説明

林下山参と栽培人参の微量化学鑑別方法

【課題】 一種の林下人参と栽培人参の微量化学鑑別方法を提供する。
【解決手段】 まず、サンプル人参の中のボラタイルオイル成分を抽出し、GC−MS分析を行い、サンプルの指紋図譜を得て、その中から8〜9のピークを選び相似度計算を行い、計算値と標準相似度の値とを比較して、サンプルが林下人参であるかまたは栽培人参であるかを識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は漢方薬技術分野に属して、具体的には林下山参(Woods grown Ginseng)或いは栽培人参の微量化学鑑別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人参Panax ginseng C.A.Mey.は、五加科多年生植物であり、その乾燥した根は漢方薬になることができる。
【0003】
漢方薬材料商品の市場では、人参は野生人参、林下山参、栽培人参(園参とも言う)に分けられているが、植物学では三者は同一の種源である。
【0004】
「野生人参」は、「野山参」とも言われ、山奥の密林で自然的に生まれ、天然的な気候条件、土壌、勾配、森林密度、水分及び自然の随伴生長植物などの環境で生きて、いかなる人為的要素の妨害もなく、一定の生長年限を経て生きてきた人参は、国家の珍しい絶滅危惧植物である。『中国白書』の第一集では、野生人参を国家の一類保護物種にランクして、通常は商品として採集し流通することは許されていない。
【0005】
「林下山参」は、「林下人参」又は「山参」とも言われ、破壊されていない自然森林生態環境条件で、人工的に山奥に播種し、野生状態で自然に生きてきたものである。生長期間は通常15−20年以上で、「種子海」人参とも言われる。このように天然の広葉林と針広葉混林の林下の肥沃な土壌及び温度、光、水資源を利用して、種を播種し人参を育てることは、山参の野生環境を模擬する半野生栽培方式であり、野生人参の品質と接近する人参を育てる可能性がある。野生人参が日増しに乏しくなって、絶滅危惧になる状況では、このような野生栽培を模倣する林下山参は、国内外の人参市場で一致した好評を受けられている。
【0006】
「栽培人参」は、「園参」とも言われ、樹林が伐採された林間の適宜な山地で、人工的に栽培され、5−6年に育てた後に採集する人参である。
【0007】
「林下人参」と「栽培人参」(「園参」)はすべて『中華人民共和国薬典』(2005年版、第一部)の中に収録されている。2006年5月24日、中華人民共和国薬典委員会は、原の『中華人民共和国薬典』(2005年版、第一部)の中の「林下人参」を「林下山参」に改訂した。
【0008】
人参は、その生長年限と生長環境により、内在の有効的な活性物質が異なる。疾病の予防と治療及び医療保健の中では、野生人参と林下人参(林下山参)の品質と治療効果が著しく栽培人参(園参)より優れている。しかし、長期にわたり、人参の真偽及び優劣の鑑別には、主として人参の外見性状特徴と人参の組織粉末特徴を鑑別根拠にしていて、含有量の測定にしても栽培人参の基準達成の標準のみである。外見性状鑑別特徴とは、芦(芦頭)[Ginseng Rhizome]、▲てい▼(芦から生長した不定根)、体(主根)、紋(主根の肩部又は上の1/3部の環状紋)、須(支根から生長した細い根)など五形という形状特徴を経験鑑別根拠とすることである。しかし、外見性状特徴は、人参の内在品質を確かで全面的に反映することができない。外見性状特徴が人参の真偽及び優劣を鑑別する根拠であることを過当に強調し誇張したため、市場の混乱と消費者権益の損失になっていた。
【0009】
人参の揮発油は、特有の香りを有する化学成分であり、1939年から報道があったが、より大量の研究報道は20世紀60年代からである。人参の揮発油に含まれる化学成分はとても複雑で、その中から分析されたものはもう200種以上あり、化学構成によって下記の通り分類されている。
【0010】
(1)テルペン類:モノテルペン類化合物(例えばα−ピネン、β−ピネン、ジヒドロカルボン、カルボン、カンフェン等)、セスキテルペン類成分(例えばリニアチェーン・セスキテルペン・ネロリドール、cis−ファルネセン、trans−ファルネセン等)、単環セスキテルペン(例えばβ−ビサボレン、α−エレメン、β−エレメン等)、双環セスキテルペン(例えばα−セリネン、β−セリネン、β−カリオフィレン、β−サンタロール等)及び、人参の中の特徴性を有する双環セスキテルペンの一種のヒドロゲン・アズレン類化合物を含む。上記ヒドロゲン・アズレン類成分はアズレン類化合物の原始形式の一つであり、双環セスキテルペンが人参の揮発油における特有の形式である。
【0011】
(2)脂肪族:アルカン、アルケン、アルキン、アルコール、エーテル、アルデヒド、ケトン、酸類、エステル等を含む。
【0012】
(3)芳香族:例えばエチル・ベンゼン、tert−ブチルベンゼン、1,2−ジメチルベンゼン、ナフタリン、アルドール・ナフチルアミン等。
【0013】
(4)複素環化合物:2−アミルフラン、5−メチル−2−フルフラルフラン、ベンゾ・フラン、テトラメチル・ピラジン、1,2−ジメチル・アントラキノン等。
【0014】
人参の揮発油における各類の化学成分の数量及び含有量は、人参の栽培年限、産地及び採取部位により一定の差異があるので、これは化学手段で異なる種類の人参を鑑別することに根拠と可能性を提供してきた。
【0015】
今、国家が公布した2000年版又は2005年版の『中華人民共和国薬典』には、皆揮発油成分で検査測定と鑑別の手段を人参の検査測定方法として記載されていない。
【0016】
漢方薬クロマトグラム・フィンガー・プリント図譜(指紋図譜)は、漢方薬の含有する化学成分の全体表現であり、漢方薬材料の複雑混合体系における各種類の異なる化学成分の濃度分布の全体状況を表すことができ、構成要素濃度の変化・消長を反映することができて、総合的、全体的な鑑定手段になっている。フィンガー・プリント図譜に対して相似性の計算を行うことにより、1個又は2個のサンプルが化学成分全体上での差異性を表すことができて、フィンガー・プリント図譜の相似性を利用して、薬材料の真偽、優劣を鑑別し、薬材料の品質の均一性と安定性を評価することができる。
【0017】
フィンガー・プリント図譜相似性の計算とは、量化の過程を通じて、各フィンガー・プリント図譜上の相互対応するプリント・ピークの異同を比較し、各フィンガー・プリント図譜の間の相似度を計算することである。それは下記二つの手順を含んでいる。
【0018】
(1)フィンガー・プリント図譜情報のデータ化(プリント・ピーク測量パラメータ、例えばピーク面積、ピーク高等)
早期のフィンガー・プリント図譜の研究の中で、データ化の過程は、クロマトグラムの中の主要クロマトグラム・ピークのピーク高又はピーク面積を抽出して当該クロマトグラムの特徴を表すことにより実現されたが、このような方法はただ一部のクロマトグラム特徴でクロマトグラム・フィンガー・プリント図譜全体を表すので、いくつかの情報が紛失になり、最後ではフィンガー・プリント図譜の鑑別感度が降下させる。
【0019】
現代のスペクトル或はクロマトグラムの分析器具により測定した図譜は、全てバイナリーでコンピュータに保存されたデータ組であり、このような一組のデータは1つのベクトルと称され、図譜全体のホログラフィー情報を表している。このようなベクトルで相似性度量を行った結果、化学サンプルの完備したクロマトグラム・フィンガー・プリント図譜の相似性が反映される。いかなる化学サンプルに対しても、1つのベクトルで表示できるので、化学サンプルの間の相似度は、2つのベクトルの間の相似性で度量を行うことができる。
【0020】
(2)フィンガー・プリント図譜の間の相似度の計算
フィンガー・プリント図譜の相似度は、一個又は数個のフィンガー・ピークで比較し計算をすることができ、また、フィンガー・プリント図譜における全てのフィンガー・ピークで比較し計算をすることもできる。漢方薬の化学構成の全体波動状況を全面的に度量をするため、普通は上記第2種の計算方法を採用する。スペクトル或はクロマトグラムの分析器具により測定した図譜はバイナリーで保存されたデータ組であるため、1つのベクトルとして、下記の公式でその相似度計算を行うことができる。
【0021】
(数1)
関連係数計算法:

【0022】
その中、



はそれぞれ両組のクロマトグラム・データの平均値を示し、x,yは両組のクロマトグラム・データの対応点を示して、求められた関連係数はS∈[0,1]、この方法により両組のデータの相似程度を判断する。この方法により算出した相似度は、二つの化学サンプルの全体図譜の相似性を反映している。
【0023】
ガス・クロマトグラフィー(gas chromatography, GC)は一種の気体を流動相にしたクロマトグラフィーである。サンプルの中の各構成要素の固定相とキャリアガスにおける不同一の配分係数により分離を実現し、分離効能が高く、選択性がよく、分析速度が速く、応用が広いなどの利点があり、特に植物薬の揮発油成分及びその他の揮発性成分、又は揮発性成分に転換可能な成分の測定に最適である。
【0024】
気相クロマトグラム・マス・スペクトロメトリー技術(GC−MS)は、マス・スペクトログラフを検出器としてGCと併用する技術である。この併用技術は、クロマトグラムの分離過程中で、各流出構成要素のマス・スペクトラム・データを同時に記録し、フィンガー・プリント図譜での各ピークの識別と鑑定に分子構造の化学情報を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明が解决しようとする技術課題は、気相クロマトグラム・マス・スペクトロメトリー技術を利用して、人参の揮発油の化学成分を測定しフィンガー・プリント図譜を作成して、林下山参と栽培人参の鑑別に用いる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は林下山参或いは栽培人参の微量化学の鑑別方法を提供した。
【0027】
本発明の方法は下記の実験に基づいたものである。
【0028】
1.試薬溶液の調製方法の確定:試薬溶液調製の抽出溶剤(ノルマル・ヘキサン、エーテル、アセトン)、抽出方法(超音波、冷浸)、抽出時間(30min,1hr,2hr)、抽出温度(室温、30℃)及び純化方法(液液抽出)を比較して、下記の方法により試薬溶液を調製することを決めた。
【0029】
各人参サンプルは、主根、側根及びひげ根という3つの部位に分かられ、それぞれ研磨して粉砕する。各部位の薬材料の粉末を約50mgを量り、精密に量って、1ml Eppendorf管に入れ、0.5mlのノルマル・ヘキサンを加え、超音波で1時間抽出し、遠心を行い、上澄み液を吸い取ってGC−MS分析を行う。
【0030】
2.クロマトグラムの条件:クロマトグラム柱が固定し、サンプル注入量(1μL,3μL)、キャリヤーガス流速(1.0,1.2,1.3,1.5mL/min)、温度昇温プログラム(13温度昇温レベル)などを含むクロマトグラム条件を調整・比較・優良化して、最後に下記の通りクロマトグラム条件を決めた。Dikma DM−1(30mm×0.25mm×0.25μm)毛細管柱。柱温度:100℃。サンプル注入口温度:270℃。プログラム温度昇温(表1を参照)。サンプル注入量:1μL。サンプル注入方式:分流,分流比2.0。キャリヤーガス流速:1.30mL/min。
【0031】
【表1】

【0032】
上記の実験条件の選択により、本発明の検出条件を決定する。
【0033】
(1)サンプルの調製
通常の方法により人参の試料を量り、ノルマル・ヘキサンを入れ、超音波で1時間抽出し、遠心を行い、上澄み液を吸い取り、鑑別サンプルとする。
【0034】
(2)気相クロマトグラムマス・スペクトラムGC−MS分析
気相クロマトグラム条件:Dikma DM−1(30mm×0.25mm×0.25μm)毛細管柱。柱温度:100℃。サンプル注入口温度:270℃。プログラム温度昇温。サンプル注入量:1μL。サンプル注入方式:分流,分流比2.0。キャリヤーガス流速:1.30mL/min。
【0035】
マス・スペクトラム条件:イオン・ソース(ion source)温度:200℃。連結口温度:250℃。溶剤切断時間:5min。質量スキャン範囲:m/z 35〜380。スキャン間隔:0.5秒。
【0036】
上記の条件でサンプルのGC−MS図譜を検出する。
【0037】
(3)サンプルの鑑別
手順(2)により取得したサンプルのフィンガー・プリント図譜から、8−9のピークを選定して相似度の計算を行い、それから当該計算値を標準相似度値と比較することによって、当該サンプルが林下山参であるかまたは栽培人参であるかを鑑別することできる。
【0038】
林下山参:主根0.88〜0.91中間値・モード,0.77〜0.88平均値モード。
側根0.78〜0.96中間値・モード,0.78〜0.96平均値モード。
ひげ根0.81〜0.96中間値・モード,0.90〜0.92平均値モード。
【0039】
栽培人参:主根0.38〜0.57中間値・モード,0.36〜0.54平均値モード。
側根0.24〜0.57中間値・モード,0.24〜0.58平均値モード。
ひげ根0.25〜0.61中間値・モード,0.24〜0.71平均値モード。
【発明の効果】
【0040】
林下山参の主根、側根、ひげ根のGC−MS図譜でフィンガー・プリント図譜の共有モードを作成し、検出しようとする人参サンプルとこの共有モードとの相似度値を利用して林下山参と栽培人参を区分することができる。
【0041】
本発明に基づいて、薬材商品とする林下山参と栽培人参の中の揮発油成分を分析し、そして取得したクロマトグラム図全体に対して分析を行って、現行の国家薬典における人参単体サポニンによる通常検出方法とは異なるため、大きい実用価値を有する。
【0042】
本発明は、通常方法により50μgの人参サンプルの中の揮発油成分を抽出して、本発明で設定されたテスト条件によりGC−MS分析を行い、取得した揮発油GC−MS図譜をベクトルとし、コンピュータ補助の相似性評価システムで処理し、商品薬材となる林下山参と栽培人参の相似度値を算出して、栽培人参と林下山参を鑑別する目的が達成でき、鑑別されるサンプルは人参のいかなる部位であってもよい。
【0043】
本発明は、微量化学分析方法を利用して貴重な人参薬材を鑑別するので、資源の節約が可能になり、大きい経済効果と社会効果を有する。本発明の方法は、人参粉、林下山参及びその製品の鑑別に応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、図を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0045】
林下山参と栽培人参の鑑別
1、器具と試薬
Shimadzu GC−MSMS−QP2010気相クロマトグラム・マス・スペクトログラフ
Crest超音波洗浄機(型番:1875HTAG)
Spectrafuge 16M遠心機
ノルマル・ヘキサン:Lab−Scan Analytical Sciences,残留農薬レベル
【0046】
2、サンプルの出所
本発明で使用する人参及び林下山参のサンプルは、全て吉林省の各地から調達したものである。(表2を参照)
【0047】
【表2】

【0048】
3、実験用サンプルの調製
各人参のサンプルは、主根、側根及びひげ根の3部位に分けられ、それぞれ研磨して粉砕する。各部位の薬材粉末を約50mg量り、精密に量って、1ml Eppendorf管に入れ、0.5mlのノルマル・ヘキサン(n−Hexane)を加え、超音波で1時間抽出し、遠心を行い、上澄み液を吸い取ってGC−MS分析を行う。
【0049】
4、実験条件
4.1) クロマトグラム(chromatogram)条件:Dikma DM−1(30mm×0.25mm×0.25μm)毛細管柱。柱温度:100℃。サンプル注入口温度:270℃。プログラムに従って昇温(表1を参照)。サンプル注入量:1μL。サンプル注入方式:分流,分流比2.0。キャリヤーガス流速:1.30mL/min。
【0050】
4.2)マス・スペクトラム(mass spectrum)条件
イオン・ソース温度:200℃。連結口温度:250℃。溶剤切断時間:5min。質量スキャン範囲:m/z 35〜380。スキャン間隔:0.5秒。
【0051】
5.クロマトグラム
上記の実験条件で取得した林下山参の主根の揮発油のGC−MSクロマトグラムは、図1を参照する。
林下山参の主根の揮発油の主要成分は、表3を参照する。
栽培人参の主根の揮発油のGC−MSクロマトグラムは、図2を参照する。
栽培人参の主根の揮発油の主要成分は、表4を参照する。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
図の示すように、人参の揮発油の中の化学成分はとても複雑で、特に低沸点と高沸点の成分は数量が多くて、含有量も高い。その中、高沸点部分のポリイン・アルコール類(保留時間50min程度)は、各サンプルにおける含有量が最も高い。
【0055】
本発明は、上記実験条件で5ロットの林下山参のサンプル及び5ロットの栽培人参のサンプルを検出した。その中、3ロットの林下山参のGC−MS図譜は、図3、図4、図5、図6、図7、図8を参照し、2ロットの栽培人参のGC−MS図譜は、図9、図10、図11、図12、図13、図14を参照する。
【0056】
上記測定により、同一の人参サンプルでも、異なる部位によって揮発油の成分は数量、含有量が大きい差異があることを表明した。この差異は異なる人参サンプルの同一部位の差異より大きい。接近しているサンプルは、同一部位の揮発油成分がより合致し、相似程度も高いので、同一部位間の揮発油成分は比較可能性を有することを表明している。異なる林下山参及び栽培人参の同一部位の揮発油成分を比較することによって、部位による差異が排除され、サンプル自体の差異が現れる。
【0057】
上記実験で取得した3ロットの林下山参の主根、側根及びひげ根のGC−MS図譜で、平均値法及び中間値法により、それぞれ林下山参の主根、側根及びひげ根の共有GC−MSモードを形成する。当共有モードを標準にし、2ロットの林下山参及び5ロットの栽培人参の当該共有モードとの相似度を計算し、その結果は下記の通りである。
【0058】
1.林下山参主根揮発油の共有GC−MSモード及び相似度の計算
【0059】
1.1)林下山参主根の共有モードの形成
【0060】
サンプル:4,5,6番のサンプル、即ち、11年生、15年生、18年生の林下山参
【0061】
データの前処理:3ロットの林下山参のGC−MS図譜から8つのピークを選定する。(図15には数字で表記)ピーク選定の原則は下記の通りである。
【0062】
1.1.1) GC−MS図譜で応答値の高くて主要なピークを選定する。これらのピークは識別しやすいため、校正にもやすくなる。
【0063】
1.1.2 選定されるピークは、すべてのサンプルにも共有で、こうすることで図譜ごとに校正することが可能になる。
【0064】
1.1.3) 選定されたクロマトグラムピークは、クロマトグラム図に均一に分布されるものとする。当ソフトウェアは、最小二乗法でクロマトグラムピークの校正を行い、1つのクロマトグラムピークを校正する際に、隣接するクロマトグラムピークは同時に変位するため、クロマトグラム図全体に均一に分布されているピークを選定して校正すると、クロマトグラム図全体が校正される。
【0065】
フィンガー・プリント図譜・ソフトウェアで時間校正を行われた図譜は図16を、形成された共有モードは図17、18を参照する。
【0066】
【表3】

【0067】
1.2) 相似度の計算
上記方法で形成された林下山参共有モードを標準にし、3ロットの林下山参及び5ロットの栽培人参(GC−MS図譜は図10を参照)の当共有モードとの相似度を計算して、その結果は表4の通りである。
【0068】
【表4】

【0069】
2. 林下山参の側根揮発油の共有GC−MSモード及び相似度の計算
【0070】
2.1) 林下山参の側根共有モードの形成
【0071】
サンプル:4,5,6番のサンプル、即ち、11年生,15年生,18年生の林下山参
【0072】
データの前処理:3ロットの林下山参の側根GC−MS図譜から8つのピークを選定して(図20に数字で表記するピークを参照)時間校正を行い、校正後の図譜は図19、20を、形成された共有モードは図21、22を、3ロットの林下山参の組内相似度は表5を参照する。
【0073】
【表5】

【0074】
2.2)相似度の計算
上記方法で形成された林下山参共有モードを標準にし、2ロットの林下山参及び5ロットの栽培人参の側根のGC−MS図譜(図23)の相似度を計算すると、その結果は下記(表6)の通りである。
【0075】
【表6】

【0076】
3.林下山参のひげ根揮発油の共有GC−MSモード及び相似度の計算
【0077】
3.1)林下山参のひげ根共有モードの形成
【0078】
サンプル:11年生,15年生,18年生の林下山参。
【0079】
データの前処理:3ロットの林下山参ひげ根のGC−MS図譜から9つのピーク(図24には数字で表記するピークを参照)を選定して時間校正を行い、校正後の図譜は図24を、形成された共有モードは図25、26を、組内相似度は表7を参照する。
【0080】
【表7】

【0081】
3.2)相似度の計算
【0082】
上記方法で形成された林下山参共有モードを標準にし、林下山参及び栽培人参ひげ根のGC−MS図譜(図27)の相似度を計算すると、その結果は下記(表8)の通りである。
【0083】
【表8】

【0084】
4.鑑別効果
【0085】
主根、側根及びひげ根のGC−MSフィンガー・プリント図譜の相似度により、林下山参と栽培人参のサンプルがよく区分される(表9,10)。
【0086】
【表9】

【0087】
【表10】

【0088】
林下山参の主根、側根、ひげ根のGC−MS図譜でフィンガー・プリント図譜の共有モードを形成し、相似度の値により林下山参と栽培人参が区分される。
【実施例2】
【0089】
人参粉末サンプルの鑑別:サンプル:人参粉末サンプル2件、それぞれA、Bと表記する。当方法で述べた気相クロマトグラム条件により分析・検出を行い、取得したGC−MS図譜に対して相似度計算を行う。人参サンプルの主根は、通常サンプル全体重量の70〜90%を占めているので、未知サンプルのGC−MS図譜と林下山参主根のGC−MS共有モードと比較することによって、相似度計算の結果は下記の通りである。

【表11】

【0090】
結果によると、Aは林下山参、Bは栽培人参である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】林下山参の主根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図2】栽培人参の主根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図3】林下山参(15年生)の主根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図4】林下山参(15年生)の側根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図5】林下山参(15年生)のひげ根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図6】林下山参(18年生)の主根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図7】林下山参(18年生)の側根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図8】林下山参(18年生)のひげ根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図9】栽培人参(集安市,4年生)の主根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図10】栽培人参(集安市,4年生)の側根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図11】栽培人参(集安市,4年生)のひげ根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図12】栽培人参(靖宇県,6年生)の主根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図13】栽培人参(靖宇県,6年生)の側根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図14】栽培人参(靖宇県,6年生)のひげ根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図15】3ロット林下山参の主根の揮発油GC−MS図譜の時間校正に用いるピークを示す説明図である。
【図16】校正後3ロット林下山参の主根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図17】3ロット林下山参の主根の揮発油共有モード図譜(平均値を取る)を示す説明図である。
【図18】3ロット林下山参の主根の揮発油共有モード図譜(中間値を取る)を示す説明図である。
【図19】校正後の3ロット林下山参及び5ロット栽培人参の主根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図20】校正後の3ロット林下山参の側根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図21】3ロット林下山参の側根の揮発油共有モード図譜(平均値を取る)を示す説明図である。
【図22】3ロット林下山参の側根の揮発油共有モード図譜(中間値を取る)を示す説明図である。
【図23】校正後の3ロット林下山参及び5ロット栽培人参の側根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図24】校正後の3ロット林下山参のひげ根の揮発油GC−MS図譜を示す説明図である。
【図25】3ロット林下山参のひげ根の揮発油共有モード図譜(平均値を取る)を示す説明図である。
【図26】3ロット林下山参ひげ根揮発油共有モード図譜(中間値を取る)を示す説明図である。
【図27】校正後の3ロット林下山参及び5ロット栽培人参のひげ根のGC−MS図譜を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
林下山参と栽培人参の微量化学鑑別方法であって、
手順(1)サンプルの調製と、手順(2)気相クロマトグラム−マス・スペクトラムGC−MS分析と、手順(3)サンプルの鑑別とを含み、
前記(1)サンプルの調製において、通常の方法で人参試料を量り、ノルマル−ヘキサンを入れ、超音波で1時間抽出し、遠心を行い、上澄み液を吸い取って鑑別用サンプルを取得し、
前記(2)気相クロマトグラム−マス・スペクトラムGC−MS分析において、気相クロマトグラム条件及びマス・スペクトラム条件を用いてサンプルのGC−MS図譜を検出し、
その中、気相クロマトグラム条件として、Dikma DM−1(30mm×0.25mm×0.25μm)毛細管柱と、100℃の柱温度と、270℃のサンプル注入口温度と、プログラムに基づく昇温と、1μLのサンプル注入量と、分流のサンプル注入方式と、2.0の分流比と、1.30mL/minのキャリヤーガス流速を採用し、
また、マス・スペクトラム条件として、200℃イオン・ソース温度と、250℃の連結口温度と、5minの溶剤切断時間と、m/z 35〜380の質量スキャン範囲と、:0.5秒のスキャン間隔を採用し、
前記(3)サンプルの鑑別において、手順(2)で獲得したサンプルのフィンガー・プリント図譜から、8−9のピークを選定して相似度の計算を行い、それから当該計算値を標準相似度値と比較することによって、当該サンプルが林下山参であるかまたは栽培人参であるかを鑑別することを特徴とする林下山参と栽培人参の微量化学鑑別方法。
【請求項2】
前記標準相似度は、以下の通りからなり、即ち、
林下山参について、主根は、中間値が0.88〜0.91であるモード及び平均値が0.77〜0.88であるモードを採用し、側根は、中間値が0.78〜0.96であるモード及び平均値が0.78〜0.96であるモードを採用し、ひげ根は、中間値が0.81〜0.96であるモード及び平均値が0.90〜0.92であるモードを採用し、
栽培人参について、主根は、中間値が0.38〜0.57であるモード及び平均値が0.36〜0.54であるモードを採用し、側根は、中間値が0.24〜0.57であるモード及び平均値が0.24〜0.58であるモードを採用し、ひげ根は、中間値が0.25〜0.61であるモード及び平均値が0.24〜0.71であるモードを採用することを特徴とする請求項1記載の林下山参と栽培人参の微量化学鑑別方法。
【請求項3】
前記手順(2)気相クロマトグラム−マス・スペクトラム分析で、気相クロマトグラムの温度昇温プログラムは、まず100.0℃から170℃に温度を昇温させ、温度昇温速度は1.5℃/min、それから、170℃から190.0℃に温度を昇温させ、温度昇温速度は8.0℃/min、最後に、190.0℃から240℃に温度を昇温させ、温度昇温速度は2.0℃/minとすることを特徴とする請求項1記載の林下山参と栽培人参の微量化学鑑別方法。
【請求項4】
前記手順(3)サンプルの鑑別において、前記選定されるピークは図譜の中で応答値が比較的に高い主要なピークであり、且つ、全てのサンプルに共有するピークであることを特徴とする請求項1記載の林下山参と栽培人参の微量化学鑑別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公表番号】特表2009−510407(P2009−510407A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532564(P2008−532564)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際出願番号】PCT/CN2006/002319
【国際公開番号】WO2007/036132
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508092679)
【出願人】(508092680)
【出願人】(508092691)
【Fターム(参考)】