説明

板骨構造及び建造物

【課題】板骨構造(タンク頂板構造)の座屈強度を十分に確保しつつ、板骨構造の工作時間を大幅に短縮して、板骨構造の建造コストの低減を図ること。
【解決手段】複数のトランス11及び複数のロンジ15によって長辺部分17aと短辺部分17bを有した複数の矩形領域17が格子状に区画形成され、矩形領域17の短辺方向SDに並んだ複数の矩形領域17からなる各矩形領域列17Gにおける、複数の矩形領域17をその長辺方向LDに分割する箇所に、カーリング19が短辺方向SDに沿って1つ置きに配設されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク、船舶等の建造物に用いられる板骨構造等に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG)を貯留する液化ガス用タンク(タンクの一例)は、上側を開口した箱型のタンク本体と、タンク本体の上側に設けられたタンク頂板構造とを備えている。そして、タンク頂板構造は、板骨構造の1つであって、タンク頂板構造の一般的な構成は、次のようになる。
【0003】
タンク本体の上側には、ベース板としてタンク頂板が接合されており、このタンク頂板は、第1配設方向としてのタンク長方向へ延びている。また、タンク頂板の裏面には、タンク頂板を補強する複数のトランス(肋材又は大骨材)がタンク長方向に間隔を置いて接合されており、各トランスは、第1配設方向に直交する第2配設方向としてのタンク幅方向へ延びている。更に、タンク頂板の裏面には、タンク頂板を補強する複数のロンジ(防撓材又は小骨材)がタンク幅方向に間隔を置いて接合されており、各ロンジは、複数のトランスに直交するようにタンク長方向へ延びている。そして、複数のトランスと複数のロンジによって、長辺部分と短辺部分を有した複数の矩形領域が格子状に区画形成されている。
【0004】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1から特許文献5に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−16374号公報
【特許文献2】特開2003−214595号公報
【特許文献3】特開平8−58676号公報
【特許文献4】特開平7−237578号公報
【特許文献5】特開平6−336185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液化天然ガスの温度は極低温(例えば、−150℃以下の温度)であって、液化天然ガスに接触しているタンク本体と、液化天然ガスに接触していないタンク頂板構造との間には大きな温度差が生じ、その温度差によってタンク頂板構造に大きな座屈応力(圧縮応力)が発生する。そのため、矩形領域を補強しかつ矩形領域の個数に応じた本数のカーリングを用い、各矩形領域にカーリングを矩形領域の長辺方向に分割するように配設して、タンク頂板構造の座屈強度を十分に確保する必要がある。一方、タンク頂板構造に使用するカーリングの本数が増えると、タンク頂板構造の工作時間が長くなって、タンク頂板構造の建造コストが増大するという問題がある。つまり、タンク頂板構造の座屈強度を十分に確保しつつ、タンク頂板構造の工作時間を短縮して、タンク頂板構造の建造コストの低減を図ることは困難であるという問題がある。
【0007】
なお、前述の問題は、タンク頂板構造だけでなく、大きな座屈応力が発生する板骨構造について生じるものである。
【0008】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の板骨構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の発明者は、前述の問題を解決するために試行錯誤を繰り返して、新規な知見を見出し、この新規な知見に基づいて本発明を完成するに至った。本発明の特徴を説明する前に、新規な知見を見出すまでの経緯について説明する。
【0010】
トランスとロンジによって長辺部分と短辺部分を有した複数の矩形領域が格子状に区画形成された4つの板骨構造(比較例1に係る板骨構造、発明例1に係る板骨構造、比較例2に係る板骨構造、発明例2に係る板骨構造)を解析対象とし、各矩形領域の短辺方向にのみ一様な圧縮応力が働くように座屈荷重と境界条件を設定して、4つの板骨構造の座屈応力(座屈応力分布)について有限要素法による解析を行った。
【0011】
ここで、比較例1に係る板骨構造にあっては、図7(a)に示すように、各矩形領域にカーリングが矩形領域の長辺方向に2等分割するように配設されている。発明例1に係る板骨構造にあっては、図7(b)に示すように、矩形領域の短辺方向に並んだ複数の矩形領域からなる各矩形領域列(1つのみ図示)における、複数の矩形領域を前記長辺方向に2等分割する箇所(前記短辺方向の直線上に配置した複数の分割箇所)に、カーリングが前記短辺方向に沿って1つ置きに配設されている。比較例2に係る板骨構造にあっては、図7(c)に示すように、各矩形領域にカーリングが前記長辺方向に3等分割するように配設されている。発明例2に係る板骨構造にあっては、図7(d)に示すように、各矩形領域列(1つのみ図示)における、複数の矩形領域を前記長辺方向に3等分割する箇所(前記短辺方向の異なる2本の直線上にそれぞれ配置した複数の第1分割箇所、複数の第2分割箇所)に、カーリングが前記短辺方向に沿って1つ置きに配設されている。
【0012】
そして、有限要素法による解析結果として、最大座屈応力(最大圧縮応力)を無次元化した座屈固有値を用いてまとめると、比較例1に係る板骨構造の座屈固有値は2.49999、発明例1に係る板骨構造の座屈固有値は2.50001、比較例2に係る板骨構造の座屈固有値は3.43638、発明例2に係る板骨構造の座屈固有値は3.43638になった。つまり、発明例1に係る板骨構造に発生する最大座屈応力と、比較例1に係る板骨構造に発生する最大座屈応力が同じであり、発明例2に係る板骨構造に発生する最大座屈応力と、比較例2に係る板骨構造に発生する最大座屈応力が略同じであることが判明した。これにより、各矩形領域列における複数の矩形領域を前記長辺方向に分割する箇所に、カーリングを前記短辺方向に沿って1つ置きに配設することにより、各矩形領域にカーリングを前記長辺方向に分割するように配設した場合と同等のレベルまで板骨構造の座屈強度を確保できるという、新規な知見を得ることができた。
【0013】
本発明の特徴は、建造物に用いられる板骨構造において、ベース板と、前記ベース板に第1配設方向に間隔を置いて接合され、前記第1配設方向に直交する第2配設方向へ延びてあって、前記ベース板を補強する複数のトランス(肋材又は大骨材)と、前記ベース板に前記第2配設方向に間隔を置いて接合され、複数の前記トランスに直交するように前記第1配設方向へ延びてあって、前記ベース板を補強する複数のロンジ(防撓材又は小骨材)と、を備え、複数の前記トランス及び複数の前記ロンジによって長辺部分と短辺部分を有した複数の矩形領域が格子状に区画形成され、前記矩形領域の短辺方向に並んだ複数の前記矩形領域からなる各矩形領域列(各矩形領域群)における、複数の前記矩形領域をその長辺方向(前記矩形領域の長辺方向)に分割する箇所に、前記矩形領域を補強するカーリングが前記短辺方向に沿って1つ置きに配設されていることを要旨とする。
【0014】
ここで、前記短辺方向は、前記第1配設方向と前記第2配設方向のうちの一方と一致しており、前記長辺方向は、前記第1配設方向と前記第2配設方向のうちの他方と一致している。
【0015】
第1の特徴によると、各矩形領域列における複数の前記矩形領域を前記長辺方向に分割する箇所に前記カーリングが前記短辺方向に沿って1つ置きに配設されているため、前述の新規な知見を適用すると、各矩形領域に前記カーリングを前記長辺方向に分割するように配設した場合に比べて、前記板骨構造に使用する前記カーリングの本数を半分に減らした上で、前記板骨構造の座屈強度を同等のレベルまで確保できる。
【0016】
本発明の第2の特徴によると、建造物において、第1の特徴からなる板骨構造を備えたことを要旨とする。
【0017】
第2の特徴によると、第1の特徴による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、各矩形領域に前記カーリングを前記長辺方向に分割するように配設した場合に比べて、前記板骨構造に使用する前記カーリングの本数を半分に減らした上で、前記板骨構造の座屈強度を同等のレベルまで確保できるため、前記板骨構造の座屈強度を十分に確保しつつ、前記板骨構造の工作時間を大幅に短縮して、前記板骨構造の建造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るタンク頂板構造を裏側からみた平面図である。
【図2】図2(a)(b)は、本発明の第1実施形態に係るタンク頂板構造におけるカーリングの配設パターンを変更した状態を示す平面図である。
【図3】図3(a)(b)は、本発明の第1実施形態に係るタンク頂板構造におけるカーリングの配設パターンを変更した状態を示す平面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第1実施形態に係る液化ガス用タンクの断面図、図4(b)は、図4(a)における矢視部IVBの拡大図である。
【図5】図5は、本発明の第2実施形態に係る船底外板構造の平面図である。
【図6】図6(a)は、本発明の第2実施形態に係るバルクキャリアの断面図、図6(b)は、図6(a)における矢視部VIBの拡大図である。
【図7】図7(a)は、比較例1に係る板骨構造におけるカーリングの配設パターンを示す図、図7(b)は、発明例1に係る板骨構造におけるカーリングの配設パターンを示す図、図7(c)は、比較例2に係る板骨構造におけるカーリングの配設パターンを示す図、図7(d)は、発明例2に係る板骨構造におけるカーリングの配設パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1から図4(a)(b)を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向それぞれを指してある。
【0021】
図4(a)に示すように、本発明の第1実施形態に係る液化ガス用タンク1は、液化天然ガス(図示省略)を貯留するものであって、上側が開口した箱型のタンク本体3を備えており、このタンク本体3は、第1配設方向としてのタンク長方向(前後方向)TD1へ延びている。また、タンク本体3の上側には、板骨構造の1つであるタンク頂板構造5が設けられており、タンク本体3内には、枠状の複数のトランス(肋材又は大骨材)7がタンク長方向TD1に間隔を置いて設けられている。なお、タンク本体3内の中央には、タンク長方向TD1へ延びたタンク縦通壁(図示省略)が設けられている。
【0022】
続いて、本発明の第1実施形態の要部であるタンク頂板構造5の具体的な構成について説明する。
【0023】
図4(a)(b)に示すように、タンク本体3の上側(上端)には、ベース板としてのタンク頂板9が接合されており、このタンク頂板9は、タンク長方向TD1へ延びている。そして、タンク頂板9の裏面には、タンク頂板9を補強する複数のトランス7の上部(以下、トランス上部という)11がタンク長方向TD1に間隔を置いて接合されている。また、各トランス上部11は、第1配設方向に直交する第2配設方向としてのタンク幅方向(左右方向)TD2へ延びてあって、各トランス上部11には、複数のスロット13がタンク幅方向TD2に間隔を置いて形成されている。なお、各トランス上部11は、トランス7の一部を構成する他に、タンク頂板構造5の一部を構成するものである。
【0024】
タンク頂板9の裏面には、タンク頂板9を補強する断面T字形状の複数のロンジ(防撓材又は小骨材)15がタンク幅方向TD2に間隔を置いて接合されている。また、各ロンジ15は、複数のトランス上部11に直交するようにタンク長方向TD1へ延びてあって、複数のトランス上部11のスロット13に挿通してある。
【0025】
図1に示すように、複数のトランス上部11及び複数のロンジ15によって、複数の矩形領域17が格子状に区画形成されており、各矩形領域17は、長辺部分17aと短辺部分17bを有している。ここで、矩形領域17の長辺方向LDは、タンク長方向TD1、矩形領域17の短辺方向SDは、タンク幅方向TD2にそれぞれ一致してあって、矩形領域17の長辺部分17aは、ロンジ15の一部分又はタンク本体3の一部分(主にロンジ15の一部分)により構成され、矩形領域17の短辺部分17bは、トランス上部11の一部分又はタンク本体3の一部分(主にトランス上部11の一部分)により構成されている。なお、矩形領域17の長辺方向LDがタンク長方向TD1、矩形領域17の短辺方向SDがタンク幅方向TD2にそれぞれ一致する代わりに、矩形領域17の長辺方向LDがタンク幅方向TD2、矩形領域17の短辺方向SDがタンク長方向TD1にそれぞれ一致するようにしても構わなく、この場合には、矩形領域17の長辺部分17aが主にトランス上部11の一部分により構成され、矩形領域17の短辺部分17bが主にロンジ15の一部分により構成されることになる。
【0026】
矩形領域17の短辺方向SDに並んだ複数の矩形領域17からなる各矩形領域列(各矩形領域群)17Gにおける、複数の矩形領域17をその長辺方向LDに2等分割する箇所(矩形領域17の短辺方向SDの直線上に配置した複数の分割箇所)には、矩形領域17を補強するカーリング19が矩形領域17の短辺方向SDに沿って1つ置きに配設されている。また、各矩形領域列17Gにおける複数の矩形領域17には、カーリング19が矩形領域17の短辺方向SDに沿って1つ置きに存在するようになっており、各カーリング19は、タンク頂板9の裏面、矩形領域17の長辺部分17aに接合されている。
【0027】
各矩形領域列17Gにおける、複数の矩形領域17をその長辺方向LDに2等分割する箇所に、カーリング19が矩形領域17の短辺方向SDに沿って1つ置きに配設される代わりに、次のようにカーリング19が配設されるようにしても構わない。
【0028】
図2(a)(b)に示すように、各矩形領域列17Gにおける、複数の矩形領域17をその長辺方向LDに3等分割する箇所(矩形領域17の短辺方向SDの異なる2本の直線上にそれぞれ配置した複数の第1分割箇所、複数の第2分割箇所)にカーリング19が矩形領域17の短辺方向SDに沿って1つ置きに配設されるようなっている。この場合には、図2(a)に示すように、各矩形領域列17Gにおける複数の矩形領域17にカーリング19が矩形領域17の短辺方向SDに沿って1つ置きに存在するようになってあってもよく、図2(b)に示すように、各矩形領域列17Gにおける各矩形領域17にカーリング19が存在するようになっても構わない。
【0029】
図3(a)に示すように、各矩形領域列17Gにおける、複数の矩形領域17をその長辺方向LDに4等分割する箇所(矩形領域17の短辺方向SDの異なる3本の直線上にそれぞれ配置した複数の第1分割箇所、複数の第2分割箇所、複数の第3分割箇所)にカーリング19が矩形領域17の短辺方向SDに沿って1つ置きに配設されるようなっている。この場合には、各矩形領域列17Gにおける各矩形領域17にカーリング19が存在するようになっている。
【0030】
図3(b)に示すように、各矩形領域列17Gにおける、複数の矩形領域17をその長辺方向LDに5等分割する箇所(矩形領域17の短辺方向SDの異なる4本の直線上にそれぞれ配置した複数の第1分割箇所、複数の第2分割箇所、複数の第3分割箇所、複数の第4分割箇所)にカーリング19が矩形領域17の短辺方向SDに沿って1つ置きに配設されるようなっている。この場合には、各矩形領域列17Gにおける各矩形領域17にカーリング19が存在するようになっている。
【0031】
続いて、本発明の第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0032】
各矩形領域列17Gにおける複数の矩形領域17をその長辺方向LDに分割する箇所にカーリング19が矩形領域17の短辺方向SDに沿って1つ置きに配設されているため、前述の新規な知見を適用すると、各矩形領域17にカーリング19を矩形領域17の長辺方向LDに等分割(2等分割、3等分割、4等分割、又は5等分割)するように配設した場合に比べて、タンク頂板構造5に使用するカーリング19の本数を半分に減らした上で、タンク頂板構造5の座屈強度を同等のレベルまで確保できる。
【0033】
従って、本発明の第1実施形態によれば、タンク頂板構造5の座屈強度を十分に確保しつつ、タンク頂板構造5の工作時間を大幅に短縮して、タンク頂板構造5の建造コストの低減を図ることができる。
【0034】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について図5及び図6(a)(b)を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向、「L」は、左方向、「R」は、右方向をそれぞれ指してある。
【0035】
図6(a)(b)に示すように、本発明の第2実施形態に係るバルクキャリア21は、穀物、鉱石等のばら積み貨物(図示省略)を輸送するための貨物船(船舶の一例)であって、船側外板(船側外板構造)23を備えており、この船側外板23は、第1配設方向として船長方向(前後方向)FD1へ延びている。また、船側外板23の上側(上端)には、上甲板25が設けられており、この上甲板25は、船長方向FD1へ延びている。
【0036】
船側外板23の下側には、板骨構造の1つである船底外板構造27が設けられており、この船底外板構造27は、船長方向FD1へ延びている。また、船底外板構造27に上下に離隔した位置には、船底内板(船体内板構造)29が設けられており、この船底内板29は、船長方向FD1へ延びている。そして、船底外板構造27と船底内板29との間には、複数のトランス(肋材又は大骨材)31が船長方向FD1に間隔を置いて設けられており、各トランス31は、第1配設方向に対して直交する第2配設方向としての船幅方向(左右方向)FD2へ延びている。
【0037】
続いて、本発明の第2実施形態の要部である船底外板構造27の具体的な構成について説明する。
【0038】
船側外板23の下側(下端)には、ベース板として船底外板33が接合されており、この船底外板33は、船長方向FD1へ延びている。また、船底外板33の裏面(上面)には、船底外板33を補強する複数のトランス31の下部(以下、トランス下部という)35が船長方向FD1に間隔を置いて接合されており、各トランス下部35には、複数のスロット37が船幅方向FD1に間隔を置いて形成されている。なお、各トランス下部35は、トランス31の一部を構成する他に、船底外板構造27の一部を構成するものである。
【0039】
船底外板33の裏面には、船底外板33を補強する断面T字形状の複数のロンジ(防撓材又は小骨材)39が船幅方向FD2に間隔を置いて接合されている。また、各ロンジ39は、複数のトランス下部35に直交するように船長方向FD1へ延びてあって、複数のトランス下部35のスロット37に挿通してある。
【0040】
図5に示すように、複数のトランス下部35及び複数のロンジ39によって、複数の矩形領域41が格子状に区画形成されており、各矩形領域41は、長辺部分41aと短辺部分41bを有している。ここで、矩形領域41の長辺方向LDは、船長方向FD1、矩形領域41の短辺方向SDは、船幅方向FD2にそれぞれ一致してあって、矩形領域41の長辺部分41aは、ロンジ39の一部分により構成され、矩形領域41の短辺部分41bは、トランス下部35の一部分により構成されている。なお、矩形領域41の長辺方向LDが船長方向FD1、矩形領域41の短辺方向SDが船幅方向FD2にそれぞれ一致する代わりに、矩形領域41の長辺方向LDが船幅方向FD2、矩形領域41の短辺方向SDが船長方向FD1にそれぞれ一致するようにしても構わなく、この場合には、矩形領域41の長辺部分41aがトランス下部35の一部分により構成され、矩形領域41の短辺部分41bがロンジ39の一部分により構成されることになる。
【0041】
矩形領域41の短辺方向SDに並んだ複数の矩形領域41からなる各矩形領域列(各矩形領域群)41Gにおける、複数の矩形領域41をその長辺方向LDに2等分割する箇所(矩形領域41の短辺方向SDの直線上に配置した複数の分割箇所)には、矩形領域41を補強するカーリング43が矩形領域41の短辺方向SDに沿って1つ置きに配設されている。また、各矩形領域列41Gにおける複数の矩形領域41にカーリング43が矩形領域41の短辺方向SDに沿って1つ置きに存在するようになっており、各カーリング43は、船底外板33の裏面、矩形領域41の短辺部分41bに接合されている。
【0042】
なお、船底外板構造27におけるカーリング43の配設パターンは、本発明の第1実施形態に係るタンク頂板構造5におけるカーリング19の配設パターン(図2(a)(b)及び図3(a)(b)参照)と同様に、適宜の変更が可能である。
【0043】
続いて、本発明の第2実施形態の作用及び効果について説明する。
【0044】
各矩形領域列41Gにおける複数の矩形領域41をその長辺方向LDに分割する箇所にカーリング43が矩形領域41の短辺方向SDに沿って1つ置きに配設されているため、前述の新規な知見を適用すると、各矩形領域41にカーリング43を矩形領域41の長辺方向LDに等分割するように配設した場合に比べて、船底外板構造27に使用するカーリング43の本数を半分に減らした上で、船底外板構造27の座屈強度を同等のレベルまで確保できる。
【0045】
従って、本発明の第2実施形態によれば、船底外板構造27の座屈強度を十分に確保しつつ、船底外板構造27の工作時間を大幅に短縮して、船底外板構造27の建造コストの低減を図ることができる。
【0046】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、タンク頂板構造5及び船底外板構造27に適用した構成を他の板骨構造に適用する等、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、本発明の実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0047】
TD1 タンク長方向
TD2 タンク幅方向
FD1 船長方向
FD2 船幅方向
LD 矩形領域の長辺方向
SD 矩形領域の短辺方向
1 液化ガス用タンク
3 タンク本体
5 タンク頂板構造
7 トランス
9 タンク頂板
11 トランス上部
13 スロット
15 ロンジ
17 矩形領域
17a 矩形領域の長辺部分
17b 矩形領域の短辺部分
17G 矩形領域列
19 カーリング
21 バルクキャリア
27 船底外板構造
31 トランス
33 船底外板
35 トランス下部
37 スロット
39 ロンジ
41 矩形領域
41a 矩形領域の長辺部分
41b 矩形領域の短辺部分
41G 矩形領域列
43 カーリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物に用いられる板骨構造において、
ベース板と、
前記ベース板に第1配設方向に間隔を置いて接合され、前記第1配設方向に直交する第2配設方向へ延びてあって、前記ベース板を補強する複数のトランスと、
前記ベース板に前記第2配設方向に間隔を置いて接合され、複数の前記トランスに直交するように前記第1配設方向へ延びてあって、前記ベース板を補強する複数のロンジと、を備え、
複数の前記トランス及び複数の前記ロンジによって長辺部分と短辺部分を有した複数の矩形領域が格子状に区画形成され、
前記矩形領域の短辺方向に並んだ複数の前記矩形領域からなる各矩形領域列における、複数の前記矩形領域をその長辺方向に分割する箇所に、前記矩形領域を補強するカーリングが前記短辺方向に沿って1つ置きに配設されていることを特徴とする板骨構造。
【請求項2】
各矩形領域列における複数の前記矩形領域に前記カーリングが前記短辺方向に沿って1つ置きに存在するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の板骨構造。
【請求項3】
各矩形領域列における各矩形領域に前記カーリングが存在するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の板骨構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の板骨構造を備えたことを特徴とする建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−91338(P2013−91338A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232826(P2011−232826)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(502422351)株式会社アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド (159)