説明

架橋した保護用外側コーティング

【課題】熱劣化に対する高い耐性を含めた優れた機械的性質を有する定着コンポーネントを提供する。
【解決手段】定着コンポーネント50は、基材52と、該基材52に配置されている保護用外層56とを含み、該保護用外層56が、ホスホニトリル三量体を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで開示される実施形態は一般に、高温に耐え、そのような条件において完全性を維持する架橋した保護用外側コーティングまたは外層を形成する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
その保護コーティングは、火炎または熱に耐性のある材料を必要とする様々な産業で使用することができる。そのコーティングは、高温で劣化性の温度に耐えることが必要な様々なコンポーネントの上に層を形成することができる。例えば、その保護コーティングは、熱可塑性の自動車付属品を被覆するための絶縁テープとして使用することができる。さらにその保護コーティングは、電子写真コンポーネント、例えば、定着コンポーネント、光受容体コンポーネントなどにも使用することができる。複数の実施形態において、そのコーティングは、デジタルを含めた静電記録装置で使用するための画像装置部材およびコンポーネントにおいて使用される。より詳しくは、本実施形態は、熱劣化に対する耐性を改善し、定着コンポーネントの耐用年数を延長する架橋性組成物を含む外側コーティングを有する定着コンポーネントに関連する。他の実施形態において、その架橋性組成物を含む外側コーティングは、高温条件下で作動する様々なその他の画像装置部材またはコンポーネントにおける外側の保護層として組み込まれる。
【0003】
圧力コンポーネント、定着コンポーネント、ドナーコンポーネント、および加熱コンポーネントなどを含めたコンポーネントは、複写基材にトナー画像を固定することを含めた多くの目的に役立つ。具体的実施形態において、保護用の外側コーティングまたは外層を含む定着部材が提供される。複数の実施形態において、その外層は、ローラ、ベルト、フィルムなどの基材を含めた多くの構成のものであり得る基材上に置かれる。他の実施形態においてはその外層は、その上に外側の剥離層を有する。さらなる実施形態においては、その基材と外層の間に中間層および/または接着剤層が置かれる。本発明は、カラーマシンを含めた電子写真機械における定着部材として有用であり得る。
【0004】
典型的な静電記録再生装置において、複写すべきオリジナルの光画像は、感光性部材上に静電潜像の形で記録され、その潜像は、その後通常トナーと呼ばれる検電性熱可塑性樹脂粒子の適用によって目に見えるようにされる。その可視トナー画像は、そのとき遊離した粉末形状をしており、容易に乱されあるいは破壊され得る。そのトナー画像は、通常、その感光性部材そのものであり得る支持体、またはその他の支持シート例えば普通紙などの上に固定または定着される。
【0005】
トナー画像を支持部材に固定するために熱エネルギーを使用することは周知であり、その方法は、圧力のかかった接触が維持されているロールの1対、ロールと圧力接触しているベルト部材、ヒータと圧力接触しているベルト部材などの様々な手段によって実質的に同時に熱および圧力の適用を提供することを含む。加熱は、ロール、プレート部材、またはベルト部材の1つまたは両方を加熱することによって適用することができる。ヒータと圧力接触した状態の薄膜を使用する固定装置については、電力消費は小さく、昇温時間が著しく短縮または削除される。
【0006】
定着コンポーネントに使用するかまたは組み込む材料が高温に耐えることができ、熱劣化に耐性があることは、かかるコンポーネントが高熱中で機能し、かつ/または高熱を発生するために定着過程において重要である。
【0007】
既知の定着コーティングは、高温のポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ、フッ素化エチレンプロピレン、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フルオロエラストマーなどを含む。しかしながら、これらのコーティングは、使用中に汚れないままではいない傾向がある。さらに、そのコーティングはしばしば使用中にすり減り、かつ/または作動中に傷物になる。加えて、これらの既知の表面は、しばしば、トナー、油または媒体からの破片と反応し、それが、その表面が汚くかつ/または汚染された状態になる原因となる。その表面は、順次、物理的に損傷を受け、有用な機能が低下し短命を有する定着部材をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,157,446号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
それ故、静電記録機械で使用するための定着コンポーネントに対して、熱劣化に対する高い耐性を含めた優れた機械的性質を有することの必要性が残っている。加えて、厳しい作動条件にもかかわらず定着コンポーネントの耐用年数を引き延ばすことの必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書に示されている態様によれば、基材、および該基材に配置されている外層を含むコンポーネントであって、該外層が、ホスホニトリル三量体を含むことを特徴とするコンポーネントが提供される。
【0011】
別の実施形態は、基材、および該基材に配置されている外層を含む定着コンポーネントであって、該外層が、ホスホニトリル三量体をさらに含み、さらに該定着コンポーネントが、圧力ベルト、定着ローラ、定着ベルト、および圧力ローラからなる群から選択されることを特徴とする定着コンポーネントを提供する。
【0012】
さらに別の実施形態においては、静電潜像をその上に受ける電荷保持性表面と、前記電荷保持性表面にトナーを付けて静電潜像を現像し、現像した画像を前記電荷保持性表面上に形成する現像コンポーネントと、前記電荷保持性表面からの現像画像を複写基材に転写する転写膜コンポーネントと、前記複写基材の表面にトナー画像を定着するための定着コンポーネントとを含み、前記定着コンポーネントが、基材および該基材に配置されている外層を含み、その外層がホスホニトリル三量体をさらに含む記録媒体に画像を形成するための画像形成装置が提供される。
【0013】
より良い理解のために、添付の図面を参照することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一般的な静電記録装置を示す図である。
【図2】本実施形態による定着ベルトおよび圧力ローラの断面図である。
【図3】本実施形態による圧力ベルトおよび定着ローラの断面図である。
【図4】本実施形態による2層構造を有する定着コンポーネントの略図である。
【図5】本実施形態による外側コーティングによって示される熱劣化に対する高い耐性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで開示される実施形態は、得られる外層が熱劣化に対して高度に耐性があるように高度の架橋を促進する新規な組成物を含む保護用外側コーティングまたは外層を概ね対象とする。その外側コーティングは、ホスホニトリル三量体およびフィルム形成性樹脂を含み、それは、既知のコーティング組成物ができなかった温度中で無傷のままでいることが可能なコーティングを酸触媒の存在下で架橋して形成する。そのコーティングは、高温で劣化性の温度に耐えることが必要な様々なコンポーネントの上に層を形成することができる。本実施形態において、該保護コーティングは、電子写真コンポーネント、例えば、定着コンポーネント、光受容体コンポーネントなどに使用することができる。特定の実施形態において、該保護コーティングは、定着コンポーネント、例えば定着部材などの外層として提供される。かかる定着部材は、改良された耐摩耗性および寿命の延長を示す。
【0016】
ホスホニトリル化合物を含む無機ポリマーは、有機ポリマーの代替として検討されてきた。ホスホニトリルポリマーは、有機材料と比較してより広い範囲の物理的特性を生ずる構造−機能の関係を獲得する比較的単純な手段を提供する。ホスホニトリルポリマーは、それぞれのモノマー(複数可)の側鎖基に基づく合成を通して調整することができる望ましい特性(例えば、耐熱性、電気特性、疎水性/親水性、生物医学的応用など)を有する。
【0017】
本実施形態は、新たなホスホニトリル三量体をフィルム形成性樹脂と架橋して保護コーティングを形成することに基づいている。該ホスホニトリル三量体は、6個のアルコキシアルキル結合を有しており、酸触媒の存在下で樹脂と架橋して熱劣化に対して高度の耐性を有するコーティングを形成することが可能である。特定の実施形態において、その酸触媒は、p−トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸など、およびそれらの混合物からなる群から選択される。本実施形態の新しいコーティングは、完全な改善された熱安定性(例えば、熱重量分析による800℃を超える温度での完全な分解)を示し、約600℃で一般に劣化するメラミンとポリオールなどの有機樹脂で一般的に見られるよりかなり高い。さらに、該コーティングは、濃酸に対して優れた耐性を示し、いくつかの市販のポリマー、例えば、高密度および低密度ポリエチレンならびにポリスチレンなどより硬くもある。
【0018】
上で述べたように、ホスホニトリル三量体は6個のアルコキシアルキル基により調製されている。それは市販のメラミン(例えば、Cytec Industries Inc.(West Paterson、New Jersey)から入手できるヘキサメトキシメチルメラミンのCymel 303など)と類似した構造的特徴を有するが、2倍の可能性のある架橋性アミノ基を有する。酸触媒の存在下で該ホスホニトリル三量体は、フィルム形成性樹脂と架橋する。これは、メラミンが酸触媒の存在下でヒドロキシル、カルボキシルおよび/またはアミド含有化合物とアルコキシ結合を通して架橋するいくつかのメラミンが有する反応と似ている。該ホスホニトリル三量体は、次の構造:
【化1】


を有しており、式中、RおよびRiiは、独立に選択されたアルキル基またはその誘導体である。
【0019】
複数の実施形態において、該ホスホニトリル三量体は、約300〜約900g/モル、または約500〜約700g/モルの分子量(Mw)を有する。該ホスホニトリル三量体は、ゼラチン状の形態をしていることがあり、有機溶媒に混和性である。
【0020】
さらなる実施形態において、該ホスホニトリル三量体は、その外側コーティングまたは外層中に、その外側コーティングまたは外層の全体重量に基づく質量で約5質量%〜約95質量%、または約50質量%〜約75質量%の量で存在する。他の実施形態において、該フィルム形成性樹脂は、その外側コーティングまたは外層中に、その外側コーティングまたは外層の全体重量に基づく質量で約5質量%〜約95質量%、または約25質量%〜約50質量%の量で存在する。複数の実施形態において、該外層中の該ホスホニトリル三量体対該樹脂の比は、約0.5〜約3である。複数の実施形態において、該フィルム形成性樹脂は、以下に限定はされないが、熱可塑性および熱硬化性樹脂、例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアリールエーテル、ポリアリールスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリイミド、アミノ樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、フェニレンオキシド樹脂、ポリスチレンとアクリロニトリルの共重合体、酢酸ビニル共重合体、アクリレート共重合体、アルキッド樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、ポリビニルカルバゾールなど、およびそれらの混合物から選択することができる。特定の実施形態において、該樹脂は、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなど、およびそれらの混合物からなる群から選択することができる。さらなる実施形態において、該保護用外側コーティングまたは外層は、約0.1〜約50μm、または約5〜約40μmの厚さを有する。
【0021】
この開示の例示的実施形態を、図面を参照しながら以下で説明する。以下の説明においては、図面の中の説明をするために選択されたもので本開示の範囲を定義または限定するものではない特定の用語が明確にするために使用される。別に指定のない限り、同じ参照番号を使用して、異なる図中の同じ構造を特定している。図中の構造は、それらの相対的比率に従って描かれてはおらず、その図面は、大きさ、相対的大きさ、または位置において本開示を限定しているものと解釈してはならない。さらに、該論考は、負に帯電した系を扱うが、本開示の画像形成部材は、正に帯電した系においても使用することができる。本発明は、定着コンポーネント、とりわけ、定着部材、圧力部材、ドナー部材、外部熱部材およびその他同様のコンポーネントを含む定着性コンポーネントといった、高温中で作動し、かつ/または高温を発する定着コンポーネントを対象とする。複数の実施形態において、該定着部材は、圧力ベルト、定着ローラ、定着ベルト、圧力ローラなどであり得る。
【0022】
本発明の実施形態において、該定着コンポーネントは、基材およびフィルム形成性樹脂と架橋したホスホニトリル三量体を含む保護用外層を含む。他の実施形態において、該定着コンポーネントは、保護用外層およびその保護用外層に配置された外側の剥離層を有する基材を含む。さらに他の実施形態において、任意の接着剤層および/または中間層が、その基材と保護用外層の間、および/またはその保護用外層とその外側の剥離層の間に存在することができる。
【0023】
図1を参照すると、典型的な静電記録再生装置において、複写すべきオリジナルの光画像は、感光性部材上に静電潜像の形で記録され、その潜像は、その後通常トナーと呼ばれる検電性熱可塑性樹脂粒子の適用によって目に見えるようにされる。具体的に言うと、光受容体10は、電力供給源11から電圧がかけられているチャージャ(帯電器)12によってその表面が帯電する。その光受容体はそのとき光学系または画像入力装置13、例えば、レーザーおよび発光ダイオードなどからの光に像様にさらされて、その上に静電潜像が形成される。一般にその静電潜像は、現像剤ステーション14からの現像剤混合物をそこで接触させることによって現像される。
【0024】
現像は、磁気ブラシ、パウダークラウド、またはその他の既知の現像方法の使用によって達成することができる。乾式現像剤混合物は、摩擦電気的にそこに付着するトナー粒子を有するキャリアの細粒を通常は含む。トナー粒子は、キャリアの細粒から潜像に引き寄せられてそこにトナー粉末の像を形成する。別法では、その中に分散しているトナー粒子を有する液体のキャリアを含む液体の現像剤材料を使用することができる。その液体の現像剤材料は、静電潜像と接触するように前進してトナー粒子が像の形態でそこに堆積する。
【0025】
そのトナー粒子が光伝導性表面に像の形態で堆積した後、それらは、圧力転写または静電転写であり得る転写手段15によって複写シート16に転写される。別法では、その現像した画像は、中間転写部材に転写し、その後、複写シートに転写することができる。
【0026】
現像した画像の転写が完了した後、複写シート16は、図1において定着および圧力ロールとして描かれている定着ステーション19に進み、そこで現像された画像は、複写シート16を定着および圧力部材の間に通すことによって定着し、それによって恒久的な画像を形成する。光受容体10は、転写の後でクリーニングステーション17に進み、そこで光受容体10に残った任意のトナーを、ブレード、ブラシ、またはその他のクリーニング器具の使用によって除去する。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態に従う定着装置の例の断面図を示している。図2において、エンドレスベルトの形をした熱抵抗フィルムまたは画像固定フィルム24は、3つの並列の部材、すなわち、駆動ローラ25、金属のフォロアローラ26およびその駆動ローラ25とフォロアローラ26の間に配置されている低熱容量の線状ヒータ20の周りに引きずられ、または、保持されている。そのフォロアローラ26もまた、定着ベルト24に対するテンションローラとして機能する。その定着ベルトは、駆動ローラ25の時計回りの回転によって、時計回りの方向に所定の周辺速度で回転する。その周辺速度は、フィルムが皺になったり、歪曲したりまたは滞ったりしないように、その上に画像を有するシートの搬送スピードと同じである。
【0028】
圧力ローラ28は、シリコーンゴムなどのような離型性を有するゴム弾性層を有しており、定着ベルト24のその間の底部進行によりヒータ20に押し付けて接触させる。その圧力ローラは、そのヒータに向かって、強制手段(図示せず)によって4〜7kgの総圧で押し付けられる。その圧力ローラは、定着ベルト24と、共方向に、すなわち、反時計回りの方向に回転する。本実施形態において、該保護用外層は、該定着ベルトおよび/または該圧力ローラに塗被することができる。
【0029】
ヒータ20は、フィルム24表面の移動方向と交差する方向(フィルムの幅方向)に伸びる低熱容量の線状ヒータの形をしている。それは、高い熱伝導率を有するヒータ基部27、そこに電力が供給されると熱を発生する発熱抵抗器22、および温度センサ23を含み、高い熱伝導率を有するヒータ支持体21上に取り付けられている。
【0030】
該ヒータ支持体21は、画像固定装置上の断熱材によりヒータ20を支え、高い熱耐久性樹脂、例えば、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PAI(ポリアミドイミド)、PI(ポリイミド)、ポリアラミド、ポリフタルアミド、ポリケトン、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)または液晶高分子材料、あるいはかかる樹脂材料とセラミックス、金属、ガラスまたは同様の物質との複合材から製造する。
【0031】
ヒータ基部27の例は、高伝導度のセラミック材料を含む1.0mmの厚さ、10mmの幅および240mmの長さを有するアルミナ板の形をしている。
【0032】
発熱抵抗材22は、該基部27の底部表面の実質的に中心にある縦の線に沿ってスクリーン印刷などによって塗布する。該発熱材22は、例えば、約10μmの厚さおよび1〜3mmの幅を有するAg/Pd(銀パラジウム)、TaNまたは別の電気抵抗材料である。それは表面保護層としての約10μmの厚さの熱抵抗ガラス21aにより被覆されている。温度センサ23は、該基部27の上部表面の実質的に中心(発熱材22を有する側の反対側)にあるスクリーン印刷などによって塗布する。そのセンサは、低熱容量を有するPt膜製である。温度センサの別の例は、該基部27に接している低熱容量のサーミスタである。
【0033】
線状または細長い切れのヒータ22は、熱がそのヒータに沿って均一に発生するように縦方向の反対端で電源と接している。この例における電源は、AC100Vを供給し、供給される電源の位相角は、測温体23によって検出された温度に従って制御回路(図示せず)によって制御される。
【0034】
フォトカプラーの形をしているフィルムポジションセンサ42は、フィルム24の外側端に隣接して配置されている。該ローラ26は、該センサの出力に応じて、所定の側面範囲内にフィルム位置を維持するように、ソレノイド(図示せず)の形をした駆動手段によって移動する。
【0035】
画像形成開始信号があると、固定されていないトナー画像が、画像形成ステーションの記録材料上に形成される。固定されていないトナー画像Taをその上に有する複写シート16が、ガイド29によって、定着ベルト24と圧力ローラ28の間にヒータ20と圧力ローラ28とにより提供されるニップN(固定ニップ)で入るように導かれる。複写シート16は、トナー画像を運ぶ表面が該底部表面と接している間、定着ベルト24が複写シート16と同じ速度で移動することにより、表面の偏向、皺または横方向シフトがなくヒータ20と圧力ローラ28の間のニップを定着ベルト24と共に通過する。
【0036】
該ヒータ20は、画像形成開始信号の発生後の所定のタイミングで、トナー画像がニップのところで加熱され、軟化および定着されて軟化または定着画像Tbとなるように電力が供給される。
【0037】
定着ベルト24は、端S(曲率半径は約2mmである)のところで例えば約45度の角度θで鋭く曲がっており、すなわち、その端は、ヒータ支持体21において大曲率を有している。それ故、ニップ中をフィルム24と一緒に進んだシートは、その屈曲によって端Sのところでその定着ベルト24から分離される。複写シート16は、次にシート排出トレーに排出される。複写シート16が排出されるときまでに、該トナーは十分に冷却されて固化し、それ故完全に固定される(トナー画像Tc)。
【0038】
この実施形態において、発熱素子22およびヒータ20の基部27は、低熱容量を有する。さらに、発熱素子22は、支持体21に断熱材によって支えられている。ニップ中のヒータ20の表面温度は、順次、定着器、トナーに必要な十分に高い温度に急速に到達する。また、予備の温度制御もヒータ20の温度を所定のレベルまで上昇させるために使用される。それ故、電力消費を減少させることができ、温度の上昇を防止することができる。
【0039】
該定着ベルトは、ヒータと接触している。その定着ベルトの外層とヒータの間の間隔は、好ましくは、約0.5mm〜約5.0mmである。同様に、該定着ベルトと接地したローラ25および26の間の間隔は、約5mm未満、例えば、約5〜約25mmである。これらの間隔は、画像(図示せず)形成ステーションによって複写シート16に加えられる電荷の、複写シート16を経て地面に漏れることからくる漏れを防ぐ。それ故、不適切な画像転写による画像品質の劣化の可能性を避けるか、または最小限にすることができる。
【0040】
本発明の別の実施形態においては、該定着ベルトは、シートの形であることができる。例えば、エンドレスではないフィルムを供給シャフトに巻き、ヒータと圧力ローラの間のニップを通して巻き取りシャフトに巻き付けるように取り出すことができる。このようにして、そのフィルムは、転写材料のスピードと同じスピードで、供給シャフトから巻き取りシャフトに供給することができる。
【0041】
別の実施形態が図3に描かれており、そこでは定着部材は、その定着部材内に位置する内部ヒータ38を有する定着ローラ37の形をしている。任意の実施形態においては、その加熱部材38は、その定着部材の外側に置くことができる。圧力ベルト39は、ローラ25、26、および40の周りを循環する。この代替構造においては、トナーまたはその他のマーキング材料は、定着ローラ37によって複写基材16に定着される。パッド41上の加重は、約1.7kgfである。複数の実施形態において、該保護用外層をその定着ローラおよび/またはその圧力ベルト上に被覆することができる。
【0042】
本発明の定着性コンポーネントは、様々な異なる構造を含むことができる。本発明の一実施形態において、定着性コンポーネント50は、図4に示されているような2層構造からなる。本明細書におけるこのおよびその他の構造は、高熱中で作動し、かつ/または高熱を発生する任意の定着性コンポーネントの上で使用することができることが理解される。この実施形態において、定着性コンポーネント50は、その中に分散または含有されている任意の充填材54を有する基材52を含む。その基材上に置かれているのは架橋しているかその中に含まれているホスホニトリル三量体60を有する保護用外層56である。該実施形態は、また、外側の剥離層が該保護用外層の上に置かれているか、あるいは接着剤層またはその他の中間の単層もしくは複数層が該基材と保護用外層の間に存在することができる3層構造も提供する。
【0043】
ローラまたは膜タイプの基材の場合における適当な基材物質の例としては、アルミニウム、ステンレススチール、スチール、ニッケルなどの金属類が挙げられる。膜タイプの基材の場合における適当な基材としては、高い作動温度(すなわち、約80℃より高く、好ましくは200℃を超える)を可能にするために適しており、高い機械的強度を示すことができる高温のプラスチック類が挙げられる。複数の実施形態において、そのプラスチックは、約2,000,000〜約3,000,000psiの曲げ強度、および約25,000〜約55,000psiの曲げ弾性率を有する。
【0044】
上記の特性を所有し、定着部材用の基材として使用するのに適するプラスチックとしては、エポキシ類;ポリフェニレンスルフィド類、例えば、Hoechst Celaneseから入手できる商標FORTRONのもと、Phillips Petroleumから入手できる商標RYTON R−4のもと、およびGeneral Electricから入手できる商標SUPECのもとで販売されているものなど;ポリイミド類、例えば、Amocoから入手できる商標TORLON7130のもとで販売されているポリアミドイミド等;ポリケトン類、例えば、Amocoから入手できる商標KADEL E1230もとで販売されているもの、Victexから商標PEEK450GL30のもとで販売されているポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトンなど;ポリアミド類、例えば、Amocoから入手できる商標AMODELのもとで販売されているポリフタルアミドなど;ポリエーテル類、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリールエーテルケトンなど;ポリパラバン酸など;Amocoから入手できる液晶樹脂(XYDAR);General Electricから入手できるULTEM;BASFから入手できるULTRAPEKなど、およびそれらの混合物が挙げられる。その他の適当な基材材料としては、フルオロエラストマー類、例えば、DuPontから商標VITONのもとで販売されているものなど;シリコーンゴム類、およびその他のエラストマー材料が挙げられる。該基材は、また、任意の上記材料の組合せを含むことができる。
【0045】
フィルム、シート、ベルトなどとしての該基材は、約25〜約250、または約60〜約100μmの厚さを有する。
【0046】
該保護用外層材料は、高い作動温度を可能にするのに適する。例えば、複数の実施形態において、その保護用外層材料は、約80℃より高い温度、または約200℃を超える温度で作動させることができる。より具体的な実施形態において、該保護用外層材料は、約150℃〜約400℃、または約200℃〜約350℃の温度で作動させることができる。その結果、その保護材料の外層または外側コーティングを有する定着コンポーネントは、高い機械的強度を示すことおよび場合によっては調整された電気特性を保有することができる。
【0047】
本発明に対して採用される定着性コンポーネントは、任意の適当な構造のものであり得る。適当な構造の例としては、シート、フィルム、ウェブ、ホイル、ストリップ、コイル、シリンダー、ドラム、ローラ、エンドレスストリップ、円形ディスク、エンドレスベルトを含めたベルト、エンドレス継ぎ合わせフレキシブルベルト、エンドレスシームレスフレキシブルベルト、パズルカットシーム(puzzle cut seam)を有するエンドレスベルトなどが挙げられる。
【0048】
場合によって、任意の既知でかつ入手できる適当な接着剤層を該保護用外層と基材の間、および/または該保護用外層と外側の剥離層の間に置くことができる。適当な接着剤の例としては、シラン類、例えば、アミノシラン(例えば、OSI Specialties、Friendly West VirginiaからのA1100など)、チタン酸塩、ジルコン酸塩、アルミン酸塩など、およびそれらの混合物が挙げられる。一実施形態においては、約0.25〜約10パーセントの溶液の接着剤を基材にこすりつけることができる。その接着剤層は、基材上、またはポリイミド外層上に、約2〜約2,000nm、または約2〜約500nmの厚さまで塗布することができる。その接着剤は、スプレーコーティングまたはワイピングを含めた任意の適当な既知の技術によって塗布することができる。
【実施例】
【0049】
ホスホニトリル三量体の調製:
ヘキサキス(メトキシエチルアミノ)トリシクロホスフェン(HMEAT)を、10.04g(28.9mmol)の塩化ホスホニトリル三量体を、200mLのトルエンおよび100mLのトリエチルアミンと共に1Lの丸底フラスコに加えることによって調製した。その溶液を、すべての固形物が溶解するまで撹拌し、その時点で、26.01g(346mmol)の2−メトキシエチルアミンをゆっくり加えた。これにより殆ど直ちに溶液中に白色沈殿物が生じた。その試料をそのまま4日間還流させた。次いで、その溶液を室温まで冷却し、その固形物を濾別し、トルエンで洗浄した。有機物を混ぜ合わせ、溶媒および過剰の塩基を減圧下で蒸発させ、黄色のゲルとしての生成物(13.61g、81.3%の収率)を残した。H(500MHz,THF−d)δ3.45(t,2H)、3.33(s,3H)、3.05(br s,2H)。31P(200MHz,CDCl)δ18.15。その反応は次のように示される。
【0050】
【化2】

【0051】
その分子の架橋特性を、HMEATと樹脂からなる配合物を用意することによって調査した。フィルム調製用の溶液は、1−メトキシ−2−プロパノール(DOWANOL PM、The Dow Chemical Co.(Midland、Michigan)から入手可)中のHMEATおよびJONCRYL587ポリオール(BASF Corp.(Florham Park、New Jersey)から入手可)の60:40の混合物(重量)を含んだ。NACURE XP−357酸触媒(King Industries,Inc.(Norwalk、Connecticut)から入手可)も架橋を促進するために加えた(1.0重量%の全固形物)。その溶液を5ミルのバードバー(bird bar)を用いてガラス板に塗布し、対流式オーブン中185℃で1時間乾燥し、約30μmの膜を生じた。
【0052】
硬化したフィルムのナノインデンター(nanoindenter)を用いて分析した平均硬度は、いくつかの市販のプラスチックより硬い40±2MPaと測定された(表1参照)。さらに、そのフィルムは、濃塩酸(12.1N)の存在下で劣化しないことを示した。実際には、そのフィルムをガラス基板から除去するために濃硝酸(15.8N)を必要とした。
【0053】
【表1】

【0054】
上記の混合物から調製したフィルムの熱安定性を、60:40のCYMEL303/JONCRYL587の混合物からのものと熱重量分析(TGA)によって比較した。図5に示されているように、分析により、両方の試料とも200℃以降は劣化を開始することを示した。しかしながら、600℃で、殆どすべてのCYMEL303/JONCRYL587フィルム(四角および×によって示されている底の2つの線)は分解し、一方、HMEAT/JONCRYL587フィルム(菱形と三角形によって示されている上の2つの線)のほぼ40%は無傷のまま残った。実は、少量のHMEAT/JONCRYL587フィルムが、800℃で依然として存在している。
【0055】
図5は、60:40のCYMEL303/JONCRYL587のHMEAT/JONCRYL587と比較した熱重量分析のプロットを示している。見て分かるように、本発明のフィルムは対照試料よりもはるかに高い熱劣化耐性を示した。
【0056】
まとめとして、本開示の発明者らは、酸触媒の存在下でフィルム形成性樹脂との架橋を促進して保護コーティングを形成する6個のアルコキシアルキル基を有する新規なホスホニトリル三量体を調製した。本発明のコーティングは、市販されている有機メラミンとポリオールからなる配合物より大きな熱安定性を示す。加えて、本実施形態は、濃塩酸に耐性があり、普通に知られているポリマーより大きな平均硬度を有するフィルムを提供する。
【符号の説明】
【0057】
10 光受容体、11 電力供給源、12 チャージャ、13 光学系または画像入力装置、14 現像剤ステーション、15 転写手段、16 複写シート(基材)、17 クリーニングステーション、19 定着ステーション、20 ヒータ、21 ヒータ支持体、21a 熱抵抗ガラス、22 発熱(抵抗)材(線状または細長い切れのヒータ)、発熱素子、発熱抵抗器、23 温度センサ(測温体)、24 熱抵抗フィルム(画像固定フィルム)又は定着ベルト、25 駆動ローラ、26 フォロアローラ、27 ヒータ基部、28 圧力ローラ、29 ガイド、Ta 固定されていない画像、Tb 軟化または定着画像、Tc トナー画像、N ニップ、S 端、θ 角度、37 定着ローラ、38 内部ヒータ、39 圧力ベルト、40 ローラ、41 パッド、42 フィルムポジションセンサ、50 定着性コンポーネント、52 基材、54 充填材、56 保護用外層、60 ホスホニトリル三量体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
該基材に配置されている外層と、
を含むコンポーネントであって、該外層が、ホスホニトリル三量体を含むことを特徴とするコンポーネント。
【請求項2】
請求項1に記載のコンポーネントであって、該ホスホニトリル三量体が、樹脂と架橋されていることを特徴とするコンポーネント。
【請求項3】
請求項2に記載のコンポーネントであって、該ホスホニトリル三量体が、構造
【化1】


[式中、RiおよびRiiは、独立に選択されたアルキル基またはその誘導体である]
を有することを特徴とするコンポーネント。
【請求項4】
基材と、
該基材に配置されている外層と、
を含む定着コンポーネントであって、該外層が、ホスホニトリル三量体をさらに含み、さらに該定着コンポーネントが、圧力ベルト、定着ローラ、定着ベルト、および圧力ローラからなる群から選択されることを特徴とする定着コンポーネント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−25697(P2011−25697A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164180(P2010−164180)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】