかかる油性ゲル組成物に含まれる油分がシリコーン油である場合に、特に好適である。本発明においては、前記に表されるポリエーテル変性シリコーン化合物のうち、1種以上または2種以上が任意に選択して用いられることが好適である。
上記一般式(I)〜(VII)で表される化合物として、市販のものを用いることも可能であり、ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体などを挙げることができる。
なお、本発明にかかる油性ゲル組成物において、シリコーン油の好適な配合量はゲル組成物全量中20〜90質量%である。
【0039】
本発明にかかる油性ゲル組成物において、非イオン性界面活性剤の好適な配合量は該油性ゲル組成物全量中0.1〜10質量%である。
また、該油性ゲル組成物中において、板状構造を有する有機変性粘土鉱物に対する非イオン性界面活性剤の質量比は、板状構造有機変性粘土鉱物:非イオン性界面活性剤=1:1〜10:1であることが好ましい。
非イオン界面活性剤が少なすぎるとその効果が十分発揮されず、一方、非イオン界面活性剤を過剰に用いても効果の顕著な向上は期待できず、かえって使用感などに悪影響を及ぼすことがある。
【0040】
本発明にかかる油性ゲル組成物において、板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物の好適な配合量は該油性ゲル組成物全量中0.25〜30質量%であり、さらに好ましくは0.25〜10質量%である。最も好ましくは、0.5〜5質量%である。0.25質量%未満であると、配合効果が見られず、また30質量%を超えて配合すると非イオン性界面活性剤との併用で固いゲルが形成される傾向にあり、増量による効果の向上も認められない。
【0041】
本発明において、油性ゲル組成物には、特に問題のない限りその他の任意の油性成分を含有することも可能であり、また、必要に応じてシリコーン油やその他の油分を添加してもよい。
例えば、本発明にかかる好適な油性ゲル組成物として、板状粒子構造の有機変性粘土鉱物、ポリエーテル変性シリコーン化合物及びシリコーン油を主成分として含むものが挙げられるが、これら以外の油分を加えることも可能である。
その他の油分としては、例えば、炭化水素油、エステル油、植物性油脂、動物性油脂、高級アルコール、高級脂肪酸等が挙げられる。なお、これら油分は、シリコーン油に溶解して全体として常温(20℃)で均一な液状となることが好ましい。
また、本発明にかかる油性ゲル組成物において、油分の好適な配合量は油性ゲル組成物全量中70質量%以上である。
【0042】
(3)W/O乳化組成物
次に本発明にかかるW/O乳化組成物について説明する。
W/O型乳化組成物を構成する水相としては、水および水溶性成分が配合される。
一方、油相には、前記油性ゲル組成物が主成分として用いられる。
【0043】
本発明にかかるW/O型乳化組成物は、常法のW/O型乳化組成物の製造方法によって製造される。例えば、前記油性ゲル組成物を含む油相に水相を添加して乳化することにより得られる。
W/O型乳化組成物全量中、前記水相:油相は80:20〜5:95の割合であることが好ましい。
【0044】
本発明にかかる油性ゲル組成物又はW/O型乳化組成物には、化粧料に一般的に使用されるその他の成分を適宜配合することも可能である。
例えば、薬剤、各種界面活性剤、無機粉末、有機粉末、顔料、色素、保湿剤、増粘剤、金属封鎖剤、各種水溶性高分子、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明にかかる油性ゲル組成物又はW/O型乳化組成物は、従来の油性ゲル化粧料やW/O乳化化粧料の基剤として用いることができる。例えば、乳液、クリーム、洗浄料、パック、マッサージ用化粧料などのスキンケア化粧料;ファンデーション、口紅、頬紅、アイライナー、アイシャドウなどのメークアップ化粧料;サンスクリーン化粧料;ヘアトリートメントや整髪料などの毛髪化粧料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
以下、具体的に実施例を挙げて、本発明について更に詳しく説明する。本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は質量%で示す。
【0046】
油性ゲル組成物1〜4
市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)を各々5重量部、ポリオキチエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(一般式(I)タイプ、ポリオキシエチレン含有率 約20%、粘度400〜800cs、HLB4.5、R’=H、p=3、y=0)2.5重量部、デカメチルシクロペンタシロキサン92.5重量部に対して、ガラスビーズ(またはジルコニアビーズなど)を同体積加え、ビーズミルを用いて機械的せん断力および/または衝撃力によって攪拌、均一に混合する時間を5分、10分、15分として油性ゲル組成物1〜3を得た。
また、比較例として、ビーズを用いずビーズミルの代わりにディスパーによる通常の分散処理を10分間行なうことによって、油性ゲル組成物4を得た。
【0047】
油性ゲル組成物1〜4に含まれる有機変性粘土鉱物の粒子形状をSEM観察したところ、油性ゲル組成物4中の有機変性粘土鉱物は、比較的大きな粒状の凝集体のままであったが、油性ゲル組成物1〜3中の有機変性粘土鉱物は、微細な板状粒子構造を有していた。
油性ゲル組成物1〜4に含まれる有機変性粘土鉱物の粒子形状を下記表1に示す。なお、この粒子形状特性は、有機変性粘土鉱物を予めデカメチルシクロペンタシロキサンで分散させて得られたゾル組成物をサンプルとして採取し、測定した結果である。平均厚さ、平均長径の測定は以下のように実施した。
【0048】
(測定方法)
・平均厚さ
ゾル組成物をデカメチルシクロペンタシロキサンで十分希釈し、希釈液を乾燥したサンプルを走査型電子顕微鏡(S-4500、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定した。
・平均長径
ゾル組成物をデカメチルシクロペンタシロキサンで十分希釈し、粒度分布測定機(Microtrac VSR、日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0049】
【表1】

【0050】
前記油性ゲル組成物1〜4に関し、膨潤性を調べた。その結果を下記表2に示す。膨潤性の評価方法および評価基準は以下のとおりである。
(油性ゲル組成物の膨潤性)
透明ガラス瓶にサンプルを入れ、目視により以下の基準のもとに、各油性ゲル組成物を評価した。
○:液相の分離など変化が見られない。
△:ゲル組成物全体の1/5以下が分離している。
×:ゲル組成物全体の1/5以上が分離している。
【0051】
【表2】

【0052】
上記表2の結果から明らかなように、ディスパー処理で得られる油性ゲル組成物4は膨潤性が劣るものであった。
一方、ビーズミルにより処理した油性ゲル組成物1〜3は、処理時間を10分間、15分間と延ばすにつれて膨潤性が向上し、特に油性ゲル組成物3に含まれる有機変性粘土鉱物は、平均厚さが0.1μm以下、平均長径が5μm程度である分散性の良好な板状構造であった。
【0053】
油性ゲル組成物4に含まれる有機変性粘土鉱物粒子の形状は粒状であり、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物とは異なる形状である。
前記板状粒子構造の有機変性粘土鉱物では、板状粒子表面(平坦面)が疎水性、端面が親水性を帯びる傾向にあるため、シリコーン油中において親水性部分の端面の露出を減らすように配置される。模式的に表すと図3のようなゲルネットワークを形成し、高い膨潤性が発揮されると考えられる。
一方、粒状の有機変性粘土鉱物粒子では、親疎水性部分の寄与によるゲルネットワークが形成され難いため、膨潤性が劣るものと考えられる。
【0054】
また、油性ゲル組成物1〜3に含まれる有機変性粘土鉱物は、処理時間によって板状粒子の平均長径および分散性の程度が異なるものであるが、凡そ15分間以上の処理時間で薄片化されることにより、優れた膨潤性が得られることが上記の結果から明らかである。
【0055】
さらに、油性ゲル組成物のゲル構造の安定性を動的粘弾性から評価した。測定方法は次の通り。
(動的粘弾性測定)
測定装置:レオメーターAR1000−N(TA Instruments)
測定方法:コーン型プレートを用いて、動的粘弾性測定をおこなった。測定周波数を1Hzの条件で、ずり応力(0.01−50[Pa])に対するゲルの貯蔵弾性率G’[Pa]を測定した。
本発明にかかる油性ゲル組成物3(有機変性粘土鉱物:板状粒子)の貯蔵弾性率(G’)とずり応力との関係図を図4に、油性ゲル組成物4(有機変性粘土鉱物:凝集体)の関係図を図5に示す。また、各図には、それぞれの油性ゲル組成物に含まれるポリエーテル変性シリコーン化合物濃度を変えた場合についても示した(増減はデカメチルシクロペンタシロキサンで調整)。
【0056】
本発明にかかる油性ゲル組成物3のように有機変性粘土鉱物は板状粒子である場合には、一定のずり応力範囲においてゲルの弾性が高く、一定な状態が維持され、安定なゲル構造をとっていることが確認された(図4)。
一方、油性ゲル組成物4のように市販の有機変性粘土鉱物を通常の分散処理した粒状(凝集体)の有機変性粘土鉱物を用いた場合には、上記図4の場合に比してゲル弾性が小さく、ゲル弾性状態が一定である安定領域も乏しいものであった(図5)。
【0057】
以上の結果より、本発明にかかる板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物は、油分中、非イオン性界面活性剤の存在下で、安定なゲル構造の形成に優れた効果を発揮し、従来の凝集体構造をとる有機変性粘土鉱物と比較して、増粘ゲル化効果が改善されていることが極めて明らかである。
【0058】
油性分散物1〜8
さらに、非イオン性界面活性剤の添加量を変えて油分中における有機変性粘土鉱物の膨潤性を調べた。その結果を下記表3に示す。また、図6にはその膨潤の様子を示した。なお、製造方法は次の通りである。
【0059】
(油性分散物1〜4)
有機変性粘土鉱物として市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)を用い、前記油性ゲル組成物4の製造方法と同様にディスパーで調製した(通常分散処理)。得られた油性分散物中の有機変性粘土鉱物は粒状の凝集体であった。
(油性分散物5〜8)
有機変性粘土鉱物として市販の有機変性ヘクトライト(ベントン38VCG、エレメンティススペシャリティーズ(英)社製)を用い、前記油性ゲル組成物3の製造方法と同様にビーズミルで調製した(高分散処理)。得られた油性分散物中の有機変性粘土鉱物は微細な板状粒子であった。
【0060】
【表3】

【0061】
上記表3から明らかなように、通常分散処理をした凝集体の有機変性ヘクトライトを用いた場合、非イオン性界面活性剤であるポリエーテル変性シリコーン化合物を添加しないとほとんど膨潤せず(分散物1)、添加量を増加していくと徐々に変化がみられるものの5質量%に達してようやく適度な膨潤性が観察される程度であった(分散物4)。
一方、ビーズミルを用いて高分散処理した板状粒子構造を有する有機変性ヘクトライトを用いた場合には、ポリエーテル変性シリコーン化合物を添加しない状態でも、凝集体を用いた場合に比べればある程度の高い膨潤性が発揮されることが図6から明らかである。そして、ポリエーテル変性シリコーン化合物の添加量が1質量%を超えると十分に満足のいく膨潤性が観察された。
以上の結果からも、板状構造を有する有機変性粘土鉱物を含む油性ゲル組成物は、凝集体の有機変性粘土鉱物を含む油性ゲル組成物に比べて、極めて膨潤性が高いことが明らかである。
【0062】
前記油性ゲル組成物3および4の製造過程において、非イオン性界面活性剤であるポリエーテル変性シリコーン以外の成分を混合して分散処理を施した後、ポリエーテル変性シリコーン添加前と添加後の有機変性粘土鉱物の分散状態を、SEM写真で撮影した(図7および図8を参照)。
この写真から、本発明にかかる油性ゲル組成物を調製しようとする場合(図7)、ポリエーテル変性シリコーン化合物添加前と後の両者において、粘土鉱物の粒子は微細化された状態で分散していることが明らかである。
一方、通常の分散処理を行なった粒状(凝集体)の有機変性粘土鉱物を用いた場合には(図8)、ポリエーテル変性シリコーン化合物の添加によって有機変性粘土鉱物凝集体の微細化が若干進行するものの、依然として大きな凝集体が確認され、分散状態がよいものとは認められない。
【0063】
次に、W/O乳化組成物において、本発明にかかる有機変性粘土鉱物板状粒子と、従来の有機変性粘土鉱物凝集体との比較を行った。
乳化物1〜4
表4の組成のW/O乳化組成物を調製した。調製方法は次の通り。
(乳化物1〜2)
市販の有機変性ヘクトライトとポリエーテル変性シリコーン化合物とシリコーン油を混合し、ディスパーで15分間分散処理して、油性ゲル組成物を得た。この油性ゲル組成物中の有機変性粘土鉱物は、前記油性ゲル組成物4と同様の凝集体であった。
得られた油性ゲル組成物に、イオン交換水を徐添しながらディスパーにより乳化して、W/O型乳化組成物を得た。
【0064】
(乳化物3〜4)
市販の有機変性ヘクトライトとポリエーテル変性シリコーン化合物とシリコーン油を混合し、この混合物と同体積のガラスビーズ(直径1mm)を添加して、ビーズミルにより15分間分散処理して油性ゲル組成物を得た。この油性ゲル組成物中の有機変性粘土鉱物は、前記油性ゲル組成物3と同様の微細な板状粒子であった。
得られた油性ゲル組成物に、イオン交換水を徐添しながらディスパーにより乳化して、W/O型乳化組成物を得た。
【0065】
粘度、乳化粒子径および乳化安定性の評価方法および評価基準は次の通り。
(粘度)
30℃の恒温槽で1時間静置した後に、単一円筒型回転粘度計(芝浦システム株式会社)を用いて12rpmの条件で測定した(ローターNo.3またはNo.4)。
(乳化粒子径)
各条件で保存後の試料の乳化粒子径を、光学顕微鏡(OLYMPUS BM60)を用いて測定した。
(安定性)
試料を各条件で保存し、外観変化を下記の評価基準に従い、目視によって評価した。
A:液相の分離、凝集など変化が見られない。
B:表層に若干の分離が認められる。
C:乳化組成物全体の1/5以下が分離している。
D:乳化組成物全体の1/5以上が分離している。
【0066】
【表4】

【0067】
上記表4の結果から明らかなように、市販の有機変性粘土鉱物を凝集体のまま用いて調製した乳化物1および2においては、経時安定性が劣るものであった。特に、有機変性粘土鉱物の含有量が0.5質量%であると(乳化物1)、粘度が極めて低く、安定な乳化物を維持することは困難であることが分かる。1質量%に増やすと(乳化物2)、粘度の向上は見られるものの、経時安定性は満足いくものではない。
一方、板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物を用いたW/O乳化組成物では、その配合量が0.5質量%のとき(乳化物3)、低粘度であるものの、同配合量の凝集体粘土鉱物を用いた乳化物1に比して、安定性は良いものであった。さらに、1質量%に増やすと(乳化物4)、粘度は極めて高いものとなり、経時安定性が優れたものとなった。
【0068】
以上の結果より、凝集体の有機変性粘土鉱物を板状化した有機変性粘土鉱物を含む油性ゲル組成物を用いることにより、より少ない配合量で粘度の向上、および安定性に優れたW/O型乳化組成物を得ることができることが明らかとなった。
【0069】
さらに、油性ゲル組成物に配合する非イオン性界面活性剤および油分の種類を変えて検討を行った。
乳化物5〜8
下記表5に示されるW/O乳化物の調製方法は次の通りである。
(乳化物5〜8)
有機変性ヘクトライトと非イオン性界面活性剤と油分とを混合し、この混合物と同体積のガラスビーズ(直径1mm)を添加して、ビーズミルにより15分間分散処理して油性ゲル組成物を得た。この油性ゲル組成物中の有機変性粘土鉱物は、前記油性ゲル組成物3と同様、微細な板状粒子であった。
得られた油性ゲル組成物に、イオン交換水を徐添しながらディスパーにより乳化して、W/O型乳化組成物を得た。
【0070】
【表5】

【0071】
上記表5の結果から明らかなように、非イオン性界面活性剤を変更した乳化物6、および油分を炭化水素油、エステル油に変更した乳化物7〜8において、W/O型乳化組成物の安定性はある程度に維持された。本発明にかかる板状構造を有する有機変性粘土鉱物を利用すると、シリコーン油中において最も良好に安定性を維持することが可能である。したがって幅広い種類のW/O型乳化組成物、特にシリコーン油の配合が主流となっている化粧料へ応用することが期待される。
【0072】
以下、本発明の板状構造を有する有機変性粘土鉱物を含む油性ゲル組成物を用いたW/O型乳化組成物を化粧料に用いた実施例を示す。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
化粧料1:サンスクリーン
(質量%)
(1)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト/
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(一般式(I)型、
HLB 4.5、POE含有率 20%、400〜800cs、
R’=H、p=3、y=0)/デカメチルシクロペンタシロキサン
(0.8/0.4/19.8)
21
(2)トリメチルシロキシケイ酸 1
(3)ジメチルポリシロキサン(5.6cs/25℃) 5
(4)2−エチルヘキサン酸セチル 5
(5)シリコーン被覆微粒子酸化亜鉛(20nm) 15
(6)パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 7
(7)ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.5
(8)球状ポリエチレン粉末 3
(9)ジプロピレングリコール 4
(10)エデト酸三ナトリウム 0.02
(11)パラベン 適量
(12)フェノキシエタノール 適量
(13)精製水 残余
(14)香料 適量
(製法)
予めビーズミルなどを用い微細粒子に分散したゲル組成物(1)に(2)〜(8)を添加し混合分散した。そこに(9)〜(13)の水相パーツを添加し乳化した後に、(14)を加え、目的のサンスクリーンを得た。
【0074】
化粧料2:保湿クリーム
(質量%)
(1)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト/
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(一般式(VI)型、
HLB 3〜4、200〜800cs)/デカメチルシクロペンタシロキサン
(2/1/17)
20
(2)ワセリン 2
(3)ジメチルポリシロキサン(5.6cs/25℃) 5
(4)スクワラン 1
(5)イソステアリン酸 1
(6)2−エチルヘキサン酸セチル 5
(7)グリセリン 12
(8)1,3−ブチレングリコール 4
(9)エリスリトール 2
(10)塩化ナトリウム 0.5
(11)ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.05
(12)リン酸L−アスコルビルマグネシウム 2
(13)チオタウリン 0.1
(14)ウコンエキス 0.1
(15)エデト酸三ナトリウム 0.1
(16)パラベン 適量
(17)精製水 残余
(18)香料 適量
(製法)
予めビーズミルなどを用い微細粒子に分散したゲル組成物(1)に(2)〜(6)を添加し混合攪拌した。そこに(7)〜(17)の水相パーツを添加し乳化した後に、(18)を加え、目的の保湿クリームを得た。
【0075】
化粧料3:乳化ファンデーション
(質量%)
(1)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト/
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(一般式(I)タイプ、
HLB 4.5、POE含有率 20%、400〜800cs、R’=H、
p=3、y=0)/デカメチルシクロペンタシロキサン(1/0.5/19.5)
21
(2)ジメチルポリシロキサン(5.6cs/25℃) 5
(3)パルミチン酸 0.5
(4)スクワラン 5
(5)デキストリン脂肪酸処理二酸化チタン 15
(6)デキストリン脂肪酸処理黄酸化鉄 3
(7)デキストリン脂肪酸処理ベンガラ 1.5
(8)デキストリン脂肪酸処理黒酸化鉄 0.5
(9)金属石鹸処理タルク 3
(10)シリコーン被覆紡錘状酸化チタン 3
(11)架橋型シリコーン末(トレフィルE−506) 0.1
(12)ベンガラ被覆雲母チタン 0.5
(13)N−ラウロイル−L−リジン 2
(14)酢酸DL−α−トコフェロール 0.1
(15)グリセリン 3
(16)1,3−ブチレングリコール 5
(17)パラオキシ安息香酸エステル 適量
(18)精製水 残余
(19)香料 適量
(製法)
予めビーズミルなどを用い微細粒子に分散したゲル組成物(1)に(2)〜(13)を添加し混合分散した。そこに(14)〜(18)の水相パーツを添加し乳化した後に、(19)を加え、目的の乳化ファンデーションを得た。
【0076】
化粧料4:乳化ファンデーション
(質量%)
(1)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト/
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(一般式(VII)タイプ、
HLB 3〜4、200〜700cs、R’=H、p=3、y=0)/
デカメチルシクロペンタシロキサン(1/0.5/19.5)
21
(2)ジメチルポリシロキサン(5.6cs/25℃) 5
(3)スクワラン 5
(4)シリコーン処理二酸化チタン 12
(5)シリコーン処理黄酸化鉄 3
(6)シリコーン処理ベンガラ 1.5
(7)シリコーン処理黒酸化鉄 0.5
(8)シリコーン処理セリサイト 5
(9)シリコーン被覆紡錘状酸化チタン 3
(10)架橋型シリコーン末(トレフィルE−506) 0.1
(11)ベンガラ被覆雲母チタン 0.5
(12)球状シリカ 3
(13)ジプロピレングリコール 3
(14)1,3−ブチレングリコール 5
(15)パラオキシ安息香酸エステル 適量
(16)精製水 残余
(17)アルコール 5
(18)香料 適量
(製法)
予めビーズミルなどを用い微細粒子に分散したゲル組成物(1)に(2)〜(12)を添加し混合分散した。そこに(13)〜(16)の水相パーツを添加し乳化した後に、(17)〜(18)を加え、目的の乳化ファンデーションを得た。
【0077】
化粧料5:サンスクリーン
(質量%)
(1)ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト/
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体(一般式(V)タイプ、
HLB 3〜4、POE含有率 19%、200〜700cs、R’=H、
p=3、y=0)/デカメチルシクロペンタシロキサン
(0.8/0.4/19.8)
21
(2)トリメチルシロキシケイ酸 1
(3)ジメチルポリシロキサン(5.6cs/25℃) 5
(4)2−エチルヘキサン酸セチル 5
(5)シリコーン被覆微粒子酸化亜鉛(20nm) 15
(6)パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 7
(7)ジパラメトキシ桂皮酸モノ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.5
(8)球状ポリエチレン粉末 3
(9)ジプロピレングリコール 4
(10)エデト酸三ナトリウム 0.02
(11)パラベン 適量
(12)フェノキシエタノール 適量
(13)精製水 残余
(14)香料 適量
(製法)
予めビーズミルなどを用い微細粒子に分散したゲル組成物(1)に(2)〜(8)を添加し混合分散した。そこに(9)〜(13)の水相パーツを添加し乳化した後に、(14)を加え、目的のサンスクリーンを得た。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】市販の有機変性粘土鉱物のSEM写真図である。
【図2】板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物のSEM写真図である。
【図3】凝集体又は板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物のシリコーン油中におけるゲルネットワークの形成を模式的に示した図である。
【図4】本発明にかかる板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物を用いた油性ゲル組成物の貯蔵弾性率(G’)とずり応力との関係を示した図である。
【図5】市販の有機変性粘土鉱物の通常分散処理品を用いた油性ゲル組成物の貯蔵弾性率(G’)とずり応力との関係を示した図である。
【0079】
【図6】油性ゲル組成物3および4の膨潤性を、ポリエーテル変性シリコーン化合物の添加量を変えて示した図である。
【図7】市販の有機変性粘土鉱物を高分散処理により油性ゲル組成物を調製した場合の、ポリエーテル変性シリコーン化合物添加前と後の分散状態を示す写真図である。
【図8】市販の有機変性粘土鉱物を通常の分散処理により油性ゲル組成物を調製した場合の、ポリエーテル変性シリコーン化合物添加前と後の分散状態を示す写真図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(i)〜(iii)を含有する油性ゲル組成物。
(i)平均厚さが0.1μm以下、平均長径が0.5〜50μmである板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物、
(ii)非イオン性界面活性剤
(iii)油分
【請求項2】
請求項1記載の油性ゲル組成物において、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物が有機変性ヘクトライトであることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の油性ゲル組成物において、油分がシリコーン油を含むことを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の油性ゲル組成物において、平均厚さ2μm以上である層状構造を有する有機変性粘土鉱物の凝集体を、非イオン性界面活性剤の存在下、油分中で、機械的せん断力および/又は衝撃力によって剥離処理する方法で製造されることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項5】
請求項1〜5の何れかに記載の油性ゲル組成物において、非イオン性界面活性剤がポリエーテル変性シリコーン化合物であることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の油性ゲル組成物において、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物の配合量が油性ゲル組成物中0.25〜30質量%であることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の油性ゲル組成物において、前記板状粒子構造を有する有機変性粘土鉱物の配合量が油性ゲル組成物中0.25〜10質量%であることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の油性ゲル組成物において、前記非イオン性界面活性剤の配合量が油性ゲル組成物中0.1〜10質量%であることを特徴とする油性ゲル組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の油性ゲル組成物を用いたW/O型乳化組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の油性ゲル組成物を用いた化粧料。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−63331(P2008−63331A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207474(P2007−207474)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】