説明

枠付きの展開可能な太陽発電機

【課題】枠付きの展開可能な太陽発電機を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの第二のバネ式テープ1Bと、少なくとも1つの第一のバネ式テープ1A及び少なくとも1つの第二のバネ式テープの双方に取り付けられている補強構造20とを備え、装置は、そこで第一のバネ式テープがフレキシブルな膜2を支持し、第二のバネ式テープならびに補強構造が心棒10の周りに一緒に巻き付けられている巻かれた状態と、第一のバネ式テープ及び第二のバネ式テープが広げられている展開された状態とを有し、そして装置は、心棒のレベルで、展開された状態において、第二のバネ式テープの付け根を変位させるための手段を備え、それによりフレキシブルな太陽電池を含むフレキシブルな膜の面の反対側にある体積内で補強構造が展開され、そしてフレキシブルな膜を支持し、そこで本装置は展開された状態にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、非常に大きな寸法の太陽発電機の展開用に有利に使用できる、宇宙において展開可能な構造に関する。
【背景技術】
【0002】
バネ式テープ(tape−spring)は、基本的にそれら自体の弾性エネルギーのおかげで、巻かれた状態から展開された状態へ切り替えできるテープのようなものとして、宇宙分野において知られている。展開された状態において、既知のバネ式テープはそれらを、そのままの状態に維持できる剛性を一般に示す。
【0003】
一般的に金属である従来のバネ式テープは、従ってそれらの安定な状態となるように広げる自然の傾向を有する。それらが強制的に畳み込まれる場合、それらは自分の横方向の曲率半径に等しい半径を形成しがちである。従って、それらをこの形状に巻かれたまま保つために、弱い外力を必要とする。この力が突然取り除かれた場合、展開は暴れて制御不能となる可能性があり、すなわちバネ式テープ全体がその全長にわたって同時に真っ直ぐに伸びる傾向を持ち得る。従来のバネ式テープは、それらの展開を制御することに関して困難さを示し得る。
【0004】
複合材料で作られた従来のバネ式テープもまた開発されている。この後者は大部分において従来の金属製バネ式テープと類似の特性を持つが、しかしそれら自体の屈曲半径を、ある程度は制御可能にする利点を提供する。それらは、大きい剛性/重量の比率及び小さい膨張係数という利点も示す。
【0005】
本出願者は、従来のバネ式テープを熱可塑性材料の層と結合させることが可能であると、既に実証している。この発明は仏国特許出願公開第0803986号明細書の対象となった。熱可塑性材料の層を含む従来のバネ式テープは、力を込めて巻かれ、加熱され、次に熱可塑性物質がバネ式テープを巻かれた状態で固定するように冷却され、それは安定した状態となる。局部的に加熱することにより、徐々にその集合体を展開することが可能である。
【0006】
代替として熱可塑性材料の代わりに、熱硬化性材料、又はより一般的には、温度しきい値を超えると大きな剛性変化を示す材料を用いることができる。
最後に、構造によって、複合のバネ式テープを双安定にすることが可能である。この課題に対して、特に“Carbon Fibre Reinforced Plastic Tape−springs”, J.C.H. Yee et al., AIAA 2004−1819,及び“Analytical models for bistable cylindrical shells”, S.D. Guest et al.のような研究論文が発行されている。
【0007】
双安定バネ式テープの注目すべき特性は、それらが展開された状態及び巻かれた状態の双方において、機械的に安定であるという事実にある。しかしながら、より安定した状態は依然として展開された状態である。双安定バネ式テープは、一般に非常に大きい力を通じて巻かれる。それらは外力無しで、それらの自然な曲率半径の付近で巻かれた状態において安定に留まる。展開を開始するために必要とされるのは、その一端を例えば動力化システムによって与えられる、僅かな強さの力で展開することのみである。その展開は非常に速くなり得るが、初期の展開点からは漸進的に留まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これに関連して、本発明が取り扱う全般的な課題は、非常に大きな寸法の太陽発電機の展開、及び非常に広い表面積を有する太陽発電機を支えるために、三次元的強化構造をどのようにして広げるかにある。
【0009】
先行技術は何ら満足できる技術的解決策を提案せず、そして本発明はこの隙間を埋めるために探求する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は従って、フレキシブルな又は半剛体の膜を支持する少なくとも1つの第一のバネ式テープを備えるか、又は共にフレキシブルに結ばれている細い平らな薄板のようなフレキシブルで剛性のある要素で構成される太陽発電機展開装置から成り、前記膜は、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換できる一組の要素がその上に配置されている面を有する。本発明による装置はまた、少なくとも1つの第二のバネ式テープと、前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ及び前記少なくとも1つの第二のバネ式テープの双方に取り付けられている補強構造とを備え、前記装置は、そこで前記少なくとも1つの第一のバネ式テープが膜を支持し、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープならびに補強構造が心棒の周りに一緒に巻き付けられている巻かれた状態と、前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ及び前記少なくとも1つの第二のバネ式テープが広げられている展開された状態とを有し、そして前記装置は、前記心棒のレベルで、展開された状態において、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープの付け根を変位させる手段を備え、それにより太陽エネルギーを電気エネルギーに変換できる要素を含む膜の面の反対側にある体積内で前記補強構造が展開され、そして前記フレキシブルな膜を支持し、そこで本装置は展開された状態にある。
【0011】
有利なことに、前記変位させる手段は、そこに前記少なくとも1つの第一のバネ式テープではなく前記少なくとも1つの第二のバネ式テープが固定されるか、又はそれぞれ、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープではなく前記少なくとも1つの第一のバネ式テープが固定される心棒につながれた可動要素から構成され得る。
【0012】
有利なことに、前記可動要素は、心棒と同じ軸を持ち、展開された状態で、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープの付け根か、又はそれぞれ、前記少なくとも1つの第一のバネ式テープの付け根を変位させるために、それ自体が心棒の回転の一部分の回転を行なうことができる第二の心棒である。
【0013】
別の実施形態によれば、前記可動要素は、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープの付け根か、又はそれぞれ、前記少なくとも1つの第一のバネ式テープの付け根を心棒に対して変位させることができる、機械的アクチュエータから成る。
【0014】
有利なことに、補強構造は一組のケーブル又は連接棒を備え得る。
【0015】
有利なことに、補強構造は一組の横方向薄板も備え得る。
【0016】
一つの実施形態によれば、本発明による装置は2つのフレキシブルな膜を、それぞれ心棒のいずれの側にも展開することができる2つの展開構造を備える。
【0017】
有利なことに、第一の膜に対して、変位させる手段は前記少なくとも1つの第二のバネ式テープの付け根を変位させることができ、第二の膜に対して、変位させる手段は前記少なくとも1つの第一のバネ式テープの付け根を変位させることができる。
【0018】
有利なことに、バネ式テープの少なくとも1つは、温度のしきい値を超えると大きな剛性の変化を示す材料の層を含む。これは、加熱による全体の漸進的な展開を確実にすることができる。
【0019】
本発明のその他の特徴及び利点は、制限されない例のために与えられる添付図を考慮して与えられる以下の記述から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】太陽発電機で覆われた2つの膜と、その膜と共に巻かれるそれらの補強構造とを含む、展開が進行中の本発明による装置の一例である。
【図2】図1よりも更に進んだ展開の段階で、補強構造が展開のプロセスにある、本発明による装置の同じ例である。
【図3】展開された、本発明による装置の同じ例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は展開が進行中の本発明による装置の一例の図を示す。本装置は1つの面上に、太陽電池のような、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換できる複数の要素を支持するフレキシブルな膜2の少なくとも1つの展開構造を備える。前記展開構造は、前記フレキシブルな膜を支持するフレームを構成する、1つ又は複数の第一のバネ式テープ1Aを含む。本発明による装置は、実施形態に応じて、(図にあるように)心棒10の両側にある2つのフレキシブルな膜2、又は単一のフレキシブルな膜2の展開を可能にする。さらに代替として、膜2は半剛体であり得るか、又は共にフレキシブルにつながれた細い平らな薄板のような、フレキシブルで剛性のある要素で構成され得る。
【0022】
巻かれた状態において、前記第一のバネ式テープ1Aは心棒10の周りに巻き付けられ、それはまた1つ又は複数のフレキシブルな膜2に対する巻き付け支持機能を確実にする。
【0023】
図1〜3に表わされている実施形態において、2つの第一のバネ式テープ1Aは、1つ又は複数のフレキシブルな膜2を支持するフレームを形成する。各々のフレキシブルな膜2用の前記第一のバネ式テープ1Aは、その構造の剛性を確保するため、望ましくは横方向の薄板3につながれる。
【0024】
図に表わされている展開装置は、巻き付けられた状態において、少なくとも1つの第二のバネ式テープ1B及び第一のバネ式テープ1Aと共に心棒10の周りに巻かれた補強構造20もまた備え、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換できる要素を含む面の反対側にある膜の面上に位置する。
【0025】
図2に表わされているように、より進んだ展開の状態において、本発明による装置は従って展開のプロセスにある補強構造20と、その補強構造によりフレキシブルな膜2から分離された第二のバネ式テープ1Bとを備える。補強構造20は、同じ構造の横方向の薄板、及び場合により存在する交叉したケーブル4によって第二のバネ式テープ1B同士を連結し、その機能はフレキシブルな膜2の支持部を強化することであり、それはフレキシブルな膜2が非常に大きな寸法であるとき、必須であると分かり得る。
【0026】
補強構造20は第一のバネ式テープ1A、及び第二のバネ式テープ1Bの双方に取り付けられる。
【0027】
本発明による装置は、前記心棒10のレベルで、展開の最後に、第二のバネ式テープ或いはバネ1Bの付け根、又は第一のバネ式テープ或いはバネ1Aの付け根を変位させるための手段も備え、それにより、前記補強構造20がフレキシブルな太陽電池を含むフレキシブルな膜2の面の反対側に位置する体積の中で展開され、そして前記フレキシブルな膜2を支持する。
【0028】
薄い展開可能な構造は本質的に比較的フレキシブルであり、その低い周波数と大振幅の振動モードにより、人工衛星の操縦性に対して問題をもたらし得る。補強構造によって分離され、そして変位させられる第一及び第二のテープを備える構造は、格子を構成する構造の上に載っているフレキシブルな膜を得ることを可能にし、その機械的剛性は第一のバネ式テープだけで構成される構造の剛性よりも格段に大きい。本構造の振動モードは、より高い周波数及び、より小さい振幅を有する。
【0029】
少なくとも1つの第二のバネ式テープ1Bの付け根、及び第一のバネ式テープ1Aの付け根をそれぞれ変位させるための前記手段は、心棒10に取り付けられ、前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ1Aではなく前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ1Bがそれに固定される任意の可動要素か、又はそれぞれ、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ1Bではなく前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ1Aがそれに固定される任意の可動要素で構成されることができ、前記可動要素は第一のバネ式テープ1A及び第二のバネ式テープ1Bが展開されるとき、変位させられる。従って、図1〜3に表わされる好適な実施形態において、本発明による装置は、心棒10の両側に2つのフレキシブルな膜2を展開することができる。図中の心棒10の右側に表わされる第一のフレキシブルな膜2に対して、展開の最後に変位させられるのは第二のバネ式テープ1Bの付け根であり、反対に、図中の心棒10の左側に表わされる第二のフレキシブルな膜2に対して、展開の最後に変位させられるのは第一のバネ式テープ1Aの付け根である。
【0030】
本発明の1つの好適な実施形態において、上述の可動要素は、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ1Bの付け根及び/又は前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ1Aの付け根を適切なやり方で変位させるように、展開された状態で、それ自体が心棒10の回転の一部分の回転を行なうことができる、心棒10と同じ軸を有する第二の心棒である。
【0031】
別の実施形態において、前記可動要素は、心棒10に対して前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ1Bの付け根、及び/又はそれぞれ、前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ1Aの付け根を変位させ得る、機械的アクチュエータから成る。
【0032】
図3は展開の最後における、本発明による装置を表わし、第二のバネ式テープ1B又は第一のバネ式テープ1Aの付け根が本発明に従って変位させられ、すなわち補強構造20によって分けられることにより、第一のテープ1Aは第二のテープ1Bから分離されている。
【0033】
本発明はこのように、大寸法の太陽発電機を支持できる三次元の強化構造を有し、低減された占有寸法を伴う、巻き取り可能な太陽発電機用の展開装置を提案する。
【符号の説明】
【0034】
1A 第一のバネ式テープ
1B 第二のバネ式テープ
2 フレキシブルな膜
3 横方向の薄板
4 ケーブル又は連接棒
10 心棒
20 補強構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽エネルギーを電気エネルギーに変換できる一組の要素がその面に配置されている、少なくとも1つの膜(2)を展開するための装置であって、前記装置が展開されるべき各々の膜(2)用の展開構造から成り、前記展開構造が前記膜を支持する少なくとも1つの第一のバネ式テープ(1A)を備えること、それが又、少なくとも1つの第二のバネ式テープ(1B)と、前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ(1A)及び前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ(1B)の双方に取り付けられている補強構造(20)とを備え、前記装置は、そこで前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ(1A)が前記膜(2)を支持し、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ(1B)ならびに前記補強構造(20)が心棒(10)の周りに一緒に巻き付けられている巻かれた状態と、前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ(1A)及び前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ(1B)が広げられている展開された状態とを有すること、及び前記装置が、前記心棒(10)のレベルで、展開された状態において、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ(1B)、又は少なくとも1つの第一のバネ式テープ(1A)の付け根を変位させるための、変位手段を備え、それにより、太陽エネルギーを電気エネルギーに変換できる要素を含む前記膜(2)の面の反対側にある体積内で前記補強構造(20)が展開され、そして前記膜(2)を支持し、そこで前記装置が展開された状態にあることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記変位させる手段が心棒(10)につながれた可動要素から構成され、そこに前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ(1A)ではなく前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ(1B)が固定されるか、又はそれぞれ、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ(1B)ではなく前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ(1A)が固定されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記可動要素が前記心棒(10)と同じ軸を持つ第二の心棒であり、展開された状態で、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ(1B)の付け根か、又はそれぞれ、前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ(1A)の付け根を変位させるために、それ自体が心棒(10)の回転の一部分の回転を行なうことができることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記可動要素が機械的アクチュエータから成り、前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ(1B)の付け根か、又はそれぞれ、前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ(1A)の付け根を前記心棒(10)に対して変位させることができることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記補強構造(20)が一組のケーブル又は連接棒(4)を備えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記補強構造(20)が一組の横方向薄板もまた備えることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
2つの展開構造を備え、2つのフレキシブルな膜(2)を、それぞれ前記心棒(10)のいずれの側にも展開することができることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
第一の膜(2)に対して、前記変位させる手段が前記少なくとも1つの第二のバネ式テープ(1B)の付け根を変位させることができ、第二の膜(2)に対して、前記変位させる手段が前記少なくとも1つの第一のバネ式テープ(1A)の付け根を変位させることができることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記膜(2)がフレキシブルであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記膜(2)が半剛体であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記膜(2)がフレキシブルで剛性の高い要素から成ることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記フレキシブルで剛性の高い要素が、共にフレキシブルにつながれている細い平らな薄板から成ることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
太陽エネルギーを電気エネルギーに変換できる前記要素が、フレキシブルな太陽電池であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記バネ式テープ(1A、1B)の少なくとも1つが、温度のしきい値を超えると大きな剛性の変化を示す材料の層を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140121(P2012−140121A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−286287(P2011−286287)
【出願日】平成23年12月27日(2011.12.27)
【出願人】(505157485)テールズ (231)
【Fターム(参考)】