説明

果実栽培時の果実形態の成形方法及び成形装置

【課題】果実の生長過程で、視覚を刺激し、興味をそそる形態に形成された成形装置を果実に被せることにより、完熟果を成形装置の形態に対応する形態に成形する方法及び装置を提供する。
【解決手段】果実の栽培において、果樹に着果し、果実の自然落果の後、個体数の調整のための人為的な間引きを行った後、残した果実が安定期に入ったとき、或いは着果した果実が完熟果の10〜20%の大きさに生長したとき、該果実に所定形態のニッパーを押して成形型を広げ、果実の結実枝が成形型の枝接続部内に取り囲まれるように成形型を果実に装着し、該果実が成熟果となって収穫するまで装着して成形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種果実の栽培の際に、花序が受粉して結実される果実が完熟果に生長する過程で果実の外形を所望形態に成形するための成形方法及び成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、果実は人間が食べられる全ての草木の実であって、蛋白質、炭水化物、糖分、繊維素、灰分、カリウム、カルシウム及びビタミンなど、人体に有益な成分が多様に含有されており、人間が度々摂取する食品である。このような果実は、現在数多い種類が自然状態で生長し、或いは人工栽培されて食卓に不可欠な食品として愛用されているにもかかわらず、肉類を好む人々からは避けられているのが現状である。このような肉類を好む階層の人々は肥満、過脂肪症などにより誘発される各種の疾病に陥り易く、健康を害しているのが昨今の実状である。
【0003】
一方、果実のなかで、リンゴ、梨、柿、桃、西瓜、まくわうり、柑橘、キーウィ、メロン、かぼちゃ、トマトなど、地上で実を結ぶ果実は殆ど完熟果の形態が球形となり、大変単調で無味乾燥に見えるため、果実に対する好みを幼児期より植え付けさせることが困難であった。また、装飾性が加わった芸術的価値を重視する現代杜会の飲食文化意識に対応するため、球形に育った果実を多様な形状に切って芸術的作品にまで昇華させた状態での料理を開発していることが行なわれている。
【特許文献1】特開平11−155393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、果実の着果から完熟果まで生長する過程で、単純な球形の果実に、菱形、ハート形など、視覚を刺激し、興味をそそる形態に形成された成形装置を被せることにより、完熟果を成形装置の形態に対応する形態に成形する方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の実施形態によれば、果実の栽培において、果樹に着果し、果実の自然落果の後、個体数の調整のための人為的な間引きを行った後、残した果実が安定期に入ったとき、或いは着果した果実が完熟果の10〜20%の大きさに生長したとき、所定形態のニッパーを押して成形型を広げ、果実の結実枝が成形型の枝接続部内に取り囲まれるように成形型を果実に装着し、該果実が成熟果となって収穫するまで該成形型を装着して成形することを特徴とする果実の成形方法を提供する。
【0006】
また、上記課題を解決するため、本発明の実施形態によれば、本体部と、ねじりコイルスプリングが外嵌された軸に支持され前記本体部に結合されるニッパー部と、前記本体部に形成され、果実の結実枝を取り囲んで支持する枝接続部と、内外部間の通気のために前記本体部に形成された通気孔とを含むことを特徴とする果実の成形装置を提供する。
前記本体部の内面にダイアモンド型又は半球形の突起を形成しておくとよい。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によると、果実が生長する過程で、果実の外部を取り囲むことで、果実を害虫、鳥類などから保護するとともに、農薬などの散布がほとんど必要なくなり、無公害果実を収穫することができ、且つ収穫される果実の形態を所望形状に成形することにより、食欲をそそるとともに、外観を美麗にして商品性を向上させ、商品価格を高めることができ、果実栽培農家の所得を増大させることができるなどの至大なる効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の最適な実施の形態について詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
図1は本発明による果実成形装置の本体部が閉じた状態を示す斜視図、図2は本発明による果実成形装置の本体部が開いた状態を示す斜視図、図3は本発明による果実成形装置を結実枝に装着した状態を示す斜視図、図4は本発明による果実成形装置内で果実が完熟した状態を示す部分拡大断面図、図5は本発明による果実成形装置の本体部の内面に形成された突起を示す部分拡大断面図、図6は本発明による果実成形方法及び成形装置により成形された完熟果の収穫状態を示す斜視図である。
【0010】
本発明は、果実の栽培において、果樹が開花し、花序が受粉して着果し、それら着果した果実の内いくつかは自然落果することになるが、その後、個体数の調整のための人為的な間引きを行い、着果した果実が安定期に入ったとき、或いは着果した果実が完熟果の10〜20%の大きさに生長したとき、成形型1のニッパー2を押して本体部3を広げ、果実11に被せることにより、果実11の結実枝10が枝接続部4に取り囲まれるように装着され、果実11が成熟果となって収穫するまで装着して成形させる果実の成形方法及び成形装置に係るものである。
【0011】
本発明による成形装置は、図2に示すように、成形型1のニッパー部2を押すと、本体部3が軸6を支点として広がり、開いた本体部3の内部に果実11が位置するように配設した後、ニッパー部2を放すと、軸6に外嵌されたねじりコイルスプリング7の弾発力により本体部3を閉じることになり、成形型1が果実11に装着された状態を維持することとなる。
【0012】
従って、一定の期間が経過し、果実11が成熟期を経て完熟果に生長して成形型1の大きさに飽和状態となるまで生長しても、ねじりコイルスプリング7の作用により成形型1の本体部3が果実の生長に合わせて広がり、果実11の生長を阻害しないとともに、果実11及び成形型1が膨張力により損傷や破損することを防止することができる。
【0013】
一方、本体部3の内面に形成された突起8は、図4及び図5に示すように、果実11の皮に微細な空気流路9を形成することになり、通気孔5を介して本体部3内に進入する空気が果実11全体に均一に供給されることになる。従って、果実11の生長を阻害しないとともに、トマトなどのように皮13の表面が柔らかく且つ滑らかな果実11を成形するにあたって、皮13が本体部3の内面にくっ付くことを防ぎ、生長過程で果実11が損傷することを防止する。また、果実11が成熟果となって収穫する際、皮13が本体部3の内面にくっ付いているおそれがあるが、上記突起8により本体部3を広げる過程で果肉12から皮13が分離剥離することを防止する。
【0014】
また、成形型1の本体部3の形状を図面ではハート形に例示したが、この形状に限定されることなく菱形、円錐形、円筒形、角錐形、六角形など色々な形状に成形することができる。どのような形態であっても、本体部3が箱状に形成されて果実11を取り囲むことにより、害虫又は鳥類などの接近を遮断して果実11の損傷を防止することができる。また、果実11が成熟果となって収穫する際、必要に応じて、成形型1を分離せずに、内部に果実11が入っているままで収穫すると、果実11の保管、貯蔵及び運搬が簡便で容易になるとともに、果実11の損傷を防止して消費者に高品質の商品を提供することができる。
【0015】
更に、成形型1の枝接続部4は、図3〜図5に示すように、ねじりコイルスプリング
7の弾発力により果実11を支える結実枝10を堅く支持するので、風雨などの悪天候が頻繁な地域で使用しても、果実11の落果を抜本的に防止することができる。
上記成形装置による成形方法により、図6に示すように、所定形態に成形された果実11を収穫することができる。
【0016】
前記成形型1の材質としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化
ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS)などの合成樹脂を用いて透明に形成するこ
とが好ましい。これは、植物の生長に必須な日光の供給を円滑にするためである。
【0017】
前記成形型1の本体部3の大きさは、果実の種類によって収穫する果実11の大きさが予測できるので、収穫する果実11の大きさに鑑みて5段階の規格に備えることが好ましい。すなわち、着果初期には小さな成形型1を被せ、果実11の生長程度に応じて漸次大きな規格の成形型1へ交替して被せることにより、果実11の生長に合わせて成熟果を得ることができる。また、成形型1は、本体部3がねじりコイルスプリング7により広がるようになっているので、成熟した果実11の大きさが成形型1の大きさ以上に生長しても、成形型1の範囲内で一時的に緩衝役割をすることになるので、たとえ成形型1の交替時期を見逃したとしても、果実11及び成形型1の損傷や破損を防止することができる。
【0018】
更に、本発明による成形型1を果実11に装着する場合、ニッパー部により装着作業が容易になるので、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0019】
以上、添付図面を参照しながら本発明の最適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に示す例に限定されるものではない。本発明は、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更又は修正が成し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による果実成形装置の本体部が閉じた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明による果実成形装置の本体部が開いた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明による果実成形装置を結実枝に装着した状態を示す斜視図である。
【図4】本発明による果実成形装置内で果実が完熟した状態を示す部分拡大断面図である。
【図5】本発明による果実成形装置の本体部の内面に形成される突起を示す部分拡大断面図である。
【図6】本発明による果実成形方法及び成形装置により成形された完熟果の収穫状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 成形型
2 ニツパー部
3 本体部
4 枝接続部
5 通気孔
6 軸
7 ねじりコイルスプリング
8 突起
9 空気流通路
10 結実枝
11 果実


【特許請求の範囲】
【請求項1】
果実の栽培において、果樹に着果し、いくつかの果実の自然落果の後、個体数の調整のための人為的な間引きを行った後、残した果実が安定期に入ったとき、或いは着果した果実が完熟果の10〜20%の大きさに生長したとき、該果実に所定形態のニッパーを押して成形型を広げ、果実の結実枝が成形型の枝接続部内に取り囲まれるように成形型を果実に装着し、該果実が成熟果となって収穫するまで装着して成形することを特徴とする果実の成形方法。
【請求項2】
本体部と、ねじりコイルスプリングの外嵌された軸に支持され該本体部に結合されるニッパー部と、該本体部に形成され、果実の結実枝を取り囲んで支持する枝接続部と、内外部間の通気のために該本体部に形成された通気孔とを含むことを特徴とする果実の成形装置。
【請求項3】
前記本体部の内面にダイアモンド型又は半球形の突起が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の果実の成形装置。
【請求項4】
前記成形型の本体部が、菱形、円錐形、円筒形、角錐形、六角形のいずれか一つの形態を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の果実の成形装置。
【請求項5】
前記成形型の材質が、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリスチレン(PS)の合成樹脂のいずれか1種からなることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の果実の成形装置。
【請求項6】
前記成形型が日光透過性の透明な材質からなることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の果実の成形装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−254829(P2006−254829A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78734(P2005−78734)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(505101570)
【Fターム(参考)】