説明

枕の内包材

【課題】本発明は、断面半円状をなす枕において、仰臥状態及び横臥状態における寝姿勢の変化に応じて頸椎が曲がる角度の変化に対して、この変化に対応するように枕の高さを十分に考慮し、スムーズに寝返りを打つことができる枕の内包材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る枕の内包材10は、内側曲面部と外側曲面部とからなり、両側部が下部より厚く形成してなる断面U字状の枕の内包材であって、硬質発泡体よりなる硬質層11とその内側曲面部表面に1cm程度に積層された軟質層12とから構成され、内包材10の下部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みが使用による加圧時において1cm〜13cm(図1におけるxは見掛け上の厚み)であり、枕両側部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みが使用による加圧時において6cm〜25cm(図1におけるyは見掛け上の厚み)であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具用の枕の内包材に関し、特に寝返りを打ちやすい枕の内包材に関する。
【背景技術】
【0002】
仰臥状態における適度な枕の高さと横臥状態における適度な枕の高さとは、肩幅を考慮すると大きく変化するので、頸椎の曲がる角度を考慮すれば、横臥状態における枕の高さが仰臥状態における枕の高さより高い方が寝心地がよいことが知られている。そして、中央部を低くし、両側部を高くした平板状の枕が考え出されたことがある。しかしながら、睡眠中において、仰臥状態から横臥状態に寝返りを打ったときに両側部の高い箇所に頭部が移動しても、知らず知らずのうちに、頭部が、その重量により中央部の低いところにずれ動いてしまう結果、横臥状態でも枕の低い部分で寝ることとなって寝苦しくなり、また、その状態において横臥状態から仰臥状態に寝返りを打った場合には、枕の高い方の部分に頭部が位置するので、その違和感により寝苦しくなり、さらにその寝苦しさを開放するために枕の中央部ではない逆側に向けて横臥状態になると頭部が枕から外れてしまう結果となり、結局上記のような構成の枕では、寝返りを打つたびに覚醒するおそれがあり、安眠が妨げられる可能性が大きいものであった。
【0003】
一方、睡眠中に仰臥状態から横臥状態に、また、横臥状態から仰臥状態に寝返りを打っても頭部が枕から外れないように断面半円状に構成した枕が下記特許文献に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−291599号公報
【特許文献2】特開平10−215992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の断面半円状に構成した枕は、仰臥状態及び横臥状態における寝姿勢の変化に応じて頸椎が曲がる角度の変化に対応するように枕の高さを考慮することが十分に行われていない。
【0006】
そこで、本発明者は、鋭意研究を重ね、断面半円状をなす枕において、仰臥状態及び横臥状態における寝姿勢の変化に応じて頸椎が曲がる角度の変化に対応するように枕の高さを十分に考慮することにより、寝返りがスムーズに打てて、安眠が妨げられない枕の内包材を考え出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る枕の内包材は、内側曲面部と外側曲面部とからなり、両側部が下部より厚く形成してなる断面U字状の枕の内包材であって、枕下部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みが使用による加圧時において1cm〜13cmであり、枕両側部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みが使用による加圧時において6cm〜25cmであることを特徴とするものである。
【0008】
仰臥状態における枕の高さの好みについて試験をしたところ、使用による加圧時において最低で2cmであり、最高で10cmであった。この数値は仰臥状態における枕の高さの目安となる。そこで、頸椎の曲げ角度が過度にならない程度の許容幅を考慮して、本発明においては、上記構成のように、枕の内包材の下部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みを使用による加圧時において1cm〜13cmとした。また、年代別の肩幅平均値に関する資料によれば、最低が39.0cm(75歳〜79歳の女性の場合)であり、最高が46.7cm(30歳〜34歳の男性の場合)であった。さらに、年代別の頭幅平均値に関する資料によれば、最低が15.2cm(75歳〜79歳の女性の場合)であり、最高が16.4cm(35〜54歳の男性の場合)であった。これらの数値に基づけば、年代別の肩幅平均値から年代別の頭幅平均値を差し引いて2分すると頭部側面と肩側面との距離の年代別平均値が計算でき、最低が11.9cm(75〜79歳の女性の場合)であり、最高が15.2cm(30歳〜34歳の男性の場合)であった。この数値は横臥状態における枕の高さの目安となる。そこで、本発明においては、頸椎の曲げ角度が過度にならない程度の許容幅を考慮して、上記構成のように、枕の内包材の両側部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みを使用による加圧時において6cm〜25cmとした。
【0009】
上記のように構成したことにより、仰臥状態及び横臥状態における寝姿勢の変化に応じて頸椎が曲がる角度の変化に対応する高さの枕が完成する。なお、使用による加圧時における厚みを特定した理由は、使用による加圧時における厚みが一定でも枕の内包材の材質によって見掛けの厚みが異なるためである。例えば、伸縮性に優れた材質の場合には見掛けの厚みが大きくても使用時の厚みは極端に小さくなる。したがって、本発明の目的に照らせば、使用による加圧時における厚みを特定しなければ意味を持たない。
【0010】
また、上記の構成において、U字状の枕の内包材の下部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みと枕両側部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みとの差が緩やかに変化するように構成すると、仰臥状態から横臥状態へ、また横臥状態から仰臥状態へスムーズに寝返りを打つことができるので、寝返りを打つときに安眠が妨げられるようなことはなく、快適な睡眠状態を持続することができる。
【0011】
さらに、上記の構成において、枕の内包材を硬質発泡体より構成してもよく、そのように構成すれば、枕の形状が維持できるので、仰臥状態においては常に枕の下部に頭が載置され、寝返りを打って横臥状態になれば枕の側部に頭部の側部が位置することとなり、本発明の目的どおりの使用が可能となり、睡眠中にスムーズに寝返りが打てると共に寝返りを打っても枕がはずれるおそれがなく、快適な睡眠が持続できる。
【0012】
さらにまた、内側曲面部の表面にクッション性及び通気性に優れた連続気泡からなる発泡体が積層されてなる構成としてもよく、そのよう構成すると、肌触りが良好になると共に枕に熱が籠もらず、快適な睡眠が得られることになる。
【発明の効果】
【0013】
上記のように本発明に係る枕の内包材は、仰臥状態及び横臥状態における寝姿勢の変化に応じて頸椎が曲がる角度の変化に対応するように枕の高さが十分に考慮されたものとなるので、寝心地がよく、スムーズ寝返りを打つことができて寝返りによる覚醒が生じることを抑制し、かつ、枕はずれが生じるようなことがなく、持続性のある快適な睡眠が得られ、従来にない優れた枕を構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例に係る枕の内包材の斜視図である。
【図2】実施例に係る枕の内包材を用いて形成した枕の仰臥状態における概略使用状態図である。
【図3】実施例に係る枕の内包材を用いて形成した枕の横臥状態における概略使用状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る枕の内包材について、添付の図面に基づき詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
本実施例における枕の内包材10は、図1に示すように、内側曲面部と外側曲面部とからなる断面U字状をなしており、硬質発泡体よりなる硬質層11と、その内側曲面部表面に1cm程度に積層された軟質層12とから構成される。該軟質層12は連続気泡からなる発泡体により構成され、クッション性及び通気性に優れる。また、前記内包材10の内側曲面部及び外側曲面部は、いずれも段差や急激に湾曲する部分がなく、緩やかで滑らかに湾曲する曲面で構成されている。
【0017】
当該内包材10は、その下部は見掛け上約5cm(図中のxで示す。)の厚みであって枕としての使用による加圧時には厚みが約4cmに収縮し、両側部は見掛け上約15cm(図中のyで示す。)の厚みであって枕としての使用による加圧時には厚みが約14cmに収縮した。この収縮はそのほとんどが軟質層12によるものであり、硬質層11はほとんど収縮しなかった。
【0018】
上記の構成をなす枕の内包材10に枕カバーを被覆して枕Aを形成し、当該枕Aを使用した状態を図2及び図3に示す。図2における使用状態においては、枕の高さが約4cmとなるので、仰臥状態における枕の高さの好みについての試験結果である2cm〜10cmを満たしており、かつ、頸椎の曲げ角度が過度にならない程度の許容幅を考慮した枕の内包材の下部における内側曲面部と外側曲面部との間の使用による加圧時における厚み1cm〜13cmを満たしている。したがって、本実施例における内包材10により形成された枕Aは、その仰臥状態における枕Aの使用が頸椎の曲げ角度が過度にならなず、安定感が良好で寝心地がよい結果となる。
【0019】
その状態から図3に示すように寝返りを打った場合には、前記内包材10の内側曲面部及び外側曲面部が緩やかで滑らかに湾曲する曲面で構成されているため、頭部の回転に枕Aが追随し、違和感を全く感じさせずに、図3に示すように横臥状態になることができる。
【0020】
そして、図3に示す横臥状態となったときに、枕の高さが約14cmとなり、年代別の横臥状態における枕高さの平均値である11.9cm〜15.2cmを満たしており、かつ、頸椎の曲げ角度が過度にならない程度の許容幅を考慮した枕の内包材の両側部における内側曲面部と外側曲面部との間の使用による加圧時における厚み6cm〜25cmを満たしている。したがって、本実施例における内包材10により形成された枕Aは、その横臥状態における枕Aの使用が頸椎の曲げ角度が過度にならなず、安定感が良好で寝心地がよい結果となる。
【0021】
以上の結果、本実施例における枕の内包材10は、上記のように構成されているため、仰臥状態及び横臥状態における寝姿勢の変化に応じて頸椎が曲がる角度の変化に対応するように枕の高さが十分に考慮されたものとなっている。したがって、内包材10により形成された枕Aは、寝心地がよく、スムーズに寝返りを打つことができて寝返りによる覚醒が生じることを抑制し、また、枕はずれが生じるようなことがなく、快適な睡眠が得られる従来にない優れた枕である。
【符号の説明】
【0022】
A・・・枕
10・・枕の内包材
11・・硬質層
12・・軟質層
x・・・内包材下部の見掛け上の厚み
y・・・内包材側部の見掛け上の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側曲面部と外側曲面部とからなり、両側部が下部より厚く形成してなる断面U字状の枕の内包材であって、下部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みが使用による加圧時において1cm〜13cmであり、枕両側部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みが使用による加圧時において6cm〜25cmであることを特徴とする枕の内包材。
【請求項2】
U字状の枕の内包材の下部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みと枕両側部における内側曲面部と外側曲面部との間の厚みとの差が緩やかに変化するものであることを特徴とする請求項1に記載の枕の内包材。
【請求項3】
硬質発泡体よりなることを特徴とする請求項1又は2に記載の枕の内包材。
【請求項4】
内側曲面部の表面にクッション性及び通気性に優れた連続気泡からなる発泡体が積層されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の枕の内包材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−10899(P2011−10899A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158121(P2009−158121)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(591034143)西川リビング株式会社 (27)
【Fターム(参考)】