説明

果肉入りゼリー状飲料及びその製造方法

【課題】パウチに備えられた吸い口から吸い込める程度の大きさに加工した比較的低pHで高酸度を示す果実の果肉を、比較的多量にゼリー状飲料に配合した場合であっても、プリゲルの生成を抑制でき、ゲル安定性に優れ、ゼリー状飲料特有の好ましいのど越しを示し得るゼリー状飲料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ゲル化剤と、果物の果肉と、液媒体とを含有する果肉入りゼリー状飲料は、果物の果肉の配合量が果肉入りゼリー状飲料中の40重量%以上であり、該ゲル化剤がキサンタンガム、ローカストビーンガム及びジェランガムであり、キサンタンガムのローカストビーンガムに対する重量比が0.25〜2:1であり、ジェランガムのキサンタンガムとローカストビーンガムとの合計に対する重量比が0.5〜1.5:1であり、100〜500Paの弾性と6000〜16000mPa・sの粘性とを示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実の果肉を非常に高い配合量で含有する果肉入りゼリー状飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイス状にカットした果実の果肉を入れたデザート用のカップ入りのゼリー製品が大きな市場を獲得しているが、この種のカップ入りゼリー製品はスプーンを用いて食さなければならず、また、果肉をしっかりと咀嚼しなければならないため、屋外や移動中に短時間且つ手軽に食し得るものではない。
【0003】
そこで、軽く、少ない回数の咀嚼で、且つ短時間で手軽にゼリー食品を食せるようにしたものとして、近年、吸い口付きのパウチ容器にゼリー状飲料を封入したものが上市されている。このような吸い口付きのパウチ容器に封入されたゼリー状飲料は、前述した従来のカップ入りゼリー食品とは異なり、独特の食感とのど越し感とを示すものであり、栄養補給食品や水分補給食品として、健常者のみならず嚥下困難者用の食品としても好ましい食品となっている。このようなゼリー状飲料としては、ゲル化剤として(A)キサンタンガム、(B)こんにゃく芋抽出物及び/又はローカストビーンガム及び(C)紅藻類由来ガム質(カラギーナン等)を併用したもの(特許文献1)、ゲル化剤としてアセチル基含量が1%以下のキサンタンガムと、カラギーナン、グルコマンナン及びローカストビーンガムからなる群より選択される一種又は二種とを併用したもの(特許文献2)等が提案されている。そして、このようなゼリー状飲料に果実の果肉を配合してその商品価値を高め、他のゼリー状飲料との差別化を図ることが企画されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−125715号公報
【特許文献2】特開2005−176749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの特許文献においては、果肉を使用してもよいとの記載はあるものの、実際に果肉を使用した例はなく、リンゴ濃縮果汁、ぶどう果汁、オレンジ混濁濃縮果汁を使用しているに過ぎず、果肉としての食感を有するゼリー状飲料が提案されているとは言い難い。
【0006】
そこで、本発明者らは、上述の特許文献に記載されたゲル化剤を用いて、パウチに備えられた吸い口から吸い込める程度の大きさに加工した果実の果肉をゼリー状飲料に配合することを試みたが、果肉の配合量を増加することにより果実の食感が向上するものの、以下の理由(a)〜(c)により、ゼリー状飲料に特有ののど越し感が得られないという問題があった。
【0007】
理由(a)
ゼリー状飲料用の果実として期待されているグレープフルーツ等はpHが約3.2と従来(約3.5以上)に比べて低く、酸度も従来(約0.5)に比べて約1.2と高いという性質を有する。従って、このような低pH域且つ高酸度域の果実と液媒体(例えば清水)とを含有するゲル状飲料用組成物を、上述したようなゲル化剤でゲル化させようとした場合、ゲル化させにくく、しかも経時的なゲル安定性が不充分である。これは、そのような条件下では、キサンタンガムのような増粘多糖類はゲル化し難く、また、ジェランガムについては、直径が5mm以上のゲル粒(プリゲル)が生じ易く、ローカストビーンガムについてはゲル化能が大きく低下するからである。寒天やカラギーナンを使用した場合にも、ゲル化し難く、たとえゲル化したとしても著しい離水が生じるからである。
【0008】
理由(b)
また、果実の果肉の含有量の増加は、ガムを溶解あるいは分散させる清水の使用量を相対的に少なくせざるを得ず、ゲル化剤のゲル化能を充分に発揮させることができない。
【0009】
理由(c)
また、果実の果肉として、グレープフルーツのサノウのように、果実の食感を保つためには、それ以上細かくすることができないものを使用した場合、サノウを全く潰さないと、確かに果実の食感に近づけることが可能となるが、比較的多数回、咀嚼しなければならず、ゼリー状飲料の利点(「軽く、少ない回数の咀嚼で且つ短時間に食することができること」及び「独特の食感とのど越し感とを示すこと」)が損なわれるという問題が生ずる。
【0010】
本発明は、以上の従来技術の課題を解決しようとするものであり、パウチに備えられた吸い口から吸い込める程度の大きさに加工した果実の果肉であって、比較的低pHで高酸度を示す果実の果肉を、比較的多量にゼリー状飲料に配合した場合であっても、プリゲルの生成を抑制でき、ゲル安定性に優れ、ゼリー状飲料特有の好ましいのど越し感を示し得るゼリー状飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、果物の果肉の配合量を果肉入りゼリー状飲料中の40重量%以上とした場合に、ゲル化剤として特定配合量でキサンタンガム、ローカストビーンガム及びジェランガムを使用し、且つ弾性と粘性を所定範囲に設定することにより上述の目的を達成できることを見出し、本発明のゼリー状飲料を完成させるに至った。また、ゲル化剤の中のキサンタンガムを予め液媒体中に加熱溶解しておき、その後にローカストビーンガムとジェランガムとを混合することにより、本発明のゼリー状飲料を調製できることを見出し、本発明の製造方法を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明はゲル化剤と、果物の果肉と、液媒体とを含有する果肉入りゼリー状飲料であって、
果物の果肉の配合量が果肉入りゼリー状飲料中の40重量%以上であり、
該ゲル化剤がキサンタンガム、ローカストビーンガム及びジェランガムであり、
キサンタンガムのローカストビーンガムに対する重量比が0.25〜2:1であり、
ジェランガムのキサンタンガムとローカストビーンガムとの合計に対する重量比が0.5〜1.5:1であり、
100〜500Paの弾性と6000〜16000mPa・sの粘性とを示す
ことを特徴とする果肉入りゼリー状飲料を提供する。
【0013】
また、本発明は、前述の果肉入りゼリー状飲料の製造方法であって、キサンタンガムを液媒体の一部に加熱溶解し、更に果物の果肉を加えた後、その果肉入り混合物に、液媒体の他の一部に溶解または分散させておいたローカストビーンガムとジェランガムとのガム混合物を投入して加熱混合し、得られた混合物を冷却することを特徴とする製造方法。キサンタンガムを液媒体の一部に加熱溶解し、得られた溶液に、残った液媒体と果物の果肉とローカストビーンガムとジェランガムとを加熱混合し、得られた混合物を冷却することを特徴とする製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の果肉入りゼリー状飲料は、果物の果肉の配合量が果肉入りゼリー状飲料中の40重量%以上であるにも拘わらず、ゲル化剤として特定配合量でキサンタンガム、ローカストビーンガム及びジェランガムを併用しているので、パウチに備えられた吸い口から吸い込める程度の大きさに加工した比較的低pHで高酸度を示す果実の果肉を、比較的多量にゼリー状飲料に配合した場合であっても、プリゲルの生成を抑制でき、ゲル安定性に優れ、ゼリー状飲料特有の好ましいのど越しを示すことができる。また、本発明の果肉入りゼリー状飲料の製造方法は、特定配合量のキサンタンガムを清水(液媒体)の一部に加熱溶解し、得られた溶液に、残った液媒体と果物の果肉と特定配合量のローカストビーンガムとジェランガムとを加熱混合し、得られた混合物を冷却するので、パウチに備えられた吸い口から吸い込める程度の大きさに加工した比較的低pHで高酸度を示す果実の果肉を比較的多量に配合した、良好なゲル安定性と好ましいのど越しとを示すゼリー状飲料を、プリゲルの生成を抑制しつつ製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の果肉入りゼリー状飲料は、ゲル化剤と、果物の果肉と、液媒体とを含有する。
【0016】
本発明の果肉入りゼリー状飲料においては、ゲル化剤として、キサンタンガム、ローカストビーンガム及びジェランガムとを併用する。しかもキサンタンガムのローカストビーンガムに対する重量比を0.25〜2:1、好ましくは0.25〜1:1とし、且つジェランガムのキサンタンガムとローカストビーンガムとの合計に対する重量比を0.5〜1.5:1、好ましくは1〜1.5:1とする。上記範囲外であると、「のど越し感」が損なわれ、また、プリゲルの生成を抑制できないためである。
【0017】
本発明のゼリー状飲料におけるゼリー状とは、分散媒である液体中に分散質である他の液体が分散した系の状態であって、常温下、外力が付加されない限り流動性を示さない系の状態を意味する。即ち、本発明の果肉入りゼリー状飲料の弾性は、低すぎるとゲル化が充分でなく、ジュースに近い食感となり、高すぎると比較的固いゲルとなるため、双方とも果肉入りゼリー状飲料の好ましいのど越し感が得られない。従って、ゼリー状飲料の弾性は、100〜500Pa、好ましくは200〜400Paである。また、本発明のゼリー状飲料の粘弾性は、低すぎるとゲル化が充分でなく、ジュースに近い食感となり、高すぎると比較的固いゲルとなり、フレーバーリリース性が低下するため、双方とも果肉入りゼリー状飲料の好ましいのど越し感が得られない。従って、ゼリー状飲料の粘性は、6000〜16000mPa・s、好ましくは8000〜13000mPa・sである。
【0018】
なお、弾性と粘性の測定は、レオメーター(CR−500DX、サン科学株式会社製)を用い、日本食品科学工学会誌,46(10),P657−663(1999)(“非回転二重円筒法による液状食品の粘性及び弾性の簡易測定”、鈴木寛一)に記載の解析手法に従って、果肉入りゼリー状飲料を20℃で直径50mmのカップに入れ、κ=0.5のプランジャーでそのカップを圧縮速度117mm/secの速度で押圧し、それにより得られるプランジャーへの応力を専用の解析ソフト(NRCC VISCO−PRO)で解析することにより行うことができる。
【0019】
本発明の果肉入りゼリー状飲料において、果実の果肉の果肉入りゼリー状飲料中の含有量は、40重量%以上、好ましくは40〜60重量%である。40重量%を下回ると、果実の食感が不充分となる。
【0020】
本発明のゼリー状飲料が含有する果物としては、特に制限はないが、桃、サクランボ等の核果果実、オレンジ、グレープフルーツ等の柑橘類果実、梨、リンゴ等の仁果果実、キウイフルーツ、マンゴー等の熱帯産果実、イチゴ、パイナップル等の果実的野菜、これら以外のブドウ、ブルーベリー等の果実を挙げることができる。これらの果実の果肉とは、それらの可食部のことである。特に好ましい果実としては、酸味と苦みと甘味と清涼感を示すグレープフルーツが挙げられる。グレープフルーツの場合、その果肉としては、個々に分離されたサノウが挙げられる。
【0021】
果実がグレープフルーツである場合、その果肉はほぐしたサノウである。本発明においては、壊れていないサノウの全サノウ中の割合が少なすぎると果実の食感が得られにくくなり、多すぎると果肉入りゼリー状飲料を飲み込み難くなり、そのため、しっかりと且つ多数回の咀嚼が必要となり、果肉入りゼリー状飲料独特ののど越し感が得られにくくなる。従って、グレープフルーツの壊れていないサノウの全サノウ中の割合は、好ましくは10〜60%、より好ましくは20〜50%である。
【0022】
なお、グレープフルーツの壊れていないサノウは、以下に説明するように確認することができる。即ち、グレープフルーツのサノウを含有している果肉入りゼリー状飲料をお湯に投入してゲルを溶解し、目開き1.7mmメッシュの篩で水切りを行い、水切りしたサノウ群について、目視で壊れているサノウと壊れていないサノウとを分別しながら数を数え、壊れていないサノウの割合を算出できる。ここで、壊れていないサノウとしては、完全に壊れていないサノウだけでなく、サノウの形状が7割保持されているサノウも包含される。のど越しの点で壊れていないサノウと同等の効果を有するからである。
【0023】
壊れていないサノウの数という観点から、果肉入りゼリー状飲料100g中に含まれているその数が少なすぎると果実の食感が得られにくく、多すぎると果肉入りゼリー状飲料を飲み込み難くなり、そのため、しっかりと且つ多数回の咀嚼が必要となり、果肉入りゼリー状飲料独特ののど越し感が得られにくくなる。従って、果肉入りゼリー状飲料100g中の壊れていないサノウの数は、好ましくは20〜200個、より好ましくは30〜100個である。
【0024】
また、果肉入りゼリー状飲料の食感とのど越しには、直径5mm以上のゲル粒の存在も大きく影響しており、その数が多いと果肉入りゲル状飲料がざらつき、食感とのど越し感が意図したものとかけ離れるので、本発明においては、果肉入りゼリー状飲料5g中に含まれる直径5mm以上のゲル粒の個数が好ましくは10個以下、より好ましくは5個以下である。
【0025】
このようなゲル粒の確認は以下のように行うことができる。即ち、果肉入りゼリー状飲料5gを採取してサンプルとし、そのサンプルに0.2mlのメチレンブルー(0.1重量%エタノール溶液で希釈)溶液を添加した後に加温してゲルを溶解する。すると、ゲル粒は着色されないので、視認できるようになり、その数を数えることができる。
【0026】
本発明の果肉入りゼリー状飲料は、果実の果肉の分散媒となる液媒体を含有する。液媒体としては、清水、果実果汁等を挙げることができる。ゲル化剤を溶解するためには、通常、清水を使用することが好ましい。
【0027】
本発明の果肉入りゼリー状飲料は、更に、クエン酸やクエン酸ナトリウムなどのpH調整剤、食品色素、スクラロースなどの甘味剤等を必要に応じて含有することができる。
【0028】
本発明の果肉入りゼリー状飲料は、すべての成分を同時に加熱混合することにより製造することができるが、ゲル粒の生成を抑制するためには、まず、キサンタンガムを液媒体(通常、清水)の一部(通常、ゲル化剤の重量の50〜150倍)に投入し、通常50〜98℃で加熱しながらファインミキサー等の混合器中で撹拌溶解し、得られた溶液に、果実の果肉と必要に応じて液媒体でもある果実果汁を添加して果実の変性を招かない35〜60℃程度の温度で加温撹拌して果肉入り混合物を調製する。この果肉入り混合物に、液媒体(通常、清水)の他の一部にローカストビーンガムとジェランガムとを投入して溶解又は分散させて得たガム混合物を投入し、通常50〜98℃に加熱して混合し、得られた混合物を室温まで冷却することにより製造することができる。
【0029】
このようにして得られる本発明の果肉入りゼリー状飲料は、図1に示すような吸い口10付きパウチ容器11(図中12は果肉ゼリー状飲料を表す。)に封入することにより、容器入りゼリードリンク製品として有用なものとなる。吸い口付きパウチ容器としては、特に制限されず、市販の一般的なものを利用することができる。また、本発明の果肉入りゼリー状飲料は、吸い口付きパウチ容器以外にも、従来のゼリー用のカップ容器、ドリンク用カップ容器等、様々な容器に入れ供することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0031】
実施例1
ファインミキサーを用いて、キサンタンガム0.05kgを清水14.65kgに90℃で加熱溶解させ、得られた溶液に、グレープフルーツのサノウ50kg、グレープフルーツ濃縮果汁10kg、砂糖5kgを投入し、40〜60℃の温度で加熱撹拌し、果肉入り混合物を得た。この果肉入り混合物に、ローカストビーンガム0.1kgとジェランガム0.2kgとを清水20kgに混合して得たガム混合物を添加し、加熱撹拌しながら液温を94℃に到達させ、その状態を4分間保ち、その後、室温まで冷却することにより果肉入りゼリー状飲料100kgを得た。
【0032】
なお、得られた果肉入りゼリー状飲料の弾性と粘性とは、レオメーター(CR−500DX、サン科学株式会社製)を用い、日本食品科学工学会誌,46(10),P657−663(1999)(“非回転二重円筒法による液状食品の粘性及び弾性の簡易測定”、鈴木寛一)に記載の解析手法に従って、果肉入りゼリー状飲料を20℃で直径50mmのカップに入れ、κ=0.5のプランジャーでそのカップを圧縮速度117mm/secの速度で押圧し、それにより得られるプランジャーへの応力を専用の解析ソフト(NRCC VISCO−PRO)で解析した結果、前者が300Paであり、後者が11000mPa・sであった。
【0033】
また、得られた果肉入りゼリー状飲料を、その3倍量のお湯(98℃)に投入してゲルを溶解し、目開き1.7mmメッシュの篩で水切りを行い、水切りしたサノウ群について、目視で壊れているサノウと壊れていないサノウとを分別しながら数を数え、壊れていないサノウの割合を算出したところ、30%であった。
【0034】
また、得られた果肉入りゼリー状飲料5gに、0.2mlのメチレンブルー(0.1重量%エタノール溶液で希釈)溶液を添加した後に98℃に加温してゲルを溶解し、着色されていない直径5mm以上のゲル粒の個数を数えたところ、5個であった。
【0035】
得られた果肉入りゼリー状飲料は、pHが3.1と低く、果実の果肉の配合量が50重量%と非常に高く、相対的に清水の量が少ないにもかかわらず、ゲル安定性に優れ、グレープフルーツ本来の食感があり、ゼリー状飲料特有ののど越し感を食した人に与えるものであった。得られた本実施例の果肉入りゼリー状飲料を、市販の図1に示したようなパウチ容器に封入し、実際に食したところ、グレープフルーツ本来の食感があり、ゼリー状飲料特有ののど越し感が得られた。
【0036】
比較例1
ファインミキサーを用いて、キサンタンガム0.05kg、ローカストビーンガム0.1kg及びジェランガム0.2kgを清水34.65kgに分散し、90℃で加熱混合し、得られた混合液に、グレープフルーツのサノウ50kg、グレープフルーツ濃縮果汁10kg、砂糖5kgを投入し、加熱撹拌しながら液温を94℃に到達させ、その状態を4分間保ち、その後、室温まで冷却することにより果肉入りゼリー状飲料100kgを得た。
【0037】
得られた果肉入りゼリー状飲料の弾性と粘性について、実施例1と同様の測定したところ、前者が50Paであり、後者が5000mPa・sであり、また、ゲル粒の個数を実施例1と同様に試験したところ多数(10を優に超える数)の直径5mm以上のゲル粒が観察された。このため、得られた果肉入りゼリー状飲料は、ジュース状の外観を呈し、著しいざらつき感があり、果物本来の食感は感じられず、ゼリー状飲料特有の好ましいのど越し感も得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の果肉入りゼリー状飲料は、パウチに備えられた吸い口から吸い込める程度の大きさに加工した比較的低pHで高酸度を示す果実の果肉を、比較的多量に配合した場合であっても、ゲル粒の生成を抑制でき、ゲル安定性に優れ、果実本来の好ましい食感とゼリー状飲料特有の好ましいのど越し感とを示すものである。そのため、ゼリー状飲料としては従来にない果実の果肉を高含量で含有した新規な商品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】吸い口付きパウチ容器に果肉入りゼリー状飲料を封入したゼリードリンク製品の説明図である。
【符号の説明】
【0040】
10 吸い口
11 パウチ容器
12 果肉入りゼリー状飲料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル化剤と、果物の果肉と、液媒体とを含有する果肉入りゼリー状飲料であって、
果物の果肉の配合量が果肉入りゼリー状飲料中の40重量%以上であり、
該ゲル化剤がキサンタンガム、ローカストビーンガム及びジェランガムであり、
キサンタンガムのローカストビーンガムに対する重量比が0.25〜2:1であり、
ジェランガムのキサンタンガムとローカストビーンガムとの合計に対する重量比が0.5〜1.5:1であり、
100〜500Paの弾性と6000〜16000mPa・sの粘性とを示す
ことを特徴とする果肉入りゼリー状飲料。
【請求項2】
果肉入りゼリー状飲料5g中に含まれる直径5mm以上のゲル粒の個数が10個以下である請求項請求項1記載の果肉入りゼリー状飲料。
【請求項3】
該果肉が柑橘類の果肉である請求項1又は2記載の果肉入りゼリー状飲料。
【請求項4】
該柑橘類がグレープフルーツである請求項1〜3のいずれかに記載の果肉入りゼリー状飲料。
【請求項5】
果肉がグレープフルーツのサノウであり、壊れていないサノウの全サノウ中の割合が10〜60%である請求項1〜4のいずれかに記載の果肉入りゼリー状飲料。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の果肉入りゼリー状飲料が、吸い口付きパウチ容器に封入されてなる容器入りゼリードリンク。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の果肉入りゼリー状飲料の製造方法であって、キサンタンガムを液媒体の一部に加熱溶解し、更に果物の果肉を加えた後、その果肉入り混合物に、液媒体の他の一部に溶解または分散させておいたローカストビーンガムとジェランガムとのガム混合物を投入して加熱混合し、得られた混合物を冷却することを特徴とする製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−244327(P2007−244327A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74946(P2006−74946)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(591116036)アヲハタ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】