説明

枚葉式の処理装置及び処理方法

【課題】 処理容器内に晒される軸受をなくして、パーティクルの発生を完全に防止することができる枚葉式の処理装置を提供する。
【解決手段】 処理容器32内にて載置台38上に載置された被処理体Wに対して所定の処理を施す枚葉式の処理装置において、前記載置台を浮上させる浮上用磁石機構60と、前記載置台の周縁部に設けた羽根部材44と、前記羽根部材に対して不活性ガスを噴射させて前記載置台に回転力を付与する回転用ガス噴射手段64とを備えるように構成する。これにより、処理容器内に晒される軸受をなくして、パーティクルの発生を完全に防止する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウエハ等の被処理体を処理するための枚葉式の処理装置及び処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、半導体集積回路を製造するためには、半導体ウエハ等のシリコン基板に対して成膜処理、アニール処理、酸化拡散処理、スパッタ処理、エッチング処理、窒化処理等の各種の処理が複数回に亘って繰り返し行なわれる。この場合、集積回路の各素子の電気的特性や製品の歩留り等を高く維持するためには、上述したような各種の処理は、ウエハの表面全体に亘ってより均一に行なわれることが要求され、このためには、処理の進行はその時のウエハ温度や処理ガスの流れ方等に大きく依存して左右されることから、処理時においてウエハ温度の面内均一性やガス流の分布の均一性を高く、且つ精度良く維持しなければならない。
【0003】このように、ウエハ温度の面内均一性やガス流の分布の均一性を高く維持する手法としては、従来において種々提案されているが、その中でも比較的有効な手段として、例えば枚葉式の処理装置を例にとれば、半導体ウエハを載置する載置台を回転(自転)させて温度ムラやガス流の不均一分布の発生をできるだけ抑制するようにした手法や、或いは温度分布の改善のためにはウエハを高速加熱できる加熱ランプ手段からの放射熱をゾーン毎に選択的に制御できるようにした手法が広く知られている。このような従来の処理装置の一例を図10を参照して説明する。図10は従来の枚葉式の処理装置の一例を示す概略構成図である。図10において、真空引き可能になされた例えば非磁性材料であるアルミニウム製の処理容器2内には、容器内側壁に大口径の円形リング状の軸受4を介して回転可能に支持された円筒状の載置台6が設けられており、この載置台6の上部のリング状の載置板8上に半導体ウエハWの下面周縁部を支持して載置するようになっている。このウエハWは、容器天井部の上方に設けた加熱ランプ10からの熱線を、透過窓12を介して照射することにより加熱される。
【0004】そして、上記円筒状の載置台6の下部側壁には、その周方向に沿って永久磁石14が配置されており、更に、容器側壁の外方には、上記永久磁石14と磁気的に結合するように駆動用永久磁石16がリング状に配置される。この駆動用永久磁石16は、容器外側壁に軸受18を介して回転可能に設けた磁石台20に固定されており、従って、駆動モータ22に連結される歯車機構24を介して伝達される駆動力でもって上記駆動用永久磁石16をその周方向に回転させることにより、これに磁気結合されている内側の永久磁石14を追従移動させて、載置台6と共にウエハWを回転させるようになっている。これにより、加熱ランプ10からの熱線やガスノズル26から供給される処理ガスを、ウエハ表面に対して等価的に略均等に分布させるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記した装置例にあっては、載置台6を回転自在に支持するために処理容器2内に設けられる軸受4は、パーティクル発生防止のために、ステンレス等よりも遥かに耐摩耗性に非常に優れた材料、例えば窒化シリコン(Si )等を用いているが、長期間の使用により、僅かではあるが、非常に微細なパーティクルが発生することは避けられず、製品歩留り低下の原因となってしまう。特に、半導体集積回路のデザインルールがより厳しくなって、更なる高集積化、高微細化及び薄膜化が要請される今日にあっては、上記問題点の解決が、早期に望まれている。また、上記した従来の装置例にあっては、複数の軸受4、18を設け、しかも、駆動用永久磁石16を機械的に回転させなければならず、装置構成も大型化し、且つ複雑である、といった問題点もあった。本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、処理容器内に晒される軸受をなくして、パーティクルの発生を完全に防止することができる枚葉式の処理装置及び処理方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に規定する発明は、処理容器内にて載置台上に載置された被処理体に対して所定の処理を施す枚葉式の処理装置において、前記載置台を浮上させる浮上用磁石機構と、前記載置台の周縁部に設けた羽根部材と、前記羽根部材に対して不活性ガスを噴射させて前記載置台に回転力を付与する回転用ガス噴射手段とを備えるように構成する。これにより、磁気浮上されている載置台の羽根部材に、回転用ガス噴射手段より不活性ガスを噴射してこれを回転させるようにしたもので、従来装置において必要とされた処理容器内の軸受等を不要にでき、従って、処理容器内にパーティクルが発生することを大幅に抑制することが可能となる。また、軸受や複雑な回転機構を不要にできるので、装置自体を小型化し、且つ構造を簡単化することが可能となる。
【0007】また、例えば請求項2に規定するように、前記載置台の回転の軸振れを防止するための軸安定用磁石機構が設けられる。これによれば、軸安定用磁石機構により載置台の回転の軸振れを抑制してこれを安定的に回転することが可能となる。また、例えば請求項3に規定するように、前記羽根部材に対して、前記回転用ガス噴射手段からのガス噴射方向とは逆方向に不活性ガスを噴射させて制動力を付与する停止用ガス噴射手段が設けられる。これによれば、停止用ガス噴射手段から不活性ガスを噴射させることにより、回転中の載置台に対して制動力を付与して、この回転を抑制したり、或いは載置台を急速に停止させることが可能となる。
【0008】また、例えば請求項4に規定するように、前記回転用ガス噴射手段のガス噴射口は、前記処理容器の中心に対して略対称に設けられる。これによれば、載置台の回転中心に対して偶力となる回転力を付与できるので、この回転中心を安定化させることが可能となる。また、例えば請求項5に規定するように、前記載置台は、前記被処理体を保持する載置板と、前記載置板に連結された円筒体状の回転脚部とよりなる。
【0009】また、例えば請求項6に規定するように、前記羽根部材は、前記回転脚部の上端周縁部に設けられる。また、例えば請求項7に規定するように、前記羽根部材は、前記回転脚部の下端部に設けられる。
【0010】更に、例えば請求項8に規定するように、前記処理容器には、前記載置台の回転位置を検出する回転位置検出センサ部が設けられる。これによれば、回転位置検出センサ部により、載置台の回転位置を検出することが可能となる。また、例えば請求項9に規定するように、前記載置台の回転速度を検出する回転速度検出センサ部と、該回転速度検出センサ部の出力に基づいて前記回転用ガス噴射手段と前記停止用ガス噴射手段とを制御する回転制御部とを備える。これによれば、回転速度検出センサ部により載置台の回転数を検出し、この検出値に基づいて回転用ガス噴射手段や停止用ガス噴射手段を制御することにより、載置台を適正な回転数で安定的に回転できるのみならず、処理完了時には迅速に載置台の回転を停止させることが可能となる。
【0011】また、例えば請求項10に規定するように、前記浮上用磁石機構は電磁石を有しており、前記処理容器側には前記載置台の非浮上時に動作する予備用スラスト軸受が設けられる。これによれば、停電等により浮上用磁石機構の電磁石への供給電力が突発的に遮断されて磁気浮上力が消失した際には、落下する載置台を予備用スラスト軸受により受けて、この載置台の回転を維持することが可能となる。請求項11に規定する発明は、上記装置発明により行われる方法発明を規定したものであり、すなわち、処理容器内に設置されている載置台上に載置した被処理体に対して所定の処理を施すに際して、前記載置台を磁気力により浮上させた状態で前記載置台に設けた羽根部材に不活性ガスを吹き付けることにより前記載置台を回転させるようにしたことを特徴とする処理方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る枚葉式の処理装置及び処理方法の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。図1は本発明の処理装置を示す構成図、図2は図1中の載置台を示す縮小上面図、図3は図1中の載置台を示す縮小下面図、図4は処理容器の下部を示す横断面図、図5は羽根部材の取り付け状態を示す部分拡大図、図6は載置台の回転と回転速度の制御態様を示す図、図7は載置台の回転位置検出センサ部を示す図である。図示するように、この処理装置30は、例えばステンレススチールやアルミニウム等により円筒体状に成形された処理容器32を有している。この処理容器32の天井部の開口には、この処理容器32内へ必要な処理ガスを導入するための処理ガス導入手段としてシャワーヘッド部34がOリング等のシール部材36を介して設けられる。また、容器底部の周縁部には排気口37が設けられており、この排気口37には図示しない真空ポンプ等を介設した排気系を接続して処理容器32内を真空引き可能としている。容器側壁には、被処理体である半導体ウエハを搬出入する際に開閉されるゲートバルブ33が設けられる。
【0013】上記処理容器32内には、被処理体としての半導体ウエハWを載置するための載置台38が設けられる。この載置台38は、例えばアルミニウム等の非磁石材料よりなる円筒体状の回転脚部40と、この回転脚部40の上端開口部を覆うようにして設けた薄板状の載置板42とにより主に構成されており、この載置板42上に上記ウエハWを直接的に載置して支持するようになっている。そして、上記回転脚部40の上端のフランジ部40Aには、図2にも示すように本発明の特徴とする4角形状の小さな羽根部材44が多数設けられている。この羽根部材44は、図2においては回転脚部40の上端周縁部である上記フランジ部40Aの側面に、その周方向に沿って等間隔で24個設けられている。そして、この4角形状の羽根部材44は、図5にも示すように、ウエハWを載置する載置面、すなわちフランジ部40Aの上面に対して所定の角度θ、例えば45度の角度だけ傾斜させて取り付けており、後述するように、不活性ガスの噴射により大きな回転力を付与し得るようになっている。尚、この羽根部材44の枚数、形状等は上記したものに限定されない。
【0014】そして、上記処理容器32の非磁性材料よりなる底部46は、上記円筒体状の回転脚部40を余裕をもって収容し得る大きさの円形リング状の収容空間48を形成するために円形リング状の屈曲部46Aが形成されており、また、底部46の中央部は大きく開口されている。そして、この開口には、例えばOリング等のシール部材49を介して石英ガラス等よりなる透過窓50が気密に設けられている。この透過窓50の下方には、ケーシング52により囲まれたランプ室54が区画形成されており、このランプ室54内に、反射板も兼ねる回転台55に支持された複数の加熱ランプ56が設けられて、上記ウエハWを裏面側から加熱し得るようになっている。また、この回転台54は上記ケーシング52の下部に設けた回転モータ58により回転される。
【0015】そして、この載置台38と容器底部46には、上記載置台38を磁気浮上させる浮上用磁石機構60が設けられる。具体的には、この浮上用磁石機構60は、上記載置台38のフランジ部40Aの下面に取り付け固定した上部永久磁石60Aと、これに対向するように上記容器底部46の上面に取り付け固定した下部永久磁石60Bとよりなる。上記上部永久磁石60A(図3参照)及び、下部永久磁石60Bは、共に円形リング状に成形されており、同じ極性が対向するように取り付けられ、この両磁石60A、60B間の反発力により、図1R>1に示すように、この載置台38の全体を浮上し得るようになっている。尚、図1中では、N極同士が対向するように両磁石60A、60Bは配置されている。また、上記磁石60A、60Bの全表面は、金属汚染を防止するために、例えば薄いアルミニウム膜によりコーティングされている。
【0016】また、上記載置台38の回転脚部40と収容空間48を区画する容器底部46の屈曲部46Aには、上記載置台38の回転の軸振れを防止するための軸安定用磁石機構62が設けられる。具体的には、この軸安定用磁石機構62は、図4にも示すように、回転脚部40の外周面に、その周方向に沿って所定の間隔ずつ隔てて配置した脚側永久磁石62Aと、この磁石62Aと対向するように上記底部46の屈曲部46Aの内周面に、その周方向に沿って所定の間隔ずつ隔てて配置した底部側永久磁石62Bとよりなる。ここで上記脚側永久磁石62A及び底部側永久磁石62Bは、同じ極性が対向するように配置されており、この両磁石62A、62B間の反発力により、この回転脚部40の回転中心を振らつかせることなく、安定化させるようになっている。図示例にあっては、N極同士が対抗するように両磁石62A、62Bは配置されている。
【0017】そして、容器天井部を形成するシャワーヘッド部34Aには、上記フランジ部40Aに設けた羽根部材44に対して下方向へ不活性ガスを噴射してこれに回転力を付与する回転用ガス噴射手段64が設けられると共に、これに対向する容器底部46には上記ガス噴射方向とは逆方向へ、すなわちここでは上方向へ不活性ガスを噴射して制動力を付与する停止用ガス噴射手段66が設けられる。具体的には、上記回転用ガス噴射手段64は、上記シャワーヘッド部34の周縁部に気密に下方向へ挿通してなる上部噴射ノズル68を有しており、このガス噴射口68Aは上記羽根部材44に接近させて設けられている。この上部噴射ノズル68は、処理容器32の中心に対して略対称に設けられており、載置台38に対して回転中心安定化のために偶力の回転力を付与するようになっている(図5参照)。図1では2個の上部噴射ノズル68が設けられており、図1では便宜上、ゲートバルブ33の取り付け位置と同じ側に一方の上部噴射ノズル68を設けたように記載しているが、実際には、図2に示すようにウエハWの搬出入に支障が生じないように両者の取り付け位置は位置ずれさせて設定されている。図2中では上部噴射ノズル68とゲートバルブ33の取り付け位置も模式的に示している。
【0018】一方、上記停止用ガス噴射手段66は、上記容器底部46の周縁部に気密に上方向へ挿通してなる下部噴射ノズル70を有しており、このガス噴射口70Aは上記羽根部材44に接近させて設けられている。上述のように、この下部噴射ノズル70は、上記上部噴射ノズル68に対して上下に対向するように配置されており、羽根部材44に対して、ここでは必要に応じて上方向に向かう不活性ガス、例えばN ガスを噴射して制動力を付与するようになっている(図5参照)。尚、上記噴射する不活性ガスとして、N ガスに限らず、他のガス、例えばHeガスやArガス等を用いてもよい。
【0019】図6は、上記回転用ガス噴射手段64の上部噴射ノズル68と停止用ガス噴射手段66の下部噴射ノズル70へのガス供給系を模式的に示しており、上記一対の上部噴射ノズル68は、途中に流量制御を行うマスフローコントローラ72及び開閉弁74を介設した上部用ガス通路76を介してN ガス源へ接続され、上記一対の下部噴射ノズル70は、途中にマスフローコントローラ78及び開閉弁80を介設した下部用ガス通路82を介してN ガス源へ接続される。そして、上記各マスフローコントローラ72、78及び開閉弁74、80は、例えばマイクロコンピュータ等よりなる回転制御部84により制御され、載置台38の回転の開始、停止及びその回転数をコントロールするようになっている。この回転制御部84へは、上記処理容器32に設けた回転速度検出センサ部86(図6参照)から検出した回転速度信号が入力されている。この回転速度センサ部86は、上記羽根部材44を上下に挟むようにして設けた発光素子86Aと受光素子86Bを有しており、発光素子86Aから射出される光線が上記羽根部材44により遮断される回数を単位時間毎に計測することにより、その回転速度を求めるようになっている。尚、上記発光素子86Aと受光素子86Bは、処理容器32内の汚染を防止するために、上記加熱ランプ56に対して設けた透過窓50を小型にした構造の透過窓を介して設けるように構成するのがよい。
【0020】また、処理容器32には、図7に示すように、例えば発光素子と受光素子とを一体的に組み込んでなる回転位置検出センサ部88が設けられており、上記羽根部材44からの反射光を受けるようになっている。の場合、例えば複数枚ある羽根部材44の内の一枚のみの反射率を変えており、この反射率の異なる羽根部材の位置をホームポジションとし、そして、このホームポジションを起点として何枚の羽根部材44が通過したかを検知することにより、その回転位置を求めることができる。この求めた回転位置の信号は上記回転制御部84へ入力されるようになっている。尚、この回転位置検出センサ部88も、処理容器32内の汚染を防止するために、上記加熱ランプ56に対して設けた透過窓50を小型にした構造の透過窓を介して設けるように構成するのがよい。また、図2においては、回転速度センサ部86や回転位置検出センサ部88の取り付け位置が模式的に示されている。また、図示されていないが容器底部46には、ウエハWの搬出入時にこれを持ち上げるために昇降可能になされたリフタピンも設けられているのは勿論である。
【0021】次に、以上のように構成された処理装置を用いて行われる本発明方法について説明する。まず、予め真空状態に維持された処理容器32内へ、図示しないロードロック室等から開放されたゲートバルブ33を介して半導体ウエハWを搬入し、このウエハWを図示しないリフタピンを駆動することによって載置板42に載置して保持させる。そして、ウエハWの搬入が完了したならば、ゲートバルブ33を閉じて処理容器32内を密閉すると共に、処理容器32内を真空引きしつつシャワーヘッド部34から処理すべきプロセスに対応した所定の処理ガスを処理容器32内へ導入し、所定のプロセス圧力を維持する。例えば処理としてCVD成膜処理を行なうならば、成膜ガスをN 等のキャリアガスと共に処理容器32内の処理空間Sへ導入する。
【0022】また、容器底部46の下方に設けた加熱ランプ56からの熱線は透過窓50を通して載置板42の裏面に照射されており、これによりウエハ温度をプロセス温度まで昇温し、維持する。更に、この載置台38の全体は、浮上用磁石機構60の上部永久磁石60Aと下部永久磁石60Bとの間の反発力により常時浮上している。そして、この成膜処理時には、回転用ガス噴射手段64の上部噴射ノズル68から流量、或いは流速が制御された不活性ガスであるN ガスを載置台38に設けた羽根部材44に噴射手吹き付けているので、この風圧により、浮上している載置台38が回転されることになる。
【0023】このように、処理容器32内に軸受等を用いないで、載置台38を磁気浮上させて、不活性ガスの噴射圧によってこれを回転させつつウエハに対して処理を行うことができるので、ウエハに対する処理、ここでは成膜処理の面内均一性を高く維持しつつ、しかもパーティクルの発生を大幅に抑制することが可能となる。この場合、載置台38の回転脚部40と容器底部46には、軸安定用磁石機構62の脚側永久磁石62Aと底部側永久磁石62Bがそれぞれ設けられているので、これらの永久磁石62A、62B間の反発力により、この回転脚部40はこの回転中心が偏ることなく略垂直方向に安定的に維持され、この回転脚部46が容器底部46の壁面に接触することを防止することができる。従って、この点よりも、軸安定用磁石機構62を設けることにより、更にパーティクル発生防止効果を向上させることができる。
【0024】この場合、両永久磁石62A、62Bの高さ方向の長さを長くする程、回転脚部40の回転中心の安定性をより向上させることが可能となる。また、この載置台38の回転数は、図6に示すような発光素子86Aと受光素子86Bとを有する回転速度検出センサ部86により常時検出されており、この検出値は回転制御部84に入力されている。そして、この回転制御部84は、上部用ガス通路76に介設したマスフローコントローラ72を制御することにより上記載置台38の回転数を略一定に維持させることになる。ここで、載置台38の回転数が規定数よりも多くなり過ぎた場合には、下部用ガス通路82のマスフローコントローラ78を制御して停止用ガス噴射手段66の下部噴射ノズル70から羽根部材44に向けてN ガスを噴射し、この羽根部材44に対して制動力を加えてこの載置台38の回転数を落とすようにすればよい。
【0025】また、所定の時間の成膜処理が終了したならば、回転用ガス噴射手段64の上部噴射ノズル68からのN ガス噴射を停止し、逆に、停止用ガス噴射手段66の下部噴射ノズル70からN ガスを噴射して羽根部材44に大きな制動力を加え、載置台38の回転を停止させる。この停止操作に際しては、図7に示す回転位置検出センサ部88により載置台38の回転位置を常時検出して、この検出値を回転制御部84へ入力しているので、載置台38の回転の停止時に、上部噴射ノズル68と下部噴射ノズル70からの噴射ガスを微妙にコントロールすることにより、この載置台38を適正な回転位置に停止させることができる。尚、ここでは、回転用ガス噴射手段64及び停止用ガス噴射手段66は、それぞれ共に一対2本の噴射ノズル68及び70を設けたが、この設置数には限定されず、それぞれ2対4本或いはそれ以上設けるようにしてもよい。
【0026】また、ここでは回転速度検出センサ部86や回転位置検出センサ部88は、羽根部材44に対応させて設けたが、これに限定されず、例えば回転脚部40にその周方向に目視可能な目印を等間隔で設け、これに対応させて上記回転速度検出センサ部86や回転位置検出センサ部88を設けるようにしてもよい。また、上記実施例では、容器底部側に設ける磁石として下部永久磁石60Bと底部側永久磁石62Bとを永久磁石で構成したが、これに限定されず、これらの一方の磁石を、或いは両方の磁石を電磁石で構成するようにしてもよい。図8R>8は上記したような本発明装置の変形例を示す構成図、図9は図8に示す処理容器の底部の部分を示す断面図である。尚、ここでは図1乃至図7において示した構成部材と同一部分については同一符号を付してその説明を省略する。
【0027】この実施例はアニール処理を行う処理装置を示しており、容器底部46の下方には、加熱ランプ56(図1参照)を設けないで、処理容器32の天井部に大口径の開口を設け、ここにOリング等のシール部材49を介して透過窓50を気密に設けている。そして、この透過窓50の上方にケーシング90で覆われたランプ室92を区画形成し、この中に複数本のアニール用ランプ94を配列して、半導体ウエハWに対して改質アニール用の紫外線や熱線等を照射するようになっている。また、処理ガス導入手段としては、ここではシャワーヘッド部に代えて、容器側壁に貫通させて処理ガスノズル96を設けており、このノズル96より処理容器32内へ所定の処理ガスを導入するようになっている。
【0028】更に、ここでは載置台38の一部を形成する載置板42は、図1に示した薄板円板形状ではなく、円形リング状に成形されており、この円形リング状の載置板42の内周側上面にウエハの周縁部の下面を接触させてこれを載置支持するようになっている。そして、浮上用磁石機構60に関しては、載置台38のフランジ部40A側には図1に示したと同様に上部永久磁石60Aを設けているのに対して、容器底部46には図1中の下部永久磁石60Bに代えて、円形リング状の大口径の下部電磁石60Cを設けて、これにライン98を介して浮上用電流を流すようになっている。この場合にも、この下部電磁石60Cの上面の極性としては、上記上部永久磁石60Aの下面の極性と同極のN極を発生させて浮上用の反発力を形成するようになっている。この場合、載置台38の回転中に停電等によって上記下部電磁石60Cへの給電が断たれて浮上力が消失した場合にあっても、この載置台38と容器底部46との摺動接触を避けるために、容器底部46の上面側には非浮上時に動作する大口径の予備用スラスト軸受100が設けられている。この予備用スラスト軸受100としてはパーティクルの発生の少ない、例えばセラミック製のものを用いるのがよい。この場合、載置台38が浮上時には、このフランジ部40Aの下面は、上記予備用スラスト軸受100の上面から上方へ浮上しており、下部電磁石60Cへの通電が遮断されると載置台38は落下してこの予備用スラスト軸受100でその荷重が受けられることになる。
【0029】そして、図1に示す装置例では、羽根部材44は載置台38のフランジ部40Aに取り付けていたが、本実施例では載置台38の回転脚部40の下端部に下方向へ略垂直に向けて設けている。そして、この容器底部46の屈曲部46Aに、図9にも示すように回転用ガス噴射手段64として水平方向に延びる複数の回転用噴射孔102が設けられている。図示例では4つの回転用噴射孔102が回転脚部40の周方向へ等間隔で設けられており、上記羽根部材44の表面に対して略垂直方向から不活性ガスであるN ガスを噴射して、これに回転力を付与するようになっている。また、上記各回転用噴射孔102に対して水平方向において対向する位置には、停止用ガス噴射手段66を形成する制動用噴射孔104が設けられており、回転方向とは逆方向になるように羽根部材44に対して不活性ガスであるN ガスを噴射し、これに制動力を必要に応じて付与するようになっている。尚、図8においては、上記回転用噴射孔102と制動用噴射孔104は、図面に対して垂直方向に沿ってN ガスが噴射されることになる。尚、各回転用噴射孔102及び各制動用噴射孔104は、それぞれ図6中の上部用ガス通路76及び下部用ガス噴射通路82に接続されて、各N ガスの供給が制御される。
【0030】この実施例の場合には、浮上用磁石機構60の上部永久磁石60Aと下部電磁石60Cとの間の反発力により載置台38の全体が磁気浮上することになり、そして、回転用噴射孔102から羽根部材44に向けて噴射されるN ガスにより載置台38が回転される。また、載置台38の回転を抑制するには、上記とは逆に、制動用噴射孔104から上記回転用のN ガスの噴射方向とは逆方向にN ガスを噴射することにより載置台38に制動力を付与してこの回転を減少、或いは停止させることができる。また、載置台38の浮上状態での回転途中において、何らかの理由により、下部電磁石60Cへの給電が遮断されて磁気浮上力が消失した場合には、落下する載置台38は予備用スラスト軸受100の上面で受け取られて回転が継続されることになり、載置台38と容器底部46との直接接触による過度の摩擦及びパーティクルが発生することを未然に防止することができる。
【0031】尚、以上の実施例では、ウエハに対する処理として成膜処理、アニール処理を例にとって説明したが、これに限定されず、酸化拡散、窒化処理、エッチング処理、スパッタ処理等にも本発明を適用し得るのは勿論である。また、上記実施例では被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、ガラス基板、LCD基板等にも本発明装置を適用できるのは勿論である。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の枚葉式の処理装置及び処理方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。請求項1、5〜7、11に規定する発明によれば、磁気浮上されている載置台の羽根部材に、回転用ガス噴射手段より不活性ガスを噴射してこれを回転させるようにしたもので、従来装置において必要とされた処理容器内の軸受等を不要にでき、従って、処理容器内にパーティクルが発生することを大幅に抑制することができる。また、軸受や複雑な回転機構を不要にできるので、装置自体を小型化し、且つ構造を簡単化することができる。請求項2に規定する発明によれば、軸安定用磁石機構により載置台の回転の軸振れを抑制してこれを安定的に回転することができる。請求項3に規定する発明によれば、停止用ガス噴射手段から不活性ガスを噴射させることにより、回転中の載置台に対して制動力を付与して、この回転を抑制したり、或いは載置台を急速に停止させることができる。請求項4に規定する発明によれば、載置台の回転中心に対して偶力となる回転力を付与できるので、この回転中心を安定化させることができる。請求項8に規定する発明によれば、回転位置検出センサ部により、載置台の回転位置を検出することができる。請求項9に規定する発明によれば、回転速度検出センサ部により載置台の回転数を検出し、この検出値に基づいて回転用ガス噴射手段や停止用ガス噴射手段を制御することにより、載置台を適正な回転数で安定的に回転できるのみならず、処理完了時には迅速に載置台の回転を停止させることができる。請求項10に規定する発明によれば、停電等により浮上用磁石機構の電磁石への供給電力が突発的に遮断されて磁気浮上力が消失した際には、落下する載置台を予備用スラスト軸受により受けて、この載置台の回転を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の処理装置を示す構成図である。
【図2】図1中の載置台を示す縮小上面図である。
【図3】図1中の載置台を示す縮小下面図である。
【図4】処理容器の下部を示す横断面図である。
【図5】羽根部材の取り付け状態を示す部分拡大図である。
【図6】載置台の回転と回転速度の制御態様を示す図である。
【図7】載置台の回転位置検出センサ部を示す図である。
【図8】本発明装置の変形例を示す構成図である。
【図9】図8に示す処理容器の底部の部分を示す断面図である。
【図10】従来の枚葉式の処理装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
30 処理装置
32 処理容器
34 シャワーヘッド部
38 載置台
40 回転脚部
40A フランジ部
42 載置板
44 羽根部材
50 透過窓
60 浮上用磁石機構
62 軸安定用磁石機構
62A 脚側永久磁石
64 回転用ガス噴射手段
66 停止用ガス噴射手段
68 上部噴射ノズル
70 下部噴射ノズル
76 上部用ガス通路
82 下部用ガス通路
84 回転制御部
86 回転速度検出センサ部
88 回転位置検出センサ部
100 予備用スラスト軸受
W 半導体ウエハ(被処理体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 処理容器内にて載置台上に載置された被処理体に対して所定の処理を施す枚葉式の処理装置において、前記載置台を浮上させる浮上用磁石機構と、前記載置台の周縁部に設けた羽根部材と、前記羽根部材に対して不活性ガスを噴射させて前記載置台に回転力を付与する回転用ガス噴射手段とを備えるように構成したことを特徴とする枚葉式の処理装置。
【請求項2】 前記載置台の回転の軸振れを防止するための軸安定用磁石機構が設けられることを特徴とする請求項1記載の枚葉式の処理装置。
【請求項3】 前記羽根部材に対して、前記回転用ガス噴射手段からのガス噴射方向とは逆方向に不活性ガスを噴射させて制動力を付与する停止用ガス噴射手段が設けられることを特徴とする請求項1または2記載の枚葉式の処理装置。
【請求項4】 前記回転用ガス噴射手段のガス噴射口は、前記処理容器の中心に対して略対称に設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の枚葉式の処理装置。
【請求項5】 前記載置台は、前記被処理体を保持する載置板と、前記載置板に連結された円筒体状の回転脚部とよりなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の枚葉式の処理装置。
【請求項6】 前記羽根部材は、前記回転脚部の上端周縁部に設けられることを特徴とする請求項5記載の枚葉式の処理装置。
【請求項7】 前記羽根部材は、前記回転脚部の下端部に設けられることを特徴とする請求項5記載の枚葉式の処理装置。
【請求項8】 前記処理容器には、前記載置台の回転位置を検出する回転位置検出センサ部が設けられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の枚葉式の処理装置。
【請求項9】 前記載置台の回転速度を検出する回転速度検出センサ部と、該回転速度検出センサ部の出力に基づいて前記回転用ガス噴射手段と前記停止用ガス噴射手段とを制御する回転制御部とを備えたことを特徴とする請求項3乃至8のいずれかに記載の枚葉式の処理装置。
【請求項10】 前記浮上用磁石機構は電磁石を有しており、前記処理容器側には前記載置台の非浮上時に動作する予備用スラスト軸受が設けられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の枚葉式の処理装置。
【請求項11】 処理容器内に設置されている載置台上に載置した被処理体に対して所定の処理を施すに際して、前記載置台を磁気力により浮上させた状態で前記載置台に設けた羽根部材に不活性ガスを吹き付けることにより前記載置台を回転させるようにしたことを特徴とする処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2002−280318(P2002−280318A)
【公開日】平成14年9月27日(2002.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−74853(P2001−74853)
【出願日】平成13年3月15日(2001.3.15)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】