説明

架橋されていないポリロタキサンの適用を含む化粧学的処置方法

本件特許出願は、ケラチン物質の化粧学的処置方法に係り、該方法は、ケラチン繊維、例えばヒトのケラチン繊維に、骨格、少なくとも2つの環状分子及び遮蔽基を含む、少なくとも1種の架橋されていないポリロタキサンを適用する工程を含み、該方法は、架橋段階を含まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋されていないポリロタキサンを使用する、ケラチン物質を処置するための化粧学的方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料の分野において、改善された機械的特性及びレオロジー特性を、ケラチン物質に与えることのできる製品、及び特に原料物質は、途切れることのない研究の主題となっている。
最近、この化粧料の分野において、研究は、ポリロタキサン(polyrotaxane)類の使用について行われている。
ポリロタキサン類は、包接化合物の化学的群の一部を構成し、これらは、限られたサイズを持つ空洞を形成する第一の分子であり、該空洞内には、第二の化学種の分子が収容される。該ポリロタキサンの場合には、該第一の分子は、主鎖と呼ばれるポリマー鎖であり、その周りには、該第二の環式物を構成する、リング状の環状分子が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
化粧学的な利用のための、架橋されておらず、しかも遮蔽されていない疑似-ポリロタキサンを含有する組成物の使用が、特に日本国特許出願JP09216815号及び同JP09315937号に記載されている。
該用語「疑似-ポリロタキサン」とは、少なくとも一つの主鎖及び、該主鎖が貫通する少なくとも2つのリング状の環状分子を含む、超分子構造を意味し、ここで該主鎖及び該環状分子は、共有結合を介して結合されておらず、それ故に該環状分子は、該主鎖に沿って自由に運動できる。
これらの環状分子は、遮蔽されておらず、このことはこれらが、該主鎖の各末端において、該環状分子の離脱を防止する基を含まないことを意味する。該環状分子は、従って「該主鎖から離脱」することができるが、該離脱は、満足できる化粧学的特性を得ることを可能としない。さらに、該環状分子は、該疑似-ポリロタキサンが溶液中におかれた場合に、抜け出す傾向を持つ。さらに、得られる該組成物の機械的な特性は、特に、しばしば極めて低いものとなる、その弾性及びその吸水容量において、常に最適であるわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ポリロタキサンの研究中に、本出願人は、架橋されていないポリロタキサンが、化粧料の分野において使用するのに特に有利である、機械的特性及びレオロジー特性を持つことを見出した。
ケラチン物質に適用された架橋されていないポリロタキサンが、その強力な吸収能又はその高い吸湿特性のために、これらのケラチン物質中又はその上に存在する水分によって活性化されることが見出された。この水分は、該複合体によって捕獲され、かつ該複合体の膨潤を開始し、結果として上記のような特別なレオロジー特性及び機械的特性をもたらす。
該架橋されていないポリロタキサンが、水性媒体中に搬送された際には、該水分を遊離することができ、また結果的に、該水性の架橋されていないポリロタキサンの適用を受けた該物質を湿潤することができ、かくして長期間に及ぶ湿潤化をもたらす。
【0005】
このように、スキンケア又はメイクアップの分野においては、これらポリロタキサンの使用は、処置したケラチン物質の長期に渡る湿潤化の達成を可能とし、結果として、例えば該ポリロタキサンによって搬送された該水分が、皺又は微細な線(fine lines)を満たすことによる、皮膚-平滑化作用の達成を可能とする。
ヘアケアの分野においては、架橋されていないポリロタキサンは、該繊維の湿潤化を通して、頭髪の増量、損傷を受けた毛髪のケア、縮れを減じることによる平滑化作用、及びスタイリングの改善の達成を可能とする。
【発明を実施するための形態】
【0006】
このように、本発明の主題は、ケラチン物質、例えば睫毛、皮膚、例えば顔、身体、頭皮又は口唇、及び外皮、例えば爪、睫毛、眉毛又は毛髪に、少なくとも1種の架橋されていないポリロタキサンの適用を含む、化粧学的な処置方法からなり、この方法は、架橋段階を含まない。
従って、本発明の方法は、該架橋されていないポリロタキサンの適用前、又はその後に、架橋段階を含むべきではない。
本発明の趣旨において、該用語「架橋されていないポリロタキサン」とは、ケラチン物質又は他のポリロタキサン類と共有結合を形成しない、ポリロタキサンを意味する。
本発明において定義する如きポリロタキサンは、主鎖の各末端部に、場合に応じて、環状分子と該主鎖との分離を防止する、遮蔽基として知られる分子構造が結合されている、疑似-ポリロタキサンから得られる。
【0007】
従って、ポリロタキサンは、少なくとも一つの主鎖及び、該主鎖が貫通する、少なくとも2つのリング状の環状分子を含む、超分子構造であり、ここで該主鎖及び該環状分子は、共有結合を介して結合されておらず、また該主鎖は、その末端部に遮蔽基を含んでいる。該遮蔽基は、嵩高くあるいはイオン性であって、該環状分子の離脱を防止する。
本発明において、該用語「主鎖」とは、線状、分岐、又は星型の構造を持つ任意のポリマー又はコポリマーを表すことを意図しており、該コポリマーは、ランダム、グラジエント(gradient)又はブロックコポリマーである。
本発明において、該主鎖が分岐又は星型分子の形状にある場合、この分子は、該環状分子が、該分岐分子の周りに、あるいは該星型分子の枝の周りに回転状態で配置され、あるいは該分子に沿って移動できるように選択される。
該主鎖の長さは、該環状分子が、それ自身回転し、あるいは該主鎖に沿って運動することを可能とする限り、特定の長さに限定されない。
【0008】
本発明に従って使用する該主鎖は、ポリマー、特に以下に列挙するポリマーから選択することができる:
・親水性ポリマー、例えばポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、ポリ((メタ)アクリル酸)、セルロースを主成分とする樹脂(カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びこれらの類似体)、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリビニルアセタールを主成分とする樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、デンプン及びその類似体、及び/又はこれらのコポリマー;
・疎水性ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、他のオレフィン系モノマーとのコポリマーの樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサン、ポリ(塩化ビニル)樹脂、ポリスチレンを主成分とする樹脂、例えばポリスチレン及びアクリロニトリル-スチレンコポリマー、アクリル樹脂、例えばアクリロニトリル-メチルアクリレートコポリマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチレン/ブチレンコポリマー、及びこれらの誘導体。
【0009】
これら化合物の中で、好ましい化合物は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン及びポリジメチルシロキサンである。特に好ましい化合物は、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールである。
該主鎖は、有利には相互に独立に、350g/モル以上、例えば350〜2,000,000g/モルなる範囲、好ましくは1,500〜1,000,000g/モルなる範囲、より好ましくは2,000〜800,000g/モルなる範囲、例えば7,000〜700,000g/モルなる範囲又は10,000〜300,000g/モルなる範囲内の質量平均分子量をもつ。
本発明で使用する該主鎖は、その各末端に遮蔽基を担持する。これらの遮蔽基は、該主鎖から該環状分子の離脱を阻止することができる、十分に嵩高い基を含む、任意のイオン性又は非イオン性分子である。これらの遮蔽基は、一般的に該主鎖の末端部に位置する反応性の基との反応により得られる。
【0010】
該反応性の基は、使用すべき該遮蔽基に依存する。列挙することのできる反応性の基の例は、ヒドロキシル基、アミノ基又はトシレート基、重合性基、活性化エステル基、例えばN-ヒドロキシサクシンイミドエステル基、カルボキシル基、チオール基等を含む。
本発明において、該環状分子は、一般的に、1又はそれ以上のO、N、Si、F、S又はP原子を含む、炭化水素を基本とする環状構造体である。この分子は、様々な化学基で置換されていてもよい。この分子は、1,2又はそれ以上の環状構造又は二重リングを含むことができ、あるいはマクロ環式構造、例えばシクロデキストリンであってもよい。
【0011】
本発明における環状分子の例は、以下に列挙するものを包含する:
・シクロデキストリン、例えばα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン及びグルコシルシクロデキストリン、並びにこれらの誘導体;
・クラウンエーテル;
・ベンゾ-クラウン、ジベンゾ-クラウン及びジシクロヘキサノ-クラウン、並びにこれらの誘導体。
該環状分子の内部空洞サイズは、該選択された主鎖の関数として変動し得る。
いずれにしても、該主鎖の鎖が貫通することのできる環状分子が選択される。従って、該環状分子の空洞は、好ましくは該主鎖を含めることのできる、最小の想像上の円筒の、横断面の径を越える径を持つであろう。
【0012】
相対的に大きな空洞を持つ環状分子及び相対的に小さな径を持つ主鎖を使用する場合、数個の主鎖を、該環状分子の空洞内に収容することができる。
使用できる該環状分子としては、シクロデキストリン及びより具体的にはα-シクロデキストリンが好ましい。
一態様によれば、α-シクロデキストリンが環状分子として使用され、かつポリエチレングリコールが主鎖として使用される。
該主鎖に貫通されている環状分子数と、この主鎖が貫通することができる、同一の特性の環状分子の最大数との間の比は、0.001〜0.6なる範囲、好ましくは0.01〜0.5なる範囲及びより一層好ましくは0.05〜0.4なる範囲内にある。この比は、「包接量」ということができる。
【0013】
最大包接量は、1に等しいものとして規格化される。この最大包接量は、1つの主鎖が含むことのできる環状分子の最大量に相当する。
該主鎖が、環状分子の過度に密な重なりを持たないことが好ましい。この密な重なり状態が、1に等しい包接量に相当する。密でない環状分子の重なりの生成は、環状分子を運動し得る状態に維持することを可能とし、それ故に、該ポリロタキサンは、破壊に対する高い抵抗性、大きな固有の柔軟性、及び膨張及び/又は復元能力を持つ。所望ならば、吸収力及び/又は吸湿特性を、該包接量によって調節することができる。
該環状分子は、該主鎖の包接後に、環化することができる。より具体的には、文字「C」に類似する、少なくとも一つの開放セグメントを有する、環状分子のプリカーサを使用することができる。この場合、該C-字型のセグメントは、該主鎖の包接後、又は該主鎖の遮蔽基による遮蔽後に、閉環することができる。該C-字型のセグメントを持つ分子に関しては、M. Asakawa等, Angewandte Chemie International Edition, 37(3), 333-337 (1998)及びM. Asakawa等, European Journal of Organic Chemistry, 5, 985-994 (1999)を参照のこと。これらの文献両者を、参考として本明細書に組入れる。
【0014】
該遮蔽基は、分子、巨大分子又は固体担体、又は混合物を表すことができる。
巨大分子又は固体担体は、数個の遮蔽基を含むことができる。巨大分子の遮蔽基は、該巨大分子の主鎖又は側鎖に存在し得る。
該遮蔽基が巨大分子Aである場合、該巨大分子Aは、マトリックスを構成しその一部は、疑似-ポリロタキサンを含み、あるいは逆に、該疑似-ポリロタキサンがマトリックスを構成し、その一部が該巨大分子Aを含むものであり得る。
該遮蔽基は、以下に列挙するものから選択される:
・ジニトロフェニル基、例えば2,4-及び3,5-ジニトロフェニル基;
・シクロデキストリン;
・アダマンタン基;
・トリチル基;
・フルオレセイン;
・ピレン;
・ナフタルイミド;及び
・これらの組合せ。
【0015】
一態様によれば、該主鎖がポリエチレングリコールである場合、該環状分子は、α-シクロデキストリン類から選択され、かつ該遮蔽基は、ジニトロフェニル基、例えば2,4-及び3,5-ジニトロフェニル基、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイン及びピレン、並びにこれらの組合せから選択することができる。
本発明において有用な該ポリロタキサンは、特許出願EP 1 283 218の教示に従って製造できる。
第一に、該環状分子及び該主鎖を一緒に混合して、該疑似-ポリロタキサンを製造するが、ここで該環状分子は、該主鎖に貫通されている。第二に、本発明において有用な該ポリロタキサンは、該環状分子の離脱を阻止するように、該主鎖の各端部部分を、遮蔽基で遮蔽することによって製造される。本発明の一態様によれば、α-シクロデキストリンが、環状分子として使用され、ポリエチレングリコールが主鎖として使用され、かつ2,4-ジニトロフェニル基が、遮蔽基として使用される。
【0016】
先ず、後に該ポリエチレングリコールの該末端部に遮蔽基を結合することができ、また該ポリロタキサンを製造するために、該ポリエチレングリコールの各末端部を、アミノ基に転化する。一変法において、ジェファミン(Jeffamine)なる参照名の下で、ハンツマン(Huntsman)社により市販されている、ジアミン-末端を持つPEG/PPOコポリマーを使用することができる。
該α-シクロデキストリン及び該アミノポリエチレングリコール誘導体を、次に一緒に混合して、該疑似-ポリロタキサンを製造する。その混合時間は、1〜48時間なる範囲にあり、またその混合温度は、0〜100℃なる範囲内にあり、結果的に該ポリエチレングリコール誘導体上の該α-シクロデキストリンの包接量は、0.001〜0.6なる範囲内にある。
一般に、平均分子量20,000を持つポリエチレングリコールは、最大で230個のα-シクロデキストリン分子含むことを可能とする。230分子に相当するこの最大包接量は、1に等しい。
【0017】
一態様によれば、60〜65(63)個のα-シクロデキストリン分子が、平均して、ポリエチレングリコール分子に貫通され、これは、該最大包接量に対して、0.26〜0.29(0.28)なる範囲内の包接度に相当する。α-シクロデキストリンに関する該包接量は、NMR、光吸収又は元素分析によって測定することができる。
このようにして得た該疑似-ポリロタキサンを、DMFに溶解した2,4-ジニトロフルオロベンゼンと反応させるが、これは、本発明において有用な上記架橋されていないポリロタキサンを得ることを可能とする。
本発明の方法は、化粧料組成物の形状にある、架橋されていないポリロタキサンの使用によって行うことができる。
該化粧料組成物は、水性又は無水であり得る。好ましくは、該架橋されていないポリロタキサンは、この組成物中に、該組成物の全質量に対して、0.01〜80質量%なる範囲、好ましくは1〜30質量%なる範囲及びより一層好ましくは3〜25質量%なる範囲の含有率で存在する。
【0018】
この組成物は、界面活性剤、ポリマー、セラミド及び疑似セラミド、ビタミン及びプロビタミン、サンスクリーン、顔料、真珠光沢剤又は不透明剤、フィラー、染料、金属イオン封鎖剤、可塑剤、可溶化剤、酸性化剤、塩基性化剤、中和剤、無機及び有機増粘剤、酸化防止剤、ヒドロキシ酸、溶媒、浸透剤、バッファー、分散剤、コンディショニング剤、保存剤、脂肪物質及び増粘性ポリマーから選択される、1種又はそれ以上の化粧学的補助剤を含むことができる。
本発明による組成物は、オイルとしても知られており、室温にて液体状態にある、1種又はそれ以上の脂肪物質を含むことができる。
該オイルは、単独又は混合物としての、無機、動物性、植物性又は合成起源の、炭素を基本とする、炭化水素を主成分とする、フルオロ及び/又はシリコーン揮発性オイル及び/又は不揮発性オイルから選択することができるが、これらは均質かつ安定な混合物を形成し、また意図された用途に対して適合性である必要がある。
【0019】
該化粧学的補助剤は、一般的に該化粧料組成物全質量に対して、0.1〜20質量%なる範囲、及び好ましくは1〜10質量%なる範囲の含量で該組成物中に存在する。
この組成物は、特に少なくとも1種の付随的な有機溶媒、特に少なくとも1種のアルコールを含むことができる。
本発明による該組成物において使用される該アルコールは、C1-C4低級アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、又はn-ブタノールから選択される、モノヒドロキシル化アルコールから選択することができる。また使用する該アルコールは、好ましくはエタノールである。同様に、プロピレングリコール又はグリセロール、及びポリオールエーテル、及びこれらの混合物を例示することも可能である。
本発明の組成物におけるアルコールの濃度は、広い範囲で変えることができる。一般に、該アルコールの濃度は、該化粧料組成物全質量に対して、20質量%以下、好ましくは0.1〜10質量%なる範囲及びより一層好ましくは1〜5質量%なる範囲内にある。
【0020】
本発明の方法を、水性組成物を用いて実施する場合、該架橋されていないポリロタキサンは、部分的に又は完全に水和された状態にあってもよい。該化粧料組成物のpHは、一般に3〜11なる範囲、及び好ましくは4〜9なる範囲内にある。
特定の一態様によれば、この水性組成物は、少なくとも50%の水を含む。
該化粧学的処置が、皮膚、口唇又は外皮のメイクアップを目的とする場合、この方法において使用する該化粧料組成物は、無機又は有機色素、例えば染料、レーキ又は顔料を含む。この組成物は、ファンデーション、リップスティック、リップバルサム、ネイルワニス、ネイルケア製品、マスカラ又はアイライナーの形状であり得る。
該化粧学的処置が、ヘアケア処置を意図する場合、使用する該化粧料組成物は、コンディショニングポリマー、洗浄剤、染料、固定ポリマー等を含む。該組成物は、シャンプー、ヘアコンディショナー、着色製品、スタイリング製品、例えばラッカー、ゲル又はムース、又はケア製品の形状であり得る。
【0021】
本発明の方法を、無水製品を用いて実施する場合、この組成物は、一般的に所定量の水を含み、該水の量は該組成物の10質量%未満、及び好ましくは該水の量は3質量%未満である。
この場合、該化粧学的処置方法は、該ポリロタキサンの適用前又はその後に、該ポリロタキサンの活性化を開始するために、該ケラチン物質を湿潤させる段階を含むことができる。
この活性化に要する水が、該ケラチン物質中に既に存在していてもよい。
かくして、該架橋されていないポリロタキサンを、睫毛又は毛髪に適用する場合、該水は、これら繊維の、正にその構造内に存在するものを起源とすることができる。
【0022】
該架橋されていないポリロタキサンを、リップスティック、グロス(gloss)、ファンデーション、又はボディー若しくはフェースケアクリームを通して口唇又は皮膚に適用する場合、該水分は、唾液又は汗を起源とするものであり得る。
該水分は、また周囲の湿分を起源とするものであってもよい。
本発明の方法において有用な該組成物は、エマルションの形状であり得る。従って、該エマルションは、毛髪、皮膚、口唇、睫毛又は爪に適用することを可能とする、任意の適当な形状、例えばO/W又はO/W/O型のローション、あるいはまたW/O又はW/O/W型のローションの形状であり得る。
【0023】
以下の例は、本発明の範囲を限定することなしに、本発明を例示するものである。

例1:架橋されていないポリロタキサンの調製
40.0gのHOOC-PEG-COOH (1.2×10-3モル、M= 33 000)及び160gのα-シクロデキストリン(0.16モル)を、加熱しつつ、1.35 Lの水に溶解し、次いでこの混合物を、4℃にて16時間冷却する。白色の複合体が回収され、これを凍結乾燥する。30gの該乾燥複合体を、200mLの無水DMFに溶解した、0.34gのアダマンタンアミン(2.2×10-3モル)、1.0 gの(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP試薬)(2.3×10-3モル)及び0.40mLのジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)と混合する。この反応混合物を、4℃にて16時間反応状態に維持し、次いでこの混合物を、400mLのDMF/メタノール(1:1)で2回及び250mLのメタノールで2回、遠心処理により洗浄する。
この生成物を、170mLのDMSOに溶解し、800mLの水から析出させ、次いで遠心処理によって2回、500mLの水で洗浄する。洗浄後、該生成物を、減圧下で乾燥して、17.6gの白色粉末を得る。
【0024】
例2:架橋されていないポリロタキサンの調製
0.9gの、フルカ(Fluka)社により市販されている、ポリエチレングリコール-ビスアミン(PEG-BAと略称される)及び3.6gのα-シクロデキストリンを、80℃にて、30mLの水に溶解し、得られるこの混合物を5℃にて一夜維持して、包接複合体の白色ペーストを得た。
該ペーストを乾燥し、また過剰量の2,4-ジニトロフルオロベンゼン(2.4mL)及び同時に10mLのジメチルホルムアミドを添加し、次いでこの混合物を、窒素雰囲気下で、室温にて一夜攪拌した。この反応混合物を、50mLのDMSOに溶解し、0.1%の水性塩化ナトリウム溶液(800mL)から2度析出させて、黄色の生成物を得た。この生成物を集め、水及びメタノールで洗浄し(夫々3回)、乾燥して、該ポリロタキサン(1.25g)を得た。
【0025】
例3:ファンデーション
【表1】

【0026】
手順:
該ポリロタキサンを該水に溶解し、次いで相Aの他の成分を添加する。該顔料は、3本ロールミルに通される(相B)。
相Cの成分を、水浴上で攪拌しつつ65-70℃に加熱する。
次いで、相A及び相Bを一緒に混合し、依然として65-70℃にて、迅速に攪拌しつつ10分間かけて、相Cを添加して、所定のエマルションを調製し、次いで該エマルションを室温まで冷却する。
例4:ファンデーション
架橋されていないポリロタキサンを含む以下の組成物を調製する:
【0027】
【表2】

【0028】
手順:
該ポリロタキサンを水に溶解し、次いで該相Cの他の成分を添加する。
該相Aの上記成分を、25℃を越えない温度にて、攪拌しつつ一緒に混合し、前もって三本ロールミルで処理した該顔料(相B)及び相Cを、迅速に攪拌しつつ、かつ温度を25℃に維持しつつ添加して、エマルションを生成する。
例5:スキンケアクリーム
以下の成分を含有するスキンケアクリーム組成物を調製した:
【0029】
【表3】

【0030】
手順:
・相Bを約75℃に加熱し、該アンモニウムポリアクリルジメチルタウラミドを、そこに配合する。
・この混合物を、均質なゲルが得られるまで攪拌する。
・相Aを約75℃に加熱に加熱する。
・相Aを相Bに配合することによって、該エマルションを調製する。
・40-45℃において、相Cを配合し、また該エマルションが完全に冷却されるまで、攪拌を続ける。
【0031】
例6:スキンケアクリーム
以下の成分を含むスキンケア組成物を調製する:
【0032】
【表4】

【0033】
シャンプー:
同様に、例1のポリロタキサン、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ココイルベタイン、例えばシメックス(Chimex)社によりシメキサン(Chimexane) HCなる名称の下で市販されている製品、保存剤及び脱イオン水を一緒に混合することによって、シャンプーを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン物質の化粧学的処置方法であって、主鎖、少なくとも2つの環状分子及び遮蔽基を含む、少なくとも一つの架橋されていないポリロタキサンを、該ケラチン物質に適用する工程を含み、該工程が架橋段階を含まないことを特徴とする、前記化粧学的処置方法。
【請求項2】
前記主鎖が、ポリ(ビニルアルコール)、ポリビニルピロリドン、ポリ((メタ)アクリル酸)、セルロースを主成分とする樹脂、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリビニルアセタールを主成分とする樹脂、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミン、ポリエチレンイミン、デンプン及びその類似体、及び/又はこれらのコポリマーから選択される親水性ポリマーである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記主鎖が、ポリオレフィン系樹脂、他のオレフィン系モノマーとのコポリマーの樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン及びポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)樹脂、ポリスチレンを主成分とする樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチレン/ブチレンコポリマー、及びこれらの誘導体から選択される疎水性ポリマーである、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記主鎖が、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールから選択される、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記主鎖が、350g/モル以上、好ましくは350〜2,000,000g/モルなる範囲内にある質量平均分子量を有する、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記環状分子が、シクロデキストリン及びその誘導体、クラウンエーテル、ベンゾ-クラウン、ジベンゾ-クラウン、及びジシクロヘキサノ-クラウン、及びこれらの誘導体から選択される、請求項1〜5の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記環状分子がα-シクロデキストリンである、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリロタキサン主鎖に貫通されている前記環状分子数と、該主鎖が貫通することができる、同一の特性の該環状分子の最大数との間の比が、0.001〜0.6なる範囲内にある、請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記遮蔽基が、イオン電荷を有し、及び/又は前記環状分子と前記主鎖との分離を防止するように、所定の立体的な容積を占有している、請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記遮蔽基が、ジニトロフェニル基、シクロデキストリン、アダマンタン基、トリチル基、フルオレセイン、ピレン、ナフタルイミド、及びこれらの組合せから選択される、請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記架橋されていないポリロタキサンが、化粧料組成物として適用される、請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記化粧料組成物が、無水又は水性である、請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記架橋されていないポリロタキサンを含有する前記組成物が、界面活性剤、ポリマー、セラミド及び疑似セラミド、ビタミン及びプロビタミン、サンスクリーン、顔料、真珠光沢剤又は不透明剤、染料、金属イオン封鎖剤、可塑剤、可溶化剤、酸性化剤、塩基性化剤、中和剤、無機及び有機増粘剤、酸化防止剤、ヒドロキシ酸、溶媒、浸透剤、バッファー、分散剤、コンディショニング剤、及び保存剤から選択される少なくとも1種の化粧学的補助剤を含む、請求項11又は13記載の方法。
【請求項14】
前記化粧学的補助剤が、前記化粧料組成物の全質量に対して0.1〜20質量%なる範囲、及び好ましくは1〜10質量%なる範囲内の量で存在する、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記架橋されていないポリロタキサンが、前記化粧料組成物の全質量に対して0.01〜80質量%なる範囲、好ましくは1〜30質量%なる範囲、及びより一層好ましくは3〜25質量%なる範囲の量で存在する、請求項11〜14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、前記架橋されていないポリロタキサンの適用段階の前又はその後に、前記ケラチン物質を湿潤させる段階を含む、請求項1〜15の何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−545627(P2009−545627A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523321(P2009−523321)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際出願番号】PCT/FR2007/051733
【国際公開番号】WO2008/017778
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】