説明

板金部材の固定構造

【課題】ボックス状の第1板金部材の底部と第2板金部材の重ね合わせ部に錆が発生することを防止して重ね合わせ部の外観品質を向上させることができるとともに、重ね合わせ部の固定強度の低下を回避できる板金部材の固定構造を提供する。
【解決手段】ボックス状の第1板金部材10の底部10Tが第2板金部材6に重ねられ、第1板金部材10の複数の固定部20が第2板金部材6の複数の被固定部30に各別に固定され、複数の固定部20以外の第1板金部材部分55と、複数の被固定部30以外の第2板金部材部分56との間に隙間Sが形成され、複数の固定部20と複数の被固定部30とを囲む環状のシーラ40が、第1板金部材10の底部10Tと第2板金部材6の間に塗布され、シーラ40で囲まれる領域内の水を領域外に排出する排水部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ボックス状の第1板金部材の底部が第2板金部材に重ねられ、
前記第1板金部材の複数の固定部が前記第2板金部材の複数の被固定部に各別に固定されている板金部材の固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の板金部材の固定構造の一例として、特許文献1に開示されている自動車の燃料給油部構造がある。この燃料給油部構造ではフューエルリッドとサイドボディアウタパネルとの間の隙間などを通って雨水が浸入することから燃料給油部構造の各部品の外面(露出した面)に電着塗装が施されている。しかしながら、第1板金部材としてのフューエルボックスの底部と第2板金部材としてのホイールハウスアウターパネルの重ね合わせ部の両重ね合わせ面には電着塗装が不可能で両重ね合わせ面は塗装されていない。
従来、前記フューエルボックスは、底部のほぼ全面がホイールハウスアウターパネルに重なって密着していた。そのために、前記雨水が両重ね合わせ面の間に浸入した場合、両重ね合わせ面の間に長い間留まって重ね合わせ面に錆が発生しやすかった。
近年、ガソリンスタンドで乗員が自動車に給油するセルフ給油方式が採用されてきており、前記重ね合わせ面に錆が発生すると、乗員がフューエルリッドを開けた時に錆が見えて自動車の商品価値を低下させていた。また、前記重ね合わせ面に錆が発生することで、フューエルボックスの底部とホイールハウスアウターパネルの固定強度を低下させることもあった。
特許文献2に開示されているように、フューエルネックに樹脂製の防水のためのリングを外嵌装着して前記重ね合わせ部への水の浸入を防止する手段もあるが、この手段によれば部品点数が多くなり製作コストが高くなる。
また、フューエルボックスの底部の全面とホイールハウスアウターパネルとを離間させる手段もあるが、この手段によればフューエルボックスの車体に対する固定強度が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−109701号公報
【特許文献2】特開2010−254254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、ボックス状の第1板金部材の底部と第2板金部材の重ね合わせ部に錆が発生することを防止して前記重ね合わせ部の外観品質の低下を抑制させることができるとともに、重ね合わせ部の固定強度の低下を回避でき、しかも、これらの効果を、部品点数の増加を抑制して製作コストを低廉化した状態で得ることができる板金部材の固定構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
ボックス状の第1板金部材の底部が第2板金部材に重ねられ、
前記第1板金部材の複数の固定部が前記第2板金部材の複数の被固定部に各別に固定されている板金部材の固定構造であって、
前記複数の固定部以外の第1板金部材部分と、前記複数の被固定部以外の第2板金部材部分とが離間して、前記第1板金部材部分と第2板金部材部分の間に排水用の隙間が形成され、
前記第1板金部材の底部と第2板金部材が重なる方向から見て、前記複数の固定部と前記複数の被固定部とを囲む環状のシーラが、前記第1板金部材の底部と前記第2板金部材の間に塗布され、
前記シーラで囲まれる領域内の水を領域外に排出する排水部が形成されている点にある。(請求項1)
【0006】
上記の構成によれば、第1板金部材の底部と第2板金部材が重なる方向から見て、前記複数の固定部と前記複数の被固定部とを囲む環状のシーラが、前記第1板金部材の底部と前記第2板金部材の間に塗布されているから、第1板金部材の底部と第2板金部材の重ね合わせ部の両重ね合わせ面の間に水が浸入することをシーラで防止することができる。
そして、前記複数の固定部以外の第1板金部材部分と、前記複数の被固定部以外の第2板金部材部分との間に排水用の隙間が形成され、前記シーラで囲まれる領域内の水を領域外に排出する排水部が形成されているから、シーラで囲まれる領域内の第1板金部材の底部と第2板金部材の間に雨水が浸入しても、雨水を第1板金部材の底部と第2板金部材の間の隙間を通して排水部から円滑に排出することができる。つまり、前記重ね合わせ部の水はけをよくすることができて、前記重ね合わせ面に錆が発生することを防止することができる。
また、前記複数の固定部以外の第1板金部材部分と、前記複数の被固定部以外の第2板金部材部分とが離間する構成にしたことで、第1板金部材の固定部と第2板金部材の被固定部の少なくとも一方が凸状に形成されることから、前記固定部を前記被固定部に固定する際に、作業者が前記固定部と被固定部の位置を把握しやすくなり、前記固定部を前記被固定部に位置合わせしやすくすることができて、固定作業の作業性を向上させることができる。
そして、第1板金部材の底部の全体と第2板金部材を離間させないから、第1板金部材と第2板金部材の固定強度の低下を抑制できる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記第1板金部材は自動車のフューエルボックス、
前記第2板金部材は自動車のホイールハウスアウターパネルであり、
互いに重ねられた前記フューエルボックスの底部と前記ホイールハウスアウターパネルにフューエルネック挿通孔が形成され、
前記フューエルボックスの複数の固定部のうち所定数の固定部は、前記ホイールハウスアウターパネルの所定数の被固定部に各別に溶接固定され、
前記フューエルネック挿通孔にフューエルネックの開口端部が挿通され、
前記フューエルボックスの残りの固定部は、前記フューエルネックの開口端部に張り出し形成されたフューエルネックホルダーと共に、前記ホイールハウスアウターパネルの残りの被固定部に締め付け部材により締め付け固定されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
フューエルボックスの上方にはランプが配置されて、ランプの取り付け孔が車体パネルに形成されることがある。そして、ランプの取り付け孔からフューエルボックスの底部とホイールハウスアウターパネルとの重ね合わせ部の両重ね合わせ面の間に雨水が浸入してくる虞があるが、本発明の上記の構成によれば、フューエルボックスの底部とホイールハウスアウターパネルの重ね合わせ部の両重ね合わせ面の間に水が浸入することを前記シーラで防止することができる。
そして、前記シーラで囲まれる領域内のフューエルボックスの底部とホイールハウスアウターパネルの間に雨水が浸入しても、雨水をフューエルボックスの底部とホイールハウスアウターパネルの間の隙間を通して前記排水部から円滑に排出することができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記フューエルネック挿通孔を形成する前記ホイールハウスアウターパネルの開口が、前記フューエルネック挿通孔を形成する前記フューエルボックスの底部の開口よりも大径に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
前記フューエルネック挿通孔を形成する前記ホイールハウスアウターパネルの開口が、前記フューエルネック挿通孔を形成する前記フューエルボックスの底部の開口よりも大径に形成されているから、フューエルボックスの底部の開口の周縁部でホイールハウスアウターパネルの開口の周縁部を覆い隠すことができる。
その結果、フューエルボックスの底部とホイールハウスアウターパネルの重ね合わせ部の両重ね合わせ面に錆が発生しても、フューエルボックスの底部の開口の周縁部で錆を覆い隠すことができて、前記重ね合わせ部の外観品質の低下を抑制させることができる。
また、前記ホイールハウスアウターパネルの開口を大径に形成したことで、前記重ね合わせ部から水をより排出しやすくすることができ、前記重ね合わせ部の重ね合わせ面に錆がより発生しにくくすることができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記締め付け部材はボルトであり、
前記残りの固定部は、前記フューエルボックスの底部にボルト挿通孔を形成して構成され、
前記ボルト挿通孔は、前記フューエルネック挿通孔に連通する切り欠き状に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
一般に、ボルトの互いに隣接するねじ山間には水が溜まりやすいが、前記残りの固定部は、フューエルボックスの底部にボルト挿通孔を形成して構成され、ボルト挿通孔は、フューエルネック挿通孔に連通する切り欠き状に形成されているから、ボルトの互いに隣接するねじ山間の雨水をフューエルネック挿通孔側に排出しやすくすることができる。これにより、前記重ね合わせ部の両重ね合わせ面に錆が発生しにくくすることができる。
また、前記ボルト挿通孔が、前記フューエルネック挿通孔に連通する切り欠き状に形成されていることで、組み付け時のボルトの締め付け位置の誤差を吸収しやすくすることができ、組み付け性を向上させることができる。(請求項4)
【0013】
本発明において、
前記排水部は、前記環状のシーラの下端部に前記領域内と領域外を連通させる開口を形成して構成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0014】
前記排水部を簡単に形成することができて、製作コストを低廉化することができ、排水部の構造を簡素化することができる。(請求項5)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、
ボックス状の第1板金部材の底部と第2板金部材の重ね合わせ部に錆が発生することを防止して前記重ね合わせ部の外観品質を向上させることができるとともに、重ね合わせ部の固定強度の低下を回避でき、しかも、これらの効果を、部品点数の増加を抑制して製作コストを低廉化した状態で得ることができる板金部材の固定構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】自動車の左側後部の斜視図
【図2】(a)は燃料給油部構造の縦断面図、(b)は図2(a)のA部の拡大断面図
【図3】(a)は燃料給油部構造を車体内部側から見た斜視図、(b)は図3(a)の分解斜視図
【図4】燃料給油部構造の横断面図(フューエルボックスの底部を車体外部側から見た横断面図)
【図5】フューエルボックスのフューエルネック挿通孔の周縁部と、ホイールハウスアウターパネルのフューエルネック挿通孔の周縁部との位置関係を示す縦断面図
【図6】フューエルボックスの斜視図
【図7】ホイールハウスアウターパネルに組み付けた状態のフューエルボックスの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1,図2(a),図2(b)に示すように、自動車のリアバンパ1の一端部の上方にサイドボディアウターパネル2が位置している。図1の符号Frは車両前方側、Rrは車両後方側である。そして、サイドボディアウターパネル2に燃料給油部100が設けられ、燃料給油部100の上方のサイドボディアウターパネル2にランプ収容凹部3が形成されて、ホイールアーチに沿う円弧状のランプ5がランプ収容凹部3に取り付けられている。
【0018】
前記燃料給油部100はフューエルボックス10(ボックス状の第1板金部材に相当)の底部10Tをホイールハウスアウターパネル6(第2板金部材に相当)に固定して構成されている。詳しくは、フューエルボックス10の底部10Tがホイールハウスアウターパネル6に斜め上方から重ねられ、フューエルボックス10の複数の固定部20,21(図4参照)がホイールハウスアウターパネル6の複数の被固定部30,31(図5,図3(b)参照)に各別に固定されている。ホイールハウスアウターパネル6はホイールハウスインナーパネル7に接合し、ホイールハウスインナーパネル7と共にホイールハウスパネル8を形成している。
【0019】
[フューエルボックス10の構造]
フューエルボックス10の底部10Tは、車幅方向外側W2ほど下方に位置するように傾斜し、底部10Tの周部から周壁10Sが立ち上がっている。そして、フューエルボックス10のボックス開口10Kが車幅方向外側W2に向かって開口している。ボックス開口10Kは、縦断面において車幅方向外側W2になるにつれて下方に位置するように傾斜し、ボックス開口10Kの周縁部から径方向外方側に張り出すフランジ10Fが、サイドボディアウターパネル2に形成されたパネル開口2Kの周縁部の裏面に当接している。
そして、パネル開口2Kの周縁部から車体内部側に突出する連結筒部2Tにボックス開口10Kの周縁部が嵌合(外嵌)し、パネル開口2K(及びボックス開口10K)を開閉するフューエルリッド70がサイドボディアウターパネル2にヒンジを介して連結している。
【0020】
図2(a),図2(b)に示すように、互いに重ねられたフューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6に円形のフューエルネック挿通孔H(図3(b),図7も参照)が形成され、図4,図5に示すように、フューエルボックス10の複数の固定部20,21のうち所定数の固定部20が、ホイールハウスアウターパネル6の所定数の被固定部30に各別に溶接固定(スポット溶接である)されている。
【0021】
前記所定数は本実施形態では3個(この数に限られない)であり、2個の固定部20と1個の固定部20がフューエルネック挿通孔Hの軸芯を挟んで位置するとともに、各固定部20に対応して、2個の被固定部30と1個の被固定部30がフューエルネック挿通孔Hの軸芯を挟んで位置している。前記所定数(3個)の各固定部20はフューエルボックス10の底部10Tに車体内部側に突出する皿状の凸部を形成して構成されている。
【0022】
図4,図5に示すように、フューエルネック挿通孔Hを形成するホイールハウスアウターパネル6の円形の第1開口6Hは、フューエルネック挿通孔Hを形成するフューエルボックス10の底部10Tの円形の第2開口10Hよりも大径に、かつ、前記第2開口10Hと同芯状に形成されている。
【0023】
そして、フューエルネック挿通孔Hにフューエルネック25の開口端部25Aが車体内部側から挿通され(図3(a),図3(b)参照)、フューエルボックス10の残りの固定部21が、フューエルネック25の開口端部25Aに張り出し形成された菱形状のフューエルネックホルダー29と共に、ホイールハウスアウターパネル6の残りの被固定部31にボルト(締め付け部材に相当)により締め付け固定されている。フューエルネックホルダー29の車体内部側の面には前記ボルトに螺合するナットNが溶接固着されている。図2(a)に示すように、フューエルネック25は車幅方向内側W1ほど下方に位置するように傾斜し、フューエルネック25の車体内部側の端部が燃料タンクに連通接続している。
【0024】
前記残りの固定部21の数は本実施形態では2個であり、前記残りの被固定部31の数は2個である。そして、前記残りの2個の固定部21がフューエルネック挿通孔Hの軸芯を挟んで位置するとともに、前記残りの2個の被固定部31がフューエルネック挿通孔Hの軸芯を挟んで位置している。前記残りの固定部21は、フューエルボックス10の底部10Tにボルト挿通孔23を形成して構成され、このボルト挿通孔23は、フューエルネック挿通孔Hに連通する切り欠き状に形成されている(図6,図7参照)。図3(b)に示すように、前記残りの被固定部31は、ホイールハウスアウターパネル6にボルト挿通孔35を形成して構成されている。
【0025】
フューエルネックホルダー29とホイールハウスアウターパネル6の間にフューエルネックパッキン26の円板状の取り付け部27が介在し、フューエルネックパッキン26の取り付け部27から立ち上がる筒状のシール部28がフューエルネック25の開口端部25Aに外嵌密着している。図2(b)に示すように、前記取り付け部27の両面にはシール用の環状の凸部27Aが形成されている。
【0026】
図5に示すように、前記複数の固定部20,21以外のフューエルボックス部分55と、前記複数の被固定部30,31以外のホイールハウスアウターパネル部分56とが離間して、前記フューエルボックス部分55とホイールハウスアウターパネル部分56の間に排水用の隙間Sが形成されている。そして、図4,図5に示すように、フューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6が重なる方向から見て、前記複数の固定部20,21と複数の被固定部30,31とを囲む単一の環状のシーラ40が、フューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6の間に塗布されて、フューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6に密着している。
【0027】
また、前記シーラ40で囲まれる領域内の水を領域外に排出する排水部50が形成されている。排水部50は、環状のシーラ40の下端部に前記領域内と領域外を連通させる開口を形成して構成されている。図4の矢印Xは排水される水の流れを示している。
【0028】
上記の構成により、
(1) フューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6が重なる方向から見て、前記複数の固定部20,21と前記複数の被固定部30,31とを囲む環状のシーラ40が、フューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6の間に塗布されているから、フューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6の重ね合わせ部の両重ね合わせ面の間に水が浸入することをシーラ40で防止することができる。
そして、前記複数の固定部20,21以外のフューエルボックス部分55と、前記複数の被固定部30,31以外のホイールハウスアウターパネル部分56との間に排水用の隙間Sが形成され、シーラ40で囲まれる領域内の水を領域外に排出する排水部50が形成されているから、シーラ40で囲まれる領域内のフューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6の間に雨水が浸入しても、雨水をフューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6の間の隙間Sを通して前記排水部50から円滑に排出することができる。つまり、前記重ね合わせ部の水はけをよくすることができて、前記重ね合わせ面に錆が発生することを防止することができる。
また、前記複数の固定部20,21以外のフューエルボックス部分55と、前記複数の被固定部30,31以外のホイールハウスアウターパネル部分56とが離間する構成にしたことで、フューエルボックス10の固定部20が凸状に形成されることから(図5参照)、固定部20を被固定部30に溶接固定する際に、作業者が固定部20の位置を把握しやすくなり、固定部20を被固定部30に位置合わせしやすくすることができて、固定作業の作業性を向上させることができる。
そして、フューエルボックス10の底部10Tの全体とホイールハウスアウターパネル6を離間させないから、フューエルボックス10とホイールハウスアウターパネル6の固定強度の低下を抑制できる。
【0029】
(2) フューエルボックス10の上方にはランプ5が配置されて、ランプ5の取り付け孔が車体パネルに形成されているので、ランプ5の取り付け孔からフューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6との重ね合わせ部の両重ね合わせ面の間に雨水が浸入してくる虞があるが、本発明の上記の構成によれば、フューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6の重ね合わせ部の両重ね合わせ面の間に水が浸入することを前記シーラ40で防止することができる。
【0030】
(3) フューエルネック挿通孔Hを形成するホイールハウスアウターパネル6の円形の第1開口6Hは、フューエルネック挿通孔Hを形成するフューエルボックス10の底部10Tの円形の第2開口10Hよりも大径に、かつ、前記第2開口10Hと同芯状に形成されているから、フューエルボックス10の底部10Tの第2開口10Hの周縁部でホイールハウスアウターパネル6の第1開口6Hの周縁部を覆い隠すことができる。
その結果、フューエルボックス10の底部10Tとホイールハウスアウターパネル6の重ね合わせ部の重ね合わせ面に錆が発生しても、フューエルボックス10の底部10Tの第2開口10Hの周縁部で錆を覆い隠すことができて、重ね合わせ部の外観品質を向上させることができる。
また、ホイールハウスアウターパネル6の第1開口6Hを大径に形成したことで、重ね合わせ部から水をより排出しやすくすることができ、重ね合わせ部の重ね合わせ面に錆がより発生しにくくすることができる。
【0031】
(4) 一般に、ボルトの互いに隣接するねじ山間には水が溜まりやすいが、本発明の上記の構成によれば、前記残りの固定部21は、フューエルボックス10の底部10Tにボルト挿通孔23を形成して構成され、ボルト挿通孔23は、フューエルネック挿通孔Hに連通する切り欠き状に形成されているから、ボルトの互いに隣接するねじ山間の雨水をフューエルネック挿通孔H側に排出しやすくすることができる。これにより、前記重ね合わせ部の両重ね合わせ面に錆がより発生しにくくすることができる。
また、前記ボルト挿通孔23が、前記フューエルネック挿通孔Hに連通する切り欠き状に形成されていることで、組み付け時のボルトの締め付け位置の誤差を吸収しやすくすることができ、組み付け性を向上させることができる。
【0032】
(5) 排水部50は、環状のシーラ40の下端部に前記領域内と領域外を連通させる開口を形成して構成されているから、排水部50を簡単に形成することができて、製作コストを低廉化することができ、排水部50の構造を簡素化することができる。
【符号の説明】
【0033】
6 第2板金部材(ホイールハウスアウターパネル)
6H ホイールハウスアウターパネルの開口
10 第1板金部材(フューエルボックス)
10T 第1板金部材の底部
10H フューエルボックスの底部の開口
20 固定部(所定数の固定部)
21 固定部(残りの固定部)
23 ボルト挿通孔
25 フューエルネック
25A フューエルネックの開口端部
29 フューエルネックホルダー
30 被固定部(所定数の被固定部)
31 被固定部(残りの被固定部)
40 シーラ
50 排水部
55 第1板金部材部分(フューエルボックス部分)
56 第2板金部材部分(ホイールハウスアウターパネル部分)
H フューエルネック挿通孔
S 排水用の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス状の第1板金部材の底部が第2板金部材に重ねられ、
前記第1板金部材の複数の固定部が前記第2板金部材の複数の被固定部に各別に固定されている板金部材の固定構造であって、
前記複数の固定部以外の第1板金部材部分と、前記複数の被固定部以外の第2板金部材部分とが離間して、前記第1板金部材部分と第2板金部材部分の間に排水用の隙間が形成され、
前記第1板金部材の底部と第2板金部材が重なる方向から見て、前記複数の固定部と前記複数の被固定部とを囲む環状のシーラが、前記第1板金部材の底部と前記第2板金部材の間に塗布され、
前記シーラで囲まれる領域内の水を領域外に排出する排水部が形成されている板金部材の固定構造。
【請求項2】
前記第1板金部材は自動車のフューエルボックス、
前記第2板金部材は自動車のホイールハウスアウターパネルであり、
互いに重ねられた前記フューエルボックスの底部と前記ホイールハウスアウターパネルにフューエルネック挿通孔が形成され、
前記フューエルボックスの複数の固定部のうち所定数の固定部は、前記ホイールハウスアウターパネルの所定数の被固定部に各別に溶接固定され、
前記フューエルネック挿通孔にフューエルネックの開口端部が挿通され、
前記フューエルボックスの残りの固定部は、前記フューエルネックの開口端部に張り出し形成されたフューエルネックホルダーと共に、前記ホイールハウスアウターパネルの残りの被固定部に締め付け部材により締め付け固定されている請求項1記載の板金部材の固定構造。
【請求項3】
前記フューエルネック挿通孔を形成する前記ホイールハウスアウターパネルの開口が、前記フューエルネック挿通孔を形成する前記フューエルボックスの底部の開口よりも大径に形成されている請求項2記載の板金部材の固定構造。
【請求項4】
前記締め付け部材はボルトであり、
前記残りの固定部は、前記フューエルボックスの底部にボルト挿通孔を形成して構成され、
前記ボルト挿通孔は、前記フューエルネック挿通孔に連通する切り欠き状に形成されている請求項2又は3記載の板金部材の固定構造。
【請求項5】
前記排水部は、前記環状のシーラの下端部に前記領域内と領域外を連通させる開口を形成して構成されている請求項1〜4のいずれか一つに記載の板金部材の固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−63703(P2013−63703A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203868(P2011−203868)
【出願日】平成23年9月17日(2011.9.17)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】