説明

板金フレーム及びそれを備えた電子機器

【課題】簡易な方法で絞り部の形成により生じた歪みを除去することにより、高い剛性及び面精度を有する板金フレームおよびそれを備えた電子機器を提供する。
【解決手段】フレーム本体50aの表面には、支持フレーム50の剛性を高めて捩じれや歪みを防止するための絞り部51a〜51eが形成されている。また、絞り部51a〜51eの周囲を囲むように線状の溝部53が刻印されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置等の電子機器に用いられる板金フレームに関し、特に板金フレームの面精度及び強度の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の筐体を構成するフレーム、或いは筐体内部に配置され電子部品を支持するフレームとして、板金フレームが広く用いられている。この板金フレームは剛性に優れる半面、板金の厚みが大きくなると電子機器の重量が重くなり、コスト面においても不利になるという問題点がある。
【0003】
そこで、板金フレームの厚みを極力抑えつつ剛性を高めるために、板金フレームに絞りを形成する方法が用いられる。例えば特許文献1には、ステー部を隔てて2つの絞り部を設けることにより、フレームの剛性を高めて強度を大きくするとともに耐振性も向上させた電子機器用フレームが開示されている。また、特許文献2には、画像読取部のフレームの少なくとも一部にエンボス部(絞り部)を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−139471号公報
【特許文献2】特開2005−130347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2のように板金部材に絞り部を形成する場合、板金部材に歪みが発生して面精度が低下するという問題点があった。具体的には、図6に示すように板金フレーム101に絞り部102を形成したとき、絞り部102の凹面側の角部102aにおいては材料が引き延ばされ、凸面側の角部102bにおいては材料が圧縮されることにより、板金フレーム101の断面が山形に歪んでしまう。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、簡易な方法で絞り部の形成により生じた歪みを除去することにより、高い剛性及び面精度を有する板金フレームおよびそれを備えた電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、平板状のフレーム本体と、該フレーム本体に形成される1つ以上の絞り部と、を有する板金フレームにおいて、前記絞り部を少なくとも対向する二方向から挟むように、前記絞り部の外縁部から一定の間隔を隔てて線状の溝部を刻印したことを特徴としている。
【0008】
また本発明は、上記構成の板金フレームにおいて、前記溝部は、前記絞り部の外縁部からの距離が略等距離となるように刻印されることを特徴としている。
【0009】
また本発明は、上記構成の板金フレームにおいて、前記溝部は、前記絞り部の略全域を囲むように刻印されることを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の板金フレームにおいて、前記溝部は、前記絞り部の凸方向から刻印されることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の板金フレームを備えた電子機器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1の構成によれば、フレーム本体に形成される絞り部を少なくとも対向する二方向から挟むように、絞り部の外縁部から一定の間隔を隔てて線状の溝部を刻印することにより、絞り部の形成時にフレーム本体の表面に発生した応力が溝部の刻印によって分散されるため、板金フレームの歪みを矯正することができる。
【0013】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の板金フレームにおいて、絞り部の外縁部から略等距離となるように溝部を刻印することにより、絞り部の形成により発生する歪みを絞り部の周囲において略均等に矯正することができる。
【0014】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1又は第2の構成の板金フレームにおいて、絞り部の略全域を囲むように溝部を刻印することにより、歪みの矯正効果を極力高めることができる。
【0015】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の板金フレームにおいて、応力の加わる方向と逆方向である絞り部の凸方向から溝部を刻印することにより、歪みの矯正効果がより高くなる。
【0016】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第4のいずれかの構成の板金フレームを備えることにより、軽量で剛性が高く、且つ部品の配置精度も向上した電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態の支持フレームが搭載された画像形成装置の概略図
【図2】支持フレームを上方から見た斜視図
【図3】支持フレームの角部周辺の部分拡大図
【図4】絞り部51a周辺の部分拡大図
【図5】絞り部51a周辺の部分断面図
【図6】従来の板金フレームに絞り部を形成した状態を示す部分断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の板金フレームを備えた画像形成装置の構成を概略的に示す平面図である。画像形成装置1はタンデム型のカラープリンタであり、回転自在である感光体ドラム11a〜11dは、例えば有機感光層が形成された有機感光体(OPC感光体)やアモルファスシリコン感光層が形成されたアモルファスシリコン感光体が用いられ、ブラック、イエロー、シアン、及びマゼンタの各色に対応させて配設される。各感光体ドラム11a〜11dの周囲に、現像装置2a〜2d、露光ユニット12、帯電器13a〜13d及びクリーニング装置14a〜14dが配設される。
【0019】
現像装置2a〜2dは、感光体ドラム11a〜11dの右側に夫々対向して配置され、感光体ドラム11a〜11dにトナーを供給する。帯電器13a〜13dは、感光体ドラム11a〜11dの回転方向に対し現像装置2a〜2dの上流側であって感光体ドラム11a〜11dの表面に対向して配置され、感光体ドラム11a〜11dの表面を一様に帯電させる。
【0020】
露光ユニット12は、パーソナルコンピューター等から画像入力部(図略)に入力された文字や絵柄などの画像データに基づいて、各感光体ドラム11a〜11dを走査露光するためのものであり、現像装置2a〜2dの下方に設けられる。露光ユニット12の内部には、レーザー光源、ポリゴンミラー、各感光体ドラム11a〜11dに対応する反射ミラー及びレンズが設けられる。レーザー光源から出射されたレーザー光が、ポリゴンミラー、反射ミラー及びレンズを介して、感光体ドラム11a〜11dの回転方向に対し帯電器13a〜13dの下流側から各感光体ドラム11a〜11dの表面に照射される。照射されたレーザー光により、各感光体ドラム11a〜11d表面には静電潜像が形成され、この静電潜像が各現像装置2a〜2dによりトナー像に現像される。露光ユニット12は板金製の支持フレーム50上に支持されており、画像形成装置1本体に対し着脱可能となっている。
【0021】
無端状の中間転写ベルト17は、テンションローラー6、駆動ローラー25及び従動ローラー27に張架されている。駆動ローラー25は図示しないモーターによって回転駆動され、中間転写ベルト17は駆動ローラー25の回転によって循環駆動させられる。
【0022】
この中間転写ベルト17に接触するように各感光体ドラム11a〜11dが中間転写ベルト17の下方で搬送方向(図1の矢印方向)に沿って隣り合うように配列されている。各一次転写ローラー26a〜26dは、中間転写ベルト17を挟んで各感光体ドラム11a〜11dと対向し、中間転写ベルト17に圧接して一次転写部を形成する。この一次転写部において、中間転写ベルト17の回転とともに所定のタイミングで各感光体ドラム11a〜11dのトナー像が中間転写ベルト17に順次転写される。これにより、中間転写ベルト17表面にはシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナー像が重ね合わされたフルカラートナー像が形成される。
【0023】
二次転写ローラー34は、中間転写ベルト17を挟んで駆動ローラー25と対向し、中間転写ベルト17に圧接して二次転写部を形成する。この二次転写部において、中間転写ベルト17表面のトナー像が用紙Pに転写される。転写後に、ベルトクリーニング装置31が中間転写ベルト17に残存するトナーを清掃する。
【0024】
画像形成装置1内の下方には、用紙Pを収納する給紙カセット32が配設され、給紙カセット32の右方には、手差しの用紙を供給するスタックトレイ35が配設される。給紙カセット32の左方には、給紙カセット32から繰り出された用紙Pを中間転写ベルト17の二次転写部に搬送する第1用紙搬送路33が配設される。また、スタックトレイ35の左方には、スタックトレイ35から繰り出された用紙を二次転写部に搬送する第2用紙搬送路36が配設される。更に、画像形成装置1の左上方には、画像が形成された用紙Pに対して定着処理を行う定着部18と、定着処理の行われた用紙を用紙排出部37に搬送する第3用紙搬送路39とが配設される。
【0025】
給紙カセット32は、装置の外部(図1の表面側)に引き出すことにより用紙の補充を可能にしたもので、収納されている用紙Pがピックアップローラー33b及び捌きローラー33aにより1枚ずつ第1用紙搬送路33側に繰り出される。
【0026】
第1用紙搬送路33と第2用紙搬送路36とはレジストローラー33cの手前で合流しており、レジストローラー33cにより、中間転写ベルト17における画像形成動作と給紙動作とのタイミングを取って、用紙Pが二次転写部に搬送される。二次転写部に搬送された用紙Pは、バイアス電位が印加された二次転写ローラー34によって、中間転写ベルト17上のフルカラーのトナー像を二次転写され、定着部18に搬送される。
【0027】
定着部18は、ヒーターにより加熱される定着ベルトと、定着ベルトに内接する定着ローラーと、定着ベルトを挟んで定着ローラーに圧接して配設された加圧ローラー等とを備え、トナー像が転写された用紙Pを加熱及び加圧することにより定着処理を行う。用紙Pは、トナー像が定着部18で定着された後、必要に応じて第4用紙搬送路40で反転されて用紙の裏面にも二次転写ローラー34でトナー像が二次転写され、定着部18で定着される。トナー像が定着された用紙は第3用紙搬送路39を通って、排出ローラー19aにより用紙排出部37に排出される。
【0028】
図2は、露光ユニット12を支持する支持フレーム50の斜視図であり、図3は、支持フレーム50の角部(図2の実線円S内)の部分拡大図である。支持フレーム50は、例えば亜鉛メッキ鋼板(SECC)等の金属により平板状に形成されたフレーム本体50aを有し、画像形成装置1本体内において露光ユニット12(図1参照)の下面を支持するとともに、着脱可能に設けられた露光ユニット12を画像形成装置1本体内の所定の位置に案内するものである。なお、露光ユニット12は支持フレーム50には固定されておらず、ビス等により画像形成装置1内の側面フレーム(図示せず)に固定されている。
【0029】
フレーム本体50aの表面には、支持フレーム50の剛性を高めて捩じれや歪みを防止するための絞り部51a〜51eが形成されている。絞り部51a、51bはフレーム本体50aの対向する二辺に沿って形成されており、絞り部51c〜51eはフレーム本体50aの中央から放射状に形成され、絞り部51a、51bまで延びている。これらの絞り部51a〜51dは、例えばフレーム本体50aをプレスにより絞り加工して設けられる。
【0030】
絞り部51a、51bは、露光ユニット12の挿脱方向(図2の白矢印方向)に沿って延設されており、支持フレーム50に沿って露光ユニット12を挿脱する際の案内レールとしての役割も果たしている。絞り部51c〜51eの形状は特に制限はないが、フレーム本体50aの面方向になるべく長く絞り部を設けることにより、支持フレーム50の捩じれや撓みに対してより強い構造となる。本実施形態においては、絞り部51c〜51eを放射状に配置したことにより、支持フレーム50に対して様々な方向から負荷が加えられた場合にも捩じれや歪みの発生しにくい構造となっている。
【0031】
また、絞り部51a〜51eの周囲を囲むように線状の溝部53が刻印されている。絞り部51a〜51eの形成時に曲げられた部分の内側には圧縮応力が発生し、外側には引張り応力が発生する。これらの圧縮応力と引張り応力は、板金の表面に近づくに従い大きくなり歪みとなって現れる。そこで、絞り部51a〜51eを形成した後に溝部53を刻印することにより、板金の表面に発生した応力が溝部53によって分散されるため、歪みを矯正することができる。
【0032】
溝部53は、絞り部51a〜51eの外縁部から一定の間隔を隔てて刻印されており、絞り部51a、51bの両端部を除いて絞り部51a〜51eの略全域を囲んでいる。絞り部51a、51bの両端部には開口55(図4参照)が形成されており、圧縮応力や引張り応力が発生しないため溝部53を刻印する必要はないためである。
【0033】
また、溝部53は、絞り部51a〜51eを囲む範囲が大きくなるほど歪みを矯正する効果は大きくなり、絞り部51a〜51eを完全に囲むことで歪みの矯正効果は最大となる。なお、実用上問題のないレベルまで歪みを矯正するためには溝部53が絞り部51a〜51eを完全に囲んでいる必要はないが、少なくとも絞り部51a〜51eの対向する二方向に沿って溝部53を刻印する必要がある。
【0034】
図4は、絞り部51aの端部周辺(図3の破線円S′内)の部分拡大図であり、図5は、絞り部51a周辺の部分断面図(図4のAA′矢視断面図)である。本実施形態においては、溝部53は絞り部51a〜51eの凸方向(図5の上方向)から刻印されている。絞り部51a〜51eの凹方向から溝部53を刻印した場合にも歪みの矯正効果はあるが、絞り部51a〜51eの形成時に応力の加わる方向(図5では下から上方向)と逆方向から溝部53を刻印することにより、歪みの矯正効果がより高くなる。また、絞り部51a〜51eの外縁部から溝部53までの距離dを絞り部51a〜51eの両側において略等距離とすることで、絞り部51a〜51eの形成により発生する歪みを絞り部51a〜51eの両側において略均等に矯正することができる。
【0035】
絞り部51a〜51eの外縁部から溝部53までの距離dや溝部53の深さは、フレーム本体50aを構成する板金の厚みや材質等によって適宜設定すれば良いが、距離dが大きくなりすぎたり、溝部53の深さが小さすぎたりすると歪みの矯正効果が低下する。一方、溝部53の深さが大きすぎると溝部53の部分で支持フレーム50の強度が低下する。本実施形態においては、フレーム本体50aの厚みを0.8mm、溝部53の深さを0.3mmとし、距離dを5〜10mmとしている。
【0036】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、本実施形態においては露光ユニット12の支持フレーム50を板金フレームの一例に挙げて説明したが、画像形成装置1の他の部分に配置される板金フレームや、画像形成装置以外の電子機器の板金フレームにも適用できるのはもちろんである。
【0037】
また、上記実施形態においては、支持フレーム50にリブ状の絞り部51a〜51eを形成しているが、絞り部の形状や大きさについても、板金フレームの配置場所や配置目的に応じて本発明の目的の範囲内で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、画像形成装置等の電子機器に用いられる板金フレームに利用可能であり、フレーム本体に形成される絞り部を少なくとも対向する二方向から挟むように、絞り部の外縁部から一定の間隔を隔てて線状の溝部を刻印したものである。本発明の利用により、板金フレームの剛性及び面精度を簡易な構成で高めることができ、従来に比べ薄型且つ軽量で、強度的にも優れた電子機器を提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 画像形成装置(電子機器)
12 露光ユニット
50 支持フレーム(板金フレーム)
50a フレーム本体
51a〜51e 絞り部
53 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のフレーム本体と、
該フレーム本体に形成される1つ以上の絞り部と、
を有する板金フレームにおいて、
前記絞り部を少なくとも対向する二方向から挟むように、前記絞り部の外縁部から一定の間隔を隔てて線状の溝部を刻印したことを特徴とする板金フレーム。
【請求項2】
前記溝部は、前記絞り部の外縁部からの距離が略等距離となるように刻印されることを特徴とする請求項1に記載の板金フレーム。
【請求項3】
前記溝部は、前記絞り部の略全域を囲むように刻印されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の板金フレーム。
【請求項4】
前記溝部は、前記絞り部の凸方向から刻印されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の板金フレーム。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の板金フレームを備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−142338(P2012−142338A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292156(P2010−292156)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】