説明

架橋可能なサッカライド−シロキサン組成物、ならびにこれから形成された網目状構造体、コーティング、および製品

本発明は、特定の構造式のサッカライド−シロキサン共重合体、架橋剤、および任意に溶媒を含む、架橋可能な組成物に関する。本発明の組成物から形成された、架橋高分子網目状構造体、硬化したコーティング、および製品を、本発明の架橋可能な組成物の製造工程および方法、ならびにその用途とともに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッカライド−シロキサン共重合体と架橋剤とを含む架橋可能な組成物に関する。この共重合体は、有機ケイ素骨格に共有結合で連結したサッカライド由来のポリヒドロキシ官能性部分を含む。この架橋可能な共重合体は、サッカライド成分のポリヒドロキシ官能基を介して共重合体を連結する反応性架橋剤の存在下で、架橋された網目状構造体(network)を形成する。本発明はさらに、この架橋した網目状構造体、硬化したコーティング、およびこれらを含む製品に関する。
【背景技術】
【0002】
サッカライド成分を含むオルガノシロキサン、およびこれらを調製する方法は、当分野で公知である。アルドノラクトンを含むサッカライドは、アミン官能性有機ケイ素に連結するために特に好適である。例えば、米国特許第4,591,652号には、アミンで末端封止された置換基を有するシランをアルドン酸ラクトンと反応させることによるポリヒドロキシランの製造が記載されている。例えば、特開昭62-68820号には、アミノシロキサンとサッカライドラクトンとから作られたサッカライド残基を含むオルガノポリシロキサンが記載されている。国際公開WO94/29324号には、シロキサニルで修飾された化合物、それらの製造方法、および界面活性剤および表面改質剤としての用途(特に、植物防疫における用途)が記載されている。さらに、国際公開WO 94/29324号には特に、エポキシ−トリシロキサン反応生成物とサッカライドラクトンとから形成された界面活性剤および表面改質剤が記載されている。国際公開WO 02/088456号には、アミド官能性アミノポリジオルガノシロキサン、これらの製造方法、アミド官能性アミノポリジオルガノシロキサンを含む製剤、および繊維産業における用途が記載されている。このアミド官能性シロキサンは、アミノシロキサンとサッカライドラクトンとを反応させることによって形成される。
【0003】
サッカライド分子とシリコーンをベースにした化合物(ポリジアルキルシロキサンを含む)とを共有結合で連結するための他の方法も公知である。例えば、米国特許第5,831,080号には、アリル官能性サッカライド基をヒドロシル化することによって調製されたグリコシド基を含む有機ケイ素化合物が記載されている。米国特許第6,517,933号には、一連の天然のビルディングブロック(サッカライドを含む)と、一連の合成ビルディングブロック(ポリシロキサンを含む)とを含むハイブリッド高分子材料が記載されている。可能性のある多くの結合化学反応が記載されている。Brandstadtらの米国特許出願公開第20040082024号には、エステルで結合されたサッカライド−シロキサン、および酵素で触媒されたエステル化工程が記載されている。これらの参照した技術はいずれも、本発明に好適に採用することができる、ポリヒドロキシ官能基を含むサッカライド−シロキサン共重合体を記載している。前述した技術全体を、参照により本明細書に組み込む。
【0004】
サッカライド、および他のポリヒドロキシ重合体の架橋、ならびにこれらを含む材料を指向した技術が存在する。例えば、米国特許第66,132,822号には、多孔性シートと、水分散性の架橋可能な重合体および水分散性フィルム形成性重合体を含むコーティングとから作られた高光沢被覆シート材料が記載されている。米国特許第6,132,822号は、ポリ(ビニルアルコール)などのポリヒドロキシ重合体を、好ましい架橋可能な重合体として教示している。開示された好ましい架橋剤は、グリオキサール、エピクロロヒドリン、金属イオン、金属イオンの脂肪酸複合体、およびエネルギーへの曝露である。
【0005】
米国特許第5,252,233号には、親水性繊維製品に耐久性を付与するために用いられる、セルロースを含有する繊維製品上に作成された熱硬化性親水性表面処理剤が記載されている。この表面処理剤は、1)ヒドロキシ末端ポリエーテル基かまたは3,4-エポキシシクロヘキシルエチルもしくは3-グリシジルオキシプロピル基に由来するヒドロキシル基のいずれかを含むオルガノ変性シリコーン;2)グリオキサール;3)グリコール;および4)酸性触媒を含む。
【0006】
米国特許第4,269,603号には、表面処理剤を用いて、少なくとも部分的にセルロースで形成された織物にノーアイロン特性を付与する方法が記載されている。この表面処理剤は、グリオキサール、反応性シリコーン、および触媒を含む。
【0007】
独国特許第19918627号には、水溶性重合体、酸化ケイ素成分、およびチタネートもしくはジルコネートの架橋剤を含む新規な重合体組成物が記載されている。この水溶性重合体は、ポリサッカライド、タンパク質、またはセルロース誘導体である。酸化ケイ素化合物は、アルコキシシラン加水分解物である。このハイブリッド重合体は、薬剤の制御放出のための担体システムとして提案されている。
【0008】
米国特許出願公開第20040091730号には、木材を2つの溶液で順次処理することによって作られた木製品が記載されている。この浸透液は、ホウ酸、メタロセン触媒、フリーラジカル開始剤、フィルム形成性重合体、および接着促進剤を含有する。トップコートには、フィルム形成性重合体が含まれる。このフィルム形成性重合体は、アクリル系のまたはシロキサンをベースにした重合体または共重合体である。メタロセン触媒は、スズまたはチタネートを含有する。
【0009】
架橋性オルガノシロキサン重合体から形成されたオルガノシロキサンをベースにしたエラストマーは、当分野において周知であり、このような材料には、コーティングされた基材に所望の表面特性(例えば、強化された耐摩耗性、熱安定性、疎水性および耐水性、粘着制御および剥離、摩擦制御(滑り防止能力を含む)等)を与えるコーティングとしての広い実用性がある。さまざまな充填剤および他の添加剤をエラストマー性マトリックスの中に含めて、さらに多様な性能、利点を有するコーティングを提供することができる。架橋した網目状構造体のマトリックスの機械的、化学的、およびイオン性の特性は、好適に含ませることができる添加剤の性質および量の両方に影響を与える。架橋された糖質を含む組成物および硬化されたコーティング組成物は、当分野で公知である。しかし、これらの発明者らは、サッカライドのポリヒドロキシ官能基を介して架橋したサッカライド−シロキサン共重合体を含む組成物および硬化されたコーティング組成物には気付いていない。これらの独特の架橋可能な組成物から形成された網目状化したマトリックスおよび硬化したコーティングは、多様な添加剤を支持し、保持し、および/または制御可能に放出し得る、シリコーンマトリックスと糖質をベースにするマトリックスとの両方の寄与を含むブレンドされた特性プロファイルを提供するであろう。この共重合体のサッカライド成分を介する架橋によって、特定の用途に望ましい特性プロファイルを有するエラストマーがもたらされる。
【特許文献1】米国特許第5,831,080号明細書
【特許文献2】米国特許第6,517,933号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第20040082024号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、当分野においては、サッカライド−シロキサン共重合体を含む架橋可能な組成物であって、サッカライド−シロキサンが、共重合体のポリヒドロキシサッカライドに由来する骨格に保持されたヒドロキシ官能基の間の連結によって架橋された網目状構造を形成する組成物が求められている。当分野においては、これらからのものを含む硬化されたコーティング組成物であって、シリコーンおよび糖の両方の成分を含むコーティングによって付与されることが知られている利点および特性とともに、サッカライドを含む硬化したマトリックスによってサッカライドが連結した網目状構造に付与される独特の性質を反映する組成物も求めらている。当分野においてはさらに、コーティングされた基材に対して改良されたこのような利点および特性を与えるコーティング、およびこれらを含む改良された基材および製品も求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、サッカライドに由来するポリヒドロキシシロキサンが、好適な反応性架橋剤(例えば、ホウ酸およびホウ酸エステルまたはチタン酸およびチタン酸エステル)の存在下で、サッカライド間の連結を介して架橋された網目状構造体を形成するという驚くべき発見に基づいている。本発明は、新規な、サッカライド−シロキサン共重合体を含む架橋可能な組成物であって、その架橋が実質的にサッカライド成分のヒドロキシ官能基の間で起こる組成物、およびこの架橋された網目状構造体を含む硬化されたコーティング組成物を提供する。これらの合成方法も提供する。共重合体のサッカライド骨格のヒドロキシ官能基の間で起こるこの架橋は、独特であり、独特なマトリックスを有する三次元の網目状構造を形成する。この結果、これらから形成されたフィルムおよびコーティングは、独特な特性プロファイルを有する。理論に拘束されないが、得られたフィルムは、シロキサン様の特性、すなわち、柔軟性、蒸気透過性、疎水性、良好な美的感覚、接着剥離性、および柔軟性を、ヒドロキシル基または極性基を含有する基材(例えば、木材、セルロース、綿、または皮膚)に対する粘着性(substantivity)のような、サッカライドの寄与と共に兼ね備えている。これらの材料のこの独特の親水性および疎水性により、広範囲の分子(例えば、酵素等の生体材料を含む)に適合することが可能になる。
【0012】
これらの架橋したフィルムは、紙への接着剥離性コーティングとして、木材の撥水剤として、または創傷被覆材として使用することができる。これらのフィルムは、制汗剤または毛、皮膚のためのパーソナルケア製品にフィルム形成特性を与えることもできる。溶媒中の架橋可能な組成物が、他の用途に望ましいゲル化特性を与えることもできる。この新規な架橋されたコーティング組成物を含む製品は、これらだけに限られないが、防腐機能、保護機能、防御機能、および/または反応性機能を含み、ヘルスケアサービスの規定およびレセプトにおいてまたは軍時に課される機能を含む多様な有用な機能を繊維製品および衣料品に付与する。
【0013】
1つの実施態様は、架橋可能な組成物を提供する。この架橋可能な組成物は、a)サッカライド−シロキサン共重合体;b)架橋剤;およびc)任意で、溶媒、を含む。このサッカライド−シロキサン共重合体は、以下の構造:
R2aR1(3-a)SiO-[(SiR2R1O)m-(SiR12O)n]y-SiR1(3-a)R2a
〔式中、Rは、同じであっても異なっていてもよく、水素、C1~C12アルキル、有機基、またはR3-Qを含み、
Qは、エポキシ、シクロエポキシ、一級もしくは二級アミノ、エチレンジアミン、カルボキシ、ハロゲン、ビニル、アリル、無水物、またはメルカプトの官能基を含み、
mおよびnは、0〜10,000の整数であり、同じであっても異なっていてもよく、
aは、独立に、0、1、2、または3であり、
yは、前記共重合体が1,000,000未満の分子量を有することになる整数であり、
R1(3-a)SiO-[(SiR1O)m-(SiR12O)n]y-SiR1(3-a) は、オルガノシロキサン重合体成分を含み、
は、式 Z-(G1)b-(G2)c を有し、かつ、少なくとも1個のRが存在する
[式中、Gは、炭素原子5個〜12個を含むサッカライド成分であり、
b+cは1〜10であり、bまたはcは0であることができ、bまたはcのいずれかが1でなければならず、aは、0〜3であり、
は、炭素原子5個〜12個を含み、さらに有機基または有機ケイ素基で置換されたサッカライド成分であり、
Zは、オルガノシロキサン重合体成分とサッカライド成分との間の連結基であり、独立に、以下の:
【化1】

からなる群から選択され、
およびRは、R5、R6、R7を含むスペーサー基であり、
およびRは、C1~C12アルキルまたは((C1~C12)O)p(式中、pは1〜50の任意の整数であり、各(C1~C12)Oは同じであっても異なっていてもよい)のいずれかであり、
は、-N(R8)-(式中、Rは、HまたはC1~C12アルキルである)であり、かつ、
およびRの少なくとも1つは存在しなければならず、同じであっても異なっていてもよく、
、R、Rの少なくとも1つは存在しなければならず、同じであっても異なっていてもよい]。〕
を有し、かつ、
前記サッカライド−シロキサン共重合体は、官能化されたオルガノシロキサン重合体と少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドとの反応生成物であり、前記オルガノシロキサンは、連結基Zを介して少なくとも1個のポリヒドロキシ官能性サッカライドに共有結合している。
架橋剤は、ヒドロキシ官能性重合体を架橋することができるいずれかの試剤を含んでいる。
【0014】
さらなる実施態様では、架橋可能な組成物は、特定の用途のための必要に応じて1種以上の他の添加剤を含んでいてよい。可能な、限定されない添加剤の例としては、d)触媒;e)充填剤;f)顔料;g)紫外線安定剤;h)熱安定剤;i)レオロジー調整剤;j)増粘剤;k)接着促進剤;l)殺生物剤;m)防腐剤;n)酵素;o)ペプチド;p)感圧接着剤;またはq)任意の界面活性剤を挙げることができる。
【0015】
架橋可能な組成物の製造方法も提供する。
1つの実施態様では、この方法は、以下の工程:
a)サッカライド−シロキサン共重合体を適切な溶媒に溶解して溶液を形成させる工程;
b)少なくとも1種の架橋剤を適切な溶媒に溶解して溶液を形成させる工程;
c)工程b)からの溶液を工程a)からの溶液に添加して、b)がa)中に分散されるまで混合する工程、
を含む。このサッカライド−シロキサン共重合体は、官能化されたオルガノシロキサン重合体と少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドとの反応生成物を含み、前記オルガノシロキサン重合体は、連結基を介して前記少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドに共有結合している。
さらなる実施態様では、他の成分を加えることができる。この添加剤は任意選択的であり、工程a)、b)、およびc)のうちいずれでもない工程、1つの工程、いくつかの工程、あるいは全ての工程で加え、分散するまで混合することができる。一部の添加剤は、適切な媒体(例えば、溶媒)中への予備溶解を必要とすることもある。添加剤をマトリックス中に取り込ませる程度、および添加剤のイオン特性は、添加の時間枠(timeframe)に影響を及ぼす。このような添加剤としては、これらだけに限られないが、d)触媒;e)充填剤;f)顔料;g)紫外線安定剤;h)熱安定剤;i)レオロジー調整剤;j)増粘剤;k)接着促進剤;l)殺生物剤;m)防腐剤;n)酵素;o)ペプチド;p)感圧接着剤;または任意の界面活性剤を挙げることができる。
【0016】
他の実施態様は、架橋可能な組成物から形成された、架橋した網目状構造体および硬化したコーティングを提供する。コーティングの実施態様には、紙の接着剥離性コーティング、木材の撥水剤およびシーラント、ならびに創傷被覆剤もしくは液体包帯が含まれる。別の実施態様は、本発明の硬化したコーティングを含む製品を提供する。このような製品には、繊維製品、および、特に、硬化したコーティング組成物が製品に保護、殺生物、防腐、または生物防御の特性を付与する添加剤を含んでいる衣料品が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、官能化されたオルガノシロキサン重合体と少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドとの反応生成物を含む共重合体であって、オルガノシロキサンが少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドに連結基を介して共有結合で連結した種類の共重合体が、反応性架橋剤の存在下で架橋して三次元網目状構造を形成するという驚くべき発見に基づいている。架橋可能な組成物は、1種以上のサッカライド−ポリシロキサン共重合体と、1種以上の適切な架橋剤を含む。この組成物は、任意で、他の成分、例えば、適切な溶媒、充填剤、顔料、レオロジー調整剤、界面活性剤、接着促進剤、触媒、および生物活性化合物(例えば、酵素等)を含んでいてもよい。架橋可能な組成物から形成された網目状マトリックスの独特の特性(例えば、疎水性および水素結合性)に起因して、この三次元の網目状マトリックスは、添加剤および添加剤の組合せを取り込み、懸濁し、保持し、および放出することができ、これにより、特定の用途に特に好適な硬化したコーティング組成物がもたらされる。
【0018】
1つの実施態様は、a)サッカライド−シロキサン共重合体;b)架橋剤;およびc)任意で、溶媒を含む、架橋可能な組成物を提供する。この実施態様では、架橋は、自己触媒性である。このサッカライド−シロキサン共重合体は、以下の構造:
R2aR1(3-a)SiO-[(SiR2R1O)m-(SiR12O)n]y-SiR1(3-a)R2a
〔式中、Rは、同じであっても異なっていてもよく、水素、C1~C12アルキル、有機基、またはR3-Qを含み、
Qは、エポキシ、シクロエポキシ、一級もしくは二級アミノ、エチレンジアミン、カルボキシ、ハロゲン、ビニル、アリル、無水物、またはメルカプトの官能基を含み、
mおよびnは、0〜10,000の整数であり、同じであっても異なっていてもよく、
aは、独立に、0、1、2、または3であり、
yは、前記共重合体が1,000,000未満の分子量を有することになる整数であり、
R1(3-a)SiO-[(SiR1O)m-(SiR12O)n]y-SiR1(3-a) は、オルガノシロキサン重合体成分を含み、
は、式 Z-(G1)b-(G2)c を有し、かつ、少なくとも1個のRが存在する
[式中、Gは、炭素原子5個〜12個を含むサッカライド成分であり、
b+cは1〜10であり、bまたはcは0であってよく、bまたはcのいずれかが1でなければならず、
は、炭素原子5個〜12個を含み、さらに有機基または有機ケイ素基で置換されたサッカライド成分であり、
Zは、オルガノシロキサン重合体成分とサッカライド成分との間の連結基であり、独立に、以下の:
【化2】

からなる群から選択され、
およびRは、R5、R6、R7を含むスペーサー基であり、
およびRは、C1~C12アルキルまたは((C1~C12)O)p(式中、pは1〜50の任意の整数であり、各(C1~C12)Oは同じであっても異なっていてもよい)のいずれかであり、
は、-N(R8)-(式中、Rは、HまたはC1~C12アルキルである)であり、かつ、
およびRの少なくとも1つは存在しなければならず、同じであっても異なっていてもよく、
、R、Rの少なくとも1つは存在しなければならず、同じであっても異なっていてもよい]。〕
を有し、かつ、
前記サッカライド−シロキサン共重合体は、官能化されたオルガノシロキサン重合体と少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドとの反応生成物であり、前記オルガノシロキサンは、連結基Zを介して少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドに共有結合している。
【0019】
当業者であれば、所望する架橋を達成させるためには、ただ重合体を伸長させるだけではなく、架橋剤および架橋可能な共重合体のいずれかまたは両方が3官能性でなければならないことは明らかである。1つの特定の態様では、架橋可能な組成物は、少なくとも3つのヒドロキシ官能基を含むサッカライド−シロキサン共重合体を含む。
【0020】
本発明の架橋可能な組成物に含まれる適切な架橋可能なサッカライド−シロキサンは、オルガノシロキサンとポリヒドロキシ官能性サッカライドとの反応生成物であって、オルガノシロキサンとサッカライドが少なくとも1つの連結基を介して共有結合で連結したものを含む。1つの実施態様では、連結基は、アミド、アミノ、ウレタン、尿素、エステル、エーテル、チオエーテル、またはアセタールの連結基を含む。
【0021】
架橋可能な組成物は、本組成物を構成するために選択される架橋可能な特定の共重合体を含むいくつかの変動要素に応じて広範囲の特性を有する、フィルムおよびコーティングをもたらす。架橋可能な組成物は、単一の化学種を含むことができ、あるいは異なる化学種の組合せを予め定められた比率で含むこともできると考えられる。1つの特定の実施態様では、架橋可能な組成物は、官能化されたオルガノシロキサンと、アルドン酸またはオリゴアルドン酸を含む少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドとの反応生成物である。さらに特定の実施態様では、アルドン酸またはオリゴアルドン酸は、ラクトンを含む。アルドノラクトンは、オルガノシロキサンがアミノ官能基を含む場合に特に好適なサッカライドである。特に具体的な実施態様では、架橋可能な組成物は、アミノ官能性オルガノシロキサンとラクトンとの反応生成物を含む。
【0022】
2つの代表的なラクトンとして、グルコノラクトン(GL)およびラクトビオノラクトン(LBL)が挙げられる。グルコノラクトン(GL)およびラクトビオノラクトン(LBL)の両方が、市販されている。グルコン酸は、細胞中に天然に存在し、皮膚および毛に有益な効果を与えることが知られているポリヒドロキシα−ヒドロキシアルドン酸である。グルコン酸は、現在のところ、パーソナルケア製品として市販されている製品中に、グルコノラクトンの形態で含有されている。ラクトビオン酸(4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-グルコン酸)は、1分子のグルコン酸にエーテル様の結合を介して結合したガラクトース分子からなる。ガラクトースは化学的に中性な内因性の六炭糖であり、グリコサミノグリカン合成、コラーゲン合成、および創傷治療用途に利用されている。ラクトビオン酸は、ジサッカライドラクトース(乳糖)の酸化によって形成され、現在、製薬産業において塩の形態で、エリスロマイシンの静脈内デリバリーおよびミネラルの補給に利用されている。主要な商業的な用途は、臓器移植技術における臓器の保存液の成分としての用途である。この機能は、酸素ラジカルによって引き起こされた組織の損傷を抑えるその能力に関連していて、Fe(II)の錯化を介してヒドロキシラジカルの生成を阻害することを通してもたらされると考えられている。最近の研究は、パーソナルケア産業、特に、皮膚のケアおよび老化防止を指向した製品における有効性を示唆している。したがって、特に具体的な実施態様では、架橋可能な組成物は、アミノ官能性オルガノシロキサンとGLまたはLBLのいずれかとの反応生成物を含む。
【0023】
本発明の架橋可能な組成物に好適な架橋剤は、ヒドロキシル基と化学的に反応性でなければならず、少なくとも2個のヒドロキシ基と反応可能でなければならない。理論に拘束されないが、別々の重合体上のポリヒドロキシ官能基の連結が、架橋フィルムを形成するために必要とされる三次元の網目状構造を発達させる。架橋密度は、ポリヒドロキシ官能基に対する架橋剤のモル比と、サッカライド−シロキサン共重合体骨格に沿ったポリヒドロキシ官能部位の分離距離との両方によって定まる。架橋可能な組成物の1つの実施態様では、架橋剤はヒドロキシ官能性重合体を架橋することができるいずれかの試剤である。サッカライド−シロキサンは、典型的には、三次元網目状構造体へと架橋するために3個以上の一級ヒドロキシ基を必要とする。あるいは、グルコラクトンなどの基で末端ブロックされたシロキサンの場合、三官能性の架橋剤が三次元網目状構造体を得るために採用される。
【0024】
架橋剤は、以下の限定されないリストから選択されるものであってよい:ホウ酸、ホウ酸エステル(例えば、ホウ酸トリ-n-プロピル、トリイソプロパノールアミンボレート)、アルキルボロン酸またはアルキルボロン酸エステル(例えば、フェニルボロン酸)、チタネート(例えば、チタニウムイソプロポキシド、ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート))、ジルコネート、グリオキサール、グルテルアルデヒド、エピクロロヒドリン、ユリアホルムアルデヒド、炭酸ジルコニウムアンモニウム、多価イオンの塩、二官能性のエポキシまたはグリシジル化合物(例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル)、ジ-(N-ヒドロキシメチル)尿素、ジイソシアネート(例えば、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート)、2-クロロ-N,N-ジ-エチルアセトアミド、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、アクロレイン、N-メチル尿素、ジカルボン酸、ビス酸塩化物、ジアルキルジクロロシラン(例えば、ジメチルジクロロシラン)、アルキルトリクロロシラン(例えば、メチルトリクロロシラン)、反応性シロキサン樹脂、およびこれらの組み合わせ。
【0025】
1つの実施態様では、架橋剤は、反応性シロキサン樹脂を含む。より特定の実施態様では、この反応性シロキサン樹脂は、ヒドロキシ官能基またはビニル官能基を含む。特に具体的な実施態様では、この反応性シロキサン樹脂は、サッカライド−シロキサン共重合体100部に対して樹脂約28部の重量比のヒドロキシ官能性樹脂を含み、さらにより特定の実施態様では、反応性シロキサン樹脂は、サッカライド−シロキサン共重合体100部に対して樹脂約25部の重量比のヒドロキシ官能性樹脂を含む。別の特定の実施態様では、反応性シロキサン樹脂は、サッカライド−シロキサン共重合体100部に対して樹脂約40部の重量比のビニル官能性樹脂を含む。
【0026】
サッカライド−シロキサン共重合体および架橋剤は、ニートで供給することができ、あるいはキャリア溶媒によってもしくはエマルションとして供給することができる。最適な溶媒は、極性もしくは非極性の溶媒、または溶媒の組合せである。2つの有用なキャリア溶媒の組合せは、パラフィン/アルコールおよびシロキサン/アルコールである。
【0027】
架橋可能な組成物はさらに、1種以上の添加剤を含んでいてよい。好適な添加剤の限定されない例としては:d)触媒;e)充填剤;f)顔料;g)紫外線安定剤;h)熱安定剤;i)レオロジー調整剤;j)増粘剤;k)接着促進剤;l)殺生物剤;m)防腐剤;n)酵素;o)ペプチド;p)感圧接着剤;またはq)任意の界面活性剤を挙げることができる。
【0028】
1つの実施態様では、架橋可能な組成物はさらに、触媒を含む添加剤を少なくとも1種含む。1つの実施態様では、この触媒は、架橋反応を触媒することができる化学触媒を含む。限定されない例として、PtおよびRhをそれぞれベースにした、ヒドロシリル化反応およびオレフィンメタセシス反応のための金属ベースの触媒を挙げることができる。別の特定の実施態様では、触媒は生体触媒、より具体的には、酵素を含む。1つの態様では、架橋剤がジカルボン酸を含み、触媒がエステル化反応またはエステル交換反応を触媒することができる酵素を含む。
【0029】
酵素を触媒として用いると、高価であり、かつ分解および/または加水分解を起こしやすい自己触媒性反応性連結剤の必要性がなくなる。さらに、酵素が架橋剤に部位特異的および立体選択的に配位する可能性がある。例えば、酵素が、サッカライド−シロキサンの一級ヒドロキシ基への架橋だけを促進する可能性がある。このような酵素による部位特異的および立体選択的架橋については、本明細書にその全体を組み込んだ米国特許出願公開第20040082024号に詳細に記載されている。酵素が一級ヒドロキシル基に特異的である場合、サッカライド−シロキサン共重合体は、三次元の架橋した網目状構造を形成するために、3個以上の一級ヒドロキシ基を有している必要がある。したがって、サッカライドがシロキサンを末端ブロックしている特定の重合体(例えば、グルコノラクトンで末端ブロックされたシロキサン等)の場合、少なくとも三官能性の架橋剤を用いなければ三次元の架橋が起こらない。
【0030】
当業者であれば、架橋可能な組成物から形成されたフィルムおよびコーティング中に均一な空間的広がりおよび/またはイオン性網目状構造をもたらす架橋可能な組成物が、そのような特性プロファイルが望まれる多様な特定の用途(例えば、エレクトロニクス)に好適であることが理解できるであろう。特定の実施態様では、酵素が脂肪分解酵素を含み、さらに特に具体的な実施態様では、脂肪分解酵素(すなわちリパーゼ)がN435を含む。
【0031】
本明細書において、用語「酵素」には、他の物質の化学変化を触媒しうるタンパク質が含まれる。酵素は、天然型酵素または変異型酵素であってよい。本発明の範囲に包含される酵素には、これらに限定されないが、プルラナーゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、イソメラーゼ、リパーゼ、エステラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ハイドラーゼ、アルドラーゼ、ケトラーゼ、グルコシダーゼ、リアーゼ、トランスフェラーゼ、およびリガーゼが含まれる。
【0032】
本明細書において、用語「脂肪分解酵素(lipolytic enzyme)」は、脂質分解能(例えば、トリグリセリド、エステル、またはリン脂質を分解する能力等)を示すポリペプチド、タンパク質、または酵素をいう。脂肪分解酵素は、例えば、リパーゼ、ホスホリパーゼ、エステラーゼ、またはクチナーゼであってよい。本発明のためには、脂肪分解活性は、当分野で公知の任意の手順に従って決定することができる。例えば、Guptaらの、Biotechnol. Appl. Biochem. (2003) 37:63-71;Andre, Christopheらの、米国特許第5,990,069号明細書(国際公開WO 96/18729A1)を参照されたい。
【0033】
本明細書において、用語「タンパク質」は、1つ以上のポリペプチド鎖からなる、そのモノマーがペプチド結合で互いに結合したアミノ酸である高分子量重合体をいう。用語「タンパク質」と「ポリペプチド」は、本明細書において時々同義的に用いられる。
【0034】
架橋可能な組成物はさらに、充填剤を含む添加剤を少なくとも1種含んでいてよい。当分野で公知な充填剤には、強化剤および/または増量剤に分類されるものが含まれる。強化用充填剤の限定されない例としては、処理シリカ、ヒュームドシリカ、または未処理シリカが挙げられる。強化用充填剤は、架橋可能な本組成物に由来する硬化したコーティング中でより緻密な網目状構造の形成をもたらし、このコーティングを特定の用途により好適なものにすることができる。増量用充填剤の例には、沈降性もしくは粉砕炭酸カルシウム、タルク、マイカ、カオリン、粘土、酸化チタン、ウォラストナイト、ゼオライトおよび珪藻土が含まれ得る。1つの実施態様では、架橋可能な組成物は、ヒュームド二酸化ケイ素を含む充填剤を含む添加剤を少なくとも1種含む。
【0035】
架橋可能な組成物はさらに、顔料を含む添加剤を少なくとも1種含んでいてよい。架橋可能な本組成物から形成された網目状化されたマトリックスが複合的な性質を有するため、有機顔料および無機顔料のいずれかまたは両方を組み込むことができる。当業者であれば、好適な顔料が広範囲に及ぶこと、およびその選択が所与の下流のコーティングの用途次第であることを理解するであろう。
【0036】
架橋可能な組成物はさらに、レオロジー調整剤を含む添加剤を少なくとも1種含んでいてよい。コーティングの流動性の改質は、例えば、増粘剤またはチキソ性付与剤を添加することによって達成される。エマルションの実施形態に好適な増粘剤には、セルロース結合性、ポリアクリル酸結合性、またはウレタン結合性の増粘剤が含まれる。
【0037】
加えて、架橋可能な組成物はさらに、接着促進剤を含む添加剤を少なくとも1種含んでいてよい。本発明の実施に好適な接着促進剤には、少なくとも1種の加水分解可能な基を含み、以下の式:
(R’’O)3-q(R’’)qSi-Q
(式中、R’’は、最高で8個の炭素原子を有するアルキルまたはハロアルキル基であり、
Qは、アミノ、メルカプト、エーテル、エポキシ、イソシアナート、シアノ、イソシアヌレートアクリルオキシ、およびアシロキシ、ならびにこれらの混合基から選択される基で官能化された、飽和、不飽和、または芳香族性の炭化水素基であり、
qは、0〜3である)
を有する接着促進剤が含まれる。
接着促進剤として作用するシランの例には、アミノオルガノトリアルコキシシラン、エチルポリシリケート、1,3,5-トリス(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、およびグリシドキシオルガノトリアルコキシシランが含まれる。典型的なアミノオルガノトリアルコキシシランには、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、(エチレンジアミンプロピル)トリメトキシシラン、およびこれらの組合せが含まれる。典型的なグリシドキシオルガノトリアルコキシシランには、γ-(グリシドキシ)プロピルトリメトキシシランが含まれる。本発明の組成物に添加するシラン接着促進剤の量は、典型的には、比較的少量であり、通常、組成物の約1重量%未満、特定の実施態様では約0.5重量%未満である。
【0038】
架橋可能な組成物はさらに、感圧接着剤を含む添加剤を少なくとも1種以上を含んでいてよい。この感圧接着剤は、以下の公知の感圧接着剤の例から選択することができる:ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリエチレン/ブチレン、スチレン/ブタジエン、スチレン-ブタジエン-スチレン、スチレン-イソプレン-スチレン、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体、ブチルゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリクロロプレン、ポリアクリロニトリル、ポリクロロジエン、ポリシロキサン、およびこれらの混合物。
【0039】
本発明の架橋可能な組成物から形成された架橋した網目状構造マトリックスは、有機化合物および生体化合物のために特に好適な環境をもたらす。このような1つの実施態様では、架橋可能な組成物は、さらに添加剤を含み、この添加剤は酵素を含む。これらの実施態様では、酵素を、それが架橋した網目状マトリックス中に、所望する多様な保持の程度で含有されるように、架橋可能な組成物に組み込むことができる。1つの実施態様では、酵素はマトリックス中に組み込まれてとどまると考えられ、他の実施態様では、酵素はマトリックスから徐々に浸出すると考えられる。
【0040】
特定の実施態様では、硬化したコーティングは、酵素を含む架橋可能な組成物から形成される。この硬化したコーティングは、酵素が基材に生物活性機能を付与するように基材に適用される。この機能は、予備的、防御的、または保護的な機能であり、このため、基材を望ましくない試剤および/もしくはその作用から保護し、かつ/あるいは基材上または基材中における望ましくない病原体の増殖を阻止する。この機能は、攻撃性のまたは反応性の機能であり、ここでは、基材上に存在する望ましくない病原体に作用する。本発明に好適な酵素の制限されない例には、Genencor International社から商標名Purafect、Purastar、Properase、Puradax、Clarase、Multifect、Maxacal、Maxapem、およびMaxamyl(米国特許第4,760,025号および国際公開WO 91/06637)で販売されているもの;Novo Industries A/S社(デンマーク)から商標名Alcalase、Savinase、Primase、Durazyme、Duramyl、Lipolase、およびTermamylで販売されているものが含まれる。1つの特定の実施態様では、酵素はプロテアーゼを含む。
【0041】
プロテアーゼおよび他の酵素は、典型的には、細菌または菌の好気性発酵によって製造される。これらの酵素は、一般に、細胞外タンパク質として分泌されるが、一部の例では、酵素は、細胞膜から、または細胞内から、化学的、酵素的、または物理的破壊によって単離することができる。プロテアーゼは、カルボニル基の加水分解酵素であり、一般に、タンパク質またはペプチドのペプチド結合を切断する役割を果たす。本発明において、「プロテアーゼ」は、天然のプロテアーゼまたは組換えプロテアーゼを意味する。天然のプロテアーゼには、α-アミノアシルペプチドヒドロラーゼ、ペプチジルアミノ酸ヒドロラーゼ、アシルアミノヒドロラーゼ、セリンカルボキシペプチダーゼ、メタロカルボキシペプチダーゼ、チオールプロテイナーゼ、カルボキシルプロテイナーゼ、およびメタロプロテイナーゼが含まれる。セリンプロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、チオールプロテアーゼおよび酸プロテアーゼ、ならびにエンドプロテアーゼおよびエキソプロテアーゼが含まれる。
【0042】
プロテアーゼは、動物由来、植物由来、または微生物由来のものであってよい。例えば、プロテアーゼは、細菌由来のセリンタンパク質分解酵素であってよい。精製されたかまたは未精製の形態の酵素を用いることができる。化学的または遺伝学的に改変された突然変異体によって産生されたプロテアーゼ酵素は、類似構造の酵素変異体という定義に含まれる。特に好ましいプロテアーゼ酵素の例は、バシラス属、特に、サブチラーゼ(例えば、Bacillus subtilis、Bacillus lentus、Bacillus amyloliquefaciens、および/またはBacillus licheniformis)から得られた細菌のセリンタンパク質分解酵素である。本発明組成物に包含されると考えられる好ましい市販のタンパク質分解酵素には、Alcalase(登録商標)、Esperase(登録商標)、Durazym(登録商標)、Everlase(登録商標)、Kannase(登録商標)、Relase(登録商標)、Savinase(登録商標)、Maxatase(登録商標)、Maxacal(登録商標)、およびMaxapem(登録商標)15(タンパク質が遺伝子操作されたMaxacal);Purafect(登録商標)、 Properase(登録商標)(タンパク質が遺伝子操作されたPurafect)、ならびにサブチリシンBPNおよびBPN’が含まれる。
【0043】
プロテアーゼ酵素は、天然に存在しないアミノ酸配列を有するプロテアーゼ変異体も包含する。この変異体は、前駆体プロテアーゼから、天然に存在しない異なるアミノ酸配列で置換することによって誘導する。この前駆体プロテアーゼは、前駆体プロテアーゼから、前述したプロテアーゼ等価体におけるある位置のアミノ酸残基の代わりに、以下のBacillus amyloliquefaciens subtilisinの番号付けに従った、+76、+87、+99、+101、+103、+104、+107、+123、+27、+105、+109、+126、+128、+135、+156、+166、+195、+197、+204、+206、+210、+216、+217、+218、+222、+260、+265、および/または+274から選択される位置と等価な位置で、その全体を参照により本明細書に組み込む米国特許第RE34,606;5,700,676;5,972,682;および/または6,482,628の記載にしたがって、異なるアミノ酸で置換することによって誘導する。
【0044】
典型的なプロテアーゼ変異体には、Bacillus lentusに由来するサブチリシンの変異体(米国特許第RE34,606号に記載されているもの);Bacillus amyloliquefaciens に由来するY217L変異体(米国特許第5,700,676号に記載されているもの)(本明細書において以下にプロテアーゼBという);改変した細菌セリンタンパク質分解酵素(米国特許第6,482,628号に記載されているもの);および、改変した細菌セリンタンパク質分解酵素(米国特許第5,972,682号に記載されているもの)が含まれる。本明細書に参照により組み込む米国特許第5,677,163号に記載された、L12 a B subtilisも好ましい。本発明の実施に有用な他のプロテアーゼは、Savinase(登録商標)、Esperase(登録商標)、Maxacal(登録商標)、Purafect(登録商標)、BPN’およびこれらの混合物からなる群から選択することができる。特に具体的な実施態様では、酵素はプロテアーゼBを含む。他の機能の中で、プロテアーゼBは、壊死組織の消化を可能にし、創傷清拭における用途に望ましい。
【0045】
さらなる実施形態は、酵素と接着剥離剤とを含む硬化可能な組成物から形成された硬化したコーティングを含む製品であって、これが剥離可能な生物活性コーティング(例えば、バンドエイド)として機能する製品を対象にする。さらなる特定の実施態様では、酵素、殺生物剤、またはたの薬剤を含む架橋可能な組成物から形成された硬化したコーティングを含む製品、例えば、繊維製品等を提供する。1つの特定の実施態様では、この製品は、着用者を有害な環境物質(例えば、紫外線、細菌、ウイルス、空気で運ばれる毒、ガス、化学的および/または生物学的戦闘物質、職場に関連した化学的危険物質など)から保護する衣料品を含む。
【0046】
コーティングは、典型的には、基材に適用した後で固体フィルムに変換される。本発明の目的において、「硬化」は、実質的に溶媒に溶解せず、圧力を受けてもわずかしかあるいは全く流動しない、三次元の架橋した網目状構造の形成を含むフィルムの形成工程である。当分野において、硬化は、複合的な要因(これらだけに限定されないが、溶媒の蒸発、膜厚、温度、溶媒濃度、架橋成分の反応速度、および意図的なまたは意図的なものではない他の物質の存在を含む)の影響を受ける複雑な工程であると理解されている。当業者であれば、硬化条件がフィルムの形成速度に影響を及ぼすことを容易に理解するであろう。本発明のフィルムの形成のために選択される硬化条件は、溶媒の揮発性および膜厚に依存するが、通常、使用可能なフィルムは5℃〜200℃で生じ、基材に適用した後30秒〜300分を必要とする。フィルムとその最終特性プロファイルは、使用可能なフィルムが形成された後約5時間の間、および基材への適用後約2週間まで発達し続ける可能性がある。
【0047】
本発明はさらに、新規な架橋可能な組成物を調製する方法を提供する。
1つの実施態様では、この方法は以下の工程:
a)サッカライド−シロキサン共重合体を適切な溶媒に溶解して溶液を形成させる工程;
b)少なくとも1種の架橋剤を適切な溶媒に溶解して溶液を形成させる工程;
c)工程b)からの溶液を工程a)からの溶液に添加して、b)がa)中に分散されるまで混合する工程;
を含み、かつ、
前記サッカライド−シロキサン共重合体が、官能化されたオルガノシロキサン重合体と少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドとの反応生成物を含み、前記オルガノシロキサン重合体が、連結基を介して前記少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドに共有結合している。
別の実施態様では、この方法は、以下の工程:
a)サッカライド−シロキサン共重合体を適切な溶媒に溶解して溶液を形成させる工程;
b)少なくとも1種の架橋剤を工程a)からの溶液に直接添加する工程;
c)前記架橋剤が工程a)からの溶液中に分散されるまで混合する工程;
を含む。
【0048】
架橋可能な組成物を調製する方法はさらに、合成工程の任意の時点に順不同に実施することができる追加の工程を含んでいてよい。例えば、
i)任意で、1種以上の添加剤を工程a)で形成された前記溶液に添加して分散されるまで混合することができ;
ii)任意で、1種以上の添加剤を、架橋剤と同時に添加することができ;および
iii)任意で、1種以上の添加剤を工程c)からの溶液に添加して分散されるまで混合することができる。当業者であれば、所望する添加剤の添加のための時間枠が、特定の添加物の性質、および添加物を最終的なマトリックス中に如何に結合させることが意図されているか、に左右されることを理解するであろう。これは、添加剤が最大限に固定されることが意図されているか、または所望される時間依存的な放出および/または感圧放出で始めに固定されることが意図されているかにも左右されるであろう。1種以上の添加剤は、d)触媒;e)充填剤;f)顔料;g)紫外線安定剤;h)熱安定剤;i)レオロジー調整剤;j)増粘剤;k)接着促進剤;l)殺生物剤;m)防腐剤;n)酵素;o)ペプチド;p)反応性シロキサン;q)感圧接着剤;またはr)任意の界面活性剤からなる群から選択することができる。
【0049】
好適な架橋剤は前述の架橋剤を含み、合成結果の観点では、本方法に好適な架橋剤はヒドロキシ基と化学的に反応性でなければならず、少なくとも2個のヒドロキシル基で反応可能でなければならず、かつ、以下のものから選択されなければならない:ホウ酸、ホウ酸エステル(例えば、ホウ酸トリ-n-プロピル、トリイソプロパノールアミンボレート)、アルキルボロン酸またはアルキルボロン酸エステル(例えば、フェニルボロン酸)、チタネート(例えば、チタニウムイソプロポキシド、ジイソプロポキシチタニウムビス(アセチルアセトネート))、ジルコネート、グリオキサール、グルテルアルデヒド、エピクロロヒドリン、ユリアホルムアルデヒド、炭酸ジルコニウムアンモニウム、多価イオンの塩、二官能性エポキシまたはグリシジル化合物(例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル)、ジ-(N-ヒドロキシメチル)尿素、ジイソシアネート(例えば、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート)、2-クロロ-N,N-ジ-エチルアセトアミド、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、アクロレイン、N-メチル尿素、ジカルボン酸、ビス酸塩化物、ジアルキルジクロロシラン(例えば、ジメチルジクロロシラン)、アルキルトリクロロシラン(例えば、メチルトリクロロシラン)、反応性シロキサン樹脂およびこれらの組み合わせ。特定の方法の実施態様では、架橋剤は、ジカルボン酸と触媒を含む1種以上の添加剤とを含む。特に具体的な実施態様では、この触媒は酵素を含み、特に具体的な実施態様では、この酵素はリパーゼ酵素を含む。さらにより特定の実施態様では、このリパーゼは、Novozymes社(デンマーク)から入手可能であり、N435として販売されている固定化形態のCandida antarctica lipase B(CALB)を含む。
【0050】
本発明の1つの実施態様では、新規な架橋可能な組成物から形成される新規な架橋重合体網目状構造を提供する。この架橋網目状構造体は、特定のシロキサンと選択されたサッカライドとに基づいたさまざまな複合的な特性プロファイルを示し得る。1つの実施態様では、架橋した網目状構造は、エマルションの形態であり、増粘作用をもたらす。別の実施態様では、架橋した網目状構造は、パーソナルケアの利点を付与することを企図した製剤に組み込まれる。
【0051】
さらなる実施態様では、新規な架橋可能な組成物から形成された硬化したコーティング組成物を提供する。1つの特定の実施態様では、このコーティング組成物は、自己触媒的かつ自己硬化性である。別の特定の実施態様では、このコーティング組成物は、架橋過程を触媒するための触媒を含む。当業者であれば、硬化が多くの経路を経て起こり、選択された特定の架橋剤次第であり、一段階の硬化を望むかまたは二段階の硬化を望むかに依存することを理解するであろう。
【0052】
新規な架橋可能な組成物を含む硬化したコーティング組成物は、さまざまな用途に好適である。上記のように、コーティングは、シリコーンをベースにしたフィルムおよびコーティングの特性と、有機の、サッカライドをベースにしたマトリックスの特徴とを兼ね備えた複合的な特性プロファイルを示し得る。この独特の特性プロファイルは、サッカライド−シロキサン成分の選択を操作することによって調節可能である。加えて、コーティングの特性および機能は、架橋可能な組成物に含められた任意選択の添加剤の選択によって操作することによって調節可能である。硬化したコーティング組成物は、予備成形して硬化後に基材に接着することができ、あるいはコーティング組成物を基材に適用した後に硬化を行うことができる。
【0053】
1つの実施形態では、新規な硬化したコーティング組成物を含む製品を提供する。特定の実施態様では、この製品は繊維製品を含み、より特定の実施態様では、この繊維製品は衣料品を含む。非常に特定的な実施態様では、この衣料品は、保護機能をもたらす硬化したコーティング組成物を含む。この場合において、この硬化したコーティング組成物は、環境の汚染物質を解毒する能力がある添加剤を含む架橋可能な組成物を含む。非常に特定的な実施形態では、添加剤は酵素を含む。このような衣料品は、汚染された職場環境に曝されるかあるいは化学的もしくは生物学的な兵器に曝されるおそれがある人々を保護または防御する利益をもたらすと考えられる。当業者であれば、望ましくは保護バリアとして機能する他の物品があり、この機能をもたらすために本発明の硬化したコーティング組成物が採用され得ることを理解するであろう。
【0054】
別の実施態様は、一時的な創傷治癒促進剤として働く新規な架橋可能な組成物を含む製品を提供する。特定の実施態様は、皮膚に適用した直後に硬化し、適切な経過時間後に取り除くことができる液体救急用絆創膏を対象とする。
【0055】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施態様を単に説明するためのものであり、特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【実施例】
【0056】
以下の実施例の目的において、商標によって識別された成分は以下の一般的な記述と等価である:
DC 0.65 cst 200 fluid ヘキサメチルジシロキサン
Cab-O-Sil TS-530 ヘキサエチルジシラザン処理されたシリカ
DC 245 fluid ジメチルシクロシロキサン
DC 407 Resin 溶媒中のヒドロキシ官能性シリコーン樹脂
DC 6-3444 Resin 溶媒中のビニル官能性シリコーン樹脂
DC 7-4600 PSA シラノール官能性シロキサンとシリコーン樹脂との縮合反応生成物
DC 7-4107 シリコーンエラストマー膜
DC 2-8211, 2-8175 アミノシロキサン、例えばジメチル(メチルイソブチレンジアミン)シロキサン
【化3】

A12, 21, 32 アミノシロキサン〔ジメチル(メチルアミノプロピル)シロキサン
【化4】

【0057】
[実施例1]:架橋可能なサッカライド−シロキサン共重合体
本実施例は、架橋可能なサッカライド−シロキサン共重合体およびその合成のいくつかの例示的な実施態様を提供する。表1の第一列に記載したアミノ官能性シロキサン重合体は、第二列に記載した2種のサッカライド分子であるグルコノラクトン(GL)またはラクトビオノラクトン(LBL)のいずれかと共有結合で結合することができ、架橋に好適なポリヒドロキシ官能性サッカライド−シロキサンを生成する。表2は、このアミン官能性シロキサン成分をさらに特徴づける。表2において、「理論重合度」は、重合体骨格中に存在する(Me2SiO)単位の数による重合度を示し、「mpcF」は、イソブチルエチレンジアミン基のモル百分率である「モルパーセント官能基」をいう。表の下には、表1からの共重合体a〜lおよびその合成方法のリストを載せた。これらの共重合体は、本発明の架橋可能な共重合体を含み、残りの本発明の実施態様の例示で採用される。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
a)GL−A12
DMS-A12(Gelest社、Morrisville、ペンシルベニア州)(アミノプロピル基で末端ブロックされた20〜30 cstのテレケリックポリジメチルシロキサン)を、グルコノラクトン(GL)(Siga-Aldrich社、St.Louis、ミズーリ州)と、1:1のアミン:ラクトン化学量論にてにて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質は固体である。
【0061】
b)GL−A21
DMS-A21(Gelest社、Morrisville、ペンシルベニア州)(アミノプロピル基で末端ブロックされた100〜320 cstのテレケリックポリジメチルシロキサン)を、グルコノラクトン(GL)(Siga-Aldrich社、St.Louis、ミズーリ州)と、1:1のアミン:ラクトン化学量論にて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質はろう状固体である。
【0062】
c)GL−A32
DMS-A32(Gelest社、Morrisville、ペンシルベニア州)(アミノプロピル基で末端ブロックされた2000 cstのテレケリックポリジメチルシロキサン)を、グルコノラクトン(GL)(Siga-Aldrich社、St.Louis、ミズーリ州)と、1:1のアミン:ラクトン化学量論にて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質はガム状の稠度を有する。
【0063】
d)GL−8175
DC(登録商標)Q2-8175 Fluid(Dow corning社、Midland、ミシガン州)〔ペンダントアミノエチルアミノイソブチル基(約2.3モル%)を有する150〜400 cstのポリジメチルシロキサン〕を、グルコノラクトンと、1:1の一級アミン:ラクトン化学量論にて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質はガム状の稠度を有する。
【0064】
e)GL−8211
DC(登録商標)2-8211 Polymer(Dow corning社、Midland、ミシガン州)〔ペンダントアミノエチルアミノイソブチル基(約1.9モル%)を有する1000 cstのポリジメチルシロキサン〕をグルコノラクトンと1:1の一級アミン:ラクトン化学量論にて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質はガム状の稠度を有する。
【0065】
f)GL−8175/A12
DC(登録商標)Q2-8175 Fluid(Dow corning社、Midland、ミシガン州)〔ペンダントアミノエチルアミノイソブチル基(約2.3モル%)を有する150〜400 cstのポリジメチルシロキサン〕と、DMS-A12とを、1:1の溶液重量比で混合する。この混合物をGLと1:1の一級アミン:ラクトン化学量論にて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質はろう状物質である。
【0066】
g)LBL−A12
DMS-A12(Gelest社、Morrisville、ペンシルベニア州)(アミノプロピル基で末端ブロックされた20〜30 cstのテレケリックポリジメチルシロキサン)を、ラクトビオノラクトン(LBL)(ラクトビオン酸(Siga-Aldrich社、St.Louis、ミズーリ州)から調製されたもの)と、1:1のアミン:ラクトン化学量論にて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質は固体である。
【0067】
h)LBL−A21
DMS-A21(Gelest社、Morrisville、ペンシルベニア州)(アミノプロピル基で末端ブロックされた100〜320 cstのテレケリックポリジメチルシロキサン)を、ラクトビオノラクトン(LBL)(ラクトビオン酸(Siga-Aldrich社、St.Louis、ミズーリ州)から調製されたもの)と、1:1のアミン:ラクトン化学量論にて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質はろう状である。
【0068】
i)LBL−A32
DMS -A32(Gelest社、Morrisville、ペンシルベニア州)(アミノプロピル基で末端ブロックされた2000 cstのテレケリックポリジメチルシロキサン)を、ラクトビオノラクトン(LBL)(ラクトビオン酸(Siga-Aldrich社、St.Louis、ミズーリ州)から調製されたもの)と、1:1のアミン:ラクトン化学量論にて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質はろう状である。
【0069】
j)LBL−8175
DC(登録商標)Q2-8175 Fluid(Dow corning社、Midland、ミシガン州)〔ペンダントアミノエチルアミノイソブチル基(約2.3モル%)を有する150〜400 cstのポリジメチルシロキサン〕を、ラクトビオノラクトン(LBL)(ラクトビオン酸(Siga-Aldrich社、St.Louis、ミズーリ州)から調製されたもの)と、1:1の一級アミン:ラクトン化学量論にて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質はろう状である。
【0070】
k)LBL−8211
DC(登録商標)2-8211 Polymer(Dow corning社、Midland、ミシガン州)〔ペンダントアミノエチルアミノイソブチル基(約1.9モル%)を有する1000 cstのポリジメチルシロキサン〕を、ラクトビオノラクトン(LBL)(ラクトビオン酸(Siga-Aldrich社、St.Louis、ミズーリ州)から調製されたもの)と、1:1の一級アミン:ラクトン化学量論にて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質はゴム状の粉体である。
【0071】
l)LBL−8175/A12
DC(登録商標)Q2-8175 Fluid(Dow corning社、Midland、ミシガン州)〔ペンダントアミノエチルアミノイソブチル基(約2.3モル%)を有する150〜400 cstのポリジメチルシロキサン〕と、DMS-A12(Gelest社、Morrisville、ペンシルベニア州)(アミノプロピル基で末端ブロックされた20〜30 cstのテレケリックポリジメチルシロキサン)とを、1:1の溶液重量比で混合する。この混合物をLBLと1:1の一級アミン:ラクトン化学量論にて、メタノール中50℃で反応させる。反応が完結した後、メタノールをロータリーエバポレーターで除去する。得られた物質はろう状物質である。
【0072】
本実施例で採用した試験手順:
1.架橋の測定のための膨潤ゲル
以下の実施例において例示された組成物の特性を決定する目的で、以下の「膨潤ゲル」法で架橋の測定を行った。架橋したフィルムサンプルを大量の相溶性溶媒中に置いた。時間がたつと、フィルムが膨潤して溶媒を取り込む。特定の時間後に、この溶媒で膨潤したフィルムを80メッシュのステンレス鋼スクリーン上に注ぐ。過剰の溶媒を速やかに拭き取り、溶媒で膨潤した重量を測定する。膨潤率を、初期のフィルム重量で割って100を乗じた溶媒膨潤重量として記録する。その後、残存している溶媒を蒸発させ、サンプルの乾燥重量を記録する。未反応の重合体はいずれも溶媒中に抽出されてしまうため、残った重量は反応した重合体を表す。これを、ゲル率として記録する。ゲル率は、乾燥重量を初期重量で割り、100を乗じて計算する。特に、本明細書では、0.01〜0.2 gのフィルムを秤取し、2オンスのボトルに入れる。40 gのヘプタンをこのボトルに添加し、フィルムが溶媒中に懸濁するまで穏やかに撹拌する。2時間後、この膨潤したフィルムおよび溶媒を80メッシュのステンレス鋼スクリーン上に注ぎ、膨潤フィルムを取得する。過剰の溶媒を速やかに拭き取り、秤量する。この溶媒を室温で一晩蒸発させた後、フィルムを再び秤量する。膨潤率およびゲル率を記録する。
【0073】
2.ペーパーコーティングの硬化特性のためのスメア/摩擦落ち/移行試験(Smear/Rub-off/Migration Testing)
特定の硬化条件下でのペーパーコーティング材料の硬化特性を、実際の生産コーティング条件に合うように設計された実験室スケールのコーティング技術を用いて評価した。フィルムの硬化は、以下の3つの方法:1)指の圧力下でのスメア(擦れ)、2)指の圧力下での摩擦落ち、3)硬化したコーティングの接着テープへの移行または転写、で評価する。観察結果を、数値による順位付け(より高い値がより完全な硬化を示すもの)で与える。スメアがなく、摩擦落ちがなく、移行がない完全に硬化したコーティングが得られるまで硬化条件を変えることによって、この方法を用いて好適な硬化サイクルを決定することができる。
【0074】
本方法では、1つの特定の基材から汚れのない乾燥した試験片を選ぶ。コーティング浴配合物を調製し、この基材を指定に従ってコーティングする。この基材をオーブン棚に移動させ、所定の位置に固定する。この棚を、特定の温度に調節し且つ安定化させたオーブン内に置く。指定した時間後、オーブンから基材を取り出し、通常の室内条件で室温まで冷ます(約10分間)。基材を、堅く平らな表面上に置く。以下の観察を行う:
a)スメア:強い圧力で指先で引くことにより約10 cmの長さにわたって1本の線を引く。油性のマーキング(marking)を観察し、適切な数値による以下の順位付けを記録する。
5=なし
4=ごくわずか
3=わずか
2=多少
1=全体的
b)摩擦落ち:強い圧力で指先で引くことにより約10 cmの長さにわたって同じ方向に5回引くことによって新たに1本の線を引く。摩擦落ちは、基材上のフィルムが球状になること、または基材状のフィルムの粒子としてあるいはガム状のべたつきとして感じられる。適切な数値による順位付けを記録する。
4=なし
3=ごくわずか
2=わずか
1=全体的
c)移行:指定した粘着テープの長さ15 cmの新たな一片を、コーティングされた基材に、指による軽い圧力で(粘着面を下にして)付着させる。これを約30秒間接触させたままにしておく。滑らかに1回引っ張ってこのテープを取り去る。自由にはぎ取ることができない場合、「失敗」と記録し、順位付けを記録するか、またはコーティングおよび硬化を繰り返す。これらを互いに貼り付けるために必要である以上の圧力を加えることなく、このテープを、接着面を内側にして折り返して表面を接触させて約3 cmの直径のループを形成させる。両端部をゆっくりと引き離し、ループを観察する。適切な数値による以下の順位付けを記録する。
3=なし(ループが引き離されるに従って接着剤/接着剤接触面がテープに沿って移動する。すなわち、ループが小さくなる)
2=わずか(テープが引き離される前にループの大きさが小さくなる)
1=全体的(ループの大きさが全く低減せずにテープがすぐに引き離される)
【0075】
3.フィルム形成技術
フィルム形成に関しては、サッカライドシロキサンのフィルムは、任意の標準的なフィルムのドローダウン技術(ドローダウンバー、線巻ロッド、およびシム(shim)を含む)を用いて形成させることができる。フィルムは、ポリエチレンなどの剥離性コーティング上、あるいはガラスまたはプラスチックのサンプル皿中に溶液を単に注ぐことによって形成させることもできる。当業者であれば、当分野で公知の多くの方法が本明細書に記載したフィルムの形成に好適であること、および本明細書において開示した特定の実施例で採用された任意の方法を他の同様に好適な方法で置き換えることができることを理解するであろう。
【0076】
4.プロテアーゼの存在の試験におけるスキムミルクプレートプロトコル
試験配合物をその上に有する15 mmのマイラーディスクを切り出して、スキムミルク/寒天に押し込む。このディスクは、プレートと接触した時に不透明さが低下する。酵素を含まない配合物を含有するかまたはマイラーだけのいずれかのネガティブコントロールディスクもプレートに押し込む。このプレートもしくはペトリ皿を閉じ、25℃または37℃のいずれかに置く。小さな透明の円(寒天/スキムミルクが不透明から透明に変化した部分)がちょうど試験ディスクの下に現れ、試験ディスクの周りに同心円状に徐々に広がる。
【0077】
スキムミルク/寒天プレートの調製法は:
配合物:
Skim Milk-Difco 5 g
蒸留水 50 mlにするための量
別のボトルに:
Yeast Extract-Difco 2.5 g
NaCl 0.5 g
Bacto Ager 10 g
蒸留水 450 mlにするための量
これらの溶液を別々にオートクレーブ処理する。50℃に冷ます。混合する(スキム液を寒天液に加える)。10 mg/mlクロラムフェニコールを1 ml添加する。
【0078】
5.膨潤計(OSB Testing)の試験手順
以下の工程に従う:
1.木材のウエハーサンプルを切断、識別および秤量(湿度室から取り出した後5分以内に秤量)し、識別番号と重量をログブックに記録する。
2.試験すべき混合エマルションまたは混合溶液を皿に満たす。
a)速やかに木材の一方の面を濡らした後、この木材を素早くひっくり返して他方の面を濡らす。そうしないと、木材が弓形に曲がり部分的に浸されるだけになる。
b)90秒間この木材の両面を浸す(全部で3分間水をベースとする溶液に浸す)。
c)30秒間この木材を溶媒をベースした溶液に浸す(各面について15秒間)。
d)木材を浸漬バスから取り出し、1分間乾燥し、かつ秤量する(データを記録する)。
3.木材ウエハーを乾燥棚上に24時間置き、乾燥のために、これらを45°の角度で置かれているようにする。
4.24時間の乾燥時間の後、木材ウエハーを湿度室に戻して6日間置く。その後、最初に掲載した工程を第6日目および第7日目に繰り返す。
5.試験第7日目の早朝に、脱イオン水を一杯に満たしたバケツを実験台の上に置く。これにより、水の温度を試験に必要とされる室温に到達させる。
6.膨潤計装置の表示ダイアルの下部にストップピンをセットする。試験サンプルを、ストップピンに堅く接触させて、溝状部分に滑り込ませる。
7.ダイアルゲージを上下に調節してダイアル位置0.0の近くで締め付ける。0点の微調整は、ダイアルの外縁を調節することによって完了させることができる。この工程を、試験のための水浴にサンプルを入れる前に行う。
8.装置をサンプルと共に水浴中に30分間入れる。必要に応じて水を加えることによって浴の高さを調節して、サンプル全体が水中に没するようにする。
9.各サンプルについてダイアルの読みを記録する。
10.水から取り出す。
11.試験装置を乾燥/洗浄する。
12.サンプルを試験治具から外し、タオルで乾かし、最終的な湿潤重量を記録する。
13.コンピュータのデータシートの情報を完成させた後、最終的な結果をログブックに入力する。
14.計算した結果を記録する。
【0079】
[実施例2]:架橋した網目状構造の形成
本実施例は、架橋した網目状構造がGL-8211共重合体と適切な架橋剤とを含む溶液中で形成され、対照的に、架橋剤を含まない同じ溶液中では架橋した網目状構造が見られないことの確認を例示する。
【0080】
a)44.13 gのGL-8211共重合体と396.88 gのヘプタンとを共重合体が溶解するまで混合する。2.5 gのこの溶液を、ホイルの秤量皿に入れ、70℃のオーブン中に15分間置いて溶媒を蒸発させる。得られたフィルムは弾性がなく、粘着性がほとんどない。
【0081】
b)10 gの共重合体/ヘプタン溶液を使い捨てプラスチックコップに秤り入れる。ホウ酸トリ-n-プロピルの2%ヘプタン溶液1 gをこのコップに添加し、Hauschild Speedmixer(Flacktek社)を使用して20秒間混合した。この溶液はゲルになる。1.66 gのこの溶液をアルミニウム秤量皿に入れ、70℃のオーブン中に35分間置いた。弾性のあるフィルムが残る。
【0082】
[実施例3]:紙基材上の高剥離性コーティング
本実施例は、サッカライド−シロキサン共重合体と架橋剤とを含む組成物が、クラフト紙上に高剥離性コーティングを形成する一方、架橋剤を含まない同じ組成物はクラフト紙上にコーティングを形成し得ないことを例証する。
【0083】
a)実施例2aからの共重合体/ヘプタン溶液150.09 gを、165 gのヘプタンと分散するまでさらに混合した。この溶液を、53番Rhinelander SCKクラフト紙上に14番Meyerロッドを用いてコーティングした。溶媒を、コーティングされた基材を300Fのオーブンに23.5秒間かけて通過させることによって除去した。スメア、摩擦落ち、および移行の評価は、3つの基材全てに対して中程度−全体的であった(数値では「1」に規定される)。これを、数値で1/1/1と定める。
【0084】
b)実施例2aで調製した共重合体/ヘプタン溶液150 gを、150 gのヘプタンおよびホウ酸トリ-n-プロピルの2%ヘプタン溶液15 gと、分散するまでさらに混合した。この溶液を、53番 Rhinelander SCKクラフト紙上に14番Meyerロッドを用いてコーティングした。溶媒を、コーティングされた基材を300Fのオーブンに23.5秒間かけて通過させることによって除去した。スメア、摩擦落ち、および移行の評価は、わずかなスメア(相当する数値=1)、中程度−全体的な摩擦落ち(相当する数値=2)、およびわずかな移行(相当する数値=1)であり、3aで形成されたフィルムに対して全体的な改善が見られた。
【0085】
c)b)からのコーティングしたクラフト紙の剥離性について、ゴムをベースにした接着テープおよびアクリルをベースにした接着テープの両方を用いて、FINAT試験法No. 3およびNo. 4(FTM 3およびFTM 4)に準拠して試験した。結果を表3に表した。
【表3】

【0086】
これらの結果は、サッカライド−シロキサンフィルムが、特に高剥離性が望まれる場合の、紙の剥離性コーティングとしての有用性を有することを示している。
【0087】
[実施例4]:フィルム形成の確認
以下の実施例は、架橋剤が存在しない場合、ほとんどのサッカライド−シロキサン共重合体はヘプタンに溶解するが、ホウ酸エステル架橋剤が存在する場合、共重合体が三次元網目状構造中に結合されていてフィルム中に残るため、共重合体はヘプタンに溶解しないことを例証する。
【0088】
50重量%のサッカライドシロキサン、6.4重量%のエタノール、および43.6重量%のDC 0.65 cst 200 Fluidを含む、共重合体GL-8211の溶液を調製する。この材料のフィルムをポリエチレンシート上にキャストすると、室温で溶媒を蒸発させた後不粘着性になる。ヘプタンを用いて膨潤ゲル分析を行う。ゲル率は27.6であり、フィルムサンプルのほとんどがヘプタンに溶解したことを示している。この結果は、ほとんどの共重合体が拘束されていないこととも整合する。第二のフィルムは、100部のGL-8211当たり1.1部のB(OPr)3を含有するDC 0.65 cst 200 Fluid 中のGL-8211の8.1%溶液から調製する。室温で溶媒を蒸発させた後、不粘着性の透明なフィルムが残る。膨潤ゲル分析を再びヘプタンを用いて行う。膨潤率は650、ゲル率は89であり、架橋した網目状構造の形成を示している。
【0089】
[実施例5]:結合された酵素を含むフィルム
本実施例は、サッカライド−シロキサンの架橋した網目状構造から形成されたフィルムであって、このフィルムの三次元網目状構造が、結合された酵素プロテアーゼBを含むフィルムをもたらす実施態様を例証する。
【0090】
フィルムを、100部のGL-8211当たり1.1部のB(OPr)3と、100部のGL-8211当たり42mg/mlのプロテアーゼ酵素溶液3.5部とを含有するDC 0.65 cst 200 Fluid 中の、GL-8211の8.3%溶液から調製する。室温で溶媒を蒸発させた後、不粘着性の透明なフィルムが残る。膨潤ゲル分析を、ヘプタンを用いて行う。膨潤率は593、ゲル率は75であり、架橋した網目状構造の形成を示している。
【0091】
[実施例6]:充填剤をさらに含む架橋可能な組成物
本実施例は、サッカライド−シロキサン共重合体、ホウ酸エステル架橋剤、およびシリカ充填剤を含む架橋可能な組成物から形成されたフィルムが、より緻密な網目状構造を示すことを例証する。
【0092】
フィルムを、100部のGL-8211当たり1.0部のB(OPr)3と、100部のGL-8211当たり19.8部のCab-O-Sil TS-530ヒュームドシリカとを含有するDC 0.65 cst 200 Fluid 中の、GL-8211共重合体の8.0%溶液から調製する。室温で溶媒を蒸発させた後、かすみがかった不粘着性のフィルムが残る。膨潤ゲル分析を、ヘプタンを用いて行う。膨潤率は347、ゲル率は89であり、架橋した網目状構造の形成を示している。
【0093】
[実施例7]:異なる溶媒で形成された架橋した網目状構造体
以下の実施例は、サッカライド−シロキサン共重合体と、ボロン酸エステル架橋剤とを含む架橋可能な組成物が、異なる溶媒から与えられた場合でも架橋することを例証する。この実施例はさらに、架橋剤の濃度を低くすることができることを例証する。
【0094】
フィルムを、6.3%のGL-8211、92%のDC 245 Fluid、0.8%のエタノール、0.8%のDC 0.65 cst 200 Fluid、および0.1%のB(OPr)3を含む溶液から調製する。室温で溶媒を蒸発させた後、不粘着性の透明なフィルムが残る。膨潤ゲル分析を、ヘプタンを用いて行う。膨潤率は543、ゲル率は79であり、架橋した網目状構造の形成を示している。
【0095】
[実施例8]:反応性シロキサン樹脂を含む架橋剤
以下の実施例は、サッカライド−シロキサン共重合体と、ヒドロキシ官能性反応性シロキサン樹脂架橋剤とを含む架橋可能な組成物が不溶性のフィルムを形成し、この反応性樹脂が、100部のサッカライド−シロキサンに対して25部で効果的な架橋剤であることを示していることを例証する。
【0096】
フィルムを、42.5%のGL-8211、10.6%のDC 407樹脂、5.4%のエタノール、37.0%のDC 0.65 cst 200 Fluid、および4.5%のキシレンを含む溶液から調製する。室温で溶媒を蒸発させた後、不粘着性の透明なフィルムが残る。膨潤ゲル分析を、ヘプタンを用いて行う。膨潤率は260、ゲル率は94であり、架橋した網目状構造の形成を示している。
【0097】
[実施例9]:反応性シロキサン樹脂を含む架橋剤
以下の実施例は、サッカライド−シロキサン共重合体と、ヒドロキシ官能性反応性シロキサン樹脂架橋剤とを含む架橋可能な組成物が不溶性のフィルムを形成し、この反応性樹脂が、100部のサッカライド−シロキサンに対して28部で効果的な架橋剤であることを示していることを例証する。
【0098】
フィルムを、34%のGL-8211、9.6%のDC 407樹脂、4.3%のエタノール、29.6%のDC 0.65 cst 200 Fluid、および22.5%のDC 245 Fluidを含む溶液から調製する。室温で溶媒を蒸発させた後、不粘着性の透明なフィルムが残る。膨潤ゲル分析を、ヘプタンを用いて行う。膨潤率は219、ゲル率は92であり、架橋した網目状構造の形成を示している。
【0099】
[実施例10]:ビニル官能性反応性シロキサン樹脂を含む架橋剤
以下の実施例は、サッカライド−シロキサン共重合体と、ビニル官能性反応性シロキサン樹脂架橋剤とを含む架橋可能な組成物が不溶性のフィルムを形成し、この反応性樹脂が、100部のサッカライド−シロキサンに対して40部で効果的な架橋剤であることを示していることを例証する。
【0100】
フィルムを、38.3%のGL-8211、15.2%のDC 6-3444樹脂、3.6%のエタノール、34%のDC 0.65 cst 200 Fluid、および8.9%のキシレンを含む溶液から調製する。室温で溶媒を蒸発させた後、不粘着性の透明なフィルムが残る。膨潤ゲル分析を、ヘプタンを用いて行う。膨潤率は289、ゲル率は88であり、架橋した網目状構造の形成を示している。
【0101】
[実施例11]:プロテアーゼBを含む架橋した網目状構造
以下の実施例は、サッカライド−シロキサン共重合体と、ボロン酸エステル架橋剤と、酵素とを含む架橋可能な組成物が溶媒が蒸発した後に架橋したフィルムを形成し、その後、このフィルムが徐々に酵素を放出し、フリーになった酵素がその生物活性を維持することを例証する。親水性のサッカライド部分をオルガノシロキサン骨格上に組み込み、次にその共重合体を架橋することにより、親水性の酵素に適合する独特のマトリックスがもたらされる。
【0102】
ヘキサメチルジシロキサン中6.65%のGL-8211 10.29gと、ヘキサメチルジシロキサン中2%のボロン酸トリプロピル0.69 gとを、Hauschild AM-501歯科用ミキサーで混合する。その後、5.001 gのこの溶液を2.014 gの13.5% GL-8211で希釈する。その後、0.021 gのプロテアーゼB酵素をこの混合物に添加する。各添加工程の後で、サンプルをHauschild AM-501歯科用ミキサーで2回混合する。調製した溶液を、乾燥して24時間に亘って硬化させて薄膜にするために、ペトリ皿に注ぐ。硬化し、乾燥したフィルムから、サンプルを切り出し、酵素の放出活性を分析した。酵素の放出を、スキムミルクプレート上で追跡した。
【0103】
スキムミルクプレートは、以下のように調製する:1つのボトル中で、スキムミルク粉末を水に溶解し、他のボトル中で、酵母エキス、塩化ナトリウム、および寒天を一緒に混合する。これらのボトルを、Hirayama Autoclaveを使用して121℃で15分間、オートクレーブ処理する。次いで、これらを水浴中で45℃に冷やす。その後、スキムミルク溶液を寒天に添加し、一体とした溶液をペトリ皿に注ぎ、凝固させる。酵素を含むサッカライド−シロキサンマトリックスの小さな一片を切り出し、このスキムミルク寒天に押し込む。このペトリ皿を30±2℃でインキュベートする。図1は、24時間のインキュベーション後に観察したスキムミルクプレート上で、調製したパッチから酵素が放出されていることを示す。
【0104】
[実施例12]:架橋マトリックスからのプロテアーゼB酵素の持続放出
本実施例は、サッカライド−シロキサンと、架橋剤とを含む架橋可能な組成物から形成されたフィルムから、および、プロテアーゼBをさらに含む感圧接着性網目状構造マトリックスからのプロテアーゼB酵素の持続放出を例証する。
【0105】
ヘキサメチルジシロキサン中14.61%のGL-8211 11.91gと、0.41 gのグリセリンと、42 mg/ml貯蔵溶液からのプロテアーゼB酵素0.42 gとを、Hauschild AM-501歯科用ミキサーで混合する。この溶液に、ヘキサメチルジシロキサン中75%のDC 7-4600感圧接着剤8.04 gを添加する。各添加工程の後で、サンプルをHauschild AM-501歯科用ミキサーで2回混合する。調製したエマルションを、Paul N. Gardner Company社によって製造されたドローダウンバーを用いて、DC 7-4107シリコーン膜/ポリカーボネート基材上に広げる。このドローイングされたフィルムを、換気フード中で24時間に亘って乾燥して基材上の薄膜にする。この乾燥したフィルムから、パッチを切り出し、酵素の放出活性を分析した。酵素の放出を、スキムミルクプレート上で追跡した。
【0106】
スキムミルクプレートは、以下のように調製する:1つのボトル中で、スキムミルク粉末を水に溶解し、他のボトル中で、酵母エキス、塩化ナトリウム、および寒天を一緒に混合した。これらのボトルを、Hirayama Autoclaveを使用して121℃で15分間、オートクレーブ処理した。次いで、これらを水浴中で45℃に冷やす。その後、スキムミルク溶液を寒天に添加し、一体とした溶液をペトリ皿に注ぎ、凝固させる。酵素を含むシリコーン糖質マトリックスの小さな一片を切り出し、このスキムミルク寒天に押し込む。このペトリ皿を30±2℃でインキュベートする。図2は、24時間のインキュベーション後に観察したスキムミルクプレート上で、調製したパッチから少量の酵素が放出されていることを示す。
【0107】
[実施例13]:ヘルスケアフィルム
以下の実施例は、強化した架橋したサッカライド−シロキサンフィルムを調製することができ、このフィルムが、皮膚に粘着性を有し、皮膚の表面の摩擦を低減することを例証する。本実施例の有用性を示す限定されない例には、液体創傷被覆材または液体包帯などの用途が含まれる。
【0108】
45 gのGL-8211サッカライド−シロキサンを、0.65 cst 200 Fluid(Dow corning社、Midland、ミシガン州)および200プルーフ(proof)のエタノールの重量比90/10の溶液で、50%共重合体濃度に到達するまで希釈する。この希釈は、順次の溶媒の添加後に、Hauschild Speedmixer(登録商標)遠心ミキサー(Flacktek社、Landrum、サウスカロライナ州)で均一になるまで混合することによって完成させる。
【0109】
架橋剤Aは、200プルーフのエタノール中のボロン酸トリイソプロパノールアミン(Anderson Development社、Adrian、ミシガン州)の10重量%溶液である。架橋剤Bは、200プルーフのエタノール中のボロン酸フェニル(Sigma-Aldrich社、St. Louis、ミズーリ州)の10重量%溶液である。Cab-O-Sil TS-530は、ヘキサメチルジシラザン処理されたシリカ(Carbot社、Boston、マサチューセッツ州)である。
【0110】
サッカライド−シロキサン溶液と、処理されたシリカと、架橋溶液とをHauschild Speedmixer(登録商標)遠心ミキサー(Flacktek社、Landrum、サウスカロライナ州)で均一になるまで混合する。10ミル(mil)のフィルムをドローし、乾燥させる。少量のサンプルを、いずれかの手の指節関節に綿棒で塗布し、乾燥させてフィルムにする。
【0111】
表4に、組成および達成された結果を示す。
【表4】

【0112】
これらの結果は、フィルムの表面の感触が、処理されたシリカの添加によって改善されること、および二官能性ボロン酸エステルを用いることにより可使時間を延長することができることを例証する。粘着性も実証された。これらの特性は、液体塗布の創傷被覆材にとって重要である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1A】図1Aは、スキムミルクプレート上における、調製されたサッカライドシロキサン共重合体組成物パッチからのプロテアーゼB酵素の放出を示す(24時間のインキュベーション前)。
【図1B】図1Bは、スキムミルクプレート上における、調製されたサッカライドシロキサン共重合体組成物パッチからのプロテアーゼB酵素の放出を示す(24時間のインキュベーション後)。
【図2A】図2Aは、スキムミルクプレート上における、調製されたサッカライドシロキサン共重合体/PSA組成物パッチからの少量のプロテアーゼB酵素の放出を示す(24時間のインキュベーション前)。
【図2B】図2Bは、スキムミルクプレート上における、調製されたサッカライドシロキサン共重合体/PSA組成物パッチからの少量のプロテアーゼB酵素の放出を示す(24時間のインキュベーション後)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋可能な組成物であって、
a)サッカライド−シロキサン共重合体;
b)架橋剤;および
c)任意で、溶媒
を含み、
前記サッカライド−シロキサン共重合体が、以下の構造:
R2aR1(3-a)SiO-[(SiR2R1O)m-(SiR12O)n]y-SiR1(3-a)R2a
〔式中、Rは、同じであっても異なっていてもよく、水素、C1~C12アルキル、有機基、またはR3-Qを含み、
Qは、エポキシ、シクロエポキシ、一級もしくは二級アミノ、エチレンジアミン、カルボキシ、ハロゲン、ビニル、アリル、無水物、またはメルカプトの官能基を含み、
mおよびnは、0〜10,000の整数であり、同じであっても異なっていてもよく、
aは、独立に、0、1、2、または3であり、
yは、前記共重合体が1,000,000未満の分子量を有することになる整数であり、
R1(3-a)SiO-[(SiR1O)m-(SiR12O)n]y-SiR1(3-a) は、オルガノシロキサン重合体成分を含み、
は、式 Z-(G1)b-(G2)c を有し、かつ、少なくとも1個のRが存在する
[式中、Gは、炭素原子5個〜12個を含むサッカライド成分であり、
b+cは1〜10であり、bまたはcは0であってよく、bまたはcのいずれかが1でなければならず、
は、炭素原子5個〜12個を含み、さらに有機基または有機ケイ素基で置換されたサッカライド成分であり、
Zは、オルガノシロキサン重合体成分とサッカライド成分との間の連結基であり、独立に、以下の:
【化1】

からなる群から選択され、
およびRは、(R5)r(R6)s(R7)t(式中、r、s、およびtの少なくとも1つは1でなければならない)を含む二価のスペーサー基であり、かつ、
およびRは、C1~C12アルキルまたは((C1~C12)O)p(式中、pは1〜50の任意の整数であり、各(C1~C12)Oは同じであっても異なっていてもよい)のいずれかであり、
は、-N(R8)-(式中、Rは、HまたはC1~C12アルキルである)である]。〕
を有し、かつ、
前記サッカライド−シロキサン共重合体が、官能化されたオルガノシロキサン重合体と少なくとも1種のヒドロキシ官能性サッカライドとの反応生成物であり、前記オルガノシロキサン成分が、連結基Zを介して前記サッカライド成分に共有結合している、
架橋可能な組成物。
【請求項2】
前記サッカライド−シロキサン共重合体が、少なくとも3個のヒドロキシ官能基を有する、請求項1に記載の架橋可能な組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドが、アルドン酸またはオリゴアルドン酸を含む、請求項1に記載の架橋可能な組成物。
【請求項4】
前記アルドン酸または前記オリゴアルドン酸がラクトンを含む、請求項3に記載の架橋可能な組成物。
【請求項5】
前記ラクトンが、グルコノラクトンまたはラクトビオノラクトンを含む、請求項4に記載の架橋可能な組成物。
【請求項6】
前記連結基が、アミド、アミノ、ウレタン、尿素、エステル、エーテル、チオエーテル、またはアセタールの連結基を含む、請求項1に記載の架橋可能な組成物。
【請求項7】
以下から選択される添加剤:
d)触媒;
e)充填剤;
f)顔料;
g)紫外線安定剤;
h)熱安定剤;
i)レオロジー調整剤;
j)増粘剤;
k)接着促進剤;
l)殺生物剤;
m)防腐剤;
n)酵素;
o)ペプチド;
p)感圧接着剤;
q)界面活性剤
をさらに含む、請求項1に記載の架橋可能な組成物。
【請求項8】
前記添加剤が触媒を含む、請求項7に記載の架橋可能な組成物。
【請求項9】
前記触媒が、エステル化反応またはエステル交換反応を触媒することができる酵素を含む、請求項8に記載の架橋可能な組成物。
【請求項10】
前記酵素がリパーゼを含む、請求項9に記載の架橋可能な組成物。
【請求項11】
前記リパーゼがN435を含む、請求項10に記載の架橋可能な組成物。
【請求項12】
前記添加剤が酵素を含む、請求項7に記載の架橋可能な組成物。
【請求項13】
前記酵素がプロテアーゼBを含む、請求項12に記載の架橋可能な組成物。
【請求項14】
1種以上の前記添加剤が、感圧接着剤および殺生物剤または酵素を含む、請求項7に記載の架橋可能な組成物。
【請求項15】
前記架橋剤が、ヒドロキシ官能性重合体を架橋することができる任意の試剤を含む、請求項1に記載の架橋可能な組成物。
【請求項16】
前記架橋剤が、ホウ酸、ホウ酸エステル、アルキルもしくはアリールボロン酸またはアルキルもしくはアリールボロン酸エステル、チタネート、ジルコネート、グリオキサール、グルテルアルデヒド、エピクロロヒドリン、ユリアホルムアルデヒド、炭酸ジルコニウムアンモニウム、多価イオンの塩、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジ-(N-ヒドロキシメチル)尿素、ジイソシアネート、2-クロロ-N,N-ジ-エチルアセトアミド、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、アクロレイン、N-メチル尿素、ジカルボン酸、ビス酸塩化物、ジアルキルジクロロシラン、アルキルトリクロロシラン、反応性シロキサン樹脂およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の架橋可能な組成物。
【請求項17】
前記架橋剤が、反応性シロキサン樹脂を含む、請求項16に記載の架橋可能な組成物。
【請求項18】
前記反応性シロキサン樹脂が、ヒドロキシ官能基またはビニル官能基を含む、請求項17に記載の架橋可能な組成物。
【請求項19】
前記反応性シロキサン樹脂が、サッカライド−シロキサン共重合体100部に対して樹脂25部の重量比のヒドロキシ官能性樹脂を含む、請求項17に記載の架橋可能な組成物。
【請求項20】
前記架橋剤が、アルキルもしくはアリールボロン酸またはアルキルもしくはアリールボロン酸エステルを含む、請求項16に記載の架橋可能な組成物。
【請求項21】
前記アルキルもしくはアリールボロン酸または前記アルキルもしくはアリールボロン酸エステルが、フェニルボロン酸を含む、請求項20に記載の架橋可能な組成物。
【請求項22】
前記充填剤が、処理されたヒュームドシリカを含む、請求項7に記載の架橋可能な組成物。
【請求項23】
溶媒が、少なくとも1種の非極性有機溶媒を含む、請求項1に記載の架橋可能な組成物。
【請求項24】
溶媒が、揮発性シリコーン/非極性有機溶媒と、アルコールとを含む、請求項1に記載の架橋可能な組成物。
【請求項25】
前記1種以上の添加剤が、少なくとも1種の界面活性剤を含み、さらに前記架橋可能な組成物がエマルションの形態である、請求項7に記載の架橋可能な組成物。
【請求項26】
架橋可能な組成物の製造方法であって、以下の工程:
a)サッカライド−シロキサン共重合体を適切な溶媒に溶解して溶液を形成させる工程;
b)少なくとも1種の架橋剤を適切な溶媒に溶解して溶液を形成させる工程;
c)工程b)からの溶液を工程a)からの溶液に添加して、b)がa)中に分散されるまで混合する工程;
または
a)サッカライド−シロキサン共重合体を適切な溶媒に溶解して溶液を形成させる工程;
b)少なくとも1種の架橋剤を工程a)からの溶液に直接添加する工程;
c)前記架橋剤が工程a)からの溶液中に分散されるまで混合する工程;
を含み、かつ、
前記サッカライド−シロキサン共重合体が、官能化されたオルガノシロキサン重合体と少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドとの反応生成物を含み、前記オルガノシロキサン重合体が、連結基を介して前記少なくとも1種のポリヒドロキシ官能性サッカライドに共有結合している、製造方法。
【請求項27】
以下の必ずしも順次でなくてもよい工程:
i)任意で、1種以上の添加剤を工程a)から形成された前記溶液に添加して分散されるまで混合する工程;
ii)任意で、1種以上の添加剤を、架橋剤と同時に添加する工程;および
iii)任意で、1種以上の添加剤を工程c)からの溶液に添加して分散されるまで混合する工程
のうち1つ以上をさらに含み、
前記1種以上の添加剤が、触媒;充填剤;顔料;紫外線安定剤;熱安定剤;レオロジー調整剤;増粘剤;接着促進剤;殺生物剤;防腐剤;酵素;ペプチド;感圧接着剤;および界面活性剤から選択される、請求項26に記載の架橋可能な組成物の製造方法。
【請求項28】
前記架橋剤が、ホウ酸、ホウ酸エステル、アルキルもしくはアリールボロン酸またはアルキルもしくはアリールボロン酸エステル、チタネート、ジルコネート、グリオキサール、グルテルアルデヒド、エピクロロヒドリン、ユリアホルムアルデヒド、炭酸ジルコニウムアンモニウム、多価イオンの塩、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジ-(N-ヒドロキシメチル)尿素、ジイソシアネート、2-クロロ-N,N-ジ-エチルアセトアミド、トリメタリン酸ナトリウム、オキシ塩化リン、アクロレイン、N-メチル尿素、ジカルボン酸、ビス酸塩化物、ジアルキルジクロロシラン、アルキルトリクロロシラン、反応性シロキサン樹脂およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記架橋剤がジカルボン酸を含み、前記1種以上の添加剤が触媒を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記触媒が酵素を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記酵素がリパーゼを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記リパーゼがN435を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載の架橋可能な組成物から形成された、架橋された高分子網目状構造体。
【請求項34】
請求項1に記載の架橋可能な組成物から形成された、硬化したコーティング組成物。
【請求項35】
請求項14に記載の架橋可能な組成物から形成された、硬化したコーティング組成物。
【請求項36】
請求項35に記載の硬化したコーティング組成物を含む、製品。
【請求項37】
前記製品が、保護のうえで利益を与える繊維製品を含む、請求項36に記載の製品。
【請求項38】
前記繊維製品が衣料品を含む、請求項37に記載の製品。
【請求項39】
請求項1に記載の架橋可能な組成物を皮膚の上に適用する工程;および前記組成物を硬化させる工程を含む、硬化したコーティング組成物を皮膚の上に形成させる方法。
【請求項40】
前記硬化したコーティング組成物がフィルムを含む、請求項39に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【公表番号】特表2008−525598(P2008−525598A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548519(P2007−548519)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/046780
【国際公開番号】WO2006/071772
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【出願人】(503358709)ジェネンコー インターナショナル インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】