説明

架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物

本発明は、より正確には、周囲温度において又は温度を上昇させることによってヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物、並びにこうして得られるゲルに関する。
本発明の1つの目的は、粘弾性、物理的安定性及び粘着特性を有するゲルを容易に且つ迅速に製造することである。
この目的は、
・SiHタイプのポリオルガノシロキサンPOS(I)、
・SiViタイプ(Vi=ビニル)のポリオルガノシロキサンPOS(II)、
・一官能性SiViタイプのポリオルガノシロキサンPOS(III)、
・白金ベース触媒(D)、及び
・随意としてのポリジメチルシロキサンタイプのポリオルガノシロキサンPOS(IV)
を含む組成物によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、水素置換基及びエチレン性不飽和基(即ちアルケニル基、特にビニルタイプの基)を伴う付加反応又はヒドロシリル化反応によって架橋し得るポリオルガノシロキサン(POS)を基剤とする組成物の分野である。前記ヒドロシリル化は一般的に金属化合物、例えば白金性状の金属化合物によって触媒される。
【0002】
より特定的には、本発明は、周囲温度において又は温度を上昇させることによってヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物に関する。最後に、本発明は、かかるシリコーンゲルの貯蔵可能な前駆体系をも対象とする。
【0003】
本発明の意味の中で、用語「シリコーンゲル」とは、例えば1mmの20/10〜500/10の範囲の針入度(ASTM法D2137により測定される針入度分析、棒状部及び円錐部の重量=62.5g)によって特徴付けられる架橋したシリコーン製品を意味する。
【背景技術】
【0004】
従来、シリコーンゲルは、1分子当たりに少なくとも2個のビニル官能基を有するポリオルガノシロキサン、1分子当たりに少なくとも2個のSiH官能基を有するポリオルガノヒドロシロキサン、非官能化ポリオルガノシロキサン及び白金ベースのヒドロシリル化触媒を含む組成物を架橋させることによって得られていた。これらの半固体/半液体シリコーンゲルは従来、振動、衝撃、温度並びにより一般的に周囲環境からの物理的及び化学的攻撃に対して敏感な電子装置の保護のために用いられてきた。この用途に用いる場合、シリコーンゲルは電子部品を封入する(ポッティング)。シリコーンゲルはまた、基本医療材料として、特に人工補綴物やインプラント、手当て用品(包帯類、ガーゼ他)の製造のためにも用いられる。また、有意の接着特性を有する限りにおいて接着剤としても用いられ、衝撃緩衝材料としても用いられる。
【0005】
これらすべての用途については、その用途に応じてSi−ビニルを有するシロキシ単位及びSiH官能基を有するシロキシ単位の含有率を変えることによってこれらのゲルの物理的特性を調節する。
【0006】
しかしながら、このタイプのシリコーンゲルには、特に架橋したマトリックス中への非官能化ポリオルガノシロキサンの組み込みが悪く、そのせいでこの非官能化ポリオルガノシロキサンが浸出によって容易に抽出されてしまい、その結果として例えば粘着特性のようなゲルの性能の劣化がもたらされるという点で、粘弾性のような物理的特性を経時的に維持することについて1つの大きな問題がある。そのため、これらのゲルは従来、特に人口補綴物の製造のような用途については、粘弾性特性を最適化することができるようにするために、成分の総重量に対して50重量%程度の高い重量百分率の非官能化ポリオルガノシロキサンを含む組成物から得られていた。さらに、例えば医療分野又は医療補助(パラメディカル)の分野(手当て用品タイプの用途を伴う)におけるような特定的な用途については、粘着特性がしばしば要求される。
【0007】
ヨーロッパ特許公開第532362号公報には、次のものを含むシリコーンゲル組成物が教示されている:
A:D=R(CH3)SiO2/2の単位90〜97モル%、T=RSiO3/2の単位0.1〜2.5モル%及びM=(CH3R)SiO1/2の末端単位0.1〜4モル%(ここで、Rはメチル、フェニル又はCF3CH2CH2−であり、但し、これらの最後の2つの基RはR基全体の0.5〜10モル%を占める)を含むポリオルガノシロキサン;
B:1分子当たりに少なくとも1個のSiHを含み、SiH/SiVi比が0.5〜1.5の範囲であるポリヒドロオルガノシロキサン;並びに
C:白金ベース触媒。
【0008】
シリコーンゲルについての自己粘着性に対する欲求は、この出願の明細書に開示された発明の原動力ではなかった。水素化POS−Bは、ポリ(ジメチルシロキシ)−α,ω−(ジメチルヒドロシロキシ)タイプのPOS及び随意としてのポリ(ジメチルシロキシ)(メチルヒドロシロキシ)−α,ω−(ジメチルヒドロシロキシ)タイプのPOSから成ることができる。
【0009】
この出願においては、与えられている唯一の実施例は、α,ω−ビニル化及びフェニル置換POSと、鎖中及び鎖の末端において水素化されたPOSとの混合物である。用いられるPOS−Aの粘度は1000mPa・s程度であり、他方、ゲルを調製するために用いられるPOS−Bの粘度は100mPa・s程度である。低温におけるゲルの物理的安定性の促進剤としてT単位(SiO4/2、樹脂)を存在させることが、この先行技術の本質的な特徴の1つである。最後に、ゲルの物理的特性の経時的維持及び懸案のゲルの粘着特性の維持については全く言及されていないということも、強調されるべきである。
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第532362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この技術状況において、本発明の本質的な目的の1つは、ヒドロシリル化によって架橋してゲルになることができるシリコーン組成物であって、最低限として従来技術の製品において期待される品質、即ち緩衝、迅速な架橋速度及び工業的信頼性を有するシリコーンゲルをもたらすものを提供することにある。本発明において要求されるこれらの品質はさらに、これまでに得られているものよりも良好でなければならない。最後に、そして特に、本発明の目的は、改善された粘着(自己粘着)特性を示すシリコーンゲルを得ることであり、この特性は、他にもあるが特に医療及びパラメディカル用途(例えば手当て用品)のためのゲルの用途において特に望ましい。
【0011】
本出願人は、有意の研究手段を使い、他にもあるが特にこの目的を達成するために膨大な実験を実施した末に、全く驚くべきことにそして予期しなかったことに、架橋してシリコーンゲルを形成することができる標準的な組成物中に1分子当たりに1個だけのSi−アルケニル基を有する一官能性ポリオルガノシロキサンを導入するのが適切であるということを見出すという功績をあげた。
【0012】
本発明の別の目的は、経時的に安定な物理的特性を有するゲルを提供すること、即ち非官能化ポリオルガノシロキサンの浸出によってその物理的特性の劣化を示すということがないゲルを提供することにある。
【0013】
本発明の別の付随する目的は、粘着性ゲルの前駆体のシリコーン組成物であって、調製するのが簡単であり、経済性がよく、貯蔵安定性であり且つ最終使用者にとって使いやすく、最終使用者がこの組成物を適用したらすぐにその場でゲルになるものを提供することにある。
【0014】
本発明の別の付随する目的は、上記のタイプの組成物を基剤とする粘着性シリコーンゲルのための前駆体系であって、貯蔵安定性であり且つ取扱い及びゲルの調製のための使用が容易である形にあるものを提供することにある。
【0015】
本発明の別の付随する目的は、上記の組成物及びそれから得られるゲルの以下の用途を提供することにある:
・電子部品を封入して保護するための手段(ポッティング、即ち浸漬又は被覆若しくは外装(鞘入れ、ケース入れ))としての用途;
・例えばインプラント、人工補綴物、組立てセメント等の製造又は整形外科若しくはパラメディカル用品(手当て用品)の製造において有用な医療材料としての用途;
・気密性パテ及び/又はモルタルとしての用途;並びに最後に
・接着剤としての用途。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらすべての目的及びその他の目的は、本発明によって達成される。本発明は、ヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物であって、次の(A)〜(E):
(A)次の(a)及び(b)を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサンPOS(I):
(a)タイプM=(R)2(H)SiO1/2の末端シロキシ単位
(ここで、R基は同一であっても異なっていてもよく、随意に置換された直鎖状若しくは分枝鎖状C1〜C6アルキル基及び/又は置換若しくは非置換アリール基に相当する);
(b)タイプD=(R1)p(H)qSiO2/2の同一の又は異なるシロキシ単位
(ここで、R1基はRと同じ定義に相当し、
pは1又は2であり、
qは0又は1であり、
p+qは2である):
(このポリオルガノシロキサンPOS(I)は、1分子当たりに少なくとも2個のSiH基を含むものとする);
(B)次の(a)及び(b)を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサンPOS(II):
(a)タイプM=(X)s(R2)tSiO1/2の末端シロキシ単位
(ここで、R2基はRと同じ定義に相当し、
X基は2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、好ましくはビニル基に相当し、
sは0又は1であり、
tは2又は3であり、
s+tは3である);
(b)タイプD=(X)u(R3)vSiO2/2の同一の又は異なるシロキシ単位
(ここで、R3基はRと同じ定義に相当し、
X基は2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、好ましくはビニル基に相当し、
uは0又は1であり、
vは1又は2であり、
u+vは2である):
(このポリオルガノシロキサンPOS(II)は、1分子当たりに少なくとも2個のX基を含むものとする);
(C)本質的に線状であり、T=RSiO3/2の単位の含有率が2モル%未満、好ましくは1.5モル%未満、より一層好ましくは1モル%未満であり、ケイ素原子に直接結合した2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基(X)(好ましくはケイ素原子に直接結合したビニル基)を1分子当たりに1個含む少なくとも1種の一官能性ポリオルガノシロキサンPOS(III)であって、次の(a)及び(b)を含む、前記一官能性ポリオルガノシロキサンPOS(III):
(a)タイプM=(X)w(R4)xSiO1/2の同一の又は異なる末端シロキシ単位
(ここで、R4基はRと同じ定義に相当し、
wは0又は1であり、
xは2又は3であり、
w+xは3である);
(b)D=(X)y(R5)zSiO2/2の少なくとも1個のシロキシ単位
(ここで、R5基はRと同じ定義に相当し、
yは0又は1であり、
zは1又は2であり、
y+zは2である);
(D)有効量の少なくとも1種のヒドロシリル化反応触媒;並びに
(E)随意としての、次の(a)及び(b)を含む少なくとも1種の非官能化ポリオルガノシロキサンPOS(IV):
(a)タイプM=(R6)3SiO1/2の末端シロキシ単位
(ここで、R6はRと同じ定義に相当する);
(b)タイプD=(R7)2SiO2/2の同一の又は異なるシロキシ単位
(ここで、R7基はRと同じ定義に相当する):
から本質的に成り、
成分(A)、(B)、(C)及び(E)の量が、ケイ素に結合した水素原子対ケイ素に結合したアルケニル基(X)のモル比rが0.2:1〜5:1の範囲となるように選択されることを特徴とする、前記シリコーン組成物に関する。
【発明の効果】
【0017】
特別に選択されたPOSを使用することによって、改善された特性を有するシリコーンゲルを得ることができる。それらのいくつかを以下に説明する。
【0018】
最初に、これらのゲルは架橋速度が速く、これは、工業的な採算性(実現可能性)及び信頼性の要件、特に敏感な電子部品のポッティング用途の要件に適合する。
【0019】
さらに、本発明に従う組成物から調製されるゲルの粘弾性特性は、望まれる半固体/半液体状態にうまく対応する。この状態は、衝撃及び振動の完全な吸収を可能にする適切な緩衝品質を提供することができる。
【0020】
得られるゲルは、低温(−120℃まで)において経時安定性であり、即ち非官能化ポリオルガノシロキサンの浸出によってそれらの物理的特性の劣化を示すということなくそれらの物理的特性を維持するという利点を追加的に有する。
【0021】
T単位を含むPOSを強制的に存在させていないのにも拘らず本発明に従う組成物及びゲルがこれらの性質を固有に有するということは、従来技術の教示に反することであり、強調されるべきことである。
【0022】
最後に、そして特に、本発明の組成物の大きな利点の1つは、例えば手当て用品のようなパラメディカル用途に必要な粘着性又は自己粘着性シリコーンゲルをもたらすということである。
【0023】
この粘着性の増大が本発明の組成物及びゲルのその他の特性を犠牲にして成されるわけではないということに注目することが重要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
好ましくは、成分(A)、(B)、(C)及び(E)の量は、ケイ素に結合した水素原子対ケイ素に結合したアルケニル基(X)のモル比rが0.5:1〜1.5:1の範囲、より一層好ましくは1:1となるように選択される。
【0025】
ヒドロシリル化反応触媒は、白金をベースとするものであるのが好ましい。
【0026】
実施に当たって最もよく用いられるPOS(I)は、ポリ(ジメチルシロキシ)(シロキシメチルヒドロ)−α,ω−(ジメチルヒドロシロキシ)タイプのポリオルガノシロキサン及びα,ω−(ジメチルヒドロシロキシ)ポリジメチルシロキサンである。これらのPOS(I)は、Rhodia社からのRhodorsil(登録商標)626V、Rhodorsil(登録商標)620V及びRhodorsil(登録商標)628V製品のシリーズからの製品のような市販の製品であり、それらの構造及び合成の両方に関して、技術文献に広く開示されている。
【0027】
好ましくは、POS(I)は実質的に線状であり、即ちRSiO3/2単位含有率が2%未満であり、10000mPa・s又はそれ未満、好ましくは6000mPa・s又はそれ未満、より一層好ましくは5〜5000mPa・sの範囲の動的粘度を有する。
【0028】
別の態様に従えば、ケイ素原子に直接結合した反応性水素基の重量%は、1〜35%の範囲である。
【0029】
POS(II)に関しては、最もよく用いられるものは、α,ω−(ジメチルビニルシロキシ)ポリジメチルシロキサン又はポリ(ジメチルシロキシ)(メチルビニルシロキシ)−α,ω−(ジメチルビニルシロキシ)タイプのポリオルガノシロキサンである。
【0030】
これらのPOS(II)は、Rhodia社からのRhodorsil(登録商標)621V製品のシリーズからの製品のような市販の製品であり、それらの構造及び合成の両方に関して、技術文献に広く開示されている。
【0031】
好ましくは、POS(II)実質的に線状であり、即ちRSiO3/2単位含有率が1%未満であり、200000mPa・s又はそれ未満、好ましくは170000mPa・s又はそれ未満、より一層好ましくは20〜165000mPa・sの範囲の動的粘度を有する。
【0032】
別の態様に従えば、ケイ素原子に直接結合した反応性アルケニル基の重量%は、0.025%〜3%の範囲である。
【0033】
POS(III)に関しては、ケイ素原子に直接結合したアルケニル基は、鎖の末端にあってMタイプのシロキシ単位が有するか、又は側鎖であって即ちDタイプのシロキシ単位が有するかのいずれかである。最もよく用いられるものは、(ジメチルビニルシロキシ)ポリジメチルシロキサン又はポリ(ジメチルシロキシ)(メチルビニルシロキシ)−α,ω−(トリメチルシロキシ)タイプのポリオルガノシロキサンのような一官能性ポリオルガノシロキサンである。
【0034】
これらのPOS(III)は、例えばGE Bayer社のSilopren(登録商標)TP 3354やSilopren(登録商標)TP 3608シリーズからの製品のような市販の製品である。
【0035】
好ましくは、POS(III)は150000mPa・s又はそれ未満、好ましくは20〜100000mPa・sの範囲の動的粘度を有する。
【0036】
非官能化POS(IV)に関しては、最もよく用いられるものは、α,ω−(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサン又はPDMSオイルである。これらのPOS(IV)は、例えばRhodia社からのRhodorsil(登録商標)47V製品シリーズからの製品(例えば47V20、47V100、47V500、47V12500又は47V30000)のような市販の製品であり、それらの構造及び合成の両方に関して、技術文献に広く開示されている。
【0037】
好ましくは、POS(IV)は実質的に線状であり、50000mPa・s又はそれ未満、好ましくは20〜40000mPa・sの範囲の動的粘度を有する。
【0038】
触媒(D)は、本発明に従う組成物の別の重要な成分である。これは好ましくは、有機金属白金錯体又はSiH基とSiVi基との間のヒドロシリル化反応の触媒作用のために慣用的に用いられる白金ベース触媒の1つである。例として、白金黒、クロロ白金酸、アルコールで変性されたクロロ白金酸、又はクロロ白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン若しくはアセチレン系アルコールとの錯体を特に挙げることができる。米国特許第2823218号明細書にはクロロ白金酸タイプのヒドロシリル化触媒が開示され、米国特許第3419593号明細書はクロロ白金酸とビニルシロキサンタイプのオルガノシリコーンとの錯体によって形成される触媒に関する。米国特許第3159601号及び同第3159662号の両明細書には、ヒドロシリル化触媒として用いられる白金と炭化水素との錯体が開示されている。米国特許第3723497号明細書には白金アセチルアセトナートが開示され、米国特許第3220972号明細書は白金アルコキシドをベースとする触媒を主題事項とする。
【0039】
成分(D)について、用語「有効量の少なくとも1種のヒドロシリル化反応触媒」(の「有効量」)とは、ヒドロシリル化反応を開始させるのに充分な量を意味するものとする。用いられるべき触媒として有効量に関しては、当該分野の当業者であればヒドロシリル化反応を促進するための触媒の最適量を完全に決定することができるということは、言うまでもない。この量は、用いる触媒及びPOSの性状に特に依存する。1つの考えとして、この量は組成物の総重量に対して0.001〜0.5重量%の範囲であると示すことができる。
【0040】
本発明に従う組成物の貯蔵安定性を改善するため及び使用者に容易に取り扱うことができる商品の形を提供するためには、本発明に従って規定されるようなヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物の成分(A)、(B)、(C)並びに随意としての成分(E)を含む少なくとも2つの部分(構成体)A及びBを有する系(2成分系)であって、但しヒドロシリル化反応触媒(D)が成分(B)から隔離されたものを提供する。
【0041】
使用を簡単にするために、2つの部分から成る系(2成分系)を提供するのが好ましく、それらの割合A:Bは10:100〜100:10の範囲、好ましくは40:60〜60:40の範囲、より一層好ましくは50:50(おおよその重量部)である。
【0042】
ゲルの調製に関しては、これは、ゲルを得るための組成物の架橋は、周囲温度において又は例えば50〜200℃の範囲の温度に加熱した後に起こると明言できる。この状況において、必要な架橋時間は例えば数分〜1時間30分間の範囲である。上記の組成物から得られた架橋した粘着性ゲルは、同等に本発明の主題事項を構成する。
【0043】
用途に関しては、本発明に従う組成物及びゲルは、電子部品等の衝撃を緩衝して保護するための手段(ポッティング)として用いることができる。かくして、この組成物及び/又はゲルは、任意の支持体(例えばエポキシ樹脂製支持体)上に乗せられた敏感な電子部品を含む容器中に注ぐことができる。これは実際、繊細な部品をシリコーン組成物中に浸漬することである。
【0044】
この組成物及びゲルはまた、敏感な電子部品を保護する目的でその他の手段、例えば被覆外装等によってそれらを封入することもできる。
【0045】
これらの特に有意な粘着特性に鑑みて、本発明に従うシリコーンゲルはまた、接着剤、医療材料、好ましくはインプラント、人工補綴物、セメント等を形成するのに用いられるタイプのもの、パラメディカル材料、気密性製品、パテ又は組立て製品の製造にも有利に用いることができる。
【0046】
本発明はまた、このシリコーンゲルから製造された新規の製品としての接着剤、医療及びパラメディカル材料、例えば手当て用品、衝撃緩衝及び保護手段又はセメント、パテ若しくは気密性材料にも関する。
【0047】
これらの用途においては、本発明に従うゲル及び組成物の高い架橋速度、低温(−120℃まで)及び高温における物理的安定性(粘弾性)、緩衝特性、隔離性(特に空気及び水に対するもの)、並びに最後にそして特に粘着特性といった有利な特性の全部又は一部を利用することが可能である。
【0048】
用途に関しては、本発明に従う組成物及びゲルは、電子部品等の衝撃を緩衝して保護するための手段(ポッティング)として用いることができる。かくして、この組成物及び/又はゲルは、任意の支持体(例えばエポキシ樹脂製支持体)上に乗せられた敏感な電子部品を含む容器中に注ぐことができる。これは実際、繊細な部品をシリコーン組成物中に浸漬することである。
【0049】
この組成物及びゲルはまた、敏感な電子部品を保護する目的でその他の手段、例えば被覆外装等によってそれらを封入することもできる。これらの特に有意な粘着特性に鑑みて、本発明に従うシリコーンゲルはまた、次のものの製造にも有利に用いることができる:
・接着剤、
・医療材料、好ましくはインプラント、人工補綴物、セメント等を形成するのに用いられるタイプのもの、
・気密性製品、パテ若しくはシール用組成物、又は
・組立て製品。
【0050】
本発明はまた、架橋した粘着性ゲル、本発明に従う少なくとも2つの部分(A1)及び(B1)を有する系又は本発明に従うヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物を、
・接着剤、
・コーティング、
・気密性パテ、
・電子部品の封入及び保護、
・インプラント及び人工補綴物の製造のための材料、
・衝撃緩衝及び保護手段、
・組立てセメント、並びに
・手当て用品
の分野において使用することにも関する。
【実施例】
【0051】
以下の非限定的な実施例は、本発明に従う組成物の配合の様々な可能性並びにこの組成物を架橋させることによって得られるシリコーンゲルの特徴及び特性を示す。
【0052】
記載した組成物を2成分の形で提供し、A及びBの2つの部分を50/50の比で混合した後に架橋を実施する。
【0053】
(1)このゲルの部分A及びBの組成中に用いた出発材料を、以下のリスト中に記載する。
・POS(I)=10mPa・sの粘度を有し、SiH基を約5〜10重量%含む、ポリ(ジメチルシロキシ)(シロキシメチルヒドロ)−α,ω−(ジメチルヒドロシロキシ)オイル又はポリ(ジメチルシロキシ)−α,ω−(ジメチルヒドロシロキシ)オイル。
・POS(II)=300mPa・sの粘度を有し、ビニル基を約0.1重量%含む、α,ω−(ジメチルビニルシロキシ)ポリジメチルシロキサンオイル。
・一官能性POS(III)=300mPa・sの粘度を有し、ビニル基0.5〜0.13重量%を含み、Tシロキシ単位含有率が1モル%未満である、α,ω−(トリメチルシロキシ)(メチルビニルシロキシ)ポリジメチルシロキサンオイル。
・POS(IV)=300mPa・sの粘度を有するα,ω−(トリメチルシロキシ)ポリジメチルシロキサンオイル。
・触媒(V)=架橋触媒として用いられる有機金属白金錯体。この触媒の濃度は、組成物の総重量に対する酸化度0の金属Ptの重量%として与えられる。
【0054】
(2)部分A及びB中のこれらの各成分の濃度を、下記の表1に記載する。
【表1】

【0055】
(3)ゲルを製造するための方法:
ゲルは、組成物の成分を25℃に設定した撹拌反応器中で単純に混合することによって調製される。
【0056】
(4)得られたゲルの物理的特性及び粘着特性:
【表2】

【0057】
粘弾性特性G’及びG”は、Haake RS150レオメーターを用いて次の条件下で測定した:
・温度=120℃
・周波数掃引=1ヘルツ。
【0058】
針入試験は、DIN規格ISO−2137に類似した試験に従って実施する(円錐部及び棒状部の重量:62.5g)。
【0059】
接着性(粘着性)試験は、比較用ゲル(Rhodia社より販売されているRhodorsil(登録商標)RT Gel 8260)と本発明に従うゲルとの間で品質を比較することから成る。
【0060】
得られたゲルは、組成物中のポリジメチルシロキサンの重量百分率が(標準組成物については50%であるのに対して)10%程度であるにも拘らず、良好な経時安定性を示した。
【0061】
これらの結果は、この組成物から得られたゲルが良好な物理的特性及び良好な粘着性を有することをはっきりと示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物であって、次の(A)〜(E):
(A)次の(a)及び(b)を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサンPOS(I):
(a)タイプM=(R)2(H)SiO1/2の末端シロキシ単位
(ここで、R基は同一であっても異なっていてもよく、随意に置換された直鎖状若しくは分枝鎖状C1〜C6アルキル基及び/又は置換若しくは非置換アリール基に相当する);
(b)タイプD=(R1)p(H)qSiO2/2の同一の又は異なるシロキシ単位
(ここで、R1基はRと同じ定義に相当し、
pは1又は2であり、
qは0又は1であり、
p+qは2である):
(このポリオルガノシロキサンPOS(I)は、1分子当たりに少なくとも2個のSiH基を含むものとする);
(B)次の(a)及び(b)を含む少なくとも1種のポリオルガノシロキサンPOS(II):
(a)タイプM=(X)s(R2)tSiO1/2の末端シロキシ単位
(ここで、R2基はRと同じ定義に相当し、
X基は2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、好ましくはビニル基に相当し、
sは0又は1であり、
tは2又は3であり、
s+tは3である);
(b)タイプD=(X)u(R3)vSiO2/2の同一の又は異なるシロキシ単位
(ここで、R3基はRと同じ定義に相当し、
X基は2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基、好ましくはビニル基に相当し、
uは0又は1であり、
vは1又は2であり、
u+vは2である):
(このポリオルガノシロキサンPOS(II)は、1分子当たりに少なくとも2個のX基を含むものとする);
(C)本質的に線状であり、T=RSiO3/2のシロキシ単位の含有率が2モル%未満、好ましくは1.5モル%未満、より一層好ましくは1モル%未満であり、ケイ素原子に直接結合した2〜6個の炭素原子を有するアルケニル基(X)(好ましくはケイ素原子に直接結合したビニル基)を1分子当たりに1個含む少なくとも1種の一官能性ポリオルガノシロキサンPOS(III)であって、次の(a)及び(b)を含む前記一官能性ポリオルガノシロキサンPOS(III):
(a)タイプM=(X)w(R4)xSiO1/2の同一の又は異なる末端シロキシ単位
(ここで、R4基はRと同じ定義に相当し、
wは0又は1であり、
xは2又は3であり、
w+xは3である);
(b)D=(X)y(R5)zSiO2/2の少なくとも1個のシロキシ単位
(ここで、R5基はRと同じ定義に相当し、
yは0又は1であり、
zは1又は2であり、
y+zは2である);
(D)有効量の少なくとも1種のヒドロシリル化反応触媒;並びに
(E)随意としての、次の(a)及び(b)を含む少なくとも1種の非官能化ポリオルガノシロキサンPOS(IV):
(a)タイプM=(R6)3SiO1/2の末端シロキシ単位
(ここで、R6はRと同じ定義に相当する);
(b)タイプD=(R7)2SiO2/2の同一の又は異なるシロキシ単位
(ここで、R7基はRと同じ定義に相当する):
から本質的に成り、
成分(A)、(B)、(C)及び(E)の量が、ケイ素に結合した水素原子対ケイ素に結合したアルケニル基(X)のモル比rが0.2:1〜5:1の範囲となるように選択されることを特徴とする、前記シリコーン組成物。
【請求項2】
前記モル比rが0.5:1〜1.5:1の範囲である、請求項1に記載のヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物。
【請求項3】
前記モル比rが1:1である、請求項1又は2に記載のヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物。
【請求項4】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8基がメチル基である、請求項1〜3のいずれかに記載のヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物。
【請求項5】
前記ヒドロシリル化反応触媒が白金をベースとする、請求項1〜4のいずれかに記載のヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物。
【請求項6】
POS(I)が実質的に線状であって、10000mPa・s若しくはそれ未満、好ましくは6000mPa・s若しくはそれ未満、より一層好ましくは5〜5000mPa・sの範囲の動的粘度を有し、
POS(II)が実質的に線状であって、200000mPa・s若しくはそれ未満、好ましくは170000mPa・s若しくはそれ未満、より一層好ましくは20〜165000mPa・sの範囲の動的粘度を有し、
POS(III)が150000mPa・s若しくはそれ未満、好ましくは20〜100000mPa・sの範囲の動的粘度を有し、且つ/又は
POS(IV)が実質的に線状であって、50000mPa・s若しくはそれ未満、好ましくは20〜40000mPa・sの範囲の動的粘度を有する、
請求項1〜5のいずれかに記載のヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物の成分(A)、(B)、(C)、(D)及び随意としての成分(E)を含み、但しヒドロシリル化反応触媒(D)が成分(B)から隔離されている、少なくとも2つの構成体(A1)及び(B1)を有する系。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載のヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物を架橋させることによって、又は請求項7に記載の少なくとも2つの構成体(A1)及び(B1)を有する系を架橋させることによって得られる、架橋した粘着性ゲル。
【請求項9】
請求項8に記載の架橋した粘着性ゲル、請求項7に記載の少なくとも2つの構成体(A1)及び(B1)を有する系又は請求項1〜6のいずれかに記載のヒドロシリル化によって架橋して粘着性ゲルになることができるシリコーン組成物の、
・接着剤、
・コーティング、
・気密性パテ、
・電子部品の封入及び保護、
・インプラント及び人工補綴物の製造のための材料、
・衝撃緩衝及び保護手段、
・組立てセメント、並びに
・手当て用品
の分野における使用。

【公表番号】特表2007−527439(P2007−527439A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516269(P2006−516269)
【出願日】平成16年6月9日(2004.6.9)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001424
【国際公開番号】WO2005/003250
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】