説明

架橋型熱可塑性エラストマー組成物および該組成物の製造方法

【課題】従来の架橋型熱可塑性エラストマーよりも優れた耐油性を有し、かつ従来の架橋型熱可塑性エラストマーと同等の機械特性を有する、架橋型熱可塑性エラストマー組成物および該組成物の製造方法、ならびに該組成物からなる成形体を提供すること。
【解決手段】本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させることにより得られ、前記多価イソシアネートが、ジイソシアネートおよび3価以上の多価イソシアネートであるか、前記多価イソシアネートが、ジイソシアネートでありかつ、前記反応が、ジイソシアネートおよびポリエステルポリカルボン酸(G)から求まるNCOインデックスが1.4〜2.9の範囲内で行われることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋型熱可塑性エラストマー組成物および該組成物の製造方法に関し、詳しくは、結晶性オレフィン重合体の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸と、多価イソシアネートとを反応させることにより得られる架橋型熱可塑性エラストマー組成物および該組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
架橋型熱可塑性エラストマー(以下、TPVとも記す)は、機械特性、生産性(製造コスト)、環境対応性(リサイクル性)、成形性および軽量性等の優位性を生かして、従来の加硫ゴムに代わって、自動車部品、電気部品・工業部品、履物等の雑貨等の様々な分野で用いられている。
【0003】
従来の代表的なTPVは、エチレン・プロピレン(・非共役ジエン)共重合体と結晶性ポリオレフィンとの混合物を、過酸化物を用いて、動的架橋させて得られる過酸化物架橋TPV(以下、PO架橋TPVとも記す)である。
【0004】
しかし、このPO架橋TPVは、過酸化物によって結晶性ポリオレフィン成分が分解することによる分子量低下が起こり、充分な成形性が得られるものの、機械特性(引張強度、伸び等)が充分ではないという問題があった。
【0005】
そこで、機械特性を改善するために、反応性置換基を有する弾性重合体を、該反応性置換基と反応する基を有する分子量約2000未満の架橋剤を用いて架橋を行うことにより得られる、架橋型熱可塑性エラストマーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2000−515184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された架橋型熱可塑性エラストマーであっても、耐油性の面で、前記したPO架橋TPV同様に、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム(以下、NBRとも記す)等の極性ゴムより劣るため、極性ゴムが有効な用途には充分に参入できていない。
【0008】
本発明は、耐油性が、特許文献1に記載された架橋型熱可塑性エラストマーやPO架橋TPVより優れ、NBR等の極性ゴムと同等であって、機械特性が、特許文献1に記載された架橋型熱可塑性エラストマーと同等であって、生産性(製造コスト)、環境対応性(リサイクル性)、軽量性が、前記PO架橋TPVと同等であって、NBR等の極性ゴムより優れた、架橋型熱可塑性エラストマー組成物および該組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、結晶性オレフィン重合体の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸と、多価イソシアネートとを反応させることにより得られる架橋型熱可塑性エラストマー組成物は、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させることにより得られる。
【0011】
前記多価イソシアネートが、ジイソシアネートおよび3価以上の多価イソシアネートであることが好ましい。また、前記3価以上の多価イソシアネートが、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートであることが好ましい。
【0012】
また、前記多価イソシアネートが、ジイソシアネートであってもよく、この場合には、前記反応が、ジイソシアネートおよびポリエステルポリカルボン酸(G)から求まるNCOインデックスが1.4〜2.9の範囲内で行われることが好ましい。
【0013】
前記ポリエステルポリカルボン酸(G)の酸価をX〔mgKOH/g〕とし、水酸基価をY〔mgKOH/g〕とすると、Xが20〜70mgKOH/gであり、Y≦X/8であることが好ましい。
【0014】
前記反応が、動的架橋により行われることが好ましい。
前記反応に用いる、前記結晶性オレフィン重合体(A)の重量(α)と、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートの合計重量(β)との比(α/β)が、10/90〜90/10であることが好ましい。
【0015】
本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造方法は、結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させることを特徴とする。
【0016】
本発明の成形体は、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)からなる。
本発明の成形体は、様々な分野のゴム・エラストマー製品として用いることができるが、特に、自動車用部品ならばブーツ、ホース、チューブ、ベルト、シール、パッキン、ガスケット、電気機器・機械用部品ならばロール、ベルト、電線被覆、リング、パッキン、雑貨ならば履物ゴム底、ゴム引布、ゴム手袋などに用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、耐油性が、特許文献1に記載された架橋型熱可塑性エラストマーやPO架橋TPVより優れ、NBR等の極性ゴムと同等であって、機械特性が、特許文献1に記載された架橋型熱可塑性エラストマーと同等であって、生産性(製造コスト)、環境対応性(リサイクル性)、軽量性が、前記PO架橋TPVと同等であって、NBR等の極性ゴムより優れている。このため、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)から形成される成形体は、様々な用途に用いることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明について具体的に説明する。
本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させることにより得られる。
【0019】
〔結晶性オレフィン重合体(A)〕
本発明に用いる結晶性オレフィン重合体(A)としては特に限定は無く、従来公知の結晶性オレフィン重合体を用いることができる。
【0020】
なお、結晶性とは、示差走査熱量測定(DSC)にて、融点(Tm)が測定されることを意味する。
結晶性オレフィン重合体(A)としては、例えばエチレン系重合体、プロピレン系重合体が挙げられる。エチレン系重合体としては、エチレン単独重合体、エチレン・α−オレフィン共重合体(好ましくは、エチレンと、炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体)等を用いることができ、プロピレン系共重合体としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等(好ましくは、プロピレンと、炭素数2または4〜10のα−オレフィンとの共重合体)を用いることができる。
【0021】
これらの中でも、結晶性オレフィン重合体(A)としては、プロピレン系重合体を用いることが物性および成形性の観点から好ましい。
プロピレン系重合体としては、沸騰ヘプタン不溶部のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.955以上で、かつ、沸騰ヘプタン可溶部の含有量が9重量%以下であるプロピレン系重合体が好ましく、具体的にはプロピレン単独重合体や、プロピレンと少量の炭素数2または4〜10のα- オレフィンとの共重合体が好ましい。
【0022】
このような炭素数2、4〜10のα- オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1- ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1- ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。中でも、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1- ペンテンが好ましい。前記α−オレフィンは一種単独で用いても、二種以上を用いてもよい。
【0023】
前記プロピレン系重合体が、プロピレンと少量の炭素数2または4〜10のα- オレフィンとの共重合体である場合には、共重合体中、炭素原子数2または4〜10のα−オレフィンから導かれる構成単位が、通常は10モル%以下、好ましくは5モル%未満である。
【0024】
本発明において、結晶性オレフィン重合体(A)として、沸騰ヘプタン不溶部のアイソタクチック・ペンタッド分率が0.955以上で、かつ、沸騰ヘプタン可溶部の含有量が9重量%以下であるプロピレン系重合体を用いると、高強度の成形体を形成可能な架橋型熱可塑性エラストマー樹脂組成物(D)を得ることができるため好ましい。
【0025】
なお、沸騰ヘプタン不溶部のアイソタクチック・ペンタッド分率および沸騰ヘプタン可溶部の含有量は次のようにして測定される。
前記プロピレン系重合体5gを沸騰キシレン500mlに完全に溶解させた後、20℃に降温し4時間放置する。その後、濾別し20℃キシレン可溶部と不溶部に分離する。次いで、20℃キシレン不溶部をさらに沸騰n−ヘプタンで8時間ソックスレー抽出して抽出残渣と抽出物に分離する。この抽出残渣をプロピレン系重合体の「沸騰ヘプタン不溶部」とする。また、本明細書におけるプロピレン系重合体の「沸騰ヘプタン可溶部」とは、20℃キシレン可溶部と先の沸騰n−ヘプタン抽出物とを足し合わせたものである。この沸騰ヘプタン可溶部の重量と、測定に供した全プロピレン系重合体重量から、沸騰ヘプタン可溶部の重量百分率を算出する。
【0026】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A ZambelliらによってMacromolecules 925 (1973)に発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるプロピレン系重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。換言すれば、アイソタクチック・ペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、ピークの帰属に関しては、Macromolecules ,678(1975)にMacromolecules ,925(1973)の訂正版が記載されているのでこれに基づいて行なうものとする。
【0027】
具体的には、13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定する。この方法により英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORY のNPL標準物質CRMNo.M19−14 Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ0.944であった。
【0028】
本発明で好ましく用いられる上記プロピレン系重合体は、例えば特開昭53−33289号公報に記載の方法により調製することができる。また、重合時にルイス塩基を使用することもできる。ルイス塩基を使用すると、一般に沸騰ヘプタン可溶部の含有量は減少するが、沸騰ヘプタン不溶部のアイソタクチック・ペンタッド分率は変化しない。
【0029】
上記のようなプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238,230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは0.5〜80g/10分、さらに好ましくは0.5〜60g/10分である。メルトフローレートが上記範囲内にあるプロピレン系重合体を用いると、成形性が良好な架橋型熱可塑性エラストマー樹脂組成物(D)が得られ、しかも、機械特性、耐油性等に優れる成形体を得ることができる。
【0030】
本発明に用いる結晶性オレフィン重合体(A)は、公知の方法で製造したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、前記結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、後述のポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させることにより得られる。すなわち、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、前記結晶性オレフィン共重合体(A)と、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートが反応することにより得られる反応物とを含む。
【0031】
本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、前記反応に用いる、前記結晶性オレフィン重合体(A)の重量(α)と、後述するポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートの合計重量(β)との比(α/β)が、通常は10/90〜90/10であり、好ましくは、15/85〜60/40である。前記結晶性オレフィン重合体(A)の重量(α)と、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートの合計重量(β)との比(α/β)が上記範囲内であると、流動性が良好で成形性に優れる架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)が得られ、該組成物から、外観に優れる成形体を得ることができる。
【0032】
〔ポリエステルポリカルボン酸(G)〕
本発明に用いるポリエステルポリカルボン酸(G)としては特に限定はなく、ポリエステルポリカルボン酸(G)は例えば、多価カルボン酸と、多価アルコールとの反応により得ることができる。多価カルボン酸としては、ジカルボン酸、三価以上の多価カルボン酸が挙げられる。
【0033】
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのジカルボン酸、および、それらジカルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。なお、ジカルボン酸等の多価カルボン酸のアルキルエステルは、多価カルボン酸と同様に多価アルコールとして反応し、ポリエステルポリカルボン酸(G)を得ることができるため、多価カルボン酸として、多価カルボン酸のアルキルエステルを用いることが可能である。
【0034】
また、前記多価カルボン酸として、カルボキシル基を三つ以上有する、三価以上の多価カルボン酸を用いることもできる。
これらジカルボン酸や、三価以上の多価カルボン酸は、単独で使用または2種類以上を併用することができる。
【0035】
多価アルコールとしては、例えば、ヒドロキシル基を2つ有するジオール、3つ以上有する三価以上の多価アルコールが挙げられる。
ジオールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,18−オクタデカンジオールなどの炭素数2−22アルカンジオール、例えば、2−ブテン−1,4−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオールなどのアルケンジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。
【0036】
また、ジオールとして、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAまたはその炭素数2−4のアルキレンオキサイド付加体などの脂環族ジオールが挙げられる。
【0037】
また、ジオールとして、例えば、レゾルシン、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、これらビスフェノール類の炭素数2−4のアルキレンオキサイド付加体などの芳香族ジオールが挙げられる。
【0038】
さらに、ジオールとして、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレンブロックグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどのポリエーテルジオールが挙げられる。
【0039】
また、多価アルコールとしては、ヒドロキシル基を3つ以上有する、三価以上の多価アルコールを用いることもできる。
三価以上の多価アルコールとしては、例えばグリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2,4−ジヒドロキシ−3−(ヒドロキシメチル)ペンタン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(炭素数8〜24)などのトリオール、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトールなどのヒドロキシル基を4つ以上有するポリオール等が挙げられる。
【0040】
これら多価アルコールは、単独で使用または2種類以上を併用することができる。多価アルコールとしては、ジオールが好ましい。
なお、ジカルボン酸とジオールとの反応により得られるポリエステルポリカルボン酸を、ポリエステルジカルボン酸とも記す。
【0041】
本発明に用いるポリエステルポリカルボン酸(G)は、多価カルボン酸と多価アルコールとを、多価カルボン酸の酸基(カルボキシル基、カルボン酸エステル)が多価アルコールのヒドロキシル基より過剰となる割合(COOH/OHが1.0を超過する割合、好ましくは、1.01〜2.10の割合)で配合して、多価カルボン酸および多価アルコールをエステル化反応させることにより、得ることができる。
【0042】
エステル化反応は、例えば、縮合反応またはエステル交換反応であり、公知の条件でよく、例えば、常圧、不活性ガス雰囲気とし、その反応温度が100〜250℃で、その反応時間が1〜50時間である。エステル化反応には、必要により、触媒(有機錫触媒、有機チタン触媒、アミン触媒、後述するアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩など)や溶媒などを用いることができる。
【0043】
このようにして得られるポリエステルポリカルボン酸(G)は、数平均分子量が通常は200〜20000であり、好ましくは、500〜10000である。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。GPC測定では、測定されたクロマトグラムの最大頻度の分子量(保持時間)を含むピークの数平均分子量を、標準ポリエチレングリコールを使用して作成された検量線を基準として算出する。これによって、数平均分子量は、標準ポリエチレングリコールの換算値として算出される。
【0044】
また、ポリエステルポリカルボン酸(G)の酸価が、通常は5〜500mgKOH/gであり、好ましくは10〜250mgKOH/gであり、特に好ましくは20〜70mgKOH/gである。
【0045】
また、ポリエステルポリカルボン酸(G)の水酸基価が、通常は5mgKOH/g以下であり、好ましくは3mgKOH/g以下である。
さらに、ポリエステルポリカルボン酸(G)の酸価をX〔mgKOH/g〕とし、水酸基価をY〔mgKOH/g〕とすると、Xが20〜70mgKOH/gであり、Y≦X/8であることが、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の耐熱性の観点から、特に好ましい。
【0046】
また、ポリエステルポリカルボン酸(G)は、コーンプレート粘度計で測定した80℃における粘度が、好ましくは30000mPa・s以下である。
ポリエステルポリカルボン酸(G)は、単独で使用または2種類以上を併用することができる。
【0047】
ポリエステルポリカルボン酸(G)としては、Ryで表わされるジオールとジカルボン酸とのオリゴマーが好適に用いられる。
【0048】
【化1】

なお、一般式Ryにおいて、mは1〜20であり、R3はそれぞれ独立に、分岐を有していてもよい炭素数1〜15のアルキレン基または炭素数6〜15の芳香族基であり、R4はそれぞれ独立に、分岐を有していてもよい炭素数1〜15のアルキレン基である。また、前記R3はHOOC−R3−COOH構造のカルボン酸の残基であり、HOOC−R3−COOH構造のカルボン酸の具体例としては下記一般式(5)で表わされることが好ましい。また、前記R4はHO−R4−OH構造のジオールの残基であり、HO−R4−OH構造のジオールの具体例としては下記一般式(6)で表わされることが好ましい。
【0049】
【化2】

【0050】
【化3】

ポリエステルポリカルボン酸(G)の非結晶性、耐湿性およびポリエステルポリカルボン酸(G)の製造における生産性(製造コスト)の観点から、前記式(5)ではアジピン酸が、前記式(6)ではネオペンチルグリコールが、特に好ましい。
【0051】
〔多価イソシアネート〕
本発明に用いる多価イソシアネートとしては特に限定はないが、通常は以下の二つの態様があげられる。第一の態様としては、多価イソシアネートとして、ジイソシアネートおよび3価以上の多価イソシアネートを用いる態様である。第二の態様としては、多価イソシアネートとして、ジイソシアネートを用い、3価以上の多価イソシアネートを用いない態様であり、第二の態様においては、ジイソシアネートおよびポリエステルポリカルボン酸(G)から求まるNCOインデックスが1.4〜2.9の範囲内で反応を行う。
【0052】
ジイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−、2,3−または1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0053】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添キシリレンジイソシアネート、H6XDI)、2,5−または2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナンもしくはその混合物(NBDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0054】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω′−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
【0055】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、m−またはp−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0056】
本発明に用いるジイソシアネートとしては、下記式(I)〜(V)から選択される少なくとも1種の式で表されるジイソシアネートが好ましい。
【0057】
【化4】

(前記式(I)〜(IV)において、Xはそれぞれ独立に、イソシアネート基または、−Y−NCO基であり、Yは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。前記式(V)において、nは3〜8である。)
【0058】
前記式(I)〜(V)から選択される少なくとも1種の式で表されるジイソシアネートは、直鎖的構造を有するため、多価イソシアネートの少なくとも一部として、前記式(I)〜(V)から選択される少なくとも1種の式で表されるジイソシアネートを用いると、他の多価イソシアネートのみを用いて製造した架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)と比べて、得られる架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の機械特性、すなわち引張強さ、伸びに優れる傾向があり好ましい。
【0059】
また、前記ジイソシアネートは、式(I)〜(IV)から選択される少なくとも1種の式で表されるジイソシアネートであることが本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の機械特性の観点から好ましく、(III)および(IV)から選択される少なくとも1種の式で表わされるジイソシアネートであることがより好ましく、(IV)で表わされるジイソシアネートであることが特に好ましい。
【0060】
前記式(I)〜(IV)において、Xはそれぞれ独立に、イソシアネート基または、−(CH2)m−NCO基(但し、mは1〜4である。)であることが好ましい。
前記式(I)〜(IV)において、Rは水素原子であることが好ましい。
【0061】
式(I)で表わされるジイソシアネートとしては、下記式(I−1)で表わされるジイソシアネートが好ましく、式(II)で表わされるジイソシアネートとしては、下記式(II−1)で表わされるジイソシアネートが好ましく、式(III)で表わされるジイソシアネートとしては、下記式(III−1)、(III−2)で表わされるジイソシアネートが好ましく、式(IV)で表わされるジイソシアネートとしては、下記式(IV−1)、(IV−2)で表わされるジイソシアネートが好ましく、式(V)で表わされるジイソシアネートとしては、下記式(V−1)、(V−2)で表わされるジイソシアネートが好ましい。
【0062】
【化5】

前記三価以上の多価イソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体(例えば、三井化学(株)製タケネートD−170HN)、イソホロンジイソシアネートの三量体(例えば、エボニック デグサ ジャパン(株)製Vestanat T1890/100)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)の3核体以上の多核体であるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等を用いることができる。
【0063】
前記ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートは、ポリメリックMDIとして市販されている。ポリメリックMDIとしては、例えば、三井化学(株)製コスモネートシリーズのコスモネートM−50、コスモネートM−100、コスモネートM−200、コスモネートM−300、コスモネートM−400、コスモネートM−700、コスモネートM−1500等が挙げられる。
【0064】
なお、市販されているポリメリックMDIは、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート (4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアナート)等のジイソシアネートとの混合物として流通している。
【0065】
このため、多価イソシアネートとして、市販されているポリメリックMDIを用いる場合には、ポリメリックMDI以外の多価イソシアネートを用いない場合であっても、結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸(G)と、ジイソシアネートと、3価以上の多価イソシアネートとを反応させることができる。
【0066】
なお、前記ポリメリックMDIとしては、ジイソシアネートの有するイソシアネート基の全モル数と、ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと、ジイソシアネートとの混合物)の有するイソシアネート基の全モル数との比(ジイソシアネートの有するイソシアネート基の全モル数/ポリメリックMDIの有するイソシアネート基の全モル数)が、0.2〜0.8であることが好ましい。
【0067】
また、三価以上の多価イソシアネートには、上記したジイソシアネートの多量体(例えば、三量体以上の多量体など)、上記したジイソシアネートまたは多量体と、水との反応により生成するビウレット変性体、アルコールまたは上記した多価アルコールとの反応により生成するアロファネート変性体、炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオン変性体、または、上記した多価アルコールとの反応により生成するポリオール変性体などが含まれる。さらに、三価以上の多価イソシアネートには、フェニルジイソチオシアネートなどの硫黄含有ジイソシアネートが含まれる。
【0068】
前記第一の態様すなわち、多価イソシアネートとして、ジイソシアネートおよび3価以上の多価イソシアネートを用いる場合には、投入する全イソシアネートが有するイソシアネート基の全モル数に対する、ジイソシアネートが有するイソシアネート基の全モル数の比、すなわち、(ジイソシアネートのイソシアネート基の全モル数/全イソシアネートのイソシアネート基の全モル数)が、好ましくは0.1〜0.9であり、より好ましくは0.2〜0.8である。
【0069】
また、前記第二の態様の場合には、多価イソシアネートとして、ジイソシアネートのみを用い、ジイソシアネートおよびポリエステルポリカルボン酸(G)から求まるNCOインデックスが1.4〜2.9の範囲内で反応を行う。
【0070】
前記多価イソシアネートを用いることにより、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、耐油性が、特許文献1に記載された架橋型熱可塑性エラストマーやPO架橋TPVより優れ、かつNBR等の極性ゴムと同等であり、更に、機械特性が、特許文献1に記載された架橋型熱可塑性エラストマーと同等であって、また、生産性(製造コスト)が、前記PO架橋TPVと同等であって、NBR等の極性ゴムより優れている。
【0071】
本発明においては、ジイソシアネートと、ポリエステルポリカルボン酸(G)とが反応することにより得られる構造は、機械特性、すなわち、引張強さ、伸びの向上に有効である。また、前記第一の態様においては、3価以上の多価イソシアネートと、ポリエステルポリカルボン酸とが反応することにより、架橋構造を形成することが可能であり、該架橋構造は、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の圧縮永久ひずみの向上に有効である。
【0072】
また、前記第二の態様においては、ジイソシアネートが有する、イソシアネート基が、ポリエステルポリカルボン酸(G)が有するカルボキシル基に対して、過剰量となる量で、ジイソシアネートおよびポリエステルポリカルボン酸(G)が用いられる。カルボキシル基に対して、イソシアネート基が過剰量となるようにジイソシアネートを用いると、ポリエステルポリカルボン酸(G)とジイソシアネートとが反応することにより形成されるアミド結合が有するプロトンに対して、さらに別のジイソシアネートが反応することにより架橋構造を形成することができる。該架橋構造は、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の圧縮永久ひずみの向上に有効である。
これらのジイソシアネートは、1種単独で用いてもよく、2種以上で用いてもよい。
【0073】
〔架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)〕
本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させることにより得られる組成物である。
【0074】
該架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、前記結晶性オレフィン重合体(A)を含み、さらに前記ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させることにより得られる反応物を含む。前記ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させることにより得られる反応物の少なくとも一部が架橋体を形成しているため、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、耐油性が、特許文献1に記載された架橋型熱可塑性エラストマーやPO架橋TPVに優れており、かつNBR等の極性ゴム同等であると考えられる。
【0075】
架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)が、架橋体を有することは、該組成物(D)がゲル(=架橋体)を有することから判断できる。このゲルの存在は、JIS K6769「架橋ポリエチレン管」及びJIS K6796「架橋ポリエチレン製(PE−X)管及び継手−ゲル含量の測定による架橋度の推定」に従い、ゲル分率を測定することにより確認することができる。
【0076】
また、前記ゲル分率から、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を得る際に用いた、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートの内、反応により得られる架橋体の量を示す尺度である架橋反応度(%)を求めることができる。
【0077】
架橋反応度(%)は、前記ゲル分率を、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を得る際に用いた、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートの仕込分量で除し、100を乗ずることにより求めることができる。なお、架橋反応度(%)を算出するための式を以下に示す。
【0078】
架橋反応度(%)=(ゲル分率(重量%))/(ポリエステルポリカルボン酸(G)の仕込分量(重量%)+多価イソシアネートの仕込分量(重量%))×100
なお、ポリエステルポリカルボン酸(G)の仕込分量(重量%)+多価イソシアネートの仕込分量(重量%)は、以下の式により算出される。
【0079】
ポリエステルポリカルボン酸(G)の仕込分量(重量%)+多価イソシアネートの仕込分量(重量%)=[ポリエステルポリカルボン酸(G)の仕込量(重量部)+多価イソシアネートの仕込量(重量部)/反応に用いる全原料の仕込み量(重量部)]×100
なお、反応に用いる全原料としては、前述の結晶性オレフィン重合体(A)、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートだけではなく、任意に用いられる成分、例えば、後述の軟化剤、添加剤等を含む。
【0080】
上記式によって算出される架橋反応度(%)は、80〜120%が好ましく、更に好ましくは90〜120%である。
架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)のメルトフローレート(MFR)は、成形性の観点から、ASTM D1238に準拠し、230℃、10.0kg荷重で測定した値が、好ましくは0.1〜100g/10minであり、より好ましくは1〜80g/10minである。
【0081】
本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)には、前記結晶性オレフィン重合体(A)および、前記ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させることにより得られる反応物以外の成分が配合されていてもよい。例えば、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)には、流動性や硬度の調整剤として軟化剤が配合されていてもよい。
【0082】
軟化剤としては具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;
コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;
ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、椰子油等の脂肪油系軟化剤;
トール油;
サブ、(ファクチス);
蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;
リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸および脂肪酸塩;
ナフテン酸;
パイン油、ロジンまたはその誘導体;
テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質;
フタル酸ジオクチル、アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル等のエステル系軟化剤;
マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、末端変性ポリイソプレン、水添末端変性ポリイソプレン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油などが挙げられる。
【0083】
本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)における、軟化剤の配合量は、前記反応に用いる、前記結晶性オレフィン重合体(A)、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートの合計重量を100重量部とすると、通常0〜60重量部、好ましくは0〜50重量部の範囲が好ましい。
【0084】
架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)に、軟化剤が配合される場合には、前記結晶性オレフィン重合体(A)に軟化剤を配合してもよく、結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させる際に軟化剤を配合してもよく、ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させた後で軟化剤を配合してもよい。
【0085】
また、本発明に係る架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、必要に応じて、スリップ剤、充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、着色剤、相溶化剤等の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合されていてもよい。
【0086】
このような添加剤は、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造工程で配合されてもよく、前記結晶性オレフィン重合体(A)に配合されてもよい。
スリップ剤としては、例えば脂肪酸アミド、シリコーンオイル、グリセリン、ワックス、パラフィン系オイルなどが挙げられる。
【0087】
充填剤としては、従来公知の充填剤、具体的には、カーボンブラック、クレー、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、ケイソウ土、シリカ、アルミナ、グラファイト、ガラス繊維などが挙げられる。
【0088】
相溶化剤としては、例えばエチレン・エチレングリコール共重合体、プロピレン・エチレングリコール共重合体などが挙げられる。
架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)における、相溶化剤の配合量は、前記反応に用いる、前記結晶性オレフィン重合体(A)、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートの合計重量を100重量部とすると、通常0〜30重量部、好ましくは0〜20重量部の範囲が好ましい。
【0089】
架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、前記結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートを反応させることにより得られる。
【0090】
多価イソシアネートとしては、ジイソシアネートおよび3価以上の多価イソシアネートを用いる態様(第一の態様)か、ジイソシアネートのみを用い、前記ジイソシアネートおよびポリエステルポリカルボン酸(G)から求まるNCOインデックスが1.4〜2.9の範囲内とする態様(第二の態様)が好ましい。
【0091】
第一の態様においては、前記反応が、多価イソシアネートおよびポリエステルポリカルボン酸(G)から求まるNCOインデックスが、通常は1.0〜4.0の範囲内であり、好ましくは1.05〜3.0の範囲内であり、さらに好ましくは1.05〜2.5の範囲内で行われることが好ましい。
【0092】
また、第二の態様においては、前記反応が、ジイソシアネートおよびポリエステルポリカルボン酸(G)から求まるNCOインデックスが、1.4〜2.9の範囲内、好ましくは1.5〜2.8の範囲内で行われることが好ましい。
【0093】
なお、NCOインデックスとは、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造に用いるポリエステルポリカルボン酸(G)の有するカルボキシル基の量[mol]と、多価イソシアネートが有するイソシアネート基の量[mol]との比(イソシアネート基/カルボキシル基)である。
【0094】
本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、前記反応に用いる、前記結晶性オレフィン重合体(A)の重量(α)と、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートの合計重量(β)との比(α/β)が、通常は10/90〜90/10であり、好ましくは、15/85〜60/40である。
【0095】
本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、海相が結晶性オレフィン重合体(A)であり、島相がポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートを反応させることにより得られる反応物である海島構造を形成することが好ましい。海島構造を形成する架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)から形成された成形体は物性、成形性に優れているため好ましい。架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)が海島構造を形成することの観察は、得られた架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)をTEM観察することにより行うことができる。架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の海島構造を観察する際には、前処理として、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)にトリミングによる面出しを施し試料とし、次いで試料をRuO4で染色を行い、凍結させた試料から超薄切片を作成し、カーボン補強を行い、測定試料とした。
【0096】
一般に、RuO4による染色では、結晶性ポリオレフィンは着色しにくいことが知られており、海相が、島相よりも染色が薄い場合には、海相が結晶性オレフィン重合体(A)であり、島相がポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートを反応させることにより得られる反応物であることが確認できる。
【0097】
なお、後述する実施例においては、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)のTEM観察により得られたTEM像は全て、海相が島相よりも染色が薄く、海相が結晶性オレフィン重合体(A)であり、島相がポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートを反応させることにより得られる反応物であることが確認された。
【0098】
また、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、溶融加工温度が200℃以上であることが好ましい。
本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートを反応させることにより得られる反応物を含有し、該反応物は親水性を有している。このため、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は耐油性に優れる。また、従来の架橋型熱可塑性エラストマー組成物と同等の機械特性を有しているため、各種成形体や、自動車部品等に用いられるエンジニアリングプラスチックの改質剤等として用いることができる。
【0099】
なお、耐油性については、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を、230℃でプレス成形した2mm厚シートから20mm×20mm×2mmの試験片を作成し、70℃の、JIS3号油相当であるIRM903油に72時間浸漬した前後の体積から式(I)に従い体積変化率ΔVを算出することにより評価することができる。
{(Tw-Td)/Td}×100=ΔV・・・・(I)
(式(I)において、Twは浸漬後の試験片体積であり、Tdは浸漬前の試験片体積である。)
【0100】
架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の、上記式(I)により求められる体積変化率ΔVが、通常は100〜1%であり、好ましくは50〜1%である。
【0101】
また、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、従来の架橋型熱可塑性エラストマー組成物と同等の機械特性を有する。架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)のJIS K6251に準拠して、引張試験を下記の条件で行った際の、破断時の引張強度および伸びが、通常は10MPa以上、250%以上である。引張試験の測定条件としては、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を用いて、プレス成形機によりシートを作製し、JIS3号試験片を打ち抜き、該試験片を用いて引張速度500mm/分の条件で行うことができる。
【0102】
さらに、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、軽量性にも優れる。軽量性の指標としては、密度があげられる。具体的には、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の密度(kg/m3)が、好ましくは850〜1100kg/m3であり、より好ましくは850〜1050kg/m3であり、特に好ましくは850〜1000kg/m3である。上記範囲では、従来の極性ゴムと比較して、充分軽量である。
【0103】
また架橋反応度(%)は、投入したポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートから反応により得られる架橋体の量を示す尺度であり、本発明の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、架橋反応度(%)が好ましくは80〜120%、より好ましくは90〜120%である。
【0104】
〔架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造方法〕
以下、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造方法について述べる。架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造方法は、結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させる方法である。
【0105】
架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の代表的な製造方法としては、前記結晶性オレフィン重合体(A)に、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートを導入し、ポリエステルポリカルボン酸(G)と多価イソシアネートとを動的架橋する方法が挙げられる。
【0106】
架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造方法において、結晶性オレフィン重合体(A)に、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートを導入し、動的架橋を行うことが好ましいが、動的架橋とは、溶融状態で混練(以下、溶融混練とも記す)することによりポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートが高分子反応および架橋反応することをいう。
【0107】
結晶性オレフィン重合体(A)に、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートを導入し、動的架橋する場合には、結晶性オレフィン重合体(A)に、ポリエステルポリカルボン酸(G)を多価イソシアネートに先んじて導入することが好ましい。具体的には、結晶性オレフィン重合体(A)と、ポリエステルポリカルボン酸(G)とを混練し、混練物を得て、該混練物と多価イソシアネートとを混練することが好ましい。
【0108】
結晶性オレフィン重合体(A)と、ポリエステルポリカルボン酸(G)とを混練する際の、混練温度は、通常170〜240℃、好ましくは190〜230℃である。混練する際の混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは1〜10分間である。また、混練する際の加えられる剪断力は、剪断速度として10〜100,000sec-1、好ましくは100〜50,000sec-1である。
【0109】
混練装置としては、ミキシングロール、インテンシブミキサー(例えばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸または二軸押出機等を用い得るが、非開放型の装置が好ましい。実験的にはラボプラストミルでもよい。
【0110】
結晶性オレフィン重合体(A)と、ポリエステルポリカルボン酸(G)とを混練して得られた混練物に、多価イソシアネートを導入する時またはその直前に、該混練物にアミド化触媒を添加することが好ましい。
【0111】
アミド化触媒としては、好ましくはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が用いられる。アルカリ金属塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウム、水酸化リチウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。また、アルカリ土類金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
【0112】
アミド化触媒は、単独で使用または2種類以上を併用することができる。アミド化触媒としては、アミド化反応におけるアミド選択性の観点から、ステアリン酸カルシウム、過塩素酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、過塩素酸マグネシウムが好ましく、ステアリン酸マグネシウムがより好ましい。
【0113】
また、アミド化触媒としては、ポリウレタンフォームの製造に際して用いられる触媒として従来公知のものも使用できる(例えば、松平信孝、前田哲郎共編、「ポリウレタン」第8刷127−129、槙書店(1964)参照)。
【0114】
前記ポリウレタンフォームの製造に際して用いられる触媒の具体例としては、トリエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(N,N−ジメチルアミノエチルエーテル)、モルホリン類等の脂肪族アミン類やオクタン酸スズやジブチルチンジラウレイト等の有機錫化合物、さらに、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム等のカルボン酸のアルカリ金属塩、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,3,5−トリス(ジメチルアミノプロピル)−s−ヘキサハイドロトリアジン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7等の3級アミン系触媒、カルボン酸と3級アミンとから成る4級アンモニウム塩等が用いられる。これらの触媒は単独で使用または2種類以上を併用することができる。
【0115】
アミド化触媒の使用量は、結晶性オレフィン重合体(A)と、ポリエステルポリカルボン酸(G)とを混練して得られた混練物に、多価イソシアネートを導入することにより架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を得る場合には、ポリエステルポリカルボン酸(G)の有する、カルボキシル基の量の合計100モル当たり、0.001〜40モルであり、0.005〜30モルであることが好ましい。
【0116】
アミド化触媒の使用量が、これより少ないと、アミド化反応が充分に進行せず、生産性が低下する場合がある。一方、これより多くとも、アミド化反応のアミド選択性は変わらず、経済的に不利となる場合がある。
【0117】
本発明において動的架橋は、非開放型の装置中で行なうことが好ましい。また動的架橋は、窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
動的架橋を行う際の混練温度は、結晶性オレフィン重合体(A)が充分溶融できる温度以上であり、また、ジイソシアネートをイソシアネート過剰のもと、単独で用いる場合は、過剰なイソシアネートが、アミド結合のプロトンに反応できる温度以上であり、多価イソシアネートの分解を抑制できる温度ないしは、結晶性オレフィン重合体(A)の分解を抑制できる温度であることが望ましく、好ましくは170〜240℃、より好ましくは190〜230℃である。動的架橋を行う際の混練時間は、通常1〜20分間、好ましくは3〜10分間である。また、動的架橋を行う際の加えられる剪断力は、剪断速度として10〜100,000sec-1、好ましくは100〜50,000sec-1である。
【0118】
混練装置としては、ラボプラストミル、ミキシングロール、インテンシブミキサー(例えばバンバリーミキサー、ニーダー)、一軸押出機、二軸押出機等を用いることができる。用い得るが、非開放型の装置が好ましい。
【0119】
本発明によれば、動的架橋によって、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートが高分子反応および架橋反応され、反応物の少なくとも一部が架橋体となり、好ましくは、投入したすべてのポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートが架橋体となり、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を製造することができる。
【0120】
なお、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造は、前記一軸押出機、二軸押出機またはこれらに類するものを用いて、連続的に行うことが好ましい。具体例としては、結晶性オレフィン重合体(A)およびポリエステルポリカルボン酸(G)を二軸押出機等に供給し、混合を行い、次いで、多価イソシアネートを、サイドフィート等を用いて供給し、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートを動的架橋し、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を得る方法が挙げられる。
【0121】
また、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造の際には、多価イソシアネートは、水との反応性が高いため、水分を確実に排除することが望ましい。水分を排除するために、窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下でポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートを、結晶性オレフィン重合体(A)に添加することが好ましい。
【0122】
また、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造において、ポリエステルポリカルボン酸(G)、任意に用いられる相溶化剤等の吸湿性の高い原料は、原料として用いる前に脱湿処理を行うことが好ましい。架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造の際に水が存在すると、イソシアネート基と水とが反応し、耐熱性に劣るウレア結合が生成したり、アミノ基が生成したり、CO2が発生する場合がある。このため架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造の際には、極力水が存在しないことが好ましい。
【0123】
脱湿処理としては、従来知られている方法ならばどのような方法でも構わないが、脱湿の効率と縮合反応等の副反応を抑制する観点から、前記吸湿性の高い原料を、温度70〜120℃、圧力0.1〜10kPaの条件で、8〜24時間保持する方法が好ましい。
【0124】
さらに、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造において、動的架橋を行った後に、押出機等から取り出された製造物を急冷することが好ましい。急冷する方法は公知の方法ならばいずれの方法を用いてもよい。
【0125】
また、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造に用いる、ポリエステルポリカルボン酸(G)と多価イソシアネートとの量は、製造に用いるポリエステルポリカルボン酸(G)の有するカルボキシル基の量[mol]と、多価イソシアネートが有するイソシアネート基の量[mol]との比(イソシアネート基/カルボキシル基)(NCOインデックス)が、多価イソシアネートが、ジイソシアネートおよび3価以上の多価イソシアネートである場合、すなわち多価イソシアネートが前述の第一の態様である場合には、通常は1.0〜4.0の範囲内、好ましくは1.05〜3.0の範囲内、さらに好ましくは1.05〜2.5の範囲内で行われる。また、多価イソシアネートがジイソシアネートのみの場合、すなわち多価イソシアネートが前述の第二の態様である場合には、1.4〜2.9の範囲内、好ましくは1.5〜2.8の範囲内で行われる。
【0126】
また、多価イソシアネートとして、ジイソシアネートおよび3価以上の多価イソシアネートを用いる場合には、投入する全多価イソシアネートのイソシアネート基の全モル数に対する、ジイソシアネートのイソシアネート基の全モル数の比、すなわち、(ジイソシアネートのイソシアネート基の全モル数/投入する全多価イソシアネートのイソシアネート基の全モル数)が、好ましくは0.1〜0.9、より好ましくは0.2〜0.8である。
【0127】
〔成形体〕
本発明の成形体は、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)から形成される。
前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、従来の架橋型熱可塑性エラストマーと同等の機械特性(引張強度、伸び等)を有しているため、各種用途に用いることができる。また、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、従来の架橋型熱可塑性エラストマーと比べて優れた耐油性を有しているため、従来の架橋型熱可塑性エラストマーを用いることが困難な分野にも用いることが可能である。
【0128】
また、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、軽量性、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性、成形加工性、低温特性、耐候性、両親媒性、相溶性、改質性、易接着性、接着性にも優れている。
【0129】
架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、成形加工性に優れているため、様々な成形法により、成形が可能である。前記成形としては、押出成形、射出成形、圧縮成形、カレンダー成形、真空成形、プレス成形、スタンピング成形、ブロー成形等が挙げられる。なお、ブロー成形としては、ブレスブロー成形、ダイレクトブロー成形、インジェクションブロー成形等が挙げられる。
【0130】
本発明の成形体は、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を、成形することにより得られる。例えば前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を、押出成形、射出成形、圧縮成形等の従来のプラスチック成形法によって成形することにより得られる。また、このような成形法によって生じた屑やバリを回収して再利用することもできる。
【0131】
本発明の成形体としては、様々な分野のゴム・エラストマー製品に使用できるが、例えば、自動車用部品ならばブーツ、ホース、チューブ、ベルト、シール、パッキン、ガスケット、電気機器・機械用部品ならばロール、ベルト、電線被覆、リング、パッキン、雑貨ならば履物ゴム底、ゴム引布、ゴム手袋などに用いることができる。
【0132】
また、バンパー部品、ボディパネル、サイドシールド、グラスランチャンネル、インストルメントパネル表皮、ドア表皮、天井表皮、ウェザーストリップ材、ホース、ステアリングホイール、ブーツ、ワイヤーハーネスカバー、シートアジャスターカバー等の自動車部品;電線被覆材、コネクター、キャッププラグ等の電気部品;靴底、サンダル等の履物;水泳用フィン、水中眼鏡、ゴルフクラブグリップ、野球バットグリップ等のレジャー用品、ガスケット、防水布、ベルト、ガーデンホース;土木・建築用各種ガスケットおよびシートなどが挙げられる。本発明の成形体としては、特に耐油性が求められる用途に適しており、自動車用部品ならばブーツ、ホース、チューブ、ベルト、シール、パッキン、ガスケット、電気機器・機械用部品ならばベルト、リング、パッキン、雑貨ならば安全靴や耐油ブーツゴム底、ゴム引布、ゴム手袋が特に好ましい用途として挙げられる。
【0133】
自動車部品のより詳細な例としては、機構部材、内装部材、外装部材、その他部材が挙げられる。
機構部材としては、CVJブーツ、サスペンションブーツ、ラック&ピニオンブーツ、ステアリングロッドカバー、ATクッション、ATスライドカバー、リーフスプリングブッシュ、ボールジョイントリテーナ、タイミングベルト、Vベルト、エンジンルーム内ホース、エアーダクト、エアバッグカバー、プロペラシャフトカバー材などが挙げられる。
【0134】
内装部材としては、各種表皮材(インストルメンタルパネル、ドアトリム、天井、リアピラー)、コンソールボックス、アームレスト、エアバックケースリッド、シフトノブ、アシストグリップ、サイドステップマット、リクライニングカバー、トランク内シート、シートベルトバックル、レバースライドプレート、ドアラッチストライカー、シートベルト部品、スイッチ類などが挙げられる。
【0135】
外装部材としては、各種モール材(インナー/アウターウィンドウモール、ルーフモール、ベルトモール、サイドトリムモール)、ドアシール、ボディシール、グラスランチャンネル、泥よけ、キッキングプレート、ステップマット、ナンバープレートハウジング、消音ギア、コントロールケーブルカバー、エンブレムなどが挙げられる。
【0136】
その他部材としては、エアダクトパッキン、エアダクトホース、エアダクトカバー、エアインテークパイプ、エアダムスカート、タイミングベルトカバーシール、オープニングシール・トランクシール部材、ボンネットクッション、燃料タンクバンド、ケーブルなどが挙げられる。
【0137】
本発明の成形体としては、雑貨、日用品またはこれらの部材であってもよい。雑貨、日用品またはこれらの部材としては、グリップ(例えば、ボールペン、シャープペンシル、歯ブラシ、カップ、使い捨てカミソリ、手すり、カッター、電動工具、ドライバー、電源ケーブル、ドアなどのグリップ)、アシストグリップ、シフトノブ、玩具、手帳表皮、ガスケット(例えば食器・タッパーなどのガスケット)、各種足ゴム、スポーツ用品(例えば、シーズソール、スキーブーツ、スキー板、スキービンディング、スキーソール、ゴルフボール、ゴーグル部材、スノーボード部材、スノーボードシューズ、スノーボードビンディング、サーフボード部材、ボディボード、バナナボート、カイトボード、シュノーケリング部材、 水上スキー部材、パラセーリング部材、ウェイクボード部材などのスポーツ用品)、ベルト(例えば、時計用ベルト、ファッションベルトなどのベルト)、ヘアブラシ、浴槽パネルボタンシート、キャップ、靴のインナーソール、健康器具部材などが挙げられる。
【0138】
本発明の成形体としては、家電・電子情報部材であってもよい。家電・電子情報部材としては、ホース類(例えば、洗濯機、布団乾燥機、エアコンなどのホース)、エアコン室外機・AV機器などの防振ゴム、携帯電話部材(例えば、イヤホンカバー、アンテナカバー、コネクターカバーなどの携帯電話部材)、各種リモコンのキーパット、消音ギア、グリップ類(例えば、デジタルカメラ・ビデオなどのグリップ類)などが挙げられる。
【0139】
本発明の成形体としては、工業資材であってもよい。工業資材としては、建築用ガスケット、防水シート、遮水シート、サスペンション、保護シート、止水材、ホース類(例えば、油圧ホース、空圧ホース、消防ホースなどのホース)、コンベアベルト、ガスケットなどが挙げられる。
【0140】
前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、両親媒性に優れているため、非極性樹脂および極性樹脂の双方と相溶性があり、様々な樹脂と混合して用いることができる。すなわち、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、改質材として用いることができる。
【0141】
前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を改質材として用いた組成物としては、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)と、任意の樹脂(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系エラストマー、スチレン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から選ばれる少なくとも1種の樹脂)とを混合することにより得られる組成物が挙げられる。
【0142】
前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)と、任意の樹脂とを混合することにより得られる組成物としては、任意の樹脂が非極性樹脂(例えばポリプロピレン、ポリエチレン、オレフィン系エラストマーから選ばれる少なくとも1種の樹脂)である場合には、該組成物は、非極性樹脂と比べて、静電性(帯電性)、吸水性、接着性、濡れ性(塗装性や着色性)に優れるため好ましい。
【0143】
また、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)と、任意の樹脂とを混合することにより得られる組成物としては、任意の樹脂が極性樹脂(例えばスチレン系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニリデン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)から選ばれる少なくとも1種の樹脂)である場合には、該組成物は、極性樹脂と比べて、軽量化が可能であり、また熱安定性、流動性、柔軟性、低温衝撃性に優れるため好ましい。
【0144】
また、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)と、任意の樹脂とを混合することにより得られる組成物としては、任意の樹脂が極性樹脂および非極性樹脂である場合には、該組成物は、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)が相溶化剤として作用するため好ましい。
【0145】
また、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)と、任意の樹脂とを混合することにより得られる組成物は、他の樹脂や、他の素材との接着性に優れる。
本発明の成形体は、積層体であってもよい。積層体としては、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)から形成される層と、他の樹脂や他の素材から形成される層とを有する積層体でも、架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)と任意の樹脂とを混合することにより得られる組成物から形成される層と、他の樹脂や他の素材から形成される層とを有する積層体でもよい。前記他の素材としては、金属(例えば銅、アルミ、金、銀など)、無機物(例えばシリカ、酸化チタンなど)が挙げられる。
【0146】
また、本発明の成形体としては、前述の各種成形体が、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)と、任意の樹脂とを混合することにより得られる組成物から形成されていてもよい。
【0147】
次に本発明の成形体を、その成形方法の観点から説明する。
本発明の成形体としては具体的には、押出成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形、パウダースラッシュ成形などの公知の熱成形方法により得られる成形体が挙げられる。以下に数例挙げて、本発明の成形体を説明する。
【0148】
本発明に係る成形体がたとえば押出成形体、射出成形体あるいはブロー成形体である場合、該成形体の形状および製品種類は特に限定されないが、例えばシート、モール、パイプ、ホース、電線被覆材、フィラメント、ボトル、チューブ等が挙げられる。また、これらの成形体は、特にシート、表皮材、自動車内外層材、建築資材、自動車用各種ブーツ、自動車用モール、エアーダクト、自動車のインストゥルメントパネル、ドアトリムなどの内装表皮材等などに用いられることが好ましい。
【0149】
前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を押出成形する際には、従来公知の押出装置および成形条件を採用することができ、たとえば単軸スクリュー押出機、混練押出機、ラム押出機、ギヤ押出機などを用いて、溶融した組成物を特定のダイスなどから押出すことにより所望の形状に成形することができる。
【0150】
前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)から形成されるシート、パイプ、ホース、電線被覆材、チューブは、耐油性、機械特性、軽量性、柔軟性、耐熱性、伸縮性、耐老化性に優れており幅広く用いることができる。
【0151】
前記シートは複数の層から形成される積層体であってもよく、前記シートが積層体である場合には前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)から形成される層を少なくとも1層有していればよい。
【0152】
前記積層体の前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)から形成される層以外の層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、TPO(熱可塑性ポリオレフィン)等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン等の極性樹脂、アルミ、鉄、銅、金、銀、シリカ、酸化チタンなどの金属や無機物などが挙げられる。前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は両親媒性があるため、非極性樹脂にも、極性樹脂にも積層が可能である。さらに、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、非極性樹脂とも極性樹脂双方に対して樹脂を選ばず接着が可能な接着材料としても有用である。
【0153】
本発明の成形体が、射出成形体である場合には、従来公知の射出成形装置を用いて公知の条件を採用して、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を種々の形状に射出成形して製造することができる。前記射出成形体は耐油性、機械特性、軽量性、柔軟性、耐熱性、伸縮性、耐老化性に優れており、幅広く用いることができる。
【0154】
本発明の成形体が、ブロー成形体である場合には、従来公知のブロー成形装置を用いて公知の条件を採用して、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)をブロー成形することにより製造することができる。この場合、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)からなるブロー成形体は多層構造を有する成形体であってもよい。前記多層構造を有する成形体は、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)から形成される層を少なくとも1層有している。前記ブロー成形体は、耐油性、機械特性、軽量性、柔軟性、耐熱性、伸縮性、耐老化性に優れており、自動車用ブーツ等幅広く用いることができる。
【0155】
本発明の成形体が、プレス成形体である場合には、プレス成形体としてはモールドスタンピング成形体が挙げられる。モールドスタンピング成形体としては、例えば基材と表皮材とを同時にプレス成形して両者を複合一体化成形(モールドスタンピング成形)することにより得られる成形体が挙げられる。モールドスタンピング成形体としては、前記表皮材を前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)で形成することができる。前記モールドスタンピング成形体としては、具体的には、ドアートリム、リアーパッケージトリム、シートバックガーニッシュ、インストルメントパネルなどの自動車用内装材が挙げられる。前記プレス成形体は、耐油性、機械特性、軽量性、柔軟性、耐熱性、伸縮性、耐老化性に優れている。
【0156】
本発明の成形体が、発泡成形体である場合には、公知の条件を採用して、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を発泡成形することにより得ることができる。発泡成形を行う場合には、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)には、添加剤として、発泡剤が含まれていることが好ましく、発泡助剤が含まれていてもよい。なお、発泡剤や発泡助剤としては、特に限定はなく、公知の発泡剤や発泡助剤を用いることができる。発泡剤を含み、必要に応じて発泡助剤を含む架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、良好な発泡性を有しており、得られる発泡成形体は、耐油性、機械特性、軽量性、柔軟性、耐熱性、伸縮性、耐老化性に優れている。
【0157】
本発明の成形体が、真空成形体である場合には、公知の条件を採用して、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を真空成形することにより得ることができる。真空成形体としては、自動車のインストゥルメントパネル、ドアトリムなどの内装表皮材等が挙げられる。該成形体は耐油性、機械特性、軽量性、柔軟性、耐熱性、伸縮性、耐老化性に優れている。
【0158】
本発明の成形体が、パウダースラッシュ成形体である場合には、公知の条件を採用して、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)をパウダースラッシュ成形することにより得ることができる。パウダースラッシュ成形体としては、自動車部品、家電部品、玩具、雑貨等が挙げられる。該成形体は耐油性、機械特性、軽量性、柔軟性、耐熱性、伸縮性、耐老化性に優れている。
【0159】
本発明の成形体が、積層体である場合には、該積層体としては、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)から形成される層を少なくとも1層有していればよい。また、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)から形成される層としては、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)と、任意の樹脂(PP、PE、St系樹脂、エステル系樹脂、アミド系樹脂、塩ビなど)とから形成される層でもよい。前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)と、ポリオレフィン等の非極性樹脂とから形成される層を有する積層体は、両親媒性に優れた前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)によって、非極性樹脂の静電制御性、帯電防止性、吸水性、接着性、濡れ性を改良することができるため、様々な用途に用いることができる。前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)と、ナイロン、エンプラ、熱可塑性ポリウレタン等の極性樹脂とから形成される層を有する積層体は、両親媒性に優れた前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)によって、極性樹脂の軽量性、熱安定性、流動性、柔軟性、低温衝撃性を改良することができるため、様々な用途への展開が可能になる。
【0160】
また、本発明の成形体は、前述したように自動車用モールであることが有用である。自動車用モールとしては具体的には次i)〜iii)が挙げられる。
i)単層の押出成形により得られる、サイドモール、バンパーモール、ルーフモール、ウィンドウモール、グラスランチャネル、ウエザーストリップモール、ベルトモール等。
ii)他材料との多層積層押出成形により得られるサイドモール、バンパーモール、ルーフモール、ウィンドウモール、グラスランチャネル、ウエザーストリップモール、ベルトモール等。その際、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、少なくとも耐傷付性、或いは耐摩耗性が求められる部位に使用される。
iii)射出成形により得られる、サイドモール、バンパーモール、ルーフモール、ウィンドウモール、グラスランチャネル、ウエザーストリップモール、ベルトモールなどの本体、端末部、コーナー部等。
【0161】
また、本発明の成形体が、自動車用内装表皮部材である場合には、具体的には次のI)〜III)が挙げられる。
I)前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を押出成形、或いはカレンダー成形することにより得られたシート状成形体を真空成形、或いはスタンピング成形することにより加工される、インパネ(インストゥルメントパネル)表皮、ドア表皮、天井表皮、コンソール表皮など。
II)前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を粉砕により1.0mm以下の粉体状にし、パウダースラッシュ成形することにより加工される、インパネ(インストゥルメントパネル)表皮、ドア表皮、天井表皮、コンソール表皮など。
III)前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を射出成形により成形・加工される、ハンドル表皮、コンソール表皮、アームレスト表皮、シフトノブ表皮、パーキングレバーグリップ表皮、アシストグリップ表皮、シートアジャストグリップ表皮などの各種表皮。この場合、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂との逐次射出成形、同時射出成形によりオレフィン系樹脂から形成される基材と前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)から形成される表皮とを一体成形することもできる。
【0162】
さらに、本発明の成形体が、自動車内装表皮部材である場合には、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)として、従来公知の耐熱安定剤、老化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、結晶核剤、滑材などの添加剤を含有する組成物を用いてもよい。特に滑材を含有する前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)を用いて形成された、自動車内装表皮部材は、耐傷付性、耐摩耗性に特に優れるため好ましい。前記滑材としては、高級脂肪酸アミド、金属セッケン、ワックス、シリコーンオイル、フッ素系ポリマー等が挙げられ、中でも高級脂肪酸アミド、シリコーンオイル、フッ素系ポリマーが、優れた耐傷付性、耐摩耗性を有する自動車内装表皮部材を得ることができるため好ましい。
【0163】
前記高級脂肪酸アミドとしては、ラウリル酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベへミン酸アミド等の飽和脂肪酸アミド;エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ブラシジン酸アミド、エライジン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド;メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等のビス脂肪酸アミド;などが挙げられる。
【0164】
前記シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、テトラメチルテトラフェニルトリシロキサン、変性シリコーン油などが挙げられる。
【0165】
前記フッ素系ポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン系共重合体などが挙げられる。
前記高級脂肪酸アミド、シリコーンオイルおよびフッ素系ポリマーの中でも、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキルシリコーンオイル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン系共重合体が好ましく、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ジメチルシリコーンオイル、フッ化ビニリデン系共重合体が特に好ましい。
【0166】
本発明の成形体としては、例えばバンパー部品、ボディパネル、モール、サイドシールド、グラスランチャンネル、インストルメントパネル表皮、ドア表皮、天井表皮、その他内装表皮材、ウェザーストリップ材、ホース、ステアリングホイール、ブーツ等の自動車部品;電線被覆材、コネクター、キャッププラグ等の電気部品;靴底、サンダル等の履物;水泳用フィン、水中眼鏡、ゴルフクラブグリップ、野球バットグリップ等のレジャー用品、ガスケット、防水布、ベルト、ガーデンホース;土木・建築用各種ガスケットおよびシートなどが挙げられる。特に本発明の成形体としては、ホース、ステアリングホイール、ブーツのような耐油性や機械特性、軽量性、柔軟性、耐熱性、伸縮性、耐老化性が求められる用途に適している。また、本発明の成形体は、衣装ケース、積層体(ガラス含む)、発泡体、電線ケーブル、防音材、制振材、防振材、吸音材、遮音材、発泡材、建材、建材表皮材、不織布、改質材、防弾材等の用途に幅広く使用することができる。また、前記架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)は、接着剤、相溶化剤、耐チッピング剤、耐チッピング性改良剤等の用途に使用することもできる。
【実施例】
【0167】
以下、本発明を合成例および実施例に基づいて説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。また、合成例および実施例の分析、測定は、以下の方法に準拠した。
【0168】
(メルトフローレート(MFR))
架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)のメルトフローレートは、ASTM D1238に準拠して230℃、10.0kg荷重で測定した。
【0169】
(酸価)
酸価は、JIS K6901「液状不飽和ポリエステル樹脂試験方法」の5.3項「酸価」の「部分酸価」に従って測定した。
【0170】
(水酸基価)
水酸基価は、JIS K1557「ポリウレタン用ポリエーテル試験方法」の6.4項「水酸基価」に従って測定した。
【0171】
(イソシアネート基含有率)
イソシアネート基含有率は、JIS K7301「熱硬化性ウレタンエラストマー用トリレンジイソシアネート型プレポリマー試験方法」の6.3項「イソシアネート基含有率」に従って測定した。
【0172】
(数平均分子量)
数平均分子量は、試料0.03gをテトラヒドロフラン10mlに室温で溶解し、次いで、孔径0.45μmのフィルタでろ過した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて、下記条件で測定した。数平均分子量は、測定されたクロマトグラムの最大頻度の分子量(保持時間)を含むピークの数平均分子量を、標準ポリエチレングリコールを使用して作成された検量線を基準として算出した。
装置:HLC−8020(東ソー社製)
カラム:東ソー社製 TSKgel guardcolum HXL−L + G1000H XL + G2000H XL + G3000H XL
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:0.8ml/分
カラム温度:40℃
注入量:20μl
検出器:RI
【0173】
(粘度)
粘度は、コーンプレート型回転粘度計(ICI社製)を用い、コーン種類:100P、回転数:75rpm、温度:100℃または80℃の条件で測定した。
【0174】
(機械特性:引張強さ、伸び)
JIS K6251に準拠して、引張試験を下記の条件で行ない、破断時の引張強度と伸びを測定した。
試験は、プレス成形機によりシートを作製し、JIS3号試験片を打ち抜き、該試験片を用いて引張速度500mm/分の条件で行なった。
【0175】
(圧縮永久ひずみ)
JIS K6250に準拠して、作成したシートを積層し、JIS K6262に準拠して圧縮永久ひずみ試験を行った。
試験条件は、厚み12mm(厚み3mm片の4枚重ね)の積層されたシートを用い、25%圧縮、70℃、22hrsの条件で圧縮を行い、歪み除去(圧縮)後30分経過後に測定した。
【0176】
(硬度)
硬度は、JIS K6253に準拠して、ショアAまたはショアD硬度を測定した。
測定は、プレス成形機によりシートを作製し、A型またはD型測定器を用い、押針接触後直ちに目盛りを読み取った。なお、表4および5のショア硬度において、AはA型測定器を用いて測定されたショア硬度、DはD型測定器を用いて測定されたショア硬度を示す。
【0177】
(耐油性試験)
230℃でプレス成形した2mm厚シートから20mm×20mm×2mmの試験片を作成し、70℃のJIS3号油相当であるIRM903油に72時間浸漬した前後の体積から式(I)に従い体積変化率ΔVを算出した。
{(Tw-Td)/Td}×100=ΔV・・・・(I)
(式(I)において、Twは浸漬後の試験片体積であり、Tdは浸漬前の試験片体積である。)
【0178】
(密度)
密度は、JIS K6268「加硫ゴム-密度測定」に準拠し、JIS K6268、5.1項A法に従い測定した。
【0179】
(ゲル分率)
ゲル分率の定義は、JIS K6769「架橋ポリエチレン管」の3項 g)「ゲル分率」に従う。
【0180】
ゲル分率(重量%)の測定方法は、同9.8項に従う。すなわち、JIS K6796「架橋ポリエチレン製(PE−X)管及び継手−ゲル含量の測定による架橋度の推定」に従い測定した。ただし、JIS K6796、4.4項の籠の穴の大きさはメッシュサイズ#325を用いた。また、同6.4項の沸騰抽出時間は3時間で行った。乾燥方法は、同6.6項a)に準じたが、温度は105℃、時間は1時間で行った。
【0181】
(架橋反応度)
架橋反応度を以下の計算式に従い求めた。
架橋反応度(%)=(ゲル分率(重量%))/(ポリエステルポリカルボン酸の仕込分量(重量%)+多価イソシアネートの仕込分量(重量%))×100
【0182】
(TEM観察法)
架橋型熱可塑性エラストマー組成物のTEM観察を以下の機器を用いて行った。
測定機器:透過型電子顕微鏡H-7650(日立製作所製)
前処理:検体にトリミングによる面出しを施し試料とし、次いで試料をRuO4で染色を行い、凍結させた試料から超薄切片を作成し、カーボン補強を行い、測定試料とした。
写真倍率:3000倍、10000倍
【0183】
[合成例 1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの合成]
13C−NMR測定によるトランス/シス重量比が93/7の1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(三菱瓦斯化学社製)を原料として、冷熱2段ホスゲン化法を常圧下で実施した。
【0184】
すなわち、フラスコに、攪拌棒、温度計、ホスゲン導入管、滴下ロートおよび冷却管を取り付けて、そのフラスコにオルトジクロロベンゼン400重量部を仕込んだ。フラスコを冷水で冷却しながら、フラスコ内の温度を10℃以下とし、ホスゲン導入管よりホスゲン280重量部を導入した。滴下ロートに1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン100重量部およびオルトジクロロベンゼン500重量部の混合液を仕込み、その混合液を、30分かけてフラスコ内に添加した。この間、フラスコ内の温度を30℃以下に維持した。添加終了後、フラスコ内は、白色スラリー状液となった。再び、ホスゲンを導入しながら反応温度を150℃まで上昇させ、150℃で5時間反応を継続させた。フラスコ内の反応液は淡褐色澄明な液体となった。
【0185】
反応終了後、100〜150℃で窒素ガスを10L/時で通気し、脱ガスした。
減圧下で溶媒のオルトジクロルベンゼンを留去し、さらに減圧蒸留により、沸点138〜140℃/0.7KPaの留分を採取した。
【0186】
これによって、無色透明液体として、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン123重量部(収率90%)を得た。
得られた1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのガスクロマトグラフィー測定による純度は99.9%、APHA測定による色相は5、13C−NMR測定によるトランス/シス重量比は93/7であった。また、イソシアネート基含有率は43.3重量%であった。
なお、以下の記述および表1においては、得られた1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを「1,4−H6XDI(1)」と略する。
【0187】
[合成例 ポリエステルポリカルボン酸(G−1)の製造]
還流冷却器、水分離装置、窒素ガス導入管、温度計および攪拌装置が取り付けられた5リットルのフラスコに、2045.1重量部のアジピン酸と、1306.5重量部のネオペンチルグリコール(COOH/OHの当量比:1.12)とを仕込み、窒素を導入しながら、マントルヒーターで昇温した。
【0188】
150℃に達したところで水の留出が始まり、水を留出させながら230℃まで昇温した後、230℃で脱水縮合を継続した。反応生成物の酸価、水酸基価が下記値に達したところを終点として、反応生成物をフラスコより抜き出して冷却し、ポリエステルポリカルボン酸(G−1)を得た。得られたポリエステルポリカルボン酸(G−1)は、酸価54.8mgKOH/g、水酸基価2.7mgKOH/gであった。また、ポリエステルポリカルボン酸(G−1)の粘度は1000mPa・s/80℃、数平均分子量は3841であった。
ポリエステルポリカルボン酸(G−1)の合成条件および特性を表1に示す。
【0189】
【表1】

なお、表1中のmは、前記一般式Ryにおけるmを意味し、各ポリエステルポリカルボン酸の原料の仕込み量、および数平均分子量から計算した値である。
【0190】
[実施例1]
ラボプラストミル(東洋精機製作所製、モデル4C150−01)を予め200℃に昇温させ、窒素を1L/min流通させた。回転数は50rpmにした。
【0191】
ここに、ホモポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名J105G、MFR9.0g/10分(230℃、2.16kgf))を21.07g、酸化防止剤としてペンタエリスチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバジャパン社製、商品名イルガノックス1010)を0.05g、酸化防止剤としてN,N’‐(1,6‐ヘキサンジイル)ビス[3,5‐ビス(1,1‐ジメチルエチル)‐4‐ヒドロキシベンゼンプロパンアミド](チバジャパン社製、商品名イルガノックス1098)を0.05g、相溶化剤として、予め、105℃、圧力1kPaの条件で12時間保持することにより脱湿処理したプロピレン・エチレングリコール共重合体(三洋化成工業社製、商品名ペレスタット300)を4.81g投入した。投入後4分間混練した。この間の最大トルクは8.3N・mであった(温度200℃、回転数130rpm)。
【0192】
この後、予め、105℃、圧力1kPaの条件で12時間保持することにより脱湿処理したポリエステルポリカルボン酸(G−1)15.24gを6分間かけて混練しながら投入した。投入完了後、さらに4分間混練した。最終トルクは1.4N・mであった(温度200℃、回転数130rpm)。
【0193】
ここで、触媒としてトリエチレンジアミンを0.40g、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7を0.41gを投入し、2分間混練した。2分間混練後のトルクは0.1N・mであった(温度200℃、回転数130rpm)。
【0194】
ここに、ジイソシアネートとして1,4−H6XDI(1)3.15gを混練しながら投入した。このときNCOインデックス(=(イソシアネート基のモル量)/(ポリエステルポリカルボン酸(G−1)の有するカルボキシル基のモル量))は、2.2となる。
【0195】
投入完了後、さらに15分間混練した。最終トルクは9.5N・mであった(温度200℃、回転数130rpm)。ここで、混練を停止して、サンプルを取り出し、15℃100kgf/cm2で5分間冷間プレスを行い、熱可塑性架橋型エラストマー組成物(D−1)を得た。該熱可塑性架橋型エラストマー組成物(D−1)をメルトフローレート、ゲル分率測定用サンプルとした。
【0196】
この熱可塑性架橋型エラストマー組成物(D−1)、16.0gを、8cm×8cm×厚さ2mmの型枠に入れた。これに、余熱を230℃で、7分間行い、次いで加圧を230℃、100kgf/cm2の条件で3分間熱間プレスすることにより行い、次いで冷却を15℃、100kgf/cm2の条件で5分間冷間プレスすることにより行い、機械特性、耐油性測定用およびTEM観察用サンプルとした。
【0197】
また、同様に、この熱可塑性架橋型エラストマー組成物(D−1)、7.0gを、4.5cm×4.5cm×厚さ3mmの型枠に入れた。これに、余熱を230℃で、7分間行い、次いで加圧を230℃、100kgf/cm2の条件で3分間熱間プレスすることにより行い、次いで冷却を15℃、100kgf/cm2の条件で5分間冷間プレスすることにより行い、硬度、密度および圧縮永久ひずみ測定用サンプルとした。
製造条件および各特性の測定結果を別表(表2〜4)に示す。
【0198】
[実施例2〜6]
実施例2〜6は、原料や反応条件を、別表(表2〜4)に記載の原料や反応条件に変えた以外は、実施例1と同様に行った。
製造条件および各特性の測定結果を別表(表2〜4)に示す。
【0199】
【表2】

表2において、NCOインデックスは、ポリエステルポリカルボン酸(G−1)、1,4−H6XDI(1)の仕込み量から求めた値である。
なお、表2において、*1〜*11は以下の成分を示す。
【0200】
*1 :ホモポリプロピレン、プライムポリマー社製、商品名J105G
*2 :1,4−H6XDI(1)、イソシアネート基含有率は43.3重量%
*3 :ペンタエリスチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、チバジャパン社製、商品名イルガノックス1010
*4 :N,N’‐(1,6‐ヘキサンジイル)ビス[3,5‐ビス(1,1‐ジメチルエチル)‐4‐ヒドロキシベンゼンプロパンアミド]、チバジャパン社製、商品名イルガノックス1098
*5 :プロピレン・エチレングリコール共重合体、三洋化成工業社製、商品名ペレスタット300
*6 :トリエチレンジアミン
*7 :1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7
*8 :ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとメチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネートとの混合物)、三井化学社製、コスモネートM−50、イソシアネート基含有率は31.0重量%、ジイソシアネート(メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート)の比率は44重量%
*9 :ステアリン酸マグネシウム
*10:ヘキサメチレンジイソシアネート(三井化学社製タケネート700、イソシアネート基含有率は50.0重量%):ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体(三井化学社製タケネートD−170HN、イソシアネート基含有率は22.7重量%))=13:87(重量比)の混合物
*11:ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとメチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネートとの混合物)、三井化学社製、コスモネートM−1500、イソシアネート基含有率は31.0重量%、ジイソシアネート(メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート)の比率は22重量%
【0201】
【表3】

【0202】
【表4】

[比較例1]
重合器中で、オキシ三塩化バナジウムとエチルアルミニウムセスキクロリドを重合触媒とし、重合溶媒であるヘキサン中にエチレンと1-ブテンの混合ガスおよび水素ガスを供給し、40℃、5kgf/cm2、滞留時間1時間の条件下で連続的にエチレンと1-ブテンとを重合した。次いで、得られた反応溶液から、溶媒を分離し、目的とするエチレン・1-ブテンランダム共重合体を得た。このようにして得られた共重合体は、1-ブテン含量が19モル%であり、135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が2.2dl/gであり、ガラス転移温度が−65℃であった。
【0203】
上記のエチレン・1-ブテンランダム共重合体10kgと、無水マレイン酸300gおよびジ-tert-ブチルペルオキシド18gを300gのアセトンに溶解させた溶液とをヘンシェルミキサー中でブレンドしブレンド物を得た。
【0204】
次いで、得られたブレンド物をスクリュー径40mm、L/D=26の1軸押出機のホッパーより投入し、樹脂温度260℃、押出量6kg/時間でストランド状に押し出して水冷した後、ペレタイズして無水マレイン酸グラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体を得た。得られたグラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体から未反応の無水マレイン酸をアセトンで抽出して、イソシアネート基と反応しうる官能基を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(E)を得た。このグラフト変性エチレン・1-ブテンランダム共重合体(イソシアネート基と反応しうる官能基を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(E))中における無水マレイン酸グラフト量を1H−NMR測定より測定したところ、このグラフト量は2.60重量%であった。したがって、イソシアネート基と反応しうる官能基を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(E)が1g当り、0.261mmol/gの無水マレイン酸由来のカルボン酸無水物基がある。
【0205】
次に、ラボプラストミル(東洋精機製作所製、モデル4C150−01)を予め200℃に昇温させ、窒素を1L/min流通させた。回転数は50rpmにした。
ここに、ホモポリプロピレン(プライムポリマー社製、商品名J105G、MFR9.0g/10分(230℃、2.16kgf))を12.5g、酸化防止剤としてペンタエリスチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバジャパン社製、商品名イルガノックス1010)を0.05g、投入した。ホモポリプロピレン投入後1分間混練行った。1分間混練後のトルクは4.5N・mであった。温度は200℃、回転数は50rpmであった。
【0206】
ここに、イソシアネート基と反応しうる官能基を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(E)を28.5g投入した。イソシアネート基と反応しうる官能基を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(E)投入後4分間混練行った。4分間混練後のトルクは12.8N・mであった。温度は200℃、回転数は50rpmであった。
【0207】
次いで、回転数を100rpmに上昇させ、触媒としてトリエチレンジアミンを0.48g、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7を0.41gを投入し、2分間混練した。2分間混練後のトルクは12.3N・mであった(温度200℃、回転数100rpm)。
【0208】
ここに、ジイソシアネートとして1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(商品名:タケネート600、三井化学ポリウレタン社製、イソシアネート基含有率は43.3重量%)0.79gを混練しながら投入した。このときNCOインデックス(=(イソシアネート基のモル量)/(イソシアネート基と反応しうる官能基を有するエチレン・α-オレフィン共重合体(E)の官能基のモル量))は、1.1であった。
【0209】
投入完了後、さらに15分間混練した。最終トルクは25.3N・mであった(温度200℃、回転数100rpm)。ここで、混練を停止して、サンプルを取り出し、15℃100kgf/cm2で3分間冷間プレスを行い、熱可塑性架橋型エラストマー組成物(D−11)を得た。該熱可塑性架橋型エラストマー組成物(D−11)をメルトフローレート、ゲル分率測定用サンプルとした。
【0210】
この熱可塑性架橋型エラストマー組成物(D−11)、16.0gを、8cm×8cm×厚さ2mmの型枠に入れた。これに、余熱を230℃で、7分間行い、次いで加圧を230℃、100kgf/cm2の条件で3分間熱間プレスすることにより行い、次いで冷却を15℃、100kgf/cm2の条件で3分間冷間プレスすることにより行い、機械特性、耐油性測定用およびTEM観察用サンプルとした。
【0211】
また、同様に、この熱可塑性架橋型エラストマー組成物(D−11)、7.0gを、4.5cm×4.5cm×厚さ3mmの型枠に入れた。これに、余熱を230℃で、7分間行い、次いで加圧を230℃、100kgf/cm2の条件で3分間熱間プレスすることにより行い、次いで冷却を15℃、100kgf/cm2の条件で3分間冷間プレスすることにより行い、硬度、密度および圧縮永久ひずみ測定用サンプルとした。
各特性の測定結果を別表(表5)に示す。
【0212】
[比較例2]
油展エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2- ノルボルネン共重合体ゴム[エチレン含量:78モル%、プロピレン含量:22モル%、ヨウ素価:13、ムーニー粘度[ML1+4(100℃)]74、(油展量):ゴム100重量部に対してパラフィン系プロセスオイル(出光興産(株)製、商品名 PW−380)を40重量部;以下、EPTと略す]70重量部と、プロピレン・エチレン共重合体(MFR=10g/10分(230℃、2.16kgf))30重量部と、酸化防止剤としてペンタエリスチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(チバジャパン社製、商品名イルガノックス1010)0.1重量部と、耐候剤としてジアゾ系耐候安定剤[日本チバガイギー(株)製、商品名 チヌビン326]0.1重量部とHALS系耐候安定剤[三共(株)製、商品名 Sanol LS−770]0.05重量部と、滑剤として脂肪酸アミド系滑剤[ライオン(株)製、商品名アーモスリップCP] 0.3重量部と、架橋剤(C)であるパーオキシカーボネイトとしてジセチルパーオキシジカーボネイト[化薬アクゾ(株)製、商品名 パーカドックス24]0.5重量部と、有機過酸化物[日本油脂(株)製、商品名 パーヘキシン25B]0.32重量部と、架橋助剤としてジビニルベンゼン(DVB)0.24重量部とをヘンシェルミキサーで充分混合し、押出機[品番 TEM−50、東芝機械(株)製、L/D=40、シリンダー温度:C1〜C2 120℃、C3〜C4 140℃、C5〜C6 160℃、C7〜C8 200℃、C9〜C12 220℃、ダイス温度:210℃、スクリュー回転数:200rpm、押出量:40kg/h]にてパラフィン系プロセスオイル[出光興産(株)製、商品名 PW−100]20重量部をシリンダーに注入しながら造粒を行ない、熱可塑性エラストマー組成物(D−12)を得た。
【0213】
前記熱可塑性エラストマー組成物(D−12)のメルトフローレート(MFR)は、30g/10min(230℃、10kg荷重)であった。
この熱可塑性エラストマー組成物(D−12)、16.0gを、8cm×8cm×厚さ2mmの型枠に入れた。これに、余熱を230℃で、7分間行い、次いで加圧を230℃、100kgf/cm2の条件で3分間熱間プレスすることにより行い、次いで冷却を15℃、100kgf/cm2の条件で3分間冷間プレスすることにより行い、機械特性、耐油性測定用およびTEM観察用サンプルとした。
【0214】
また、同様に、この熱可塑性エラストマー組成物(D−12)、7.0gを、4.5cm×4.5cm×厚さ3mmの型枠に入れた。これに、余熱を230℃で、7分間行い、次いで加圧を230℃、100kgf/cm2の条件で3分間熱間プレスすることにより行い、次いで冷却を15℃、100kgf/cm2の条件で3分間冷間プレスすることにより行い、硬度、密度および圧縮永久ひずみ測定用サンプルとした。
各特性の測定結果を別表(表5)に示す。
【0215】
[比較例3]
NBR(アクリロニトリル‐ブタジエンゴム(アクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体):バイエル社製品PERBUNAN2845) 100g、老化防止剤RD(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体:大内新興化学製品ノクラック224) 1g、酸化亜鉛 5g、イオウ 0.4g、ジクミルパーオキサイド 2g、加硫促進剤BZ(ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛:大内新興化学製品ノクセラーBZ) 1.5g、加硫促進剤DM(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド:大内新興化学製品ノクセラーDM) 3gをバンバリーミキサーにて5分間混練し、混練物について160℃、30分間のプレス加硫および150℃、3時間のオーブン加硫(二次加硫)を行い、極性ゴム組成物(D−13)の加硫シート((8.0cm×8.0cm×2mm)および(4.5cm×4.5cm×3mm)を得た。
【0216】
これら加硫シートを、機械特性、耐油性、硬度、密度および圧縮永久ひずみ測定用サンプルとした。
各特性の測定結果を別表(表5)に示す。
【0217】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、
ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させることにより得られる架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)。
【請求項2】
前記多価イソシアネートが、ジイソシアネートおよび3価以上の多価イソシアネートである請求項1に記載の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)
【請求項3】
前記3価以上の多価イソシアネートが、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである請求項2に記載の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)。
【請求項4】
前記多価イソシアネートが、ジイソシアネートであり、
前記反応が、ジイソシアネートおよびポリエステルポリカルボン酸(G)から求まるNCOインデックスが1.4〜2.9の範囲内で行われる請求項1に記載の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)。
【請求項5】
前記ポリエステルポリカルボン酸(G)の酸価をX〔mgKOH/g〕とし、水酸基価をY〔mgKOH/g〕とすると、Xが20〜70mgKOH/gであり、Y≦X/8である請求項1〜4のいずれか一項に記載の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)。
【請求項6】
前記反応が、動的架橋により行われる請求項1〜5のいずれか一項に記載の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)。
【請求項7】
前記反応に用いる、前記結晶性オレフィン重合体(A)の重量(α)と、ポリエステルポリカルボン酸(G)および多価イソシアネートの合計重量(β)との比(α/β)が、10/90〜90/10である請求項1〜6のいずれか一項に記載の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)。
【請求項8】
結晶性オレフィン重合体(A)の存在下で、ポリエステルポリカルボン酸(G)と、多価イソシアネートとを反応させる架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の架橋型熱可塑性エラストマー組成物(D)からなる成形体。

【公開番号】特開2011−105812(P2011−105812A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260313(P2009−260313)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】