説明

枚葉両面印刷機及び枚葉両面多色印刷機

【課題】枚葉紙に両面印刷を施すための水平方向長さを短くすることができると共に、印刷方向下流側の印刷面が上流側の印刷面の印刷によって汚されることがないようにする。
【解決手段】周面に紙くわえ爪を設けた2個の圧胴6a,6bを有し、一方の圧胴の回転方向下流側で、かつ斜め下側の周面に他方の圧胴を転接させ、両圧胴を転接部が下方へ向く方向に回転するようにして、一方の圧胴に沿って搬送される枚葉紙が他方の圧胴に反転して搬送されるようにし、一方の圧胴の他方の圧胴との転接部より回転方向上流側の周面と、他方の圧胴の一方の圧胴との転接部より下流側の周面のそれぞれに、各胴に沿って搬送される枚葉紙に電子写真印刷を行う電子写真印刷ユニット7a,7bを対設し、上記他方の圧胴の周面で、かつこの他方の圧胴に沿って搬送される枚葉紙を搬送方向下流側へ受け渡す位置より回転方向下流側の周面に圧胴クリーニング装置23を対設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枚葉紙の表裏面のそれぞれに各1色、もしくは複数色の印刷を電子写真印刷機を用いて印刷するようにした枚葉両面印刷機及び枚葉両面多色印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の電子写真印刷機を用いて枚葉紙に、例えば枚葉紙の片面に4色の印刷を行う例として特許文献1に示されたものが知られている。
【0003】
この従来技術にあっては、画像支持体である感光体ドラムと、この感光体ドラムの表面に帯電させる帯電装置と、感光体ドラムの表面に潜像を露光する露光装置と、この潜像をトナー像に現像する現像装置等からなるトナー像形成装置を枚葉紙の走行方向に複数配置し、この各トナー像形成装置の各感光体ドラムに形成されたトナー像を所定の枚葉紙に、各トナー像形成装置の感光体ドラムに転接する転写ベルトを用いた転写装置にて順次転写するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−271107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の複数の電子写真印刷機を用いた印刷機にあっては、複数のトナー像形成装置に沿って枚葉紙が転写ベルトにて順次搬送されるようになっているため、搬送される枚葉紙が2つのトナー像形成装置にまたがる状態になると、枚葉紙の搬送方向両端の2箇所で印刷圧を得るためにニップされて印刷見当精度への影響が生じるという問題がある。この問題を防ぐためには、この種の多色印刷機にあっては、各トナー像形成装置の相互の間隔を、各トナー像形成装置ごとに印刷ニップ部を枚葉紙が通過してから次のトナー像形成装置のニップ部に供給されるようなスペースになるように配設されている。
【0006】
また、電子写真印刷機を用いた印刷機の場合、感光体ドラムの表面への画像の現像と画像転写後の感光体ドラムの表面のクリーニングとを常時同時進行にて行うことができるため、枚葉紙の搬送方向での1つの絵柄の長さは感光体ドラムの円周長に無関係に、これの円周長を超える長さのものを印刷することも可能であるが、このように長尺の印刷を各枚葉紙に行う場合には、各トナー像形成装置間の間隔は、この最大絵柄サイズを超える寸法で連設配置されて多色印刷機の全体長がその分長くなる。
【0007】
このような印刷機にて搬送される枚葉紙の両面に印刷を行う場合には、枚葉紙を反転後に再度隣接配置された同様の装置に通すこととなり、表裏4色ずつ印刷する場合には、少なくとも第1のトナー像形成装置から第8のトナー像形成装置まで絵柄サイズの7倍の長さが必要になることになり、特に搬送方向に長い絵柄の印刷を行う場合には装置全体が長くなってしまうという問題があった。
【0008】
また、上記従来技術の印刷機にあってはベルト搬送方式であるため、ベルトの伸縮性から発生する枚葉紙の送り誤差、及びベルト搬送方式の構成的な面からの、特に高速送りになるほど顕著となる精度的な限界があり、高速搬送での印刷見当を高精度に維持する上での問題が存在している。
【0009】
本発明は上記のことに鑑みなされたもので、両面に印刷する印刷物であっても電子写真印刷方式によりコンパクトな構成で高能率、高精度に印刷物を生産でき、しかも表面と裏面を順次印刷する際に印刷方向下流側の印刷面が上流側の印刷面に印刷されたトナーによる汚れを防止できるようにした枚葉両面印刷機及び枚葉両面多色印刷機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る請求項1に係る枚葉両面印刷機は、周面に紙くわえ爪を設けた2個の圧胴を有し、一方の圧胴の回転方向下流側で、かつ斜め下側の周面に他方の圧胴を転接させ、両圧胴を転接部が下方へ向く方向に回転するようにして、一方の圧胴に沿って搬送される枚葉紙が他方の圧胴に反転して搬送されるようにし、一方の圧胴の他方の圧胴との転接部より回転方向上流側の周面と、他方の圧胴の一方の圧胴との転接部より下流側の周面のそれぞれに、各胴に沿って搬送される枚葉紙に電子写真印刷を行う電子写真印刷ユニットを対設し、上記他方の圧胴の周面で、かつこの他方の圧胴に沿って搬送される枚葉紙を搬送方向下流側へ受け渡す位置より回転方向下流側の周面に、この他方の圧胴の周面をクリーニングする圧胴クリーニング装置を対設した構成になっている。
【0011】
請求項2に係る枚葉両面多色印刷機は、請求項1記載の枚葉両面印刷機を、枚葉紙の搬送方向に、上流側の枚葉両面印刷機の他方の圧胴と下流側の枚葉両面印刷機の一方の圧胴とを転接して複数組配置し、各枚葉両面印刷機の枚葉紙搬送方向上流側で印刷された枚葉紙の印刷面に接触する圧胴の周面で、かつこの圧胴の回転に沿って搬送される枚葉紙を搬送方向下流側へ受け渡す位置より回転方向下流側の周面に、この圧胴の周面をクリーニングする圧胴クリーニング装置を対設した構成になっている。
【0012】
請求項3に係る枚葉両面多色印刷機は、周面に紙くわえ爪を設けた2個の圧胴を有し、一方の圧胴の回転方向下流側で、かつ斜め下側の周面に他方の圧胴を転接させ、両圧胴を転接部が下方へ向く方向に回転するようにして、一方の圧胴に沿って搬送される枚葉紙が他方の圧胴に反転して搬送されるようにし、一方の圧胴の他方の圧胴との転接部より回転方向上流側の周面と、他方の圧胴の一方の圧胴との転接部より下流側の周面のそれぞれに、各胴に沿って搬送される枚葉紙に電子写真印刷を行う電子写真印刷ユニットを各圧胴の回転方向にそれぞれ複数組ずつ対設してなる枚葉両面印刷機を、枚葉紙の搬送方向に少なくとも2台配置し、枚葉紙の搬送方向上流側に位置する枚葉両面印刷機の他方の圧胴と、下流側に位置する枚葉両面印刷機の一方の圧胴とを互いに転接する2つの渡しローラを介して連設し、各枚葉両面印刷機の枚葉紙搬送方向上流側で印刷された枚葉紙の印刷面に接触する圧胴の周面で、かつこの圧胴の回転に沿って搬送される枚葉紙を搬送方向下流側へ受け渡す位置より回転方向下流側の周面に、この圧胴の周面をクリーニングする圧胴クリーニング装置を対設した構成になっている。
【0013】
本願の請求項4に係る発明は、上記した枚葉両面印刷機及び枚葉両面多色印刷機において、圧胴クリーニング装置に、圧胴に転接するクリーニングローラを用い、圧胴とクリーニングローラ間に電位差を設け、電気泳動により圧胴に付着したトナーを除去するようにした構成になっており、また請求項5に係る発明は、圧胴クリーニング装置を対設する圧胴の周面にトナーが付着しにくい材料にて表面処理を施した構成になっている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1記載の枚葉両面印刷機にあっては、この枚葉両面印刷機を搬送される枚葉紙は、搬送方向上流側の圧胴から下流側の圧胴にわたってS字状に走行されることになり、この両圧胴間の搬送経路が長くなって、枚葉紙に両面印刷を施すための水平方向の長さを短くすることができて印刷方向の長さを短くしてコンパクトにすることができる。
【0015】
また、枚葉紙に印刷する印刷手段が電子写真印刷ユニットを用いたことにより、連続印刷中に画像絵柄データの出力制御により絵柄内容及び出力枚数など自由に制御することができ、コンパクトな構成で大ロットから小ロットまで効率のよい生産を可能にすることができる。また、同様に印刷データがあれば準備時間を必要とせずに短納期で受注製品の納品を可能にでき、作業性の面で効率を大きく改善することができる。さらに高速、高精度、デジタル印刷により連続印刷の中で絵柄内容や同一絵柄の枚数などが可変であり、オンデマンド印刷に対応可能であって、小サイズのものから大サイズのものまでの枚葉紙の印刷に対応することができる。
【0016】
上記請求項1に記載の枚葉両面印刷を用いた請求項2記載の枚葉両面多色印刷機にあっては、多色印刷機であるにもかかわらず装置全体の長さを短くすることができ、省スペース、装置コストの低減などの経済的な効果を得ることができる。
【0017】
また、請求項3記載の枚葉両面多色印刷機にあっては、2個の圧胴にて枚葉紙の両面に複数色ずつの印刷を行うことができ、さらに装置構成の長さを短縮してコンパクトにすることができる。
【0018】
そして上記請求項1における枚葉両面印刷機にあっては、これの上記他方の圧胴の周面で、かつこの他方の圧胴に沿って搬送される枚葉紙を搬送方向下流側へ受け渡す位置より回転方向下流側の周面に、この他方の圧胴の周面をクリーニングする圧胴クリーニング装置を対設したことにより、また請求項2,3における枚葉両面多色印刷機にあっては、これらの枚葉両面印刷機の枚葉紙搬送方向上流側で印刷された枚葉紙の印刷面に接触する圧胴の周面で、かつこの圧胴の回転に沿って搬送される枚葉紙を搬送方向下流側へ受け渡す位置より回転方向下流側の周面に、この圧胴の周面をクリーニングする圧胴クリーニング装置を対設したことにより、枚葉紙搬送方向上流側で印刷された枚葉紙の印刷面に接触する圧胴の周面にこの印刷面から転移した付着トナーを、この圧胴の回転ごとにクリーニングすることができ、枚葉紙搬送方向下流側に位置する圧胴にての付着トナーによる汚れをなくすことができ、可変情報による印刷面ごとに印刷画像が変化する高品質の印刷物を高品質で生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る枚葉両面多色印刷機の一例を概略的に示す構成説明図である。
【図2】本発明に係る枚葉両面印刷機の一例を示す構成説明図である。
【図3】1つの枚葉両面印刷機における片面印刷の様子を示す模式図である。
【図4】1個の圧胴にて片面印刷する場合の枚葉両紙の移動距離を示した説明図である。
【図5】本発明に係る枚葉両面多色印刷機の他例を概略的に示す構成説明図である。
【図6】(a),(b),(c),(d)は圧胴クリーニング装置の実施例の概略的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は枚葉紙の両面に4色ずつの印刷を施す構成にした枚葉両面多色印刷機1を概略的に示す説明図である。この枚葉両面多色印刷機1は、1枚の枚葉紙の表面と裏面とを、枚葉紙の走行に従って順次印刷するようにした第1・第2・第3・第4の枚葉両面印刷機2a,2b,2c,2dを枚葉紙の走行方向に配設した構成になっている。そして最上流側の第1の枚葉両面印刷機2aの入口側に給紙装置3からの枚葉紙を案内する入口側渡しローラ4が対設置されており、最下流側の第4の枚葉両面印刷機2dの出口側に出口側渡しローラ5aとデリバリ装置5bとからなる排出装置5が連設されている。
【0022】
上記各枚葉両面印刷機2a〜2dは同一構成になっていて、その構成を第1の枚葉両面印刷機2aについて図2にて説明する。
【0023】
6a,6bは第1・第2の圧胴であり、この両圧胴6a,6bは同径で、かつ第2の圧胴6bが第1の圧胴6aの斜め下方に位置して転接されており、この両圧胴6a,6bはこれの転接部において回転方向が下方へ向くように同期回転されている。
【0024】
上記両圧胴6a,6bの周面部には図示しないが、回転方向上流側から給紙される枚葉紙の先行端部をくわえる紙くわえ爪が設けてあり、両圧胴6a,6bの回転において、第1の圧胴6aの回転方向上流側から給紙された枚葉紙は、まず第1の圧胴6aの紙くわえ爪にくわえられて第1の圧胴6aの周面に従って走行し、ついで第2の圧胴6bとの転接部において第2の圧胴6bの紙くわえ爪にくわえられて第2の圧胴6bの周面に従って走行し、この間において、第1の圧胴6aから第2の圧胴6bに従って表裏が反転される。
【0025】
第1の圧胴6aの上記両圧胴6a,6bの転接部より回転方向上流側の周面に表面印刷用の電子写真印刷ユニット7aが対設されており、第2の圧胴6bの上記両圧胴6a,6bの転接部より回転方向下流側の周面に裏面印刷用の電子写真印刷ユニット7bが対設されている。
【0026】
上記両電子写真印刷ユニット7a,7bは、下向き構成か上向き構成かの相違があるが基本的には同一構成となっているので、下向き構成となっている表面印刷用の電子写真印刷ユニット7aにてその構成を説明する。
【0027】
この電子写真印刷ユニット7aは、通常の電子写真印刷機として用いるものと大略同一になっていて、感光体ドラム8の周囲に、これの回転方向上流側から回転方向にわたって感光体クリーニング装置及び除電器9、帯電装置10、露光装置11、現像装置12の現像ローラ13、キャリア液除去装置14が対向配置されている。感光体ドラム8には第1の圧胴6aに転接されている転写ローラ15が転接されており、現像装置12の現像ローラ13にて感光体ドラム8の周面に現像されたトナー像が転写ローラ15を介して、第1の圧胴6aと転写ローラ15とのニップ部を通過する枚葉紙に転写されるようになっている。16は転写ローラクリーニング装置である。
【0028】
上記第2の圧胴6bの下側で上向き構成になっている電子写真印刷ユニット7bも、上記下向き構成の電子写真印刷ユニット7aと同様で、第2の圧胴6bと転写ローラ15とのニップ部を通過する枚葉紙に転写ローラ15に感光体ドラム8から転写されたトナー像が転写されるようになっている。
【0029】
上記のように構成された第1の枚葉両面印刷機2aにおいて、これの第1の圧胴6aの回転方向上流側から、給紙装置3の入口側渡しローラ4にて給紙された枚葉紙は、これの第1の圧胴6aに巻き掛けられた状態で、第1の電子写真印刷ユニット7aにてこれの表面に印刷され、ついで第2の圧胴6bに表裏反転して巻き掛けられた状態で、第2の電子写真印刷ユニット7bにてこれの裏面に印刷されて、この第1の枚葉両面印刷機2aを通過することにより、枚葉紙の両面に1色ずつの絵柄が印刷される。
【0030】
上記のように構成された各枚葉両面印刷機2a〜2dは、枚葉紙の走行方向上流側に位置している枚葉両面印刷機の第2の圧胴6bが下流側の枚葉両面印刷機の第1の圧胴6aに転接されて並べて配置されていて、第1の枚葉両面印刷機2aに給紙された枚葉紙は、第1から第4の各枚葉両面印刷機2a〜2dを通過する間に、各枚葉両面印刷機2a〜2dにて順次両面に印刷されて両面4色印刷されて排出装置5へ排出される。
【0031】
このとき、各枚葉両面印刷機2a〜2dの下流側に位置する第2の圧胴6bが、上流側に位置する第1の圧胴6aに対して斜め下方に位置されており、また上流側の第2の圧胴6bに対して、下流側の第1の圧胴6aは斜め上方に位置されていることにより、上記のように各枚葉両面印刷機2a〜2dを並べて配置してなる枚葉両面多色印刷機1にあっては、図1に示すように各枚葉両面印刷機の圧胴がジグザグ状に配置されることになる。
【0032】
なお、上記第1の枚葉両面印刷機2aの1台のみを用いて枚葉紙の両面に1色ずつの印刷を行う場合は、第2の圧胴6bに出口側渡しローラ等からなる排出装置を連設する。
【0033】
上記実施の形態において、各枚葉両面印刷機2a〜2dは互いに転接する2個の圧胴6a,6bを有しており、例えば上流側である第1の圧胴6aにて片面印刷する場合、第1の圧胴6aが送り胴に、第2の圧胴が渡し胴となる。そして第1の圧胴6aの第1の電子写真印刷ユニット7aにて印刷が開始された枚葉紙の先端は、図2において印刷開始点Aから第1の圧胴6aの回転に従って送られ、第2の圧胴6bとの転接部Bから第2の圧胴6bに渡されてこの第2の圧胴6bに従って移動し、その間にこの枚葉紙は上記A点にて印刷が行われ、枚葉紙の先端が例えば第2の圧胴6bが次の枚葉両面印刷装置2bの第1の圧胴6aとの転接部に至る前の位置Cにきたときに、枚葉紙の後端が上記A点を通過して1枚の枚葉紙の片面に印刷が行われることになる。
【0034】
この片面印刷の様子を図3に示した模式図にて説明する。なお、このときにおいて上記印刷開始点Aを第1の圧胴6aの真上の頂部であるとする。
【0035】
図3において、第1と第2の圧胴6a,6bの径をD、両圧胴6a,6bの水平方向の軸間距離を0.75Dとすると共に、枚葉紙の長さを圧胴の周長(πD)であるとする。そしてA点で印刷が開始された枚葉紙の先端は、第1の圧胴6aをθ1の回転角にわたって移動してB点にて第2の圧胴6bに渡されて、この第2の圧胴6bの回転に従って移動し、この第2の圧胴6bが(360−θ1)=θ2にわたって回転し、枚葉紙の先端がC点にきたときに枚葉紙の後端が上記A点を通過して片面印刷が完了される。
【0036】
今、両圧胴6a,6bの水平方向の軸間距離が0.75Dであることによりθ1は約131.5度であり、枚葉紙の長さが圧胴の周長(360度)であるから、B,C間のθ2は約228.5度となる。このときの枚葉紙の先端の位置となるC点は、第2の圧胴6bの真横よりわずかに(7度)越えた位置となる。したがって、枚葉紙の先端が水平方向に約1.25D移動した状態で、この枚葉紙の片面全長の印刷が完了したことになる。
【0037】
図4は直径がDの1個の圧胴にて片面印刷する場合の枚葉紙の移動距離を示した説明図であり、枚葉紙がπD移動することによりこれの片面全長に印刷されることが示されている。
【0038】
これに対して図3に示した本発明の実施の形態では、πDの長さの枚葉紙の片面全長の印刷が1.25Dの長さで行われ、この長さは図4に示した場合の約2.5分の1となり、仮に長さが圧胴の周長の枚葉紙の片面全長印刷する印刷装置では、この装置の長さを図4に示す構成のものに対して2.5分の1の長さにすることができる。
【0039】
この発明の実施の形態では、第2の圧胴6bの例えば真下の頂点A′に枚葉紙の先端がきたときに裏面の印刷が開始され、枚葉紙の先端が第2の枚葉両面印刷機2bにわたって連続的に走行し、第2の枚葉両面印刷機2bの第1の圧胴6aの第2の表面印刷点Aを通過したC′点にきたときに、枚葉紙の後端が裏面印刷開始点A′を通過して裏面の印刷が終了される。
【0040】
このようにして第1の枚葉両面印刷機2aにて枚葉紙の両面への印刷は、第1の枚葉両面印刷機2aの表面印刷開始点Aから水平方向に圧胴の径の約2倍の搬送距離にて行うことができる。そして表面側への2色目の絵柄は第2の枚葉両面印刷機2bの第1の圧胴6aのA点から印刷が開始されると共に裏面への2色目の絵柄はこれの第2の圧胴6bのA′点から印刷が開始され、各面への絵柄は逐次下流側の枚葉両面印刷機2c、2dにて印刷される。
【0041】
図5は本発明の他の実施の形態を示すもので、この実施の形態の枚葉両面印刷装置1′は、第1・第2の枚葉両面印刷機17a,17bを並べた構成になっている。そして枚葉紙の走行方向上流側に位置する第1の枚葉両面印刷機17aの入口側に、給紙装置3から枚葉紙を案内する入口側渡しローラ4が対設されており、下流側の第2の枚葉両面印刷機17bの出口側に渡しローラ18aとデリバリ装置18bとからなる排出装置18が連設されている。また、第1・第2の枚葉両面印刷機17a,17bは、一方の下流側に設けた第1渡しローラ19aと他方の上流側に設けた第2渡しローラ19bを介して連設されている。
【0042】
上記第1・第2の枚葉両面印刷機17a,17bは同一構成になっていて、その構成を第1の枚葉両面印刷機17aについて説明する。
【0043】
20a,20bは第1・第2の圧胴であり、この両圧胴20a,20bは同径で、かつ第2の圧胴20bが第1の圧胴20aの斜め下方に位置して転接されており、この両圧胴20a,20bはこれの転接部において回転方向が下方へ向くように同期回転されている。
【0044】
上記両圧胴20a,20bの周面部には図示しないが、回転方向上流側から給紙される枚葉紙の先行端部をくわえる紙くわえ爪が設けてあり、両圧胴20a,20bの回転において、第1の圧胴20aの回転方向上流側から給紙された枚葉紙は、まず第1の圧胴20aの紙くわえ爪にくわえられて第1の圧胴20aの周面に従って走行し、ついで第2の圧胴20bとの転接部において第2の圧胴20bの紙くわえ爪にくわえられて第2の圧胴20bの周面に従って走行し、この間において、第1の圧胴20aから第2の圧胴20bに従って表裏が反転されるようになっている。
【0045】
第1の圧胴20aの上記両圧胴20a,20bの転接部より回転方向上流側の周面に、表面印刷用の2組の電子写真印刷ユニット21a,21bが回転方向に位相をずらせて対設されており、第2の圧胴20bの上記両圧胴20a,20bの転接部より回転方向下流側の周面に、裏面印刷用の2組の電子写真印刷ユニット22a,22bが回転方向に位相をずらせて対設されている。
【0046】
上記表面印刷用の2組の電子写真印刷ユニット21a,21bのそれぞれは、図2に示した実施の形態における表面印刷用の電子写真印刷ユニット7aと、また裏面印刷用の2組の電子写真印刷ユニット22a,22bのそれぞれは同様に、上記裏面印刷用の電子写真印刷ユニット7bとそれぞれ同じ構成になっている。
【0047】
入口側渡しローラ4にて案内されて給紙された枚葉紙は、第1の枚葉両面印刷機17aの第1の圧胴20aの回転に従い、2組の表面印刷用の電子写真印刷ユニット21a,21bにて表面に2色印刷され、ついでこの第1の枚葉両面印刷機17bの第2の圧胴20bの回転に従い、2組の裏面印刷用の電子写真印刷ユニット22a,22bにて裏面に印刷される。この第1の枚葉両面印刷機17aにて表面と裏面に2色ずつ印刷された枚葉紙は、第1・第2の渡しローラ19a,19bを介して第2の枚葉両面印刷機17bに受け渡されて、この枚葉紙の表面と裏面のそれぞれに3,4色目の印刷が行われる。
【0048】
この実施の形態における枚葉両面印刷機17a,17bは第1・第2の2台に限ることはなく、3台、4台と並べて配置して用いてもよい。
【0049】
また、この実施の形態では各圧胴20a,20bに2組ずつの電子写真印刷ユニット21a,21bを対設した例を示したが、この印刷ユニットは圧胴に3組以上対設するようにしてもよい。
【0050】
上記した各実施の形態において、印刷手段として電子写真印刷ユニットを用いたことにより、印刷版胴に刷版を装着して印刷を行うオフセット輪転印刷機とは相違し、デジタルデータによる感光体ドラム表面への画像形成と画像転写後の感光体ドラム表面のクリーニングとを同時進行で連続的に行うことができるため、感光体ドラムの円周長に無関係に小サイズのものから大サイズのものまでの枚葉紙印刷を行うことができる。
【0051】
従って、オフセット印刷機とは相違して圧胴の円周長に近似する絵柄サイズの場合であっても、圧胴径と同一の感光体ドラム及び転写ローラの構成が必須のものではない。このために、大サイズの印刷物でも圧胴(送り胴)の円周長のみを必要円周長にて構成すればよく、印刷ユニット自体の小型化も可能である。
【0052】
また、上記実施の形態において枚葉紙の搬送方式は、送り胴と渡し胴の作用を行う2つの圧胴の表面に設けられた紙くわえ爪にて枚葉紙をくわえて支持固定しながら受け渡し搬送するものであり、常時枚葉紙は紙くわえ爪にて位置固定されているため、高速、高精度の印刷物の生産が可能になる。
【0053】
また、各圧胴の周面に設けられる紙くわえ爪の周長方向の設置数は、印刷絵柄サイズと圧胴の周長との関係において複数設ける構成にすることも可能であるし、使用しない爪部分をカバー部材にて隠蔽して爪を選択的に使用することも可能である。また、上記各実施の形態においての渡しローラ4,5a,19a,19bにも必要に応じて紙くわえ爪が設けられる。この各渡しローラは、各実施において印刷サイズに合わせてローラ径を適宜変更することも可能である。
【0054】
上記した各実施の形態では枚葉紙の両面を電子写真印刷ユニットにて交互に印刷するようにしているので、例えば第1の圧胴6aに沿った枚葉紙の表面に表面印刷用の印刷ユニット7aにて印刷を行った後に、反転して第2の圧胴6bに沿う状態でこれの裏面に裏面印刷用の印刷ユニット7bにて印刷を行ったときに、この裏面印刷用の印刷ユニット7bの転写ローラ15と圧胴6b間の転写バイアスにより、上記表面印刷用の印刷ユニット7aにて印刷された表面側の画像のトナーの一部が裏面印刷用となっている第2の圧胴6bの表面に転移して付着する現象が発生する。
【0055】
このときにおいて、表面側と裏面側の絵柄が同一であれば上記転移付着したトナーが再度次の用紙表面に戻ることがあっても、転移したときと同一画像位置に戻ることとなるために上記転移付着したトナーが紙面汚れの原因とはなりにくい。
【0056】
しかしながら本願発明のように、デジタルデータによる電子写真印刷を行う場合には、印刷画像は可変データにて各印刷機ごとで変化することがあるため、上記転移して後に再度紙面側に戻ったトナーは非画像位置の汚れや画像の汚れとなって現れて印刷品質の劣化を誘うことになる。
【0057】
このような問題を解決するために、本願発明にあっては、図1、図2及び図5に示すように、枚葉紙の搬送方向上流側の電子写真印刷ユニットにて印刷された印刷面に周面が接触する圧胴の周面で、かつこの圧胴に対向する電子写真印刷ユニットにての印刷が完了した枚葉紙の下流側の圧胴への受け渡し位置より回転方向下流側の周面に、この周面に転移付着したトナーをクリーニングする圧胴クリーニング装置23を対設するようにした。
【0058】
図1、図2に示した実施の形態にあっては、第1の枚葉両面印刷機2aの第1の圧胴6aは枚葉紙の印刷面に対向しないので、この第1の圧胴6aの表面は枚葉紙の印刷面によって汚されることはない。そのためこの第1の枚葉両面印刷機2aでは、上流側で印刷された印刷面に対向する第2の圧胴6bのみにこれの枚葉紙受け渡し位置より回転方向下流側に圧胴クリーニング装置23を対設した。
【0059】
第2以下の枚葉両面印刷機2b〜2dでは、これの各圧胴2a,2bのそれぞれの枚葉紙の受け渡し位置より回転方向下流側の周面に上記圧胴クリーニング装置23を対設した。
【0060】
また、図5に示した実施の形態にあっては上記した実施の形態と同様に、第1の枚葉両面印刷機17aの第2の圧胴20bと、第2の枚葉両面印刷機17bの両圧胴20a,20bのそれぞれの枚葉紙受け渡し位置より回転方向下流側の周面に圧胴クリーニング装置23を対設した。
【0061】
上記圧胴クリーニング装置23は図6の各図に示されるものが用いられる。この例は第2の圧胴6aに対設したものについて説明する。
【0062】
図6(a)に示されたものは、圧胴6bに転接するクリーニングロール24にスプレー装置25より洗浄液をスプレーし、クリーニングロール24に転移したトナーをブレード26にてけずり取るようになっている。
【0063】
図6(b)に示したものは、クリーニングロール24に転移したトナーは、クリーニングロール24を不織布27にて拭くことにより除去するようになっている。このときの不織布27は順次繰り出し、巻き取るようになっていて、常に新しい部分がクリーニングロール24に摺擦できるようになっている。
【0064】
また、この圧胴クリーニング装置23としては図6(c)に示すように圧胴6bにキャリア液を薄く塗布しながらブレード28を当接したもの、あるいは回転ブラシ29を接触させたものであってもよい。
【0065】
上記したようにトナーの転移付着を阻止しようとする圧胴の場合、これの表面にトナーの移転付着しにくい物質、例えばフッ素樹脂やテフロン(登録商標)、さらにセラミックスをコーティングするようにしてもよい。この場合、この表面処理と共に上記圧胴クリーニング装置を併用することにより、より効果的である。
【0066】
さらに上記圧胴クリーニング装置23としては、圧胴にクリーニングローラを転接させて洗浄すると共に、このクリーニングローラと圧胴との間に電位差を設けることでさらに洗浄効果を上げることができる。この場合、例えば圧胴の電位を−1200〜−1400Vとし、クリーニングロールの電位を−2000V前後に設定することでトナーの転位を促すことができる。なお当然のことながら、このとき用いられるクリーニングロールに使用するゴムには導電性のものを使用する。
【符号の説明】
【0067】
1,1′…枚葉両面多色印刷機、2a,2b,2c,2d…枚葉両面印刷機、3…給紙装置、4…入口側渡しローラ、5…排出装置、5a…出口側渡しローラ、5b…デリバリ装置、6a,6b,20a,20b…圧胴、7a,7b,21a,21b,22a,22b…電子写真印刷ユニット、8…感光体ドラム、9…除電器、10…帯電装置、11…露光装置、12…現像装置、13…現像ローラ、14…キャリア液除去装置、15…転写ローラ、16…転写ローラクリーニング装置、17a,17b…枚葉両面印刷機、19a,19b…渡しローラ、23…圧胴クリーニング装置、24…クリーニングローラ、25…スプレー装置、26,28…ブレード、27…不織布、29…回転ブラシ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周面に紙くわえ爪を設けた2個の圧胴を有し、一方の圧胴の回転方向下流側で、かつ斜め下側の周面に他方の圧胴を転接させ、
両圧胴を転接部が下方へ向く方向に回転するようにして、一方の圧胴に沿って搬送される枚葉紙が他方の圧胴に反転して搬送されるようにし、
一方の圧胴の他方の圧胴との転接部より回転方向上流側の周面と、他方の圧胴の一方の圧胴との転接部より下流側の周面のそれぞれに、各胴に沿って搬送される枚葉紙に電子写真印刷を行う電子写真印刷ユニットを対設し、
上記他方の圧胴の周面で、かつこの他方の圧胴に沿って搬送される枚葉紙を搬送方向下流側へ受け渡す位置より回転方向下流側の周面に、この他方の圧胴の周面をクリーニングする圧胴クリーニング装置を対設した
ことを特徴とする枚葉両面印刷機。
【請求項2】
請求項1記載の枚葉両面印刷機を、枚葉紙の搬送方向に、上流側の枚葉両面印刷機の他方の圧胴と下流側の枚葉両面印刷機の一方の圧胴とを転接して複数組配置し、
各枚葉両面印刷機の枚葉紙搬送方向上流側で印刷された枚葉紙の印刷面に接触する圧胴の周面で、かつこの圧胴の回転に沿って搬送される枚葉紙を搬送方向下流側へ受け渡す位置より回転方向下流側の周面に、この圧胴の周面をクリーニングする圧胴クリーニング装置を対設した
ことを特徴とする枚葉両面多色印刷機。
【請求項3】
周面に紙くわえ爪を設けた2個の圧胴を有し、一方の圧胴の回転方向下流側で、かつ斜め下側の周面に他方の圧胴を転接させ、
両圧胴を転接部が下方へ向く方向に回転するようにして、一方の圧胴に沿って搬送される枚葉紙が他方の圧胴に反転して搬送されるようにし、
一方の圧胴の他方の圧胴との転接部より回転方向上流側の周面と、他方の圧胴の一方の圧胴との転接部より下流側の周面のそれぞれに、各胴に沿って搬送される枚葉紙に電子写真印刷を行う電子写真印刷ユニットを各圧胴の回転方向にそれぞれ複数組ずつ対設してなる枚葉両面印刷機を、
枚葉紙の搬送方向に少なくとも2台配置し、
枚葉紙の搬送方向上流側に位置する枚葉両面印刷機の他方の圧胴と、下流側に位置する枚葉両面印刷機の一方の圧胴とを互いに転接する2つの渡しローラを介して連設し、
各枚葉両面印刷機の枚葉紙搬送方向上流側で印刷された枚葉紙の印刷面に接触する圧胴の周面で、かつこの圧胴の回転に沿って搬送される枚葉紙を搬送方向下流側へ受け渡す位置より回転方向下流側の周面に、この圧胴の周面をクリーニングする圧胴クリーニング装置を対設した
ことを特徴とする枚葉両面多色印刷機。
【請求項4】
圧胴クリーニング装置に、圧胴に転接するクリーニングローラを用い、圧胴とクリーニングローラ間に電位差を設け、電気泳動により圧胴に付着したトナーを除去するようにしたことを特徴とする請求項1,2,3のいずれか1項記載の枚葉両面印刷機及び枚葉両面多色印刷機。
【請求項5】
圧胴クリーニング装置を対設する圧胴の周面にトナーが付着しにくい材料にて表面処理を施したことを特徴とする請求項1,2,3のいずれか1項記載の枚葉両面印刷機及び枚葉両面多色印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−159733(P2012−159733A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19880(P2011−19880)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000161057)株式会社ミヤコシ (122)
【Fターム(参考)】