枕
【課題】 枕において、低コストで簡易な構成であると共に姿勢変化に応じて適切な高さ調整を素早くスムーズにかつ静かに行うこと。
【解決手段】 下部支持板2と、下部支持板に対して略平行状態に配されて使用者の頭部Hが載置される頭部支持板3と、下部支持板上に設けられ略平行状態を維持して頭部支持板を上下動可能に支持する支持板支持機構4と、を備え、支持板支持機構が、下端部が下部支持板に回動可能に連結され上端部が頭部支持板に回動可能に連結されていると共に下部支持板から頭部支持板に向けて傾斜して延在している互いに平行な第1支持部材8c及び第2支持部材8gと、これらを傾斜した方向に倒す荷重に対抗して頭部支持板を介して第1支持部材8c及び第2支持部材8gを付勢する付勢手段9と、を備えている。
【解決手段】 下部支持板2と、下部支持板に対して略平行状態に配されて使用者の頭部Hが載置される頭部支持板3と、下部支持板上に設けられ略平行状態を維持して頭部支持板を上下動可能に支持する支持板支持機構4と、を備え、支持板支持機構が、下端部が下部支持板に回動可能に連結され上端部が頭部支持板に回動可能に連結されていると共に下部支持板から頭部支持板に向けて傾斜して延在している互いに平行な第1支持部材8c及び第2支持部材8gと、これらを傾斜した方向に倒す荷重に対抗して頭部支持板を介して第1支持部材8c及び第2支持部材8gを付勢する付勢手段9と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝返りに伴う姿勢変化に対応して、快適な姿勢で安眠可能な枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、就寝時に使用者の頭部を支え負荷の少ない安定した姿勢で睡眠状態を得るために種々の枕が提案され使用されている。特に、睡眠時に寝返りを行うことで仰向け姿勢(仰臥)と横向き姿勢(横臥)とを交互に繰り返し姿勢を変化させることに対応して、その高さを変化させる枕が提案されている。例えば、特許文献1には、高さ調節部にかかる荷重に応じて高さ調節部に流体を出し入れして膨張・収縮させることで、高さ調整する枕が提案されている。この枕では、流体の流入・流出を制御するために、流体給入装置及び複数の弁や配管を備えている。
【0003】
また、特許文献2には、頭部の圧力を感知する圧力センサーと該圧力センサーの信号により頭部支持部を上下駆動する機構及び回路とを有した高さ可変式安眠枕が提案されている。この高さ可変式安眠枕では、寝返りにより姿勢変化があった際に生じる頭部による支持部分への圧力変動を圧力センサーで検知することで、圧力信号を回路で処理し駆動機構で頭部支持部を上下させる。
【0004】
さらに、特許文献3には、基台と頭載板との間に筒体による密閉室をつくると共に円錐台形状の定荷重負荷スプリングバネを設けた快眠枕が提案されている。この快眠枕では、仰向け姿勢の場合と横向き姿勢の場合とでかかる荷重の差によって密閉室内の空気を出し入れすると共に円錐台形状の定荷重負荷スプリングバネを伸縮させて高さの調整を行っている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−249088号公報(特許請求の範囲、図10、図12)
【特許文献2】特開平6−343540号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献3】実開平3−35772号公報(実用新案登録請求の範囲、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
上記特許文献1に記載の枕は、流体を出し入れするために流体給入装置及び複数の弁や配管を装備する必要があると共に流体の流出を防ぐために密閉構造が必須であり、全体に構造が複雑化すると共に製作コストが大幅に増大してしまう不都合があった。また、この枕では、寝返りにより姿勢変化があっても、流体の出し入れに時間がかかり、ゆっくり高さが変化するため、姿勢変化の直後、しばらくの間は不安定で過負荷な姿勢状態となってしまう問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の高さ可変式安眠枕は、圧力センサ、処理回路、機械的な上下駆動機構及び電源等を必要とするため、やはり構造の複雑化及びコストの増大化が著しく、一般に普及可能な価格で提供することが困難である。また、この高さ可変式安眠枕では、多数の構成部品を内蔵するためのスペースが内部に必要であり、枕が大型化すると共に、構成部品が邪魔になって頭部支持部を十分に低い位置に設定することができないという問題があった。
【0008】
さらに、上記特許文献3に記載の快眠枕でも、密閉室及び円錐台形状の定荷重負荷スプリングバネが基台と頭載板との間に設けられているために、これらが邪魔になり頭載板を十分に低くすることができず、適切な低位置に設定できない不都合があった。また、この快眠枕では、上記特許文献1と同様に流体の出し入れを行うため、高さ調整に時間がかかる問題があった。
また、上記各特許文献では、流体の出し入れに伴う音やモータ等の電源及び駆動機構の動作音が少なからず発生し、安眠を妨げる不都合もあった。
【0009】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、低コストで簡易な構成であると共に姿勢変化に応じて適切な高さ調整を素早くスムーズにかつ静かに行うことができる枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の枕は、下部支持板と、前記下部支持板に対して略平行状態に配されて使用者の頭部が載置される頭部支持板と、前記下部支持板上に設けられ前記略平行状態を維持して前記頭部支持板を上下動可能に支持する支持板支持機構と、を備え、前記支持板支持機構が、下端部が前記下部支持板に回動可能に連結され上端部が前記頭部支持板に回動可能に連結されていると共に前記下部支持板から前記頭部支持板に向けて傾斜して延在している互いに平行な複数の支持部材と、前記支持部材を前記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して直接又は他の部材を介して前記支持部材を付勢する付勢手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この枕では、支持部材を上記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して直接又は他の部材を介して支持部材を付勢する付勢手段を備えているので、付勢手段の付勢力を横向き姿勢の際にかかる荷重よりも大きく設定すると共に仰向け姿勢の際にかかる荷重よりも小さく設定することで、横向き姿勢では支持部材が倒れず頭部支持板が高い位置で維持されるが、仰向け姿勢に姿勢変化させると荷重増大によって支持部材が倒れ頭部支持板が低い位置となる。すなわち、傾斜した支持部材による頭部支持板の支持構造と所定の付勢力に設定した付勢手段による簡易な構成によって、仰向け姿勢の場合と横向き姿勢の場合との荷重差を利用して、素早くスムーズにかつ異音を発生させることなく頭部支持板の高さを自動的に変えることができる。特に、支持部材が倒れるという動作によるため、頭部支持板が中間的な高さで留まらず、最高位置から最低位置への移動又はその逆の移動を瞬時に素早くスムーズに行うことができる。また、電源や駆動装置等が不要であるため、軽量かつ低コストに作製することができる。
【0012】
また、本発明に係る枕は、前記付勢手段が付勢力の調整機構を備えていることが好ましい。すなわち、この枕では、付勢力の調整機構を有しているので、頭部の重量や体格等が異なる使用者に対応して付勢力を調整することで使用者毎の個別設定が可能になり、より精度の高い上下動作を得ることができる。
【0013】
また、本発明に係る枕は、前記付勢手段が、前記頭部支持板を前記頭部支持板に対する前記支持部材の傾斜角度よりも小さい傾斜角度で斜め下方に引っ張る付勢部材を有していることを特徴とする。すなわち、この枕では、付勢部材が、頭部支持板を頭部支持板に対する支持部材の傾斜角度よりも小さい傾斜角度で斜め下方に引っ張ることにより、支持部材を倒す荷重に対抗した付勢力を頭部支持板を介して加えることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る枕は、前記付勢部材がコイルバネであることを特徴とする。すなわち、この枕では、コイルバネを付勢部材として用いるので、繰り返しの使用にも高い耐久性を有すると共に高い付勢力を得ることができる。
【0015】
また、本発明に係る枕は、前記付勢部材がゴム材であることを特徴とする。すなわち、この枕では、ゴム材を付勢部材として用いるので、安価であると共に、軽量な構成を得ることができる。
【0016】
また、本発明に係る枕は、前記付勢部材が前記下部支持板と前記頭部支持板との間の領域外に配されていることを特徴とする。すなわち、この枕では、付勢部材が下部支持板と頭部支持板との間の領域外に配されているので、支持部材が倒れて頭部支持板が最低位置まで下がった際に頭部支持板と下部支持板との間に付勢部材が挟まってしまうことがない。したがって、付勢部材が邪魔にならず、頭部支持板を十分低い位置まで移動させることができる。
【0017】
また、本発明に係る枕は、前記付勢手段が、前記支持部材と前記下部支持板又は前記頭部支持板とに両端部が固定されたねじりバネ又はスプリング丁番であることを特徴とする。すなわち、この枕では、支持部材と下部支持板又は頭部支持板とに直接ねじりバネ又はスプリング丁番を取り付けて支持部材を傾斜方向に倒す荷重に対抗して付勢することにより、簡易な構成で軽量かつ低コストな枕を実現することができる。
【0018】
また、本発明に係る枕は、前記付勢手段の付勢力に抗して前記支持部材を所定の傾斜角度で係止するストッパ機構を備えていることを特徴とする。すなわち、この枕では、付勢手段の付勢力に抗して支持部材を所定の傾斜角度で係止するストッパ機構を備えているので、付勢力によって支持部材が必要以上に立ち上がって所定の傾斜角度を超えて所望の枕高さ以上になることや逆方向に支持部材が倒れて壊れることを防ぐことができる。また、支持部材が必要以上に立ち上がると支持部材が倒れ難くなって枕高さが下がらなくなるため、所定の傾斜角度を超えないようにストッパ機構で制限している。
【0019】
また、本発明に係る枕は、前記支持部材の下端部から上端部までの長さを調整可能な支持長調整機構を備えていることを特徴とする。すなわち、この枕では、支持部材の下端部から上端部までの長さを調整可能な支持長調整機構を備えているので、支持部材自体の長さを変えて使用者に応じた枕高さに設定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る枕によれば、支持部材を上記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して直接又は頭部支持板及び下部支持板を介して支持部材を付勢する付勢手段を備えているので、簡易かつ低コストな構成で、素早くスムーズにかつ異音を発生させることなく仰向け姿勢と横向き姿勢とで頭部支持板の高さを自動的に変えることができる。したがって、睡眠時に寝返りを無意識に繰り返し行っても、仰向け姿勢と横向き姿勢とで自動的に頭部支持板の高さが素早くスムーズにかつ静かに調整されることにより、快適な睡眠を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る枕の第1実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態の枕1は、図1及び図2に示すように、下部支持板2と、下部支持板2に対して略平行状態に配されて使用者の頭部Hが載置される頭部支持板3と、下部支持板2上に設けられ略平行状態を維持して頭部支持板3を上下動可能に支持する支持板支持機構4と、頭部支持板3上に設置されたクッション部5と、を備えている。なお、ここで、上記下部支持板2及び上記頭部支持板3において、一対の対向する長辺のうち使用者側となる方を一辺側とし、その反対側を他辺側とする。
【0023】
上記下部支持板2及び上記頭部支持板3は、いずれも長方形状の木板材又はプラスチック板材等で構成されている。
上記頭部支持板3は、その他辺側上面にクッション部5の位置決め用に当接用壁板部6が長辺方向に延在して固定されている。また、頭部支持板3は、その一辺側端部を覆うようにクッション材等の柔らかい材料で形成された緩衝部材7が取り付けられている。すなわち、頭部支持板3の一辺側の角部を緩衝部材7で覆うことにより、使用者の首部や肩部などに角部が当接した際に生じる圧迫感や違和感を和らげるようになっている。
【0024】
上記支持板支持機構4は、下端部が下部支持板2に回動可能に連結され上端部が頭部支持板3に回動可能に連結されていると共に下部支持板2から頭部支持板3に向けて傾斜して延在している互いに平行な第1支持部材8c及び第2支持部材8gと、第1支持部材8c及び第2支持部材8gを上記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して頭部支持板3を介して第1支持部材8c及び第2支持部材8gを付勢する付勢手段9と、を備えている。
【0025】
上記第1支持部材8c及び第2支持部材8gは、ポリプロピレン等の硬質プラスチック板等で構成された折り曲げ支持板10の一部として下部支持板2と頭部支持板3との間に配される。すなわち、折り曲げ支持板10は、下部支持板2上に固定された一端固定部8aと、柔軟な第1折り目部8bを介して一端固定部8aに回動可能に接続された第1支持部材8cと、柔軟な第2折り目部8dを介して第1支持部材8cに回動可能に接続され頭部支持板3の下面に固定された上部固定部8eと、柔軟な第3折り目部8fを介して上部固定部8eに回動可能に接続された第2支持部材8gと、柔軟な第4折り目部8hを介して第2支持部材8の下端に接続され下部支持板2上に固定された他端固定部8iと、で構成されている。なお、第1〜第4折り目部8b〜8hは、いずれも下部支持板2及び頭部支持板3の長辺と平行に形成されている。また、第1〜第4折り目部8b〜8hは、それぞれアンダーカットされた切れ目部が形成されて、柔軟に折り曲げ可能とされている。
【0026】
上記一端固定部8a、上部固定部8e及び他端固定部8iは、いずれも接着剤で接着固定されている。また、一端固定部8aは、さらに押さえ板18と下部支持板2とで挟持されて固定されている。上記押さえ板18は、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが傾斜方向と反対の方向に倒れることを防ぐストッパーとしても機能している。なお、上記一端固定部8a、上部固定部8e及び他端固定部8iの固定は、接着剤ではなく、ネジやボルト等による他の固定手段によって行っても構わない。
本実施形態の枕1では、一対の折り曲げ支持板10を互いに所定間隔を開けて長辺方向に並べて設置しており、2つの第1支持部材8c及び第2支持部材8gによって頭部支持板3が下部支持板2上に支持されている。
【0027】
上記付勢手段9は、頭部支持板3を頭部支持板3に対する第1支持部材8c及び第2支持部材8gの傾斜角度θ1よりも小さい傾斜角度θ2で斜め下方(図1中の矢印A方向)に引っ張る一対のワイヤーY及びコイルバネ(付勢部材)11を有している。
上記ワイヤーYは、頭部支持板3の一辺側下面に一端が取り付けられていると共に他端がコイルバネ11に取り付けられ上記斜め下方に向けて張設されている。また、ワイヤーYの一端側は、一対の折り曲げ支持板10の間を通すように配されていると共に、他端が押さえ板18に形成された貫通孔18aを介して外部に配されている。
【0028】
上記コイルバネ11は、図3及び図4に示すように、下部支持板2の他辺側の両端に互いに対向するように直線上に配された引っ張りバネである。すなわち、これらのコイルバネ11は、下部支持板2と頭部支持板3との間の領域外に配されている。なお、各コイルバネ11は、その一端が下部支持板2の角部近傍に固定された円弧状又は略リング状のバネ支持部材12に接続されている。
【0029】
また、付勢手段9は、一対のワイヤーYの他端側を曲げて対応するコイルバネ11に導くガイド部材13を備えている。すなわち、このガイド部材13は、一対の折り曲げ支持板10の間を通って押さえ板18の貫通孔18aから外部に出てくる一対のワイヤーYの方向をそれぞれ反対の方向に90度変えるように配された一対のチューブ部材14を内部に湾曲状態で固定している。したがって、一対のワイヤーYは、これらのチューブ部材14を挿通して方向転換し他端が対応するコイルバネ11の他端に接続されている。
また、コイルバネ11及びガイド部材13は、開閉可能なカバー部材19で覆われている。なお、図3及び図4においては、コイルバネ11等の配置を示すためにカバー部材19を取り外した状態で図示している。
【0030】
さらに、上記ワイヤーYには、コイルバネ11の付勢力(張力)を調整するための調整機構15が設けられている。この調整機構15は、ワイヤーYの長さ調整を行うものであり、ワイヤーYを短く設定するほど、コイルバネ11が引き延ばされてその付勢力(張力)を強く設定することができると共に初期(無荷重)及び仰向け姿勢時の頭部支持板3の高さ調整も可能である。なお、付勢手段9の付勢力(張力)は、横向き姿勢の際にかかる荷重よりも大きく設定すると共に仰向け姿勢の際にかかる荷重よりも小さく設定しておく。
このような構成により、コイルバネ11は、ガイド部材13及びワイヤーYを介して頭部支持板3を一辺側から他辺側へ斜め下方に引っ張る付勢力を加えるように設定されている。
【0031】
下部支持板2の下面4箇所、頭部支持板3の上面4箇所及び当接用壁板部6の側面2箇所には、それぞれ枕カバー取り付け用の面ファスナー16が接着されている。すなわち、これらの面ファスナー16に枕カバー17の面ファスナーを接着させることで、着脱可能に枕カバー17を枕1全体を巻いて覆うように取り付けることができる。なお、枕カバー17を、頭部支持板3の面ファスナー16を用いてクッション部5のみを覆うように取り付けても構わない。
上記クッション部5は、頭部支持板3上面の面ファスナー16に接着することで着脱可能に取り付けられる。このクッション部5は、多数のパイプ片を内蔵したものや成型クッション材又は低反発素材等で構成されたものである。
【0032】
次に、本実施形態の枕1における使用者の姿勢変化に伴う高さ調整動作について、図1から図4を参照して説明する。
【0033】
まず、使用者が横向き姿勢で寝ている場合、図1及び図3に示すように、使用者の頭部Hは肩部によって高い位置になっていると共に肩部が支えになって頭部支持板3にかかる荷重が少ない。このため、付勢手段9による付勢力(張力)が頭部支持板3にかかる荷重による第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒そうとする力を上回り、頭部支持板3の高い位置状態が維持される。
【0034】
次に、使用者が寝返りをして仰向け姿勢になった場合、図2及び図4に示すように、使用者の肩部による支持がなくなるため頭部支持板3にかかる頭部Hによる荷重が増大する。このため、頭部支持板3にかかる荷重による第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒そうとする力(傾斜角度θ1を小さくしようとする力)が付勢手段9による付勢力(傾斜角度θ1を大きくする方向に働く付勢力)を上回り、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れ、頭部支持板3が下部支持板2に近接した最低位置まで下がる。
【0035】
なお、さらに使用者が寝返りをして仰向け姿勢から横向き姿勢になった場合、上記の逆の動作が行われる。すなわち、頭部支持板3にかかる荷重が低下することにより、付勢手段9による付勢力が第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒そうとする力を上回り、再び第1支持部材8c及び第2支持部材8gを斜め状態の初期位置まで引き起こすことで、頭部支持板3を初期の最高位置に上げる。なお、通常、寝返りをうって仰向け姿勢から横向き姿勢とする時は、一旦頭部Hを少しだけ無意識のうちに上げ、姿勢を変える動作を行うので、頭部Hを上げた際の荷重の低下に伴って頭部支持板3が最高位置に移動する。
【0036】
このように本実施形態の枕1では、第1支持部材8c及び第2支持部材8gを上記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して頭部支持板3を介して第1支持部材8c及び第2支持部材8gを引っ張って付勢する付勢手段9を備えているので、横向き姿勢では第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れず頭部支持板3が高い位置となるが、仰向け姿勢に姿勢変化させると荷重増大によって第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れ頭部支持板3が低い位置となる。
【0037】
すなわち、傾斜した第1支持部材8c及び第2支持部材8gによる頭部支持板3の支持構造と所定の付勢力に設定した付勢手段9による簡易な構成によって、仰向け姿勢の場合と横向き姿勢の場合との荷重差を利用して、素早くスムーズにかつ異音を発生させることなく頭部支持板3の高さを自動的に変えることができる。特に、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れるという動作によるため、頭部支持板3が中間的な高さで留まらず、最高位置から最低位置への移動又はその逆の移動を瞬時に素早くスムーズに行うことができる。また、電源や駆動装置等が不要であるため、軽量かつ低コストに作製することができる。
【0038】
また、本実施形態の枕1は、付勢力の調整機構15を有しているので、頭部Hの重量や体格等が異なる使用者に対応して付勢力を調整することで使用者毎の個別設定が可能になり、より精度の高い上下動作を得ることができる。
さらに、コイルバネ11が、頭部支持板3を頭部支持板3に対する第1支持部材8c及び第2支持部材8gの傾斜角度θ1よりも小さい傾斜角度θ2で斜め下方に引っ張ることにより、第1支持部材8c及び第2支持部材8gに対し、第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒す荷重に対抗して付勢力を頭部支持板3を介して加えることができる。
【0039】
なお、コイルバネ11を付勢部材として用いるので、繰り返しの使用にも高い耐久性を有すると共に高い付勢力を得ることができる。
また、コイルバネ11が下部支持板2と頭部支持板3との間の領域外に配されているので、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れて頭部支持板3が最低位置まで下がった際に頭部支持板3と下部支持板2との間にコイルバネ11が挟まってしまうことがない。したがって、コイルバネ11が邪魔にならず、頭部支持板3を十分低い位置まで移動させることができる。
【0040】
また、ワイヤーYによって上記斜め下方に向けて頭部支持板3を引っ張ると共に、離れた別の位置に設置されたコイルバネ11にガイド部材13によってワイヤーYが導かれて接続されているので、コイルバネ11を上記付勢の方向にかかわらず任意に配置することができ、設計上の自由度が高くなって枕1全体の小型化等を図ることが可能になる。
【0041】
次に、本発明に係る枕の第2及び第3実施形態について、図5から図8を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。また、図5以降の図面において、クッション部5及び枕カバー17については、図示を省略している。
【0042】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、ワイヤーYが下部支持板2と頭部支持板3との間を通ると共にガイド部材13を介してコイルバネ11に連結されているのに対し、第2実施形態の枕20は、図5及び図6に示すように、付勢手段29として一対のワイヤーYが頭部支持板23の側方を通って直接コイルバネ11に接続されている点である。
【0043】
すなわち、第2実施形態の枕20では、頭部支持板23の一辺側に、長辺方向にそれぞれ突出した突出部23aが設けられていると共にこれらの突出部23aにワイヤー固定部材24が取り付けられている。
ワイヤーYは、ワイヤー固定部材24に一端が接続されていると共に、他端がコイルバネ11に接続されている。
なお、第2実施形態では、一端固定部8aが内側に折り返されて下部支持板2上に固定されている。
【0044】
このように第2実施形態の枕20では、ガイド部材13を介さずにワイヤーYとコイルバネ11とが頭部支持板23の両側で直線的に接続されているので、ワイヤーY及びコイルバネ11が頭部支持板23の上下移動の邪魔にならないと共に、部品点数及び部品コストを削減することができる。
【0045】
第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態ではワイヤーY及びコイルバネ11を用いた付勢手段29により所定の付勢力を得ているのに対し、第3実施形態の枕30では、図7及び図8に示すように、一対の板状のゴム材(付勢部材)31を用いた付勢手段39により所定の付勢力を得ている点である。
すなわち、第3実施形態の枕30は、第2支持部材8gの上端に一端が固定されていると共に上記斜め方向(図7中の矢印A方向)に張設された一対のゴム材31と、これらゴム材31の他端を第1支持部材8cの下端近傍で下部支持板2に固定するゴム固定部材32と、で付勢手段39が構成されている。
【0046】
上記ゴム固定部材32は、一端固定部8a上に配置され一対のゴム材31を挟持する一対の長尺板であり、ゴム材31を教示した状態でネジ33により下部支持板2上に固定されている。なお、ゴム固定部材32により固定するゴム材31の他端の位置を調整することで、ゴム材31の張力を調整して、第1支持部材8c及び第2支持部材8gに対する付勢力を調整することができる。
【0047】
また、第1支持部材8cには、張設されたゴム材31を挿通させる横長孔状の挿通孔8jが形成されている。
したがって、第3実施形態の枕1では、ゴム材31で直接的に第1支持部材8c及び第2支持部材8gに所定の付勢力を加えている。この枕30によれば、ゴム材31を付勢部材として用いるので、安価であると共に、軽量な構成を得ることができる。
【0048】
次に、本発明に係る枕の第4及び第5実施形態について、図9から図12を参照して以下に説明する。
【0049】
第4実施形態と第3実施形態との異なる点は、第3実施形態では、ゴム材31により第2支持部材8gを頭部支持板3に対する第2支持部材8gの傾斜角度θ1よりも小さい傾斜角度θ2で斜め下方に引っ張ることにより付勢しているのに対し、第4実施形態の枕40では、図9及び図10に示すように、第1支持部材8cと下部支持板2とに両端部が固定された一対のねじりバネ(付勢手段)41で、第1支持部材8cに対し、第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒す荷重に対抗して付勢力を加えている点である。
【0050】
第4実施形態では、下部支持板2上の他辺側の角部近傍にステンレス等の金属板42がそれぞれ接着剤で接着され、これらの金属板42上にそれぞれねじりバネ41の一端部41aが溶接されて固定されている。また、第4実施形態の第1支持部材8cは、下端が下部支持板2に固定されていないと共に、その両側が長手方向に突出して金具44が固定されている。そして、これら金具44を介してねじりバネ41の他端部41bが第1支持部材8cに固定されている。すなわち、ねじりバネ41の他端部41bは、第1支持部材8cと共に支持部材として機能する。
【0051】
上記ねじりバネ41は、初期又は横向き姿勢で頭部支持板3に荷重が加わっている状態では、第1支持部材8c及び他端部41bを傾斜方向に倒す荷重に対抗して第1支持部材8c及び他端部41bを傾斜状態のまま維持する付勢力を有している。また、ねじりバネ41は、仰向け姿勢で頭部支持板3に加わる第1支持部材8c及び他端部41bを倒そうとする荷重よりも付勢力を小さく設定している。したがって、横向き姿勢から仰向け姿勢に寝返りをした場合に、第1支持部材8c及び他端部41bを倒そうとする荷重がねじりバネ41の付勢力を上回り、第1支持部材8c、他端部41b及び第2支持部材8gが倒れて頭部支持部板3の高さが低くなる。なお、ねじりバネ41は、頭部支持板3の両側に配されているので、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れても頭部支持板3と下部支持板2とに挟まれることがない。
【0052】
第5実施形態と第4実施形態との異なる点は、第4実施形態では、ねじりバネ41により所定の付勢を行っているのに対し、第5実施形態の枕50では、図11及び図12に示すように、第1支持部材8c及び第2支持部材8gの下部と下部支持板2とに両端部の羽根部51aが固定された4つのスプリング丁番(付勢手段)51で所定の付勢を行っている点である。
【0053】
すなわち、第5実施形態では、第1支持部材8c及び第2支持部材8gの傾斜方向側の面にスプリング丁番51の一方の羽根部51aが固定されていると共に、傾斜した第1支持部材8c及び第2支持部材8gが対向する側の下部支持板2上面にスプリング丁番51の他方の羽根部51aが固定されている。なお、第5実施形態の第1支持部材8cは、下端が第1から第3実施形態と同様に下部支持板2に回動可能に固定されている。上記各スプリング丁番51には、それぞれバネ部材51bが組み込まれており、初期又は横向き姿勢で頭部支持板3に荷重が加わっている状態では、第1支持部材8cを傾斜方向に倒す荷重に対抗して第1支持部材8cを傾斜状態のまま維持する付勢力を有している。
【0054】
また、スプリング丁番51は、仰向け姿勢で頭部支持板3に加わる第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒そうとする荷重よりも付勢力を小さく設定している。したがって、横向き姿勢から仰向け姿勢に寝返りをした場合に、第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒そうとする荷重がスプリング丁番51の付勢力を上回り、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れて頭部支持板3の高さが低くなる。なお、スプリング丁番51は、平板状に形成されているので、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れても邪魔にならず頭部支持板3の低位置を維持することができる。
【0055】
このように第3実施形態及び第4実施形態では、第1支持部材8cと下部支持板2とに直接ねじりバネ41又はスプリング丁番51を取り付けて第1支持部材8cや第2支持部材8gを傾斜方向に倒す荷重に対抗して付勢させることにより、簡易な構成で軽量かつ低コストな枕40、50を実現することができる。
【0056】
次に、本発明に係る枕の第6実施形態について、図13から図19を参照して以下に説明する。
【0057】
第6実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、付勢手段29として一対のワイヤーYが頭部支持板23の側方を通って直接コイルバネ11に接続されているのに対し、第6実施形態の枕60では、図13から図15に示すように、付勢手段69として、一本のコイルバネ61が頭部支持板3と下部支持板2との間でこれらの長さ方向の中央部分に配されている点と、付勢手段69の付勢力に抗して第1支持部材68c及び第2支持部材68gを所定の傾斜角度で係止するストッパ機構100を備えている点である。また、第6実施形態では、第1支持部材68c及び第2支持部材68gの下端部から上端部までの長さを調整可能な支持長調整機構101を備えている点でも第2実施形態と異なっている。
【0058】
第6実施形態では、コイルバネ61の一端が第2支持部材68gの上端部近傍の頭部支持板3に接続され、他端が第1支持部材68cの下端部近傍に配された付勢力の調整機構65に接続されている。この調整機構65は、第1支持部材68cの中央下部に形成された矩形状挿通孔65aに挿通されていると共に第1支持部材68c上に回転可能に2つの支持金具102で支持された雄ねじ部材103と、2つの支持金具102間で雄ねじ部材103に進退可能に螺着されていると共にコイルバネ61の他端に連結された蝶ナット104と、雄ねじ部材103の先端に固定された緩み止め用ナット103aとを備えている。
【0059】
すなわち、この調整機構65は、雄ねじ部材103を回転させることで螺着された蝶ナット104が進退するので、コイルバネ61の他端の位置を調整可能であり、コイルバネ61の伸縮長さ及びこれによる付勢力を調整することができる。
【0060】
また、上記ストッパ機構100は、第1支持部材68c及び第2支持部材68gのそれぞれに左右一対設けられた係止用矩形板部105を有している。この係止用矩形板部105は、図15から図17に示すように、第1支持部材68c及び第2支持部材68gに一端固定部68a及び他端固定部68iまで延在して形成した矩形孔部106に設けられている。すなわち、係止用矩形板部105の上端部及び下端部は、それぞれ矩形孔部106の上端部及び下端部に接続されている。
【0061】
この係止用矩形板部105は、図16から図19に示すように、その上端部の上面側に上端スリット105aが形成されていると共に、下端部の上面側に下端スリット105bが形成されている。したがって、係止用矩形板部105の回動中心C1、C2は、上端スリット105a及び下端スリット105bの反対面側に配される。一方、第1支持部材68c及び第2支持部材68gの下端(第1折り目部68b、第4折り目部68h)にも支持部スリット68sが形成されている。したがって、第1支持部材68c及び第2支持部材68gの回動中心C3は、支持部スリット68sの反対面側に配される。
【0062】
そして、係止用矩形板部105の回動中心C1と第1支持部材68c及び第2支持部材68gの回動中心C3とは、互いに一端固定部68a及び他端固定部68iの幅方向に所定間隔だけずれて設定されている。このように、上端スリット105a、下端スリット105b及び支持部スリット68sのスリット幅(開口幅)や開口角度と各回転中心C1〜C3の位置関係とにより、以下のように所定角度で第1支持部材68c及び第2支持部材68gが立ち上がって係止される。
【0063】
すなわち、上端スリット105a及び下端スリット105bは、第1支持部材68c及び第2支持部材68gを倒す方向では、図19に示すように、開口しているが、倒れた状態から第1支持部材68c及び第2支持部材68gを起こす方向では、閉口して第1支持部材68c及び第2支持部材68gが所定角度で傾斜して立ち上がった際に、図17に示すように、スリット幅が完全に閉じられてスリット面が係止し合うことで、それ以上第1支持部材68c及び第2支持部材68gが立ち上がらないようになっている。
【0064】
なお、第1支持部材68c、第2支持部材68g、一端固定部68a、他端固定部68i及び係止用矩形板部105は、ポリプロピレンで形成されており、上端スリット105a及び下端スリット105b等のスリットが形成された部分は、スリット部分を中心に回動や折り畳み動作を繰り返し行っても充分な柔軟性及び強度を備えている。
【0065】
また、支持長調整機構101は、図14に示すように、第1支持部材68c及び第2支持部材68gをそれぞれ上下に分割した上分割部材107A及び下分割部材107Bと、上分割部材107A及び下分割部材107Bの端部を互いに所定長さで重ね合わせて着脱可能に固定する固定ねじ108とで構成されている。上分割部材107A及び下分割部材107Bは、それぞれ互いに重ね合わせ可能な領域に複数のねじ止め用孔109が上下方向及び水平方向に所定間隔を空けて形成されている。すなわち、上分割部材107A及び下分割部材107Bの端部の重ね合わせ長さを調整するには、上下方向の任意のねじ止め用孔109を互いに合わせて固定ねじ108で固定することで、第1支持部材68c及び第2支持部材68gの長さを調整することができる。
【0066】
このように本実施形態の枕60では、付勢手段69の付勢力に抗して第1支持部材68c及び第2支持部材68gを所定の傾斜角度で係止するストッパ機構100を備えているので、付勢力によって第1支持部材68c及び第2支持部材68gが必要以上に立ち上がって所定の傾斜角度を超えて所望の枕高さ以上になることや逆方向に第1支持部材68c及び第2支持部材68gが倒れて壊れることを防ぐことができる。また、第1支持部材68c及び第2支持部材68gが必要以上に立ち上がると第1支持部材68c及び第2支持部材68gが倒れ難くなって枕高さが下がらなくなるため、所定の傾斜角度を超えないようにストッパ機構100で制限している。
また、第1支持部材68c及び第2支持部材68gの下端部から上端部までの長さを調整可能な支持長調整機構101を備えているので、第1支持部材68c及び第2支持部材68g自体の長さを変えて使用者に応じた枕高さに設定することができる。
【0067】
なお、図15に示すように、下部支持板2上に空いたスペース120等に、小型のラジオ機器、オーディオ再生機器、又はこれらに接続されるスピーカ、目覚まし時計、香り発生器等を上記動作に支障のないように取り付けても構わない。
また、蝶ナット104にコイルバネ61の他端が接続されているが、雄ねじ部材13に進退可能に螺着されコイルバネ61の他端が接続可能な部材なら他のものを使用しても構わない。例えば、雄ねじ部材13に進退可能に螺着されたコマ部材の側部に引っ掛け用のねじを固定し、この引っ掛け用ねじにコイルバネ61の他端を引っ掛けて接続しても構わない。
【0068】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態では、下部支持板2及び頭部支持板3が板で形成されているが、枠構造や格子構造によって略板状に形成されたものでも構わない。この場合、枕全体の軽量化が可能になる。
【0069】
また、第1実施形態において、コイルバネ11を他の位置に設置しても構わない。例えば、下部支持板2の一方の角部に2つのコイルバネ11を並べて設置し、ガイド部材13によってこれらコイルバネ11に一対のワイヤーYを導いても構わない。
さらに、第1実施形態において、ワイヤーYを挿通するチューブ部材14を有するガイド部材13を用いているが、他の構造を有するガイド部材を採用しても構わない。例えば、ワイヤーYをガイドする滑車を用いたガイド部材を用いても良い。
【0070】
また、第1及び第2実施形態において、コイルバネ11にワイヤーYを接続しているが、ワイヤーYの代わりに紐を用いても構わない。なお、繰り返しの使用での伸びが小さい金属線のワイヤーYの方が長期の使用に好適である。
また、ワイヤーYの一端を頭部支持板3に固定して頭部支持板3を介して第1支持部材8c及び第2支持部材8gを所定方向に付勢しているが、ワイヤーYの一端を直接第1支持部材8c及び第2支持部材8gに固定して所定方向に付勢しても構わない。
【0071】
上記各実施形態では、付勢部材又は付勢手段としてコイルバネ11、板状のゴム材31、ねじりバネ41及びスプリング丁番51を採用しているが、他の付勢部材又は付勢手段を用いても構わない。例えば、定荷重バネ、板バネやゴム紐等の弾性部材を付勢部材又は付勢手段として採用しても構わない。
また、頭部支持板3、23上にクッション部5が設置されるが、これに加えて第2支持部材8g、68gの外面にもクッション部を設置しても構わない。これにより、仰向け姿勢の際に第2支持部材8g、68gが倒れた状態で、第2支持部材8g、68g上面のクッション部上にも頭部Hを載せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る第1実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図2】第1実施形態の枕において、使用者が仰向け姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図3】第1実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す平面図である。
【図4】第1実施形態の枕において、使用者が仰向け姿勢の際の状態を示す平面図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図6】第2実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す平面図である。
【図7】本発明に係る第3実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図8】第3実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す平面図である。
【図9】第4実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図10】第4実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す平面図である。
【図11】第5実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図12】第5実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す背面図である。
【図13】第6実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図14】第6実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す背面図である。
【図15】第6実施形態の枕において、ストッパ機構を示す要部平面図である。
【図16】第6実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態における図15のA−A線矢視断面図である。
【図17】第6実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態における図15のB−B線矢視断面図である。
【図18】第6実施形態の枕において、使用者が仰向け姿勢の際の状態における図15のA−A線矢視断面図である。
【図19】第6実施形態の枕において、使用者が仰向け姿勢の際の状態における図15のB−B線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1、20、30、40、50、60…枕、2…下部支持板、3、23…頭部支持板、4…支持板支持機構、5…クッション部、8c、68c…第1支持部材、8g、68g…第2支持部材、9、29、39、69…付勢手段、11、61…コイルバネ(付勢部材)、13…ガイド部材、15、65…調整機構、31…ゴム材(付勢部材)、41…ねじりバネ(付勢手段)、51…スプリング丁番(付勢手段)、100…ストッパ機構、101…支持長調整機構、107A…上分割部材、107B…下分割部材、H…使用者の頭部、Y…ワイヤー
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝返りに伴う姿勢変化に対応して、快適な姿勢で安眠可能な枕に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、就寝時に使用者の頭部を支え負荷の少ない安定した姿勢で睡眠状態を得るために種々の枕が提案され使用されている。特に、睡眠時に寝返りを行うことで仰向け姿勢(仰臥)と横向き姿勢(横臥)とを交互に繰り返し姿勢を変化させることに対応して、その高さを変化させる枕が提案されている。例えば、特許文献1には、高さ調節部にかかる荷重に応じて高さ調節部に流体を出し入れして膨張・収縮させることで、高さ調整する枕が提案されている。この枕では、流体の流入・流出を制御するために、流体給入装置及び複数の弁や配管を備えている。
【0003】
また、特許文献2には、頭部の圧力を感知する圧力センサーと該圧力センサーの信号により頭部支持部を上下駆動する機構及び回路とを有した高さ可変式安眠枕が提案されている。この高さ可変式安眠枕では、寝返りにより姿勢変化があった際に生じる頭部による支持部分への圧力変動を圧力センサーで検知することで、圧力信号を回路で処理し駆動機構で頭部支持部を上下させる。
【0004】
さらに、特許文献3には、基台と頭載板との間に筒体による密閉室をつくると共に円錐台形状の定荷重負荷スプリングバネを設けた快眠枕が提案されている。この快眠枕では、仰向け姿勢の場合と横向き姿勢の場合とでかかる荷重の差によって密閉室内の空気を出し入れすると共に円錐台形状の定荷重負荷スプリングバネを伸縮させて高さの調整を行っている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−249088号公報(特許請求の範囲、図10、図12)
【特許文献2】特開平6−343540号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献3】実開平3−35772号公報(実用新案登録請求の範囲、第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
上記特許文献1に記載の枕は、流体を出し入れするために流体給入装置及び複数の弁や配管を装備する必要があると共に流体の流出を防ぐために密閉構造が必須であり、全体に構造が複雑化すると共に製作コストが大幅に増大してしまう不都合があった。また、この枕では、寝返りにより姿勢変化があっても、流体の出し入れに時間がかかり、ゆっくり高さが変化するため、姿勢変化の直後、しばらくの間は不安定で過負荷な姿勢状態となってしまう問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載の高さ可変式安眠枕は、圧力センサ、処理回路、機械的な上下駆動機構及び電源等を必要とするため、やはり構造の複雑化及びコストの増大化が著しく、一般に普及可能な価格で提供することが困難である。また、この高さ可変式安眠枕では、多数の構成部品を内蔵するためのスペースが内部に必要であり、枕が大型化すると共に、構成部品が邪魔になって頭部支持部を十分に低い位置に設定することができないという問題があった。
【0008】
さらに、上記特許文献3に記載の快眠枕でも、密閉室及び円錐台形状の定荷重負荷スプリングバネが基台と頭載板との間に設けられているために、これらが邪魔になり頭載板を十分に低くすることができず、適切な低位置に設定できない不都合があった。また、この快眠枕では、上記特許文献1と同様に流体の出し入れを行うため、高さ調整に時間がかかる問題があった。
また、上記各特許文献では、流体の出し入れに伴う音やモータ等の電源及び駆動機構の動作音が少なからず発生し、安眠を妨げる不都合もあった。
【0009】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、低コストで簡易な構成であると共に姿勢変化に応じて適切な高さ調整を素早くスムーズにかつ静かに行うことができる枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の枕は、下部支持板と、前記下部支持板に対して略平行状態に配されて使用者の頭部が載置される頭部支持板と、前記下部支持板上に設けられ前記略平行状態を維持して前記頭部支持板を上下動可能に支持する支持板支持機構と、を備え、前記支持板支持機構が、下端部が前記下部支持板に回動可能に連結され上端部が前記頭部支持板に回動可能に連結されていると共に前記下部支持板から前記頭部支持板に向けて傾斜して延在している互いに平行な複数の支持部材と、前記支持部材を前記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して直接又は他の部材を介して前記支持部材を付勢する付勢手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この枕では、支持部材を上記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して直接又は他の部材を介して支持部材を付勢する付勢手段を備えているので、付勢手段の付勢力を横向き姿勢の際にかかる荷重よりも大きく設定すると共に仰向け姿勢の際にかかる荷重よりも小さく設定することで、横向き姿勢では支持部材が倒れず頭部支持板が高い位置で維持されるが、仰向け姿勢に姿勢変化させると荷重増大によって支持部材が倒れ頭部支持板が低い位置となる。すなわち、傾斜した支持部材による頭部支持板の支持構造と所定の付勢力に設定した付勢手段による簡易な構成によって、仰向け姿勢の場合と横向き姿勢の場合との荷重差を利用して、素早くスムーズにかつ異音を発生させることなく頭部支持板の高さを自動的に変えることができる。特に、支持部材が倒れるという動作によるため、頭部支持板が中間的な高さで留まらず、最高位置から最低位置への移動又はその逆の移動を瞬時に素早くスムーズに行うことができる。また、電源や駆動装置等が不要であるため、軽量かつ低コストに作製することができる。
【0012】
また、本発明に係る枕は、前記付勢手段が付勢力の調整機構を備えていることが好ましい。すなわち、この枕では、付勢力の調整機構を有しているので、頭部の重量や体格等が異なる使用者に対応して付勢力を調整することで使用者毎の個別設定が可能になり、より精度の高い上下動作を得ることができる。
【0013】
また、本発明に係る枕は、前記付勢手段が、前記頭部支持板を前記頭部支持板に対する前記支持部材の傾斜角度よりも小さい傾斜角度で斜め下方に引っ張る付勢部材を有していることを特徴とする。すなわち、この枕では、付勢部材が、頭部支持板を頭部支持板に対する支持部材の傾斜角度よりも小さい傾斜角度で斜め下方に引っ張ることにより、支持部材を倒す荷重に対抗した付勢力を頭部支持板を介して加えることができる。
【0014】
さらに、本発明に係る枕は、前記付勢部材がコイルバネであることを特徴とする。すなわち、この枕では、コイルバネを付勢部材として用いるので、繰り返しの使用にも高い耐久性を有すると共に高い付勢力を得ることができる。
【0015】
また、本発明に係る枕は、前記付勢部材がゴム材であることを特徴とする。すなわち、この枕では、ゴム材を付勢部材として用いるので、安価であると共に、軽量な構成を得ることができる。
【0016】
また、本発明に係る枕は、前記付勢部材が前記下部支持板と前記頭部支持板との間の領域外に配されていることを特徴とする。すなわち、この枕では、付勢部材が下部支持板と頭部支持板との間の領域外に配されているので、支持部材が倒れて頭部支持板が最低位置まで下がった際に頭部支持板と下部支持板との間に付勢部材が挟まってしまうことがない。したがって、付勢部材が邪魔にならず、頭部支持板を十分低い位置まで移動させることができる。
【0017】
また、本発明に係る枕は、前記付勢手段が、前記支持部材と前記下部支持板又は前記頭部支持板とに両端部が固定されたねじりバネ又はスプリング丁番であることを特徴とする。すなわち、この枕では、支持部材と下部支持板又は頭部支持板とに直接ねじりバネ又はスプリング丁番を取り付けて支持部材を傾斜方向に倒す荷重に対抗して付勢することにより、簡易な構成で軽量かつ低コストな枕を実現することができる。
【0018】
また、本発明に係る枕は、前記付勢手段の付勢力に抗して前記支持部材を所定の傾斜角度で係止するストッパ機構を備えていることを特徴とする。すなわち、この枕では、付勢手段の付勢力に抗して支持部材を所定の傾斜角度で係止するストッパ機構を備えているので、付勢力によって支持部材が必要以上に立ち上がって所定の傾斜角度を超えて所望の枕高さ以上になることや逆方向に支持部材が倒れて壊れることを防ぐことができる。また、支持部材が必要以上に立ち上がると支持部材が倒れ難くなって枕高さが下がらなくなるため、所定の傾斜角度を超えないようにストッパ機構で制限している。
【0019】
また、本発明に係る枕は、前記支持部材の下端部から上端部までの長さを調整可能な支持長調整機構を備えていることを特徴とする。すなわち、この枕では、支持部材の下端部から上端部までの長さを調整可能な支持長調整機構を備えているので、支持部材自体の長さを変えて使用者に応じた枕高さに設定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る枕によれば、支持部材を上記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して直接又は頭部支持板及び下部支持板を介して支持部材を付勢する付勢手段を備えているので、簡易かつ低コストな構成で、素早くスムーズにかつ異音を発生させることなく仰向け姿勢と横向き姿勢とで頭部支持板の高さを自動的に変えることができる。したがって、睡眠時に寝返りを無意識に繰り返し行っても、仰向け姿勢と横向き姿勢とで自動的に頭部支持板の高さが素早くスムーズにかつ静かに調整されることにより、快適な睡眠を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る枕の第1実施形態を、図1から図4を参照しながら説明する。
【0022】
本実施形態の枕1は、図1及び図2に示すように、下部支持板2と、下部支持板2に対して略平行状態に配されて使用者の頭部Hが載置される頭部支持板3と、下部支持板2上に設けられ略平行状態を維持して頭部支持板3を上下動可能に支持する支持板支持機構4と、頭部支持板3上に設置されたクッション部5と、を備えている。なお、ここで、上記下部支持板2及び上記頭部支持板3において、一対の対向する長辺のうち使用者側となる方を一辺側とし、その反対側を他辺側とする。
【0023】
上記下部支持板2及び上記頭部支持板3は、いずれも長方形状の木板材又はプラスチック板材等で構成されている。
上記頭部支持板3は、その他辺側上面にクッション部5の位置決め用に当接用壁板部6が長辺方向に延在して固定されている。また、頭部支持板3は、その一辺側端部を覆うようにクッション材等の柔らかい材料で形成された緩衝部材7が取り付けられている。すなわち、頭部支持板3の一辺側の角部を緩衝部材7で覆うことにより、使用者の首部や肩部などに角部が当接した際に生じる圧迫感や違和感を和らげるようになっている。
【0024】
上記支持板支持機構4は、下端部が下部支持板2に回動可能に連結され上端部が頭部支持板3に回動可能に連結されていると共に下部支持板2から頭部支持板3に向けて傾斜して延在している互いに平行な第1支持部材8c及び第2支持部材8gと、第1支持部材8c及び第2支持部材8gを上記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して頭部支持板3を介して第1支持部材8c及び第2支持部材8gを付勢する付勢手段9と、を備えている。
【0025】
上記第1支持部材8c及び第2支持部材8gは、ポリプロピレン等の硬質プラスチック板等で構成された折り曲げ支持板10の一部として下部支持板2と頭部支持板3との間に配される。すなわち、折り曲げ支持板10は、下部支持板2上に固定された一端固定部8aと、柔軟な第1折り目部8bを介して一端固定部8aに回動可能に接続された第1支持部材8cと、柔軟な第2折り目部8dを介して第1支持部材8cに回動可能に接続され頭部支持板3の下面に固定された上部固定部8eと、柔軟な第3折り目部8fを介して上部固定部8eに回動可能に接続された第2支持部材8gと、柔軟な第4折り目部8hを介して第2支持部材8の下端に接続され下部支持板2上に固定された他端固定部8iと、で構成されている。なお、第1〜第4折り目部8b〜8hは、いずれも下部支持板2及び頭部支持板3の長辺と平行に形成されている。また、第1〜第4折り目部8b〜8hは、それぞれアンダーカットされた切れ目部が形成されて、柔軟に折り曲げ可能とされている。
【0026】
上記一端固定部8a、上部固定部8e及び他端固定部8iは、いずれも接着剤で接着固定されている。また、一端固定部8aは、さらに押さえ板18と下部支持板2とで挟持されて固定されている。上記押さえ板18は、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが傾斜方向と反対の方向に倒れることを防ぐストッパーとしても機能している。なお、上記一端固定部8a、上部固定部8e及び他端固定部8iの固定は、接着剤ではなく、ネジやボルト等による他の固定手段によって行っても構わない。
本実施形態の枕1では、一対の折り曲げ支持板10を互いに所定間隔を開けて長辺方向に並べて設置しており、2つの第1支持部材8c及び第2支持部材8gによって頭部支持板3が下部支持板2上に支持されている。
【0027】
上記付勢手段9は、頭部支持板3を頭部支持板3に対する第1支持部材8c及び第2支持部材8gの傾斜角度θ1よりも小さい傾斜角度θ2で斜め下方(図1中の矢印A方向)に引っ張る一対のワイヤーY及びコイルバネ(付勢部材)11を有している。
上記ワイヤーYは、頭部支持板3の一辺側下面に一端が取り付けられていると共に他端がコイルバネ11に取り付けられ上記斜め下方に向けて張設されている。また、ワイヤーYの一端側は、一対の折り曲げ支持板10の間を通すように配されていると共に、他端が押さえ板18に形成された貫通孔18aを介して外部に配されている。
【0028】
上記コイルバネ11は、図3及び図4に示すように、下部支持板2の他辺側の両端に互いに対向するように直線上に配された引っ張りバネである。すなわち、これらのコイルバネ11は、下部支持板2と頭部支持板3との間の領域外に配されている。なお、各コイルバネ11は、その一端が下部支持板2の角部近傍に固定された円弧状又は略リング状のバネ支持部材12に接続されている。
【0029】
また、付勢手段9は、一対のワイヤーYの他端側を曲げて対応するコイルバネ11に導くガイド部材13を備えている。すなわち、このガイド部材13は、一対の折り曲げ支持板10の間を通って押さえ板18の貫通孔18aから外部に出てくる一対のワイヤーYの方向をそれぞれ反対の方向に90度変えるように配された一対のチューブ部材14を内部に湾曲状態で固定している。したがって、一対のワイヤーYは、これらのチューブ部材14を挿通して方向転換し他端が対応するコイルバネ11の他端に接続されている。
また、コイルバネ11及びガイド部材13は、開閉可能なカバー部材19で覆われている。なお、図3及び図4においては、コイルバネ11等の配置を示すためにカバー部材19を取り外した状態で図示している。
【0030】
さらに、上記ワイヤーYには、コイルバネ11の付勢力(張力)を調整するための調整機構15が設けられている。この調整機構15は、ワイヤーYの長さ調整を行うものであり、ワイヤーYを短く設定するほど、コイルバネ11が引き延ばされてその付勢力(張力)を強く設定することができると共に初期(無荷重)及び仰向け姿勢時の頭部支持板3の高さ調整も可能である。なお、付勢手段9の付勢力(張力)は、横向き姿勢の際にかかる荷重よりも大きく設定すると共に仰向け姿勢の際にかかる荷重よりも小さく設定しておく。
このような構成により、コイルバネ11は、ガイド部材13及びワイヤーYを介して頭部支持板3を一辺側から他辺側へ斜め下方に引っ張る付勢力を加えるように設定されている。
【0031】
下部支持板2の下面4箇所、頭部支持板3の上面4箇所及び当接用壁板部6の側面2箇所には、それぞれ枕カバー取り付け用の面ファスナー16が接着されている。すなわち、これらの面ファスナー16に枕カバー17の面ファスナーを接着させることで、着脱可能に枕カバー17を枕1全体を巻いて覆うように取り付けることができる。なお、枕カバー17を、頭部支持板3の面ファスナー16を用いてクッション部5のみを覆うように取り付けても構わない。
上記クッション部5は、頭部支持板3上面の面ファスナー16に接着することで着脱可能に取り付けられる。このクッション部5は、多数のパイプ片を内蔵したものや成型クッション材又は低反発素材等で構成されたものである。
【0032】
次に、本実施形態の枕1における使用者の姿勢変化に伴う高さ調整動作について、図1から図4を参照して説明する。
【0033】
まず、使用者が横向き姿勢で寝ている場合、図1及び図3に示すように、使用者の頭部Hは肩部によって高い位置になっていると共に肩部が支えになって頭部支持板3にかかる荷重が少ない。このため、付勢手段9による付勢力(張力)が頭部支持板3にかかる荷重による第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒そうとする力を上回り、頭部支持板3の高い位置状態が維持される。
【0034】
次に、使用者が寝返りをして仰向け姿勢になった場合、図2及び図4に示すように、使用者の肩部による支持がなくなるため頭部支持板3にかかる頭部Hによる荷重が増大する。このため、頭部支持板3にかかる荷重による第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒そうとする力(傾斜角度θ1を小さくしようとする力)が付勢手段9による付勢力(傾斜角度θ1を大きくする方向に働く付勢力)を上回り、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れ、頭部支持板3が下部支持板2に近接した最低位置まで下がる。
【0035】
なお、さらに使用者が寝返りをして仰向け姿勢から横向き姿勢になった場合、上記の逆の動作が行われる。すなわち、頭部支持板3にかかる荷重が低下することにより、付勢手段9による付勢力が第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒そうとする力を上回り、再び第1支持部材8c及び第2支持部材8gを斜め状態の初期位置まで引き起こすことで、頭部支持板3を初期の最高位置に上げる。なお、通常、寝返りをうって仰向け姿勢から横向き姿勢とする時は、一旦頭部Hを少しだけ無意識のうちに上げ、姿勢を変える動作を行うので、頭部Hを上げた際の荷重の低下に伴って頭部支持板3が最高位置に移動する。
【0036】
このように本実施形態の枕1では、第1支持部材8c及び第2支持部材8gを上記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して頭部支持板3を介して第1支持部材8c及び第2支持部材8gを引っ張って付勢する付勢手段9を備えているので、横向き姿勢では第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れず頭部支持板3が高い位置となるが、仰向け姿勢に姿勢変化させると荷重増大によって第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れ頭部支持板3が低い位置となる。
【0037】
すなわち、傾斜した第1支持部材8c及び第2支持部材8gによる頭部支持板3の支持構造と所定の付勢力に設定した付勢手段9による簡易な構成によって、仰向け姿勢の場合と横向き姿勢の場合との荷重差を利用して、素早くスムーズにかつ異音を発生させることなく頭部支持板3の高さを自動的に変えることができる。特に、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れるという動作によるため、頭部支持板3が中間的な高さで留まらず、最高位置から最低位置への移動又はその逆の移動を瞬時に素早くスムーズに行うことができる。また、電源や駆動装置等が不要であるため、軽量かつ低コストに作製することができる。
【0038】
また、本実施形態の枕1は、付勢力の調整機構15を有しているので、頭部Hの重量や体格等が異なる使用者に対応して付勢力を調整することで使用者毎の個別設定が可能になり、より精度の高い上下動作を得ることができる。
さらに、コイルバネ11が、頭部支持板3を頭部支持板3に対する第1支持部材8c及び第2支持部材8gの傾斜角度θ1よりも小さい傾斜角度θ2で斜め下方に引っ張ることにより、第1支持部材8c及び第2支持部材8gに対し、第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒す荷重に対抗して付勢力を頭部支持板3を介して加えることができる。
【0039】
なお、コイルバネ11を付勢部材として用いるので、繰り返しの使用にも高い耐久性を有すると共に高い付勢力を得ることができる。
また、コイルバネ11が下部支持板2と頭部支持板3との間の領域外に配されているので、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れて頭部支持板3が最低位置まで下がった際に頭部支持板3と下部支持板2との間にコイルバネ11が挟まってしまうことがない。したがって、コイルバネ11が邪魔にならず、頭部支持板3を十分低い位置まで移動させることができる。
【0040】
また、ワイヤーYによって上記斜め下方に向けて頭部支持板3を引っ張ると共に、離れた別の位置に設置されたコイルバネ11にガイド部材13によってワイヤーYが導かれて接続されているので、コイルバネ11を上記付勢の方向にかかわらず任意に配置することができ、設計上の自由度が高くなって枕1全体の小型化等を図ることが可能になる。
【0041】
次に、本発明に係る枕の第2及び第3実施形態について、図5から図8を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。また、図5以降の図面において、クッション部5及び枕カバー17については、図示を省略している。
【0042】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、ワイヤーYが下部支持板2と頭部支持板3との間を通ると共にガイド部材13を介してコイルバネ11に連結されているのに対し、第2実施形態の枕20は、図5及び図6に示すように、付勢手段29として一対のワイヤーYが頭部支持板23の側方を通って直接コイルバネ11に接続されている点である。
【0043】
すなわち、第2実施形態の枕20では、頭部支持板23の一辺側に、長辺方向にそれぞれ突出した突出部23aが設けられていると共にこれらの突出部23aにワイヤー固定部材24が取り付けられている。
ワイヤーYは、ワイヤー固定部材24に一端が接続されていると共に、他端がコイルバネ11に接続されている。
なお、第2実施形態では、一端固定部8aが内側に折り返されて下部支持板2上に固定されている。
【0044】
このように第2実施形態の枕20では、ガイド部材13を介さずにワイヤーYとコイルバネ11とが頭部支持板23の両側で直線的に接続されているので、ワイヤーY及びコイルバネ11が頭部支持板23の上下移動の邪魔にならないと共に、部品点数及び部品コストを削減することができる。
【0045】
第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態ではワイヤーY及びコイルバネ11を用いた付勢手段29により所定の付勢力を得ているのに対し、第3実施形態の枕30では、図7及び図8に示すように、一対の板状のゴム材(付勢部材)31を用いた付勢手段39により所定の付勢力を得ている点である。
すなわち、第3実施形態の枕30は、第2支持部材8gの上端に一端が固定されていると共に上記斜め方向(図7中の矢印A方向)に張設された一対のゴム材31と、これらゴム材31の他端を第1支持部材8cの下端近傍で下部支持板2に固定するゴム固定部材32と、で付勢手段39が構成されている。
【0046】
上記ゴム固定部材32は、一端固定部8a上に配置され一対のゴム材31を挟持する一対の長尺板であり、ゴム材31を教示した状態でネジ33により下部支持板2上に固定されている。なお、ゴム固定部材32により固定するゴム材31の他端の位置を調整することで、ゴム材31の張力を調整して、第1支持部材8c及び第2支持部材8gに対する付勢力を調整することができる。
【0047】
また、第1支持部材8cには、張設されたゴム材31を挿通させる横長孔状の挿通孔8jが形成されている。
したがって、第3実施形態の枕1では、ゴム材31で直接的に第1支持部材8c及び第2支持部材8gに所定の付勢力を加えている。この枕30によれば、ゴム材31を付勢部材として用いるので、安価であると共に、軽量な構成を得ることができる。
【0048】
次に、本発明に係る枕の第4及び第5実施形態について、図9から図12を参照して以下に説明する。
【0049】
第4実施形態と第3実施形態との異なる点は、第3実施形態では、ゴム材31により第2支持部材8gを頭部支持板3に対する第2支持部材8gの傾斜角度θ1よりも小さい傾斜角度θ2で斜め下方に引っ張ることにより付勢しているのに対し、第4実施形態の枕40では、図9及び図10に示すように、第1支持部材8cと下部支持板2とに両端部が固定された一対のねじりバネ(付勢手段)41で、第1支持部材8cに対し、第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒す荷重に対抗して付勢力を加えている点である。
【0050】
第4実施形態では、下部支持板2上の他辺側の角部近傍にステンレス等の金属板42がそれぞれ接着剤で接着され、これらの金属板42上にそれぞれねじりバネ41の一端部41aが溶接されて固定されている。また、第4実施形態の第1支持部材8cは、下端が下部支持板2に固定されていないと共に、その両側が長手方向に突出して金具44が固定されている。そして、これら金具44を介してねじりバネ41の他端部41bが第1支持部材8cに固定されている。すなわち、ねじりバネ41の他端部41bは、第1支持部材8cと共に支持部材として機能する。
【0051】
上記ねじりバネ41は、初期又は横向き姿勢で頭部支持板3に荷重が加わっている状態では、第1支持部材8c及び他端部41bを傾斜方向に倒す荷重に対抗して第1支持部材8c及び他端部41bを傾斜状態のまま維持する付勢力を有している。また、ねじりバネ41は、仰向け姿勢で頭部支持板3に加わる第1支持部材8c及び他端部41bを倒そうとする荷重よりも付勢力を小さく設定している。したがって、横向き姿勢から仰向け姿勢に寝返りをした場合に、第1支持部材8c及び他端部41bを倒そうとする荷重がねじりバネ41の付勢力を上回り、第1支持部材8c、他端部41b及び第2支持部材8gが倒れて頭部支持部板3の高さが低くなる。なお、ねじりバネ41は、頭部支持板3の両側に配されているので、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れても頭部支持板3と下部支持板2とに挟まれることがない。
【0052】
第5実施形態と第4実施形態との異なる点は、第4実施形態では、ねじりバネ41により所定の付勢を行っているのに対し、第5実施形態の枕50では、図11及び図12に示すように、第1支持部材8c及び第2支持部材8gの下部と下部支持板2とに両端部の羽根部51aが固定された4つのスプリング丁番(付勢手段)51で所定の付勢を行っている点である。
【0053】
すなわち、第5実施形態では、第1支持部材8c及び第2支持部材8gの傾斜方向側の面にスプリング丁番51の一方の羽根部51aが固定されていると共に、傾斜した第1支持部材8c及び第2支持部材8gが対向する側の下部支持板2上面にスプリング丁番51の他方の羽根部51aが固定されている。なお、第5実施形態の第1支持部材8cは、下端が第1から第3実施形態と同様に下部支持板2に回動可能に固定されている。上記各スプリング丁番51には、それぞれバネ部材51bが組み込まれており、初期又は横向き姿勢で頭部支持板3に荷重が加わっている状態では、第1支持部材8cを傾斜方向に倒す荷重に対抗して第1支持部材8cを傾斜状態のまま維持する付勢力を有している。
【0054】
また、スプリング丁番51は、仰向け姿勢で頭部支持板3に加わる第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒そうとする荷重よりも付勢力を小さく設定している。したがって、横向き姿勢から仰向け姿勢に寝返りをした場合に、第1支持部材8c及び第2支持部材8gを倒そうとする荷重がスプリング丁番51の付勢力を上回り、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れて頭部支持板3の高さが低くなる。なお、スプリング丁番51は、平板状に形成されているので、第1支持部材8c及び第2支持部材8gが倒れても邪魔にならず頭部支持板3の低位置を維持することができる。
【0055】
このように第3実施形態及び第4実施形態では、第1支持部材8cと下部支持板2とに直接ねじりバネ41又はスプリング丁番51を取り付けて第1支持部材8cや第2支持部材8gを傾斜方向に倒す荷重に対抗して付勢させることにより、簡易な構成で軽量かつ低コストな枕40、50を実現することができる。
【0056】
次に、本発明に係る枕の第6実施形態について、図13から図19を参照して以下に説明する。
【0057】
第6実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、付勢手段29として一対のワイヤーYが頭部支持板23の側方を通って直接コイルバネ11に接続されているのに対し、第6実施形態の枕60では、図13から図15に示すように、付勢手段69として、一本のコイルバネ61が頭部支持板3と下部支持板2との間でこれらの長さ方向の中央部分に配されている点と、付勢手段69の付勢力に抗して第1支持部材68c及び第2支持部材68gを所定の傾斜角度で係止するストッパ機構100を備えている点である。また、第6実施形態では、第1支持部材68c及び第2支持部材68gの下端部から上端部までの長さを調整可能な支持長調整機構101を備えている点でも第2実施形態と異なっている。
【0058】
第6実施形態では、コイルバネ61の一端が第2支持部材68gの上端部近傍の頭部支持板3に接続され、他端が第1支持部材68cの下端部近傍に配された付勢力の調整機構65に接続されている。この調整機構65は、第1支持部材68cの中央下部に形成された矩形状挿通孔65aに挿通されていると共に第1支持部材68c上に回転可能に2つの支持金具102で支持された雄ねじ部材103と、2つの支持金具102間で雄ねじ部材103に進退可能に螺着されていると共にコイルバネ61の他端に連結された蝶ナット104と、雄ねじ部材103の先端に固定された緩み止め用ナット103aとを備えている。
【0059】
すなわち、この調整機構65は、雄ねじ部材103を回転させることで螺着された蝶ナット104が進退するので、コイルバネ61の他端の位置を調整可能であり、コイルバネ61の伸縮長さ及びこれによる付勢力を調整することができる。
【0060】
また、上記ストッパ機構100は、第1支持部材68c及び第2支持部材68gのそれぞれに左右一対設けられた係止用矩形板部105を有している。この係止用矩形板部105は、図15から図17に示すように、第1支持部材68c及び第2支持部材68gに一端固定部68a及び他端固定部68iまで延在して形成した矩形孔部106に設けられている。すなわち、係止用矩形板部105の上端部及び下端部は、それぞれ矩形孔部106の上端部及び下端部に接続されている。
【0061】
この係止用矩形板部105は、図16から図19に示すように、その上端部の上面側に上端スリット105aが形成されていると共に、下端部の上面側に下端スリット105bが形成されている。したがって、係止用矩形板部105の回動中心C1、C2は、上端スリット105a及び下端スリット105bの反対面側に配される。一方、第1支持部材68c及び第2支持部材68gの下端(第1折り目部68b、第4折り目部68h)にも支持部スリット68sが形成されている。したがって、第1支持部材68c及び第2支持部材68gの回動中心C3は、支持部スリット68sの反対面側に配される。
【0062】
そして、係止用矩形板部105の回動中心C1と第1支持部材68c及び第2支持部材68gの回動中心C3とは、互いに一端固定部68a及び他端固定部68iの幅方向に所定間隔だけずれて設定されている。このように、上端スリット105a、下端スリット105b及び支持部スリット68sのスリット幅(開口幅)や開口角度と各回転中心C1〜C3の位置関係とにより、以下のように所定角度で第1支持部材68c及び第2支持部材68gが立ち上がって係止される。
【0063】
すなわち、上端スリット105a及び下端スリット105bは、第1支持部材68c及び第2支持部材68gを倒す方向では、図19に示すように、開口しているが、倒れた状態から第1支持部材68c及び第2支持部材68gを起こす方向では、閉口して第1支持部材68c及び第2支持部材68gが所定角度で傾斜して立ち上がった際に、図17に示すように、スリット幅が完全に閉じられてスリット面が係止し合うことで、それ以上第1支持部材68c及び第2支持部材68gが立ち上がらないようになっている。
【0064】
なお、第1支持部材68c、第2支持部材68g、一端固定部68a、他端固定部68i及び係止用矩形板部105は、ポリプロピレンで形成されており、上端スリット105a及び下端スリット105b等のスリットが形成された部分は、スリット部分を中心に回動や折り畳み動作を繰り返し行っても充分な柔軟性及び強度を備えている。
【0065】
また、支持長調整機構101は、図14に示すように、第1支持部材68c及び第2支持部材68gをそれぞれ上下に分割した上分割部材107A及び下分割部材107Bと、上分割部材107A及び下分割部材107Bの端部を互いに所定長さで重ね合わせて着脱可能に固定する固定ねじ108とで構成されている。上分割部材107A及び下分割部材107Bは、それぞれ互いに重ね合わせ可能な領域に複数のねじ止め用孔109が上下方向及び水平方向に所定間隔を空けて形成されている。すなわち、上分割部材107A及び下分割部材107Bの端部の重ね合わせ長さを調整するには、上下方向の任意のねじ止め用孔109を互いに合わせて固定ねじ108で固定することで、第1支持部材68c及び第2支持部材68gの長さを調整することができる。
【0066】
このように本実施形態の枕60では、付勢手段69の付勢力に抗して第1支持部材68c及び第2支持部材68gを所定の傾斜角度で係止するストッパ機構100を備えているので、付勢力によって第1支持部材68c及び第2支持部材68gが必要以上に立ち上がって所定の傾斜角度を超えて所望の枕高さ以上になることや逆方向に第1支持部材68c及び第2支持部材68gが倒れて壊れることを防ぐことができる。また、第1支持部材68c及び第2支持部材68gが必要以上に立ち上がると第1支持部材68c及び第2支持部材68gが倒れ難くなって枕高さが下がらなくなるため、所定の傾斜角度を超えないようにストッパ機構100で制限している。
また、第1支持部材68c及び第2支持部材68gの下端部から上端部までの長さを調整可能な支持長調整機構101を備えているので、第1支持部材68c及び第2支持部材68g自体の長さを変えて使用者に応じた枕高さに設定することができる。
【0067】
なお、図15に示すように、下部支持板2上に空いたスペース120等に、小型のラジオ機器、オーディオ再生機器、又はこれらに接続されるスピーカ、目覚まし時計、香り発生器等を上記動作に支障のないように取り付けても構わない。
また、蝶ナット104にコイルバネ61の他端が接続されているが、雄ねじ部材13に進退可能に螺着されコイルバネ61の他端が接続可能な部材なら他のものを使用しても構わない。例えば、雄ねじ部材13に進退可能に螺着されたコマ部材の側部に引っ掛け用のねじを固定し、この引っ掛け用ねじにコイルバネ61の他端を引っ掛けて接続しても構わない。
【0068】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記各実施形態では、下部支持板2及び頭部支持板3が板で形成されているが、枠構造や格子構造によって略板状に形成されたものでも構わない。この場合、枕全体の軽量化が可能になる。
【0069】
また、第1実施形態において、コイルバネ11を他の位置に設置しても構わない。例えば、下部支持板2の一方の角部に2つのコイルバネ11を並べて設置し、ガイド部材13によってこれらコイルバネ11に一対のワイヤーYを導いても構わない。
さらに、第1実施形態において、ワイヤーYを挿通するチューブ部材14を有するガイド部材13を用いているが、他の構造を有するガイド部材を採用しても構わない。例えば、ワイヤーYをガイドする滑車を用いたガイド部材を用いても良い。
【0070】
また、第1及び第2実施形態において、コイルバネ11にワイヤーYを接続しているが、ワイヤーYの代わりに紐を用いても構わない。なお、繰り返しの使用での伸びが小さい金属線のワイヤーYの方が長期の使用に好適である。
また、ワイヤーYの一端を頭部支持板3に固定して頭部支持板3を介して第1支持部材8c及び第2支持部材8gを所定方向に付勢しているが、ワイヤーYの一端を直接第1支持部材8c及び第2支持部材8gに固定して所定方向に付勢しても構わない。
【0071】
上記各実施形態では、付勢部材又は付勢手段としてコイルバネ11、板状のゴム材31、ねじりバネ41及びスプリング丁番51を採用しているが、他の付勢部材又は付勢手段を用いても構わない。例えば、定荷重バネ、板バネやゴム紐等の弾性部材を付勢部材又は付勢手段として採用しても構わない。
また、頭部支持板3、23上にクッション部5が設置されるが、これに加えて第2支持部材8g、68gの外面にもクッション部を設置しても構わない。これにより、仰向け姿勢の際に第2支持部材8g、68gが倒れた状態で、第2支持部材8g、68g上面のクッション部上にも頭部Hを載せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る第1実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図2】第1実施形態の枕において、使用者が仰向け姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図3】第1実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す平面図である。
【図4】第1実施形態の枕において、使用者が仰向け姿勢の際の状態を示す平面図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図6】第2実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す平面図である。
【図7】本発明に係る第3実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図8】第3実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す平面図である。
【図9】第4実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図10】第4実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す平面図である。
【図11】第5実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図12】第5実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す背面図である。
【図13】第6実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す側面図である。
【図14】第6実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態を示す背面図である。
【図15】第6実施形態の枕において、ストッパ機構を示す要部平面図である。
【図16】第6実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態における図15のA−A線矢視断面図である。
【図17】第6実施形態の枕において、使用者が横向き姿勢の際の状態における図15のB−B線矢視断面図である。
【図18】第6実施形態の枕において、使用者が仰向け姿勢の際の状態における図15のA−A線矢視断面図である。
【図19】第6実施形態の枕において、使用者が仰向け姿勢の際の状態における図15のB−B線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1、20、30、40、50、60…枕、2…下部支持板、3、23…頭部支持板、4…支持板支持機構、5…クッション部、8c、68c…第1支持部材、8g、68g…第2支持部材、9、29、39、69…付勢手段、11、61…コイルバネ(付勢部材)、13…ガイド部材、15、65…調整機構、31…ゴム材(付勢部材)、41…ねじりバネ(付勢手段)、51…スプリング丁番(付勢手段)、100…ストッパ機構、101…支持長調整機構、107A…上分割部材、107B…下分割部材、H…使用者の頭部、Y…ワイヤー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部支持板と、
前記下部支持板に対して略平行状態に配されて使用者の頭部が載置される頭部支持板と、
前記下部支持板上に設けられ前記略平行状態を維持して前記頭部支持板を上下動可能に支持する支持板支持機構と、を備え、
前記支持板支持機構が、下端部が前記下部支持板に回動可能に連結され上端部が前記頭部支持板に回動可能に連結されていると共に前記下部支持板から前記頭部支持板に向けて傾斜して延在している互いに平行な複数の支持部材と、
前記支持部材を前記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して直接又は他の部材を介して前記支持部材を付勢する付勢手段と、を備えていることを特徴とする枕。
【請求項2】
請求項1に記載の枕において、
前記付勢手段が、付勢力の調整機構を備えていることを特徴とする枕。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の枕において、
前記付勢手段が、前記頭部支持板を前記頭部支持板に対する前記支持部材の傾斜角度よりも小さい傾斜角度で斜め下方に引っ張る付勢部材を有していることを特徴とする枕。
【請求項4】
請求項3に記載の枕において、
前記付勢部材が、コイルバネであることを特徴とする枕。
【請求項5】
請求項3に記載の枕において、
前記付勢部材が、ゴム材であることを特徴とする枕。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか一項に記載の枕において、
前記付勢部材が、前記下部支持板と前記頭部支持板との間の領域外に配されていることを特徴とする枕。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の枕において、
前記付勢手段が、前記支持部材と前記下部支持板又は前記頭部支持板とに両端部が固定されたねじりバネ又はスプリング丁番であることを特徴とする枕。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の枕において、
前記付勢手段の付勢力に抗して前記支持部材を所定の傾斜角度で係止するストッパ機構を備えていることを特徴とする枕。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の枕において、
前記支持部材の下端部から上端部までの長さを調整可能な支持長調整機構を備えていることを特徴とする枕。
【請求項1】
下部支持板と、
前記下部支持板に対して略平行状態に配されて使用者の頭部が載置される頭部支持板と、
前記下部支持板上に設けられ前記略平行状態を維持して前記頭部支持板を上下動可能に支持する支持板支持機構と、を備え、
前記支持板支持機構が、下端部が前記下部支持板に回動可能に連結され上端部が前記頭部支持板に回動可能に連結されていると共に前記下部支持板から前記頭部支持板に向けて傾斜して延在している互いに平行な複数の支持部材と、
前記支持部材を前記傾斜した方向に倒す荷重に対抗して直接又は他の部材を介して前記支持部材を付勢する付勢手段と、を備えていることを特徴とする枕。
【請求項2】
請求項1に記載の枕において、
前記付勢手段が、付勢力の調整機構を備えていることを特徴とする枕。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の枕において、
前記付勢手段が、前記頭部支持板を前記頭部支持板に対する前記支持部材の傾斜角度よりも小さい傾斜角度で斜め下方に引っ張る付勢部材を有していることを特徴とする枕。
【請求項4】
請求項3に記載の枕において、
前記付勢部材が、コイルバネであることを特徴とする枕。
【請求項5】
請求項3に記載の枕において、
前記付勢部材が、ゴム材であることを特徴とする枕。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか一項に記載の枕において、
前記付勢部材が、前記下部支持板と前記頭部支持板との間の領域外に配されていることを特徴とする枕。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の枕において、
前記付勢手段が、前記支持部材と前記下部支持板又は前記頭部支持板とに両端部が固定されたねじりバネ又はスプリング丁番であることを特徴とする枕。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の枕において、
前記付勢手段の付勢力に抗して前記支持部材を所定の傾斜角度で係止するストッパ機構を備えていることを特徴とする枕。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の枕において、
前記支持部材の下端部から上端部までの長さを調整可能な支持長調整機構を備えていることを特徴とする枕。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−98153(P2007−98153A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334216(P2006−334216)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【分割の表示】特願2006−180496(P2006−180496)の分割
【原出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(305036506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【分割の表示】特願2006−180496(P2006−180496)の分割
【原出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(305036506)
【Fターム(参考)】
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