説明

架橋可能な熱可塑性ポリウレタン

本発明のTPUは、そのポリマー骨格に不飽和を含む。その不飽和は、TPUの軟質セグメントに、または硬質セグメントに、または軟質および硬質セグメントの両方に存在し得る。そのTPUは、熱可塑性物質のように成形され得、そして続いて架橋され得る。1つの実施態様において、本発明のTPUは、(1)末端ヒドロキシル化中間体、(2)ポリイソシアネート、(3)飽和グリコール鎖延長剤、および(4)炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤の反応生成物である。本発明の別の実施態様において、電子ビーム照射によって架橋可能な、熱可塑性ポリウレタンは、(1)飽和末端ヒドロキシル化中間体、(2)不飽和末端ヒドロキシル化中間体であって、ここでその不飽和末端ヒドロキシル化中間体は、炭素−炭素二重結合を含む末端ヒドロキシル化中間体、(3)ポリイソシアネート、および(4)飽和グリコール鎖延長剤の反応生成物から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形、吹込み成形、押出成形によって有用な物品に形成され得、そして続いて架橋され得る、熱可塑性ポリウレタン(TPU)組成物に関連する。1つの実施態様において、TPUの架橋を、重合されてTPUになる架橋可能な部分を、電子ビーム照射に曝露することによって行う。優れた耐薬品性、寸法安定性、歪み特性(set properties)、耐熱性、耐酸化性、および耐クリープ性を有する熱硬化性物品が、架橋されたTPUから形成される。
【背景技術】
【0002】
TPU(熱可塑性ポリウレタン)は、現在、射出成形および押出成形のような様々な溶融加工技術によって、多くの適用のための広く様々な製品の製造において使用されている。例えば、TPUは、シール、ガスケット、カテーテル、ワイヤー、およびケーブルの作製において通常使用される。そのようなTPUは、典型的には、(1)末端ヒドロキシル化ポリエーテルまたは末端ヒドロキシル化ポリエステル、(2)鎖延長剤、および(3)イソシアネート化合物を反応させることによって作製される。3つの反応物それぞれの、様々なタイプの化合物が、文献において開示されている。そのようなTPUは、軟質セグメントおよび硬質セグメントを有する、セグメント化ポリマーである。この特徴が、その優れた弾性を例示する。その軟質セグメントは、末端ヒドロキシル化ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリカプロラクトンに由来し、そしてその硬質セグメントは、イソシアネートおよび鎖延長剤に由来する。その鎖延長剤は、典型的には、1,4−ブタンジオールのような、様々なグリコールの1つである。例えば、特許文献1は、末端ヒドロキシル化ポリエーテル、グリコール鎖延長剤、およびジイソシアネートから作製されたTPUを開示する。このTPUは、繊維、ゴルフボールの芯、レクリエーション用車(recreational wheel)を作製するために、および他の使用のために有用であると記載されている。
【0003】
多くの適用において、物品の製造において利用されるTPUが、良い耐薬品性、寸法安定性、歪み特性、耐熱性、耐酸化性、および耐クリープ性を示すことが望ましい、または決定的でさえある。これらの物理的および化学的特徴は、化学物質、溶媒、および/または高い温度にさらされる物品において重要である。例えば、通常、工業的適用において使用されるシール、ガスケット、ワイヤー、およびケーブルが、これらの望ましい特徴を有することが重要である。これは、TPUで作製された部品が、高い温度およびガソリンおよびモーターオイルのような有機液体によくさらされ得る、自動車のフード下での適用において特にあてはまる。例えば、自動車の適用において使用される点火プラグワイヤーおよび他のワイヤーは、油および熱の両方に耐性である必要がある。内燃機関、重機、電気製品、および無数の他の適用において使用されるシールおよびガスケットも、熱および溶媒に耐性である必要がある。
【0004】
熱可塑性ポリマーを、熱硬化性ネットワークへ架橋させることは、耐薬品性、寸法安定性、歪み特性、耐熱性、耐酸化性、および耐クリープ性を改善するための、1つの公知の技術である。しかし、熱硬化性樹脂は、射出成形、吹込み成形、および押出成形のような、標準的な溶融加工技術を用いて加工できない。一般的に、熱硬化性物質を、より労働集約的な、時間のかかる、そして高価な硬化技術によって、望ましい形に成形させ、そして型の形に硬化させる。さらに、不完全な熱硬化性部品およびスクラップは、熱可塑性物質のようにリサイクルおよび再成形できない。これは、ポリマー廃棄物を生じ、それはまた全体的なコストを追加し、そして有害な環境への影響を有する。
【0005】
射出成形、吹込み成形、押出成形等によって、望ましい形へ溶融加工され、そして次いで架橋されて熱硬化性ネットワークになり得るTPUに対する必要性が存在する。もちろん、その熱硬化性ネットワークが、良好な耐薬品性、耐溶媒性、および耐熱性を示すことが重要であり、それは良好な寸法安定性、歪み特性、耐酸化性、および耐クリープ性によって特徴付けられる。そのようなTPUを、改善した化学的および物理的特徴を有する、広い範囲の構成部品および製造物品において有利に使用し得る。例えば、そのようなポリマーは、改善した耐薬品性、耐溶媒性、および耐熱性を有する、シール、ガスケット、ワイヤー、ケーブル、ホース、パイプ、チューブ、ならびに他の工業的および消費製品の製造において有利に利用され得る。よって、熱可塑性物質のように有用な物品へ成形され得るが、熱硬化性TPUの望ましい物理的および化学的性質を有するTPU組成物に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,959,059号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のTPUは、そのポリマー骨格に少量の不飽和を含み、熱可塑性物質のように成形され得、そして続いて電子ビーム照射への曝露によって、優れた耐薬品性、寸法安定性、歪み特性、耐熱性、耐酸化性、および耐クリープ性を有する熱硬化性物品へ架橋され得る。本発明のTPUは、(1)末端ヒドロキシル化中間体、(2)ポリイソシアネート、(3)飽和グリコール鎖延長剤、および(4)炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤の反応生成物である。
【0008】
本発明はさらに、成形物品を製造するプロセスを開示し、それは(a)熱可塑性ポリウレタン組成物を、その熱可塑性ポリウレタン組成物の融点より高い温度に加熱する工程であって、ここでその熱可塑性ポリウレタン組成物は、(1)末端ヒドロキシル化中間体、(2)ポリイソシアネート、(3)飽和グリコール鎖延長剤、および(4)炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤、の反応生成物から成る、工程;(b)その熱可塑性ポリウレタン組成物を、型へ注入する工程;(c)その型中の熱可塑性ポリウレタン組成物を、その熱可塑性ポリウレタン組成物の融点より低い温度に冷却して、成形物品を生成する工程;(d)その成形物品を型から取り出す工程;および(e)その成形物品を電子ビーム照射に曝露して、その熱可塑性ポリウレタン組成物を架橋させて熱硬化性物質にする工程を含む。
【0009】
本発明はまた、熱硬化性チューブを製造するプロセスを明らかにし、それは(a)熱可塑性ポリウレタン組成物を、その熱可塑性ポリウレタン組成物の融点より高い温度に加熱する工程であって、ここでその熱可塑性ポリウレタン組成物は、(1)末端ヒドロキシル化中間体、(2)ポリイソシアネート、(3)飽和グリコール鎖延長剤、および(4)炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤の反応生成物から成る、工程;(b)その熱可塑性ポリウレタン組成物を、熱押出成形チューブへ押出成形する工程;(c)その熱押出成形チューブを、その熱可塑性ポリウレタン組成物の融点より低い温度に冷却して、未硬化押出成形チューブを生成する工程;および(d)その未硬化押出成形チューブを、電子ビーム照射に曝露して、その熱可塑性ポリウレタン組成物を架橋させて熱硬化性物質にし、そして熱硬化性チューブを生成する工程を含む。
【0010】
本発明はさらに、コーティングされた電線を製造するためのプロセスを開示し、それは(a)金属ワイヤーを、管型クロスヘッドダイに通す工程;(b)(1)末端ヒドロキシル化中間体、(2)ポリイソシアネート、(3)飽和グリコール鎖延長剤、および(4)炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤の反応生成物から成る、熱可塑性ポリウレタン組成物を、金属ワイヤーを囲むチューブに押出成形する工程であって、ここでワイヤーが管型クロスヘッドダイを出る速度より遅い速度で管型クロスヘッドダイを出る、工程;(c)管型クロスヘッドダイを出るときに、熱可塑性ポリウレタン組成物のチューブが、ワイヤーに向かって縮小ように、ダイキャビティを減圧して、未硬化のコーティングを有するワイヤーを生成する工程;および(d)その未硬化のコーティングを有するワイヤーを、電子ビーム照射に曝露して、熱可塑性ポリウレタン組成物を架橋させて熱硬化性物質にし、そしてコーティングされた電線を生成する工程を含む。
【0011】
本発明の別の実施態様において、二重結合を含む末端ヒドロキシル化中間体をポリマー骨格へ重合させることによって、二重結合を、熱可塑性ポリウレタン組成物に組込む。よって本発明はさらに、電子ビーム照射によって架橋可能な熱可塑性ポリウレタンを明らかにし、ここでその熱可塑性ポリウレタンは、(1)飽和末端ヒドロキシル化中間体、(2)不飽和末端ヒドロキシル化中間体、ここでその不飽和末端ヒドロキシル化中間体は、炭素−炭素二重結合を含む、(3)ポリイソシアネート、および(4)飽和グリコール鎖延長剤の反応生成物から成る。
【0012】
本発明のさらなる実施態様において、二重結合を含む末端ヒドロキシル化中間体および二重結合を含むグリコール鎖延長剤の両方を少量用いることによって、二重結合を熱可塑性ポリウレタンに組込む。この実施態様において、電子ビーム照射によって架橋可能なTPUは、(1)飽和末端ヒドロキシル化中間体、(2)不飽和末端ヒドロキシル化中間体、ここでその不飽和末端ヒドロキシル化中間体は炭素−炭素二重結合を含む、(3)飽和グリコール鎖延長剤、(4)炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤、および(5)ポリイソシアネートの反応生成物から成る。この実施態様は、TPUポリマーの硬質および軟質セグメントの両方において、架橋が起こることを可能にする。
【0013】
本発明のTPU組成物は、改善された耐薬品性、寸法安定性、歪み特性、耐熱性、耐酸化性、および/または耐クリープ性から利益を得る物品を生成するのに使用する場合に特に有用である。これらの架橋可能なTPUを、例えば難燃性物品および複合構造物の製造において利用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明のTPUは、添付の図面において図解された装置を用いて、電線をコーティングするために利用され得る。
【図1】図1は、本発明の1つの実施態様によって金属のワイヤーをコーティングするために使用され得る装置の斜視的、部分的、および図式的な図である。
【図2】図2は、図1の線2−2に沿って見た管型クロスヘッドダイの断面図である。
【図3】図3は、コーティングされたワイヤーが出てくるダイの端部を示す、図3で図解された管型クロスヘッドダイの端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、その骨格に不飽和を含み、それは架橋を形成するために反応して熱硬化性ネットワークを生成し得る。炭素−炭素二重結合を含むグリコールを、鎖延長剤の一部としてポリマーに組込むことによって、この不飽和を導入する、または末端ヒドロキシル化中間体が、炭素−炭素二重結合を有し得る。いくつかの実施態様において、鎖延長剤(硬質セグメントの成分)および末端ヒドロキシル化中間体(軟質セグメントの成分)の両方が、二重結合を有する。これは、TPUの硬質および軟質セグメントの両方で架橋が起こることを可能にする。炭素−炭素二重結合を含むこれらのグリコール鎖延長剤は、典型的にはトリメチロールプロパンモノアリルエーテルに存在するもののような、アリル部分の形態である。いずれの場合も、電子ビームで照射された場合、TPU内の炭素−炭素二重結合が反応して、TPUの異なるポリマー鎖間で架橋を生じ、従って架橋された熱硬化性物質を生成する。TPUの硬化に使用される架橋は、電子ビーム照射、ガンマ線、紫外光(比較的透明なポリマー調合物の場合)への曝露によって、または脂肪族および芳香族過酸化物、アゾ化合物、光開始剤等のような化学的フリーラジカル発生物質によって生成し得る。
【0016】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、(1)末端ヒドロキシル化中間体、(2)ポリイソシアネート、および(3)飽和グリコール鎖延長剤、および(4)炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤の反応生成物であり得る。これらの反応物を重合して熱可塑性ポリウレタンを合成する技術を、従来の装置、触媒、および手順を利用して行う。しかし、その重合を、望ましいポリマーの特徴および必要な分子量を生じる方式で行う。末端ヒドロキシル化中間体、ポリイソシアネート、および飽和グリコール鎖延長剤のタイプおよびレベルを、合成するポリマーの化学的および物理的特徴の望ましいセットを達成するために調整する。よって、本発明のTPUを作製するために利用される重合技術は、炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤で、通常ポリマーを作製するために使用される飽和グリコール鎖延長剤の一部を置き換えるという事実以外は、従来のものである。
【0017】
熱可塑性ポリウレタンを作製するために使用される末端ヒドロキシル化中間体(軟質セグメントの成分)は、末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体、末端ヒドロキシル化ポリエステル中間体、末端ヒドロキシル化ポリカーボネート中間体、末端ヒドロキシル化ポリカプロラクトン中間体、およびその混合物である。結晶化を阻害するために、その末端ヒドロキシル化中間体は、(1)分枝状グリコール由来の反復ユニットから成り得る、または(2)ランダムコポリエーテルまたはランダムコポリエステルである。例えば、2つの異なるアルキルジオールまたはグリコールを、アルキレン酸化物と反応させることによって、末端ヒドロキシル化ランダムコポリエーテル中間体が合成され得る。代替案において、そのアルキルジオールまたはグリコールは、結晶化を阻害するために分枝状であり得る。
【0018】
末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体を作製するのに使用されるアルキルジオールまたはグリコールは、典型的には2から12個の炭素原子を含み、そしてアルキレン酸化物は、典型的には2から6個の炭素原子を含む。末端ヒドロキシル化ポリエステル中間体を作製するのに使用され得るグリコールは、脂肪族、芳香族、またはその組み合わせであり得、そして通常全部で2から8個の炭素原子を含み得る。使用され得るグリコールのいくつかの代表的な例は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール等を含む。いくつかの適当なグリコールは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオールおよび1,4−ブタンジオールを含む。エチレンオキシドおよびプロピレン酸化物は、ヒドロキシル官能性ポリエーテル中間体を合成するのに使用され得るアルキレン酸化物の代表的な例である。
【0019】
本発明の実施において有用であるヒドロキシル官能性ランダムコポリエーテル中間体は、まずプロピレングリコールをプロピレン酸化物と反応させ、続いてエチレンオキシドと反応させることによって生成され得る。これは、ポリ(プロピレン−エチレン)グリコールの形成を引き起こす。さらなる有用なヒドロキシル官能性ポリエーテルポリオールのいくつかの代表的な例は、ポリ(エチレン)グリコール、ポリ(プロピレン)グリコール、およびポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール等を含む。ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールは、本発明の熱可塑性ポリウレタンを作製するのに使用するために適当なヒドロキシル官能性ポリエーテルポリオールである。
【0020】
末端ヒドロキシル化ランダムコポリエステル中間体は、(1)2つの異なるアルキルジオールまたはグリコールと、1つ以上のジカルボン酸または酸無水物とのエステル化反応、または(2)2つの異なるアルキルジオールまたはグリコールと、1つ以上のジカルボン酸のエステルとのエステル交換反応によって合成され得る。代替案において、そのアルキルジオールまたはグリコールは、末端ヒドロキシル化コポリエステル中間体の結晶化を阻害するために分枝状であり得る。
【0021】
末端ヒドロキシル化ポリエステル中間体を作製するのに使用されたジオールまたはグリコールは、末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体を合成するのに使用され得るジオールまたはグリコールと同じである。末端ヒドロキシル化コポリエステル中間体を作製するのに使用されるジカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、またはその組み合わせであり得る。単独で、または混合物で使用され得る適当なジカルボン酸は、一般的には全部で4から15個の炭素原子を有し、そしてコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を含む。アジピン酸が、使用するために適当な酸である。フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等のような、上記のジカルボン酸の無水物もまた、以前に説明したようにエステル交換反応によって中間体を合成するために使用され得る。有用なヒドロキシル官能性ランダムコポリエステルポリオールのいくつかの代表的な例は、ポリ(ブチレンヘキシレンアジピン酸)グリコール、ポリ(エチレンヘキシレンアジピン酸)グリコール、ポリ(プロピレンヘキシレンアジピン酸)グリコール、ポリ(エチレンブチレンアジピン酸)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレンコハク酸)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレングルタル酸)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレンピメリン酸)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレンアゼライン酸)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレンテレフタル酸)グリコール、ポリ(ブチレンヘキシレンイソフタル酸)グリコール等を含む。ポリ(ブチレンヘキシレンアジピン酸)グリコールが、本発明の実施によって多くのTPUを合成するのに利用するために適当なヒドロキシル官能性コポリエステルポリオールである。
【0022】
本発明の熱可塑性ポリウレタンを作製するために使用される末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体または末端ヒドロキシル化ポリエステル中間体は、典型的には、末端官能基のアッセイによって決定される、1つの局面において約350から約10,000、別の局面において約500から約5,000、さらなる局面において約700から約4,000、およびまたさらなる局面において約1,000から約3,000の範囲内の数平均分子量(Mn)を有する。2つ以上の末端ヒドロキシル化中間体の混合物は、本発明のTPUを作製するために使用され得る。
【0023】
末端ヒドロキシル化ポリカーボネート中間体は、Peabody、MAのStahl USAから市販されている。適当な末端ヒドロキシル化ポリカーボネートは、グリコールをカーボネートと反応させることによって調製され得る。本明細書中で参考文献に組込まれる、米国特許第4,131,731号は、末端ヒドロキシル化ポリカーボネート、その調製、およびどのようにそれらが利用され得るかを記載している。そのようなポリカーボネートは、典型的には線状である。末端ヒドロキシル化ポリカーボネートの数平均分子量は、一般的には少なくとも約500、および典型的には3,000以下である。
【0024】
末端ヒドロキシル化ポリカプロラクトン中間体は、例えばPerstorp Polyols,Inc.、Toledo、OHのような会社から市販されている。末端ヒドロキシル化ポリカプロラクトンは、カプロラクトンとグリコールとの反応によって形成され得る。適当なカプロラクトンは、ε−カプロラクトンおよびメチルε−カプロラクトンを含む。適当なグリコールは、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール等を含む。末端ヒドロキシル化ポリカプロラクトンの調製方法は、一般的に当業者に公知である。
【0025】
熱可塑性ポリウレタンを合成するために使用されるポリイソシアネートは、ジイソシアネートから選択され得る。脂肪族ジイソシアネートが利用され得るが、典型的にはほとんどの適用に関してポリマーを作製するために芳香族ジイソシアネートが使用される。さらに、望ましくない早発性の架橋を引き起こす、多官能性イソシアネート化合物、すなわちトリイソシアネート等の使用は、一般的に回避され、そして従ってもしあるとしても使用される量は、使用される様々な全てのイソシアネートの全モル数に基づいて、一般的に1つの局面において4モルパーセント未満、および別の局面において2モルパーセント未満である。適当なジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI);m−キシレンジイソシアネート(XDI)、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート、およびトルエンジイソシアネート(TDI)のような芳香族ジイソシアネート;およびイソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、デカン−1,10−ジイソシアネート、およびジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートのような脂肪族ジイソシアネートを含む。上記のジイソシアネートの二量体および三量体も使用され得る、および2つ以上のジイソシアネートの混合物も使用され得る。
【0026】
本発明で使用されるポリイソシアネートは、イソシアネートで末端をキャッピングした低分子量ポリマーまたはオリゴマーの形態であり得る。例えば、上記で記載した末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体は、イソシアネートを含む化合物と反応されて、イソシアネートで末端をキャッピングした低分子量ポリマーを生成し得る。TPU分野において、そのような物質は通常プレ−ポリマーと呼ばれる。そのようなプレ−ポリマーは、通常約500から約10,000の範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0027】
1つ以上のジイソシアネートのモル比は、一般的に、1つ以上の末端ヒドロキシル化中間体および1つ以上の鎖延長剤の全モル数の、1つの局面において約0.95から約1.05モル/モル、および別の局面において約0.98から約1.03モル/モルである。
【0028】
本発明の熱可塑性ポリウレタンを作製するために使用されるグリコール鎖延長剤は、飽和グリコール鎖延長剤および炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤(不飽和グリコール鎖延長剤)の組み合わせである。不飽和グリコール鎖延長剤は、典型的には、本発明のTPUを合成するために使用される鎖延長剤の全量の、約2重量パーセントから約100重量パーセントに相当する。もちろん、鎖延長剤の全量は、TPUを作製するために使用される飽和グリコールおよび不飽和グリコールの全量の合計である。従って、このシナリオにおいて、不飽和グリコール鎖延長剤は、ポリマーを合成するために利用される全鎖延長剤の、約2重量パーセントから約100重量パーセントに相当し、そして飽和グリコール鎖延長剤は、約0重量パーセントから約98重量パーセントに相当する。不飽和グリコール鎖延長剤は、より典型的には、TPUを合成するために利用される鎖延長剤の全量の約5重量パーセントから約50重量パーセントに相当する。不飽和グリコール鎖延長剤は、最も典型的には、TPUを合成するために利用される鎖延長剤の全量の約8重量パーセントから約50重量パーセントに相当する。不飽和グリコールは、通常TPUの全重量(末端ヒドロキシル化中間体、ポリイソシアネート、飽和グリコール鎖延長剤、および不飽和グリコール鎖延長剤の全重量)の約0.5重量パーセントから約20重量パーセントに相当する。不飽和グリコールは、より典型的には、TPUの全重量の約1重量パーセントから約10重量パーセントに相当する。別の局面において、その不飽和グリコールは、TPUの全重量の約1.5重量パーセントから約5重量パーセントに相当する。
【0029】
本発明のTPUを合成するために使用され得る飽和鎖延長剤は、アルカンジオール(直鎖状および分枝状)、脂環式ジオール、アルキルアリールジオール等のような、2から約20個の炭素原子を有する有機ジオールまたはグリコールを含む。全部で約2から約12個の炭素原子を有するアルカンジオールが、多くの場合利用される。使用され得るアルカンジオールのいくつかの代表的な例は、エタンジオール、プロパングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール(1,3−BDO)、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール(NPG)、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、および1,4−ブタンジオールを含む。ジエチレングリコールおよびジプロピレングリコールのような、ジアルキレンエーテルグリコールも、鎖延長剤として使用され得る。適当な脂環式ジオールの例は、1,2−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)等を含む。適当なアルキルアリールジオールの例は、ヒドロキノンビス(β―ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)、1,4−ベンゼンジメタノール、ビスエトキシビフェノール、ビスフェノールAエトキシレート、ビスフェノールFエトキシレート等を含む。さらに他の適当な鎖延長剤は、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)ベンゼン、および1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンである。上記で述べた鎖延長剤の混合物も利用され得る。
【0030】
生じたポリマーが望ましい熱可塑性性質および他の望ましい化学的および物理的特徴を保持するという条件で、2つより多い官能基を有する飽和鎖延長剤も使用され得る。そのような多官能性鎖延長剤の例は、トリメチロールプロパン、グリセリン、およびペンタエリスリトール(pentraerythritol)を含む。通常、多官能性鎖延長剤を、二官能性鎖延長剤と組み合わせて使用されて、限られた量の鎖の分枝を導入する。よって、多官能性鎖延長剤のレベルは、典型的には、熱可塑性ポリウレタンを作製するために使用される鎖延長剤の全量の10モルパーセントを超えない。多官能性飽和鎖延長剤のレベルを、TPUを作製するために使用される鎖延長剤の全量に基づいて、0.5モルパーセントから5モルパーセントの範囲内に制限することがより典型的である。多くの場合において、TPUは2より多い官能基を有する鎖延長剤を欠く。いずれの場合においても、飽和二官能性鎖延長剤は、典型的にはTPUを合成するために使用される飽和鎖延長剤の全量の少なくとも約90モルパーセントに相当する。
【0031】
本発明のTPUを作製するのに使用するために利用され得る飽和直鎖状鎖延長剤は、以下の構造式によって表され得る:
【0032】
【化1】

ここでnは2から20の整数を表し、そしてここでnは典型的には2から12の整数を表す。よって、その直鎖状鎖延長剤は、典型的にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、および1,12−ドデカンジオールから成る群から選択される。しかし、本発明の実施における鎖延長剤として、ジオールの様々な混合物が利用され得ることが認識されるべきである。
【0033】
本発明のTPUを作製するために使用される不飽和グリコール鎖延長剤は、典型的には以下の構造式である:
【0034】
【化2】

ここでR基は、同じまたは異なり得、そして1から約5個の炭素原子を含むアルキレン基を表し、Rは水素原子または1から約5個の炭素原子を含むアルキル基を表し、そしてRは、2から約10個の炭素原子を含む不飽和ヒドロカルビル基を表す。Rは、典型的には本発明の1つの局面において1から7個の炭素原子を含む、そして別の局面において1から3個の炭素原子を含む、二価のアルキレン基を表す。さらに別の局面において、Rは式:−(CHn’−によって表され得る。多くの場合において、Rはメチレン基であり得る。Rは、典型的には、メチル、エチル、イソプロピル基、またはn−プロピル基を表す。Rは、典型的には、構造式:−(CHn’−O−CH−CH=CHのモノアリルエーテル基のような、モノアリルエーテル基であり、ここで上記の式のn’は、1つの局面において1から約7まで、および別の局面において1から3までの整数を表す。n’が1から3までの整数を表すことが典型的である。
【0035】
1つの局面において、本発明の実施において利用するための不飽和グリコール鎖延長剤は、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルである。トリメチロールプロパンモノアリルエーテルは、以下の構造式を有し:
【0036】
【化3】

そして様々な供給源から市販されている。
【0037】
炭素−炭素二重結合を含む末端ヒドロキシル化中間体が利用されて、二重結合をTPUに導入する本発明の実施態様において、TPUの合成においてそれは飽和末端ヒドロキシル化中間体と組み合わせて利用される。言い換えると、TPUを作製するために使用される末端ヒドロキシル化中間体は、飽和および不飽和末端ヒドロキシル化中間体の混合物である。不飽和末端ヒドロキシル化中間体は、通常全末端ヒドロキシル化中間体の1から100重量パーセントを構成し、飽和末端ヒドロキシル化中間体は、全末端ヒドロキシル化中間体の0重量パーセントから99重量パーセントに相当する。ほとんどの場合において、不飽和末端ヒドロキシル化中間体は、全末端ヒドロキシル化中間体の20から40重量パーセントを構成し、飽和末端ヒドロキシル化中間体は、全末端ヒドロキシル化中間体の60重量パーセントから80重量パーセントに相当する。1つの局面において、その不飽和末端ヒドロキシル化中間体は、全末端ヒドロキシル化中間体の5から30重量パーセントを構成し、飽和末端ヒドロキシル化中間体は、全末端ヒドロキシル化中間体の70重量パーセントから95重量パーセントに相当する。
【0038】
本発明の1つの局面において、そのようなTPUを作製するために利用される不飽和末端ヒドロキシル化中間体は、典型的には以下の構造式を有し:
【0039】
【化4】

ここでAは独立に−ROHおよび以下のように表される構造から選択される部分を表す:
【0040】
【化5】

ここでR、R、RおよびRは、同じまたは異なり得、そして1から約10個の炭素原子を含む、二価の直鎖状および分枝状アルキレン部分を表し得る。1つの局面において、R、R、RおよびRは独立に、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、およびヘキシレン部分から選択される。別の局面において、RおよびRは、4個の炭素原子を含み得(例えばブチレン)、RおよびRは1個の炭素原子を含む(例えばメチレン)。さらに別の局面において、Rは、−R−O−R−によって表される二価のエーテル基であり、ここでRは独立に1から5個の炭素原子を含む二価のアルキレン部分から選択され、そしてR、RおよびRは上記で定義されたとおりである。本発明の1つの局面において、n:mの比は、約0から約35、別の局面において約1から約30、さらに別の局面において約5から約25、およびさらなる局面において約10から約20の範囲である;そしてyは約1から約20までの範囲の整数である。
【0041】
本発明の別の局面において、その不飽和末端ヒドロキシル化中間体は、以下の成分の反応生成物である:
a)以下の式によって表される化合物から選択される、約1.5モル%から約55モル%の不飽和鎖延長剤:
【0042】
【化6】

b)以下の式によって表される化合物から選択される、約0モル%から約50モル%のジオール:
【0043】
【化7】

および
c)以下の式によって表される、約45から約49モル%の二酸:
【0044】
【化8】

ここでR、R、RおよびRは、以前に定義したとおりである。その不飽和末端ヒドロキシル化中間体を構成する各成分の全量は、100モル%を超えないことが、当業者によって認識される。
【0045】
適当な不飽和鎖延長剤は、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル(TMPME)である。
【0046】
適当なジオールは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールおよびその混合物を含むがこれに限らない。
【0047】
単独で、または混合物で使用し得る、適当なジカルボン酸は、一般的に、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を含むがこれに限らない。フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物等のような、上記のジカルボン酸の無水物も、以前に議論したようなエステル交換反応によって、その中間体を合成するために使用され得る。
【0048】
1つの局面において、その不飽和末端ヒドロキシル化中間体は、不飽和鎖延長剤、ジオール、および二酸を、撹拌しながら反応器に入れ、反応中間体を約120℃から約200℃の間で、大気圧で約3から8時間加熱し、そして生成されたあらゆる水を除去することによって生成され得る。テトラ−(2−エチルヘキシル)チタン酸のようなエステル交換反応触媒を加え、そして必要に応じて反応中間体に減圧(0−15mmHg)をかけて反応を触媒する。その反応中間体は約180℃から約210℃の間に加熱され、そして約0.5未満の酸価が得られるまで、生成された水を持続的に除去される。
【0049】
炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤(不飽和グリコール鎖延長剤)および/または炭素−炭素二重結合を含む不飽和末端ヒドロキシル化中間体もまた、非常に剛性なTPUを作製するために使用され得、多くの場合エンジニアリングレジンと呼ばれる。非常に剛性なTPUは、ポリイソシアネートをグリコール鎖延長剤、および必要に応じて15重量パーセントまでのポリオール(末端ヒドロキシル化中間体)と反応させることによって作製される。1つの局面において、その非常に剛性なTPUは、5重量パーセント未満のポリオールを含み、そして別の局面において、その非常に剛性なTPUポリマーにはポリオールが存在しない。その非常に剛性なTPUポリマーは、1つの局面において60ショアDより高い、別の局面において80ショアDより高い、そしてさらなる局面において約85ショアDのデュロメーター硬さを有する。使用されるグリコール鎖延長剤、末端ヒドロキシル化中間体、およびポリイソシアネートは、上記で記載したものと同じである。非常に剛性なTPUポリマーは、1つの局面において主に硬質ブロックセグメントから構成され、そして別の局面において、もし末端ヒドロキシル化中間体が使用されていないなら、全て硬質ブロックである。炭素−炭素二重結合を含まない、そして従って架橋していない、これらのタイプのTPUポリマーは、Lubrizol Advanced Materials,Inc.から、Isoplast(登録商標)およびHS−85ブランドの名前で、市販されている。
【0050】
飽和グリコール鎖延長剤の一部を、炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤で置き換えること、および/または飽和末端ヒドロキシル化中間体(もし使用されているなら)の一部を不飽和末端ヒドロキシル化中間体で置き換えることによって、その剛性なTPUは、電子ビーム照射への曝露によって架橋され得るようになる。架橋された剛性なTPUは、減少されたゆがみ、減少されたクリープ、および増強された耐薬品性のような、増強された性質を有する。そのような剛性な生成物は、医学的適用および工業的適用のような、多くの適用において有用である。歯科固定装置成形物は、その剛性なTPU適用の使用の例である。
【0051】
本発明のTPUポリマーを生成するプロセスは、従来のTPU製造装置を利用し得る。その末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体、ジイソシアネート、飽和鎖延長剤および不飽和鎖延長剤を、一般的に一緒に加え、そして標準的なポリウレタン合成方法によって反応させる。典型的には、本発明のTPU形成成分を、Banburyミキサーとして知られるインターナルミキサーのような、適当なミキサー内で、または押し出し機内で溶融重合させる。1つのプロセスにおいて、その末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体は、グリコール鎖延長剤と混合され、そして混合物として押し出し機に加えられる。ジイソシアネートが別に押し出し機に加えられる。ジイソシアネートの適当な加工または重合開始温度は、1つの局面において約100℃から約200℃、および別の局面において約100℃から約150℃である。末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体および鎖延長剤の混合物の適当な加工または重合開始温度は、1つの局面において約100℃から約220℃、およびさらなる局面において約150℃から200℃である。様々な成分が反応し、そして本発明のTPUポリマーを形成し得るために適当な混合時間は、一般的に1つの局面において約2から約10分間、および別の局面において約3から約5分間である。
【0052】
本発明のTPUを生成するための加工は、ワンショット重合加工と呼ばれる加工である。一般的に系中において起こるワンショット重合プロセスにおいて、3つの成分、すなわち1つ以上の末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体、グリコール、およびジイソシアネートの間で同時に反応が起こる。その反応は一般的に約90℃から約120℃の温度で開始される。その反応は発熱性であるので、その反応温度は一般的に約220℃から250℃に上昇する。鎖延長剤としてエチレングリコールが使用される場合、望ましくないレベルの泡形成を防止するために、この発熱性反応の温度を、最高235℃までに制限することが重要である。そのTPUポリマーは、反応押し出し機から出て、そしてペレット化される。反応を持続させ、そしてTPUペレットを乾燥させるために、TPUのペレットは、通常加熱容器内で保存される。
【0053】
カルボン酸第一スズおよび他のカルボン酸金属塩および三級アミンのような触媒を利用することが多くの場合望ましい。カルボン酸金属塩触媒の例は、第一スズオクトアート、ジブチルスズジラウレート、プロピオン酸フェニル水銀、オクタン酸鉛、鉄アセチルアセトネート、マグネシウムアセチルアセトネート等を含む。三級アミノ触媒の例は、トリエチレンアミン等を含む。1つ以上の触媒の量は少なく、一般的に、形成される最終TPUポリマーの重量部によって、約50から約100重量ppmである。
【0054】
本発明のTPUポリマーの重量平均分子量(Mw)は、架橋される前、1つの局面において約90,000から約600,000ダルトン、別の局面において約100,000から約300,000ダルトン、およびさらなる局面において約120,000から約250,000ダルトンの範囲である。TPUポリマーのMwは、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。
【0055】
より高い分子量のTPUポリマーが望ましい場合、架橋を誘導するために、2.0より多い平均官能基を有する、少量の架橋剤を使用することによってそれが達成され得る。使用される架橋剤の量は、1つの局面において鎖延長剤の全モル数の2モルパーセント未満、および別の局面において1モルパーセント未満である。TPUポリマーにおいて分子量を増加させる1つの方法は、鎖延長剤の1モルパーセント未満を、トリメチロールプロパン(TMP)で置き換えることである。
【0056】
2.0より多い平均官能基を有する架橋剤を、末端ヒドロキシル化中間体、イソシアネート化合物、および鎖延長剤と共に、TPUポリマーを製造するための反応混合物中に加えることによって架橋が達成される。TPUポリマーを作製するための反応混合物中で使用される架橋剤の量は、望ましい分子量および使用される特定の架橋剤の有効性に依存する。通常、TPUポリマーを作製するために使用される鎖延長剤の全モル数に基づいて、1つの局面において2.0モルパーセント未満、および別の局面において1.0モルパーセント未満が使用される。鎖延長剤の全モル数に基づいて、2.0モルパーセントより多い架橋剤のレベルは、溶融加工することが困難である。従って、使用される架橋剤のレベルは、鎖延長剤の全モル数に基づいて、約0.05モルパーセントから約2.0モルパーセントである。
【0057】
その架橋剤は、2.0より多い平均官能基を有し、そしてTPUポリマーを架橋させる能力を有する、あらゆるモノマー物質またはオリゴマー物質であり得る。そのような物質は、熱硬化性ポリウレタンの分野で周知である。1つの局面において、架橋剤は、トリメチロールプロパン(TMP)およびペンタエリスリトールを含む。トリメチロールプロパンは、特に望ましい架橋剤であることが見出された。
【0058】
本発明のTPUポリマーは、可塑剤、充填剤、増量剤、色素、潤滑剤、UV吸収剤、難燃剤等のような、様々な従来の添加物または配合剤と混合され得る。使用され得る充填剤は、タルク、シリケート、粘土、炭酸カルシウム等を含む。従来の添加物のレベルは、TPUの配合の分野の当業者に周知であるように、最終的な性質および望ましい最終用途の適用のコストに依存する。その添加物は、TPUを形成する反応の間に加えられ得るが、通常2番目の配合工程において加えられる。
【0059】
本発明のTPUは、改善されたレベルの耐熱性、耐薬品性、および耐溶媒性を有する、広く様々な消費および工業製品の製造において使用され得る。これは、TPUを望ましい構造へ溶融加工し、そして次いでそれを電子ビーム照射に曝露して、その設計の熱硬化性物質へと架橋させることによって達成される。TPUを望ましい未硬化構造へ加工するために、実質的にあらゆる溶融加工方法が使用され得る。TPUは、押出成形、射出成形、圧縮成形、キャスティング、メルトスピニング、インフレーション成形、熱成形、吹込み成形等によって、溶融加工され得る。例えば、そのTPUは、実質的にあらゆる直径のチューブまたはホースに押出成形され得る。それはまた、シールまたはガスケットの形に成形され得る。望ましい形に成形された後、その未硬化のTPUは次いで電子ビーム照射に曝露されて、それは耐久硬化構造へ架橋される。
【0060】
本発明のTPUは、高い温度および有機溶媒にさらされる電線をコーティングするために、有利に使用され得る。本発明のTPUを、管型クロスヘッドダイを利用して、コーティングする裸の金属ワイヤーに適用することによって、これが行われ得る。その金属は、典型的にはアルミニウムまたは銅である。適用するTPUおよび裸のワイヤーの間の接着を改善するために、その裸のワイヤーを、一般的には管型クロスヘッドダイへ入れる前に予熱する。
【0061】
ダイから押し出される熱可塑性組成物のチューブを、管型クロスヘッドダイから出るときに裸のワイヤーへ均一に縮めるために、一般的に管型クロスヘッドダイのダイキャビティを減圧する。新規に形成された、押出成形された熱可塑性組成物のチューブを、金属ワイヤーと適切に接触させることを促進するために、ダイキャビティに適用する必要がある減圧または部分的な減圧の量は、裸の金属ワイヤーが管型クロスヘッドダイを出る速度、適用するコーティングの厚さ、金属ワイヤーの直径、および管型クロスヘッドダイの寸法のような、多くの因子によって決定される。当業者は、その特定の加工において最適に必要な減圧の量を確認し得る。
【0062】
本発明の加工を利用することによって、裸の金属ワイヤーが、比較的速い速度でコーティングされ得る。経済的な理由のために、比較的速い速度でワイヤーをコーティングすることが、一般的に望ましい。一般的に、ワイヤーは、1分あたり約20メートルから1分あたり約500メートルの速度で処理される。通常、コーティングされるワイヤーは、管型クロスヘッドダイを、1分あたり約100メートルから1分あたり約400メートルの速度で通過する。ワイヤーが最適にコーティングされ得る正確な速度を、標準的なエンジニアリング方式を用いて、当業者が決定し得、そして使用される装置の性質および設計、コーティングされるワイヤーの太さおよび型、および適用されるコーティングの厚さに依存する。管型クロスヘッドダイから押し出されるTPUのチューブは、その裸の金属ワイヤーが管型クロスヘッドダイから出てくる速度未満のスピードで押し出されることに注意するべきである。
【0063】
ワイヤーをTPU組成物で、あらゆる望ましい厚さにコーティングするために、管型クロスヘッドダイは設計され得る。通常、マグネットワイヤーに製造されるワイヤーは、約10ミクロンおよび約100ミクロンの間の厚さにコーティングされる。通常、約1ミリメートルの直径を有する標準的なマグネットワイヤーが、15ミクロンから35ミクロンの範囲の厚さにコーティングされる。強化絶縁を有するマグネットワイヤーは一般的に、30ミクロンから50ミクロンの厚さのコーティングを有する。一般的な法則として、マグネットワイヤーのコーティングの厚さは、そのマグネットワイヤーの裸の金属フィラメントの直径の約5%未満である。
【0064】
金属ワイヤーを、本発明のTPUでコーティングして、コーティングされた電線を作製するために使用され得る装置を、図1で図解する。その装置10は一般的に、フィラメント繰り出し装置11、フィラメント予熱機12、および管型クロスヘッドダイ14を備えた押し出し機13、急冷槽15、電子ビーム源19、およびフィラメント巻き取り装置16から成る。図1に示すように、裸のワイヤーフィラメント17およびコーティングされたワイヤー18は、ポイント19および20で中断されている。裸のワイヤーフィラメントの中断19’において、この装置は、マグネットワイヤーを製造するために使用する場合、従来の伸線装置が組み込まれ得る。従って、裸のワイヤーフィラメントをコーティングする前に、太い裸のワイヤーフィラメント17は、伸線装置を利用することによって望ましいサイズに細くされ得る。本発明のプロセスの特定の実施態様におけるフィラメント予熱機12は、焼還器を含み得、それによって裸のワイヤーフィラメントを引っ張るまたはそれを伸ばすことの影響を排除し得る。装置10が、コーティングワイヤー18を製造するために使用される、他の特定の実施態様において、さらなるコーティング装置および硬化剤が、中断ポイント20’に挿入され得、様々なコーティング材料の連続的なコーティングが、連続的な方式で以前にコーティングされたワイヤーに適用され得る。
【0065】
フィラメント繰り出し装置11は、糸巻き21を含み、それに裸のワイヤーフィラメント17が保存される。その糸巻き21は、繰り出し装置11の心棒22に載せられ、矢印20の方向に自由に回転するようにする。ブレーキ23は糸巻き21と操作可能に連携しており、それは裸の金属ワイヤーフィラメント17が、フィラメント巻き取り装置16によってそれから引っ張られるときに糸巻き21の回転を抑制して、もつれを防止する。本発明のプロセスによって、裸のワイヤーフィラメントを巻く、引っ張る、または他の方法でサイズを小さくする、電線の商業的製造のために使用される装置において、裸のワイヤーフィラメントがそのような巻く、または引っ張る装置から供給される時に、残りの装置は裸のワイヤーフィラメント17を連続的にシングルパスでコーティングするために使用され得るので、フィラメント繰り出し装置11は完全に排除され得る可能性が高い。この例における糸巻き21は、裸のワイヤーフィラメントを巻きおよび引っ張り操作からフィラメント予熱機12まで輸送する、1つ以上のリールで置き換えられ得る。そのフィラメント繰り出し装置11が排除され、そして巻および引っ張り装置でそれを置き換える場合において、巻きおよび引っ張り操作の間に裸のワイヤーフィラメントを操作する影響を排除するために、焼還器をポイント19に含めることが重要である。そのような操作において、裸のワイヤーフィラメント17が焼還器を出るときの温度に依存して、フィラメント予熱機12の必要性を排除することが可能である。フィラメント予熱機12は、管型クロスヘッドダイ14によってコーティング材料(TPU)を適用する前に、裸のワイヤーフィラメント17の温度を上げるためのみに使用される。図1で図解した本発明の特定の実施態様において、裸のワイヤーフィラメントを予熱するために使用される装置は、フィラメント予熱機12である。しかし、本発明のプロセスの他の実施態様において、裸のワイヤーフィラメントを予熱するために焼還器が使用され得る。フィラメント予熱機12は、ホットローラーを通すことによって裸のワイヤーフィラメントを加熱するように設計され得る。別の実施態様において、そのフィラメント予熱機12は、単に、管型クロスヘッドダイ14に行く前に、裸のワイヤーフィラメントが通る電気抵抗コイル(好ましくは管状の電気抵抗コイル)を含むことによって、裸のワイヤーフィラメントを加熱するように設計され得る。
【0066】
押し出し機13は、通常、裸の金属ワイヤーフィラメントをコーティングするために使用されるTPU組成物を保存するための材料貯蔵器24を備える。それはまた、一般的に、TPU組成物を、材料貯蔵器24から管型クロスヘッドダイ14へ輸送するためのポンプ25を備える。ポンプ25は、通常ポンプモーター26で動かされる。真空ライン27を通して、ダイキャビティに減圧が適用され得る。もし望ましいなら、真空ポンプは、管型クロスヘッドダイ14に直接連結され得る。
【0067】
管型クロスヘッドダイ14は、図2および図3においてより明らかに図解される。裸のワイヤーフィラメント17が通るダイキャビティ28が、管型クロスヘッドダイの長さ全体を通して伸びる。裸のワイヤーフィラメント17をコーティングするために使用されるTPU組成物30は、管型押し出しキャビティ29へポンプで注入される。裸のワイヤーフィラメントは、ダイキャビティの入口開口部31においてダイキャビティ28に入り、そして出口開口部32においてダイから出る。TPU組成物30は、管型出口開口部33で、管型クロスヘッドダイを出る。TPU組成物が、管型出口開口部33から管型クロスヘッドダイを出た後、それは裸の金属ワイヤーに向かっておよびその周りに縮小して、それを均一にコーティングする。TPU組成物のチューブが、管型クロスヘッドダイを出る裸の金属ワイヤーを囲むような方法で押し出され、そして真空ライン27によってダイキャビティ28に適用される減圧のために、それに向かって縮小する。TPUの押し出されたチューブのワイヤーフィラメント17に対するこの縮小はまた、TPU組成物の押し出された裸の金属ワイヤーへの接着によって引き起こされる。その裸の金属ワイヤーは、熱可塑性組成物が裸の金属ワイヤーを囲むチューブとしてダイを出る速度よりも速い速度でダイを出るという事実のために、熱可塑性組成物のチューブは、ワイヤーに適用される時に、伸長し、そして方向付けられる。
【0068】
図1において図解した本発明の実施態様において、管型クロスヘッドダイ14を出た、熱いコーティングワイヤー18を、急冷槽15において急速に冷却する。そのような急冷槽は、その装置の必須の要素ではない。例えば、新規にコーティングされたワイヤー18は、単に十分な時間空冷することによって、冷却され得る。しかし、通常高速が望ましいので、通常急冷槽が利用される。急冷槽は、通常水のような冷却液を利用する。急冷槽は、必要に応じて様々な調節装置または色素を望ましいように含み得る。
【0069】
急冷する前またはその後に、コーティングされたワイヤーは、電子ビーム源19によって提供される電子ビーム照射に曝露される。電子ビーム処理は、TPUコーティングを、適当な程度まで硬化するために必要な架橋の望ましいレベルを達成するために十分な強度および時間で提供される。
【0070】
巻き取り装置16は、多くの局面において、繰り出し装置11と同様である。巻き取り装置16は、リール21を含み、そこにコーティングされたワイヤーが、輸送のために巻き取られる。リール21は、従来の糸巻きであり、それでコーティングされたワイヤーが輸送される。糸巻き21は、心棒22の上に回転のために載せて、矢印34の方向に動かされる。モーター35を、糸巻き21に操作可能に連結し、それが糸巻き21を動かし、そしてそれによって裸のワイヤーフィラメント17およびコーティングされたワイヤー18を、繰り出し装置11の糸巻きまたはリール21から、最終的にフィラメント巻き取り装置16まで引っ張る。
【0071】
本発明のTPU組成物は、その難燃性、耐摩耗性、および良好な引っ張り強さのために、ワイヤーおよびケーブル構築物の適用において、外装ケーブル、工業用ロボット装置、非金属外装ケーブル、深井戸ポンプケーブル、および他の多導体組み立て品のような、電気伝導体の被覆として使用するために特に適当である。典型的なワイヤーおよびケーブル構築物は、少なくとも1つの、および典型的には複数の電気伝導体、通常2から8個の銅線のような伝導体を有する。各伝導体は、典型的には、薄層のポリマー絶縁化合物で、通常押出成形によってコーティングされ、このポリマー絶縁化合物はTPU、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、架橋ポリエチレン、フルオロカーボンポリマー等であり得る。複数の絶縁伝導体は、金属、ガラス繊維、または他の不燃性(non−flamable)テキスタイルで包まれ得る。その複数の伝導体は、次いで被覆材料(すなわち本発明のTPU組成物)中に入れられて、その電気伝導体を保護する。ほとんどのワイヤーおよびケーブル最終用途の適用において、もし火災が起こった場合に、この被覆材料は不燃性である必要がある。
【0072】
TPUワイヤーおよびケーブルの適用において使用される難燃剤は、文献および当該分野において周知である。代表的な難燃剤は、メラミン、メラミンシアヌレートのようなメラミン誘導体、有機ホスフェート、有機ホスホネート、およびリン含有化合物のような、非ハロゲン難燃剤を含む。塩素化および臭素化化合物のような、ハロゲン化難燃剤も使用され得る。アルミニウム三水和物、酸化アンチモン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、炭酸カルシウム、粘土、およびタルクのような無機化合物も、難燃剤として使用され得る。多くの場合、1つより多くの難燃剤が使用され、そしてTPU調合物において、しばしば3つ以上の難燃剤が組み合わされる。
【0073】
ワイヤーおよびケーブルの被覆として使用される場合、本発明のTPUはワイヤーの束に押出成形され、そして続いて電子ビーム照射に曝露されることによって架橋されて、架橋した被覆が形成される。
【0074】
本発明は、単に例示の目的のためであり、そして本発明の範囲または本発明が実施され得る方式を制限すると見なされない、以下の実施例によって例示される。他に明確に示されなければ、部およびパーセンテージは重量によって与えられる。
【0075】
実施例1−6は、炭素−炭素二重結合を含む末端ヒドロキシル化中間体の合成を例示する。これらの実施例において、不飽和ポリエステルジオール中間体が合成される。
【実施例】
【0076】
実施例1
オーバーヘッド機械式撹拌器、温度計、カラム冷却器、および受器を備えた三つ口ガラス反応器に、232.23g(1.59モル)のアジピン酸(AA)、160.38g(1.78モル)の1,4−ブタンジオール(BDO)および8.07g(0.046モル)のトリメチロールプロパンモノアリルエーテル(TMPME)を加える。反応中間体を、大気圧で、150℃から190℃に加熱し(5−6時間)、そして生成された水を回収した。次いで100ppmのエステル交換反応触媒テトラ−(2−エチルヘキシル)チタン酸を加え、そして反応中間体を190℃から200℃に加熱しながら、減圧(0−15mmHg)を適用する。酸価が0.5未満になるまで、生成される水を除去した(3−5時間)。最終的なポリオールは、62.21のヒドロキシル価を有する(約1803.6g/モルのMn)。
【0077】
実施例2
オーバーヘッド機械式撹拌器、温度計、カラム冷却器、および受器を備えた三つ口ガラス反応器に、212.66g(1.46モル)のアジピン酸(AA)、141.98g(1.58モル)の1,4−ブタンジオール(BDO)および16.69g(0.096モル)のトリメチロールプロパンモノアリルエーテル(TMPME)を加える。反応中間体を、大気圧で、150℃から190℃に加熱し(5−6時間)、そして生成された水を回収した。次いで100ppmのエステル交換反応触媒テトラ−(2−エチルヘキシル)チタン酸を加え、そして反応中間体を190℃から200℃に加熱しながら、減圧(0−15mmHg)を適用する。酸価が0.5未満になるまで、生成される水を除去した(3−5時間)。最終的なポリオールは、47.50のヒドロキシル価を有する(約2361.9g/モルのMn)。
【0078】
実施例3
オーバーヘッド機械式撹拌器、温度計、カラム冷却器、および受器を備えた三つ口ガラス反応器に、240.18g(1.65モル)のアジピン酸(AA)、149.34g(1.66モル)の1,4−ブタンジオール(BDO)および38.93g(0.22モル)のトリメチロールプロパンモノアリルエーテル(TMPME)を加える。反応中間体を、大気圧で、150℃から190℃に加熱し(5−6時間)、そして生成された水を回収した。次いで100ppmのエステル交換反応触媒テトラ−(2−エチルヘキシル)チタン酸を加え、そして反応中間体を190℃から200℃に加熱しながら、減圧(0−15mmHg)を適用する。酸価が0.5未満になるまで、生成される水を除去した(3−5時間)。最終的なポリオールは、83.45のヒドロキシル価を有する(約1344.58g/モルのMn)。
【0079】
実施例4
オーバーヘッド機械式撹拌器、温度計、カラム冷却器、および受器を備えた三つ口ガラス反応器に、220.89g(1.51モル)のアジピン酸(AA)、116.08g(1.29モル)の1,4−ブタンジオール(BDO)および81.07g(0.47モル)のトリメチロールプロパンモノアリルエーテル(TMPME)を加える。反応中間体を、大気圧で、150℃から190℃に加熱し(5−6時間)、そして生成された水を回収した。次いで100ppmのエステル交換反応触媒テトラ−(2−エチルヘキシル)チタン酸を加え、そして反応中間体を190℃から200℃に加熱しながら、減圧(0−15mmHg)を適用する。酸価が0.5未満になるまで、生成される水を除去した(3−5時間)。最終的なポリオールは、68.12のヒドロキシル価を有する(約1647.1g/モルのMn)。
【0080】
実施例5
オーバーヘッド機械式撹拌器、温度計、カラム冷却器、および受器を備えた三つ口ガラス反応器に、204.14g(1.40モル)のアジピン酸(AA)、および295.86g(1.70モル)のトリメチロールプロパンモノアリルエーテル(TMPME)を加える。反応中間体を、大気圧で、150℃から190℃に加熱し(5−6時間)、そして生成された水を回収した。次いで100ppmのエステル交換反応触媒テトラ−(2−エチルヘキシル)チタン酸を加え、そして反応中間体を190℃から200℃に加熱しながら、減圧(0−15mmHg)を適用する。生成される水を除去し、酸価をフォローすることによって反応をモニターした(7時間)。最終的なポリオールは、4.98の酸価および67.42のヒドロキシル価を有する(約1664.2g/モルのMn)。酸価を0.5未満の範囲に下げるためのさらなる反応は、ゲル化を引き起こした。
【0081】
実施例6
オーバーヘッド機械式撹拌器、温度計、カラム冷却器、および受器を備えた三つ口ガラス反応器に、417.32g(2.86モル)のアジピン酸(AA)、325.04g(3.063モル)のジエチレングリコール(DEG)および38.47g(0.22モル)のトリメチロールプロパンモノアリルエーテル(TMPME)を加える。反応中間体を、大気圧で、150℃から190℃に加熱し(5−6時間)、そして生成された水を回収した。次いで100ppmのエステル交換反応触媒テトラ−(2−エチルヘキシル)チタン酸を加え、そして反応中間体を190℃から200℃に加熱しながら、減圧(0−15mmHg)を適用する。酸価が0.5未満になるまで、生成される水を除去した(3−5時間)。最終的なポリオールは、68.00のヒドロキシル価を有する(約1650.0g/モルのMn)。
【0082】
実施例7−14
実施例7−14は、鎖延長剤(硬質セグメント)にのみ不飽和が存在する、合成された架橋可能なTPUを例示する。これらの実施例において、下記の表1で述べる成分から合成されるTPUを生成するために、典型的な高温溶融重合を使用する。ポリオールグリコール(複数可)を120℃で溶融し、そして鎖延長剤(複数可)と混合する。その混合物を、溶解した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と混合し、そして190℃の初期温度で反応させる。TPUの重合は、3から4分で完了する。圧縮成形板を、TPUから成形し、そして1−2グラムの重さのより小さな断片に切断し、そしてTHF(テトラヒドロフラン)中でソックスレー抽出、およびNMP(N−メチルピロリドン)中で溶媒溶解を行って、そのTPUが、これらの溶媒に可溶性かどうかを決定する。
【0083】
THFソックスレー抽出手順において、そのTPUサンプルを溶媒に沈め、そして還流で6時間抽出を行った。抽出後、サンプルをまず水に入れて残留溶媒を除去し、そして次いで全ての溶媒が除去されたことを示す一定の重量が得られるまで105℃の対流式オーブンに入れる。もしサンプルが溶解した、または60%未満の架橋密度(CD)値を有するなら、THF溶解性は可溶性と評価され、架橋が存在しない、または不十分であることを示す。もしCD値が60%より大きいなら、そのサンプルは不溶性であると評価され、架橋の存在を示す。CD値を、以下の式を使用して計算する:
CD=100×(1−[(W−W)/W])
ここでWおよびWは、それぞれ、ソックスレー抽出前および後の、サンプルの最初のおよび最終的な乾燥重量である。サンプルは照射されていないので、架橋は無く、耐溶媒性を生じない。その結果を表1に示す。
【0084】
NMPにおける溶解性を決定するために、TPUの1−2グラムのサンプルをNMPに7日間沈める。7日後、もしサンプルが完全に溶解したら、可溶性であると評価される。もしサンプルが溶解しなければ、サンプルを溶液から除去し、そして水に入れて過剰な溶媒を除去し、そして次いで140℃の対流式オーブンに4時間入れて、あらゆる残留溶媒を除去する。脆い性質を示すことが観察されたサンプルを、不溶性であると評価する。
【0085】
【表1】

MDI 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250.4g/モル)
PTMEG 1000 ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(分子量1000g/モル)
PTMAG ポリ(テトラメチレンアジピン酸)グリコール(分子量870g/モル)
P(TMA/HMA)G ポリ(テトラメチレン−コ−ヘキサメチレンアジピン酸)グリコール(分子量2500g/モル)
ポリ(カプロラクトン) ポリオール(分子量2000g/モル)
PCARB ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール(分子量2000g/モル)
HQEE ヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル(分子量198.2g/モル)
TMPME トリメチロールプロパンモノアリルエーテル(分子量175g/モル)
THF テトラヒドロフラン溶媒
10NMP N−メチルピロリドン溶媒
実施例15−20
実施例15から20は、末端ヒドロキシル化ポリエステルポリオール中間体(軟質セグメント)にのみ不飽和が存在する、合成された架橋可能なTPUを例示する。これらの実施例において、下記の表2で述べる成分から合成されるTPUを生成するために、典型的な高温溶融重合を使用する。ポリオールグリコール(複数可)を120℃で溶融し、そして鎖延長剤(複数可)と混合する。その混合物を、溶解した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と混合し、そして190℃の初期温度で反応させる。TPUの重合は、3から4分で完了する。圧縮成形板を、TPUから成形し、そして実施例7−14で述べたような、THFおよびNMPへの溶解性試験のために、より小さな断片に切断する。その結果を、表2において述べる。
【0086】
【表2】

MDI 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250.4g/モル)
PTMEG 1000 ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(分子量1000g/モル)
P(TMA/HMA)G ポリ(テトラメチレン−コ−ヘキサメチレンアジピン酸)グリコール(分子量2500g/モル)
ポリ(カプロラクトン) ポリオール(分子量2000g/モル)
PCARB ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール(分子量2000g/モル)
THF テトラヒドロフラン溶媒
NMP N−メチルピロリドン溶媒
実施例21−34
実施例21から34は、鎖延長剤(硬質セグメント)および末端ヒドロキシル化ポリエステルポリオール中間体(軟質セグメント)に不飽和が存在する、合成された架橋可能なTPUを例示する。これらの実施例において、下記の表3および4で述べる成分から合成されるTPUを生成するために、典型的な高温溶融重合を使用する。ポリオールグリコール(複数可)を120℃で溶融し、そして鎖延長剤(複数可)と混合する。その混合物を、溶解した4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と混合し、そして190℃の初期温度で反応させる。TPUの重合は、3から4分で完了する。圧縮成形板を、TPUから成形し、そして実施例7−14で述べたような、THFおよびNMPへの溶解性試験のために、より小さな断片に切断する。その結果を、表3および4において述べる。
【0087】
【表3】

MDI 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250.4g/モル)
PTMEG 1000 ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール(分子量1000g/モル)
TMPME トリメチロールプロパンモノアリルエーテル(分子量175g/モル)
THF テトラヒドロフラン溶媒
NMP N−メチルピロリドン溶媒
【0088】
【表4】

MDI 4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250.4g/モル)
PTMAG ポリ(テトラメチレンアジピン酸)グリコール(分子量870g/モル)
P(TMA/HMA)G ポリ(テトラメチレン−コ−ヘキサメチレンアジピン酸)グリコール(分子量2500g/モル)
ポリ(カプロラクトン) ポリオール(分子量2000g/モル)
PCARB ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール(分子量2000g/モル)
TMPME トリメチロールプロパンモノアリルエーテル(分子量175g/モル)
THF テトラヒドロフラン溶媒
NMP N−メチルピロリドン溶媒
実施例35−46
多くの例において、ポリマーの耐溶媒性は、その架橋密度に関連する。一般的に、非架橋ポリマーは、溶媒の攻撃を受けやすい(例えば、特定の溶媒系において可溶性である、または部分的に可溶性である)。架橋ポリマーは、通常溶媒の攻撃に耐性がある。これらの実施例において、圧縮成形板を、実施例7から34で合成された選択されたTPUから成形し、そして続いて10から60MRad(MR)の線量の電子ビームを照射した。コントロールとして、架橋可能な不飽和部分を含まない、市販のTPUを、同様に成形および照射した。照射された板を、1−2グラムのサンプルに切断し、そして実施例7から14で述べたようなTHFおよびNMP中における溶媒試験を行った。一般的に、CD値は、10MRを照射したサンプルで55%から66%の範囲、および20MRおよびより高い電子ビームの線量を照射したサンプルで85%から97%の範囲である。非照射サンプルおよび照射コントロールポリマーは全て、THFおよびNMP中で可溶性であり、架橋が起こっていないことを示す。その結果を表5に示す。
【0089】
【表5−1】

【0090】
【表5−2】

Estane(登録商標)58315 TPU MDI、ポリエーテルポリオール、ブタンジオールから作製されたポリエーテルベースTPUであり、そしてLubrizol Advanced Materials,Inc.から市販されている。
Estane(登録商標)58271 TPU MDI、ポリエステルポリオール、およびブタンジオールから作製されたポリエステルベースTPUであり、そしてLubrizol Advanced Materials,Inc.から市販されている。
【0091】
実施例47−48
これらの実施例において、圧縮成形板を、実施例7および8で合成したTPUから成形し、そして続いて10および20MRad(MR)の線量の電子ビームを照射する。ASTM D5279−08に従って、動的機械分析(DMA)を、照射されたTPUに対して行う。コントロールとして、架橋可能な不飽和部分を含まない、市販のTPUを同様に試験する。3℃/分の加熱速度および0.1%のひずみ、および1Hzの振動数で、引っ張りモードの動的機械分析器を用いて、温度スイープ実行(temperature sweep run)を行う。
【0092】
それに加えて、クリープ回復測定を、ASTM D2990で述べた方法を用いて、90℃で、照射されたサンプルに対して行う。25,000Paの一定の負荷をサンプルに適用し、そして60秒後に除去して、サンプルを回復させる。負荷の除去後に回復しなかった変形を、クリープ%として報告する。DMAおよびクリープ回復分析のデータを、表6で報告する。
【0093】
【表6】

Estane(登録商標)58315 TPU MDI、ポリエーテルポリオール、ブタンジオールから作製されたポリエーテルベースTPUであり、そしてLubrizol Advanced Materials,Inc.から市販されている。
【0094】
実施例49−50
実施例12および34のTPUから成形された、電子ビーム照射された圧縮成形板(6インチ×6インチ×30ミル)を、200℃の対流式オーブンに6時間入れる。6時間後、サンプルの外見および物理的状態を、目視検査によって決定する。架橋可能な不飽和部分を含まない、市販のTPUを、同様に試験する。その結果を表7に示す。
【0095】
【表7】

Estane(登録商標)58315 TPU MDI、ポリエーテルポリオール、ブタンジオールから作製されたポリエーテルベースTPUであり、そしてLubrizol Advanced Materials,Inc.から市販されている。
【0096】
実施例51−52
実施例23および34において合成されたTPUの、照射された試験片を、Fuel Cに入れて、そして燃料中に1週間浸した後、重量の増加/喪失を測定することによって、膨張パーセント(ASTM D471による)を測定する。架橋可能な不飽和部分を含まない、市販のTPUを、同様に試験する。その結果を表8に示す。
【0097】
【表8】

Estane(登録商標)58887 TPU MDI、ポリエーテルポリオール、ブタンジオールから作製されたポリエーテルベースTPUであり、そしてLubrizol Advanced Materials,Inc.から市販されている。
Estane(登録商標)58219 TPU MDI、ポリエーテルポリオール、ブタンジオールから作製されたポリエーテルベースTPUであり、そしてLubrizol Advanced Materials,Inc.から市販されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)末端ヒドロキシル化中間体、(2)ポリイソシアネート、(3)飽和グリコール鎖延長剤、および(4)炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤、の反応生成物を含む架橋可能な熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
前記炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤が、以下の構造式:
【化9】

のグリコール鎖延長剤であり、
ここでR基は、同じまたは異なり得、そして1から約7個の炭素原子を含むアルキレン基を表し、Rは水素原子または1から約5個の炭素原子を含むアルキル基を表し、そしてRは、モノアリルエーテル基を表し、そして該炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤が、TPUの全重量の約0.5重量パーセントから約20重量パーセントの範囲内にあるレベルで、前記熱可塑性ポリウレタンに存在する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
前記炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤が、TPUの全重量の約1重量パーセントから約10重量パーセントの範囲内にあるレベルで、前記熱可塑性ポリウレタンに存在する、請求項2に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
が、構造式:−(CHn’−O−CH−CH=CHのモノアリルエーテル基を表し、ここでn’は、1から約7の整数を表す、請求項3に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
が、メチレン基を表す、請求項4に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
が、エチル基を表す、請求項5に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
nが、1から3の整数を表す、請求項6に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項8】
前記グリコール鎖延長剤が、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
前記炭素−炭素二重結合が、アリル部分として前記グリコール鎖延長剤に存在する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
前記グリコール鎖延長剤が、モノアリルエーテル部分を含む、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項11】
前記末端ヒドロキシル化中間体が、末端ヒドロキシル化ポリエーテル中間体、末端ヒドロキシル化ポリエステル中間体、末端ヒドロキシル化ポリカーボネート中間体、末端ヒドロキシル化ポリカプロラクトン中間体、およびその混合物から選択される、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項12】
前記末端ヒドロキシル化中間体が、末端ヒドロキシル化ランダムコポリエステル中間体である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項13】
前記ポリイソシアネートが、芳香族ジイソシアネートである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項14】
前記芳香族ジイソシアネートが、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート、およびトルエンジイソシアネートから選択される、請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項15】
前記芳香族ジイソシアネートが、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)である、請求項13に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項16】
前記末端ヒドロキシル化ポリエステル中間体が、ポリ(ブチレンヘキシレンアジピン酸)グリコールである、請求項12に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項17】
前記炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤が、TPUの全重量の約1.5重量パーセントから約15重量パーセントの範囲内にあるレベルで、前記熱可塑性ポリウレタンに存在する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項18】
成形物品を製造するプロセスであって、(a)架橋可能な熱可塑性ポリウレタン組成物を、該熱可塑性ポリウレタン組成物の融点より高い温度に加熱する工程であって、ここで該熱可塑性ポリウレタン組成物は、(1)末端ヒドロキシル化中間体、(2)ポリイソシアネート、(3)飽和グリコール鎖延長剤、および(4)炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤、の反応生成物から成る、工程;(b)該熱可塑性ポリウレタン組成物を、型へ注入する工程;(c)該型中の該熱可塑性ポリウレタン組成物を、該熱可塑性ポリウレタン組成物の融点より低い温度に冷却して、成形物品を生成する工程;(d)該成形物品を該型から取り出す工程;および(e)該成形物品を照射に曝露して、該熱可塑性ポリウレタン組成物を架橋させて熱硬化性物質にする工程を含む、プロセス。
【請求項19】
前記照射は、電子ビーム照射である、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
熱硬化性チューブを製造するプロセスであって、(a)架橋可能な熱可塑性ポリウレタン組成物を、該熱可塑性ポリウレタン組成物の融点より高い温度に加熱する工程であって、ここで該熱可塑性ポリウレタン組成物は、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物である、工程;(b)該熱可塑性ポリウレタン組成物を、熱押出成形チューブへ押出成形する工程;(c)該熱押出成形チューブを、該熱可塑性ポリウレタン組成物の融点より低い温度に冷却して、未硬化押出成形チューブを生成する工程;および(d)該未硬化押出成形チューブを、照射に曝露して、該熱可塑性ポリウレタン組成物を架橋させて熱硬化性物質にし、そして該熱硬化性チューブを生成する工程を含む、プロセス。
【請求項21】
コーティングされた電線を製造するプロセスであって、(a)金属ワイヤーを、管型クロスヘッドダイに通す工程;(b)請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物、(2)ポリイソシアネート、(3)飽和グリコール鎖延長剤、および(4)炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤である、架橋可能な熱可塑性ポリウレタン組成物を、該金属ワイヤーを囲むチューブに押出成形する工程であって、ここで該ワイヤーが該管型クロスヘッドダイを出る速度より遅い速度で、該架橋可能な熱可塑性ポリウレタン組成物が該管型クロスヘッドダイを出る、工程;(c)該管型クロスヘッドダイを出るときに、該熱可塑性ポリウレタン組成物のチューブが、該ワイヤーに向かって縮小するように、ダイキャビティを減圧して、未硬化のコーティングを有するワイヤーを生成する工程;および(d)該未硬化のコーティングを有する該ワイヤーを、照射に曝露して、該熱可塑性ポリウレタン組成物を架橋させて熱硬化性物質にし、そして該コーティングされた電線を生成する工程を含む、プロセス。
【請求項22】
(1)飽和末端ヒドロキシル化中間体、(2)炭素−炭素二重結合を含む不飽和末端ヒドロキシル化中間体、(3)ポリイソシアネート、および(4)飽和グリコール鎖延長剤、の反応生成物を含む架橋可能な熱可塑性ポリウレタン。
【請求項23】
前記不飽和末端ヒドロキシル化中間体は、以下の構造式:
【化10】

の不飽和末端ヒドロキシル化中間体であり、
ここでAは独立に−ROHおよび以下のように表される構造から選択される部分を表し、
【化11】

ここでR、R、RおよびRは、同じまたは異なり得、そして1から約10個の炭素原子を含む、二価の直鎖状および分枝状アルキレン部分を表し、Rはまた、−R−O−R−によって表される二価のエーテル基を表し得、ここでRは独立に1から5個の炭素原子を含む二価のアルキレン部分から選択され、n:mの比は、約0から約35の範囲であり、そしてyは約1から約20までの範囲の整数である、請求項22に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項24】
は4個の炭素原子を含み、Rは4個の炭素原子を含み、Rは1個の炭素原子を含み、そしてRは1個の炭素原子を含む、請求項23に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項25】
(1)飽和末端ヒドロキシル化中間体、(2)炭素−炭素二重結合を含む不飽和末端ヒドロキシル化中間体、(3)飽和グリコール鎖延長剤、(4)炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤、および(5)ポリイソシアネート、の反応生成物を含む架橋可能な熱可塑性ポリウレタン。
【請求項26】
前記炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤が、TPUの全重量の約1.5重量パーセントから約15重量パーセントの範囲内にあるレベルで、前記熱可塑性ポリウレタンに存在する、請求項25に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項27】
ワイヤーおよびケーブル構築物であって、
(a)少なくとも1つの金属伝導体であって、該伝導体は、非伝導性ポリマー材料で絶縁されている、少なくとも1つの金属伝導体;および
(b)該絶縁された金属伝導体を覆う被覆であって、該被覆は架橋可能な熱可塑性ポリウレタン組成物であり、該架橋可能な熱可塑性ポリウレタン組成物は、以下:
(i)少なくとも1つのポリイソシアネート;
(ii)少なくとも1つの飽和グリコール鎖延長剤;
(iii)少なくとも1つの、炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤;
(iv)少なくとも1つの飽和末端ヒドロキシル化中間体;および
(v)必要に応じて、少なくとも1つの、炭素−炭素二重結合を含む不飽和末端ヒドロキシル化中間体、
の反応生成物を含む、被覆、
を含む、ワイヤーおよびケーブル構築物。
【請求項28】
前記構築物は、2〜8個の絶縁された金属伝導体を有する、請求項27に記載のワイヤーおよびケーブル構築物。
【請求項29】
前記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも1つの難燃剤をさらに含む、請求項27に記載のワイヤーおよびケーブル構築物。
【請求項30】
架橋可能な熱可塑性ポリウレタンであって、該熱可塑性ポリウレタンは、以下:
(1)少なくとも1つのポリイソシアネート;
(2)少なくとも1つの飽和グリコール鎖延長剤;
(3)少なくとも1つの、炭素−炭素二重結合を含むグリコール鎖延長剤;
(4)必要に応じて、少なくとも1つの飽和末端ヒドロキシル化中間体;
(5)必要に応じて、少なくとも1つの、炭素−炭素二重結合を含む不飽和末端ヒドロキシル化中間体、
の反応生成物を含み、
該熱可塑性ポリウレタンは、60ショアDより高い硬さを有する、
架橋可能な熱可塑性ポリウレタン。
【請求項31】
前記反応生成物は、いかなる末端ヒドロキシル化中間体も含まず、そして前記熱可塑性ポリウレタンは、80ショアDより高い硬さを有する、請求項30に記載の架橋可能な熱可塑性ポリウレタン。
【請求項32】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートである、請求項30に記載の架橋可能な熱可塑性ポリウレタン。
【請求項33】
前記不飽和末端ヒドロキシル化中間体は、以下の構造式:
【化12】

の不飽和末端ヒドロキシル化中間体であり、
ここでAは独立に−ROHおよび以下のように表される構造から選択される部分を表し、
【化13】

ここでR、R、RおよびRは、同じまたは異なり得、そして1から約10個の炭素原子を含む、二価の直鎖状および分枝状アルキレン部分を表し、Rはまた、−R−O−R−によって表される二価のエーテル基を表し得、ここでRは独立に1から5個の炭素原子を含む二価のアルキレン部分から選択され、n:mの比は、約0から約35の範囲であり、そしてyは約1から約20までの範囲の整数である、請求項25〜32に記載の架橋可能な熱可塑性ポリウレタン。
【請求項34】
電子ビーム照射によって架橋される、請求項1〜33のいずれかに記載の架橋可能な熱可塑性ポリウレタン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−518147(P2013−518147A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550132(P2012−550132)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/021960
【国際公開番号】WO2011/091196
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】