説明

架橋可能なポリマーバインダー

本発明は、ポリウレタンマクロマー及びその上にグラフトされたビニルポリマーを有する架橋可能なポリマーバインダーにおいて、該マクロマーは以下、I.2以上のヒドロキシ官能基を有するモノマー(I)、II.2以上のイソシアネート基を有するモノマー(II)、III.イオン的に及び/又は非イオン的に安定化させる基を有する安定化モノマー(III)、IV.モノマーI又はIIと反応する基を1つだけ有し、かつ1つのビニル基を有するグラフトモノマー(IV)、V.モノマーI又はIIと反応する基を1つだけ有する鎖ストッパーモノマー(V)、ここでマクロマーの少なくとも30モル%はグラフトモノマーIVを1つだけ有し、マクロマーの50モル%未満は2以上のグラフトモノマーIVを有し、ビニルポリマーはグラフトモノマーIVのビニル基に結合され、ビニルポリマー及び/又はマクロマーは架橋可能な基を有する、を反応させることにより製造されたものであるところの前記架橋可能なポリマーバインダーに関する。本発明は、さらに該架橋可能なポリマーバインダーを含む水性分散物、該架橋可能なポリマーバインダー及びその水性分散物を製造する方法に関する。該架橋可能なポリマーバインダーは、コーティング組成物又は接着剤に使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンマクロマー及びその上にグラフトされたビニルポリマーを含む架橋可能なポリマーバインダー、該架橋可能なポリマーバインダーを含む水性分散物及び該架橋可能なポリマーバインダーの製造方法及びその水性分散物に関する。該架橋可能なポリマーバインダーは塗料組成物又は接着剤において使用されることができる。
【背景技術】
【0002】
有機溶媒の放出に関する法律の最近の変化は、工業的用途に対する水性コーティング系における増大する関心をもたらした。水性コーティング系は、コーティングの装飾的な面が保護性より重要である用途において、既に長い間使用されてきた。バインダーとして使用される水性のポリマー分散物は、極めてしばしば、エマルジョン重合法により製造されたアクリルポリマーである。エマルジョン重合法の一般的な説明は、E.W.ダック,「ポリマー科学と技術の百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Technology)」(John Wiley & Sons, Inc.:1966),第5巻,801〜859頁に与えられている。慣用のエマルジョン重合法の重大な欠点は、この方法において、かなりな量の界面活性剤が使用されなければならないことである。界面活性剤は、エマルジョン重合において多くの機能、例えば疎水性モノマーを溶解させること、形成される分散粒子の数及びサイズを決定すること、粒子が成長するに連れて分散物の安定性を与えること、及びポスト重合プロセッシングの間に分散安定性を与えること、を達成する。エマルジョン重合において使用される界面活性剤の典型的な例は、アニオン性界面活性剤例えば脂肪酸石鹸、カルボン酸アルキルエステル、アルキル硫酸エステル及びアルキルスルホネート;ノニオン性界面活性剤例えばエトキシレート化アルキルフェノール又は凍結融解及び剪断安定性を改善するために使用される脂肪酸:及びカチオン性界面活性剤例えばアミン、ニトリル、及び不相容性の問題のために滅多に使用されない他の窒素塩基である。しばしば、複数のアニオン性界面活性剤の組み合わせ又はアニオン性及びノニオン性界面活性剤の組み合わせが、改良された安定性を与えるために使用される。
【0003】
エマルジョン重合における界面活性剤の使用は、得られたポリマー状分散物がフィルム形成性組成物、例えばコーティング、印刷用インク、接着剤などにおいて使用されるとき、多くの問題をもたらす。慣用の界面活性剤又は乳化剤は、非常に水に敏感なので、それらは、ポリマー分散物から形成されるフィルムに乏しい耐水性を与える。さらに慣用の界面活性剤又は乳化剤は、ポリマーの可塑剤としてしばしば作用し、ポリマー状フィルムの減少された堅さをもたらす。別の潜在的な問題は、界面活性剤の分子が、ポリマー/空気又はポリマー/基体界面に移動し、しばしば有害な効果、例えば悪化された美感性、例えば光沢の損失、表面における曇り、接着性の喪失をもたらす傾向である。
【0004】
安定化ポリマーの存在下における界面活性剤なしのエマルジョン重合は先行技術において公知である。米国特許第4,151,143号は、慣用のカルボキシル基含有ポリマーが中和され、かつ水に乳化されるところの界面活性剤なしのポリマーエマルジョン重合を開示している。次に、第二ステージのポリマーが、乳化された第一のポリマーの存在下で製造される。他の安定化ポリマー、例えば水希釈性(water−reducible)ポリウレタン、の使用もまた例えば米国特許第4,820,762号に記載されている。
【0005】
上記の方法の欠点の一つは、安定化ポリマーと主ポリマーの間で相分離が起こり、最終用途における性質を損なうことである。この問題を克服する公知の方法は、フリーラジカル重合プロセスに参加できる基、例えばエチレン性不飽和基又はチオール基を含む安定化ポリマーを使用することである。安定化ポリマーをアクリルポリマーに共有結合的に結合させる種々の方法が提案されている。
【0006】
EP0167188は、不飽和末端基を有するオリゴ−ウレタンの合成を記載する。これらのオリゴ−ウレタンは、水に乳化され、フリーラジカル開始剤が末端の二重結合を重合させるために添加される。
【0007】
EP0522419は、ポリウレタン−アクリルハイブリッド分散物を記載する。該オリゴ−ウレタンは、多くの横方向の基及び任意的に末端のエチレン性不飽和基を有する。EP0522420は、架橋可能なポリウレタン−アクリルハイブリッドであって、カルボニル官能性モノマーが該ポリマーのアクリル部分に取り込まれているものを製造する方法を記載している。ポリヒドラジドが架橋に影響を与えるために該ポリマーに添加される。両方の刊行物においてフィルム形成における問題が起こり、不十分な機械的強度及びバインダーから作られたフィルムに対してバリヤー性をもたらす。
【0008】
最近、H.J.アドラーらは(Progress in Organic Coatings第43巻(2001年)251〜257頁)、新しいクラスのポリウレタン安定化剤であって、ポリマーの約50%が、1のメタクリロイル及び1のドデカン末端基及びカルボン酸基を含むものを記載している。これらのポリマーの両親媒性のために、それらは水性媒体においてミセルを形成することができ、従ってエマルジョン重合法において安定化剤として作用するのに適する。
【0009】
本発明者らは、これらの安定化剤は、カルボニル官能性モノマーを含むエチレン性不飽和モノマーのエマルジョン重合において適切であることを今見出した。これらのバインダーは、カルボニル官能基に対して共反応性である化合物を用いて環境温度において架橋されることができ、よく混じり合いコーティング及び印刷用インク用途における使用に必要な性質を示すフィルムを生じることができる。
【0010】
米国特許第5,623,016号は、ポリウレタンマクロマー及びその上にグラフトされたビニルポリマーを含む水性の架橋可能なバインダーにおいて、該マクロマーがポリヒドロキシ化合物、ポリイソシアネート、ビニルモノマー及び親水性基を含む親水性モノマーを反応させてビニルポリマーとグラフト化するための末端のビニル基を有する、ビニル含有ウレタンマクロマーを形成することにより製造される該バインダーを記載している。該ビニルポリマーは、ポリヒドラジドと架橋するための1以上のカルボニル基を有するビニルモノマーを含む。この方法の欠点は、得られた生成物が、相対的に低い堅さ及び乏しい化学物質耐性に示されるように、相対的に乏しいフィルム形成性を有することである。
【0011】
ヒロセは、「Organic Coatings第41巻(1979)157〜169頁」において、ポリウレタンマクロマー及びその上にグラフトされたビニルポリマーを含む架橋可能なバインダーにおいて、該ビニルポリマーが後にポリヒドラジドと架橋するカルボニル基を有するモノマーを含むバインダーを記載する。ヒロセにおいて、該マクロマーは、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ジメチロールプロピオン酸を、モノマーの溶媒としてのN−メチルピロリドン及び酢酸エチルの存在下で反応させることにより製造される。イソホロンジイソシアネートの添加後、ポリウレタンマクロマーが形成され、その後、少量のヒドロキシエチルメタクリレートが添加されて、ビニルポリマーによる後のグラフト化のためのビニル基を付与する。次に、さらなる酢酸エチル溶媒及びビニルモノマーがこのように形成された溶液に添加され、反応されてバインダー物質を形成する。有機溶媒、特に酢酸エチルが蒸留により減圧下、除去される。得られたバインダーは、水性分散物を作るために水に添加される。
【0012】
ヒロセにより記載された方法及び得られた生成物の欠点は、溶媒が除去されなければならないが、完全に除去されることができず、従って得られるバインダーの性質に影響を及ぼすことである。特に、ジメチロールプロパン酸を溶解させるために使用されるN−メチルピロリドンはバインダーから除去されることができない。ヒロセにより記載された該バインダーのさらなる欠点は該バインダーがコーティング物質として相対的に劣る性質を有することである。ヒロセのバインダーを含むコーティングの耐化学薬品性及び機械的性質は、不十分である。これは、相対的に少量のビニル官能性グラフトモノマーから得られたポリウレタンマクロマー上のビニルポリマーの相対的に乏しいグラフト化のためであると考えられる。少量のグラフトモノマーは、ヒロセの方法がバインダー製造の間の架橋を妨げるために必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、水性の架橋可能なポリマーバインダーにおいて上記の欠点の少なくとも1つが克服されているバインダー、特にコーティングとしての使用における改良されたフィルム形成性及び/又は良好な耐化学薬品性及び/又は良好な機械的性質を有するバインダーを提供するという所望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、本発明に従って、ポリウレタンマクロマー及びその上にグラフトされたビニルポリマーを含む架橋可能なポリマーバインダーにより達成され、該マクロマーは以下、
I 2以上のヒドロキシ官能基を有するモノマー(I)
II 2以上のイソシアネート基を有するモノマー(II)
III イオン的に及び/又は非イオン的に安定化させる基を有する安定化モノマー(III)、
IV モノマーI又はIIと反応する基を1つだけ有し、かつ1つのビニル基を有するグラフトモノマー(IV)
V モノマーI又はIIと反応する基を1つだけ有する鎖ストッパーモノマー(V)、
ここでマクロマーの少なくとも30モル%はグラフトモノマーIVを1つだけ有し、マクロマーの50モル%未満は、2以上のグラフトモノマーIVを有し、ビニルポリマーはグラフトモノマーIVのビニル基に結合され、ビニルポリマー及び/又はマクロマーは架橋可能な基を有する、
を反応させることにより製造される。
【0015】
発明者らは、実施例により説明されるように、該架橋可能なポリマーバインダーはいくつかの利点を提供し、特にコーティングとしての使用におけるフィルム形成性、良好な耐化学薬品性及び/又は良好な機械的性質を改良したことを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
バインダーポリマーにおけるポリウレタンマクロマーは、好ましくは直鎖状であり、モノマー(I)は、2つのヒドロキシ官能基を有し、モノマー(II)は、2つのイソシアネート官能基を有する。直鎖のマクロマーの利点は、より良好なフィルム形成性が得られることである。ポリウレタンマクロマーは、ビニルポリマー部分の付加重合における安定化剤として作用するだけでなく、バインダー組成物の必須成分でもある。バインダー中のポリウレタンマクロマーの量は(ポリウレタン及びビニルポリマーの合計重量に対して)5〜95重量%、より好ましくは20〜70重量%、さらにより好ましくは30〜60重量%の範囲であることができる。マクロマーの分子量は、原則、広い範囲で変化できるが、分子量は、コーティングにおいて取扱のために受け入れ可能な粘度及び受け入れ可能な流動性を得るために高すぎてはいけない。他方、分子量は、受け入れ可能な塗装性、例えば機械的耐性及び化学的耐性を得るために低すぎてはいけない。従って、好ましくは、分子量は3000グラム/モル以上かつ50,000グラム/モルである。エマルジョン重合における安定化性能の観点から、マクロマーは、少なくとも3000、より好ましくは少なくとも3500、さらにより好ましくは少なくとも4000グラム/モルかつ50,000以下、より好ましくは40,000以下、さらにより好ましくは35,000グラム/モル以下、最も好ましくは30,000グラム/モル以下の分子量(GPCにより測定された重量平均分子量)を有することが好ましい。
【0017】
ポリマーバインダーにおいて、モノマーIIは、好ましくは、モノマーI及びIII中のイソシアネートと反応する基に対してモル過剰のイソシアネート基を提供するような量で、好ましくは、イソシアネートで末端停止されたマクロマーを形成するのに十分な量で存在し、モノマーIV及びVはイソシアネートと反応する基を1つだけ含む。好ましいイソシアネートと反応する基は、ヒドロキシ基及びアミン基である。好ましくは、モノマーIV及びV中のイソシアネートと反応する基のモル量は、イソシアネート基の量以上である。可能であるが、より好ましくない他の選択肢は、モノマーIがモノマーI及びIII中のイソシアネートと反応する基に対してヒドロキシ官能基のモル過剰を提供するような量で存在し、好ましくはヒドロキシで末端停止されたマクロマーを形成するのに十分な量で存在し、かつモノマーIV及びVは、ヒドロキシ基と反応する基、好ましくはイソシアネート、を1つだけ含む。
【0018】
本発明は、本発明に従うバインダーの製造方法において、
1)
I 2以上のヒドロキシ官能基を含むモノマー(I)、
II 2以上のイソシアネート官能基を含むモノマー(II)、
III イオン的及び/又は非イオン的に安定化させる基を含む安定化モノマー(III)、
IV モノマーI又はIIと反応する基を1つだけ有し、かつ1つのビニル基を有するグラフトモノマー(IV)、
V モノマーI又はIIと反応する基を一つだけ有するストッパーモノマー(V)
ここで、グラフト成分IVの量に対する、モノアルコール鎖ストッパーモノマーVの量は、マクロマーの少なくとも30モル%がグラフトモノマーIVを1つだけ有し、かつマクロマーの50モル%未満が2以上のグラフトモノマーIVを有するように選択される、
を反応させることによりマクロマーを形成する段階、
2)段階1の前、間、又は後にビニルモノマー及び好ましくは阻害剤を添加する段階、
3)得られた反応生成物を中和する任意的な段階、
4)得られた反応生成物を水に乳化させる段階、
5)乳化後、ラジカル開始剤を添加して、ビニルモノマーを反応させる段階、
ここで該ビニルポリマー及び/又はマクロマーは架橋可能な基を含む、
を含む該方法にもまた関する。
【0019】
マクロマーの製造方法において、ゼロ、1及び2以上のグラフトモノマーを有するマクロマーがすべて存在する。これらのマクロマーの相対量は統計学的プロセスに依存し、従って、特にモノマーIV及びVのモル比に依存して統計学的分布で存在する。バインダーの有利な性質、特にグラフト可能なビニル基をゼロ有するマクロマーの低いパーセンテージ、2以上のグラフト可能なビニル基を有するマクロマーの低いパーセンテージ、及びグラフト可能なビニル基を1つだけ有するマクロマーの高いパーセンテージを得るために、モノマーIV:Vのモル量の比が最も好ましくは1に近く、好ましくは0.5:1〜2:1、より好ましくは0.75:1〜1.25:1、さらにより好ましくは0.9:1〜1.1:1である。その結果、2以上のグラフトモノマーを有するマクロマーの数は35モル%以下、好ましくは30モル%以下であり、グラフトモノマーを有さないマクロマーの数は35モル%以下、好ましくは30モル%以下であり、かつグラフトモノマーを1だけ有するマクロマーの数は20〜80モル%、好ましくは40〜60モル%、好ましくは50モル%超である。
【0020】
本方法において、段階2のビニルモノマーは、1つの段階で、又はビニルモノマーの異なる組成を有する少なくとも2つに分けて添加されることができる。反応段階1は、段階2のビニルモノマー及び/又はモノアルコールモノマーVを反応溶媒として使用して、好ましくは追加の溶媒を使用しないで行われることができる。この場合、溶媒除去段階は必要ではない。この場合、ビニルモノマーは段階1においてマクロマーを形成した後と同様にその前に添加されることができる。
【0021】
2以上のヒドロキシ官能基を含むモノマー(I)は、例えばポリエーテルポリオール、ポリエスエルポリオール、ヒドロキシポリエステルアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリオレフィンポリオールから一般的に選択される。ポリマー状ポリオール以外に、低分子量のグリコール、例えばグリコール自身、ジ−又はトリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール又は1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンが使用され得る。種々のポリオールモノマーの混合物が使用され得る。好ましいジオールモノマー(I)は、ポリエステルジオール又はポリカプロラクトンポリオールである。これらのポリオールは、500〜6,000、好ましくは600〜4000の数平均分子量を有することができる。
【0022】
ポリエーテルポリオールの例は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、それらのコポリマー、及びポリテトラメチレングリコールである。400〜5,000の数平均分子量を有するポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0023】
ポリエステルポリオールは、ポリカルボン酸又はその酸無水物の有機ポリヒドロキシ化合物によるエステル化により一般的に製造される。ポリカルボン酸及びポリヒドロキシ化合物は脂肪族、芳香族、又は脂肪族/芳香族の混合物であり得る。適切なポリヒドロキシ化合物は、アルキレングリコール、例えばグリコール、1,2−プロパンジオール及び1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシクロヘキシル)プロパン及びポリヒドリックアルコール、例えばトリスヒドロキシアルキルアルカン(例えばトリメチロールプロパン)又はテトラキスヒドロキシアルキルアルカン(例えばペンタエリスリトール)である。エステル化に適切な他のポリヒドロキシ化合物もまた使用され得る。
【0024】
ポリエステルポリオールの合成において使用されることができるポリカルボン酸は、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、グルタール酸、ヘキサクロロヘプタンジカルボン酸、テトラクロロフタル酸、トリメリット酸及びピロメリット酸である。これらの酸の代わりにその無水物が存在する場合には、酸無水物を使用することもまた可能である。ダイマー状及びトリマー状脂肪酸もまたポリカルボン酸として使用されることができる。エステル化に適切な他のポリカルボン酸もまた使用され得る。
【0025】
他の適切なヒドロキシポリエステルポリオールは、例えばイプシロン−カプロラクトンをグリコールと反応させることにより得られ得るポリラクトンから誘導される。ラクトンとの反応に適切であるグリコールの例は、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びジメチロールシクロヘキサンである。グリコールとして、ジメチロールプロピオン酸とイプシロン−カプロラクトンとの縮合生成物もまた使用され得る。
【0026】
ポリエステルアミドポリオールは、例えば、ポリカルボン酸と、ポリヒドロキシ化合物との混合物としてのアミノアルコールとから誘導される。適切なポリカルボン酸及びポリヒドロキシ化合物は、(A2)に記載されているが、適切なアミノアルコールの例はエタノールアミン及びモノイソプロパノールアミンである。他の適切なアミノアルコールもまた使用されることができる。
【0027】
ポリカーボネートポリオールは、ポリオール、例えば1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシクロヘキシル)プロパン及びネオペンチルグリコールとジカーボネート、例えばジメチル、ジエチル又はジフェニルカーボネート、又はホスゲンとの反応により製造されることができる。そのようなポリオールの混合物もまた使用されることができる。
【0028】
ポリオレフィンポリオールは一般的に、例えば好ましくは少なくとも2の末端ヒドロキシ基を有するオリゴマー状及びポリマー状のオレフィンから誘導され、アルファ,オメガ−ジヒドロキシポリブタジエンが好ましい。
【0029】
さらに、同様に適切であるジヒドロキシ化合物は、とりわけ、ポリアセタール、ポリシロキサン及びアルキド樹脂である。
【0030】
2以上のイソシアネート官能基を含むモノマー(II)はポリウレタン化学において慣用的に使用される任意のポリイソシアネートであり得る。適切なポリイソシアネートの例は、トリメチレンジイソシアネート,テトラメチレンジイソシアネート,ペンタメチレンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート,1,5−ジイソシアナート−2−メチルペンタン,1,12−ジイソシアナートドデカン,プロピレンジイソシアネート,エチルエチレンジイソシアネート,2,3−ジメチルエチレンジイソシアネート,1−メチルトリメチレンジイソシアネート,1,3−シクロペンチレンジイソシアネート,1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート,1,2−シクロヘキシレンジイソシアネート,1,3−フェニレンジイソシアネート,1,4−フェニレンジイソシアネート,2,4−トリレンジイソシアネート,2,6−トリレンジイソシアネート,4,4’−ビフェニレンジイソシアネート,1,5−ナフチレンジイソシアネート,1,4−ナフチレンジイソシアネート,1−イソシアナートメチル−5−イソシアナート−1,3,3−トリメチルシクロヘキサン,ビス(4−イソシアナートシクロヘキシル)メタン,2,2−ビス(4’−イソシアナートシクロヘキシル)プロパン,4,4’−ジイソシアナートジフェニルエーテル,2,3−ビス(8−イソシアナートオクチル)−4−オクチル−5−ヘキシルシクロヘキセン及びテトラメチルキシリレンジイソシアネートを含む。そのようなジイソシアネートの混合物もまた使用されることができる。
【0031】
モノマーI及びIIは、架橋官能基、好ましくはバインダー組成物を乾燥すると架橋性を与えるカルボニル基を含むことができる。適切なモノマーは先行技術において公知である。
【0032】
最終の分散物の良好なコロイドの安定性を得るという観点において、ポリウレタンマクロマーは、安定化モノマーIIIにより形成される親水性部分を含み、モノマーI及び/又は鎖ストッパーモノマーVにより形成される親水性部分を任意的に含むことが好ましい。可能なイオン的に及び/又は非イオン的に安定化させるモノマーIIIは親水性部分例えばカルボキシル基、3級アミン基又はポリオキシエチレン基を有し、かつモノマーI又はIIと反応できる少なくとも1の基、好ましくは2の基を有するモノマーである。好ましくは、イオン的に及び/又は非イオン的に安定化させるモノマー(III)は、イソシアネートに対して反応性のある少なくとも1の官能基、例えばヒドロキシル、アミン又はメルカプト基を含む。好ましくは、2つのイソシアネートと反応する基を含むモノマーIIIは、モノマーがポリウレタン鎖中に取り込まれることができるようなもの、好ましくは、イオン性及び/又は非イオン的に安定化させる基を含むジオールである。
【0033】
適切なイオン性の安定化基はカルボキシル基、ホスホノ基又はスルホ基である。モノマーのこのグループの例は、ジヒドロキシプロピオン酸,ジメチロール酪酸,ジメチロールプロピオン酸,ジヒドロキシエチルプロピオン酸,ジメチロール酪酸,2,2−ジヒドロキシコハク酸,酒石酸,ジヒドロキシ酒石酸,ジヒドロキシマレイン酸,ジヒドロキシ安息香酸,3−ヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロパンスルホン酸及び1,4−ジヒドロキシブタンスルホン酸である。これらのモノマーは、酸基がイソシアネート反応することを回避するために、反応の前に3級アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、又はトリフェニルアミンを使用して中和されることができる。任意的に、ポリウレタンマクロモノマーへの取り込みの後まで該酸基を中和しないことが可能である。安定化基は、カチオン性の基又はカチオンを生成する基、例えば(置換)アンモニウム基又はアミノ基であることも可能である。
【0034】
適切な、非イオン的に安定化させる基は、ポリアルキレンオキサイド基、例えばポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、又は混合されたポリエチレンオキシプロピレンオキシ基又はポリオキサゾリン基又はアルコキシレート化トリメチロールプロパン、例えばPerstorp製の製品Y−mer N120、エトキシレート化エタノールアミンである。適切なモノマーのさらなる例は、種々の反応性のジイソシアネート含有基とポリアルキレングリコールとの反応生成物であって、イソシアネート官能を示すものを、続いてこのイソシアネートをジアルカノールアミン、例えばジエタノールアミンと反応させることによる反応生成物である。
【0035】
グラフトモノマー(IV)は、モノマーI又はIIと反応する基を1つだけ有し、かつ1のビニル基を有する。グラフトモノマーIVは、ポリウレタンの形成において鎖ストッパーとして作用し、ビニルポリマーとグラフトする末端グラフト官能基を有するマクロマーを与える。ビニル基は、任意的にヘテロ原子例えば酸素又は窒素を有してもよい、さらなる(アラ)アルキル又はアリール基で置換されていても非置換でもあることもできる。
【0036】
モノマーIVの例は、モノビニルモノヒドロキシ化合物、例えばアクリル又はメタクリル酸のヒドロキシ官能エステル、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレートなどである。ヒドロキシ官能性モノマーとエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドとの付加物もまた使用されることができる。さらに、潜在的なヒドロキシ基を有するモノマー、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートもまた使用されることができる。
【0037】
他の適切なモノビニルモノヒドロキシ化合物もまた使用され得る。他の例はアミノ含有(メタ)アクリレート、モノエポキサイドとα,β不飽和カルボン酸との反応生成物、例えばバーサチック酸(versatic acid)グリシジルエステルと(メタ)アクリル酸との反応生成物、及びα,β−不飽和グリシジルエステル又はエーテルとモノカルボン酸との反応生成物、例えばグリシジルメタクリレートとステアリン酸又はリンシード脂肪酸の反応生成物である。
【0038】
少量の、ビニル含有モノマーI又はIIが存在して、ポリウレタン鎖に不飽和のグラフト可能な基を与えてもよい。これらのモノマーは鎖ストッパーではなく、従って定義下になく、モノマーIVとして勘定されることが理解されるべきである。そのようなモノマーの添加は、ゼロの、グラフト可能な不飽和基を有するマクロマーの量を減ずるのに有利であることができる。しかし、そのようなモノマーの量は、高すぎるべきではない、なぜなら、これはある程度、2以上のグラフト可能な基を有するモノマーの量を増加させる可能性があり、その量は50モル%未満に制限されるべきである。従って、ビニル含有モノマーI又はIIの量は、(マクロマー中のモノマーの総モル数に対して)好ましくは3モル%未満、好ましくは2モル%未満、より好ましくは1モル%未満である。適切なモノビニルジヒドロキシ化合物は、ビス(ヒドロキシアルキル)ビニル化合物、例えばグリセロールモノビニルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル及びグリセロールモノ(メタ)アクリレート,又はトリメチロールプロパンから誘導される対応する化合物である。さらなる例は、α、β不飽和カルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸とジエポキサイド、例えばビスフェノール(A)ジグリシジルエーテル及びヘキサンジオールジグリシジルエーテルの付加物;ジカルボン酸、例えばアジピン酸、テレフタル酸などとグリシジル(メタ)アクリレートとの付加物を含む。
【0039】
マクロマーが末端のヒドロキシ官能基を有する場合、適切なモノマーIVはイソシアネート官能性モノマーであり、例えばジメチルメタイソプロペニルベンジルイソシアネート(サイテックインダストリーズ製のm−TMI(商標)モノマー)、イソシアナートエチルメタクリレート(昭和電工製のカレンズMOI)又はヒドロキシ官能性モノマーとそのようなジイソシアネートとの付加物である。他の適切なモノマーIVは、アミノ官能性モノマー、例えばt−ブチルアミノメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートである。
【0040】
マクロマーが末端のイソシアネート基を有する場合、鎖ストッパーVは、原則、イソシアネートと反応する官能基を1つだけ有する任意の化合物、例えば、モノアルコール又はモノアミンであることができる。最も好ましくは、鎖ストッパーモノマーVは少なくとも4の炭素原子、最も好ましくは22以下の炭素原子を含む脂肪族モノアルコールである。特に、モノアルコール鎖ストッパー(V)は、直鎖又は分岐状のC1〜C22の脂肪族モノアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、ドデカノール、セチルアルコール、環式脂肪族又は芳香族アルコール、及びグリコールエーテルから選択されることができる。任意的に該モノアルコールは、イソシアネートと非反応性であるならば、追加の官能基を有することができ、例はヒドロキシアセトン、ジアセトンアルコール又はヒドロキシ酸及びヒドロキシエステルである。
【0041】
取り扱い及び続く縮合反応の間のビニルモノマーの時期尚早な及び/又は制御可能でない重合を防ぐために、阻害剤が混合物に添加されることができる。適切な添加剤の例はハイドロキノン、そのモノメチルエーテル、フェノチアジン、2,4−ジメチル−6−tert.−ブチルフェノール,2,6ジ−tert.−ブチル−4−メチルフェノールであるが、これらに限定されない。これらの阻害剤は使用されるモノマーの0.2%までの濃度で使用されることができる。
【0042】
ウレタンマクロモノマーは、ウレタン化学の慣用かつ公知の方法により製造される。これらの方法において、使用される触媒は、三級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、及びジアザビシクロオクタン、及びジアルキルチン(IV)化合物、例えばジブチルチンジラウレート、ジブチル−チン−ジクロライド及びジメチルチン−ジラウレートであり得る。マクロマーの合成は溶融物において溶媒なしで又は溶液において行われることができる。マクロマーが溶媒中で製造される方法を使用することが好ましい。使用される溶媒は有機溶媒又はイソシアネートに対して反応性である基を有しないエチレン性不飽和モノマーでありえる。該エチレン性不飽和モノマーは次のエマルジョン重合において共重合して溶媒フリーの分散物を生成するので、後者の方法が好ましい。適切な溶媒は、続いて行われる蒸留により又は水による移動除去(entrainment)により除去されることができるものである。例は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン及びキシレンを含む。これらの溶媒は、ポリウレタンマクロモノマーの製造の後又は遊離基重合の後、完全に又は部分的に蒸留除去され得る。
【0043】
上記の合成法により得られたマクロモノマーは、そのような基を含むモノマー中のイオン性基がより早期に中和されていなかった場合は、次に中和される。酸性の化合物の中和は好ましくは、アルカリ金属水酸化物の水性溶液を使用して、又はアミンで、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、トリフェニルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、又はジメチルイソプロパノールアミンで、又はアンモニアで行われる。さらに、中和はアミン及びアンモニアの混合物を使用して行われることもできる。他の適切な塩基もまた使用されることができる。アルカリ性化合物は、好ましくは無機酸、例えば塩酸又は硫酸、又は有機酸、例えば酢酸の水性溶液を使用して中和される。他の適切な酸もまた使用され得る。
【0044】
架橋可能なポリマーバインダー分散物の製造のために、ウレタンマクロマーは、水の添加により水性エマルジョンに転化される。(さらなる)ビニルモノマーの添加の後、マクロモノマーは遊離基エマルジョン重合により重合化される。ビニルポリマーは、種々のモノマー組成及び/又は種々の反応条件で、ビニルモノマーの独立した部分の添加により1以上の段階において重合化されることができる。ウレタンマクロマー:ビニル付加ポリマーの比は5:95〜95:5である。
【0045】
重合化の適切な開始剤は、公知の遊離基開始剤、例えばアンモニウムペルオキソジサルフェート、ペルオキソジ硫酸カリウム、ぺルオキソジ硫酸ナトリウム、及び過酸化水素である。有機過酸化物は、例えばクメン−ヒドロぺルオキサイド、t−ブチルヒドロぺルオキサイド、ジ−tert−ブチルぺルオキサイド、ジオクチルぺルオキサイド、tert−ブチルぺルピバレート、tert−ブチルペルイソノナノエート、tert−ブチルペルエチルヘキサノエート、tert−ブチルペルネオデカノエート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキソジカーボネート、ジイソトリデシルペルオキソジカーボネート及びアゾ化合物、例えばアゾビス(イソブチロニトリル)及びアゾビス(4−シアノバレリン酸)である。慣用のレドックス系、例えば亜硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、及びアスコルビン酸及び有機ぺルオキサイド又は過酸化水素もまた開始剤として適切である。さらに、調節剤(regulator)(チオール)、乳化剤、保護コロイド、及び他の慣用の助剤もまた添加されることができる。
【0046】
もし、マクロモノマーの製造が、蒸留により除去可能であり、かつ100℃未満の沸点を有する共沸混合物を水と形成する溶媒、例えばアセトン又はキシレン、中で行われたならば、この溶媒は最終的に蒸留により分散物から除去される。どの場合も、結果は水性のポリウレタン分散物である。
【0047】
架橋可能な基は、ビニルポリマー中のビニルモノマー上に、及び/又はマクロマー上に、好ましくはモノマーI,II上に、安定化モノマーIII上に、及び/又は鎖ストッパー(V)上にあることができる。バインダーは、フィルムを形成するとバインダー上の架橋可能な基と反応できる架橋する基を含む別の架橋剤で架橋されることができる。あるいは、バインダーは分子間的に及び/又は分子内的に、バインダー中の複数の架橋可能な基並びに複数の架橋する基を組み合わせることにより架橋可能である。架橋可能な基はビニル部分上に又はPURマクロマー部分にあることができ、ビニルポリマー及びマクロマーは架橋可能な基を含み、該架橋可能な基は異なっていてもよいが、好ましくは同じである。
【0048】
架橋可能な基(Ai)は、架橋剤上の又はバインダー自身上の架橋する基(Bi)と反応できる基である。ビニル上の架橋可能な基(Ai)は、それぞれアミン、ヒドロキシ、ケトン、アルデヒド、ウレア、及びオキシランからなるA1〜A6の群から選択されることができ、対応する架橋する基(Bi)は、B1はオキシラン、イソシアネート、ケトン、アルデヒド及びアセトアセトキシであり、B2はメチロール、エーテル化されたメチロール、イソシアネート、及びアルデヒドであり、B3はアミノ、ヒドロキシド、及びアルデヒドであり、B4はアミノ及びヒドロキシドであり、B5はクリオキサール(clyoxal)であり、B6はカルボン酸、アミノ及びチオールである群B1〜B6から選択される。好ましくは、バインダー上の架橋可能な基はカルボニル官能基であり、架橋する基はヒドラジド官能性の架橋する基であり、好ましくは別の架橋剤上にある。カルボニル官能基は、カルボニル基及びケトンアルデヒド基を含む。ヒドラジド官能基は、ヒドラジン、ヒドラジド又はヒドラゾン基を含む。
【0049】
ポリウレタンマクロマーにおいて、架橋可能な基は、好ましくはケトン、アルデヒド、ウレア及び/又はオキシラン基であり、モノマーI〜Vの1つの上にあってもよく、又はポリウレタンモノマーを構成するその他のモノマーのいずれかと反応できる別のモノマー上にあってもよい。そのようなモノマーの例は、先行技術において公知である。架橋する基は、安定化モノマーIIIの安定化基であることもできる。例えば、モノマーIIIの安定化基がカルボン酸基である場合、バインダーは、フィルム形成すると別の架橋剤又はバインダー上のエポキサイド架橋基と架橋されることができる。また、鎖ストッパーV及びビニルポリマーも両方とも架橋する基、例えばカルボニルを含み得る。
【0050】
好ましくは、バインダーのビニルポリマー部分は、架橋可能な基を含む。カルボニル官能基を有する適切なビニルモノマーは、ヒドロキシアルキルアクリレート及びメタクリレートのアセトアセトキシエステル、例えばアセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリルアミド及びケト含有アミド、例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクロレイン、ホルミルスチレン、2−ヒドロキシエチルメタクリレートアセトアセテート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−アクリレートアセチルアセテート又はビニルアルキルケトン、例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン又はビニルブチルケトンから選択されることができるが、これらに限定されない。
【0051】
ヒドラジド官能性を有する化合物は一般的に、2以上のヒドラジン、ヒドラジド又はヒドラゾン基を含む。該化合物は、好ましくは<1000グラム/モルの数平均分子量(Mn)を有し、脂肪族、芳香族又は脂肪族/芳香族化合物の混合物及びそれらの混合物であることができる。そのような化合物の例は、2〜12の炭素原子を有するジカルボン酸のビスヒドラジド、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、又は異性体のフタル酸のビスヒドラジド、炭酸ビスヒドラジド、アルキレン又はシクロアルキレン−ビス−セミカルバジド、N,N’−ジアミノグアニジン、アルキレンビスヒドラジン、例えばN,N’−ジアミノピペラジン、アリーレンビスヒドラジン、例えばフェニレン又はナフチレンビスヒドラジン、アルキレンビスセミカルバジド、及びジアルデヒド及びジケトンのビスヒドラジドである。より高次の官能性の化合物(F)は、例えばニトリロ三酢酸又はエチレンジアミン四酢酸のヒドラジドである。
【0052】
本発明は、本発明に従うバインダー又は該バインダーを含む水性分散物をコーティング組成物又は接着剤の製造に使用する方法にもまた関する。本発明は特に該バインダー又は本発明に従うバインダーを含む水性分散物を含み、さらに1以上の通常のコーティング添加剤を含むコーティング組成物にもまた関する。
【0053】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明される。
【実施例】
【0054】
実施例1
以下の成分が、機械的撹拌装置、コンデンサー、及び滴下ロートを装着された2リットルの3ツ口フラスコに秤量された。フラスコの内容物は均一な混合物が得られるまで、酸素散布下、60℃に加熱された。

n−ドデカノール 139.8グラム
ポリカプロラクトンジオール* 412.5グラム
ジメチロールプロピオン酸 100.5グラム
ヒドロキシエチルメタクリレート 97.50グラム
2,6ジter.ブチル−4−メチルフェノール 3.57グラム
酸価(mgKOH/g)<0.5,分子量=550,OH価(mgKOH/g)=204 Solvay Interox製のCAPA 200)
【0055】
次に、500.2グラムのイソホロンジイソシアネートが1時間の期間に亘ってフラスコに投与された。温度は、添加の間、85℃を超えてはならない。反応は80℃において、残存イソシアネートの量が0.3%未満になるまで続けられる。反応混合物は60℃まで冷却されて、535.9グラムのn−ブチルアクリレートが添加される。溶液は室温まで冷却されて分析される。約70%の固形分におけるn−ブチルアクリレート中の重付加ポリマーの透明な溶液は、6.5Pa.sの粘度、23.2mgKOH/gの酸価、及び35APHAの色を有していた。分子量はゲル浸透クロマトグラフィーにより、ポリスチレン標準に対して溶出液として2%の酢酸とTHFとの混合物を使用してPLゲル5μmMIXED−Cカラム上で測定され、Mn:2067及びMw:4593であった。
【0056】
4つのブレードのスターラー、コンデンサー及びモノマー、開始剤、及び他の助剤の添加のための入口を装着された3リットルの二重ジャケットのガラス反応器に、上で製造されたポリマー溶液341.2グラムが充填された。この溶液に25%の濃度の水酸化アンモニウムの水性溶液9.79グラムが添加された。反応器の内容物は、窒素ブランケットの下で40℃に加熱され、1323グラムの脱ミネラル水が撹拌下添加され、重付加ポリマー及びn−ブチルアクリレートの水中エマルジョンを生成した。このエマルジョンに180.9グラムのメチルメタクリレート、173グラムのn−ブチルアクリレート及び19.05グラムのジアセトンアクリルアミドからなるモノマー混合物が添加された。エマルジョンは30分間撹拌され、三級ブチルハイドロパーオキサイドの70%の濃度の水溶液0.90グラムが添加された。0.01グラムの硫酸鉄8水和物、0.01グラムのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、及び3.13グラムの脱ミネラル水の溶液が調製された。この溶液が反応器に添加された。次に、62.65グラムの脱ミネラル水中におけるイソアスコルビン酸0.63グラムの溶液が該反応器に30分の期間に亘って添加された。反応混合物の温度は63℃に上昇した。粘度を下げるために105グラムの脱ミネラル水が反応器に添加された。次に、180.9グラムのメチルメタクリレート、276.2グラムのn−ブチルアクリレート及び19.05グラムのジアセトンアクリルアミドからなる第二のモノマー混合物が反応器に添加され、続いて1000グラムの脱ミネラル水が添加された。反応器に三級ブチルハイドロパーオキサイドの70%の濃度の水溶液0.90グラムが添加された。0.01グラムの硫酸鉄8水和物、0.01グラムのエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01グラム、及び3.13グラムの脱ミネラル水の溶液が調製された。この溶液が反応器に添加された。次に、62.65グラムの脱ミネラル水中におけるイソアスコルビン酸0.63グラムの溶液が該反応器に30分の期間に亘って添加された。反応混合物の温度は添加の間、60℃に保たれた。イソアスコルビン酸溶液の添加後、反応器の内容物はさらに30分間60℃に保たれた。次に、バッチは、40℃に冷却され、23.80グラムのアジピン酸ビスヒドラジドが添加された。入口は、20グラムの脱ミネラル水ですすがれ、反応器の内容物はさらに30分間40℃に保たれた。次に、バッチは環境温度に冷却されて、ろ過された。
【0057】
得られた生成物は、30%の固形分及び7のpHを有する微細な粒子サイズ(Z平均中央直径(Z average mean diameter)85nm)の分散物であった。該分散物がガラス板の上に引き降ろされたとき、それは乾燥して高い透明性を有する、透き通った硬いフィルムになった。
【0058】
実施例2
ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、アジピン酸に基づくポリエステルであって2680の重量平均分子量、67のヒドロキシル価及び2.6の酸価を有するポリエステル246グラムが、機械的撹拌機、コンデンサー、及び滴下ロートを装着された2リットルの3ツ口フラスコに秤量された。この反応器に10.9グラムのヘキサンジオール、23グラムのジメチロールプロピオン酸、13.5グラムのドデシルアルコール、9.43グラムのヒドロキシエチルメタクリレート、60グラムのメチルメタクリレート及び10.7グラムの2,6ジ−ターシャリーブチル−4−メトキシフェノールが添加された。該混合物は、均一な混合物が得られるまで、酸素散布下、50℃まで加熱された。次に、115.2グラムのイソホロンジイソシアネートが1時間の期間に亘ってフラスコに添加された。温度は80℃まで上昇することを許された。フラスコの内容物は、残余のイソシアネート含有量が0.1%未満になるまで80℃に保たれた。
【0059】
反応混合物は70℃まで冷却され、57.3グラムのメチルメタクリレートに溶解された16グラムのジアセトンアクリルアミドがフラスコに添加された。混合物が均一になった後、11.4グラムのジメチルエタノールアミンがフラスコに添加された。均一化の後、658グラムの脱ミネラル水が1時間の期間に亘って、激しい撹拌下、添加されて、ポリウレタンを乳化した。乳化の間、温度は70℃に保たれた。エマルジョンは80℃に加熱されて、0.8グラムのターシャリーブチルヒドロぺルオキサイド(70%の濃度)がエマルジョンに添加された。30分の保留期間の後、130グラムの脱ミネラル水に溶解された1.3グラムのイソアスコルビン酸の溶液が90分で添加された。ポリマーの分散物は65℃に冷却されて、8.2グラムのアジピンジヒドラジドがポリマー分散物に添加された。分散物はさらに30分間65℃に保たれた。次に、バッチは30℃に冷却され、ろ過された。得られたウレタンアクリル分散物は40.1%の固形分、7.4のpH,及び81nmの粒子サイズを有していた(マルバーンのゼータサイザー)。
【0060】
実施例3
ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、アジピン酸に基づくポリエステルであって2680の重量平均分子量、67のヒドロキシル価及び2.6の酸価を有するポリエステル378.4グラムが、機械的撹拌機、コンデンサー、及び滴下ロートを装着された2リットルの3ツ口フラスコに秤量される。この反応器に209.2グラムのヘキサンジオール、75.6グラムのジメチロールプロピオン酸、60.37グラムのドデシルアルコール、42.2グラムのヒドロキシエチルメタクリレート、271.2グラムのメチルメタクリレート及び3.3グラムの2,6ジ−ターシャリーブチル−4−メトキシフェノールが添加された。該混合物は、均一な混合物が得られるまで、酸素散布下、50℃まで加熱された。次に、634.2グラムのイソホロンジイソシアネートが1時間の期間に亘ってフラスコに添加された。温度は80℃まで上昇することを許された。フラスコの内容物は、残余のイソシアネート含有量が0.1%未満になるまで80℃に保たれた。
【0061】
反応混合物は70℃まで冷却され、105.5グラムのメチルメタクリレートに溶解された52.73グラムのジアセトンアクリルアミドがフラスコに添加された。混合物が均一になった後、混合物は冷却され、保存のために適切な容器に注がれる。上記のポリウレタン698.9グラムに14.33グラムのジメチルエタノールアミンが2リットルの3ツ口フラスコにおいて添加された。均一化の後、822.5グラムの脱ミネラル水が1時間の期間に亘って、激しい撹拌下、添加されて、ポリウレタンを乳化した。乳化の間温度は70℃に保たれた。エマルジョンは80℃に加熱されて、1.0グラムのターシャリーブチルヒドロぺルオキサイド(70%の濃度)がエマルジョンに添加された。30分の保留期間の後、162.5グラムの脱ミネラル水に溶解された1.625グラムのイソアスコルビン酸の溶液が90分で添加された。ポリマーの分散物は65℃に冷却されて10.25グラムのアジピンジヒドラジドがポリマー分散物に添加された。分散物はさらに30分間65℃に保たれた。次に、バッチは30℃に冷却され、ろ過された。得られたウレタンアクリル分散物は41.6%の固形分、7.6のpH,及び98nmの粒子サイズを有していた(マルバーンのゼータサイザー)。
【0062】
比較例4(米国特許第5,623,016号に従う)
ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、アジピン酸に基づくポリエステルであって2680の重量平均分子量、67のヒドロキシル価及び2.6の酸価を有するポリエステル246グラムが、機械的撹拌機、コンデンサー、及び滴下ロートを装着された2リットルの3ツ口フラスコに秤量される。この反応器に10.9グラムのヘキサンジオール、23グラムのジメチロールプロピオン酸、18.9グラムのヒドロキシエチルメタクリレート、及び1.07グラムの2,6ジ−ターシャリーブチル−4−メトキシフェノールが添加された。該混合物は、均一な混合物が得られるまで、酸素散布下、50℃まで加熱された。次に、115.2グラムのイソホロンジイソシアネートが1時間の期間に亘ってフラスコに添加された。温度は80℃まで上昇することを許された。フラスコの内容物は、残余のイソシアネート含有量が0.1%未満になるまで80℃に保たれた。
【0063】
反応混合物は70℃まで冷却され、117.3グラムのメチルメタクリレートに溶解された16グラムのジアセトンアクリルアミドがフラスコに添加された。混合物が均一になった後、11.4グラムのジメチルエタノールアミンがフラスコに添加された。均一化の後、658グラムの脱ミネラル水が1時間の期間に亘って、激しい撹拌下、添加されて、ポリウレタンを乳化した。乳化の間、温度は70℃に保たれた。エマルジョンは80℃に加熱されて、0.8グラムのターシャリーブチルヒドロぺルオキサイド(70%の濃度)がエマルジョンに添加された。30分の保留期間の後、130グラムの脱ミネラル水に溶解された1.3グラムのイソアスコルビン酸の溶液が90分で添加された。ポリマーの分散物は65℃に冷却されて8.2グラムのアジピンジヒドラジドがポリマー分散物に添加された。分散物はさらに30分間65℃に保たれた。次に、バッチは30℃に冷却され、ろ過された。得られたウレタンアクリル分散物は40.4%の固形分、7.6のpH,及び163nmの粒子サイズを有していた(マルバーンのゼータサイザー)。
【0064】
実施例5
ウレタン−アクリルハイブリッドの塗料評価
実施例3及び比較例4のウレタン−アクリル分散物100グラムずつを、NuvisFX1010(エレメンツ製)の10%溶液2グラムと、水/ブチルグリコール混合物(75/25)において混合することによりニスが配合された。23℃において乾燥したとき、亀裂のない透明なフィルムを得るのに十分な量のブチルグリコールが添加された。7日間の乾燥後、フィルムの硬度がペルソー(ISO1522)に従って測定された。結果は表1に与えられる。
【表1】

【0065】
アクリロイル官能性ポリウレタンの存在に基づく架橋の程度は比較例4の場合の2倍であるが、実施例3に基づくニスの硬度は比較例4に基づくものより有意に高い。
【0066】
ニスは木のベニヤのパネル(30〜35ミクロンの乾燥層厚さ)に噴霧により施与され、23℃において7日間乾燥された。ドイツ標準DIN68861パート1Bに従う化学耐性が表2に与えられる。
【表2】

汗及び唾液に対する耐性は、DIN53160に従って同じパネルについて測定された。

実施例6〜8
【0067】
上記の概要の方法に従って製造されているが、原料の組成は表3に与えられたものであるところの、ポリウレタンのたくさんのアクリルモノマー溶液。
【表3】

【0068】
ポリウレタンの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定された(溶出液としてTHF,ポリスチレン標準に対して)
見出された値は表4に与えられている。
【表4】

実施例9〜11
【0069】
ウレタン−アクリル分散物が、実施例6〜8のポリウレタン溶液を使用して実施例2及び3に記載されたルートに沿って合成された。原料の組成は表5に与えられる。
【表5】

【0070】
得られたウレタン−アクリル分散物が同定された。見出された値は表6に与えられる。
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンマクロマー及びその上にグラフトされたビニルポリマーを有する架橋可能なポリマーバインダーにおいて、該マクロマーは以下、
I 2以上のヒドロキシ官能基を有するモノマー(I)、
II 2以上のイソシアネート基を有するモノマー(II)、
III イオン的に及び/又は非イオン的に安定化させる基を有する安定化モノマー(III)、
IV モノマーI又はIIと反応する基を1つだけ有し、かつ1つのビニル基を有するグラフトモノマー(IV)、
V モノマーI又はIIと反応する基を1つだけ有する鎖ストッパーモノマー(V)、
ここでマクロマーの少なくとも30モル%はグラフトモノマーIVを1つだけ有し、マクロマーの50モル%未満は2以上のグラフトモノマーIVを有し、ビニルポリマーはグラフトモノマーIVのビニル基に結合され、ビニルポリマー及び/又はマクロマーは架橋可能な基を有する、
を反応させることにより製造されたものであるところの前記架橋可能なポリマーバインダー。
【請求項2】
ポリウレタンマクロマーは直鎖状であり、モノマー(I)は2つのヒドロキシ官能基を有し、かつモノマー(II)は2つのイソシアネート官能基を有する、請求項1に記載のバインダー。
【請求項3】
モノマーIV:モノマーVのモル比が0.5:1〜2:1、好ましくは0.75:1〜1.25:1である、請求項1又は2に記載のバインダー。
【請求項4】
マクロマーが(GPCにより測定されて)3,000グラム/モル以上、かつ好ましくは、50,000グラム/モル以下の重量平均分子量を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項5】
モノマーIIは、モノマーI及びIII中のイソシアネートと反応する基に対してモル過剰のイソシアネート基を提供するような量で、好ましくは、イソシアネートで末端停止されたマクロマーを形成するのに十分な量で存在し、モノマーIV及びVはイソシアネートと反応する基を1つだけ含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項6】
2以上のグラフトモノマーを有するマクロマーの数は35モル%以下、好ましくは30モル%以下であり、グラフトモノマーを有さないマクロマーの数は35モル%以下、好ましくは30モル%以下であり、かつ1つのみのグラフトモノマーを有するマクロマーの数は20〜80モル%、好ましくは40〜60モル%である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項7】
鎖ストッパーVが、4〜22の炭素原子を有する脂肪族モノアルコールである、請求項1〜6にいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項8】
ジオールモノマーがポリエステルジオール又はポリカプロラクトンポリオールである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項9】
架橋可能な基がカルボニル官能基である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のバインダー。
【請求項10】
別の架橋剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のバインダーを含む水性分散物。
【請求項11】
1)
I 2以上のヒドロキシ官能基を含むモノマー(I)、
II 2以上のイソシアネート官能基を含むモノマー(II)、
III イオン的に及び/又は非イオン的に安定化させる基を含む安定化モノマー(III)、
IV モノマーI又はIIと反応する基を1つだけ有し、かつ1つのビニル基を有するグラフトモノマー(IV)、
V モノマーI又はIIと反応する基を一つだけ有するストッパーモノマー(V)
ここで、グラフト成分IVの量に対するモノアルコール鎖ストッパーモノマーVの量は、マクロマーの少なくとも30モル%がグラフトモノマーIVを1つだけ有し、かつマクロマーの50モル%未満が2以上のグラフトモノマーIVを有するように選択される、
を反応させることによりマクロマーを形成する段階、
2)段階1の前、間、又は後にビニルモノマー及び好ましくは阻害剤を添加する段階、
3)得られた反応生成物を中和する任意的な段階、
4)得られた反応生成物を水に乳化させる段階、
5)乳化後、ラジカル開始剤を添加して、ビニルモノマーを反応させる段階、
ここで該ビニルポリマー及び/又はマクロマーは架橋可能な基を含む、
を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のバインダーを製造する方法。
【請求項12】
段階1において形成されたマクロマーの少なくとも50%が、グラフトモノマーIVを1つだけ有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
反応段階1が、反応溶媒として段階2のビニルモノマー及び/又はモノアルコールモノマーVを使用して、好ましくは追加の溶媒の使用なしに行われる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
段階2におけるビニルモノマーが、ビニルモノマーの異なる組成を有する少なくとも2に分けて添加される、請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ビニルモノマーが段階1においてマクロマーを形成する前及び後に添加される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のバインダー又は請求項10に記載の水性分散物を含むコーティング組成物。
【請求項17】
コーティング組成物又は接着剤の製造のために、請求項1〜9のいずれか1項に記載のバインダー又は請求項10に記載の水性分散物を使用する方法。

【公表番号】特表2012−511610(P2012−511610A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540127(P2011−540127)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067001
【国際公開番号】WO2010/066902
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(505396349)ヌプレクス レジンズ ビー.ブイ. (13)
【Fターム(参考)】