説明

架橋ポリエチレン組成物

【課題】新規なポリマーブレンドの調製方法の提供。
【解決手段】上記方法は、混合ゾーン中で熱可塑性ポリマー、グラフト化ポリオレフィン、水分供給源及び架橋剤を混合し、熱可塑性ポリマーによるマトリックス相、少なくとも部分的に架橋された熱可塑性ポリマーによる補強相を含有し、約10%〜約50重量%のゲル含有率である熱可塑性ポリマーブレンドを調製することを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な架橋ポリエチレン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
配管及び加熱パイプシステムは、ISO10508にて説明されるように、2〜10barの圧力、及び90℃までの温度において操作する。かかるパイプは伝統的に、銅又は亜鉛めっき鋼から製造されていた。しかしながらこれらの材料は腐食の問題が課題であり、また取り扱いが困難で、更にインストール及びメンテナンスに費用がかかるという問題もあった。そのため、柔軟性、連続パイプとしての取付け作業の軽減、軽量性及び溶接作業の軽減の観点から、多くのポリマーベースの材料がここ数十年においてこれらの金属材料にとって代わるようになった。ポリマー物質のなかでも、活性が低く、環境に対する負荷が少なく、可撓性で、高い熱伝導率及び他のポリマーと比較した良好な経済性の観点から、ポリエチレンが好適な材料として使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリエチレンをかかる用途に使用する場合は、熱的−機械的特性(特に長期静水圧強度)を得るために架橋させる必要がある。現在使用されている架橋技術(すなわち過酸化物、シラン又は照射による方法)に関する欠点は、これらの全てが限られた処理性に起因するコスト高、及び/又は形成後処理を必要とすることである。更に、これらの架橋技術では、最終製品の長期の安定性及びポリマーの感覚刺激特性に悪影響を与える化学反応を伴う。これは主に副反応によるものであり、安定化剤パッケージや反応副産物の生成に影響を及ぼす。最後に、非架橋の熱可塑性パイプ材料物質とは異なり、架橋ポリエチレンは溶接には適さない。
【0004】
上記の欠点にもかかわらず、架橋ポリエチレンは依然として現在使用される主要なプラスチック材料の1つである。
【0005】
ポリエチレン材料を配管・加熱パイプ用途に使用する際に必要となる熱的−機械的特性を得るためには、架橋が必要である。3つの主架橋技術、すなわち過酸化物架橋、シラン架橋及び照射架橋が開発されている。それらの処理方法に関係なく、架橋ポリエチレン材料の適用性はEN ISO−15875に記載されている。この基準では、架橋ポリエチレン材料の要件として最低限の架橋度が存在し、それはそのゲル含有率で測定され、少なくとも60%超であることを必要とする。
【0006】
近年、ポリエチレンの分子構築技術を使用し、ポリマーの固有の熱的―機械的特性の強化が行われている。新規なポリマー合成技術に関連するこれらの技術開発はオクテンコモノマーの制御導入を可能にし、それにより、最適な態様でアレンジされた6つの炭素ペンダント鎖を有する、性能が強化された高分子量のポリエチレンが得られ、ポリマーの性能アップに貢献することとなる。これらのペンダント鎖における、凝結の間に形成される物理的なもつれの増加、及びタイ分子の量の増加により、長期の応力抵抗及び引掻き強度の増加がもたらされる。ISO−10508に記載されるように、ISO−1043−1にPE−RT(温度抵抗性が向上したポリエチレン)として定義されるこれらの材料は温水パイプ用途にこれまで採用されてきた。これらの材料の効果として、架橋されていないためにそれらがリサイクル可能、溶接が可能であり、また形成後の架橋操作が必要ないことが挙げられる。しかしながらこれらの材料では、未だ架橋ポリエチレンに耐熱性及び引掻き強度を付与するには到っておらず、実際に使用した際に、場合によってはそれらの適用性が限定されることもありうる。
【0007】
例えば特許文献1のように、ポリエチレンの部分架橋により機械的特性を改善した例が過去に開示されている。この特許では、化学架橋剤又は物理的な照射方法を使用する任意の周知の架橋方法でベースポリエチレンを部分的に前架橋によって、ブロー後のフィルムの引裂き強度を高めることが可能であることを開示している。
【0008】
近年、特許文献2は、形成前にポリエチレンを照射することによって同様に静水圧強度を増加させる技術を開示している。照射により分子量及び分子量分布が記載のように修飾されたことを示し、また部分架橋の際にも同様であることが示唆されているが、この後者に関しては立証されていない。いずれにせよ、特性を強化するためには最小限の照射が必要ではあるが、処理性を維持するためには高い線量での照射はできないことが、当該明細書の記載から明らかとされている。
【0009】
部分架橋はまた、シュリンクスリーブのようなポリエチレンベースのパーツ製品に形状記憶特性を付与するために使用されている。この場合には、一般にゲル含有率の25〜40%を部分架橋することが必要であり、それにより架橋部分を加熱変形した後に再加熱して得られる生成物における形状記憶特性及び収縮効果が提供される。かかるパーツは、化学架橋剤又は物理的照射を使用する周知の架橋方法により架橋できる。架橋後は、これらの生成物は高いゲル含有率のため、それらの最初の形状に比例して変形するのみであり、再加工又は再利用をすることができない。にもかかわらずこの例は、処理性の代償として、ベース樹脂の融解温度で生じる形状記憶効果により例証されるような、ポリエチレンの熱抵抗性の増加可能性を示すものである。
【0010】
上記全ての部分架橋の例で共有する事実は、化合物中の樹脂の100%が処理されたとき、記載したのと同じ用途に必要な架橋レベルとなるということである。すなわち、架橋は機械的特性、熱的特性及び処理性の間のバランスを保ちながら行われるというのが結論である。ゆえに、生成物の成形に必要となる機械的特性、熱的特性及び処理性をこれらの方法を使用して得ることは不可能である。
【0011】
ポリマーブレンドの架橋は、いわゆる熱可塑性加硫(TPV)技術によっても行われる。かかる技術の説明に関しては、Schonbourgらの特許文献3(参照によって本願明細書に援用される)を参照。かかる材料は熱可塑性マトリックスを含んでなり、そこには架橋された熱可塑性物質又はゴム粒子が含まれる。両方の相の化学性質は通常、一方が架橋され他方がされていないという事実以外にも、異なる性質を有しており、ゴム相は柔軟性を持たせるために使用され、一方マトリックスは最良の熱的機械的性能の観点から選択される。これらが異なる性質を有するという事実はまた、これらの製造に使用される方法(通常は動的架橋技術に基づく)にも関連する。多くの物質の組合せ及び架橋技術が使用でき、それらは公知技術である。架橋により、架橋相(マトリクス材料より一般に高い柔軟性を有するが、強度は低い)の熱的機械的性能が向上する。これにより、処理性を維持しながら、ベース樹脂の性能よりも改良された柔軟性、圧縮及び引掻き抵抗性を化合物に付与することができる。但し、かかる性能の組合せは、パイプ用途で求められる性能とは通常異なる。更に、標準的なTPV技術で使用される物質の組合せは、多くの場合、架橋相のためのベースポリマーがマトリックス樹脂より反応性を有する必要があるという工程上の制約から、温水の配管及び加熱パイプ用途には適さないものとなる。
【0012】
ゆえに、配管システムの製作材料としての使用に適しているポリエチレン組成物であって、上記のような架橋ポリエチレンの欠点が克服されたものに対するニーズが存在する。
【特許文献1】米国特許第4226905号公報
【特許文献2】国際公開第03/089501号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6448343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、新規なポリマーブレンドの調製方法の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
当該方法は混合ゾーン中で熱可塑性ポリマー、グラフト化ポリオレフィン、水分供給源及び架橋剤を混合して、熱可塑性ポリマーのマトリックス相及び少なくとも部分的に架橋されたポリオレフィンによる補強相を含有し、約10%〜約50重量%までのゲル含有率である熱可塑性ポリマーブレンドを提供することを含んでなる。
【0015】
当該ポリマー組成物は、架橋ポリエチレンに関して上記した欠点、特に架橋を開始する際のコスト、並びに/又は形成後の処理、長期の安定性及び溶接可能性の問題を解決する。本願明細書に記載のような良好な制御条件下でポリエチレン組成物を架橋することにより、温水の配管用途及び加熱パイプ用途、並びに地域暖房、ガス及び産業パイプ用途に使用される導管に必要な特性が付与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本願明細書に記載する新規な技術により、TPV技術と同様の部分的又は完全に架橋されたポリマーの製造が可能となり、特徴としては、そのマトリックス及び架橋ポリマーが、同様の性質及び/又は使用される架橋化学物質に対する同様の反応性を有するベース樹脂で調製できることが挙げられる。かかる材料は温水、ガス及び産業的なパイプ用途に適していることが解っている。これらの材料は優れた熱的及び機械的特性を有し、また架橋を開始させる反応物質の量が最小限に抑えられ、それにより標準的な架橋ポリエチレンと比較して感覚刺激特性がより好適なものとなる。その得られる特性により、熱可塑性に由来する溶接可能性及びリサイクル可能性などの付加的な利点を有する架橋ポリエチレンパイプが得られる。
【0017】
本発明の一実施態様では、マトリックス相として使用される熱可塑性ポリマーを、ポリマーブレンドの補強相として使用する部分的又は完全に架橋されたポリマー(例えばポリエチレン又は他のポリオレフィン(ホモポリマー又はコポリマー))と混合する。両方のポリマーは同じベース樹脂で調製してもよいが、それらの密度及び/又は粘度が僅かに異なるものを使用するのが好ましい。これらの違いにより、後述する動的工程を通じた、熱可塑性マトリックス中での架橋相の形成が促進される。
【0018】
更に具体的には、本発明のポリマー組成物は、一実施態様では好ましくは約10%〜約50重量%、他の実施態様では約15%〜約40重量%、他の実施態様では約20%〜約30重量%のゲル含有率である。
【0019】
一実施態様では、本発明のポリマー組成物は、約1〜約75重量%のマトリックス相としての熱可塑性ポリマー、及び約25〜約99重量%の補強相としての部分的又は完全に架橋されたポリオレフィンを含んでなり、別の実施態様では、約10〜約60重量%のマトリックス相としての熱可塑性ポリマー、及び約40〜約90重量%の補強相としての部分的又は完全に架橋されたポリオレフィンを含んでなり、更に別の実施態様では、約20〜約50重量%のマトリックス相としての熱可塑性ポリマー、及び約50〜約80重量%の補強相としての部分的又は完全に架橋されたポリオレフィンを含んでなる。
【0020】
一実施態様では、補強相の原料として、混合前に例えば化学的な架橋又は放射線処理によって部分的又は完全に前架橋した材料を使用してもよいが、架橋は、架橋剤及び/又は架橋触媒の添加によって、最終混合段階において動的に実施するのが好ましい。好適な架橋剤としては、シラン(アミノシラン、ビニルシラン、ビニルアミノシランなど)及び有機ジアミン(例えばヘキサメチレンジアミンなど)が挙げられる。混合前の前架橋は、ポリエチレン樹脂の架橋に適用できるいかなる方法を使用して行ってもよい。動的架橋は、前グラフト化ポリエチレン樹脂を使用することにより実施でき、混合の間、任意の適切な架橋剤及び/又は架橋触媒を添加する。事前グラフト化樹脂は、エチレン−ビニルシランコポリマーのようなコポリマーであってもよく、又はビニルシラン、無水マレイン酸、エポキシ又はアミン部分等を、過酸化物を使用してグラフト化したポリエチレン樹脂であってもよい。ビニルシラン、無水マレイン酸、エポキシ又はアミン部分は、例えば水又はその他水分供給源及び/又は触媒(例えばスズ化合物)などの物質を使用して反応を生じさせることができる。水を直接添加してもよく、又はビニルシランコポリマー又は、ビニルシランをグラフト化させたポリエチレン樹脂を使用する場合は、架橋反応に充分な水を含有するいかなる固体若しくは液体担体を使用してもよい。化合物の処理に採用される温度で水を放出又は生じさせる適切な材料を使用して水を添加してもよく、例えば、無機化合物の水和物(例えば無機水和物(例えばMg(OH)、Ca(OH)、Al(OH)など)又は他の無機化合物)が使用可能である。他の反応性部分とグラフト化したポリエチレンの場合、架橋を開始させるいかなる適切な化学架橋剤を選択してもよい。
【0021】
樹脂の両方とも又はいずれか1つは、UV安定化剤(例えば、Ciba Geigy社製、BHTなどにより製造されるIrganox1076及び1010)、色素(例えばチタンホワイト、カーボンブラックなど)、充填材、加工助剤(例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウムなど)又は他のいかなる添加物によって更に別々に前混合し、所望の更なる特性をテーラーメードしてもよい。上記の添加物は、架橋若しくは混合の間に添加してもよく、又は生成物の成形の間に部分的に架橋された混合調製中に添加してもよい。
【0022】
当該調製は、バッチ又は連続混合装置(例えばBanburryミキサー、二軸押出機又はバスニーダー)の単一工程で実施するのが好ましい。一実施態様では、以下の成分を混合装置に連続的に添加することにより調製を行う。すなわち、
(a)補強相として使用されるポリオレフィン(例えばポリエチレン)、グラフティング処理のためのグラフティング用化学物質(例えばフリーラジカル発生剤(過酸化物など))及びカルボン酸無水物(例えば無水マレイン酸)を添加し、
(b)マトリックスとして使用される熱可塑性ポリマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなど)、安定化剤、及び上記混合処理に使用する他の添加剤を添加し、
(c)部分的な架橋処理に用いる1つ以上の架橋用添加物(例えばシラン又は有機ジアミン、例えばヘキサメチレンジアミン)及び/又は1つ以上の架橋触媒を添加する。更に最終的な化合物を放出又はペレット化して、パイプなどの連続プロフィール成形に使用する標準的な押出機や、あるいは成形されたパーツ(例えば継手)の製造に用いる射出成形装置への使用に供してもよい。
【0023】
本発明の一実施態様では、補強相として使用される部分的又は完全に架橋されたポリマーはポリエチレンポリマーである。
【0024】
適切な1つ以上の熱可塑性ポリマーとしては、限定されないが、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、特に高密度(PE)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、熱可塑性ポリエステル類(PET、PBT)、ポリカーボネート(PC)及びポリアミド(PA)、並びにポリフェニレンエーテル(PPE)又はポリフェニレンオキシド(PPO)が挙げられる。一実施態様では、マトリックスの熱可塑性ポリマーはポリエチレン及び/又はポリプロピレンのポリマーである。マトリックスポリマー及び架橋ポリマーは同じであっても異なってもよい。
【0025】
一実施態様では、補強相のポリマーは、マトリックス相の熱可塑性ポリマーと混合する前に架橋される。別の実施態様では、マトリックスのポリマー及び補強相のポリマーが同じ場合、例えばカルボン酸無水物及びフリーラジカル発生剤をポリマー組成物全体に添加してもよい。無水物及びシランの添加量を制御することにより、シランの添加後、ポリマーの一部が架橋相を形成し、他の一部が熱可塑性マトリックス相のままで存在する。2つの相間での相分離が適当な度合いであることが望ましい。この工程は、単一の連続ミキサー、タンデムに配置した2台以上のミキサー、バッチミキサー又は本発明の目的に適した他のミキサーにおいて実施できる。
【0026】
本発明の処理に用いられる適切なカルボン酸無水物は例えばいかなるカルボン酸無水物であってもよく、それらはポリマーとグラフト化して考えられる何らかの機構によりゴム相を形成できる。このグラフト化の実施において、不飽和結合がポリマー中、あるいはより好ましくは酸無水物中に存在してもよい。カルボン酸無水物の不飽和は、ポリマーとの反応性を有する限りにおいて、リング構造体の内側又は外側のどちらに存在してもよい。酸無水物はハロゲン化物であってもよい。異なるカルボン酸無水物の混合物を使用してもよい。本発明に用いられる典型的な不飽和カルボン酸無水物としては、限定されないが、イソブテニルコハク酸、(+/−)−2−オクテン−1−イルコハク酸、イタコン酸、2−ドデセン−1−イルコハク酸、cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、cis−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、メチル−5−ノルボルネン−2,3−カルボン酸、エキソ−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、2,3−ジメチルマレイン酸、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸、ブロモマレイン酸及びジクロロマレイン酸の無水物が挙げられる。
【0027】
カルボン酸無水物の量を調整し、所望の架橋度合いとすることができる。通常、当該組成物は約0.01重量%〜約1.0重量%のカルボン酸無水物を含有する。別の実施例では、当該組成物は約0.05重量%〜約0.5重量%のカルボン酸無水物を含有する。他の実施態様では、当該組成物は0.05重量%〜約0.2重量%のカルボン酸無水物を含有する。
【0028】
適切なフリーラジカル発生剤は、水又は油に可溶性の過酸化物から選択でき、例えば過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、ジアルキル過酸化物などの多様な有機過酸化触媒(例えば過酸化ジイソプロピル、過酸化ジラウリル、ジ−t−ブチル過酸化物、ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,3,5トリメチル1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シロキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、過酸化ジクミル、アルキル過酸化水素(例えばt−ブチル過酸化水素、t−アミル過酸化水素、クミル過酸化水素)、ジアシル過酸化物(例えば過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル)、ペルオキシエステル(例えばエチルペルオキシベンゾアート)、及びアゾ化合物(例えば2−アゾビス(イソブチロニトリル)が挙げられる。一実施態様では、フリーラジカル発生剤はカルボン酸無水物の半分の量で添加するが、必要な場合にはそれ以上若しくは以下の量で使用してもよい。
【0029】
本発明に使用する適切なシランは、好ましくは少なくとも1つの加水分解性基(例えばアルコキシル基、アセトキシ基又はハロ基、好ましくはアルコキシル基)を有するアミノシランである。架橋縮合反応を行わせることができる少なくとも2つのかかる加水分解性基を設け、得られる化合物によりそのような架橋反応を実施できるようにするのが好ましい。異なるアミノシランとの混合物を使用してもよい。
【0030】
シランは、以下の式で表される。
YNHBSi(OR)(X)3−a
式中、a=1〜3(好ましくは3)で、Yは水素、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、アルカリル、アルキルシリル、アルキルアミン、C(=O)OR又はC(=O)NRであり、Rはアシル、アルキル、アリール又はアルカリル基であり、XはR又はハロであってもよい。Bは二価の架橋基であり、好ましくはアルキレン基であり、分岐状(例えばネオヘキシレン)又は環状であってもよい。Bはヘテロ原子橋(例えばエーテル結合)を含んでもよい。好ましくは、Bはプロピレン基である。好ましいRはメチル又はエチル基である。メトキシ基含有シランは、エトキシ基の場合より良好な架橋性能を確実に行うことができる。好ましくは、Yはアミノアルキル、水素又はアルキル基である。好ましくは、Yは水素又は第一級アミノアルキル基(例えばアミノエチル基)である。好ましいXはCl及びメチル基(好ましくはメチル基)である。典型的なシランとしては、γアミノプロピルトリメトキシシラン(GE社製、SILQUEST(登録商標)A−1110シラン)、γアミノプロピルトリエトキシシラン(SILQUEST(登録商標)A−1100)、γアミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(SILQUEST(登録商標)A−1120)、HNCHCHNHCHCHNH(CHSi(OCH(SILQUEST(登録商標)A−1130)及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(SILQUEST(登録商標)A−2120)が挙げられる。他の適切なアミノシランとしては、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)−フェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−(1−アミノプロポキシ)−3,3,ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、ビス[(3−トリメトキシシリル)−プロピル]エチレンジアミン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス−(γ−トリエトキシシリルプロピル)アミン(SILQUEST(登録商標)A−1170)、N−エチル−γ−アミノイソブチルトリメトキシシラン(A−LINK 15)、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン(SELQUEST(登録商標)A−1637)、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルジメトキシシラン(SILQUEST(登録商標)A−2639)及びN−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン(SILQUEST(登録商標)Y−9669)が挙げられる。
【0031】
アミノシランは、両ポリマーの重量に対して250〜25,000ppmで添加する必要がある。また、酸無水物に対するモル当量比率で約0.1〜10、好ましくは、0.9〜1.1、最も好ましくは1:1で添加する必要がある。
【0032】
本発明の一実施態様では、シランは多孔性ポリマー、シリカ、二酸化チタン又はカーボンブラックなどの担体上に存在させてもよく、それにより混合工程の間にポリマーに添加するのが容易となる。かかる材料の典型例としては、ACCURELポリオレフィン(Akzo Nobel)、STAMYPORポリオレフィン(DSM)及びVALTECポリオレフィン(Montell)、SPHERILENEポリオレフィン(Montell)、AEROSILシリカ(Degussa)、MICRO−CEL E(Manville)及びENSACO 350Gカーボンブラック(MMM Carbon)が挙げられる。
【実施例】
【0033】
下記の実施例は、比較目的でのみ示される比較実施例を除いて、本発明を例示する。組成物のパーセンテージは、特に明記しない限りポリマーブレンドの合計量に対する重量%である。ゲル含有率は、標準化されたEN579試験で測定する。以下の工程を実施例において採用した。
【0034】
工程1:
部分的に架橋された組成物を、温度を200℃に制御したBrabender密閉式ミキサーを使用して調製した。50のcmの量のBrabenderの混合ヘッドはバンブリーナイフを備え、120回転/分の回転速度に設定した。同時に全ての成分を投入し、単一の処理において工程を実施した。混合物を均質にするために、成分の投入前にバッグ中において前混合した。トルクが安定するまで処理し、架橋反応を完了させた(約10分)。次に組成物を回収し、Colinホットプレス機を使用し190℃、100barで1分間押圧し、厚さ1.5mmのプラークとして成形した。
【0035】
工程2:
部分的に架橋された組成物を、温度を200℃に制御したBrabender密閉式ミキサーを使用して調製した。50のcmの量のBrabenderの混合ヘッドはバンブリーナイフを備え、120回転/分の回転速度に設定した。次の3つの連続処理により工程を実施した。
−最初に、架橋される樹脂を、過酸化物及び無水マレイン酸と共に添加し、このグラフト反応を所定時間(例えば5分)実施した。
−次にマトリックス樹脂を添加し、完全に溶解するまで混合した。このとき、トルクが安定するまでシラン架橋剤を添加した。
−最後に、部分的な架橋反応を完了させた(約10分)。次に組成物を回収し、Colinホットプレス機を使用し190℃、100barで1分間押圧し、厚さ1.5mmのプラークとして成形した。
【0036】
工程3:
部分的に架橋された組成物を、重量供給装置を備えている46mm/15D Bussコニーダー型押出機を使用して調製した。軸回転速度を100回転数/分とし、合計スループットを15kg/時間で設定した。温度プロフィールを160℃、190℃、210℃、210℃で設定し、コニーディングバレルは、160℃のスクリュー温度と同様に160℃とした。放出スクリュー及びダイ温度をそれぞれ170℃及び180℃とした。2つのパス工程により組成物を調製した。第1のパスにおいて、架橋しようとする樹脂を過酸化物及び無水マレイン酸と共に添加し、グラフト反応を行わせ、無水マレイン酸とグラフト化した樹脂を調製し、ペレット化し、次の第2のパスにおいてそのまま使用(同じ押出機にリサイクルするか、又はタンデムに作動している他の押出機に供給)し、この樹脂を、マトリックス樹脂及びシランを架橋剤と同時に添加した。次に得られる組成物をペレット形態において回収し、Colinホットプレス機を使用し190℃、100barで1分間押圧し、厚さ1.5mmのプラークとして成形した。
【0037】
<実施例1>
上に示される方法1に従い、部分的に架橋された化合物を以下の組成(全調製物に対するパーセンテージとして表示)にて調製した。全ての反応成分、過酸化物、無水マレイン酸及びシランを、各成分を5%ずつ有する多孔性Valtec 7153 XCSポリプロピレン担体を使用してマスターバッチの形で添加した。調製物の組成を、74.8%のHDPEポリエチレン Eltex 4040A(BP−Solvay)、0.05%のジ−tert−ブチル過酸化物(Trigonox B、akzo)、0.1%の無水マレイン酸(MAH、Fluka)、17%のポリプロピレンホモポリマーマトリックス樹脂(Valtec 7153 XCS、Basell)、0.2%のテトラキスメチレン−(3,5−ジ−テルブチル−4−ハイドロシナメート)メタン(Irganox 1010、Ciba)及び0.25%の4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン(Silquest A−1637、GE)とした。調製物中の残り(7.6%)は、使用した多孔性ポリプロピレン(「PP」)担体であった。
【0038】
<実施例2>
上に示される方法1に従い、部分的に架橋された化合物を以下の組成(全調製物に対するパーセンテージとして表示)にて調製した。全ての反応成分、過酸化物、無水マレイン酸及びシランを、各成分を5%ずつ有する多孔性Valtec 7153 XCSポリプロピレン担体を使用してマスターバッチの形で添加した。調製物の組成を、74.8%のHDPEポリエチレン Eltex 4040A(BP−Solvay)、0.05%のジ−tert−ブチル過酸化物(Trigonox B、akzo)、0.1%の無水マレイン酸(MAH、Fluka)、17%のポリプロピレンホモポリマーマトリックス樹脂(Valtec 7153 XCS、Basell)、0.2%のテトラキスメチレン−(3,5−ジ−テルブチル−4−ハイドロシナメート)メタン(Irganox 1010、Ciba)及び0.25%のγ−アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−1100、GE)とした。調製物中の残り(7.6%)は、使用した多孔性ポリプロピレン(「PP」)担体であった。
【0039】
<実施例3>
上に示される方法1に従い、部分的に架橋された化合物を以下の組成(全調製物に対するパーセンテージとして表示)にて調製した。全ての反応成分、過酸化物、無水マレイン酸及びシランを、各成分を5%ずつ有する多孔性Valtec 7153 XCSポリプロピレン担体を使用してマスターバッチの形で添加した。調製物の組成を、74.8%のHDPEポリエチレン Lecqtene2040 MN55(Atofina)、0.05%のジ−tert−ブチル過酸化物(Trigonox B、akzo)、0.1%の無水マレイン酸(MAH、Fluka)、17%のポリプロピレンホモポリマーマトリックス樹脂(Valtec 7153 XCS、Basell)、0.2%のテトラキスメチレン−(3,5−ジ−テルブチル−4−ハイドロシナメート)メタン(Irganox 1010、Ciba)及び0.25%のγ−アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−1100、GE)とした。調製物中の残り(7.6%)は、使用した多孔性ポリプロピレン(「PP」)担体である。
【0040】
<(比較)実施例4>
上に示される方法1に従い、非架橋の組成物を、以下の組成(全調製物に対するパーセンテージとして表示)にて調製した。調製物の組成を、74.8%のHDPEポリエチレン Eltex4040A(BP−Solvay)、25%のポリプロピレンホモポリマー(Valtec 7153 XCS、Basell)及び0.2%のテトラキスメチレン−(3,5−ジ−テルブチル−4−ハイドロシナメート)メタン(Irganox 1010、Ciba)とした。これらの成分は、上記例と同程度の時間(約10分)混合し、非架橋ポリマーブレンドを得た。
【0041】
<実施例5>
上に示される方法2に従い、部分的に架橋された化合物を以下の組成(全調製物に対するパーセンテージとして表示)にて調製した。全ての反応成分、過酸化物、無水マレイン酸及びシランを、各成分を5%ずつ有する多孔性Valtec 7153 XCSポリプロピレン担体を使用してマスターバッチの形で添加した。第一に、74.8%のHDPEポリエチレンのEltex4040A(BP−Solvay)を、0.05%のジ−tert−ブチル過酸化物(Trigonox B、アクゾ)、0.1%の無水マレイン酸(MAH、Fluka)及び2.7%のポリプロピレンホモポリマー(Valtec 7153 XCS、Basell)と共に添加した。次に、マトリックス樹脂、14.3%のポリプロピレンホモポリマー(Valtec 7153 XCS、Basell)を、0.2%のテトラキスメチレン−(3,5−ジ−テルブチル−4−ハイドロシナメート)メタン(Irganox 1010、Ciba)と共に添加し、最後に0.25%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(Silquest A−1100、GE)を添加した。調製物中の残り(7.6%)は、使用した多孔性ポリプロピレン(「PP」)担体である。
【0042】
試験結果に関する考察
上記の全ての実施例は、それぞれ0.5、1.7、1.3、2.3及び1.7g/10分のメルトフローインデックス(MFI)(5kgの重量、190℃)として表される熱可塑性を有していた。これらの組成物の特徴として、熱変形試験(0.6MPaの応力下、140℃で15分間実施)による抵抗性により例証される強化された熱的−機械的抵抗性を有することが挙げられ、実施例1、2、3及び5ではそれぞれ保形性(75%、70%及び60%の永久ひずみ)を有していた。同じ条件下で、比較実施例4における非架橋組成物では破損が確認された。また熱的−機械的抵抗性の強化により、35℃〜180℃の3℃/分による傾斜による動的機械的分析(DMA)試験による測定の結果、厚さ1.5mm及び長さ35mmの二重片持ちサンプルで、80μmの環状変形を示し、構造的完全性が保持されていることが明らかとなった。180℃(使用される両方の樹脂の融解温度を越える温度)における実施例1、2、3及び4の典型的なモジュラスを、10〜15MPaで測定した。一方で実施例5によって調製した生成物は145℃で破損が確認された。実施例1、2、3及び5は全体的に、標準的なPEX−bシラン架橋ポリエチレンと非常に類似した反応を示した。実施例1及び2は、異なる架橋剤が使用できることを示す。実施例2及び3は、異なるポリマー樹脂が使用できることを示す。実施例1、2及び3は、特に圧縮成形されたプラークに対して行う曲げ破壊試験における明らかな脆弱さを示す。一方実施例4では、脆弱さが観察されなかった。いかなる理論にも束縛されないが、この後の工程ではポリプロピレンマトリックス樹脂と混合する前における別々のグラフト処理を採用するが、それは活性の過酸化物の存在下で混合した場合、部分的な分解が生じると考えられているからである。実施例4の張力強さは、50mm/分で測定したとき20.3MPaであり、破壊時の伸長度は500%であり、EN579に従い測定したゲル含有率は25%であった。
【0043】
<実施例6>
上に示される方法2に従い、部分的に架橋された化合物を以下の組成(全調製物に対するパーセンテージとして表示)にて調製した。全ての反応性成分、過酸化物、無水マレイン酸及びシランを、5%ずつ有する多孔性高密度ポリエチレン担体(Pearlene 200HD、GE)を使用してマスターバッチの形で添加した。第一に、71.8%のHDPEポリエチレンのEltex4040A(BP−Solvay)を、0.05%のジ−tert−ブチル過酸化物(Trigonox B、アクゾ)及び0.1%の無水マレイン酸(MAH、Fluka)と共に添加した。次に、マトリックス樹脂、20%のPE80(Finathene 3802,Atofina)を、0.2%のテトラキスメチレン−(3,5−ジ−テルブチル−4−ハイドロシナメート)メタン(Irganox 1010、Ciba)と共に添加し、最後に0.25%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(Silquest A−1100、GE)を添加した。調製物の残り(7.6%)は、使用した多孔性HDPE担体である。
【0044】
<実施例7>
上に示される方法3に従い、部分的に架橋された化合物を以下の組成(全調製物に対するパーセンテージとして表示)にて調製した。全ての反応性成分、過酸化物、無水マレイン酸及びシランを、5%ずつ有する多孔性高密度ポリエチレン担体(Pearlene 200HD、GE)を使用してマスターバッチの形で添加した。第一のグラフティングパスを71.8%のHDPEポリエチレンのEltex4040A(BP−Solvay)、0.05%のジ−tert−ブチル過酸化物(Trigonox B、アクゾ)及び0.1%の無水マレイン酸(MAH、Fluka)で調製した。このグラフト化物をペレット化し、マトリックス樹脂、20%のPE80ポリエチレン(Finathene 3802、Atofina)及び0.25%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(Silquest A−1100、GE)と共に第2のパスに添加した。調製物の残り(7.6%)は、使用した多孔性HDPE担体である。
【0045】
<実施例8>
上に示される方法3に従い、部分的に架橋された化合物を以下の組成(全調製物に対するパーセンテージとして表示)にて調製した。全ての反応性成分、過酸化物、無水マレイン酸及びシランを、5%ずつ有する多孔性高密度ポリエチレン担体(Pearlene 200HD、GE)を使用してマスターバッチの形で添加した。第一のグラフティングパスを72.6%のHDPEポリエチレンのEltex4040A(BP−Solvay)、0.04%のジ−tert−ブチル過酸化物(Trigonox B、アクゾ)及び0.08%の無水マレイン酸(MAH、Fluka)で調製した。このグラフト化物をペレット化し、マトリックス樹脂、21%のPE80ポリエチレン(Finathene 3802、Atofina)及び0.2%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(Silquest A−1100、GE)と共に第2のパスに添加した。調製物の残り(6.08%)は、使用した多孔性HDPE担体である。
【0046】
<(比較)実施例9>
上に示される方法3に従い、部分的に架橋された化合物を以下の組成(全調製物に対するパーセンテージとして表示)にて調製した。全ての反応性成分、過酸化物、無水マレイン酸及びシランを、5%ずつ有する多孔性高密度ポリエチレン担体(Pearlene 200HD、GE)を使用してマスターバッチの形で添加した。第一のグラフティングパスを73.5%のHDPEポリエチレンのEltex4040A(BP−Solvay)、0.025%のジ−tert−ブチル過酸化物(Trigonox B、アクゾ)及び0.05%の無水マレイン酸(MAH、Fluka)で調製した。このグラフト化物をペレット化し、マトリックス樹脂、22.5%のPE80ポリエチレン(Finathene 3802、Atofina)及び0.125%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(Silquest A−1100、GE)と共に第2のパスに添加した。調製物の残り(3.8%)は、使用した多孔性HDPE担体である。
【0047】
試験結果に関する考察:
実施例6及び7は同様の特性を有する部分的に架橋された化合物であり、Brabender研究室及びパイロットスケールのバス−ニーダー工程が適用できることを示す。しかしながらパイロットスケール工程ではわずかに良好な架橋効率であった。典型的特性はそれぞれ、17%及び22%のゲル含有率、0.95及び0.35g/10分のMFI、20.7及び17.6MPaの曲げ強さ、746%及び1043%の破損時の伸長度、並びに11及び10.5MPaのDMA二重片持ち梁率であった。実施例7、8及び9は、使用する反応性成分の比率を変化させることによる効果を例示する。実施例9は、最少量の反応性成分を使用して、架橋しなかった化合物(比較実施例4と同様)に係る実施例であり、それは5%のゲル含有率にもかかわらず、上記の熱変形試験及びDMA試験に合格しなかった。実施例8は実施例7と同様の機械的特性を有し、更に12%と低いゲル含有率にもかかわらず、180℃における10.5MPaの保形率を有し、DMA試験に合格した。
【0048】
<実施例10>
部分的に架橋された組成物を、工程3に従い、46mm/11D Bussコニーダー型押出機を使用して調製した。軸回転速度を160回転数/分とし、合計スループットを12kg/時間で設定した。温度プロフィールを210℃で設定し、コニーディングバレルは170℃とし、スクリュー温度を80℃とした。放出スクリュー及びダイ温度をそれぞれ200℃及び210℃とした。以下の組成(全調製物に対するパーセンテージとして表示)にて調製した。全ての反応性成分、過酸化物、無水マレイン酸及びシランを、5%ずつ有する多孔性高密度ポリエチレン担体(Pearlene 200HD、GE)を使用してマスターバッチの形で添加した。第一のグラフティングパスを72.3%のHDPEポリエチレンのEltex4040A(BP−Solvay)、0.045%のジ−tert−ブチル過酸化物(Trigonox B、アクゾ)及び0.09%の無水マレイン酸(MAH、Fluka)で調製した。このグラフト化物をペレット化し、マトリックス樹脂、18.5%のPE80ポリエチレン(Finathene 3802、Atofina)、0.225%のγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(Silquest A−1100、GE)及びEltex 4040Aベースの抗酸化剤マスターバッチ(UX1、GE)と共に第2のパスに添加した。調製物の残り(6.84%)は、使用した多孔性HDPE担体である。
【0049】
試験結果に関する考察
EN579に従って測定した結果、実施例10の部分的に架橋された化合物は22%の総ゲル含有率を示した。これにより、上記のDMA試験の構造的完全性の保持で示されるように生成物の熱的−機械的抵抗性が強化された。生成物は標準的な架橋ポリエチレン(少なくとも60%のゲル含有率を有する)に非常に近いDMAトレースを示し、標準的なHDPEの溶融温度より高い、少なくとも180℃までの温度で約10MPaの保形率を示した。更に熱的−機械的抵抗性及び部分的な架橋による効果を例示するために、低温で1000%に伸長したサンプルを、空気循環オーブン中で210℃で熱処理した。この処理により、架橋材料に典型的な形状記憶効果による収縮が観察され、1000%に伸長させたドッグボーン標本を熱に曝した後の最終的な伸長(永久ひずみに対応)はわずか50%であった。最後に、140℃で実施される熱ナイフ試験に対する抵抗性においても熱的−機械的特性が例示された。かかる温度下では、熱抵抗性のポリエチレンさえも変形して熱ナイフによって切断される。一方、実施例10の組成物はナイフによってほとんど傷が付かなかった。組成物の室温における機械的性能も優れていた。50mm/分のクロスヘッド速度で測定した引張り強さ、破壊時の引張強さ及び破壊の伸長は、それぞれ20.0MPa、30.0MPa及び1050%であった。
【0050】
この樹脂のMFIは、190℃、5kgにおいて0.2g/10分であった。これはやや低いにもかかわらず、通常の押出条件で上質なパイプを製造することが可能となる。この化合物を使用して、HDPEパイプの標準的な温度プロフィールを使用して、実験室用のBC38Davis−Standardパイプ押出ラインにて、16×2mmのパイプ標本を製造した。このパイプを、3つの異なる温度において、ASTM D1599−99elに準拠する短期液圧試験(破壊時)に供した。標本は、23℃、82℃及び93℃で、60〜70秒間破裂するまで処理した。それぞれの破裂圧抵抗は、23.7MPa、8.73MPa及び7.14MPaであった。また混合処理性も良好で、射出成形装置Arburg−Allrounder 320−210−750を使用して評価される標準的な射出成形条件が採用できる。これにより、パイプ継手の製造にも、かかる部分的に架橋された化合物を使用することができる。これらは多くの場合パイプに溶接されるため、実施例10の組成物の溶接可能性も評価した。200mm長のパイプサンプルを半分にカットして、突き合わせて溶接試験を行った。切断面を、90秒間、0.15MPaの圧力下で、210℃の温度に設定した溶接ヒーターと接触させて配置した。0.5のMPaの圧力下で30秒維持し、3秒間のテェンジオーバー時間の後、加熱したパイプ面を接触させた。冷却後、伸長させたドッグボーン標本を、サンプルパンチャーを使用して溶接パイプから切断した。更に引張強度試験を、23℃で20mm/分のクロスハッチ速度で実施した。溶接した棒の破損時引張強さ及び伸長度は、それぞれ18.4MPa及び600%であった。
【0051】
上記で多くの詳細を説明したが、それらは単にその好ましい実施態様を例示するものであり、これらの詳細な内容に本発明が限定されるものと解釈すべきでない。当業者であれば、本願明細書に添付された特許請求の範囲に記載された本発明の範囲及び技術思想を基に、多くの他の実施態様を想像すると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ゾーン中で熱可塑性ポリマー、グラフト化ポリオレフィン、水分供給源及び架橋剤を混合して、熱可塑性ポリマーのマトリックス相及び少なくとも部分的に架橋されたポリオレフィンによる補強相を含有し約10%〜約50重量%のゲル含有率である熱可塑性ポリマーブレンドを調製することを含んでなる、ポリマーブレンドの調製方法。
【請求項2】
前記グラフト化ポリオレフィンが、エチレンポリマーのカルボン酸無水物及びフリーラジカル発生剤との反応により得られる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記エチレンポリマーが、混合ゾーンでの混合前に、カルボン酸無水物及びフリーラジカル発生剤と反応している、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記エチレンポリマーが、混合ゾーン中でカルボン酸無水物及びフリーラジカル発生剤と反応し、in situでグラフト化ポリオレフィンを形成する、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーブレンドの補強相が部分的に架橋されたポリオレフィンを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記部分的に架橋されたエチレンポリマーが、混合ゾーン中で事前グラフト化エチレンポリマーの選択的な架橋により得られる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記事前グラフト化エチレンポリマーが、混合ゾーン中において、カルボン酸無水物及びフリーラジカル発生剤とエチレンポリマーを混合し、架橋剤との混合前にエチレンポリマーを所定時間グラフト反応に供することによって得られる、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記混合ゾーンから事前グラフト化エチレンポリマーを取り出し、少なくとも1つのシランを伴わせて、同じ若しくは異なる混合ゾーン中へ、熱可塑性ポリマーと共にグラフト化したエチレンポリマーをフィードバックすることを含んでなる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、スチレンアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、熱可塑性ポリエステル類、ポリカーボネート、ポリアミド、PPE、及びそれらの1つ以上の物理的若しくは化学的な組み合わせを含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記カルボン酸無水物が、イソブテニルコハク酸、(+/−)−2−オクテン−1−イルコハク酸、イタコン酸、2−ドデセン−1−イルコハク酸、cis−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、cis−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸、エンドビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸、メチル−5−ノルボルネン−2,3−カルボン酸、エキソ−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、2,3−ジメチルマレイン酸、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボン酸、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸、ブロモマレイン酸及びジクロロマレイン酸の無水物から選択される1つ以上の化合物である、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記フリーラジカル発生剤が、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、ジアルキル過酸化物などの多様な有機過酸化触媒(例えば過酸化ジイソプロピル、過酸化ジラウリル、ジ−t−ブチル過酸化物、ジ(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、3,3,5トリメチル1,1−ジ(tert−ブチルペルオキシ)シロキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、過酸化ジクミル、アルキル過酸化水素(例えばt−ブチル過酸化水素、t−アミル過酸化水素、クミル過酸化水素)、ジアシル過酸化物(例えば過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル)、ペルオキシエステル(例えばエチルペルオキシベンゾアート)、及びアゾ化合物(例えば2−アゾビス(イソブチロニトリル)からなる群から選択される、請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記水分供給源が水である、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記水分供給源が水和した無機化合物を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記水和した無機化合物が、Al(OH)、Mg(OH)及びCa(OH)からなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記架橋剤が以下の式で表されるシランである、請求項1記載の方法。
YNHBSi(OR)(X)3−a
(式中、a=1〜3であり、Yは水素、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、アルカリル、アルキルシリル、アルキルアミン、C(=O)OR又はC(=O)NRであり、Rはアシル、アルキル、アリール又はアルカリル基であり、XはR又はハロゲンであり、R又はメチル又はエチル基であり、Bは二価の直鎖状、分岐状鎖又は環状の炭化水素架橋基であるか、又はBはヘテロ原子橋を有する。)
【請求項16】
Rがメチル基であり、Yがアミノアルキル、水素又はアルキル基であり、XがCl又はメチル基である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記架橋剤が、γアミノプロピルトリメトキシシラン、γアミノプロピルトリエトキシシラン、γアミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルメチルジエトキシシラン−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(SILQUEST(登録商標)A−1120)、HNCHCHNHCHCHNH(CHSi(OCH(SILQUEST(登録商標)A−1130)及びN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)−フェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、3−(1−アミノプロポキシ)−3,3,ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、ビス[(3−トリメトキシシリル)−プロピル]エチレンジアミン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス−(γ−トリエトキシシリルプロピル)アミン、N−フェニルγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エチル−γ−アミノイソブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルジメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン及びウレイドプロピルトリメトキシシランからなる群から選択されるシランである、請求項1記載の方法。
【請求項18】
安定化剤、色素、充填材及び加工助剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加物を混合することを更に含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記混合ゾーンから熱可塑性ポリマーブレンドを取り出すことを更に含んでなる、請求項1記載の方法。
【請求項20】
取り出された前記熱可塑性ポリマーブレンドで導管を作製することを更に含んでなる、請求項19記載の方法。
【請求項21】
a)混合ゾーンにおいて、熱可塑性第1ポリマー、熱可塑性第2ポリマー、カルボン酸無水物、フリーラジカル発生剤及び架橋剤を混合する工程と、
b)前記熱可塑性第2ポリマーを前記カルボン酸無水物及びフリーラジカル発生剤と反応させ、グラフト化ポリマーを得る工程と、
c)前記架橋剤と前記グラフト化ポリマーを反応させて少なくとも部分的に架橋されたポリマーを得る工程と、
d)前記熱可塑性第1ポリマーと、前記少なくとも部分的に架橋されたポリマーを混合して、前記熱可塑性第1ポリマーのマトリックス相、及び前記少なくとも部分的に架橋されたポリマーの補強相を有するポリマーブレンドを得る工程を含んでなる、ポリマーブレンドの調製方法。
【請求項22】
前記熱可塑性第1ポリマーがポリプロピレンであり、前記熱可塑性第2ポリマーがポリエチレンである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記熱可塑性第1ポリマー及び前記熱可塑性第2ポリマーの両方がポリエチレンである、請求項21記載の方法。
【請求項24】
a)熱可塑性第1ポリマー及び少なくとも部分的に架橋された第2ポリマーを混合することにより、熱可塑性第1ポリマーによるマトリックス相及び少なくとも部分的に架橋された第2ポリマーによる補強相を含有し約10%〜約50重量%のゲル含有率である熱可塑性ポリマーブレンドを調製し、
b)前記ポリマーブレンドで管状の導管を作製する、流体導管の作製方法。
【請求項25】
前記熱可塑性第1ポリマーがポリエチレンであり、少なくとも部分的に架橋された前記第2ポリマーがポリエチレンである、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記第2ポリマーが放射線又は化学物質によって架橋される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
架橋された前記第2ポリマーが、ポリエチレンをカルボン酸無水物及び過酸化物と反応させてグラフト化ポリエチレンを調製し、更に水分供給源の存在下で前記グラフト化ポリエチレンとシランを反応させることにより得られる、請求項24記載の方法。

【公表番号】特表2008−540768(P2008−540768A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511237(P2008−511237)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/017719
【国際公開番号】WO2006/124368
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】