説明

架橋型高分子水性分散体

【課題】カルボニル基を含有する高分子水性分散体中と1分子中に2個以上のヒドラジン基及び/又はセミカルバジド誘導体から得られる塗料の経時的な粘度上昇を抑制することができる高分子水性分散体の提供。
【解決手段】カルボニル基を含有する高分子水性分散体であって、該カルボニル基の水媒体中への分配率が20%未満であることを特徴とする高分子水性分散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内又は屋外用の塗料、建築仕上塗材等として有用である水性分散体に関する。具体的には、建築物、鋼構造物、建材、モルタル、ALCを含む各種コンクリート、プラスチック、自動車への塗料、仕上塗材等として塗装する上塗り剤又は建材、モルタル、コンクリート、鋼材、自動車、太陽電池パネル、プラスチックへ直接塗装するクリアーコート剤、トップコート剤、塗料等の各種用途に利用することができる汚染防止性に優れた水性分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
水性分散体より得られる合成樹脂皮膜は、常温あるいは加熱乾燥下で成膜し、比較的耐久性の良好な皮膜を形成することができるので様々な分野で広く用いられている。
【0003】
しかし屋外で暴露された場合、その皮膜はほこり、煤煙、砂等の付着により汚染され、さらに光、熱、雨等によりその光沢値が速く低下してしまい、光沢保持性の水準は低いものであった。
【0004】
そのため、つや有り塗料で塗装された場合、塗装された直後における艶のある外観は、経時的な汚染と光沢値の低下によって、非常に汚れた艶のない皮膜となってしまう問題があった。
【0005】
上記の問題を解決するために、特公昭46−20053号公報、及び特開昭54−144432号公報に開示されているカルボニル基が導入されたラテックス組成物とヒドラジド系化合物との混合物である常温架橋型の水性組成物を用いて水性塗料とした場合、耐汚染性は改善され、汚染物質の塗料への食い込みを抑制する手法として有効であるが、高分子水性分散体中のガラス転移温度が高く、常用温度での成膜性が不十分であるため、成膜助剤として、有機溶剤を添加する等の手法が一般的に行われる。しかし、外壁などの現場塗装では、有機溶剤による臭気や、シックハウス症候群発症などの懸念から、有機溶剤の不含化が求められている。水溶性を高め、成膜性を向上させ、成膜温度を低下させる方法があるが、高分子水性分散体中のカルボニル基を含有する水溶性ポリマーが一定比率以上に達すると、架橋剤と反応し粘度の上昇速度が速くなり、硬化剤を添加してから実際に塗装するまでの時間が短くなり、塗装時間が制限されるという欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カルボニル基を含有する高分子水性分散体中と1分子中に2個以上のヒドラジン基及び/又はセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体から得られる塗料の経時的な粘度上昇を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に関し鋭意検討を重ねた結果、カルボニル基を含有する高分子水性分散体の全カルボニル基のうち、水媒体中への分配率が一定比率未満である、高分子水性分散体と、1分子中に2個以上のヒドラジン基及び/又はセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体の混合物から成る塗料は、経時的な粘度上昇を抑制できる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
カルボニル基を含有する高分子水性分散体中の全カルボニル基のうち、水媒体中への分配率を一定比率未満にする事により、カルボニル基を含有する高分子水性分散体中と1分子中に2個以上のヒドラジン基及び/又はセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体の混合物から成る塗料の経時的な粘度上昇を抑制することが可能となった。
【0009】
本発明の第1は、カルボニル基を含有する高分子水性分散体であって、該カルボニル基の水媒体中への分配率が20%未満であることを特徴とする高分子水性分散体である。
【0010】
本発明の第2は、親水性単量体由来の重合単位を5wt%以上含む高分子を含む上記第1に記載の高分子水性分散体である。
【0011】
本発明の第3は、上記第1又は第2記載の高分子水性分散体と、1分子中に2個以上のヒドラジン基及び/又はセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体とを含む塗料である。
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明における高分子水性分散体は、低汚染塗料用エマルションとして有用であり、具体的には、塗料、建築仕上塗材等に有用であり、より具体的には、建築物、鋼構造物、建材、モルタル、コンクリート、プラスチック、自動車への塗料、建築仕上塗材等の上塗り剤、あるいは、建材、モルタル、コンクリート、鋼材、自動車、プラスチックへ直接塗装するクリアーコート剤、トップコート剤、塗料等の各種用途において、汚れにくい塗料ビヒクルとして利用することができる。
【0014】
建築仕上塗材又は塗料等のトップコートとして利用する場合は、基材が例えばコンクリート、セメントモルタル、スレート板、ケイカル板、石膏ボード、押し出し成形板、発泡性コンクリート等の無機建材又は建築造物、あるいは基材が織布、不織布又は金属等である建材等が挙げられる。さらに鋼構造物、金属基材の家電、自動車、プラスチック基材の家電、自動車部品等の各種基材も挙げられる。本発明の高分子水性分散体をこれら基材を含む各種下地に直接、又は下塗り塗料を介して塗装される塗料又は建築仕上材用のトップコートとして用いることができる。
【0015】
また、高分子分散体は、仕上塗材として、薄付け仕上塗材、厚付け仕上塗材、石材調仕上材、弾性仕上げ材等とすることができ、下塗塗料としてシーラーレスフィラーを含む複層仕上塗材用トップコートとして使用することができる。またグロスペイントあるいはフラットペイント等の合成樹脂エマルションペイント、木部塗料、瓦用塗料、プラスチック用塗料、金属用塗料として自動車塗料、自動車補修塗料、PCM用塗料、家電用塗料等としても使用することができる。
【0016】
本発明において、カルボニル基を含有する高分子水性分散体とは、分子中に少なくとも1個のカルボニル基を有し、該カルボニル基の各々がケト基又はアルド基である高分子化合物の水性粒子分散体である。
【0017】
高分子水性分散体の例としては、ウレタンラテックス、あるいはスチレン−アクリル系ラテックス、オールアクリル系ラテックス、シリコーン変性アクリル系ラテックス、フッ素−アクリルラテックス、アクリルシリコンラテックス等のアクリル系ラテックスや、スチレンブタジエンラテックス、NBRラテックス、塩化ビニリデン系ラテックス、酢酸ビニル、酢酸ビニル−アクリル、酢酸ビニル−VeoVaラテックス等の酢酸ビニル系ラテックス、シリコーンラテックスが挙げられるが、好ましくはウレタンラテックス、あるいはスチレン−アクリル系ラテックス、オールアクリル系ラテックス、シリコーン変性アクリル系ラテックス、フッ素−アクリルラテックス、アクリルシリコンラテックス等のアクリル系ラテックスである。
【0018】
これら高分子分散体の粒子径は、例えば0.01μm〜100μmであり、さらには0.05μm〜10μmである。
【0019】
上記高分子水性分散体を構成する高分子化合物の例としては、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリビニルアセテート系、ポリブタジエン系、ポリ塩化ビニル系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリスチレン系、ポリスチレン−(メタ)アクリレート系共重合体、ロジン系誘導体、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルコール付加物、セルロース系樹脂などのポリカルボニル化合物が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0020】
これら高分子化合物は、分子中に少なくとも1個のアルド基又はケト基を含有する単量体成分を他の単量体成分(親水性単量体等)と共重合又は付加重合することにより得られる。
【0021】
上記の親水性単量体を具体的に示せば、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−エチルメタアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルメタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−n−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N−n−プロピルメタクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルピロリジン、N−メタクリロイルピロリジン、N−アクリロイルピペリジン、N−メタクリロイルピペリジン、N−アクリロイルヘキサヒドロアゼピン、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−アルキル又はN−アルキレン置換(メタ)アクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、無水マレイン酸、あるいはイタコン酸、マレイン酸、フマール酸などの2塩基酸のハーフエステル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピリ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルやジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、モノ−2−ヒドロキシエチルモノブチルフマレート、アリルアルコールやエチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート、さらには、「プラクセルFM、FAモノマー」[ダイセル化学(株)製の、カプロラクトン付加モノマーの商品名]や、その他のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0022】
これらの親水性単量体は親水性単量体由来の重合単位として、本発明の高分子水性分散の高分子に5wt%以上含まれていることが好ましい。
【0023】
上記の分子中に少なくとも1個のアルド基又はケト基を有する単量体を具体的に示せば、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトン、アクリルオキシアルキルプロパナール類、メタクリルオキシアルキルプロパナール類、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートアセチルアセテート、ブタンジオールアクリレートアセチルアセテート、アセトンジカルボン酸、ジヒドロキシアセトン、モノヒドロキシアセトン、及びジヒドロキシベンズアルデヒド等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができるが、これらに限られるものではない。
【0024】
ただし、カルボン酸及びエステル類の持つカルボニル基を含有するエチレン性不飽和単量体は除外する。
【0025】
水媒体中への上記カルボニル基の分配率が20%未満であることが好ましく、15%未満にすることは、更に好ましい。また、一週間以上、粘度上昇を抑制するためには、10%未満にすることが更に好ましい。
【0026】
本発明のカルボニル基を含有する高分子水性分散体において、分子中に少なくとも1個のアルド基又はケト基を有する単量体と共重合する成分の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸の半エステル、クロトン酸などのカルボン酸単量体や、その他の具体例としては、アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸エステル、アクリルアミド系単量体、メタクリルアミド系単量体、シアン化ビニル類等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの例としては、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アルキル部の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が1〜100個の(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
上記の(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
【0028】
上記の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられる。
【0029】
上記(ポリ)オキシエチレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0030】
上記(ポリ)オキシプロピレン(メタ)アクリレートの具体例としては、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
【0031】
上記(ポリ)オキシエチレンジ(メタ)アクリレートの具体例としては、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、メトキシ(メタ)アクリル酸ジエチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0032】
上記(メタ)アクリルアミド系単量体としては、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどがあり、シアン化ビニル類としては、例えば(メタ)アクリロニトリルなどがある。
【0033】
また上記以外の具体例としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、ブタジエン等のジエン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類、酢酸イソプロペニル、プロピオン酸イソプロペニル等のカルボン酸イソプロペニルエステル類、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物、酢酸アリル、安息香酸アリル等のアリルエステル類、アリルエチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類がある。さらに4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピロメチル(メタ)アクリレート、ビニルピロリドン、トリメチロルプロパントリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2,3−シクロヘキセンオキサイド、(メタ)アクリル酸アリルも使用できる。また(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及び塩、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル及び塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル及び塩、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド及び塩、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド及び塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド及び塩、ビニルピリジン、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミドエピクロルヒドリン付加物のハロゲン化塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドエピクロルヒドリン付加物のハロゲン化塩及びアルキルスルホン酸塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチルエピクロルヒドリン付加物のハロゲン化塩、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピルエピクロルヒドリン付加物のハロゲン化塩及びアルキルスルホン酸塩等のカチオン基を持つ不飽和単量体やそれらの併用が挙げられる。
【0034】
カルボニル基を含有する高分子水性分散体は、上記例示した単量体の適当な組み合わせを懸濁重合、乳化重合又は溶液重合により得られたものが一般的である。それ以外にも、カルボニル基を含有する高分子化合物を高分子水性分散体の重合工程、又は直接高分子水性分散体へ添加することにより得ることもできる。
【0035】
さらにカルボニル基を含有する高分子水性分散体が、加水分解性シラン単量体、アルド基又はケト基を有するエチレン性不飽和単量体、及びエチレン性不飽和単量体からなり、不飽和単量体の混合物の重合、特に乳化重合又はミニエマルション重合を含む懸濁重合によって得られるシラン変性されてなるカルボニル基を含有する高分子水性分散体も挙げられる。
【0036】
ここで使用される加水分解性シラン単量体としては、下記式(a)で表される加水分解性シランから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、これらのオリゴマーも含まれる。
(R−Si−(R4−n (a)
(式中nは0〜3の整数であり、Rは水素原子、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、又は炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基から選ばれる基であり、n個のRはそれぞれ同一であっても、異なってもよい。Rは炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基又は水酸基であり、4−n個のRはそれぞれ同一であっても、異なってもよい。)
【0037】
特に、加水分解性シランには、式(a)においてn=1としたシランの少なくとも1種を含んでいることが好ましい。このときRとしてはメチル基、フェニル基、ビニル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基が好ましい。また、Rは、それぞれ独立してメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、及び水酸基であるのが好ましい。
【0038】
n=1とした上記加水分解性シランの具体例としては、メチルトリメトシキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどがある。本発明の高分子分散体はまたこれらを単独又は二種以上を含んでいてもよい。
【0039】
その他の加水分解性シランとして、環状シロキサンを用いることができる。その具体例としては、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンなどが挙げられる。
【0040】
また、加水分解性シランとして、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、テトラエトキシシラン等も使用することができる。さらに加水分解性シランとしてクロロシランを用いることができる。その具体例としては、メチルクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、ビニルクロルシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジクロロメチルシラン等が挙げられる。
【0041】
加水分解基を有する線状シロキサンの例としては、下記の一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【化1】

【0043】
【化2】

【0044】
【化3】

(式中、Rは水素、炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10のアリール基、炭素数5〜6のシクロアルキル基、ビニル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基又は炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基であり、Rはそれぞれ、独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、水酸基、エポキシ基又はポリオキシアルキレンオキサイド基から選ばれ、mは1〜999の正の整数を表す。)
【0045】
本発明では加水分解性のないシランとして、シリコーン系マクロマーを使用することもできる。このシリコーン系マクロマーは、片末端にラジカル重合性基を有する、シリコーンを骨格とする高分子量単量体である。本発明で使用できるシリコーン系マクロマーの好ましい数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定されるポリスチレン換算の数平均分子量で1,000〜100,000であり、より好ましくは数平均分子量が2,000〜50,000である。
【0046】
マクロマーの数平均分子量が1,000未満であると、得られるグラフトポリマーにおける枝ポリマーが短すぎてシリコーンに由来する上塗り塗膜との高い密着性、耐候性等の特性が発現し難く、一方マクロマーの数平均分子量が100,000を超えると、共重合させるビニル単量体との共重合性が乏しく、グラフトポリマーの収率が低くなる。
上記ラジカル重合性基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、アリル基、ビニルベンジル基、ビニルエーテル基、ビニルアルキルシリル基、ビニルケトン基及びイソプロペニル基等が挙げられる。
【0047】
カルボニル基を含有する高分子水性分散体は、スルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体、リン酸エステル基を有する不飽和単量体、及びそれらの混合物よりなる群から選ばれるアニオン型エチレン性不飽和単量体の存在下で、共重合することによって得られる。
【0048】
スルホン酸基又はスルホネート基を有するエチレン性不飽和単量体は、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基、炭素数6又は10のアリール基及びコハク酸基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物であるか、又はスルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物である。
【0049】
硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体は、ラジカル重合性の二重結合を有し、かつ硫酸エステル基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換された、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜4のアルキルエーテル基、炭素数2〜4のポリアルキルエーテル基及び炭素数6又は10のアリール基からなる群より選ばれる置換基を有する化合物である。
【0050】
スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基により一部が置換されたコハク酸基を有する化合物の具体例として、アリルスルホコハク酸塩、エレミノールJS−2(商品名:三洋化成(株)製)、ラテムルS−120、S−180A、S−180(商品名:花王(株)製)等があげられ、硫酸エステル基を有するエチレン性不飽和単量体としては、アクアロンHS−10(商品名:第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−1025N(商品名:旭電化工業(株)製)等があげられ、その他、スルホネート基により一部が置換されたアリール基を有する化合物の具体例として、p−スチレンスルホン酸のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩、が挙げられる。
【0051】
スルホン酸基のアンモニウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩である基が結合しているビニル基を有するビニルスルホネート化合物として例えば、2−スルホエチルアクリレート等のアルキルスルホン酸(メタ)アクリレートやメチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、アリルスルホン酸等のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩、リン酸エステル基を有する不飽和単量体としては、アデカリアソープSDX−730、SDX−731、SDX−334(商品名:旭電化工業(株)製)等のアンモニウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩が挙げられる。
【0052】
本発明のカルボニル基を含有する高分子水性分散体には、上記アニオン型エチレン性不飽和単量体と通常の界面活性剤を併用する場合も含まれる。例えば、脂肪酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩等のアニオン性界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等の非反応性ノニオン型界面活性剤、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(商品名:アデカリアソープNE−20、NE−30、NE−40等、旭電化工業(株)製)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(商品名:アクアロンRN−10、RN−20、RN−30、RN−50等、第一製薬工業(株)製)等の反応性ノニオン型界面剤といわれるエチレン性不飽和単量体と共重合なノニオン型界面活性剤等が用いられる。
【0053】
本発明において、カルボニル基を含有する高分子水性分散体は、熱又は還元性物質などによってラジカル開裂したエチレン性不飽和単量体の付加重合を起こすことにより得られるもので、開始剤としては、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等が使用される。その例としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、その配合量としてはエチレン性不飽和単量体に対して通常0.1〜1重量%配合される。
【0054】
重合は、常圧下、65〜90℃の重合温度で実施するのが好ましいが、モノマーの重合温度における蒸気圧等の特性を考慮して、高圧下でも実施することができる。
【0055】
なお、重合速度の促進、及び70℃以下での低温の重合を望まれるときには、例えば重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸塩、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合触媒と組み合わせて用いると効果的である。
【0056】
さらに分子量を調節するために、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等の連鎖移動剤を任意に添加することが可能である。
【0057】
重合中のpHは、単量体の種類、加水分解基の残留、又は加水分解基の加水分解反応の促進と縮合反応の促進等の目的に応じて、pH1〜11の範囲で行うのが好ましい。
【0058】
カルボニル基を含有する高分子水性分散体を長期に安定に保つためには、pH5〜10の範囲に調整することが好ましく、必要に応じてアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジメチルアミノエタノール等のアミン類、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸等の酸類を添加したものが挙げられる。
【0059】
本発明の第3に示す1分子中に2個以上のヒドラジン基及び/又はセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体は、セミカルバジド基の耐加水分解性が、ヒドラジン基より良好であることから、ヒドラジン誘導体はセミカルバジド基を有するポリセミカルバジド化合物であることが好ましい。
【0060】
本発明において、ヒドラジン誘導体中のヒドラジン基及び/又はセミカルバジド基と、該水性分散体中のカルボニル基Bとの比率は、モル比で0.01〜10の範囲であり、好ましくは0.05〜5の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜2範囲である。
【0061】
本発明において、ヒドラジン誘導体としては、ポリヒドラジド化合物、ポリセミカルバジド化合物、又は式(4)で表される炭酸ポリヒドラジド類等が挙げられる。
【0062】
【化4】

(式中、xは0〜20の整数を意味する。)
【0063】
ポリヒドラジド化合物の具体例としては、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、ヘキサデカンジオヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、4,4’−ビスベンゼンジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド等のジカルボン酸ジヒドラジド類、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、トリメリット酸トリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、1,2,4−ブタントリカルボン酸トリヒドラジド等のトリカルボン酸トリヒドラジド類、ピロメリット酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド等のテトラカルボン酸テトラヒドラジド類及び式(5)で表される数平均分子量が500〜500000の酸ヒドラジド系ポリマー等やそれらの併用が挙げられる。
【0064】
【化5】

(式中、Xは水素原子又はカルボキシル基であり、Yは水素原子又はメチル基であり、Aはアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸から選ばれる単量体の重合した単位であり、Bはアクリルアミド、メタアクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸と共重合可能な単量体の重合した単位である。また、l、m及びnは下記の各式を満足する各構成成分のモル分率を示す。
2モル%≦l≦100モル%
0モル%≦m+n≦98モル%
l+m+n=100モル%
また、上記酸ヒドラジド系ポリマーは、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でもよい。)
【0065】
ポリセミカルバジド化合物の具体例としては、式(6)で表されるセミカルバジド誘導体、式(7)で表されるビスセミカルバジド類等が挙げられる。
【0066】
セミカルバジド誘導体組成物が、下記式(6)で表されるセミカルバジド誘導体であることは好ましい。
【0067】
【化6】

(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアルキレン基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートの3量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはRは炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有さないトリイソシアネート残基を表わす。Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキルレン基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリーレン基を表わす。Rは、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表わす。nは0又は1を表す。l及びmは各々0又は正の整数であり、ただし2≦(l+m)≦20であり、好ましくは3≦(l+m)≦20である。)
【0068】
【化7】

(式中、Rは、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20の2価の脂肪族残基、炭素数6〜25の2価の脂環族残基、置換基を有しても有さなくてもよい炭素数6〜25の2価の芳香族残基、及び置換基を有しても有さなくてもよい炭素数6〜25の2価の芳香脂環族残基を表す。Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表す。)
【0069】
上記ポリセミカルバジド化合物の中で、式(6)で表されるセミカルバジド誘導体は、塗料用水性分散体の硬化剤として用いた場合、多官能の上、後で述べるカルボニル基を含有する高分子水性分散体に対する相溶性が良好なため、架橋能力が高く、強靭でかつ耐水性に優れた皮膜を得ることができるので非常に好ましい。
【0070】
組成物の平均セミカルバジド残基数は2.5個以上であることであり、好ましくは2.5以上20以下、より好ましくは3以上20以下である。
【0071】
本発明において、1分子あたりのセミカルバジド残基数とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるスチレン換算のセミカルバジド組成物数平均分子量をM、ポリセミカルバジド化合物1グラム中に含まれるセミカルバジド基のモル数をSとしたとき、M×Sで表される数で定義される。
【0072】
このポリセミカルバジド化合物は、例えば、ポリイソシアネート化合物とヒドラジン化合物とを反応させることによって得られ、具体的には1分子中に−NCO基を平均2個以上、好ましくは平均2.5以上20以下、より好ましくは3以上20以下有するポリイソシアネート化合物とヒドラジン化合物とを反応させることによって得ることができる。
【0073】
上記式(6)で表されるポリセミカルバジド化合物の製造方法の一例について説明する。
【0074】
式(6)中、l+m=2であるポリセミカルバジド化合物は、1分子中に−NCO基を2個有するジイソシアネート化合物とヒドラジン化合物とを反応させることによって得られる。
【0075】
また、より耐汚染性に優れた組成物を得るためには、前記式(6)で表されるセミカルバジド誘導体が、1分子中に−NCO基を3個以上持つポリイソシアネート化合物とヒドラジン化合物とを反応させることによって得られるものであることが望ましい。
【0076】
1分子中に−NCO基を3〜20個有するポリイソシアネート化合物、及びそれから誘導されるポリセミカルバジド化合物は、例えばWO96/01252号パンフレットに記載の方法で得ることができる。
【0077】
ここで、ポリイソシアネート1分子中の−NCO基数が20を超えない範囲がが好ましいのは、ポリセミカルバジド化合物(6)の粘度が高くなりすぎにくく、取り扱える範囲であるからである。
【0078】
1分子中に−NCO基を3〜20個有するポリイソシアネート化合物は、ジイソシアネート化合物をオリゴマー化して得られる。
【0079】
例えば、ジイソシアネート類をビュレット結合、尿素結合、イソシアヌレート結合、ウレタン結合、アロファネート結合、ウレトジオン結合等によりオリゴマー化したポリイソシアネート化合物、更には1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン及びこれらの併用が挙げられる。
【0080】
具体的には、樹脂との相溶性の点から、基本骨格としてイソシアヌレート構造又はビュレット構造を有するポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0081】
本発明においては、ポリセミカルバジド化合物又はその原料であるポリイソシアネート化合物が、ヒドラジン化合物の鎖延長により高分子化することを防ぐ目的から、ヒドラジン化合物を下式(8)で表されるモノアルデヒド又はモノケトン等と反応させ、ヒドラゾン基として封鎖して用いることもできる。
C=O (8)
(式中、R、Rは各々独立して水素原子、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシル基で置換されている炭素数6〜10のアリール基を表し、R、Rは場合によっては共同して環状構造を形成してもよい。)
【0082】
この場合、生成するポリセミカルバジド化合物はセミカルバジド基がセミカルバゾン基として封鎖されたものとなり、上記式(6)のポリセミカルバジド化合物の末端封鎖体である。
【0083】
ポリセミカルバジド化合物から封鎖剤として用いたモノアルデヒド又はモノケトンの脱離は、本発明のカルボニル基を含有する高分子分散体へ混合使用する前に、又は本発明の塗料用水性分散体の塗装後に加水分解して留去するのが好ましい。
【0084】
従って、留去させやすい上記封鎖剤としては30〜200℃の沸点を有するモノケトン、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等が好ましい。
【0085】
ポリセミカルバジド化合物は高分子水性分散体へ溶解又は分散して使用することが好ましい。特に水性媒体への分散性又は溶解性、塗料用水性分散体への分散性又は溶解性を制御する目的で、塗料用水性分散体へ分散を必要する場合には、水に対し不溶又は難溶性のポリセミカルバジド化合物を、水性媒体又は塗料用水性分散体へ溶解して使用する場合には、水溶性ポリセミカルバジド化合物を使用する。特に下記式(9)で表される親水性基含有化合物から選ばれる少なくとも1つを含有するポリセミカルバジド化合物の使用、あるいは他のポリセミカルバジド化合物との併用、下記記載のポリセミカルバジド化合物とケトン酸及び/又はその塩あるいはセミカルバジド誘導体との併用、又はセミカルバジド誘導体と界面活性剤との併用することが好ましい。
【0086】
水性樹脂と混合しやすいように、水性媒体中へ分散した状態もしくは水性媒体中へ溶解した状態で存在するよう、これらポリセミカルバジド化合物について、下記に詳述する。
【0087】
本発明において、式(6)で表されるポリセミカルバジド化合物からなるポリセミカルバジド化合物の水性媒体中への分散安定性や溶解性を補助する目的で、下記式(9)で表される親水性基含有化合物から選ばれる少なくとも1つとを混合して使用することができる。
【0088】
【化8】

(式中、R11は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数1〜6のアルキレン基で置換されている炭素数5〜20のシクロアルキレンジイソシアネート、置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜20のアリーレンジイソシアネート、及び置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数8〜20のアラルキレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも一種のジイソシアネートの3量体〜20量体オリゴマーに由来する、末端イソシアネート基を有さないポリイソシアネート残基、もしくはR11は炭素数1〜8のイソシアナトアルキル基で置換されている炭素数2〜20のアルキレンジイソシアネートに由来する、末端イソシアネート基を有さないトリイソシアネート残基を表わす。R12は、直鎖状又は分岐状の炭素数2〜20のアルキレン基、炭素数5〜20のシクロアルキルレン基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリーレン基を表す。R13は、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表わす。Yは、非イオン系親水性基、イオン系親水性基及びイオン系親水性基に転化しうる基よりなる群から選ばれる少なくとも1つの有機基を表す。nは0又は1を表す。p及びqは、各々0又は正の整数であり、rは正の整数であり、3≦(p+q+r)≦20である)
【0089】
上記式(9)で表される親水性基含有化合物のセミカルバジド基がセミカルバゾン基として封鎖された化合物は、式(9)における末端基HNR13N−の少なくとも1つが式RC=NRN−で表される封鎖末端基を有している(式中、R、Rは各々独立して水素原子、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数5〜20のシクロアルキル基、もしくは置換されていないか或いは炭素数1〜18のアルキル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている炭素数6〜10のアリール基をあらわし、RとRは場合によっては共同して環状構造を形成していてもよい。)。
【0090】
この化合物は親水性基含有化合物の末端封鎖体として用いることもできる。
【0091】
上記式(6)で表されるポリセミカルバジド化合物から選ばれる少なくとも1つと、上記式(9)で表される親水性基含有化合物から選ばれる少なくとも1つとを含有するポリセミカルバジド化合物を塗料用水性分散体として有利に用いることができる。
【0092】
そして、式(6)で表されるポリセミカルバジド化合物から選ばれる少なくとも1つと、式(9)で表される親水性基含有化合物から選ばれる少なくとも1つとを含有する組成物において、それらの重量比が99/1〜10/90の範囲内であることが望ましい。
【0093】
これにより、水性媒体又は水性分散体に対して溶解性に優れるポリセミカルバジド化合物が得られる。
【0094】
本発明の式(6)で表されるポリセミカルバジド化合物から選ばれる少なくとも1つと、式(9)で表される親水性基含有化合物から選ばれる少なくとも1つとを含有する組成物は、例えば、前記のWO96/01252号パンフレットに記載の方法で得ることができる。
【0095】
本発明において、ヒドラジン誘導体として、ポリセミカルバジド化合物と、ケトン酸及び/又はその塩との混合物を使用することも可能である。
【0096】
これは塗料用水性分散体への混合を可能とし、耐汚染性に優れた組成物を得ることができるからである。
【0097】
この場合、ポリセミカルバジド化合物が前記式(6)で表されるポリセミカルバジド化合物であれば好ましく、またポリセミカルバジド化合物が難水溶性のポリセミカルバジド化合物であれば、さらに好ましい。
【0098】
ここで難水溶性とは、25℃における水100gに対する溶解度が5g以下であることとする。
【0099】
この本発明のポリセミカルバジド化合物は、樹脂と混合しやすいように、水性媒体中への分散及び水性媒体中への溶解からなる群から選ばれる少なくとも一つの状態であることが好ましい。
【0100】
本発明に係わるポリセミカルバジド化合物を水に分散又は溶解させる際には、場合によっては上記した式(6)で表される親水性基含有化合物以外の、他の界面活性剤を加えてもよい。
【0101】
このような界面活性剤の例としては、高級脂肪酸、酸性脂肪アルコール、アルキルスルホン酸塩、アルキルこはく酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩、スルホこはく酸アルキルエステルの塩、アルケニルこはく酸塩等のアニオン性界面活性剤や、エチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコール又はフェノール類、リン酸類との公知の反応生成物に代表されるノニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、エチレンオキサイドとリン酸類との公知の反応生成物等のノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩等を含有するカチオン性界面活性剤、(部分鹸化)ポリビニルアルコール等の高分子分散安定剤等やそれらの併用が挙げられる。
【0102】
特に、式(9)で表される親水性基含有化合物又はアルケニルこはく酸塩が、式(6)のポリセミカルバジド化合物との親和性が高いので好ましい。
【0103】
本発明において、式(6)のポリセミカルバジド化合物へ親水性を付与するため、ケトカルボン酸類が挙げられ、具体的には、モノケトンカルボン酸としては下記一般式(10)、モノケトンジカルボン酸としては一般式(11)で示される。
【0104】
【化9】

(Rは、水素原子、フェニル基、又は置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30のアルキル基を表す。Rは、置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。
pは0又は1を表す。)
【0105】
具体的には例えばピルビン酸、レブリン酸、アセト酢酸、トリメチルピルビン酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイルギ酸、フェニルピルビン酸、ケトカプリン酸、ケトウンデカン酸、ケトステアリン酸、ケトヘンエイコセン酸、ベンゾイル酢酸、ベンゾイルプロピオン酸、ケトグリコン酸等が挙げられる。
モノケトンジカルボン酸としては下記一般式(11)で示される。
【0106】
【化10】

(R、R10は、各々独立して、置換されていないか或いはヒドロキシル基又は炭素数1〜8のアルコキシ基で置換されている直鎖状又は分岐状の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。
q、rは、各々0又は1を表す。)
【0107】
具体的に例えば、ケトマロン酸、アセトンジカルボン酸、2−ケトグルタル酸、アセトンジ酢酸、アセトンジプロピオン酸等が挙げられる。
【0108】
ケトン酸の塩は、上記ケトン酸を塩基で中和することにより得ることができる。
【0109】
中和に用いる塩基としては、例えばKOH、NaOH、LiOH等のアルカリ金属の水酸化物、アミン類等や、これらの併用が挙げられる。
【0110】
上記アミン類の具体例としては、アンモニア、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン等が挙げられる。
【0111】
ポリセミカルバジド化合物と、一般式(10)及び/又は一般式(11)との混合は、任意の割合で行うことができるが、ポリセミカルバジド化合物中のセミカルバジド基に対する一般式(10)又は一般式(11)中のケト基の比が、(ケト基)/(セミカルバジド基)モル比で0.001〜10の範囲であることが好ましい。
【0112】
またポリセミカルバジド化合物と、一般式(10)及び/又は一般式(11)との混合は、任意の温度範囲において、無溶媒又は溶媒中で行うことができる。
【0113】
この時の上記溶媒の具体例としては、水、t−ブタノール、イソプロパノール、2−ブトキシエタール等のアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、n−ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒等やそれらの併用が挙げられる。
【0114】
ポリセミカルバジド化合物の調製では界面活性剤を使用することができる。使用できる界面活性剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸のナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩、トリポリリン酸のナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩、ポリアクリル酸等のカルボン酸基を持つポリマーのナトリウム塩、カリウム塩、又はアンモニウム塩が挙げられる。その他の界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、樹脂酸、酸性脂肪アルコール、硫酸エステル、高級アルキルスルホン酸、スルホン酸アルキルアリル、スルホン化ひまし油、スルホこはく酸エステル、アルケニルコハク酸等の塩に代表されるアニオン性界面活性剤、あるいはエチレンオキサイドと長鎖脂肪アルコール又はフェノール類、リン酸類との公知の反応生成物に代表されるノニオン性界面活性剤、4級アンモニウム塩等を含有するカチオン性界面活性剤、(部分鹸化)ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン等の高分子分散安定剤、その他ポリエーテル系増粘剤等の増粘剤、可塑剤、成膜助剤やそれらの併用が挙げられる。
【0115】
本発明の高分子水性分散体には通常塗料等に添加配合される成分、例えば、粘性調整剤、pH調整剤、消泡剤、顔料、充填剤、分散剤、染料、防腐剤、界面活性剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、難燃剤、有機溶剤、湿潤剤、界面活性剤、増粘剤、可塑剤、成膜助剤、防錆剤等を配合することは任意である。
【0116】
これらは、例えばアトライター、サンドミルなどの練肉機を使用して分散を行い、所定の粘度になるよう調整する。
【0117】
これらの添加配合物は、本発明の効果を損ねない範囲で含有することができる。
【0118】
例えば塗膜の高耐候性化を付与する観点から紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を含有することができる。これにより、さらなる高耐久性化が可能となる。
【0119】
紫外線吸収剤を例示すると、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のもの、光安定剤として、分子内にラジカル重合性の二重結合を有するラジカル重合性のものが挙げられる。
【0120】
具体的には、紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0121】
ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤としては、具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ステアリルオキシベンゾフェノンなどがある。
【0122】
ラジカル重合性ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤として具体的には、2−ヒドロキシ−4−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−ジエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−トリエトキシ)ベンゾフェノンなどがある。
【0123】
ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN1130)、イソオクチル−3−〔3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN384)、2−(3−ドデシル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN571)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN900)などがある。
【0124】
ラジカル重合性ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤として具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学(株)製、製品名:RUVA−93)、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチル−3−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリリルオキシプロピル−3−tert−ブチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、3−メタクリロイル−2−ヒドロキシプロピル−3−〔3’−(2’’−ベンゾトリアゾリル)−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチル〕フェニルプロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:CGL−104)などがある。
【0125】
トリアジン系紫外線吸収剤として具体的には、TINUVIN400(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。
【0126】
さらに、無機系の紫外線吸収剤として、酸化セリウム結晶微粒子又は該酸化セリウム結晶微粒子を他無機粒子へコーティングした材料が挙げられる。
【0127】
具体的な商品名を例示すると、ニードラールW−15、U−15、W−100、U−100(商品名:多木化学(株)製)、セリガードS−3018−02、T−3018−02、M−3018−03(商品名:日本無機化学工業(株)製)等がある。
【0128】
また光安定剤としては、ヒンダードアミン系から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0129】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、塩基性が低いものが好ましく、具体的には塩基定数(pKb)が8以上のものが好ましい。
【0130】
具体的には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−セバケートの混合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN292)、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、TINUVIN123(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。
【0131】
ラジカル重合性ヒンダードアミン系光安定剤として具体的には、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、2,2,6,6,−テトラメチル−4−イミノピペリジルメタクリレート、4−シアノ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、4−シアノ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレートなどがある。
【0132】
紫外線吸収剤及び/又は光安定剤は、高分子水性分散体の固形分重量に対して0.1重量%〜5重量%用いることが好ましい。
【0133】
紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を高分子水性分散体に含有させる方法としては、特開平3−37288号公報又は特開平4−298573号公報に記載の水性分散体に紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を後添加する方法、特開昭64−20201号公報、特開平7−292009号公報に記載の紫外線吸収剤を、高分子水性分散体の重合中に添加する方法、特開平3−128978号公報に記載のラジカル重合性の二重結合を有する光安定剤を、高分子水性分散体の重合中に用いる方法、特開平5−39327号公報に記載のラジカル重合性の二重結合を有する紫外線吸収剤を高分子水性分散体の重合中に用いる方法、さらに特開平7−173404号公報に記載の、重合中のシリル基を安定化させるために重合を中性付近のpHで実施するシリコーン変性高分子水性分散体に紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を共重合もしくは後添加する方法等が例示され、いずれの方法でもよい。
【0134】
しかし、紫外線吸収剤や光安定剤は、成膜助剤などと混合して後添加した場合、水性媒体中での分散性が低くなりやすく、得られた塗膜の粒子界面に紫外線吸収剤や光安定剤が集中して存在しやすいため、降雨などにより溶出しやすい場合がある。
【0135】
そこで長期の耐久性を向上させるためには、高分子水性分散体と、紫外線吸収剤及び/又は光安定剤とを複合化させることが好ましい。
【0136】
具体的には、高分子水性分散体の乳化重合又はミニエマルション重合を含む懸濁重合時に、エチレン性不飽和単量体と紫外線吸収剤及び/又は光安定剤を共存させ、水性媒体中において乳化重合又はミニエマルション重合を含む懸濁重合することが好ましい。
【0137】
特にシラン変性されてなる高分子水性分散体と、紫外線吸収能が高いベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤と組み合わせると、これらによる相乗効果で、該高分子水性分散体から得られる皮膜は卓越した耐候性を示す。
【0138】
本発明の高分子水性分散体には、必要により通常塗料等に添加配合される成分として、例えば顔料がそれぞれの目的に応じて選択、組み合わせて配合することができ、具体的には、体質顔料として珪砂、亜鉛華、酸化チタン、クレー、炭酸カルシウム、アルミナホワイト、水酸化アルミニウム、着色顔料として黒色成分はファーネス法のカーボンブラック、チャンネル法のカーボンブラック、黄色成分の顔料としてはファストイエロー、ジスアゾイエロー等、ダイダイ系成分の顔料としてはジニトロアニリンオレンジ、ジスアゾオレンジ、赤色成分の顔料としてはトルイジンレッド、ピラロゾンレッド、バリウムレッド、キナクリドンマゼンタ等、紫色成分の顔料としてはメチルバイオレット、キナクリドンレッド、青系成分の顔料としてはフタロシアニンブルー、アルカリブルートナー、緑色成分の顔料としてはブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、その他アルミニウム粉、ブロンズ粉等が挙げられる。
【0139】
高分子水性分散体中の顔料の使用割合は70重量%以下であることが好ましい。
【0140】
成膜助剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール2−エチルヘキシルグリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール2−エチルヘキシルグリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、その他エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、CS−12(チッソ(株)製)、こはく酸ジメチル、こはく酸ジイソプロピル、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジイソプロピル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジイソプロピルが挙げられる。
【0141】
粘性調整剤として例えば、ポリアクリル酸塩、アクリル酸誘導体樹脂、(部分鹸化)ポリビニールアルコール、ポリエーテル系増粘剤、メチルセルロースあるいはヒドロキシセルロース等のセルロース系増粘剤、顔料分散剤としてはポリアクリル酸塩、アクリル酸誘導体樹脂、ポリアクリルアミド、マレイン酸誘導体樹脂、フマール酸誘導体樹脂、イタコン酸誘導体樹脂を使用することも可能である。
【0142】
界面活性剤としては、上記のポリセミカルバジド化合物の調製に利用したものと同様の界面活性剤を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0143】
実施例中の部は重量部を意味する。
【0144】
実施例中に用いられる各種物性の測定方法は、下記の通りである。
【0145】
(1) 限外濾過
アドバンテック(株)ウルトラフィルターユニットを使用した。
【0146】
(2) 数平均分子量
ゲルパーミィテーションクロマトグラフィーを用いて、ポリスチレン標品検量線より求めた。
(使用機器)・液クロ装置:東ソー(株)製 HLC−8020
・カラム:東ソー(株)製
TSKgel G−5000 HXL
TSKgel G−4000 HXL
TSKgel G−2000 HXL
・データ処理装置:東ソー(株)製 SC8010
・キャリヤ:テトラヒドロフラン
【0147】
(3) 粘度の測定
B型粘度計を用い、ローターNo.2 12rpmの値を用いた。
(使用機器)東京計器(株)製 B型粘度計
【0148】
(4) カルボニル基を含有する高分子水性分散体のカルボニル基の水媒体中への分配率の測定
カルボニル基を含有する高分子水性分散体を2.00g、水3.00g 約1時間攪拌し、続いて分画分子量50000のフィルターにて限外濾過を行い、得られた濾液の内、1.20gを他容器に取り、指示薬として、フェノールフタレイン水溶液を少量添加し、0.02規定水酸化カリウム水溶液により、水媒体中の酸濃度(A)(単位はmmol/g)を定量する。
【0149】
次に、同カルボニル基を含有する高分子水性分散体を2.00g、水3.00g 約1時間攪拌し、続いて分画分子量50000のフィルターにて限外濾過を行い、得られた濾液の内、1.20gを他容器に取り、2%塩酸ヒドロキシルアンモニウム水溶液0.50gを添加し、30℃の温浴にて約8時間攪拌反応させる。
【0150】
その後、指示薬として、フェノールフタレイン水溶液を少量添加し、0.02規定水酸化カリウム水溶液により、全塩酸量(B)(単位はmmol/g)を定量する。
【0151】
仕込みのカルボニル濃度(C)(単位はmmol/g)を用い以下の式によりカルボニル基の水媒体中への分配率(単位は%)を求める。
(B−A)/C×100
【0152】
(5) 平均セミカルバジド残基数の測定方法
サンプル約0.2g(Wグラム)をジメチルアセトアミド10ccに溶解する。
【0153】
これに、シクロヘキシルイソシアネート2.5gを50ccのジメチルアセトアミドに溶解した液を5cc加え、室温で1時間放置する。その後、ジノルマルブチルアミン3.2gをトルエン100ccに溶解した液10cc加え、さらに30分放置する。その後、イソプロパノール70ccを加え、指示薬としてブロモクレゾールグリーンを少量加え、0.1規定の塩酸(ファクターをF)で滴定する(滴定量A)。
【0154】
同様の操作をサンプルを加えないで行う(滴定値B)。
【0155】
以下の式により平均セミカルバジド残基数(単位はmeq/g)を求めた。
(B−A)×0.1×F/W
【0156】
(参考例1)
<カルボニル基を含有する高分子水性分散体(1)の製造>還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水468重量部、界面活性剤(商品名:アデカリアソープSE−1025N、旭電化工業(株)製)の25%水溶液7.2重量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液13.5重量部を投入し、5分間攪拌した。
【0157】
次にメタクリル酸ブチル113重量部、アクリル酸ブチル124.4重量部、ダイアセトンアクリルアミド7.5重量部、アクリル酸3.8重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル2.5重量部、イオン交換水80重量部、アデカリアソープSE−1025N25%水溶液を5.76重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(商品名:エマルゲン950、花王(株)製)の25%水溶液10.8重量部、過硫酸アンモニウム2%水溶液9重量部の混合液を反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。
【0158】
流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして0.75時間保った。
【0159】
次にメタクリル酸メチル326.9重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル30重量部、アクリル酸ブチル98重量部、ダイアセトンアクリルアミド117.2重量部、アクリル酸14.7重量部、イオン交換水360重量部、アデカリアソープSE−1025N25%水溶液を23.0重量部、過硫酸アンモニウム2%水溶液36.0重量部の混合液を反応容器中へ滴下槽より2.5時間かけて流入させた。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして1.5時間保った。
【0160】
続いてその後室温まで冷却し、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8に調整してから100メッシュの金網で濾過し、固形分43.5%、平均粒径1080Å、カルボニル基の水媒体中への分配率が6.1%の高分子水性分散体(1)を得た。
【0161】
(参考例2)
<カルボニル基を含有する高分子水性分散体(2)の製造>還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水468重量部、界面活性剤(商品名:アデカリアソープSE−1025N、旭電化工業(株)製)の25%水溶液7.2重量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液13.5重量部を投入し、5分間攪拌した。
【0162】
次にメタクリル酸ブチル109.3重量部、アクリル酸ブチル125.6重量部、ダイアセトンアクリルアミド7.5重量部、アクリル酸3.77重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル5重量部、イオン交換水80重量部、アデカリアソープSE−1025N25%水溶液を5.76重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(商品名:エマルゲン950、花王(株)製)の25%水溶液10.8重量部、過硫酸アンモニウム2%水溶液9重量部の混合液を反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。
【0163】
流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして0.75時間保った。
【0164】
次にメタクリル酸メチル304.2重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル58.6重量部、アクリル酸ブチル91.5重量部、ダイアセトンアクリルアミド117.2重量部、アクリル酸14.7重量部、イオン交換水360重量部、アデカリアソープSE−1025N25%水溶液を23.0重量部、過硫酸アンモニウム2%水溶液36.0重量部の混合液を反応容器中へ滴下槽より2.5時間かけて流入させた。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして1.5時間保った。
【0165】
続いてその後室温まで冷却し、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8に調整してから100メッシュの金網で濾過し、固形分43.5%、平均粒径1072Å、カルボニル基の水媒体中への分配率が9.3%の高分子水性分散体(2)を得た。
【0166】
(参考例3)
<カルボニル基を含有する高分子水性分散体(3)の製造>還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水468重量部、界面活性剤(商品名:アデカリアソープSE−1025N、旭電化工業(株)製)の25%水溶液7.2重量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液13.5重量部を投入し、5分間攪拌した。
【0167】
次にメタクリル酸ブチル100.5重量部、アクリル酸ブチル135.6重量部、ダイアセトンアクリルアミド7.5重量部、アクリル酸5重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル2.5重量部、イオン交換水80重量部、アデカリアソープSE−1025N25%水溶液を5.76重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(商品名:エマルゲン950、花王(株)製)の25%水溶液10.8重量部、過硫酸アンモニウム2%水溶液9重量部の混合液を反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。
【0168】
流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして0.75時間保った。
【0169】
次にメタクリル酸メチル318.1重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル30重量部、アクリル酸ブチル98重量部、ダイアセトンアクリルアミド117.2重量部、アクリル酸23.5重量部、イオン交換水360重量部、アデカリアソープSE−1025N25%水溶液を23.0重量部、過硫酸アンモニウム2%水溶液36.0重量部の混合液を反応容器中へ滴下槽より2.5時間かけて流入させた。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして1.5時間保った。
【0170】
続いてその後室温まで冷却し、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8に調整してから100メッシュの金網で濾過し、固形分43.5%、平均粒径1080Å、カルボニル基の水媒体中への分配率が19.8%の高分子水性分散体(3)を得た。
【0171】
(参考例4)
<カルボニル基を含有する高分子水性分散体(4)の製造>還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水468重量部、界面活性剤(商品名:アデカリアソープSE−1025N、旭電化工業(株)製)の25%水溶液7.2重量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液13.5重量部を投入し、5分間攪拌した。
【0172】
次にメタクリル酸ブチル110.5重量部、アクリル酸ブチル125.6重量部、ダイアセトンアクリルアミド7.5重量部、アクリル酸5重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル2.5重量部、イオン交換水80重量部、アデカリアソープSE−1025N25%水溶液を5.76重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(商品名:エマルゲン950、花王(株)製)の25%水溶液10.8重量部、過硫酸アンモニウム2%水溶液9重量部の混合液を反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。
【0173】
流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして0.75時間保った。
【0174】
次にメタクリル酸メチル318.1重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル30重量部、アクリル酸ブチル98重量部、ダイアセトンアクリルアミド117.2重量部、アクリル酸23.5重量部、イオン交換水360重量部、アデカリアソープSE−1025N25%水溶液を23.0重量部、過硫酸アンモニウム2%水溶液36.0重量部の混合液を反応容器中へ滴下槽より2.5時間かけて流入させた。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして1.5時間保った。
【0175】
続いてその後室温まで冷却し、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8に調整してから100メッシュの金網で濾過し、固形分43.5%、平均粒径1080Å、カルボニル基の水媒体中への分配率が24.6%の高分子水性分散体(4)を得た。
【0176】
(参考例5)
<カルボニル基を含有する高分子水性分散体(5)の製造>還流冷却器、滴下槽、温度計及び撹拌装置を有する反応器に、イオン交換水468重量部、界面活性剤(商品名:アデカリアソープSE−1025N、旭電化工業(株)製)の25%水溶液7.2重量部を投入し、反応容器中の温度を80℃に上げてから、過硫酸アンモニウムの2%水溶液13.5重量部を投入し、5分間攪拌した。
【0177】
次にメタクリル酸ブチル108重量部、アクリル酸ブチル125.6重量部、ダイアセトンアクリルアミド7.5重量部、アクリル酸5重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル5重量部、イオン交換水80重量部、アデカリアソープSE−1025N25%水溶液を5.76重量部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(商品名:エマルゲン950、花王(株)製)の25%水溶液10.8重量部、過硫酸アンモニウム2%水溶液9重量部の混合液を反応容器中へ滴下槽より1時間かけて流入させた。流入中は反応容器中の温度を80℃に保った。
【0178】
流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして0.75時間保った。
【0179】
次にメタクリル酸メチル295.4重量部、メタクリル酸ヒドロキシエチル58.6重量部、アクリル酸ブチル91.5重量部、ダイアセトンアクリルアミド117.2重量部、アクリル酸23.5重量部、イオン交換水360重量部、アデカリアソープSE−1025N25%水溶液を23.0重量部、過硫酸アンモニウム2%水溶液36.0重量部の混合液を反応容器中へ滴下槽より2.5時間かけて流入させた。流入終了後、反応容器中の温度を80℃にして1.5時間保った。
【0180】
続いてその後室温まで冷却し、25%アンモニア水溶液を添加してpHを8に調整してから100メッシュの金網で濾過し、固形分43.5%、平均粒径1082Å、カルボニル基の水媒体中への分配率が28.9%の高分子水性分散体(5)を得た。
【0181】
参考例1〜5の高分子水性分散体のカルボニル基の水媒体中への分配率を表1に示した。
【0182】
【表1】

【0183】
(参考例6)
<ポリセミカルバジド化合物Aの合成例>ヘキサメチレンジイソシアネート168部、ビュレット化剤としての水1.5部を、エチレングリコールメチルエーテルアセテートとリン酸トリメチルの1:1(重量比)の混合溶媒130部に溶解し、反応温度160℃にて1時間反応させた。
【0184】
得られた反応液を薄膜蒸留缶を用いて、1回目は1.0mmHg/160℃の条件下、2回目は0.1mmHg/200℃の条件下にて2段階の処理により余剰のヘキサメチレンジイソシアネート、及び溶媒を留去回収し、残留物を得た。
【0185】
得られた残留物は、99.9重量%のポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートのビュウレット型ポリイソシアネート)及び0.1重量%の残存ヘキサメチレンジイソシアネートを含んでいた。
【0186】
得られた残留物の粘度は1900(±200)mPa.s/25℃、数平均分子量は約600(±100)であり、平均−NCO官能基数は約3.3、−NCO基含有量は23.3重量%であった。
【0187】
還流冷却器、温度計及び撹拌装置を有する反応器にイソプロピルアルコール1000部にヒドラジン1水和物80部を撹拌しながら約30分かけて室温で添加した後、、上記ポリイソシアネート(NCO基含量23.3重量%)144部をテトラヒドロフラン576部に溶解した溶液を10℃にて約1時間かけて添加し、さらに40℃にて3時間撹拌を続け、1000部の水を添加した。
【0188】
続いて得られた反応液中のイソプロピルアルコール、ヒドラジン、テトラヒドロフラン、水等を加熱減圧下に留去することにより168部のビウレット構造を有するポリセミカルバジド化合物Aを得た。平均セミカルバジド残基数を測定したところ、4.6meq/gであった。
【実施例1】
【0189】
参考例1のカルボニル基含有高分子水性分散体(1)100重量部に対し、ポリセミカルバジド化合物Aの50%水溶液12重量部を攪拌混合し、0.1時間後、1時間後、4時間後、10時間後、20時間後、50時間後の粘度をB型粘度計、(ローターNo.2、回転数12rpm)により測定した。その結果を表2に示す。
【実施例2】
【0190】
参考例2のカルボニル基含有高分子水性分散体(2)100重量部に対し、ポリセミカルバジド化合物Aの50%水溶液12重量部を攪拌混合し、0.1時間後、1時間後、4時間後、10時間後、20時間後、50時間後の粘度をB型粘度計、(ローターNo.2、回転数12rpm)により測定した。その結果を表2に示す。
【実施例3】
【0191】
参考例3のカルボニル基含有高分子水性分散体(3)100重量部に対し、ポリセミカルバジド化合物Aの50%水溶液12重量部を攪拌混合し、0.1時間後、1時間後、4時間後、10時間後、20時間後、50時間後の粘度をB型粘度計、(ローターNo.2、回転数12rpm)により測定した。その結果を表2に示す。
【0192】
(比較例1)
参考例4のカルボニル基含有高分子水性分散体(4)100重量部に対し、ポリセミカルバジド化合物Aの50%水溶液12重量部を攪拌混合し、0.1時間後、1時間後、4時間後、10時間後、20時間後、50時間後の粘度をB型粘度計、(ローターNo.2、回転数12rpm)により測定した。その結果を表2に示す。
【0193】
(比較例2)
参考例5のカルボニル基含有高分子水性分散体(5)100重量部に対し、ポリセミカルバジド化合物Aの50%水溶液12重量部を攪拌混合し、0.1時間後、1時間後、4時間後、10時間後、20時間後、50時間後の粘度をB型粘度計、(ローターNo.2、回転数12rpm)により測定した。その結果を表2に示す。
【0194】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボニル基を含有する高分子水性分散体であって、該カルボニル基の水媒体中への分配率が20%未満であることを特徴とする高分子水性分散体。
【請求項2】
親水性単量体由来の重合単位を5wt%以上含む高分子を含む請求項1に記載の高分子水性分散体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の高分子水性分散体と、1分子中に2個以上のヒドラジン基及び/又はセミカルバジド基を有するヒドラジン誘導体とを含む、塗料。

【公開番号】特開2009−256492(P2009−256492A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108353(P2008−108353)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】