説明

架橋ポリエチレン管の架橋処理装置

【課題】断熱材の有無にかかわらず、真っ直ぐな状態を形状記憶した架橋ポリエチレン管を容易に製造することができる架橋ポリエチレン管の製造方法及びこの製造方法に用いる架橋処理装置を提供することを目的としている。
【解決手段】処理槽1の槽本体11内に、上下対となる2つ溝付きガイドローラ51からなるローラ対5を槽本体11の長手方向に所定ピッチで並べて管支持レーンLを形成し、被処理管Pをこれらの対となるガイドローラ51によってガイドしながら被処理管Pを管支持レーンLに通して、槽本体11内で被処理管Pの少なくとも未架橋管P1を長手方向にほぼ真っ直ぐな状態に支持しながら、未架橋管P1内に水蒸気を通して未架橋管P1を構成する未架橋ポリエチレンを熱水架橋するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線性の高い、すなわち、使用時にほぼ真っ直ぐな状態に形状保持される架橋ポリエチレン管を製造することができる架橋ポリエチレン管の架橋処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋ポリエチレン管の製造方法として、ポリエチレン系樹脂及び抗酸化剤からなる混合物を押出機に供給し、可塑化した樹脂を、ラジカル発生剤の存在下でシラン化合物をグラフト反応させるとともに、シラノール触媒の存在下でシラノール化を促進させ管状に押出成形して未架橋ポリエチレンからなる未架橋管を得た後に、得られた未架橋ポリエチレンを熱水架橋させる方法がある。
未架橋管の未架橋ポリエチレンを熱水架橋させる方法としては、連続して押し出されてくる未架橋管を一旦コイル状に巻回し、このコイル状に巻いた状態で熱水を用いて架橋反応処理するのが一般的である。
【0003】
しかし、架橋ポリエチレン管は、架橋処理工程時に、未架橋管が保持された形状を形状記憶するので、上記のように、コイル状に巻回した状態で架橋処理工程を実施するようにすると、コイルの巻き形状がどうしてもそのまま形状記憶されてしまい、湾曲形状の巻き癖が残った状態で使用せざるを得ない。
上記のような巻き癖は、新築工事などにおいては、配管施工位置がある程度自由がきくため、余り問題にならないのであるが、既設住宅の配管改修工事において問題がある。
【0004】
すなわち、既設住宅の配管改修工事では、壁や床の一部分を開口して、その孔から既設配管の取り出し、新規配管の引込みを行うが、孔などの開口部分の大きさが狭くて作業者が十分に体を床下に入れることができない、あるいは、体の動きに制約もあるので、巻き癖の付いた架橋ポリエチレンパイプでは、途中で引っかかる、あるいは、既設配管の引き抜きによって生じた梁や基礎の孔に向かって差し入れるなどすることも多いため、作業が非常にやりにくく、時間もかかる。
【0005】
また、樹脂発泡体からなる筒状をした断熱材で覆われた架橋ポリエチレン管(例えば、積水化学工業株式会社製のエスロンエスロペックスCV)の場合、上記引っかかりによって、表面の断熱材が破れて、保温性能が損なわれるおそれがある。
【0006】
そこで、上記のような形状記憶による巻き癖を防止して、真っ直ぐな状態の架橋ポリエチレン管を製造する方法として、所望の長さに切断された未架橋ポリエチレン管を直線状に保持した状態で、処理槽中に入れ、処理槽内で熱水処理する方法が既に提案されている(特許文献1参照)。
また、未架橋ポリエチレン管や未架橋の継手などを予め所定の配管パターン組んだのち、この配管パターンのユニットをそのまま熱水槽や水蒸気槽中に浸漬してポリエチレンを架橋させた配管ユニットも提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-344820号公報
【特許文献2】特開2009-108990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ポリエチレンは線膨張係数が約1.4×10-4/℃〜2.3×10-4/℃程度と大きく、熱影響を受けて伸縮しやすい。
したがって、上記のように熱水槽や水蒸気槽内で架橋処理しようとすると、未架橋ポリエチレン管が長尺になれば、熱伸縮の影響を大きく受けやすい。そして、管が伸びやすい方向に伸びようとするため、確実に真っ直ぐに伸びるということがなく、湾曲あるいは蛇行してしまい、湾曲した形状あるいは蛇行した形状の架橋ポリエチレン管が得られるおそれがある。
しかも、上記のように、架橋ポリエチレン管が断熱材で覆われた断熱材付き架橋ポリエチレン管の場合、処理槽内で架橋処理される被処理管は、連続的に押し出された未架橋管に予め断熱材が被覆された状態になっているので、上記のように、熱水槽や水蒸気槽内で架橋処理しようとすると、架橋処理工程で断熱材が濡れてしまい、後工程で乾燥に多大な時間を必要とするなど、製造工程が煩雑になるおそれがある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて、断熱材の有無にかかわらず、真っ直ぐな状態を形状記憶した架橋ポリエチレン管を容易に製造することができる架橋ポリエチレン管の架橋処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明にかかる架橋ポリエチレン管の架橋処理装置(以下、「本発明の架橋処理装置」と記す)は、少なくとも未架橋ポリエチレン製の未架橋管からなる被処理管を収容する処理槽を有し、この処理槽内で前記被処理管の一端から他端に向かって水蒸気または熱水を供給して処理槽内で未架橋ポリエチレンを熱水架橋させるようにした架橋ポリエチレン管の架橋処理装置であって、前記被処理管をほぼ真っ直ぐな状態に支持する複数のガイドローラによって構成される管支持レーンが前記処理層内に設けられていることを特徴としている。
【0011】
本発明において、被処理管としては、未架橋管、あるいは、未架橋管の周囲を断熱材などの保護材で保護したものが挙げられる。
【0012】
本発明の架橋処理装置は、特に限定されないが、複数本の被処理管の未架橋管を同時に架橋処理できて、生産性がよいことから、管支持レーンが、処理槽内に複数並設されている構成とすることが好ましい。
【0013】
また、複数の管支持レーンを設ける場合は、処理槽内で水平方向に並設させたり、上下方向に多段に設けたりすることができる。
上記管支持レーンを、処理槽内で上下方向に多段設けた場合、上記水蒸気または熱水供給口を、最上段の挿入位置と略同じ高さ位置以上の高さ位置に設け、ドレン排出口を、最下段の挿入位置と略同じ高さ位置以下の高さ位置に設けることが好ましい。
【0014】
すなわち、上記のような構成とすることによって、水蒸気または熱水供給口を、最上段の管支持レーンに支持された被処理管の一端に連結管を介して接続し、最上段の管支持レーンに支持された被処理管の他端と、次の段の管支持レーンに支持された被処理管の他端とを連結管で接続し、次の段の管支持レーンに支持された被処理管の一端と、さらに次の段の管支持レーンに支持された被処理管の一端とを連結管で接続していくことを繰り返すとともに、一段上の被処理管の他の被処理管に接続されていない最下段の管支持レーンに支持された被処理管の一端をドレン排出口に接続すれば、水蒸気または熱水が最上段の未架橋管から最下段の被処理管にジグザグに通りドレン排出口からスムーズに排出されるようにすることができる。
【0015】
また、管支持レーンは、被処理管を管支持レーンの一端側から他端側に向かってスムーズに挿入可能で、挿入後、被処理管の未架橋管部分をほぼ直線状態を保った状態に保持することができれば、特に限定されないが、略U字またはV字形をした溝を有する2つの溝付きガイドローラが、その間に被処理管を挿入可能に上下対となるように配置された複数対のローラ対を備え、かつ、これら複数対のローラ対が、直線状に並んで配置されている構成とすることが好ましい。
そして、上下の対となる2つの溝付きガイドローラは、被処理管の挿入時に被処理管の一部(特に断熱材部分)がローラ間に噛み込んで傷つかないように、回転軸が被処理管の挿入方向にずれて配置されていることが好ましい。
【0016】
また、溝付きガイドローラの溝深さは、特に限定されないが、10〜50mm(好ましくは20〜40mm)であることが好ましい。
【0017】
本発明の架橋処理装置は、管支持レーンの一端側から他端側に向かって処理槽内に被処理管を送り出す管送り出し装置を処理槽外に備えていてもよい。
上記管送り出し装置としては、例えば、モータ等の駆動装置で回転駆動する駆動ローラと、駆動ローラとの間で被処理管を挟み込んで従動する従動ローラを少なくとも1対備えた構造が挙げられる。
【0018】
また、上記管送り出し装置は、水平方向及び垂直方向に被処理管の端部送り出し位置を変更可能に構成してもよい。
すなわち、処理槽内に管支持レーンが水平方向に複数列、上下方向に複数段ある場合、上記管送り出し装置を被処理管の端部送り出し位置を変更可能に構成すれば、被処理管の端部送り出し位置を挿入しようとする管支持レーンに正確に一致させてスムーズに挿入することができる。
【0019】
また、本発明の架橋処理装置は、特に限定されないが、処理槽内に挿入される被処理管の原料となる長尺被処理管が巻回された原料管ロールを回転自在に支持する原料ロール支持装置を処理槽外に備えていてもよい。
【0020】
本発明の架橋処理装置は、特に限定されないが、得られる架橋管の端部の曲がりを防止するために、処理槽が、被処理管の管支持レーンの端末ガイドローラよりはみ出た部分を下方から支持して被処理管の垂れ曲がりを防止する受け台を備えている構成とすることが好ましい。
また、上記受け台は、管支持レーンへの被処理管の挿通作業を容易にするために、管支持レーンの前後方向にスライド可能に設けられていることが好ましい。
【0021】
本発明の架橋処理装置は、特に限定されないが、上記管支持レーンの両側を臨む位置に管支持レーンに支持された被処理管に水蒸気または熱水を供給する供給管または被処理管から排出される廃蒸気または廃熱水を排出する排出管の接続ゾーンが設けられ、この接続ゾーンには、管支持レーンに支持された被処理管と並設された他の支持レーンに支持された被処理管とを連通状態で接続する継手を有する連結管ユニットを備えている構成としてもよい。
また、上記継手を被処理管の熱伸長方向に付勢する付勢手段を備えている構成としてもよい。
付勢手段としては、特に限定されないが、コイルばねが挙げられ、このコイルばねの一端が上記受け台に固定され、他端がこの受け台に受けられた継手に固定される構成とすることが好ましい。
【0022】
本発明において、ほぼ真っ直ぐとは、完全に管軸が一直線になっていることが好ましいが、得られる架橋ポリエチレン管を、長さ3mの長さにしてその両端が接地するように平面上においたとき、前記平面との最大隙間が100mm未満(好ましくは50mm以下、より好ましくは20mm以下、最も好ましくは長さ25m以上でも最大隙間が20mm以下)になれるように製造することができれば、少しの湾曲や蛇行は許容できる程度でもよいことを意味する。
なお、上記最大隙間の測定は、断熱材等の保護層を備えたものにおいては、保護層を取り除き、架橋ポリエチエン管を露出させた状態で行う。
【0023】
上記処理槽は、断熱性能の高いもので形成されていることが好ましい。
また、上記処理槽は、特に限定されないが、内部雰囲気を加熱できるようにしても構わない。
【0024】
内部雰囲気を加熱する方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風を外部から処理槽内に吹き込む方法が挙げられる。
【0025】
処理槽内の雰囲気温度は、特に限定されないが、水蒸気を用いて架橋させる場合、あまり温度が低すぎると、架橋処理に用いられる水蒸気が管内で結露してしまい、均一な架橋処理が行えなくなるおそれがあり、高すぎると熱変形などによって得られる架橋ポリエチレン管の寸法精度に問題がでるおそれがあるので、水蒸気温度より1〜3℃程度低い温度に保つことが好ましい。
【0026】
本発明の未架橋管の原料となる樹脂組成物は、ポリエチレン系樹脂、ビニルシラン化合物、酸化防止剤、シラノール縮合触媒及びラジカル重合開始剤を含む。
上記ポリエチレン系樹脂としては、特に限定されないが、重合触媒としてメタロセン化合物を用いて重合されたポリエチレン系樹脂であることが好ましい。
【0027】
一般に、メタロセン化合物とは、遷移金属を、π電子系の不飽和化合物で挟んだ構造の化合物であり、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、白金等の四価の遷移金属に、1つ又は2つ以上のシクロペンタジエン環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物である。
【0028】
上記リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環、インデニル環、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素一置換メタロイド基により置換されたシクロペンタジエニル環及びインデニル環、シクロペンタジエニルオリゴマー環等が挙げられる。
【0029】
これらのπ電子系の不飽和化合物以外に、例えば、塩素、臭素等の一価のアニオン又は二価のアニオンキレート、炭化水素基、アルコキシド、アミド、ホスフィド、アリールアルコシキド、アリールアミド、アリールホスフィド、アリールオキシド等が遷移金属に配位結合されていてもよい。
【0030】
上記シクロペンタジエニル環およびインデニル環と置換される炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、セチル、フェニル等が挙げられる。
【0031】
このようなメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル) チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェニルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−tert−ブチルアミドハフニウムジクロリド、インデニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジエチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジ−n−プロピルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−ブチルアミド)(ジ−n−プロピルアミド)等が挙げられる。
【0032】
これらのメタロセン化合物は、金属の種類や配位子の構造を変え、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、エチレン等のオレフィンの重合の際に触媒として働く。
具体的には、重合は、メタロセン化合物に共触媒としてメチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素化合物等を添加した系で行われる。メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10〜1,000,000モル倍、好ましくは50〜5,000モル倍である。
【0033】
上記重合条件については特に制限はなく、例えば、不活性媒体を用いる溶液重合法、実質的に不活性媒体の存在しない塊状重合法、気相重合法等が利用できる。通常、重合温度は−100〜300℃ 、重合圧力は常圧〜100kg/cm2であるのが一般的である。
【0034】
また、上記したポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体等が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。
【0035】
上記ビニルシラン化合物としては、例えば、ビニルトリスアルコキシランが挙げられ、中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランが好ましい。また、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン等でもよい。
【0036】
上記ビニルシラン化合物の不飽和結合部位は、樹脂組成物中で発生した遊離ラジカル部位と反応する。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機ペルオキシド、有機ペルエステル等があり、中でも、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペル−sec−オクトエート、tert− ブチルペルピバレート、クミルペルピバレート、tert− ブチルペルジエチルアセテート等が好ましく、その他にも、アゾ化合物があり、例えば、アゾビス− イソブチルニトリル、ジメチルアゾイソブチレート等が挙げられる。
【0037】
本発明に用いられるシラノール縮合触媒は、シラノール間の脱水縮合を促進する触媒として一般的に用いられる任意の化合物であればよく、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、酢酸第一錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸鉛、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、ピリジン等の化合物、硫酸、塩酸等の無機塩、トルエンスルホン酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が好適に用いられるが、中でもジブチル錫ジラウレートがより好適に用いられる。
【0038】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられ、併用されることが好ましい。フェノール系抗酸化剤とリン系抗酸化剤が併用されることで、破壊寿命の長期化とクリープ性能の確保を両立が可能となる。
併用するフェノール系抗酸化剤とリン系抗酸化剤の含有量は、ポリエチレン系樹脂に対して0.3〜1.5重量%であることが好ましい。含有量が0.3重量%に満たない場合は特に破壊寿命が不十分になりやすく、1.5重量% を超える場合は架橋度の確保が不十分になることがある。
【0039】
また、フェノール系抗酸化剤とリン系抗酸化剤との比率が1:3〜3:1の範囲で併用された場合には、破壊寿命とクリープ特性のバランスに優れる点で好ましい。フェノール系抗酸化剤の比率が小さすぎる場合は、破壊寿命が不十分になりやすく、逆にリン系抗酸化剤の比率が小さすぎる場合は、架橋度の確保が不十分になることがある。
【0040】
さらに、フェノール系抗酸化剤の融点が100℃ 以上であることが好ましい。融点が100℃ に未満では拡散速度が速くなりすぎて、破壊寿命が短くなることがある。
【発明の効果】
【0041】
本発明の架橋処理装置は、以上のように、少なくとも未架橋ポリエチレン製の未架橋管からなる被処理管を収容する処理槽を有し、この処理槽内で前記未架橋管の一端から他端に向かって水蒸気または熱水を供給して処理槽内で未架橋ポリエチレンを熱水架橋させるようにした架橋ポリエチレン管の架橋処理装置であって、前記未架橋管をほぼ真っ直ぐな状態に支持する複数のガイドローラによって構成される管支持レーンが前記処理層内に設けられているので、断熱材の有無にかかわらず、真っ直ぐな状態を形状記憶した架橋ポリエチレン管を容易に製造することができる。
【0042】
すなわち、例えば、以下の(1)あるいは(2)のようにして、被処理管を管支持レーンに支持させる。
(1)得ようとする架橋ポリエチレン管の長さとほぼ同じ長さの未架橋管を、管支持レーンのガイドローラでガイドさせながら、管支持レーンの一端側から他端側に向かって処理槽内に挿入し、未架橋管を管支持レーンに支持させる。
(2)長尺未架橋管を、その一端を先頭にして管支持レーンのガイドローラでガイドさせながら、管支持レーンの一端側から他端側に向かって処理槽内に挿入し、長尺未架橋管が架橋処理しようとする未架橋管の長さ分挿入された時点で、長尺未架橋管の挿入部を切断によって切り離し、未架橋管を管支持レーンに支持させる。
【0043】
そして、上記のようにして管支持レーンに支持された水蒸気あるいは熱水の供給側配管を接続し、他端に排出側配管を接続したのち、未架橋管の一端から他端に向かって水蒸気あるいは熱水を供給し、未架橋ポリエチレンを架橋させる。
【0044】
このとき、未架橋管は、管支持レーンのガイドローラによってほぼ真っ直ぐな状態で支持されているので、水蒸気あるいは熱水によって、未架橋管が熱膨張しようとしたとき、曲げ方向の負荷がかかることがなく、ほぼ真っ直ぐな状態を保ちながら熱膨張する。
したがって、ほぼ真っ直ぐな状態が記憶された架橋ポリエチレン管を得ることができる。
【0045】
また、未架橋管の内部に水蒸気あるいは熱水を通すだけであるので、未架橋管の周囲に断熱材が外嵌された状態であっても、断熱材が架橋中に濡れることがない。
したがって、後工程で断熱材を乾燥するなどの工程が不要になり生産性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の架橋処理装置の第1の実施の形態をあらわす側面一部切欠き断面図である。
【図2】図1の架橋処理装置のX−X線断面図である。
【図3】図2の管支持レーン部分の拡大図である。
【図4】図1の架橋処理装置の管送り出し装置の反対側の槽本体開口端部分の拡大図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】図1の架橋処理装置の管送り出し装置及び原料管支持装置部分の拡大図である。。
【図7】図6のY方向矢視図である。
【図8】連結管ユニットの平面図である。
【図9】図8の連結管ユニットの継手に未架橋管を連結する前の状態を説明する図である。
【図10】図8の連結管ユニットの継手に未架橋管を連結した状態を説明する図である。
【図11】本発明の架橋処理装置の第2の実施の形態をあらわし、その槽本体を側面からみた断面図である。
【図12】図11の架橋処理装置の管支持レーン部分を拡大してあらわす断面図である。
【図13】本発明の架橋処理装置の第3の実施の形態をあらわし、その槽本体を側面からみた断面図である。
【図14】図13の架橋処理装置の受け台部分の斜視図である。
【図15】図13の架橋処理装置の受け台部分の平面図である。
【図16】本発明の架橋処理装置の第4の実施の形態をあらわし、その受け台部分の伸張機構の概略説明図である。
【図17】図16の架橋処理装置の概略平面図である。
【図18】図16の架橋処理装置の要部概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図7は、本発明の架橋処理装置の第1の実施の形態をあらわしている。
【0048】
図1に示すように、この架橋処理装置Aは、処理槽1と、原料ロール支持装置2と、管送り出し装置3とを備えている。
処理槽1は、槽本体11と、シャッター12とを備えている。
【0049】
槽本体11は、長手方向の両端が開口し、長手方向の長さが、得ようとする架橋ポリエチレン管の長さより少し長い直方体形状をしていて、周壁が断熱構造となっている。
【0050】
槽本体11内には、図2に示すように、被処理管(本実施の形態では、図3に示すように、未架橋ポリエチレンからなる未架橋管P1の周囲に発泡ポリエチレンからなる筒状断熱材P2が被覆されたもの)Pを槽本体11の長手方向に真っ直ぐな状態で支持する水平方向に24列、上下方向に4段に並ぶように、管支持レーンLが設けられている。
各管支持レーンLは、図2及び図3に示すように、略U字型をした溝を有する2つの溝付きガイドローラ51からなるローラ対5を、図4及び図5に示すように、等間隔で、かつ、対となる2つの溝付きガイドローラ51の回転軸間の中点が槽本体11の長手方向に平行な一直線上に等間隔(好ましくは200mm間隔)で配置することによって形成されている。
【0051】
なお、図2及び図3に示すように、水平方向に並ぶ各管支持レーンLの溝付きガイドローラ51は、12個ずつが1本の水平軸52にベアリング(図示せず)を介して回転自在に支持されている。
また、槽本体11の長手方向のローラ対5の間隔は、特に限定されないが、給水給湯用として汎用の架橋ポリエチレン管(呼び径10〜20)を架橋処理する場合には、100mm〜400mmが好ましい。すなわち、間隔が長すぎると、管支持レーンに送り込む途中で管が折れ曲がったり引っかかったりしてうまく送り込むことができなくなるおそれがあり、間隔が短すぎると、ローラが多くなりすぎて、コスト高となるとともに、挿入時の抵抗が大きくなってしまうおそれがある。
【0052】
シャッター12は、槽本体11の上部に設けられたモータMによって、槽本体11の長手方向の端面に沿って上下し、槽本体11の開口を開閉できるように設けられている。
【0053】
また、槽本体11内には、図1,図2,図4,図5に示すように、管送り出し装置3と反対側の槽本体11の開口近傍に、4つの水蒸気供給用ヘッダー6と、4つのドレン用ヘッダー7とが設けられている。
上記4つの水蒸気供給用ヘッダー6は、管軸方向を槽本体11の最上段の管支持レーンLより上方にその管軸を水平かつ槽本体11の長手方向に直交するように設けられている。
各水蒸気供給用ヘッダー6は、槽本体11の天井を貫通するように設けられた水蒸気供給管61と接続されているとともに、それぞれ槽本体11内で6つの水蒸気供給口62に分岐している。
なお、各水蒸気供給口62は、管支持レーンLの水平方向のピッチと同じピッチで分岐している。
【0054】
上記4つのドレン用ヘッダー7は、管軸方向を槽本体11の最下段の管支持レーンLより下方にその管軸を水平かつ槽本体11の長手方向に直交するように設けられている。
各ドレン用ヘッダー7は、槽本体11の底を貫通するように設けられたドレン管71と接続されているとともに、それぞれ槽本体11内で6つのドレン排出口72に分岐している。
なお、各ドレン排出口72は、管支持レーンLの水平方向のピッチと同じピッチで分岐している。
【0055】
原料ロール支持装置2は、図6及び図7に示すように、支持装置本体21と、第1台車22と、第1レール台23とを備えている。
第1レール台23は、ガイド枠23aが槽本体11の長手方向に直交するように、処理槽1外の床面に設けられている。
第1台車22は、台車本体22aを受ける車輪22bが第1レール台23のガイド枠23aに沿って第1レール台23上を槽本体11の長手方向に直交する方向に走行自在となっているとともに、ストッパ(図示せず)によって、第1レール台23上の所望位置に固定できるようになっている。
【0056】
支持装置本体21は、第1台車22上に固定された脚部21aと、脚部21aに回転自在に支持されたリール装置21bとを備えている。
すなわち、リール装置21bは、胴部211と、固定アーム212と、可動アーム213とを備えている。
【0057】
胴部211は、原料管ロールRが嵌合可能な外周径となっている。
可動アーム213は、胴部211の固定アーム212と逆側の位置で、図7に実線であららわすように、固定アーム212と平行状態となる位置(以下、「ロール支持位置」と記す)と、図7に二点鎖線であらわすように、固定アーム212に直交する位置(以下、「ロール装着位置」と記す)とを選択可能に、胴部211に回動可能に固定されている。
【0058】
そして、リール装置21bは、すべての可動アーム213をロール装着位置にすることで、原料管ロールRを可動アーム213にガイドさせながら、胴部211に嵌合したのち、可動アーム213をロール支持位置に戻すことによって、後で詳述する原料管ロールRを胴部211に保持した状態とすることができる。
【0059】
管送り出し装置3は、管送り出し装置本体31と、第2レール台32と、第2台車33とを備えている。
第2レール台32は、ガイド枠32aが、第1レール台23のガイド枠23aと平行となるように、第1レール台23と処理槽1との間で床面に支持されている。
【0060】
第2台車33は、台車本体33aを受ける車輪33bが第2レール台32のガイド枠32に沿って第2レール台32上を槽本体11の長手方向に直交する方向に走行自在となっているとともに、ストッパ(図示せず)によって、第2レール台32上の所望位置に固定できるようになっている。
第2台車33は、台車本体33a上に伸縮脚部33cを介して装置台33dを支持している。
伸縮脚部33cは、上下方向に伸縮して装置台33dの高さ位置を変更可能になっている。
【0061】
管送り出し装置本体31は、スライド台31aと、送り出し駆動部31bと、3つの入口ガイドローラ31cとを備えている。
スライド台31aは、第2レール台32に直交する方向にスライド可能に装置台33d上に支持されているとともに、スライドストッパ(図示せず)によって所望の位置に固定できるようになっている。
【0062】
送り出し駆動部31bは、上下2つ割となっていた下部ローラ支持部311と上部ローラ支持部312とを備えている。
【0063】
下部ローラ支持部311は、スライド台31aに固定され、その一側面に8つの下側送り出し従動ローラ313がその上端縁が水平かつ一直線に並ぶように回転自在に支持されている。
上部ローラ支持部312は、エアシリンダー(図示せず)を介して下部ローラ支持部311に対して上下方向に離接するように支持されているとともに、7つの上側送り出し従動ローラ314と、駆動ローラ315がその下端縁が水平かつ一直線に並ぶように回転自在に支持されている。
【0064】
また、駆動ローラ315は、図7に示すように、サーボモータ316によって回転駆動するようになっている。
サーボモータ316は、図示していない制御盤の制御装置で操作ボタンを操作することによって駆動するとともに、サーボモータ316の回転数から算出された被処理管Pの送り出し長さが、設定した送り出し長さになると、制御盤の制御装置からの信号によって停止するようになっている。
【0065】
つぎに、この架橋処理装置Aを用いた架橋方法の1例を工程順に説明する。
(1)処理槽1のシャッター12を上方に上げて槽本体11の開口端を開放する。
(2)原料管ロールRを原料ロール支持装置2のリール装置21bにセットする。
(3)管送り出し装置3の第2台車33を、第2レール台32上を走行させるとともに、伸縮脚部33cの伸縮によって、装置台33dの高さを調整して、送り出し駆動部31bの下側送り出し従動ローラ313と,上側送り出し従動ローラ314及び駆動ローラ315による送り出し時の未架橋管P1の中心軸と、被処理管Pを支持させようとする管支持レーンLの上下溝付きガイドローラ51の回転軸である水平軸52間の中心点とが一致するように管送り出し装置3をセットする。
(4)原料ロール支持装置2の第1台車22を、第1レール台23上を走行させて、リール装置21bが管送り出し装置3の近傍に位置するようにセットする。
(5)エアーシリンダを駆動させて、送り出し駆動部31bの上部ローラ支持部312を上方に引き上げて、8つの下側送り出し従動ローラ313と、7つの上側送り出し従動ローラ314及び駆動ローラ315との間に被処理管Pの挿入空間を形成する。
(6)リール装置21bから被処理管Pの一端を引き出し、引き出し端を3つの入口ガイドローラ330〜350を通したのち、8つの下側送り出し従動ローラ313と、7つの上側送り出し従動ローラ314及び駆動ローラ315との間を通ったのち、引き出し端が槽本体11の開口を臨むように配置する。
(7)エアーシリンダを駆動させて送り出し駆動部31bの上部ローラ支持部312を下方に下ろし、8つの下側送り出し従動ローラ313と、7つの上側送り出し従動ローラ314及び駆動ローラ315とで引き出し端部を挟みこませる。
(8)図示していない制御盤の操作ボタンを操作してサーボモータ316を駆動させて、駆動ローラ315を駆動させて原料管ロールRの被処理管Pをリール装置21bから引き出しながら、管支持レーンLの一端側から他端側(他方の開口)に向かって送り出す。
このとき、8つの下側送り出し従動ローラ313と、7つの上側送り出し従動ローラ314及び駆動ローラ315とによる送り出し時の未架橋管P1の中心軸と、被処理管Pを支持させようとする管支持レーンLの上下溝付きガイドローラ51の回転軸間の中心点とが一致しているので、送り出された被処理管Pの送り出し端が、対応する管支持レーンLの対となる上下の溝付きガイドローラ51間をスムーズに通過しながら、他方の開口に向かって送り込まれる。
(9)長尺未架橋管P1が、所定長さ送り出され、送り出し端が槽本体11の他方の開口近傍の所定位置(例えば、開口手前の最も開口側のローラ対5を越えた位置)まで達するとサーボモータ316が停止する。
(10)槽本体11に送り込まれた長尺未架橋管P1の槽本体11と、送り出し駆動部31bとの間で切断して、槽本体11内に得ようとする架橋ポリエチレン管の長さより少し長い未架橋管P1を管支持レーンLに支持させた状態とする。
(11)必要に応じて管送り出し装置3の第2台車33を、第2レール台32上を走行させ、あるいは、必要に応じて伸縮脚部33cの伸縮によって、装置台33dの位置を調整して、送り出し駆動部31bに保持された状態の被処理管Pの切断端の中心軸と、被処理管Pを支持させようとするつぎの管支持レーンLの位置にセットする。
(12)必要に応じて原料ロール支持装置2の第1台車22を、第1レール台23上を走行させて、リール装置21bが管送り出し装置3の近傍に位置するようにセットする。
(13)上記(8)〜(12)の工程を繰り返し、全ての管支持レーンLに被処理管Pを支持させた状態とする。
(14)最上段の管支持レーンLに支持された被処理管Pの管送り出し装置3側端部と、上から二段目の段の直下の管支持レーンLに支持された被処理管Pの管送り出し装置3側端部とをそれぞれ図8に示す連結管ユニット8を介して接続する。
(15)上記(14)の工程と同様に、上から3段目の段の管支持レーンLに支持された被処理管Pの管送り出し装置3側端部と、上から4段目の段(最下段)の管支持レーンLに支持された被処理管Pの管送り出し装置3側端部とをそれぞれ連結管ユニット8を介して接続する。
(16)上記(14)の工程と同様に、上から2段目の段の管支持レーンLに支持された被処理管Pの管送り出し装置3と反対側の端部と、上から3段目の段(最下段)の管支持レーンLに支持された被処理管Pの管送り出し装置3と反対側の端部とをそれぞれ連結管ユニット8を介して接続する。
(17)最上段の管支持レーンLに支持された被処理管Pの管送り出し装置3と反対側の端部と、水蒸気供給用ヘッダー6の水蒸気供給口62とを連結管ユニット8を介して接続する。
(18)上から4段目の段の管支持レーンLに支持された被処理管Pの管送り出し装置3と反対側の端部と、ドレン用ヘッダー7のドレン排出口72とをそれぞれ連結管ユニット8を介して接続する。
なお、上記(14)〜(18)の工程は、順不同でよい。また、連結管ユニット8の未処理管P1との接続は、被処理管Pを全ての管支持レーンLに支持させた状態になってから行わなくても、被処理管Pを管支持レーンLに支持させるごとに、順次接続を行うようにしても構わない。
上記連結管ユニット8は、図8に示すように、ポリエチレン管などの可撓性樹脂からなる連結管81と、連結管81の両端に固定された継手82とを備えている。
そして、継手82は、図9及び図10に示すように、被処理管Pの端部の断熱材P2を反転させて未架橋管P1の端部を露出させた状態で、図9に矢印で示すように、ノズル部を未架橋管P1方向に押し込むと同時に、コイルばね82aによって付勢された着脱操作レバー82bの先端部を図10に示すように、付勢力に抗して手などで連結管81側に回動させ、ノズル部82cと着脱操作レバー82bの挿入孔82dとの間に未架橋管P1の端部が入り込ませ、その後、手を外せば付勢力によって着脱操作レバー82bが図10に示すように反対側に回動してノズル部82cと着脱操作レバー82bの挿入孔82dの内縁部との間で未架橋管P1の端部を挟み込むことによってワンタッチで被処理管Pに接続することができる。
(19)シャッター12を閉じて処理槽1内を保温状態とするとともに、水蒸気配管61から水蒸気供給用ヘッダー6を介して水蒸気を供給し、処理槽1内で未架橋管P1の未架橋ポリエチレンを架橋処理する。
すなわち、水蒸気配管61から水蒸気供給用ヘッダー6に入り込んだ水蒸気は、管送り出し装置3と反対側の端部から最上段の被処理管P内に入り、管送り出し装置3側へ流れたのち、連結管81を介して上から二段目の段の被処理管P、三段目の段の被処理管P、4段目の段の被処理管Pへ槽本体11の長手方向にジグザグに流れ、ドレン排出口72、ドレン用ヘッダー7を介してドレン管に排出される。
そして、被処理管P内を流れる水蒸気によって未架橋ポリエチレンが水架橋されて架橋ポリエチレン管が得られる。
(20)架橋完了後、水蒸気の供給を止め、シャッター12を開放して全ての連結管ユニットを得られた架橋ポリエチレン管から取り外し、得られた架橋ポリエチレン管を槽本体11外に引き出す。
(21)必要に応じて、取り外した架橋ポリエチレン管内に残った水滴を乾燥させる。
【0066】
この架橋処理装置Aは、上記のように、多数の溝付きガイドローラ51からなる管支持レーンLによって真っ直ぐな状態に支持した被処理管Pの内部に、処理槽1内で水蒸気を通して未架橋ポリエチレンを架橋させるようにしたので、水蒸気の流入等によって被処理管Pが熱伸縮しても常に被処理管Pを真っ直ぐな状態に保つことができ、真っ直ぐな状態が形状記憶された架橋ポリエチレン管を安定して得ることができる。
【0067】
また、可撓性を有する連結管81を介して連結するとともに、上方から下方に向かってジグザグに水蒸気を供給するようにしたので、上下の被処理管Pの熱伸縮差をうまく緩和でき、熱伸縮差による被処理管Pの蛇行等の問題がない。
さらに、溝付きガイドローラ51を上下交互に配置し、溝付きガイドローラ51の溝内に嵌り込んだ状態で上下の溝付きガイドローラ51間を通すようにしたので、未架橋管P1の位置が定まりやすくなり、熱水架橋時の曲がり、撓みがより防止できるとともに、構造が簡単でコスト面やメンテナンス面でも優れたものとなる。
【0068】
図11及び図12は、本発明の架橋処理装置の第2の実施の形態をあらわしている。
図11及び図12に示すように、この架橋処理装置Bは、上下に配置した長尺水平シャフトローラ9aからなる水平ローラ対を、槽本体11の長手方向に上記ローラ対5と同じピッチとなるように設けるとともに、この水平ローラ対毎に隣接して複数(この実施の形では13本)の垂直ローラ9bが支持されていて、2本の垂直ローラ9bと上下の長尺水平シャフトローラ9aとの間が管支持レーンLとなっている以外は、上記架橋処理装置Aと同様になっている。
【0069】
図13〜図15は、本発明の架橋処理装置の第3の実施の形態をあらわしている。
図13〜図15に示すように、この架橋処理装置Cは、以下に詳述する以外は、上記架橋処理装置Aと同様に構成されている。したがって、上記架橋装置Aと同じ構成部分は同じ符号を付している。
【0070】
すなわち、この架橋処理装置Cは、図13〜図15に示すように、各段の管支持レーンLの槽本体11の出入口に受け台13を備えている。
受け台13は、槽本体11の内幅と同じか少し狭い幅をしていて、槽本体11を構成するフレーム(図示せず)に、槽本体11の長手方向にスライド自在に支持されている。
そして、受け台13は、その上面が、槽本体11の同じ段で並行に並ぶ各管支持レーンLで支持される被処理管Pの下端とほぼ同じ高さ位置を保ちながら、図15に示すように、被処理管Pに接続される連結管ユニット8の少なくとも継手82を下方から受ける位置と、管支持レーンLのほぼ出入口端との間をスライドするようになっている。
【0071】
この架橋処理装置Cは、上記のように、受け台13を備えているので、被処理管Pを架橋処理する場合に、継手82を受け台13によって下方から支持しておくことができる。
すなわち、継手82の重さが被処理管Pに加わることがなくなり、継手の重さによる湾曲を被処理管Pの湾曲を防ぎ、真っ直ぐな状態が形状記憶された架橋ポリエチレン管をより安定して得ることができる。
【0072】
なお、受け台13の槽本体11からの最大突出長さは、槽本体11内で処理される被処理管Pの長さに対して0.5〜1.5%の範囲(因みに、被処理管Pが50mであれば、突出長さは250〜750mmである。)とすることが好ましく、0.8〜1.2%とすることがより好ましい。
すなわち、受け台13の突出長さを長くしすぎると、処理槽1の空間が大きくなりすぎて槽内温度を昇温させるのに大きな熱量と長い時間が必要となり、エネルギー効率に問題が発生するとともに、被処理管Pに継手82を接続しにくくなるおそれがある。一方、突出長さが短すぎると熱伸長した管の端部が受け台13からはみ出て受け台13を設ける意味がなくなるおそれがある。
【0073】
また、受け台13は、槽本体11の内側にスライドさせることができるので、被処理管Pと連結管ユニット8とを接続する際に邪魔にならない。
すなわち、継手82は、被処理管Pに熱水または水蒸気を通し、架橋させる際に受け台13に受けられていればよい。
【0074】
図16〜図18は、本発明の架橋処理装置の第4の実施の形態をあらわしている。
図16〜図18に示すように、この架橋処理装置Cは、以下に詳述する以外は、上記架橋処理装置Aと同様に構成されている。したがって、上記架橋処理装置Aと同じ構成部分は架橋処理装置Aと同じ符号を付している。
【0075】
図16〜図18に示すように、この架橋処理装置Dは、以下に詳述する以外は、上記架橋処理装置Aと同様に構成されている。したがって、上記架橋処理装置Aと同じ構成部分は架橋処理装置Aおよび架橋処理装置Cと同じ符号を付している。
すなわち、この架橋処理装置Dは、槽本体11に固定された受け台13aを有し、この受け台13aに一端が固定されたコイルばねSを付勢手段として備えている。
【0076】
そして、このコイルばねSは、他端が、図示していないボルトやフック等によって、連結管ユニット8aの継手82を下方から支持する車輪88を備えた台車87に着脱自在になっている。
すなわち、継手82は、台車87によって受け台13a上をスムーズに移動可能になっている。
【0077】
この架橋処理装置Dは、上記のように、継手82がコイルばねSによって被処理管Pの熱伸長方向に常に付勢されているので、被処理管Pが常に管軸方向に引っ張られ真っ直ぐ伸びた状態に保たれる。
したがって、湾曲、弓なり、蛇行等がなく、よりまっすぐな架橋ポリエチレン管を得ることができる。
【0078】
なお、コイルばねSの動く範囲は被処理管Pの長さの0.5〜1.5%が好ましく、0.8〜1.2%がより好ましい。
すなわち、コイルばねSの動く範囲を大きくとりすぎると、処理槽1の空間が大きくなりすぎて槽内温度を昇温させるのに大きな熱量と長い時間が必要となり、エネルギー効率に問題が発生するおそれがあり、小さくなると、湾曲、弓なり、蛇行等を無くす効果が不十分となるおそれがある。
【0079】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、巻回されたロールから未架橋管を送り出し槽本体内に挿入するようにしていたが、押出成形装置から押し出された未架橋管を直接槽本体内に挿入するようにしても構わない。
【0080】
上記の実施の形態では、管送り出し装置及び原料ロール支持装置2がそれぞれ1つずつ設けられ、未架橋管を1本ずつ管支持レーンに支持させていくようになっていたが、管送り出し装置及び原料ロール支持装置2を複数台設け、複数本同時に管支持レーンに支持させるようにしても構わない。
また、管送り出し装置及び原料ロール支持装置2を複数台設ける場合、槽本体の長手方向の両側に分けて設けるようにしても構わない
【0081】
上記の実施の形態では、水蒸気供給用ヘッダー及びドレン用ヘッダーが槽本体の管送り出し装置と反対側の開口近傍に設けられていたが、管送り出し装置側に設けるようにしても構わないし、水蒸気供給用ヘッダーとドレン用ヘッダーとを槽本体の長手方向の両側に分けて設けるようにしても構わない。
上記第3の実施の形態では、受け台が槽本体の内幅とほぼ同じか少し狭い幅に形成されていたが、すなわち、同じ段のすべての管支持レーンの被処理管の端部を1つの受け台で下側から受けるようにしていたが、幅の狭い受け台を個別にスライドするように、槽本体の幅方向に並べて配置しても構わない。
【0082】
上記第4の実施の形態では、受け台が槽本体に固定されていたが、第3の実施の形態と同様にスライド自在とするとともに、スライド位置で位置固定できるスライドロック機構を設けるようにしてもよい。
上記第4の実施の形態では、継手を下方から支持する台車が設けられていたが、台車は無くても構わない。また、台車の車輪を誘導するレールを受け台の上面に設けるようにしても構わない。
【0083】
上記第4の実施の形態では、コイルばねが台車に着脱自在になっていたが、台車にコイルばねを完全固定し、受け台側に着脱自在に設けるようにしても構わないし、コイルばねのばね強度を変更可能にしても構わない。
上記第4の実施の形態では、付勢手段がコイルばねであったが、熱に影響されなければゴム弾性体であっても構わない。
【符号の説明】
【0084】
A,B,C,D 架橋処理装置
L 管支持レーン
P 被処理管
P1 未架橋管
P2 断熱材
R 原料管ロール
1 処理槽
11 槽本体
12 シャッター
13 受け台
2 原料ロール支持装置
3 管送り出し装置
5 ローラ対
51 溝付きガイドローラ
52 水平軸(回転軸)
6 水蒸気供給用ヘッダー
62 水蒸気供給口
7 ドレン用ヘッダー
72 ドレン排出口
8 連結管ユニット
81 連結管
82 継手
9a 水平シャフトローラ(ガイドローラ)
9b 垂直ローラ(ガイドローラ)
S コイルばね(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも未架橋ポリエチレン製の未架橋管からなる被処理管を収容する処理槽を有し、この処理槽内で前記被処理管の一端から他端に向かって水蒸気または熱水を供給して処理槽内で未架橋ポリエチレンを熱水架橋させるようにした架橋ポリエチレン管の架橋処理装置であって、
前記被処理管をほぼ真っ直ぐな状態に支持する複数のガイドローラによって構成される管支持レーンが前記処理槽内に設けられていることを特徴とする架橋処理装置。
【請求項2】
管支持レーンが、処理槽内に複数並設されている請求項1に記載の架橋処理装置。
【請求項3】
管支持レーンは、略U字またはV字形をした溝を有する2つの溝付きガイドローラが、その間に被処理管を挿入可能に上下対となるように配置された複数対のローラ対を備え、かつ、これら複数対のローラ対が、直線状に並んで配置されている請求項1または請求項2に記載の架橋処理装置。
【請求項4】
上下対となる2つの溝付きガイドローラは、回転軸が被処理管の挿入方向にずれて配置されている請求項3に記載の架橋処理装置。
【請求項5】
上記管支持レーンが、少なくとも処理槽内で上下方向に複数並設され、
上記水蒸気または熱水供給口が、最上段の管支持レーンと略同じ高さ位置以上の高さ位置に設けられ、
ドレン排出口が、最下段の管支持レーンと略同じ高さ位置以下の高さ位置に設けられている請求項2〜請求項4のいずれかに記載の架橋処理装置。
【請求項6】
管支持レーンの一端側から他端側に向かって処理槽内に被処理管を送り出す管送り出し装置を処理槽外に備えている請求項1〜請求項5のいずれかに記載の架橋処理装置。
【請求項7】
管送り出し装置は、各管支持レーンの位置に合せて、送り出し位置を可変に設けられている請求項2〜請求項6のいずれかに記載の架橋処理装置。
【請求項8】
処理槽内に挿入される被処理管の原料となる長尺被処理管が巻回された原料管ロールを回転自在に支持する原料ロール支持装置を処理槽外に備えている請求項1〜請求項7のいずれかに記載の架橋処理装置。
【請求項9】
処理槽が、被処理管の管支持レーンの端末ガイドローラよりはみ出た部分を下方から支持して被処理管の垂れ曲がりを防止する受け台を備えている請求項1〜請求項8に記載の架橋処理装置。
【請求項10】
上記受け台が、管支持レーンの前後方向にスライド可能に設けられている請求項9に記載の架橋処理装置。
【請求項11】
上記管支持レーンの両側を臨む位置に管支持レーンに支持された被処理管に水蒸気または熱水を供給する供給管または被処理管から排出される廃蒸気または廃熱水を排出する排出管の接続ゾーンが設けられ、この接続ゾーンには、管支持レーンに支持された被処理管と並設された他の支持レーンに支持された被処理管とを連通状態で接続する継手を有する連結管ユニットを備えている請求項1〜請求項10のいずれかに記載の架橋処理装置。
【請求項12】
上記継手を被処理管の熱伸長方向に付勢する付勢手段を備えている請求項11に記載の
架橋処理装置。
【請求項13】
付勢手段が、コイルばねであって、このコイルばねの一端が請求項9または請求項10に記載の受け台に固定され、他端がこの受け台に受けられた継手に固定される請求項12に記載の架橋処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−53302(P2013−53302A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−170982(P2012−170982)
【出願日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】