説明

【課題】使用者に不安感を与えることなく使用者に対する整体効果を発揮することができる枕を提供する。
【解決手段】枕1は高反発性素材で形成された板体からなり、後頭部載置部7と頭頂側端部8と頚部側端部10とを有する。後頭部載置部7は枕1の一方の表面により構成されており、実質的に平面状である。頭頂側端部8は後頭部載置部7の一方の端部であって、枕1の使用時における頭頂側の端部である。頚部側端部10は後頭部載置部7の他方の端部であって、枕1の使用時における頚部側の端部である。枕1を使用時の状態にすると、後頭部載置部7が頚部側端部10から頭頂側端部8に向かって低くなる傾斜をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は枕に関し、さらに詳細には、使用者に対する整体効果を発揮することができる枕に関する。
【背景技術】
【0002】
枕は睡眠の質に大きな影響を与える用具であり、その大きさ、形状、材質等について種々の工夫が行われている。一般的な枕は、そば殻等の小片を布製の袋に詰めたものであるが、最近では低反発性素材を用いた低反発枕が好んで用いられている。低反発枕によれば、就寝時に使用すると後頭部が大きく沈み、その結果、枕が後頭部を包み込むような状態となり、快適感があるとされる。ここで「低反発性素材」とは、反発弾性率(JIS K 6400−3)が概ね15%以下の柔らかい素材を指す。
【0003】
一方、枕は健康用具としても注目されている。例えば、「硬枕」と称する半円柱状の枕が知られている。硬枕は頚部を支持するものであり、就寝時に使用することで、頚椎全体が伸ばされる状態となり矯正される(特許文献1)。また、肩パットを左右に配した枕が、肩こりと不眠防止に効果がある枕として提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2005−185690号公報
【特許文献2】特開2000−83783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、硬枕は頚部のみを支持し後頭部を支持するものではないので、使用時に不安感がある。また、低反発枕は快適感があるとされるが、硬枕のような整体効果は期待できない。むしろ、後頭部が沈むことで就寝時に姿勢が不自然になるおそれがあり、健康用具としての枕としては不適である。
本発明の目的は、使用者に不安感を与えることなく使用者に対する整体効果を発揮することができる枕を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、高反発性素材で形成され、後頭部載置部と、後頭部載置部の一方の端部であって使用時における頭頂側に位置する頭頂側端部と、後頭部載置部の他方の端部であって使用時における頚部側に位置する頚部側端部とを有し、前記後頭部載置部は使用時において前記頚部側端部から前記頭部側端部に向かって低くなる傾斜をなしていることを特徴とする枕である。
【0006】
本発明の枕は高反発性素材で形成されたものであり、後頭部載置部を有している。そして、後頭部載置部は使用時において後頭部載置部が頭頂側から頚部側に向かって低くなる傾斜をなしている。本発明の枕は後頭部載置部を有するので、硬枕等の頚部のみを支持する枕に比べて快適である。さらに、後頭部が支持されないことに起因する不安感もない。また、本発明の枕は後頭部載置部が上記のような傾斜をなしているので、使用時において顎が上がる。その結果、整体効果を発揮すると共に呼吸が容易となり、猫背等の骨の不具合に加え、無呼吸症候群にも効果がある。
【0007】
さらに本発明の枕は、高反発性素材で形成されている。そのため、使用時において後頭部が不必要に沈むことがなく、姿勢が不自然になることがない。ここで「高反発性素材」とは、JIS K 6253のタイプAデュロメータで測定された硬度(ショアA)が55以上の素材をいうものとする。なお、自動車用の一般的なタイヤの当該硬度は55〜65程度であるので、本発明の枕は自動車用のタイヤと同等以上の硬さを有するといえる。また高反発性素材には、指で押すと僅かに凹むような弾性体からなる圧縮性素材と、指で押してもほとんど変形しない硬質の非圧縮性素材の両方が含まれる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、板体からなり、当該板体の一方の表面により前記後頭部載置部が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の枕である。
【0009】
本発明の枕は板体からなるので、その構造が簡単である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記後頭部載置部は、実質的に平面状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の枕である。
【0011】
本発明の枕においては、後頭部載置部が実質的に平面状であるので、後頭部を載せやすい。
【0012】
前記高反発性素材が合成樹脂である構成が推奨される(請求項4)。
【0013】
前記高反発性素材が木材、石材または金属である構成も推奨される(請求項5)。
【0014】
請求項6に記載の発明は、前記頚部側端部の高さは、15mm以上かつ40mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の枕である。
【0015】
一般的な枕においては、その高さが50mm以上あるのが通常である。しかし、本発明の枕においては、その高さが15mm以上かつ40mm以下であり、一般的な枕よりも低い。かかる構成により、適度に背筋が伸び、人体への負担も少ない。
【0016】
請求項7に記載の発明は、前記後頭部載置部の傾斜角度は、2°以上かつ7°以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の枕である。
【0017】
本発明の枕においては、後頭部載置部の傾斜角度が2°以上かつ7°以下であり、傾斜が緩やかである。かかる構成により、適度に背筋が伸び、使用者への負担も少ない。
【0018】
請求項8に記載の発明は、前記頚部側端部及び/又は前記頭部側端部は、円弧状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の枕である。
【0019】
かかる構成により、使用時の安心感がさらに高く、視覚的にも美しい枕が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の枕には高反発性素材で形成されているので、使用時において後頭部が不必要に沈むことがなく、より快適である。さらに、後頭部載置部を有するので、頚部のみを支持する枕に比べて快適であり、後頭部が支持されないことに起因する不安感もない。さらに、本発明の枕の使用時において使用者の顎が上がるので、整体効果を発揮すると共に呼吸が容易となり、猫背等の骨の不具合に加え、無呼吸症候群にも効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、詳しく説明する。図1は本発明の第一実施形態に係る枕の斜視図である。図2は図1の枕の正面図である。図3は図1の枕の平面図である。図4は図1の枕の右側面図である。図5は図2のA−A断面図である。図6は図1の枕の使用方法を示す説明図である。
【0022】
図1〜5に示す様に、本発明の第一実施形態に係る枕1は板体からなり、全体が扇形のような滑らかな形状を有している。枕1は正面壁2、背面壁3、及び左右の側面壁5,6を有する。正面壁2は使用時において頚部側に位置し、背面壁3は使用時において頭頂側に位置する。
【0023】
さらに枕1は、後頭部載置部7と頭頂側端部8と頚部側端部10とを有する。後頭部載置部7は枕1の一方の表面により構成されており、実質的に平面状である。図3に示す様に、後頭部載置部7の幅Wは420mm程度、奥行きDは220mm程度である。
【0024】
頭頂側端部8は後頭部載置部7の一方の端部であって、枕1の使用時における頭頂側の端部である。頭頂側端部8は背面壁3と後頭部載置部7との境界に相当する。一方、頚部側端部10は後頭部載置部7の他方の端部であって、枕1の使用時における頚部側の端部である。頚部側端部10は正面壁2と後頭部載置部7との境界に相当する。頭頂側端部8と頚部側端部10はいずれも円弧状である。
【0025】
頭頂側端部8と頚部側端部10を含めて、後頭部載置部7の周囲の角は丸く滑らかに形成されている。
【0026】
枕1は高反発性素材で形成されている。高反発性素材の例としては、合成樹脂、木材、石材、金属などが挙げられる。合成樹脂の具体例としては、ポリエステル、ポリウレタン、塩化ビニール(PVC)、ポリカーボネート(PC)、エポキシガラス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド(PI)、シリコーン樹脂、ベークライト、フェノール樹脂(PF)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリル樹脂、ABS樹脂、などが挙げられる。また、高反発性であれば、ソリッドと発泡体のいずれの成形品であってもよい。例えば、発泡体としてポリウレタン発泡体を使用することができる。
【0027】
木材の具体例としては、竹(孟宗竹など)、ひのき、桐、ヤシの実、などが挙げられる。さらに、合板や多孔合板を使用することができる。さらに、木材に類する素材として、木炭を使用することができる。
【0028】
石材の具体例としては、天然石、大理石ボール、セラミックボール、翡翠玉石、などが挙げられる。金属の具体例としては、ステンレススチール、アルミニウム、ゲルマニウム、などが挙げられる。
【0029】
図4,5に示す様に、枕1を床面11上に置いて使用時の状態にすると、後頭部載置部7が頚部側端部10から頭頂側端部8に向かって低くなる傾斜をなす。頚部側端部10の床面11からの高さH1は約18mm、頭頂側端部8の床面11からの高さH2は約8mmである。ここで、一般的な枕の高さは50mm以上あるので、本実施形態の枕1の高さはかなり低い。また、床面11に対する後頭部載置部7の傾斜角度θは2°〜3°程度であり、その傾斜は緩やかである。
【0030】
枕1は図6に示す方法で使用され、使用者15の後頭部が後頭部載置部7に支持され、頚部が頚部側端部10に支持される。ここで、枕1の後頭部載置部7は頚部側端部10から頭頂側端部8に向かって低くなる傾斜をなしているので、使用者の顎が上がる状態となる。その結果、適度な整体効果を発揮すると共に呼吸が容易となり、猫背等の骨の不具合に加え、無呼吸症候群にも効果がある。また、枕1は高反発性素材で形成されているので、後頭部によって後頭部載置部7が押されても後頭部が深く沈むことはない。
【0031】
なお、図1〜6では後頭部載置部7の傾斜の様子を分かりやすくするために、一部のサイズが誇張して描かれている。図7以降についても同様である。
【0032】
本実施形態の枕1の後頭部載置部7のサイズと形状は図1〜5に示すものであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、後頭部載置部7のサイズや形状は後頭部が確実に載置できるものであればよい。また本実施形態の枕1では、頚部側端部10の高さH1が約18mm、後頭部載置部7の傾斜角度θが2°〜3°程度であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、H1とθの値は使用者の身長や体格等に応じて適宜選択できる。例えば、身長や体格が大きい使用者用にはH1を30〜40mm程度まで大きく設定することができる。25mm程度の値に設定してもよい。またH1を大きくするとともにθを5°〜7°程度に大きく設定することができる。
【0033】
また、H1の高さによって、枕1を形成する素材を変えてもよい。例えば、H1が20mm以下の低いものである場合には、高反発性素材として硬質の非圧縮性の素材を採用することができる。一方、H1が30mm以上の高いものである場合には、高反発性素材として弾性体からなる圧縮性の素材を採用することができる。
【0034】
また図4,5に示すように、本実施形態の枕1においては裏面(床接触面)の周囲の角を残しているが、後頭部載置部7の周囲と同様に角を丸く滑らかに形成してもよい。
【0035】
本実施形態の枕1においては、枕を板体の裏面全体で支持しているが、2点で支持する実施形態も可能である。図7は、本発明の第二実施形態に係る枕の斜視図である。図7に示す枕21は、図1〜5に示す枕1と同様の扇形のような滑らかな形状を有している。そして、枕21は枕本体25と突起部26からなる。枕本体25は一様の厚みを有する板体であり、その一方の面により後頭部載置部27が構成されている。枕21の平面視は枕1の平面視(図3)と同じであり、後頭部載置部27の使用時における頭頂側には頭頂側端部28、頚部側には頚部側端部30が位置する。枕21の使用時において、後頭部載置部27は頚部側端部30から頭頂側端部28に向かって低くなる傾斜をなす。
【0036】
突起部26は頚部側端部30から床方向に突出するように設けられている。枕21の使用時において、突起部26は枕本体25の一端を支持することとなる。そして、枕本体25の裏面は床面から浮いた状態となり、頭頂側端部28の裏側で枕本体25の他端を支持することとなる。なお、本実施形態の枕21では突起部26が枕本体25と一体に形成されているが、板体の枕本体25に別の部材を貼り合せることにより突起部26を形成させてもよい。
【0037】
本実施形態の枕21における頚部側端部30の高さH1、頭頂側端部28の高さH2、および後頭部載置部27の傾斜角度θは、図1〜6に示す枕1のものと同じである。また、本実施形態の枕21の使用方法は、図6に示す枕1の使用方法と同じである。
【0038】
上記した実施形態では、後頭部載置部の形状が扇形のような複雑な形状であるが、長方形等の簡単な形状の実施形態も可能である。図8は本発明の第三実施形態に係る枕の斜視図である。本実施形態の枕31は扇形のような複雑な形状ではなく、長方形からなる簡単な形状を有する。枕31は板体からなり、板体の一方の表面から構成される後頭部載置部37を有し、後頭部載置部37の両端には頭頂側端部38と頚部側端部40がある。本実施形態の枕31における頚部側端部40の高さH1、頭頂側端部38の高さH2、および後頭部載置部37の傾斜角度θは、図1〜6に示す枕1のものと同じである。また、本実施形態の枕31の使用方法は、図6に示す枕1の使用方法と同じである。
【0039】
上記した実施形態においては、枕が板体からなり、かつ後頭部載置部が実質的に平面状であるが、本発明においては他の構成も採用可能である。図9は本発明の第四実施形態に係る枕の斜視図である。図9に示す枕51は、半円筒状に切断された4本の竹材をそれらの直径の大きさ順に並べて配置することにより形成されている。その結果、後頭部載置部57は4本の竹材の表面により構成され、複数の曲面と溝を有する形状となっている。頚部側端部60は直径が一番大きい竹材により構成され、後頭部載置部57は直径が一番小さい竹材により構成されている。その結果、後頭部載置部57は頚部側端部60から頭頂側端部58に向かって低くなる傾斜をなしている。
【0040】
第四実施形態の枕51は半分に割った竹材で構成されているが、円筒状の竹材をそのまま用いて構成することもできる。すなわち、直径が順次異なる竹材を複数準備し、これらを直径順に並べて配置することにより、頚部側端部から頭頂側端部に向かって低くなる傾斜をなす後頭部載置部を形成することができる。また第四実施形態の枕51は竹で構成されているが、竹の代わりに、ステンレススチール製、アルミニウム製、ポリプロピレン製等のパイプ部材を用いても同様の枕を構成することができる。
【0041】
その他の実施形態としては、高反発性素材からなる板状物の表面に任意の素材からなる被覆物を設けた板体をもって本発明の枕を構成することもできる。当該被覆物の例としては、天然皮革、合成皮革、綿、羽毛、ウール、などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第一実施形態に係る枕の斜視図である。
【図2】図1の枕の正面図である。
【図3】図1の枕の平面図である。
【図4】図1の枕の右側面図である。
【図5】図2のA−A断面図である。
【図6】図1の枕の使用方法を示す説明図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る枕の斜視図である。
【図8】本発明の第三実施形態に係る枕の斜視図である。
【図9】本発明の第四実施形態に係る枕の斜視図である
【符号の説明】
【0043】
1 枕
7 後頭部載置部
8 頭頂側端部
10 頚部側端部
21 枕
27 後頭部載置部
28 頭頂側端部
30 頚部側端部
31 枕
37 後頭部載置部
38 頭頂側端部
40 頚部側端部
51 枕
57 後頭部載置部
58 頭頂側端部
60 頚部側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高反発性素材で形成され、後頭部載置部と、後頭部載置部の一方の端部であって使用時における頭頂側に位置する頭頂側端部と、後頭部載置部の他方の端部であって使用時における頚部側に位置する頚部側端部とを有し、前記後頭部載置部は使用時において前記頚部側端部から前記頭部側端部に向かって低くなる傾斜をなしていることを特徴とする枕。
【請求項2】
板体からなり、当該板体の一方の表面により前記後頭部載置部が構成されていることを特徴とする請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記後頭部載置部は、実質的に平面状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の枕。
【請求項4】
前記高反発性素材は、合成樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の枕。
【請求項5】
前記高反発性素材は、木材、石材、または金属であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の枕。
【請求項6】
前記頚部側端部の高さは、15mm以上かつ40mm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の枕。
【請求項7】
前記後頭部載置部の傾斜角度は、2°以上かつ7°以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の枕。
【請求項8】
前記頚部側端部及び/又は前記頭部側端部は、円弧状であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の枕。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−110062(P2008−110062A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−294828(P2006−294828)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(506365326)
【Fターム(参考)】