説明

架橋可能なゴム組成物

【課題】低粘度で、成形性が良好で、かつ圧縮永久歪に優れた硬化物を得る架橋可能なゴム組成物を提供する。
【解決手段】(A)非共役ポリエンが、式(I)又は(II)




(nは0〜10の整数、R1〜R3はH又はアルキル基。)で示されるノルボルネン化合物よりなる、エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴム、(B)ケイ素原子結合Hを一分子あたり2個以上有するオルガノポリシロキサン、(C)表面処理剤で表面処理した比表面積が30〜380m2/gのヒュームドシリカ、(D)硬化反応触媒、を必須成分とする架橋可能なゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋可能なゴム組成物に関し、より詳しくは、架橋速度が速く、離型性に優れるため液状射出成形、トランスファー成形、圧縮成形等の金型成形、また空気中で硬化阻害を受けないため押し出し成形やカレンダー成形等の薄膜成形に好適な材料であり、かつ硬化したゴムの圧縮永久歪が小さいため各種のシール用途に好適な材料である。例えば、自動車用として、ウエザーストリップ用途、ラジエターホース・ブレーキホース等の各種ホース用途、エンジンマウント等の防振ゴム用途、ラジエターシール・ピストンシール等のシール用途、シリンダーカップ等のカップ用途、更に種々のダイヤフラム、Oリングなどに好適である。電気絶縁用途として、電線ジョイント、終端部品等に好適である。OA機器ロール用として、帯電ロール、転写ロール、現像ロール、給紙ロール用途、工業ロール用途として、製鉄用ロール、製紙用ロール、印刷用電線ロール用等に好適である。家庭用ゴム製品として、雨具、輪ゴム、靴、ゴム手袋、ゴルフボール、ダイビング用品等に好適である。更に、土木用止水シート、燃料電池シール用途などにも好適である。
【背景技術】
【0002】
EPDMなどのエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体は、一般に、耐候性、耐熱性、耐オゾン性に優れており、自動車用工業用品、工業用ゴム製品、電気絶縁材、土木建築用材、ゴム引き布などに用いられている。
【0003】
従来のエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴムは、シリコーンゴムなどに比べて圧縮永久歪性が劣るという欠点がある。この欠点を解決する方法としてイオウ加硫からパーオキサイド架橋に変更する方法は効果的であるが、この方法では、HAV(ホットエアー加硫)、UHF(極超短波電磁波)などの熱空気架橋をする場合、ゴム表面が架橋しない、あるいは劣化を起こし、耐傷付き性が著しく劣るという欠点がある。
【0004】
また、特開平4−185687号公報(特許文献1)には、分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有する化合物と、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物と、ヒドロシリル化触媒からなる組成物が開示されているが、硬化性は不十分で、圧縮永久歪も十分な値ではなかった。
特開2001−31802号公報(特許文献2)には、特定の構造を有するアルケニル基含有化合物と分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物と、ヒドロシリル化触媒からなる組成物が開示されているが、実施例で使用されているSiH化合物は、混合後のゴムコンパウンドの室温での可使時間が非常に短く、通常のゴム成形には不適なものであった。
特開2001−31812号公報(特許文献3)には、特定の構造を有するアルケニル基含有化合物と少なくとも2個のSiH基を一分子中に持つ化合物の反応により、圧縮永久歪の小さい硬化物を得られることが開示されているが、実施例は高粘度のミラブルタイプゴムのみで、成形方法が限られるという欠点があった。
特開2001−31815号公報(特許文献4)には、特定の構造を有するアルケニル基含有化合物と少なくとも2個のSiH基を一分子中に持つ化合物に加え、補強性フィラーとしてヒュームドシリカを使用する例が開示されているが、表面処理剤は使用されておらず、圧縮永久歪についてもデータはなかった。
特開2008−156574号公報(特許文献5)には、特定の構造を有するアルケニル基含有化合物と、分子の末端にSiH基を2個及び3個有する化合物を併用する方法が開示されているが、室温での可使時間を調整することが困難で、各種の成形に不適な材料であった。
特表2009−509011号公報(特許文献6)には、特定の構造を有するアルケニル基含有化合物と少なくとも2個のSiH基を一分子に持つ化合物に加え、表面を疎水化処理された焼成シリカが例示されているが、表面処理方法についての詳細はなく、また組成物は液状低粘度ではなく成形性が限られるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−185687号公報
【特許文献2】特開2001−31802号公報
【特許文献3】特開2001−31812号公報
【特許文献4】特開2001−31815号公報
【特許文献5】特開2008−156574号公報
【特許文献6】特表2009−509011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、低粘度であり、成形性が良好で、かつ圧縮永久歪に優れた硬化物を与える架橋可能なゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、非共役ポリエンが一般式(I)又は(II)で示される少なくとも1種のノルボルネン化合物よりなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴムと分子側鎖にSiH基を有するオルガノポリシロキサン、及び表面を少なくとも2種の異なる表面処理剤で処理したヒュームドシリカを混合することにより、低粘度で成形し易く、かつ硬化したゴムの圧縮永久歪に優れたものが得られるゴム組成物を見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の架橋可能なゴム組成物を提供する。
(1)(A)非共役ポリエンが、下記一般式(I)又は(II)
【化1】


(式中、nは0〜10の整数であり、R1は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、R2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。)
【化2】

(式中、R3は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
で示される少なくとも1種のノルボルネン化合物よりなり、かつ剪断速度10s-1の時の25℃での粘度が10Pa・s以上1,000Pa・s未満であるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴム:100質量部、
(B)ケイ素原子結合水素原子を一分子あたり2個以上有するオルガノポリシロキサン:0.1〜30質量部、
(C)少なくとも2種の表面処理剤で表面処理した比表面積が30〜380m2/gのヒュームドシリカ:10〜60質量部、
(D)硬化反応触媒:触媒量
を必須成分とすることを特徴とする架橋可能なゴム組成物。
(2)(B)成分中のSiH基と(A)成分中のアルケニル基とのモル比が、SiH基/アルケニル基=0.5〜2.0であることを特徴とする(1)に記載の架橋可能なゴム組成物。
(3)(C)成分中の表面処理剤が、
A:シロキサンオリゴマー、
B:オルガノクロロシラン又はその部分加水分解物、
C:オルガノアルコキシシラン又はその部分加水分解物、
D:オルガノシラザン又はその部分加水分解物、
E:脂肪酸又はその誘導体、
F:チタン酸エステル
からなる群から選ばれたものであり、A〜Fの表面処理剤の2種以上で表面処理されたヒュームドシリカを用いることを特徴とする(1)又は(2)に記載の架橋可能なゴム組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明のゴム組成物は、低粘度で成形性が良好であり、かつ圧縮永久歪の小さいゴム硬化物を与える。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳述する。
(A)成分は、エチレンに由来する構造単位、炭素数3〜20のα−オレフィンに由来する構造単位、少なくとも1種の非共役ポリエンに由来する構造単位を含む。
この場合、本発明のゴム組成物の第1必須成分[(A)成分]は、非共役ポリエンが、下記一般式(I)又は(II)で示される少なくとも1種のノルボルネン化合物よりなるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴムである。
【化3】


(式中、nは0〜10の整数であり、R1は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、R2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。)
【化4】


(式中、R3は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
【0011】
上記エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンにおいて、炭素数3〜20のα−オレフィン(以下、単に「α−オレフィン」ともいう)に由来する構造単位は、(A)成分に柔軟性(低結晶性)を与える。
α−オレフィンの炭素数は、原料コスト、本発明の共重合体の機械的性質及び共重合体を含む組成物から得られる成形品のゴム弾性の観点から、好ましくは3〜8である。
このようなα−オレフィンの例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられ、これらの中でも、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンが好ましい。
以上説明したα−オレフィンは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
本発明の共重合体全構造単位中のα−オレフィンに由来する構造単位の割合は、種々の公知の方法により測定することができ、例えば、1H−NMRスペクトルの測定により前記割合を求めることができる。
【0013】
<非共役ポリエン>
非共役ポリエンに由来する構造単位は、共重合体ゴム(A)に架橋反応性を与える。
非共役ポリエンは、二重結合を二つ以上(通常4個以下)有し、かつその二重結合同士が共役していなければ特に限定されないが、コストの観点から、炭素数5〜20の非共役ジエンが好ましく、炭素数5〜15の非共役ジエンがより好ましい。
このような非共役ジエンの例としては、環状非共役ジエンとして、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)、ノルボルナジエン及びメチルテトラヒドロインデンが、鎖状非共役ジエンとして、1,4−ヘキサジエン及び7−メチル−1,6−オクタジエンが挙げられる。
これらの中でも、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、ジシクロペンタジエン及び5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)が好ましく用いられ、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)が特に好ましく用いられる。
以上説明した非共役ポリエンは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
本発明の共重合体全構造単位中の非共役ポリエンに由来する構造単位の割合は、種々の公知の方法により測定することができ、例えば、1H−NMRスペクトルの測定により前記割合を求めることができる。
【0015】
[(A)成分の製造方法]
(A)成分の製造方法は特に制限はないが、例えばバナジウム系と有機アルミニウム系を主成分として含有する触媒の存在下にエチレンとα−オレフィンと非共役ポリエンをランダムに共重合することより得られる。触媒の具体例として、バナジウム系触媒としてはVOCl3,VO(OC253等が挙げられ、また有機アルミニウム系触媒としてはトリエチルアルミニウムやジエチルアルミニウムエトキシド等が挙げられる。この際の重合温度は30〜60℃、より望ましくは30〜50℃であり、重合圧力4〜12kgf/cm2、特に5〜8kgf/cm2であり、非共役ポリエンとエチレンとの供給量のモル比(非共役ポリエン/エチレン)0.01〜0.2の条件下でエチレンとα−オレフィンと非共役ポリエンをランダム共重合することにより得られる。なお、共重合は炭化水素媒体中で行うことが好ましい。
【0016】
また、共重合させる非共役ポリエン成分は、本発明の目的を損なわない範囲で上記一般式(I)又は(II)で示される少なくとも1種のノルボルネン化合物の他に、下記に例示するような非共役ポリエンを併用することができる。
【0017】
併用する非共役ポリエンとしては、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1−メチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(2,3−ジメチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−エチル−3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−メチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(3,4−ジメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(3−エチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−(2−メチル−6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2−ジメチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(5−エチル−5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(1,2,3−トリメチル−4−ペンテニル)−2−ノルボルネン等、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン等の鎖状非共役ジエン、メチルテトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン等のトリエンなどが挙げられる。これらの中では5−メチレン−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(6−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネンが好ましい。
【0018】
(A)成分は、(a)エチレン単位と(b)α−オレフィン単位[(a)/(b)のモル比]を40/60〜95/5、好ましくは50/50〜90/10、より好ましくは55/45〜85/15、特に好ましくは60/40〜80/20の割合で含有していることが好ましい。
このモル比が上記範囲内にあると、特に耐熱老化性、強度特性及びゴム弾性に優れると共に、耐寒性及び加工性に優れた架橋ゴム成形体を提供できるゴム組成物が得られる。
【0019】
なお、非共役ポリエンの割合は、共重合したエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴム中における非共役ポリエン由来のアルケニル基(末端ビニル基)の含有量が0.0001〜0.002モル/g、特には0.0002〜0.001モル/gとなる割合で配合することが好ましい。このアルケニル基(末端ビニル基)含有量が少なすぎると十分なゴム物性を有するゴム架橋体が得られない場合があり、他方、多すぎると硬くて脆いゴムになってしまう場合がある。
【0020】
また、(A)成分のヨウ素価は0.5〜50(g/100g)、好ましくは0.8〜40(g/100g)、更に好ましく1〜30(g/100g)、特に好ましくは1.5〜25(g/100g)である。
【0021】
このヨウ素価が0.5(g/100g)未満の場合、架橋度が小さくなり、ゴム物性が不十分になってしまい、50(g/100g)より大きくなると、流動性が悪くなり、その結果加工性に問題が生じてしまう場合がある。
【0022】
この(A)成分の粘度は、25℃における剪断速度10s-1での粘度が10Pa・s以上1,000Pa・s未満でなければならず、好ましくは20〜800Pa・s、より好ましくは50〜500Pa・s、最も好ましくは70〜150Pa・sの範囲である。10Pa・s未満ではポリマー鎖が短すぎて十分なゴム物性が得られず、1,000Pa・s以上であると成形が困難になる場合や、ゴム加工装置が大型になりすぎて、コスト的に不利になってしまう場合がある。なお、この粘度は、剪断速度10s-1での粘度を測定できるタイプであれば選択は自由であるが、本組成物のような非ニュートン流体の粘度を測定するためには、一般に回転粘度計といわれる回転速度を適宜変更できるレオメータタイプの粘度計によって測定することができる。
【0023】
[(B)成分]
(B)成分の一分子中にケイ素原子と結合する水素原子(SiH基)を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中のSiH基が前記(A)成分のアルケニル基とヒドロシリル付加反応により架橋し、組成物を硬化させるための硬化剤として作用するものである。この(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(III)
4cdSiO(4-c-d)/2 (III)
(式中、R4は炭素数1〜20、特に1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基である。また、cは0.7〜2.1、dは0.001〜1.0で、かつc+dは0.8〜3.0を満足する正数である。)
で示され、一分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上、より好ましくは3〜100個、更に好ましくは3〜50個のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を有するものが好適に用いられる。
【0024】
ここで、R4の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、cは好ましくは0.8〜2.0、dは好ましくは0.01〜1.0、c+dは好ましくは1.0〜2.5であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜150個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0025】
上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン環状重合体、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0026】
このような化合物としては、
【化5】


(式中、R4は非置換又は置換の、同一でも異なってもよい炭素数1〜20、特に1〜10の一価炭化水素基であり、pは1〜20の整数である。)
で代表される直鎖状オルガノポリシロキサンや
【化6】


(式中、R4は非置換又は置換の、同一でも異なってもよい炭素数1〜20、特に1〜10の一価炭化水素基であり、mは1〜20の整数である。)
で代表される環状オルガノポリシロキサンなどがある。
【0027】
このようなオルガノポリシロキサンの具体例としては、下記のものが挙げられる。
【化7】

【0028】
これらSiH基を有する化合物の中では、一分子中に2〜5個のSiH基を有する化合物が好ましい。
【0029】
これらのオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分の合計100質量部に対して0.1〜30質量部、特に0.3〜20質量部である。0.1質量部未満では、ゴム硬化が不十分で、30質量部を超えると、金型から離型が悪くなるだけでなく、不経済である。また、上記オルガノポリシロキサンのケイ素原子と結合する水素原子(SiH基)と(A)成分のアルケニル基の総量とのモル比(SiH基/アルケニル基)は、0.5〜2.0であることが好ましく、0.7〜1.5がより好ましい。この比が0.5より小さくても、2.0より大きくても圧縮永久歪が悪化してしまう場合がある。
【0030】
[(C)成分]
(C)成分の少なくとも2種以上の異なる表面処理剤で表面処理されたヒュームドシリカは、シリコーンゴムに十分な強度を与え、一方で圧縮永久歪をあまり低下させないことから本発明の必須の成分である。表面処理剤は、シランカップリング剤、チタネート系処理剤、脂肪酸エステルなど公知のいかなるものでも構わないが、特に下記A〜Eのうち異なる2種以上を使用することが好ましい。
A:シロキサンオリゴマー
両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖された直鎖状オルガノシロキサンオリゴマー、両末端にシラノール基もしくはアルコキシ基を有する直鎖状シロキサンオリゴマー、側鎖にシラノール基を持つ直鎖状シロキサンオリゴマー、RSiO1.5単位(Rは一価炭化水素基)やSiO2単位を持つオイル状又はレジン状のシロキサンオリゴマーなど
B:オルガノクロロシラン又はその部分加水分解物
トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルビニルジクロロシランやそれら1種又は2種以上の部分加水分解物
C:オルガノアルコキシシラン又はその部分加水分解物
メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランやそれら1種又は2種以上の部分加水分解物
D:オルガノシラザン又はその部分加水分解物
ヘキサメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザンやそれら1種又は2種以上の部分加水分解物
E:脂肪酸又はその誘導体
ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸メチルエステル、ステアリン酸金属塩
F:チタン酸エステル
テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネートやそれら1種又は2種以上の部分加水分解物
【0031】
本発明においては、これら2種以上の処理剤で表面処理することが好ましい。なお、処理剤としては、アルケニル基を含まない処理剤を用いることができる。この場合、好ましい組み合わせとしては、オルガノクロロシラン又はその部分加水分解物あるいはオルガノアルコキシシラン又はその部分加水分解物から選ばれる1種以上と、オルガノシラザン又はその部分加水分解物との組み合わせなどが挙げられる。
【0032】
表面処理方法は未処理のヒュームドシリカを予め直接2種以上の表面処理剤で同時に、又は1種類ずつの表面処理剤で2段階又はそれ以上の多段階で処理してもよいし、(A)成分のポリマーとヒュームドシリカとの混合時や混合後に2種以上の表面処理剤で同時、又は1種類ずつの表面処理剤で2段階又はそれ以上の多段階でヒュームドシリカと表面処理剤とを非加熱下又は加熱下に混合することにより表面処理してもよい。あるいは表面処理剤の1種をヒュームドシリカに直接処理し、他の1種を(A)成分のポリマーとの混合時又は混合後にヒュームドシリカと表面処理剤とを非加熱下又は加熱下に混合することにより表面処理するなどの方法でもよい。これら表面処理剤は、ヒュームドシリカとの反応により強固に結合していてもよいし、単に物理的な吸着により表面に存在していても構わない。
【0033】
なお、ヒュームドシリカのBET比表面積は、30〜380m2/g、特に50〜300m2/gの範囲であることが好ましい。30m2/g未満ではシール材として十分なゴム強度が得られない場合があり、また380m2/gを超えると、圧縮永久歪が大きくなりシール性が悪くなってしまう。
また、これら表面処理されたヒュームドシリカの配合量は、(A)成分100質量部に対し、10〜60質量部、特に10〜50質量部であることが好ましい。配合量が10質量部より少ないと十分なゴム強度が得られず、60質量部を超えると、圧縮永久歪が大きくなってしまう場合がある。
【0034】
[(D)成分]
(D)成分の硬化反応触媒は、(A)成分のアルケニル基と(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子を付加反応させるための触媒である。白金族金属系触媒が好ましく、これには従来付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として公知のものが使用できる。例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体上に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒などが挙げられるが、白金又は白金化合物が好ましい。触媒の添加量は、付加反応を促進できればよく、通常、白金族金属量に換算して1ppm〜1質量%の範囲で使用されるが、好ましくは5〜100ppmの範囲が適当である。1ppm以上である理由は、これ未満であると付加反応が十分促進されず、硬化が不十分であり、一方、1質量%以下である理由は、これより多く加えても、反応性に対する影響も少なく、また不経済であるからである。
【0035】
[その他の成分]
なお、上記成分以外にも、意図する架橋物の用途等に応じて、反応制御剤、無機充填剤、軟化剤、老化防止剤、加工助剤、加硫促進剤、発泡剤、着色剤、分散剤、耐熱向上剤、難燃剤などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0036】
反応制御剤は、(D)成分の硬化反応触媒による架橋反応の速度を制御するもので、射出成形、圧縮成形等の各種のゴム成形を行うために、広く使用されるものである。
そのようなものとしては、ベンゾトリアゾール、エチニル基含有アルコール(一分子中にOH基とアルキニル基をそれぞれ1個以上有する化合物)、アクリロニトリル、アミド化合物(例えば、N,N−ジアリルアセトアミド、N,N−ジアリルベンズアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−o−フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−m−フタル酸ジアミド、N,N,N’,N’−テトラアリル−p−フタル酸ジアミド等)、イオウ化合物、アミン化合物、錫化合物、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。これら制御剤の中では、エチニルシクロヘキサノール等のエチニル基含有アルコールが特に好ましい。
【0037】
これら反応制御剤の配合は任意であるが、配合する場合、その配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜1質量部の範囲である。0.001質量部未満では、反応の制御効果が不十分で、5質量部を超えると、反応が遅くなりすぎてしまうばかりか不経済である。
【0038】
ヒュームドシリカ以外にも主として強度アップを目的に、種々の無機粉末を添加してもよい。そのようなものとしては、カーボンブラック、沈殿シリカ、珪藻土、ヒュームド酸化チタンなどいかなるものでもよい。またそれら補強性フィラーは、表面を疎水化処理が施されたものでもよく、その場合、処理剤としては、アルキルクロロシラン、アルキルシラザン、アルコキシシラン等の反応性シランや、シラノール基やアルコキシシリル基を有するシロキサンオリゴマー、あるいは低分子量のジアルキルシクロシロキサン等、又はチタネート、各種の脂肪酸などが好適である。これら表面処理は、予め粉体で処理したものでも、(A)成分との配合時に処理剤と処理を施してもよく、更にその両方を行ってもよい。
【0039】
このような補強性フィラーの配合は任意であるが、配合する場合、(A)成分100質量部に対し200質量部以下、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。200質量部を超えると配合が困難になる場合や成形が難しくなる場合がある。
【0040】
上記軟化剤としては、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤、コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油等の脂肪油系軟化剤、トール油、蜜蝋、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸及び脂肪酸塩等、石油樹脂等の物質を挙げることができる。中でも石油系軟化剤が好ましく用いられ、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。これら軟化剤の配合量は、架橋物の用途により適宜選択される。
【0041】
上記老化防止剤としては、例えば、アミン系、ヒンダードフェノール系、又はイオウ系老化防止剤などが挙げられるが、特に硬化反応を阻害しないという点で、ヒンダードフェノール系が好ましい。そのようなものとしては、具体的には、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、7−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−へキサンジオール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸エステル、3,9−ビス[2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0042】
本発明のシリコーンゴム組成物は、上記成分を混合することにより製造することができるが、室温(25℃)で剪断速度が10s-1の時の粘度が50〜1,500Pa・sの範囲であることが好ましく、より好ましくは100〜1,200Pa・s、更に好ましくは200〜1,000Pa・sの範囲である。50Pa・s未満では、型成形の場合、空気を巻き込み易いため成形物中にボイドが形成されてしまったり、流動性が高すぎて容易にバリとなってしまうなどの問題を生じてしまう。1,500Pa・sを超えると粘度が高すぎて、材料を型内に流し込むのが困難になってしまう。
【0043】
硬化速度については、室温から高温で硬化するものまで特に限定はされないが、好ましくはMDR(あるいはローターレス)タイプのレオメータ5分測定で、130℃における10%硬化時間をT10(秒)とした時、好ましくは5秒≦T10≦120秒、より好ましくは10秒≦T10≦80秒である。T10が5秒未満では、スコーチなどの問題が生じてしまう場合や、室温での可使用時間が極端に短くなってしまう場合があり、120秒を超えると硬化が遅く不経済である。
【0044】
このシリコーンゴム組成物の成形、硬化方法としては、射出成形、トランスファー成形、圧縮成形、注入成形、コーティングなどの常法を採用し得るが、成形法としては、液状射出成形法が好適に採用される。また、硬化条件としては、100〜230℃で3秒〜30分、好ましくは120〜180℃で5秒〜15分程度の加熱処理条件を採用し得る。一次成形後に、反応を完結させる、あるいは揮発成分を除く等の理由で、更に80〜180℃、10分〜24時間の範囲で二次硬化(ポストキュア)を実施してもよい。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、実施例及び比較例における各特性の評価方法は次の通りである。
(1)粘度
Haake社製の精密回転式粘度計;ロトビスコRV1により、25℃において剪断速度0.01〜20s-1の粘度を測定した(10s-1での粘度を記載)。
(2)エチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴムの組成
日本電子製ECX400P型核磁気共鳴装置を用いて、測定温度120℃、測定溶媒ODCB−d4、積算回数512回にて、1Hのスペクトルを測定することで、エチレン、α−オレフィンそれぞれの組成を算出した。
(3)アルケニル量(モル/g)
1Hのスペクトル測定から得たエチレン、α−オレフィン、非共役ポリエン組成より非共役ポリエンの二重結合含量(モル%)を換算することによって求めた。
(4)硬さ(タイプA)
JIS K6253に従って、硬さHAを測定した。
【0046】
[実施例1]
ポリオレフィン系合成ポリマーとしてエチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体(エチレン含有量50質量%、アルケニル量0.0005モル/g、粘度135Pa・s(10s-1/25℃)、PX−069、三井化学(株)製)70質量部、比表面積が180m2/gでクロロシランにより表面疎水化処理されたヒュームドシリカDM20S((株)トクヤマ製)30質量部、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン6質量部、水2質量部を配合し、ニーダーミキサーで、室温で30分混合した後、120℃に昇温し、2時間混合を実施した。室温に冷却後、更にPX−069を30質量部添加して、15分混合した。これに下記式
【化8】


で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンA5.95質量部(SiH基/アルケニル基のモル比=1.0)、塩化白金酸の1質量%トルエン溶液(Pt含有量0.5質量%)0.15質量部、エチニルヘキサノール0.05質量部を添加して、更に10分混合を続けた。
この硬化性組成物の25℃での粘度を測定した結果、剪断速度10s-1の時、452Pa・sであった。130℃のT10(5分測定時のMAXトルクを100%とした時、10%トルク値に達する時間)は、26秒であった。
この硬化性組成物を150℃でプレスキュアし、更に150℃で1時間オーブンに入れて二次キュアを実施し、高さ12.5mm、直径13mmの円柱形状硬化物を得た。
JIS K6249に基づき、得られたゴム硬化物の硬さ及び120℃×70時間(25%圧縮)後の空気中、スチーム中(100%RH)での圧縮永久歪を測定した結果を表1に示した。
【0047】
[実施例2]
ポリオレフィン系合成ポリマーとしてエチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体(エチレン含有量50質量%、アルケニル量0.00092モル/g、粘度11Pa・s(10s-1/25℃)、PX−068、三井化学(株)製)40質量部及び同エチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体(エチレン含有量50質量%、アルケニル量0.00039モル/g、粘度870Pa・s(10s-1/25℃)、PX−062、三井化学(株)製)60質量部と表面未処理の比表面積130m2/gのヒュームドシリカ(アエロジル130、日本アエロジル(株)製)25質量部、表面処理剤としてデシルトリメトキシシラン4質量部、アンモニア水(28質量%)1質量部をニーダーミキサーに混入後、室温で30分混合を実施した。その後、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン3質量部、水2質量部をニーダーミキサーに混合し、室温で30分、120℃で2時間混合した。冷却後、更に下記式
【化9】


で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンB5.03質量部、下記式
(C652Si[OSiH(CH322
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンC2.41質量部(BとCの合計SiH基含量/アルケニル基合計量のモル比=0.8)、塩化白金酸の1質量%トルエン溶液(Pt含有量0.5質量%)0.2質量部、エチニルヘキサノール0.05質量部をプラネタリーミキサーで10分混合して硬化性組成物を得た。
この硬化性組成物の粘度は552Pa・s(10s-1/25℃)、130℃でのT10は19秒であった。
この組成物を実施例1と同様にして硬化物を得た。得られたゴム硬化物を実施例1と同様にして、硬さ及び圧縮永久歪を測定した結果を表1に示した。
【0048】
[実施例3]
実施例1のエチレン・プロピレン・5−ビニル−2−ノルボルネン共重合体(エチレン含有量50質量%、アルケニル量0.0005モル/g、粘度135Pa・s(10s-1/25℃)、PX−069、三井化学(株)製)100質量部、表面をジメチルジクロシランで処理された比表面積が110m2/gのヒュームドシリカ(アエロジルR972、日本アエロジル(株)製)15質量部、沈殿シリカ(Nipsil VN3、日本シリカ工業(株)製)10質量部、ステアリン酸3質量部をニーダーミキサーに入れ、室温で15分、120℃で30分混合を実施した。その後、80℃まで冷却後、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン3質量部、水1質量部を添加し、10分混合後、120℃で1時間混合した。室温に冷却後、PX−069を更に30質量部添加して、10分撹拌を続けた。これに、下記式
【化10】


で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンD3.14質量部、下記式
65Si[OSiH(CH323
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンE2.47質量部(DとEの合計SiH基含量/アルケニル基合計量のモル比=1.5)、塩化白金酸の1質量%トルエン溶液(Pt含有量0.5質量%)0.2質量部、エチニルヘキサノール0.10質量部をプラネタリーミキサーで10分混合して硬化性組成物を得た。
この硬化性組成物の粘度は325Pa・s(10s-1/25℃)、130℃でのT10は30秒であった。
この組成物を実施例1と同様にして硬化物を得た。得られたゴム硬化物を実施例1と同様にして、硬さ及び圧縮永久歪を測定した結果を表1に示した。
【0049】
[比較例1]
実施例1で、「表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン6質量部、水2質量部を配合」せず、それ以外はすべて同様にして硬化性組成物を得た。
この硬化性組成物の粘度は515Pa・s(10s-1/25℃)、130℃でのT10は22秒であった。
この組成物を実施例1と同様にして硬化物を得た。得られたゴム硬化物を実施例1と同様にして、硬さ及び圧縮永久歪を測定した結果を表1に示した。このゴム硬化物は、実施例1に比べて、耐圧縮永久歪性に劣るものであった。
【0050】
[比較例2]
実施例2で、「表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン3質量部、水2質量部をニーダーミキサーに混合」せず、それ以外はすべて同様にして硬化性組成物を得た。
この硬化性組成物の粘度は587Pa・s(10s-1/25℃)、130℃でのT10は17秒であった。
この組成物を実施例1と同様にして硬化物を得た。得られたゴム硬化物を実施例1と同様にして、硬さ及び圧縮永久歪を測定した結果を表1に示した。このゴム硬化物は、実施例2に比べて、耐圧縮永久歪性に劣るものであった。
【0051】
[比較例3]
実施例3で、「ステアリン酸3質量部をニーダーミキサーに入れ、室温で15分、120℃で30分混合を実施した。その後、80℃まで冷却後、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン3質量部、水1質量部を添加」せず、それ以外はすべて同様にして硬化性組成物を得た。
この硬化性組成物の粘度は401Pa・s(10s-1/25℃)、130℃でのT10は27秒であった。
この組成物を実施例1と同様にして硬化物を得た。得られたゴム硬化物を実施例1と同様にして、硬さ及び圧縮永久歪を測定した結果を表1に示した。このゴム硬化物は、実施例3に比べて、耐圧縮永久歪性に劣るものであった。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)非共役ポリエンが、下記一般式(I)又は(II)
【化1】


(式中、nは0〜10の整数であり、R1は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、R2は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基である。)
【化2】


(式中、R3は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基である。)
で示される少なくとも1種のノルボルネン化合物よりなり、かつ剪断速度10s-1の時の25℃での粘度が10Pa・s以上1,000Pa・s未満であるエチレン・α−オレフィン・非共役ポリエンランダム共重合体ゴム:100質量部、
(B)ケイ素原子結合水素原子を一分子あたり2個以上有するオルガノポリシロキサン:0.1〜30質量部、
(C)少なくとも2種の表面処理剤で表面処理した比表面積が30〜380m2/gのヒュームドシリカ:10〜60質量部、
(D)硬化反応触媒:触媒量
を必須成分とすることを特徴とする架橋可能なゴム組成物。
【請求項2】
(B)成分中のSiH基と(A)成分中のアルケニル基とのモル比が、SiH基/アルケニル基=0.5〜2.0であることを特徴とする請求項1記載の架橋可能なゴム組成物。
【請求項3】
(C)成分中の表面処理剤が、
A:シロキサンオリゴマー、
B:オルガノクロロシラン又はその部分加水分解物、
C:オルガノアルコキシシラン又はその部分加水分解物、
D:オルガノシラザン又はその部分加水分解物、
E:脂肪酸又はその誘導体、
F:チタン酸エステル
からなる群から選ばれたものであり、A〜Fの表面処理剤の2種以上で表面処理されたヒュームドシリカを用いることを特徴とする請求項1又は2記載の架橋可能なゴム組成物。

【公開番号】特開2012−12575(P2012−12575A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116411(P2011−116411)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】