説明

板紙の製造方法と両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤とベントナイト併用によるクリーンアップシステムについて

【課題】板紙の弱酸性から中性領域の抄紙において、歩留・濾水性向上のみならず、破裂強度の低下無しにリングクラッシュ強度を向上でき、更にピッチコントロール効果並びに泡立ち抑制効果を有する抄紙方法を提供する。
【解決手段】抄紙pHが6.0以上から中性の範囲で、両性分岐型ポリアクリルアミド系紙力剤とベントナイトを用いて抄紙する。両性分岐型ポリアクリルアミド系紙力剤はマシンチェストに添加し、ベントナイトはスクリンの入口または出口に添加することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
板紙の紙力剤は、1960年台は酸性抄紙にてアニオン性直鎖型ポリアクリルアマイド紙力剤(荒川化学工業品“ポリストロン117”)と硫酸バンド併用処方が一般的でした。1970年台から1980年台より更にPHが高くなり両性マンニッヒ変性ポリアクリルアマイド系紙力剤(現星光PMC社旧ハマノ工業品“ポリアクロンCM”)が使用されましたが、ホルマリン含有問題のため使用されなくなりました。
1990年台から現在に於いては、弱酸性抄紙として、両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤が使用されています。地合を乱さず紙の強度、濾水歩留効果アップを目的として使用されていますが、ピッチコントロール効果や白水の泡立ち抑制効果はありません。
濾水性向上剤としては、従来より、ポリエチレンイミン(BASF社:ポリミン)が使用されています。
脱水性には効果がありますが、泡立ち抑制効果やピッチコントロール効果はありません。
最近は直鎖型ポリアクリクアマイド系歩留剤とコロウダルシリカの併用処方(エカ社:新コポジルシステム)もありますが、コロイダルシリカも汚染物質を吸着する効果作用はありません。
酸性抄紙に於いては特願昭62−237280紙の製造方法として平均分子量10万−100万の共重合であって両性化された両性化合物とベントナイトの併用処方があります。この化合物は直鎖型合成物であり100万以上の分子量にすれば地合の乱れによる紙力低下をおこします。さらにこの化合物は、弱酸性から中性抄紙(ph6.0以上から7.0以上)に対しては濾水性歩留性効果の低下する欠点があります。
「発明の名称」
本発明は弱酸性抄紙から中性抄紙において、両性型分岐型ポリアクリルアマイト系紙力剤(分子量200万から300万)(特許第4232189)とベントナイトとの併用処方である。破裂強度低下なくリングクラッシュ強度効果アップ、および濾水度歩留向上効果がる事を特徴とする板紙製造方法。
【発明の詳細】
【0002】
両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤は、マシンチェストとファンポンプの2ケ所添加処方で地合乱れなく、紙力増強効果、濾水歩留効果向上を目的で使用されていますが、添加量が0.5%以上の高添加では、未定着分の紙力剤がマシン汚れや泡立ちの要因になります。ベントナイトとの併用することにより汚染物質をベントナイトが吸収し未定着の紙力剤と反応し紙製品に持ち込むことによりマシン汚れと泡立ち抑制効果があります。
ベントナイトはPHが6.5で端面の等電点であり、アニオンとカチオンのバランスが50/50ですので両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤との併用処方は相乗効果があります。
【実施例1】
板紙原料に上記処方にてベントナイトを0.1−0.3%添加すると泡立ちは無くなります。
【別紙写真参考】
参考資料 ベントナイト添加前と添加後比較写真
泡立ちテスト条件:ライナーマシン裏層の原料使用 1%濃度
両性分岐型PAM系紙力剤:0.3%
ベントナイト無添加 泡が消える秒数 15秒 泡立ちの高さ 15mm
ベントナイト0.3 1秒 1mm
(*テスト方法:750rpm x 30秒 300ccシリンダーに投入後測定)

ています。モンモリロナイトの構造は下記の様な膨潤構造を持っています。
ベンイナイトの特徴的性質は板状結晶体であり、ベントナイトの端面のイオンはPH6.5が等電点です。
水で溶解すると約20倍以上膨潤し比表面性は非常に大きく、従来は排水処理工程にて凝集剤との併用にてCOD低減効果があり、汚染物質を吸着する作用がある事からピッチコントロール剤として知られています。
ベントナイトの種類はカルシウムとナトリウムタイプがありますが、両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤との併用はナトリウムタイプが効果的です。
ベントナイトは粉末ですので、水で溶解するときは膨潤時間が必要です。常温では3−5%濃度にて60分以上の溶解時間が必要です。
ベントナイトの粒度は平均30から50ミクロンが良いと思われます。100ミクロン以上の粒子はポンプの摩耗が心配ですので、高度に分級されたベントナイトの使用が大切です。
両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤は通常0.1−0.5%ですが0.5%以上添加したら、水質が悪いので未定着の紙力剤が発生し、泡立ちによるマシン汚れが発生するので、このような場合、ベントナイトをスクリーン前後に0.1−0.3%添加することによりマシン汚れを改善できます。
更に破裂強度を低下させずに、圧縮強度を向上させます。
【実施例2】
PHの変化とベントナイトの濾水度効果テスト結果
テスト条件:ライナーマシンの裏層原料使用
両性分岐型PAM系紙力剤(荒川化学工業(株)品ポリストロン502):0.3%添加
ベントナイト(ナトリウムタイプ):0.1%(関東ベントナイト鉱業株式会社“千曲”使用)
濾水度(秒/650cc)
PH4.5 98秒
PH5.5 80秒
PH6.5 65秒
PH7.5 50秒
【実施例3】
PH6.5に於けるベントナイトの効果テスト結果:
テスト条件:ライナーマシン裏層原料使用
両性分岐PAM系紙力剤:0.3%
ベントナイト添加量 濾水度(秒/650cc)
0.1% 65秒
0.15% 50秒
0.2% 40秒
【実施例4】
両性分岐型PAM紙力剤とベントナイトの併用紙力、歩留濾水テスト結果:
テスト条件:ライナーマシン裏層原料使用
PH6.5
両性分岐型PAM紙力剤:0.3%(▲1▼0.2%マシンチェト ▲2▼0.1%ファンポンプ添加を想定)
▲1▼は2.5%原料古紙濃度 ▲2▼は1%濃度にて紙力剤を添加した。(2ケ所添加処方)
【表1】

▲1▼ポリミン ▲2▼水性エマルジョン ▲3▼特殊デイスパージョン
▲2▼*−1;750rpmx40秒*−2;750rpmx10秒*−3;750x10秒*濾水度(秒)/300cc
上記テストの結果、両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤の2ケ所添加とベントナイトの併用処方は、破裂強度の低下なく、リングクラッシュアップが可能であります。
さらに濾水度歩留向上効果があります。
また歩留剤を添加することで、ベントナイトの添加量を低減できます。
【図面の簡単な説明】
【図1】AI,SiO,Na−モンモリロナイト端面 Na−モンモリロナイトのpHとゼータ電位との関係 PH6.5:等電点
【図2】ベントナイトの特徴 1 イオン交換性:ベントナイトの主成分であるモンモリナイトの結晶は構造的に永久負電荷を帯びており、結晶層間に陽イオンを保持しております。しかし結晶層間の負電荷と陽イオンの結合力は弱いため、他のイオンを含む溶液と接触すると容易にイオン交換反応が生じます。2 膨潤性:結晶層間の陽イオンにより分極した水分子が引き寄せられ、結晶層面の負電荷、陽イオンの強度、水分子との水和エネルギーとのバランスにより粘度結晶は水和膨潤し、自重の数倍〜数十倍まで膨潤します。3 吸着性:スプーン1杯程の量(約1g)で100〜800mの比表面積を持っており、結晶表面の負電荷や層間の陽イオンとの静電結合、及び結晶端面の酸素原子や水酸基との水素結合により粘土結晶は様々な電解物質を吸着します。ベントナイト1kgの比表面積は10万mです。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板紙の製造方法に於いて抄紙PHが6.0以上から中性の範囲で両性分岐型ポリアクリルアミド系紙力剤とベントナイトを用いて抄紙することを特徴とする板紙の製造方法。
【請求項2】
両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤をマシンチェストに0.1%−1%(対原料固形分)の範囲で添加し、ベントナイトをスクリーン入口又は出口に0.05−0.5%(対原料固形分)の範囲で添加する事を特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤をマシンチェストに添加し、ファンポンプ前後にも添加する2カ所添加方法で、ベントナイトをスクリーン前後に添加する請求項1及び請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
両性分岐ポリアクリルアマイド系紙力剤とベントナイを用いて添加することにより、破裂強度を低下させずに、紙の圧縮強度(リングクラッシュ)を向上させ、かつ白水の汚染物質をベントナイトで吸着させることにより泡立ちの大幅な低減が可能であり、さらに歩留、濾水性向上効果もある事を特徴とする請求項1−3に記載の製造方法。
【請求項5】
両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤をマシンチェストとファンポンプ入口に添加し、ベントナイトをスクリーン入口とスクリーン出口に添加することにより、ピッチコントロール効果及び白水の泡立ち抑制効果がある事を特徴とする請求項1−4に記載の製造方法。
【請求項6】
両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤は荒川化学工業(株)の特許第4232189の範囲の両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤であり、両性分岐型ポリアクリルアマイドとベントナイトとの併用処方を特徴とする請求項1−5に記載の製造方法。
【請求項7】
両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤を添加し、水性エマルジョンタイプ歩留向上剤(クリタ工業株式会社品“”ハイフォームK”)をファンポンプ前後またはスクリーン入口前後に添加し、さらにベントナイトをスクリーン前後に添加する請求項1−6に記載の製造方法。
【請求項8】
両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤を添加し、特殊チデイスパージョンタイプ歩留向上剤(ハイモ株式会社品“ハイモロックFR“)をファンポンプ前後に添加し、さらにベントナイトをスクリーン前後に添加する「請求項1−7」に記載の製造方法。
【請求項9】
両性分岐型ポリアクリルアマイド系紙力剤を添加し、ポリエチレンイミンの濾水性向上剤(BASF社ポリミン)をファンポンプ前後に添加しさらにベントナイトをスクリーン前後に添加する請求項1−8に記載する製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−44078(P2013−44078A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193326(P2011−193326)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(511216994)株式会社ラサ・ジャパン (1)
【Fターム(参考)】