説明

架橋型重合体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】塗布法による薄膜の形成に適し、エレクトロニクス用材料として好適な架橋型重合体を提供する。
【解決手段】下記式(A)及び(B)で表される構造単位を含有する重合体。


[式(A)中、Pは式(P)で表される化合物に由来する基である。Lは連結基を表す。式(B)中、Qは式(Q)で表される化合物に由来する基である。Lは連結基を表す。式(B)において、c個のQ及びd個のLのうち、少なくとも1つは、架橋性基を有する。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋型重合体及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、自発光型で視野角依存性がなく、面発光、薄型化が可能であることから、テレビや携帯電話等のディスプレイや、照明等への応用が検討されている。
有機EL素子は、有機化合物の薄膜を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有している。薄膜の形成方法としては、蒸着法と塗布法とに大別される。蒸着法は、主に低分子化合物を用い、真空中で基板上に薄膜を形成する手法であり、製品化が先行している。一方、塗布法は、インクジェットや印刷等、溶液を用いて基板上に薄膜を形成する手法であり、材料の利用効率が高く、大面積化、高精細化に向いており、今後の大画面有機ELディスプレイには不可欠とされる手法である。
【0003】
低分子材料を用いた真空蒸着法は、材料の利用効率が極端に低く、また、大型化すればシャドーマスクのたわみが大きくなることから、大型基板への蒸着が難しく、その結果、大型の有機EL基板を用いた表示装置の作製が困難という問題がある。また、製造コストも高くなる。
【0004】
一方、高分子系材料は、有機溶剤に溶かし込んだその溶液を、塗布することにより、均一な膜を形成することが可能であり、これを利用して、インクジェット法や印刷法に代表される塗布法を用いることができる。そのため、材料の利用効率を100%近くまで高めることができる。また、小型基板から大型基板まで、さまざまな形状の基板に容易に対応できるため、素子の製造コストを大幅に削減することができる。
しかしながら、一般的に塗布法は積層型の素子には適さず、素子の高性能化が容易ではないという問題点がある。
【0005】
塗布法が積層型に適さない理由としては、層を重ねる際に、先に形成してあった膜を溶かしてしまうことが挙げられる。具体的に、塗布積層型の有機発光素子において、正孔注入層及び正孔輸送層は、発光層を成膜する際に用いられる溶剤に対して不溶でなければならない。
そのため、現状では、塗布法による有機EL素子の多くは、正孔注入層をポリチオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)の水分散液を用いて製膜し、発光層をトルエン等の芳香族系有機溶媒を用いて製膜を行うという2層構造のものに限られている。PEDOT:PSS層はトルエンに溶解しないため、かかる2層構造を作製することが可能だからである。
従って、例えば、正孔注入層上に、正孔輸送層を形成し、さらに発光層を形成する場合には適用できなかった。
【0006】
正孔注入層には、PEDOT/PSSに代表されるように、水溶性、又は、アルコールに溶解する材料が用いられる場合が多い。そのため、正孔輸送材料は、正孔注入層上にトルエン、キシレン、ジオキサン、シクロヘキサノン等の水系又はアルコール系以外の有機溶剤を用いて成膜し、積層される。
ここで、正孔輸送材料として、熱又は光架橋型の重合体を用いることが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、光架橋型の材料は、光によって劣化し、正孔輸送性、発光効率、素子寿命が低下するという問題があり、一方、熱架橋型の材料では、熱架橋後、シュリンクしたり、ピンホールが生じることがあるという問題がある。
また、熱架橋後、シュリンクしない場合でも、発光層の積層に用いる成膜用溶剤に溶解することがあるという問題がある(特許文献2−4参照)。
【0007】
また、低分子化合物に重合可能な置換基を結合させた材料を用い、それを塗布後、重合させることにより、他層の塗布用溶媒への溶解度を下げ、多層構造を形成するという技術がある(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、低分子化合物は、それ自体結晶化しやすい傾向があるため、良質な薄膜を形成しにくいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−257196号公報
【特許文献2】特開2008−63327号公報
【特許文献3】特開2009−283509号公報
【特許文献4】特開2011−82052号公報
【特許文献5】特開2006−279007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、塗布法による薄膜の形成に適し、エレクトロニクス用材料として好適な架橋型重合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討した結果、カルバゾール又はカルバゾールに類似する化合物に由来する構造単位(後述するP及びQ基)を有する架橋型重合体が、安定的かつ容易に良質な薄膜を形成でき、また、熱などによる架橋反応によって溶解度が変化することにより、この材料がエレクトロニクス用材料として有用であることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明によれば、以下の重合体等が提供される。
1.下記式(A)及び(B)で表される構造単位を含有する重合体。
【化1】

[式(A)中、Pは下記式(P)で表される化合物に由来する基である。
【化2】

(式中、Aはそれぞれ独立に、窒素原子又はCRである。
は、単結合、O、S、CR又はNRである。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアリールアミノ基又はアリールシリル基である。)
aは2〜5の整数であり、(P)aは、上記(P)基がa個連続して結合していることを表す。a個のPはそれぞれ独立であり、また、P同士の結合位置は限定されない。
は連結基を表す。
bは、0〜5の整数であり、(L)bは、bが2以上である場合、Lがb個連続して結合したことを表す。この場合、b個のLはそれぞれ独立であり、また、L同士が結合する位置は限定されない。
式(A)において、PとLの結合位置は限定されない。
式(B)中、Qは下記式(Q)で表される化合物に由来する基である。
【化3】

(式中、Aはそれぞれ独立に、窒素原子又はCRである。
は、単結合、O、S、CR又はNRである。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアリールアミノ基、アリールシリル基、又は架橋性基である。)
cは2〜5の整数であり、(Q)cは、上記(Q)基がc個連続して結合していることを表す。c個のQはそれぞれ独立であり、また、Q同士の結合位置は限定されない。
はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30の芳香族複素環基、置換もしくは無置換のアリールアミン残基、アリールシリレン基、又は架橋性基である。
dは、0〜5の整数であり、(L)dは、dが2以上である場合、Lがd個連続して結合していることを表す。この場合、d個のLはそれぞれ独立であり、また、L同士が結合する位置は限定されない。
式(B)において、QとLの結合位置は限定されない。
式(B)において、c個のQ及びd個のLのうち、少なくとも1つは、架橋性基を有する。]
2.前記P又はQが、置換又は無置換のカルバゾールの残基である1に記載の重合体。
3.a個連続した置換もしくは無置換のカルバゾール残基において隣接するカルバゾール残基同士の結合位置、又は、c個連続した置換もしくは無置換のカルバゾール残基において隣接するカルバゾール残基同士の結合位置が、それぞれ、3位−3’位、3位−2’位、及び、2位−2’位から選ばれた一種である2に記載の重合体。
4.下記の構造1及び構造2の少なくとも一方を有する、2又は3に記載の重合体。
構造1:前記(P)a中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
構造2:前記(Q)c中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
5.下記の構造3及び構造4の少なくとも一方を有する、2〜4のいずれかに記載の重合体。
構造3:前記(P)a中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
構造4:前記(Q)c中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
6.前記a又はcが、それぞれ2又は3である1〜5のいずれかに記載の重合体。
7.下記式(1)〜(7)のいずれかで表される1〜6のいずれかに記載の重合体。
【化4】

【化5】

(各式中、R、R、R、R、L及びLは、前記式(A)及び(B)のR、R、R、R、L及びLと同様である。
m及びnはそれぞれ、重合体に占める各構造単位の含有率(モル比)を表し、mは0.01〜0.99、nは0.01〜0.99であり、m+n=1である。
lは、0又は1である。)
8.下記式(8)〜(25)のいずれかで表される7に記載の重合体。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

(各式中、R、R、R、R、L及びLは、前記式(A)及び(B)のR、R、R、R、L及びLと同様である。
m及びnはそれぞれ、重合体に占める各構造単位の含有率(モル比)を表し、mは0.01〜0.99、nは0.01〜0.99であり、m+n=1である。)
9.前記式(1)〜(25)で表される各重合体の、Rの少なくとも1つ又はRの少なくとも1つが架橋性基であり、Lは架橋性基ではない、7又は8の重合体。
10.前記架橋性基が、下記式(31)〜(42)で示される基から選択される基である1〜9のいずれかに記載の重合体。
【化10】

11.前記式(1)〜(21)で表される各重合体のLの少なくとも1つが架橋性基であり、R及びRが架橋性基ではない7又は8の重合体。
12.前記架橋性基であるLが、下記式(43)〜(46)で示される基から選択される基である11に記載の重合体。
【化11】

(式(45)及び(46)において、oは、1〜10の整数である。)
13.前記式(1)〜(25)で表される各重合体の、R、R、R及びRの少なくとも1つが、下記式(51)〜(55)で表される基から選択される基である8〜12のいずれかに記載の重合体。
【化12】

(式中、R11〜R23は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30のヘテロアリール基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又はヒドロキシル基である。
a、c、d、f、g、及びiは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。
b、e、h及びjは、それぞれ独立に、0〜3の整数である。
〜Tはそれぞれ独立に、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基又は環形成原子数3〜30の芳香族複素環基である。)
14.上記1〜13のいずれかに記載の重合体及び溶媒を含む塗布液。
15.前記溶媒の少なくとも1種が有機溶媒である14に記載の塗布液。
16.上記14又は15に記載の塗布液を用いて湿式成膜する電子素子の製造方法。
17.前記電子素子が、電界発光素子、光電変換素子又はトランジスタである16に記載の電子素子の製造方法。
18.前記電子素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子である16又は17に記載の電子素子の製造方法。
19.陽極と陰極と、前記陽極と陰極の間に、発光層を含む1層以上の有機薄膜層を有し、
前記有機薄膜層の少なくとも1層が1〜13のいずれかに記載の重合体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
20.前記有機薄膜層の少なくとも1層が正孔注入層又は正孔輸送層である19に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
21.前記正孔注入層又は正孔輸送層が発光層と接している20に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
22.前記発光層が湿式成膜法により成膜された19〜21のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、塗布法による薄膜の形成に適し、エレクトロニクス用材料として好適な架橋型重合体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の重合体は、下記式(A)及び(B)で表される構造単位を含有することを特徴とする。
【化13】

【0014】
式(A)及び(B)において、P及びQはカルバゾール又はカルバゾールに類似する化合物由来の基であり、L及びLは連結基である。上記式(A)の構造単位は架橋性基を有さず、上記式(B)の構造単位は、架橋性基を1以上有する。本発明の重合体は、式(A)及び(B)で表される構造単位を有することにより、成膜後に架橋して得られる膜の表面平坦性が高くなる。また、塗布に用いる有機溶剤への耐性が高くなる。
【0015】
上記式(A)において、Pは下記式(P)で表される化合物に由来する基である。
【化14】

【0016】
式(P)中、Aはそれぞれ窒素原子又はCRである。
は、単結合、O、S、CR又はNRである。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30のヘテロアリール基又は置換もしくは無置換のアリールアミノ基である。
式(P)中のR〜Rの少なくとも1つは、PやL等である他の基と結合する単結合である。
【0017】
aは2〜5の整数であり、2又は3が好ましい。(P)aは、上記(P)基がa個連続して結合していることを表す。a個のPはそれぞれ独立であり、また、P同士の結合位置は限定されない。
は連結基を表わす。Lは、好ましくは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30の芳香族複素環基、置換もしくは無置換のアリールアミン残基、又はアリールシリレン基である。また、これらの基を2以上連結した基である。この場合、各基は同一でも異なっていてもよい。
【0018】
bは、0〜5の整数であり、(L)bは、bが2以上である場合、Lがb個連続して結合したことを表す。この場合、b個のLはそれぞれ独立であり、また、L同士が結合する位置は限定されない。
式(A)において、PとLの結合位置は限定されない。
【0019】
式(B)中、Qは下記式(Q)で表される化合物に由来する基である。
【化15】

【0020】
式中、Aはそれぞれ窒素原子又はCRである。
は、単結合、O、S、CR又はNRである。
〜Rは、それぞれ独立に、上述したR〜Rと同様な基又は架橋性基である。
【0021】
cは2〜5の整数であり、2又は3が好ましい。(Q)cは、上記(Q)基がc個連続して結合していることを表す。c個のQはそれぞれ独立であり、また、Q同士の結合位置は限定されない。
はそれぞれ独立に、上述したLと同様な基又は架橋性基である。
dは、0〜5の整数であり、(L)dは、dが2以上である場合、Lがd個連続して結合したことを表す。この場合、d個のLはそれぞれ独立であり、また、L同士が結合する位置は限定されない。
式(B)において、QとLの結合位置は限定されない。
式(B)において、c個のQ及びd個のLのうち、少なくとも1つは、架橋性基を有する。
【0022】
本発明の重合体は、上述した構造単位(A)及び(B)を有していればよく、本発明の効果を阻害しない範囲において、他の構造単位、例えば、α−オレフィンに由来する構造単位を有していてもよい。
好ましくは、構造単位(A)及び(B)が交互に結合している重合体である。構造単位(A)及び(B)が交互に結合している例(AB)を以下に示す。下記例は−ABAB−に相当する。
【化16】

【0023】
本発明では、上記P又はQ基が、置換又は無置換のカルバゾール残基であることが好ましい。
また、a個連続した置換又は無置換のカルバゾール残基において、隣接するカルバゾール残基同士の結合位置、又はc個連続した置換又は無置換のカルバゾール残基において、隣接するカルバゾール残基同士の結合位置は、それぞれ、3位−3’位、3位−2’位、又は、2位−2’位から選ばれた一つである場合が好ましい。例として、2つのPの結合形態を以下に示す。
【0024】
【化17】

【0025】
また、下記の構造1及び構造2の少なくとも一方を有することが好ましい。
構造1:(P)a中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
構造2:(Q)c中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
さらに、下記の構造3及び構造4の少なくとも一方を有することが好ましい。
構造3:前記(P)a中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
構造4:前記(Q)c中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
上記の例として、カルバゾール残基とLとの結合位置を以下に示す。
【0026】
【化18】

【0027】
また、上記R〜Rの少なくとも1つ、及びR〜Rの少なくとも1つが、下記式(51)〜(55)で表される基から選択される基であることが好ましい。
【化19】

【0028】
式中、R11〜R23は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30のヘテロアリール基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又はヒドロキシル基である。
a、c、d、f、g、及びiは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。
b、e、h及びjは、それぞれ独立に、0〜3の整数である。
【0029】
17は、好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、又は置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30のヘテロアリール基である。
〜Tはそれぞれ独立に、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基、又は環形成原子数3〜30の芳香族複素環基である。
【0030】
以下、上述した式の各基の例について説明する。
尚、本願の「水素原子」は、重水素原子及び三重水素原子も含む。また、「環形成炭素」とは飽和環、不飽和環、又は芳香環を構成する炭素原子を意味し、「環形成原子」とはヘテロ環(飽和環、不飽和環、及び芳香環を含む)を構成する炭素原子及びヘテロ原子を意味する。
【0031】
置換又は無置換の炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、n−ウンデカニル基、n−ドデカニル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、が挙げられる。
【0032】
また、L及びLのアルキレン基(アルカン残基)としては、上述のアルキル基に対応する残基が挙げられる。
【0033】
置換又は無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、4−フルオロシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられ、好ましくはシクロペンチル基、シクロヘキシル基である。
【0034】
また、L及びLのシクロアルキレン基(シクロアルカン残基)としては、上述のシクロアルキル基に対応する残基が挙げられる。
【0035】
置換又は無置換の環形成炭素数6〜50(好ましくは6〜30)のアリール基(1価の芳香族炭化水素基)としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、ビフェニル−2−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、m−ターフェニル−4−イル基、m−ターフェニル−3−イル基、m−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、p−t−ブチルフェニル基、p−(2−フェニルプロピル)フェニル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−アントリル基、4’−メチルビフェニル−4−イル基、4”−t−ブチル−p−ターフェニル−4−イル基、フルオレン−1−イル基、フルオレン−2−イル基、フルオレン−3−イル基、フルオレン−4−イル基等が挙げられる。
【0036】
中でも、好ましくはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、ビフェニル−2−イル基、ビフェニル−3−イル基、ビフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−4−イル基、p−ターフェニル−3−イル基、p−ターフェニル−2−イル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、フルオレン−2−イル基、フルオレン−3−イル基であり、より好ましくはフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、m−トリル基、p−トリル基、フルオレン−2−イル基、フルオレン−3−イル基である。
【0037】
芳香族炭化水素環基の二価以上の基としては、上述したアリール基から水素原子を除くことにより導かれる基が挙げられる。
【0038】
置換又は無置換の環形成原子数3〜30のヘテロアリール基(1価の芳香族複素環基)としては、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナントリジニル基、2−フェナントリジニル基、3−フェナントリジニル基、4−フェナントリジニル基、6−フェナントリジニル基、7−フェナントリジニル基、8−フェナントリジニル基、9−フェナントリジニル基、10−フェナントリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナントロリン−2−イル基、1,7−フェナントロリン−3−イル基、1,7−フェナントロリン−4−イル基、1,7−フェナントロリン−5−イル基、1,7−フェナントロリン−6−イル基、1,7−フェナントロリン−8−イル基、1,7−フェナントロリン−9−イル基、1,7−フェナントロリン−10−イル基、1,8−フェナントロリン−2−イル基、1,8−フェナントロリン−3−イル基、1,8−フェナントロリン−4−イル基、1,8−フェナントロリン−5−イル基、1,8−フェナントロリン−6−イル基、1,8−フェナントロリン−7−イル基、1,8−フェナントロリン−9−イル基、1,8−フェナントロリン−10−イル基、1,9−フェナントロリン−2−イル基、1,9−フェナントロリン−3−イル基、1,9−フェナントロリン−4−イル基、1,9−フェナントロリン−5−イル基、1,9−フェナントロリン−6−イル基、1,9−フェナントロリン−7−イル基、1,9−フェナントロリン−8−イル基、1,9−フェナントロリン−10−イル基、1,10−フェナントロリン−2−イル基、1,10−フェナントロリン−3−イル基、1,10−フェナントロリン−4−イル基、1,10−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−1−イル基、2,9−フェナントロリン−3−イル基、2,9−フェナントロリン−4−イル基、2,9−フェナントロリン−5−イル基、2,9−フェナントロリン−6−イル基、2,9−フェナントロリン−7−イル基、2,9−フェナントロリン−8−イル基、2,9−フェナントロリン−10−イル基、2,8−フェナントロリン−1−イル基、2,8−フェナントロリン−3−イル基、2,8−フェナントロリン−4−イル基、2,8−フェナントロリン−5−イル基、2,8−フェナントロリン−6−イル基、2,8−フェナントロリン−7−イル基、2,8−フェナントロリン−9−イル基、2,8−フェナントロリン−10−イル基、2,7−フェナントロリン−1−イル基、2,7−フェナントロリン−3−イル基、2,7−フェナントロリン−4−イル基、2,7−フェナントロリン−5−イル基、2,7−フェナントロリン−6−イル基、2,7−フェナントロリン−8−イル基、2,7−フェナントロリン−9−イル基、2,7−フェナントロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル−1−インドリル基、4−t−ブチル−1−インドリル基、2−t−ブチル−3−インドリル基、4−t−ブチル−3−インドリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ベンゾチオフェニル基、3−チオフェニル基、4−チオフェニル基、5−チオフェニル基、6−チオフェニル基、7−チオフェニル基、1−イソチオフェニル基、3−イソチオフェニル基、4−イソチオフェニル基、5−イソチオフェニル基、6−イソチオフェニル基、7−イソチオフェニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基等が挙げられる。
【0039】
好ましくは、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、2−ジベンゾフラニル基、4−ジベンゾフラニル基、2−ジベンゾチオフェニル基、4−ジベンゾチオフェニル基である。
【0040】
芳香族複素環基の二価以上の基としては、上述したヘテロアリール基から水素原子を除くことにより導かれる基が挙げられる。
【0041】
置換アミノ基としては、置換もしくは無置換のモノもしくはジアルキルアミノ基、又は置換もしくは無置換のモノもしくはジアリールアミノ基が挙げられる。
アルキルアミノ基又はジアルキルアミノ基としては、アルキル部分が上述したアルキル基であるものが挙げられる。
アリールアミノ基としては、ジアリールアミノ基及びアルキルアリールアミノ基が挙げられる。窒素原子に結合するアルキル基及びアリール基の例としては上述のアリール基及びアルキル基が挙げられる。
また、L及びLのアリールアミン残基としては、トリアリールアミン残基及びアルキルアリールアミン残基が挙げられる。窒素原子に結合するアルキル基及びアリール基の例としては上述のアリール基及びアルキル基が挙げられる。
【0042】
置換シリル基としては、アルキル及び/又はアリールで置換されたシリル基が挙げられる。ケイ素原子に結合するアルキル基及びアリール基の例としては上述のアリール基及びアルキル基が挙げられる。尚、シリル基に置換しているアルキル基は、同一でも異なっていてもよい。同様に、シリル基に置換しているアリール基は、同一でも異なっていてもよい。
具体的に、トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘプチルシリル基、トリヘキシルシリル基等が挙げられる。好ましくはトリメチルシリル基、トリエチルシリル基である。
アリールシリル基としては、アルキルアリールシリル基やトリアリールシリル基が挙げられる。トリアリールシリル基としては、トリフェニルシリル基、トリナフチルシリル基等が挙げられる。好ましくはトリフェニルシリル基である。アルキルアリールシリル基としては、ジメチルフェニルシリル基、ジエチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、エチルジフェニルシリル基等が挙げられる。好ましくはジフェニルメチルシリル基、エチルジフェニルシリル基である。
【0043】
炭素数1〜20のアルコキシ基は、−OYと表され、Yの例として上記のアルキル基の例が挙げられる。アルコキシ基は、例えばメトキシ基、エトキシ基である。
【0044】
環形成炭素数3〜10のシクロアルコキシ基は、−OYと表され、Yの例として上記のシクロアルキル基の例が挙げられる。シクロアルコキシ基は、例えばシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基である。
【0045】
環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基は、−OYと表され、Yの例として上記の芳香族炭化水素環の例が挙げられる。アリールオキシ基は、例えばフェノキシ基である。
【0046】
炭素数7〜40のアラルキル基は、−Y−Zと表され、Yの例として上記のアルキル基の例に対応するアルキレンの例が挙げられ、Zの例として上記のアリール基の例が挙げられる。アラルキル基のアリール部分は、炭素数が6〜30が好ましい。アルキル部分は炭素数1〜10が好ましく、特に好ましくは1〜6である。例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、2−フェニルプロパン−2−イル基である。
【0047】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
【0048】
上記各基の置換基としては、それぞれ独立に、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、環形成炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルキル基を有するトリアルキルシリル基、環形成炭素数6〜24のアリール基を有するトリアリールシリル基、炭素数1〜20のアルキル基及び環形成炭素数6〜24のアリール基を有するアルキルアリールシリル基、環形成炭素数6〜24のアリール基、環形成原子数5〜24のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基である。具体的には、上記のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、アルキルアリールシリル基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基が挙げられる。さらに、これらの基が同様の置換基を有していてもよい。
アルケニル基としては、上述したアルキル基の分子内に不飽和結合を有する置換基が挙げられる。
【0049】
本発明において架橋性基は、公知の不飽和二重結合やエポキシ基、オキタセン等の熱、光、酸、電子線等により「架橋性能を有する部分」を有する基を意味する。架橋性基としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【化20】

【0050】
上記各式において、nは0〜10の整数を表す。
は、水素原子、アルキル基又はハロゲンを表す。アルキル基としては、炭素数1〜20のものが挙げられ、特に、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基である。
は、水素原子、アルキル基、アミノ基、アリール基、ハロゲン原子、アミド基又はカルボニル基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜20のものが挙げられ、特に、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基である。
【0051】
具体的には、下記式(31)〜(42)で示される基から選択される基が好ましい。
【化21】

【0052】
尚、架橋性基は上記L及びLで例示した連結基に上記の架橋性基を結合した基も含む。なかでも、下記式(43)〜(46)で示される基から選択される基が好ましい。
【化22】

(式(45)及び(46)において、oは、1〜10の整数である。)
【0053】
本発明の重合体は、下記式(1)〜(7)で表されるものが好ましい。なかでも、下記式(8)〜(25)で表されるものが好ましい。尚、下記式においては、構造単位AとBの結合状態、及び重合体に占める含有率を表記するために、便宜上、ブロック共重合体のように記載されているが、ブロック共重合体のみを示すものではない。本発明の重合体はブロック共重合体に限定されず、ランダム共重合体(例えば、―ABBABBBAAABA―等)等も含む。
【0054】
【化23】


【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【0055】
上記の各式中、R、R、R、R、L及びLは、上記式(A)及び(B)のR、R、R、R、L及びLと同様である。
m及びnはそれぞれ、重合体に占める各構造単位の含有率(モル比)を表し、mは0.01〜0.99、nは0.01〜0.99であり、m+n=1である。
lは、0又は1である。
【0056】
本発明では、上記式(1)〜(25)で表される各重合体のRの少なくとも1つ又はRの少なくとも1つが架橋性基である重合体がより好ましい。この場合、Lは架橋性基であってもよいが、すべてのLが架橋性基でなくともよい。
また、上記式(1)〜(21)で表される各重合体のLの少なくとも1つが架橋性基である重合体であることが好ましい。この場合、R及びRは架橋性基であってもよいが、すべてのR及びRが架橋性基でなくともよい。
【0057】
また、式(1)〜(25)で表される各重合体の、R、R、R及びRの少なくとも1つが、上述した式(51)〜(55)で表される基から選択される基であることが好ましい。
【0058】
本発明の重合体の分子量は特に制限はなく、2量体以上のオリゴマーから超高分子体まで含まれる。
重合体は数平均分子量(Mn)で、好ましくは10〜10、より好ましくは5×10〜10である。また、重量平均分子量(Mw)で、好ましくは10〜10、より好ましくは5×10〜10である。また、Mw/Mnで表される分子量分布は、特に制限はないが、10以下が好ましく、3以下がさらに好ましい。
【0059】
重合体の分子量が大きすぎると、ゲル化により素子作製において均質な製膜ができなくなる。一方、分子量が小さすぎると溶解性の制御が困難になる場合がある。
尚、数平均分子量及び重量平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用い、標準ポリスチレンで検量して求めることができる。
【0060】
本発明の重合体は、構造単位A及びBのP、Q、L及びLの各基に対応する重合性単量体を重合することにより得られる。
重合方法は特に限定されないが、上記各基に対応するジハライド誘導体と、ジボロン酸誘導体又はボロン酸エステル類誘導体をパラジウム触媒でカップリングさせる鈴木重合法が望ましい。ジハライド誘導体のハロゲンは、Clよりも、Br又はIがより好ましい。ジハライド誘導体のカップリング相手は、ボロン酸よりもボロン酸エステル類誘導体がより好ましい。特に、ボロン酸エステル類誘導体、ジピナコールエステル誘導体、ジ−1,3−プロパンジオール誘導体が好ましい。
【0061】
本発明の重合体において、構造単位Aと構造単位Bのモル比は、それぞれ、0.01〜0.99であることが好ましい。この範囲にて、重合体に要求される熱硬化性が得られるように調整すればよい。熱架橋性基を有する構造単位Bの含有率が高くなると、重合体の架橋性も高くなる。
さらに好ましくは、構造単位Aのモル比が0.85〜0.99であり、特に好ましくは、0.95〜0.99である。
【0062】
以下、本発明の重合体の具体例[化合物(1−1)〜(196−18)]を示す。但し、本発明の重合体は、これらに限定されるものではない。
尚、以下の各表において、Hは水素原子であり、H−1〜H−18、H−29及びH−30は以下の基を表す。m及びnはそれぞれ、重合体に占める各構造単位の含有率(モル比)を表し、mは0.01〜0.99、nは0.01〜0.99であり、m+n=1である。
また、上記式(1)〜(25)と同様に、下記式においては構造単位AとBの結合状態、及び重合体に占める含有率を表記するために、便宜上、ブロック共重合体のように記載されているが、ブロック共重合体のみを示すものではない。
【0063】
【化28】

【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】

【0068】
【表5】

【0069】
【表6】

【0070】
【表7】

【0071】
【表8】

【0072】
【表9】

【0073】
【表10】

【0074】
【表11−1】

【0075】
【表11−2】

【0076】
【表12−1】

【0077】
【表12−2】

【0078】
【表13−1】

【0079】
【表13−2】

【0080】
【表14−1】

【0081】
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【0082】
【表15】

【0083】
【表16】

【0084】
【表17】

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【表18】

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【表20】

【0088】
【表21】

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【表22】

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【表30】

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【0100】
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【0109】
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【0110】
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【0112】
【表45】

【0113】
【表46】

【0114】
【表47】

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【表48】

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【0120】
【表53】

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【表119】

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【表120】

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【表121】

【0193】
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【表123】

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【表124】

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【表125】

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【表129】

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【表136】

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【表143】

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【表145】

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【表155】

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【表159】

【0231】
【表160】

【0232】
【表161】

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【表162】

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【表163】

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【表164】

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【表165】

【0237】
【表166】

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【表167】

【0239】
【表168】

【0240】
【表169】

【0241】
【表170】

【0242】
【表171】

【0243】
【表172】

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【表173】

【0245】
【表174】

【0246】
【表175】

【0247】
【表176】

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【表177】

【0249】
【表178】

【0250】
【表179】

【0251】
【表180】

【0252】
【表181】

【0253】
【表182】

【0254】
【表183】

【0255】
【表184】

【0256】
【表185】

【0257】
【表186】

【0258】
【表187】

【0259】
【表188】

【0260】
【表189】

【0261】
【表190】

【0262】
【表191】

【0263】
【表192】

【0264】
【表193】

【0265】
【表194】

【0266】
【表195】

【0267】
【表196】

【0268】
本発明の重合体は、塗布法によって薄膜を形成できる。塗布法としては、湿式成膜法が好適に用いられる。具体的に、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、孔版印刷法、及び、それらとオフセット印刷法を組み合わせた印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー塗布スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スリットコート法、ロールコート法、キャップコート法、グラビアロールコート法、メニスカスコート法等が適用できる。特に微細なパターニングを要する場合、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、孔版印刷法、及び、それらとオフセット印刷法を組み合わせた印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー塗布等が好ましい。また、転写前駆基板へ本重合体を前記の乾式または湿式成膜法により成膜した後、レーザー光や熱プレスなどで対象とする電極を有する配線基板上へ転写する方法を用いることもできる。これらの方法による成膜は当業者に周知の条件により行うことができ、その詳細は省略する。
【0269】
塗布法に使用する塗布液は、本発明の重合体と溶媒を含む。塗布液中の重合体は、溶媒に溶解していても、分散していてもよい。
溶媒は好ましくは有機溶媒であり、当該有機溶媒としては、例えばクロロホルム、クロロベンゼン、クロロトルエン、クロロキシレン、クロロアニソール、ジクロロメタン、ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロベンゼン、トリクロロメチルベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、ブロモアニソール等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、オキサゾール、メチルベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、フラン、フラザン、ベンゾフラン、ジヒドロベンゾフラン等のエーテル系溶媒、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、トリメトキシベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ジイソプロピルベンゼン、ジブチルベンゼン、アミルベンゼン、ジヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラメチルベンゼン、ドデシルベンゼン、ベンゾニトリル、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、トルイル酸エチルエステル、トルエン、エチルトルエン、メトキシトルエン、ジメトキシトルエン、トリメトキシトルエン、イソプロピルトルエン、キシレン、ブチルキシレン、イソプロピルキシレン、アニソール、エチルアニソール、ジメチルアニソール、トリメチルアニソール、プロピルアニソール、イソプロピルアニソール、ブチルアニソール、メチルエチルアニソール、アネトールアニシルアルコール、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、ジフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ベンジルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、メチレンジオキシベンゼン、メチルナフタレン、テトラヒドロナフタレン、アニリン、メチルアニリン、エチルアニリン、ブチルアニリン、ビフェニル、メチルビフェニル、イソプロピルビフェニル等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロへキサン、メチルシクロへキサン、n−ペンタン、n−へキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、テトラデカン、デカリン、イソプロピルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロへキサノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−へキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロへキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示される。また、これらの有機溶媒は、単独で、又は複数組み合わせて用いることができる。
【0270】
これらのうち、溶解性、成膜の均一性、粘度特性等の観点から、少なくともトルエン、キシレン、エチルベンゼン、アミルベンゼン、アニソール、4−メトキシトルエン、2−メトキシトルエン、1,2−ジメトキシベンゼン、メシチレン、テトラヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、シクロへキサノン、メチルシクロヘキサノンのいずれか一種以上を含むことが好ましい。
【0271】
また、本成膜用の溶液には、必要に応じて粘度の調整剤、表面張力の調整剤、架橋反応の開始剤、架橋反応の触媒を添加することもできる。なお、粘度の調整剤、表面張力の調整剤、架橋反応の開始剤、架橋反応の触媒は、膜中に残留しても素子特性に影響を与えないものを選択するか、成膜工程で膜中から除去できるものが望ましい。
本発明においては、溶媒中に重合体が少なくとも一種類以上含まれ、重合体が分散又は溶解され、分散体又は溶液となっているものが好ましい。
【0272】
成膜後、真空や加熱により乾燥し、溶媒を除去することにより、重合体の薄膜が形成できる。この薄膜を、光照射や加熱(例えば、250℃程度)し、重合体を架橋させるにより、得られる膜を完全に不溶化することができる。
【0273】
尚、薄膜形成時には、リン系酸化防止剤等、有機EL素子の性能に影響しない酸化防止剤や重合開始剤等の反応開始剤を配合してもよい。また、用途に合わせて、他の化合物(例えば、後述するアクセプター材料)等を配合してもよい。
【0274】
重合体を架橋(重合)して硬化する方法は、特に限定されないが、例えば、ラジカル重合法、イオン重合法、リビング重合法、ラジカルリビング重合法、配位重合等が挙げられる。
ラジカル重合法の開始剤としては、例えばアゾ化合物、過酸化物が挙げられ、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスイソブチル酸ジエステル誘導体、過酸化ジベンゾイル(BPO)が好ましい。
カチオン重合の開始剤としては、各種強酸(p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等)、ルイス酸が好ましい。
また、光照射及び/又は熱処理にて、重合することも可能である。
【0275】
本発明の重合体は、塗布法によって薄膜が形成でき、得られる膜は正孔輸送性を有する。従って、エレクトロニクス用材料として有用である。例えば、エレクトロルミネッセンス素子、光電変換素子又はトランジスタ等の電子素子に使用できる。
特に、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、なかでも陽極と発光層間である正孔輸送領域で使用する材料(正孔輸送層、正孔注入層等)として好適である。
【0276】
本発明の有機EL素子は、陰極と陽極間に少なくとも発光層を含む1以上の有機薄膜層が挟持されている。そして、有機薄膜層の少なくとも1層が、本発明の重合体を含有する。
本発明では、陽極と発光層間に有機薄膜層を有し、この層が、本発明の重合体を含む有機薄膜層であることが好ましい。正孔輸送領域に形成される層としては、正孔輸送層や正孔注入層等が挙げられる。
また、正孔注入層又は正孔輸送層が発光層と接していることが好ましい。この場合、正孔注入層又は正孔輸送層に続いて、発光層を湿式成膜法により成膜することができる。
【0277】
本発明では、上記重合体が正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも1層の主成分として含有されていることがより好ましい。具体的には、正孔輸送層又は正孔注入層においては、本発明の重合体の含有量は、好ましくは51〜100重量%である。
【0278】
さらに、正孔輸送層及び正孔注入層の少なくとも1層が、アクセプター材料を含有することが好ましい。特に、陽極に接する層が含有することが好ましい。アクセプター材料を含有させることにより、正孔注入・輸送層中の正孔密度を増加したり、正孔移動度が高まるので、得られる有機EL素子の駆動電圧を低下させたり、キャリアバランスが向上して長寿命化する。
【0279】
アクセプター材料は、好ましくは電子吸引性の置換基又は電子欠乏環を有する有機化合物である。
電子吸引性の置換基として、例えば、ハロゲン、CN−、カルボニル基、アリールホウ素基等が挙げられる。
【0280】
電子欠乏環として、例えば、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、2−イミダゾール、4−イミダゾール、3−ピラゾール、4−ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、3−(1,2,4−N)−トリアゾリル、5−(1,2,4−N)−トリアゾリル、5−テトラゾリル、4−(1−O,3−N)−オキサゾール、5−(1−O,3−N)−オキサゾール、4−(1−S,3−N)−チアゾール、5−(1−S,3−N)−チアゾール、2−ベンゾキサゾール、2−ベンゾチアゾール、4−(1,2,3−N)−ベンゾトリアゾール、及びベンズイミダゾールからなる群から選択される化合物等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるわけではない。
【0281】
本発明の有機EL素子の代表的な素子構成としては、下記(1)〜(13)等の構造を挙げることができる。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/有機半導体層/発光層/陰極
(6)陽極/有機半導体層/電子障壁層/発光層/陰極
(7)陽極/有機半導体層/発光層/付着改善層/陰極
(8)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(9)陽極/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(10)陽極/無機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(11)陽極/有機半導体層/絶縁層/発光層/絶縁層/陰極
(12)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/絶縁層/陰極
(13)陽極/絶縁層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
【0282】
これらの中で通常(8)の構成が好ましく用いられるが、これらに限定されるものではない。
【0283】
本発明の有機EL素子において、本発明の重合体を含有する有機薄膜層以外の構成部材は、公知のものを使用できる。例えば、発光層はスチリルアミン化合物、アリールアミン化合物又はフルオランテン系化合物を含有することが好ましい。
【0284】
本発明の重合体を含有する有機薄膜層以外の形成は、真空蒸着、スパッタリング、プラズマ、イオンプレーティング等の乾式成膜法やコーティング法、印刷法等の湿式成膜法等の湿式成膜法等の公知の方法を適用することができる。
各層の膜厚は特に限定されるものではないが、適切な膜厚に設定する必要がある。膜厚が厚すぎると、一定の光出力を得るために大きな印加電圧が必要になり効率が悪くなる。膜厚が薄すぎるとピンホール等が発生して、電界を印加しても充分な発光輝度が得られない。通常の膜厚は5nm〜10μmの範囲が適しているが、10nm〜0.2μmの範囲がさらに好ましい。
【0285】
本発明の重合体の不溶化後に、さらに、上層に積層する場合も上記と同様に乾式成膜法、湿式成膜法のいずれを用いることもできるが、特に湿式成膜法を好適に用いることができる。この上層を積層する手段としては、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、孔版印刷法、及び、それらとオフセット印刷法を組み合わせた印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー塗布スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スリットコート法、ロールコート法、キャップコート法、グラビアロールコート法、メニスカスコート法等が適用できる。
【0286】
各種材料及び層形成方法により陽極、発光層、必要に応じて正孔注入・輸送層、及び必要に応じて電子注入・輸送層を形成し、さらに陰極を形成することにより有機EL素子を作製することができる。また陰極から陽極へ、前記と逆の順序で有機EL素子を作製することもできる。
【実施例】
【0287】
実施例1
下記の重合体P−1を合成した。
【化29】

【0288】
(1)単量体M−1の合成
【化30】

【0289】
(a)中間体M−1−1の合成
窒素雰囲気下、冷却管付き500mL三口フラスコ中に、カルバゾール10.0g(59.8mmol)に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)100mLを入れ、氷水浴にて0℃まで冷却した。冷却後、N−ブロモスクシンイミド(NBS)10.6g(59.8mmol)をDMF100mLに溶かした溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、氷水浴を外し、室温に戻し、8時間撹拌した。
【0290】
反応液を水に落として固体を析出させ、ろ取により析出物を得た。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン)で精製し、得られた固体を減圧乾燥したところ、12.2g(収率83%)の白色固体を得た。
【0291】
H−NMRスペクトルとフィールドディソープションマススペクトル(以下、FD−MS)分析により、得られた白色粉末を中間体M−1−1と同定した。
【0292】
(b)中間体M−1−2の合成
窒素雰囲気下、冷却管付き300mL三口フラスコ中M−1−1 6.0g(24.3mmol)、ヨードベンゼン5.4g(26.7mmol)、CuI1.4g(7.29mmol)、トランス−シクロヘキサンジアミン(trans-cyclohexanediamine)0.8g(7.29mmol)、りん酸カリウム10.3g(48.6mmol)にジオキサン120mLを加え、8時間還流させながら加熱した。
【0293】
反応終了後、減圧除去にて溶媒を取り除いた。その後、ジクロロメタン100mL、水100mLを加えて目的物を抽出し、有機層を取り出した。取り出した有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。溶媒を減圧下にて除去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:10)で精製した。得られた固体を減圧乾燥したところ、6.7g(収率85%)の白色固体を得た。
【0294】
H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、得られた白色粉末を中間体M−1−2と同定した。
【0295】
(c)中間体M−1−3の合成
窒素雰囲気下、冷却管付き300mL三口フラスコ中に、M−1−2 4.0g(12.5mmol)、ほう酸トリイソプロピル2.8g(15.0mmol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)60mLを加えて撹拌し、メタノール/ドライアイス バスにて−78℃まで冷却した。冷却後、n−ブチルリチウム(1.61M)38mL(60.9mmol)をゆっくり滴下し、滴下後1時間冷却したまま撹拌した。次に室温まで戻し、7時間撹拌した。反応終了後、メタノール10mLを滴下し、さらに1N HCl水溶液30mLを滴下した。塩化メチレン、水を加え、目的物を抽出し、有機層を取り出した。この有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。溶媒を減圧下にて除去し、カラムクロマトグラフィーにより単離し、白色固体2.1g(収率60%)を得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、得られた白色粉末を中間体M−1−3と同定した。
【0296】
(d)中間体M−1−4の合成
窒素雰囲気下、冷却管付き300mL三口フラスコ中に、M−1−1 4g(10.0mmol)、M−1−3 3.7g(10.0mmol)、Pd(PPh0.2g(0.2mol)、炭酸ナトリウム2.1g(20.0mmol)、ジメチルエーテル(DME)40mL、水20mLを加えた後、還流し、8時間加熱攪拌した。反応終了後、減圧除去にて溶媒を取り除いた。その後、ジクロロメタン100mL、水100mLを加えて目的物を抽出し、有機層を取り出した。取り出した有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。溶媒を減圧下にて除去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。得られた固体を減圧乾燥したところ、3.0g(収率74%)の白色固体を得た。
【0297】
H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、得られた白色粉末を中間体M−1−4と同定した。
【0298】
(e)中間体M−1−5の合成
窒素雰囲気下、M−1−4 2.5g(6.1mmol)、4−(4−ブロモフェニル)−ジベンゾフラン 2.0g(6.1mmol)、CuI 0.4g(1.8mmol)、トランス−シクロヘキサンジアミン(trans-cyclohexanediamine)、りん酸カリウム2.6g(12.2mmol)にジオキサン30mLを加え、8時間還流させながら加熱した。
【0299】
反応終了後、減圧除去にて溶媒を取り除いた。その後、ジクロロメタン100mL、水100mLを加えて目的物を抽出し、有機層を取り出した。取り出した有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。溶媒を減圧下にて除去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。得られた固体を減圧乾燥したところ、2.8g(収率70%)の白色固体を得た。
【0300】
H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、得られた白色粉末を中間体M−1−5と同定した。
【0301】
(f)M−1の合成
窒素雰囲気下、M−1−5 2.5g(3.8mmol)に、DMF 40mLを入れ、氷水浴にて0℃まで冷却した。
【0302】
冷却後、N−ブロモスクシンイミド1.4g(8.0mmol)をDMF40mLに溶かした溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後、氷水浴を外し、室温に戻し、8時間撹拌した。反応液を水に落として固体を析出させ、吸引ろ過により回収した。
【0303】
得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、得られた固体を減圧乾燥したところ、2.5g(収率80%)の白色固体を得た。
【0304】
H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、得られた白色粉末をM−1と同定した。
【0305】
(2)単量体M−2の合成
【化31】

【0306】
(a)中間体M−2−1の合成
中間体M−1−4と4−ブロモ―1,2−ジヒドロシクロブタベンゼンを使用して、中間体M−1−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量5.6g(収率86%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−2−1と同定した。
【0307】
(b)M−2の合成
中間体M−2−1を使用して、中間体M−1の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量4.4g(収率78%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−2と同定した。
【0308】
(3)重合体P−1の合成
【化32】

【0309】
窒素雰囲気下、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン4.1g(6.2mmol)、M−1 5.0g(6.2mmol)、M−2 0.2g(0.3mmol)、酢酸パラジウム[Pd(OAc)] 0.01g(0.04mmol)、トリ(o−トリル)ホスフィン[P(o−Tol)] 0.06g(0.2mmol)、りん酸カリウム6.6g(30.9mmol)、にジオキサン50mL、トルエン12mL、水11mLを加え、16時間還流させながら加熱した。
【0310】
反応終了後、減圧除去にて溶媒を取り除いた。トルエン150mL、水100mLを加えて目的物を抽出し、有機層を取り出した。取り出した有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。溶媒を減圧下にて濃縮し、この濃縮液をシリカゲルに通してろ過した。回収した溶液を減圧下にて濃縮し、メタノールへ滴下し、固体を析出させた。固体は、ろ取し、減圧乾燥した。
【0311】
窒素雰囲気下、この粗生成物と、ブロモベンゼン0.3g(1.9mmol)、Pd(OAc)0.03g(0.04mmol)、P(t−Bu)0.01g(0.05mmol)、りん酸カリウム2.0g(9.5mmol)、トルエン50mLを加え、8時間還流させながら加熱した。次にフェニルボロン酸を0.2g(1.9mmol)加え、さらに8時間加熱した。
【0312】
反応終了後、水100mLを加えて目的物を抽出し、有機層を取り出した。取り出した有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。回収したろ液をシリカゲルに通してろ過した。回収した溶液を濃縮し、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で8時間撹拌した。冷却後、有機層を、水で洗浄し、得られた溶液をメタノールに滴下し、ろ取することで沈殿物を得た。
【0313】
この沈殿物をトルエンに溶解させ、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。得られた溶液をメタノールに滴下し、撹拌した後、得られた沈殿物をろ取し、乾燥させることにより、重合体P−1を5.3g得た。
P−1のポリスチレン換算数平均分子量は7.8×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は2.4×10であった。
【0314】
尚、本願において分子量及び分子量分布は、下記の条件で測定した。
試料10mgをTHF10mlに溶解させた溶液を100μl注入して行った。流速は毎分1mlとし、カラム温度を40℃に設定した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)装置は、東ソー製HLC−8220を用いた。検出器は示差屈折(RI)検出器又は紫外可視(UV)検出器を用いた。カラムは、東ソー製TSKgel GMH−XL 2本及びTSKgel G2000−XL 1本使用し、標準試料のポリスチレンには、東ソー製TSK標準ポリスチレンを使用した。
【0315】
実施例2
下記重合体P−2を合成した。
【化33】

【0316】
(1)単量体M−3の合成
【化34】

【0317】
(a)中間体M−3−1の合成
NBSをN−ヨードスクシンイミド(NIS)に変えた他は、中間体M−1−1の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量5.6g(収率79%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−3−1と同定した。
【0318】
(b)中間体M−3−2の合成
中間体M−3−1を使用した他は、中間体M−1−1の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量3.7g(収率82%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−3−2と同定した。
【0319】
(c)中間体M−3−3の合成
中間体M−3−2と中間体M−1−3を使用して、中間体M−1−4の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量5.2g(収率76%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−3−3と同定した。
【0320】
(d)M−3の合成
中間体M−3−3と1−ブロモ−4−ヨードベンゼンを使用し、中間体M−1−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量4.9g(収率66%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−3と同定した。
【0321】
(2)単量体M−4の合成
【化35】

【0322】
(a)中間体M−4−1の合成
カルバゾールとブロモシクロブタベンゼンを使用して、中間体M−1−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量7.9g(収率90%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−4−1と同定した。
【0323】
(b)中間体M−4−2の合成
中間体M−4−1を使用し、中間体M−1−1の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量6.8g(収率77%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−4−2と同定した。
【0324】
(c)中間体M−4−3の合成
中間体M−4−2を使用し、中間体M−1−3の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量5.5g(収率75%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−4−3と同定した。
【0325】
(d)中間体M−4−4の合成
中間体M−3−2と中間体M−4−3を使用し、中間体M−1−4の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量6.1g(収率60%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−4−4と同定した。
【0326】
(e)M−4の合成
中間体M−4−4と1−ブロモ−4−ヨードベンゼンを使用し、中間体M−1−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量5.3g(収率77%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−4と同定した。
【0327】
(3)重合体P−2の合成
【化36】

【0328】
2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン、M−3及びM−4を用いて、P−1と同様の方法にて合成した。目的物を収量5.2gで得た。P−2のポリスチレン換算数平均分子量は1.2×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は3.5×10であった。
【0329】
実施例3
下記重合体P−3を合成した。
【化37】

【0330】
(1)単量体M−5の合成
【化38】

【0331】
(a)中間体M−5−1の合成
窒素気流下、4−ブロモ―1,2−ジヒドロシクロブタベンゼンを18.3g(100mmol)に脱水THF300mLを加え、−78℃に冷却し、n−ブチルリチウムヘキサン溶液(1.58M)を130mL滴下した。1時間撹拌した後、1,6−ジヨードヘキサン16.5mLをゆっくり滴下してから1時間かけて室温まで昇温させ、さらに2時間反応させた。10%希塩酸溶液を加えて攪拌し、有機層を抽出した。飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ別後、濃縮した。得られた固体を、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、減圧乾燥したところ、12.6g(収率37%)の無色液体を得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−5−1と同定した。
【0332】
(b)M−5の合成
窒素気流下、2,7−ジブロモフルオレンを12.5g(38.6mmol)に脱水THF120mLを加え、−78℃に冷却し、LDAヘキサン/THF溶液(1.11M)を77mL滴下した。1時間撹拌した後、脱水THF60mLに溶かしたM−5−1 21.7gをゆっくり滴下し、1時間かけて室温まで昇温させ、さらに2時間反応させた。
【0333】
10%希塩酸溶液を加えて撹拌し、塩化メチレンを加え、目的物を抽出し、有機層を取り出した。この有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。溶媒を減圧下にて除去し、カラムクロマトグラフィーにより単離し、白色固体12.2g(収率45%)を得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、得られた白色粉末をM−5と同定した。
【0334】
(2)単量体M−6の合成
【化39】

【0335】
(a)中間体M−6−1の合成
2−ブロモ−ジベンゾフランを使用して、中間体M−1−3の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量6.1g(収率63%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−6−1と同定した。
【0336】
(b)中間体M−6−2の合成
窒素気流下、9−H−カルバゾール10g(59.8mmol)を入れ、75mlのクロロホルムに溶解させた後、氷水浴にて0℃まで冷却した。次にゆっくりとFeCl 38.8g(239.2mmol)を60ml程度のクロロホルムに分散して得た溶液を滴下した。滴下後、室温に戻し、24時間撹拌した。反応液を多量のメタノールに滴下し、固体を析出させた。固体は、ろ取して回収した。その後、多量のメタノールと水で繰り返し洗浄し、ろ取して固体7.8g(収率82%)を得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、得られた白色粉末をM−6−2と同定した。
【0337】
(c)中間体M−6−3の合成
中間体M−6−2を使用して、中間体M−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量4.1g(収率56%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−6−3と同定した。
【0338】
(d)M−6の合成
中間体M−6−1と中間体M−6−3を使用して、中間体M−1−4の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量3.4g(収率48%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−6と同定した。
【0339】
(3)重合体P−3の合成
【化40】

【0340】
窒素雰囲気下、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン5.8g(10.0mmol)、M−5 0.4g(0.5mmol)、M−6 7.0g(10.5mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)[Pd(dba)] 0.2g(0.2mmol)、P(t−Bu) 0.06g(0.3mmol)、t−ブトキシナトリウム3.0g(31.5mmol)にキシレン40mLを加え、20時間還流させながら加熱した。
【0341】
反応終了後、減圧除去にて溶媒を取り除いた。水100mLを加えて目的物を抽出し、有機層を取り出した。取り出した有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。溶媒を減圧下にて濃縮し、この濃縮液をシリカゲルに通してろ過した。回収した溶液を減圧下にて濃縮し、メタノールへ滴下し、固体を析出させた。固体は、吸引ろ過により回収し、減圧乾燥した。
【0342】
窒素雰囲気下、この粗生成物とブロモベンゼン0.5g(3.2mmol)、Pd(OAc) 0.04g(0.2mmol)、P(t−Bu) 0.06g(0.3mmol)、りん酸カリウム1.1g(5.2mmol)にトルエン40mLを加え、8時間還流させながら加熱した。次にフェニルボロン酸を0.4g(3.2mmol)加え、さらに8時間加熱した。
【0343】
反応終了後、水100mLを加えて目的物を抽出し、有機層を取り出した。取り出した有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。回収したろ液をシリカゲルに通してろ過した。回収した溶液を濃縮し、ジエチルジチアカルバミン酸ナトリウム水溶液を加え、80℃で2時間撹拌した。冷却後、有機層を、水で洗浄し、得られた溶液をメタノールに滴下し、ろ取することで沈殿物を得た。
【0344】
この沈殿物をトルエンに溶解させ、シリカゲルカラムを通すことにより精製した。得られた溶液をメタノールに滴下し、撹拌した後、得られた沈殿物をろ取し、乾燥させることにより、重合体P−3を7.3g得た。P−3のポリスチレン換算数平均分子量は0.9×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は2.8×10であった。
【0345】
実施例4
下記重合体P−4を合成した。
【化41】

【0346】
(1)単量体M−7の合成
【化42】

【0347】
(a)中間体M−7−1の合成
9−フェニルカルバゾールを使用して、M−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量2.9g(収率73%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−7−1と同定した。
【0348】
(b)中間体M−7−2の合成
カルバゾールと2−ブロモ−ジベンゾフランを使用して、中間体M−1−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量4.0g(収率68%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−7−2と同定した。
【0349】
(c)中間体M−7−3の合成
中間体M−7−2を使用して、中間体M−1−1の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量3.2g(収率59%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−7−3と同定した。
【0350】
(d)中間体M−7−4の合成
中間体M−7−3を使用して、中間体M−1−3の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量5.4g(収率66%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−7−4と同定した。
【0351】
(e)中間体M−7−5の合成
中間体M−7−4と中間体M−7−1を使用して、中間体M−1−4の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量2.7g(収率61%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−7−5と同定した。
【0352】
(f)M−7の合成
中間体M−7−5を使用して、モノマーM−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量3.9g(収率56%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−7と同定した。
【0353】
(2)単量体M−8の合成
【化43】

【0354】
(a)中間体M−8−1の合成
中間体M−4−1を使用して、モノマーM−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量5.3g(収率85%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−8−1と同定した。
【0355】
(b)中間体M−8−2の合成
中間体M−8−1と中間体M−7−4を使用して、中間体M−1−4の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量3.8g(収率58%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−8−2と同定した。
【0356】
(c)M−8の合成
中間体M−8−2を使用して、M−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量4.2g(収率60%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−8と同定した。
【0357】
(3)重合体P−4の合成
【化44】

【0358】
2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン、M−7、M−8を用いて、P−1と同様の方法にて合成した。目的物を収量3.3gで得た。重合体P−4のポリスチレン換算数平均分子量は1.8×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は4.0×10であった。
【0359】
実施例5
下記重合体P−5を合成した。
【化45】

【0360】
(1)単量体M−9の合成
【化46】

【0361】
(a)中間体M−9−1の合成
カルバゾールと3−ブロモ−ジベンゾフランを使用して、中間体M−1−2の合成と同様の方法で合成した中間体M−9−0を使用して、中間体M−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量4.6g(収率87%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−9−1と同定した。
【0362】
(b)中間体M−9−2の合成
中間体M−9−1を使用して、中間体M−1−3の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量1.9g(収率43%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−9−2と同定した。
【0363】
(c)M−9の合成
中間体M−9−2を使用して、中間体M−1−4の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量3.5g(収率56%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−9と同定した。
【0364】
(2)重合体P−5の合成
【化47】

【0365】
2,7−ジブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン、M−5、M−9を用いて、P−3と同様の方法にて合成した。目的物を収量6.2gで得た。重合体P−5のポリスチレン換算数平均分子量は1.9×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は3.8×10であった。
【0366】
実施例6
下記重合体P−6を合成した。
【化48】

【0367】
(1)単量体M−10の合成
【化49】

【0368】
(a)中間体M−10−1の合成
中間体M−6−2を使用して、中間体M−1−1の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量3.5g(収率66%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−10−1と同定した。
【0369】
(b)M−10の合成
中間体M−10−1と中間体M−7−4を使用して、中間体M−1−4の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量4.9g(収率72%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−10と同定した。
【0370】
(2)単量体M−11の合成
【化50】

【0371】
(a)中間体M−11−1の合成
中間体M−4−1を使用して、中間体M−1−1の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量3.9g(収率70%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−11−1と同定した。
【0372】
(b)中間体M−11−2の合成
中間体M−11−1を使用して、中間体M−1−3の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量4.4g(収率52%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−11−1と同定した。
【0373】
(c)M−11の合成
中間体M−10−1と中間体M−11−2を使用して、中間体M−1−4の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量2.3g(収率67%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−11と同定した。
【0374】
(3)重合体P−6の合成
【化51】

【0375】
2,7−ジブロモ−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン、M−10、M−11を用いて、P−3と同様の方法にて合成した。目的物を収量4.6gで得た。重合体P−6のポリスチレン換算数平均分子量は1.5×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は3.3×10であった。
【0376】
実施例7
下記重合体P−7を合成した。
【化52】

【0377】
(1)単量体M−12の合成
【化53】

【0378】
(a)中間体M−12−1の合成
中間体M−7−3と中間体M−7−4を使用して、中間体M−1−4の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量3.6g(収率82%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−12−1と同定した。
【0379】
(b)中間体M−12−2の合成
中間体M−12−1を使用して、中間体M−1−1の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量3.5g(収率66%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−12−2と同定した。
【0380】
(c)中間体M−12−3の合成
中間体M−12−2を使用して、中間体M−1−3の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量4.1g(収率62%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−12−3と同定した。
【0381】
(d)中間体M−12−4の合成
中間体M−12−3と中間体M−3−2を使用して、中間体M−1−4の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量1.8g(収率76%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−12−4と同定した。
【0382】
(e)M−12の合成
中間体M−12−4と1−ブロモ−4−ヨードベンゼンを使用して、中間体M−1−2の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量2.7g(収率70%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−12と同定した。
【0383】
(2)単量体M−13の合成
【化54】

【0384】
窒素気流下、M−5 3.7g(5.3mmol)、ビスピナコラートジボロン4.1g(31.8mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド−ジクロロメタン錯体[PdCl(dppf)・CHCl]0.5g(0.6mmol)、酢酸カリウム3.1g(31.8mmol)、脱水DMSOを入れて、80℃にて28時間還流反応した。冷却後、水25mLを加えて目的物を抽出し、有機層を取り出した。取り出した有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。溶媒を減圧下にて除去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。得られた固体を減圧乾燥したところ、2.7g(収率64%)の白色固体を得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−13と同定した。
【0385】
(3)重合体P−7の合成
【化55】

【0386】
2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン、M−12、M−13を用いて、P−1と同様の方法にて合成した。目的物を収量5.5gで得た。重合体P−7のポリスチレン換算数平均分子量は1.0×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は2.5×10であった。
【0387】
実施例8
下記スキームにより重合体P−8を合成した。
【化56】

【0388】
2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン、M−1、M−13を用いて、P−1と同様の方法にて合成した。目的物を収量5.2gで得た。重合体P−8のポリスチレン換算数平均分子量は3.8×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は1.6×10であった。
【0389】
比較例1
下記スキームにより重合体P−9を合成した。
【化57】

【0390】
(1)単量体M−14の合成
(a)中間体M−14−1の合成
窒素雰囲気下、冷却管付き300mL三口フラスコ中ジフェニルアミン6.0g(35.4mmol)、ブロモベンゾシクロブテン6.5g(35.4mmol)、Pd(OAc)0.2g(0.9mmol)、P(t−Bu) 0.3g(1.4mmol)、t−ブトキシナトリウム6.8g(70.8mmol)にトルエン100mLを加え、8時間還流させながら加熱した。
反応終了後、減圧除去にて溶媒を取り除いた。その後、ジクロロメタン100mL、水100mLを加えて目的物を抽出し、有機層を取り出した。取り出した有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。溶媒を減圧下にて除去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。得られた固体を減圧乾燥したところ、7.2g(収率88%)の白色固体を得た。
【0391】
H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、得られた白色粉末を中間体M−14−1と同定した。
【0392】
(b)M−14の合成
中間体M−14−1を使用して、中間体M−1−1の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量4.8g(収率68%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−14と同定した。
【0393】
(2)P−9の合成
2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ−n−オクチルフルオレン、ジ(4−ブロモフェニル)フェニルアミン、M−14を用いて、P−1と同様の方法にて合成した。目的物を収量5.6gで得た。重合体P−9のポリスチレン換算数平均分子量は7.8×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は2.4×10であった。
【0394】
比較例2
下記重合体P−10を合成した。
【化58】

【0395】
(1)単量体M−16の合成
【化59】

【0396】
窒素雰囲気下、9,9−ジオクチル−2,7−ジブロモフルオレン10.0g(18.2mmol)、アニリン1.7g(18.2mmol)、Pd(dba)30.6g(0.6mmol)、(±)−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル(rac−BINAP)1.7g(0.8mmol)、t−ブトキシナトリウム5.0g(72.8mmol)、にトルエン500mLを加え、16時間還流させながら加熱した。
【0397】
反応終了後、減圧除去にて溶媒を取り除いた。水100mLを加えて目的物を抽出し、有機層を取り出した。取り出した有機層へMgSOを加えて乾燥し、ろ過によりMgSOを除去した。溶媒を減圧下にて除去し、得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。得られた固体を減圧乾燥したところ、6.8g(収率65%)の白色固体を得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、得られた白色粉末を中間体M−16と同定した。
【0398】
(2)単量体M−17の合成
【化60】

【0399】
(2)単量体M−17の合成
(a)中間体M−17−1の合成
上記化合物を使用して中間体M−1−4の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量7.8g(収率68%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−17−1と同定した。
【0400】
(b)M−17の合成
中間体M−17−1を使用して、M−16の合成と同様の方法で合成した。目的物を収量5.8g(収率63%)で得た。H−NMRスペクトルとFD−MS分析により、M−17と同定した。
【0401】
(3)重合体P−10の合成
【化61】

【0402】
4、4’−ジブロモビフェニル、M−16、M−17を用いて、P−3と同様の方法にて合成した。目的物を収量4.5gで得た。重合体P−10のポリスチレン換算数平均分子量は1.3×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は3.6×10であった。
【0403】
実施例9(有機EL素子作製と評価)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)を、イソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄した後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極付きガラス基板に、スピンコート法で正孔注入層に用いるポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)の混合物を10nmの膜厚で成膜して、正孔注入層を形成した(PSSはアクセプター)。
次いで、実施例1で得られた重合体P−1のキシレン溶液(1.0重量%)を、スピンコート法で25nmの膜厚で成膜した。次に、これを減圧下120℃で1時間乾燥し、正孔輸送層を形成した。
さらに、膜厚40nmの下記化合物EM1を蒸着し成膜した。同時に発光分子として、下記のスチリル基を有するアミン化合物D1を、EM1とD1の重量比が95:5になるように蒸着し、発光層を形成した。
この膜上に下記Alqを蒸着により、膜厚10nmに成膜した。この層は、電子注入層として機能する。
この後、還元性ドーパントであるLi(Li源:サエスゲッター社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜(膜厚10nm)を形成した。このAlq:Li膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し、窒素中でガラス封止して、有機EL素子を作製した。
【化62】

【0404】
作製した有機EL素子に電流を流して発光効率及び寿命を評価した。結果を表197に示す。
【0405】
実施例10
発光層の材料として、スチリル基を有するアミン化合物D1の代わりに下記アリールアミン化合物D2を用いた他は実施例9と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表197に示す。
【化63】

(Meはメチル基である。)
【0406】
比較例3
正孔輸送材料としてP−1の代わりに比較例1で得られたP−9を用いた他は、実施例9と同様にして有機EL素子を作製し、評価した結果を表197に示す。
【0407】
比較例4
正孔輸送材料としてP−1の代わりに比較例2で得られたP−10を用いた他は実施例9と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表197に示す。
【0408】
【表197】

【0409】
実施例9〜10及び比較例3〜4の結果から、本発明のビスカルバゾールポリマーを用いた有機EL素子は、芳香族アミン誘導体である比較化合物を用いた有機EL素子と比べて、発光効率、寿命で優れていることが分かる。
【0410】
実施例11(有機EL素子作製と評価)
25mm×75mm×1.1mm厚のITO透明電極付きガラス基板(ジオマティック社製)を、イソプロピルアルコール中で5分間超音波洗浄した後、UVオゾン洗浄を30分間行なった。洗浄後の透明電極付きガラス基板に、スピンコート法で正孔注入層に用いるポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)の混合物を10nmの膜厚で成膜して、正孔注入層を形成した(PSSはアクセプター)。
次いで、実施例1で得られた重合体P−1のキシレン溶液(1.0重量%)を、スピンコート法で25nmの膜厚で成膜し、230℃で30分間乾燥及び熱硬化し、正孔輸送層を形成した。
次に、上記化合物EM1(ホスト)と上記スチリル基を有するアミン化合物D1(ドーパント)が固形分重量比95:5で混合しているキシレン溶液(1.0重量%)を、スピンコート法で40nmの膜厚で成膜し、150℃で30分間乾燥させ、発光層を形成した。
この膜上にAlqを蒸着により、膜厚10nmに成膜した。この層は、電子注入層として機能する。この後、還元性ドーパントであるLi(Li源:サエスゲッター社製)とAlqを二元蒸着させ、電子注入層(陰極)としてAlq:Li膜(膜厚10nm)を形成した。このAlq:Li膜上に金属Alを蒸着させ金属陰極を形成し、窒素中でガラス封止して、有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子に電流を流して性能を評価した。結果を表198に示す。
【0411】
実施例12
正孔輸送材料としてP−1の代わりに実施例2で得られた重合体P−2を用いた他は、実施例11と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表198に示す。
【0412】
実施例13
正孔輸送材料としてP−1の代わりに実施例3で得られた重合体P−3を用いた他は、実施例11と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表198に示す。
【0413】
実施例14
正孔輸送材料としてP−1の代わりに実施例4で得られた重合体P−4を用いた他は、実施例11と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表198に示す。
【0414】
実施例15
正孔輸送材料としてP−1の代わりに実施例5で得られた重合体P−5を用いた他は、実施例11と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表198に示す。
【0415】
実施例16
正孔輸送材料としてP−1の代わりに実施例6で得られた重合体P−6を用いた他は、実施例11と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表198に示す。
【0416】
実施例17
正孔輸送材料としてP−1の代わりに実施例7で得られた重合体P−7を用いた他は、実施例11と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表198に示す。
【0417】
実施例18
正孔輸送材料としてP−1の代わりに実施例8で得られた重合体P−8を用いた他は、実施例11と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表198に示す。
【0418】
実施例19
発光層の材料として、スチリル基を有するアミン化合物D1の代わりにアリールアミン化合物D2を用いた他は実施例11と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表198に示す。
【0419】
比較例5
正孔輸送材料としてP−1の代わりに比較例1で得られたP−9を用いた他は、実施例11と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表198に示す。
【0420】
比較例6
正孔輸送材料としてP−1の代わりに比較例2で得られたP−10を用いた他は実施例11と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表198に示す。
【0421】
【表198】

【0422】
実施例11〜19及び比較例5、6の結果から、本発明のビスカルバゾールポリマーを用いた有機EL素子は、芳香族アミン誘導体である比較化合物を用いた有機EL素子と比べて、発光効率、寿命で優れていることが分かる。
また、正孔注入層、正孔輸送層及び発光層を湿式成膜で形成しても、優れた性能が得られることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0423】
本発明の重合体は、エレクトロニクス用材料として有用である。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子用材料、なかでも陽極と発光層間である正孔輸送領域で使用する材料として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)及び(B)で表される構造単位を含有する重合体。
【化64】

[式(A)中、Pは下記式(P)で表される化合物に由来する基である。
【化65】

(式中、Aはそれぞれ独立に、窒素原子又はCRである。
は、単結合、O、S、CR又はNRである。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアリールアミノ基又はアリールシリル基である。)
aは2〜5の整数であり、(P)aは、上記(P)基がa個連続して結合していることを表す。a個のPはそれぞれ独立であり、また、P同士の結合位置は限定されない。
は連結基を表す。
bは、0〜5の整数であり、(L)bは、bが2以上である場合、Lがb個連続して結合したことを表す。この場合、b個のLはそれぞれ独立であり、また、L同士が結合する位置は限定されない。
式(A)において、PとLの結合位置は限定されない。
式(B)中、Qは下記式(Q)で表される化合物に由来する基である。
【化66】

(式中、Aはそれぞれ独立に、窒素原子又はCRである。
は、単結合、O、S、CR又はNRである。
〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30のヘテロアリール基、置換もしくは無置換のアリールアミノ基、アリールシリル基、又は架橋性基である。)
cは2〜5の整数であり、(Q)cは、上記(Q)基がc個連続して結合していることを表す。c個のQはそれぞれ独立であり、また、Q同士の結合位置は限定されない。
はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30の芳香族複素環基、置換もしくは無置換のアリールアミン残基、アリールシリレン基、又は架橋性基である。
dは、0〜5の整数であり、(L)dは、dが2以上である場合、Lがd個連続して結合していることを表す。この場合、d個のLはそれぞれ独立であり、また、L同士が結合する位置は限定されない。
式(B)において、QとLの結合位置は限定されない。
式(B)において、c個のQ及びd個のLのうち、少なくとも1つは、架橋性基を有する。]
【請求項2】
前記P又はQが、置換又は無置換のカルバゾールの残基である請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
a個連続した置換もしくは無置換のカルバゾール残基において隣接するカルバゾール残基同士の結合位置、又は、c個連続した置換もしくは無置換のカルバゾール残基において隣接するカルバゾール残基同士の結合位置が、それぞれ、3位−3’位、3位−2’位、及び、2位−2’位から選ばれた一種である請求項2に記載の重合体。
【請求項4】
下記の構造1及び構造2の少なくとも一方を有する、請求項2又は3に記載の重合体。
構造1:前記(P)a中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
構造2:前記(Q)c中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
【請求項5】
下記の構造3及び構造4の少なくとも一方を有する、請求項2〜4のいずれかに記載の重合体。
構造3:前記(P)a中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
構造4:前記(Q)c中の1つの置換又は無置換のカルバゾール残基と、Lとの結合位置が、該カルバゾール残基の9位、3位又は2位である。
【請求項6】
前記a又はcが、それぞれ2又は3である請求項1〜5のいずれかに記載の重合体。
【請求項7】
下記式(1)〜(7)のいずれかで表される請求項1〜6のいずれかに記載の重合体。
【化67】

【化68】

(各式中、R、R、R、R、L及びLは、前記式(A)及び(B)のR、R、R、R、L及びLと同様である。
m及びnはそれぞれ、重合体に占める各構造単位の含有率(モル比)を表し、mは0.01〜0.99、nは0.01〜0.99であり、m+n=1である。
lは、0又は1である。)
【請求項8】
下記式(8)〜(25)のいずれかで表される請求項7に記載の重合体。
【化69】

【化70】

【化71】

【化72】

(各式中、R、R、R、R、L及びLは、前記式(A)及び(B)のR、R、R、R、L及びLと同様である。
m及びnはそれぞれ、重合体に占める各構造単位の含有率(モル比)を表し、mは0.01〜0.99、nは0.01〜0.99であり、m+n=1である。)
【請求項9】
前記式(1)〜(25)で表される各重合体の、Rの少なくとも1つ又はRの少なくとも1つが架橋性基であり、Lは架橋性基ではない、請求項7又は8の重合体。
【請求項10】
前記架橋性基が、下記式(31)〜(42)で示される基から選択される基である請求項1〜9のいずれかに記載の重合体。
【化73】

【請求項11】
前記式(1)〜(21)で表される各重合体のLの少なくとも1つが架橋性基であり、R及びRが架橋性基ではない請求項7又は8の重合体。
【請求項12】
前記架橋性基であるLが、下記式(43)〜(46)で示される基から選択される基である請求項11に記載の重合体。
【化74】

(式(45)及び(46)において、oは、1〜10の整数である。)
【請求項13】
前記式(1)〜(25)で表される各重合体の、R、R、R及びRの少なくとも1つが、下記式(51)〜(55)で表される基から選択される基である請求項8〜12のいずれかに記載の重合体。
【化75】

(式中、R11〜R23は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の炭素数7〜40のアラルキル基、置換もしくは無置換の環形成原子数3〜30のヘテロアリール基、置換アミノ基、置換シリル基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基又はヒドロキシル基である。
a、c、d、f、g、及びiは、それぞれ独立に、0〜4の整数である。
b、e、h及びjは、それぞれ独立に、0〜3の整数である。
〜Tはそれぞれ独立に、単結合、置換もしくは無置換の環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素環基又は環形成原子数3〜30の芳香族複素環基である。)
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の重合体及び溶媒を含む塗布液。
【請求項15】
前記溶媒の少なくとも1種が有機溶媒である請求項14に記載の塗布液。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の塗布液を用いて湿式成膜する電子素子の製造方法。
【請求項17】
前記電子素子が、電界発光素子、光電変換素子又はトランジスタである請求項16に記載の電子素子の製造方法。
【請求項18】
前記電子素子が、有機エレクトロルミネッセンス素子である請求項16又は17に記載の電子素子の製造方法。
【請求項19】
陽極と陰極と、前記陽極と陰極の間に、発光層を含む1層以上の有機薄膜層を有し、
前記有機薄膜層の少なくとも1層が請求項1〜13のいずれかに記載の重合体を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項20】
前記有機薄膜層の少なくとも1層が正孔注入層又は正孔輸送層である請求項19に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
前記正孔注入層又は正孔輸送層が発光層と接している請求項20に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項22】
前記発光層が湿式成膜法により成膜された請求項19〜21のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。

【公開番号】特開2013−87216(P2013−87216A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229719(P2011−229719)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】