説明

架橋性アリールアミン化合物、及びそれをベースにしたポリマーの共役オリゴマー又はポリマー

架橋性アリールアミン化合物;このような架橋性アリールアミン化合物から調製されるオリゴマー及びポリマー;フィルム及びコーティング;並びにこのようなフィルムを含む多層電子素子を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な架橋性アリールアミン化合物及びその調製方法に関する。さらに、本発明は、その架橋誘導体を含めてこのような化合物のオリゴマー及びポリマー;このような化合物、オリゴマー又はポリマーから調製されたフィルム及びコーティング、このようなフィルム及びコーティングの調製方法、並びに1層又は複数層のこのようなポリマーフィルムを含む電子素子、特にエレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,605,373号、第6,362,310号、第6,255,449号、第6,255,447号、第6,169,163号、第5,962,631号及び関連特許は、いくつかの架橋性置換フルオレン化合物、並びにそれからのオリゴマー及びポリマーを開示した。米国特許第5,929,194号では、2つの反応性基を含むいくつかの小分子アミンを架橋することによるポリアリールポリアミンの合成を開示した。関連の開示は、米国特許第5,728,801号にも見られる。
【0003】
Macromolecular Rapid Communication、21巻、583〜589頁(2000年)は、架橋性オキセタン基を含有するアリールアミン含有架橋性正孔輸送材料の合成を開示している。Macromolecular Rapid Communication、20巻、224〜228頁(1999年)は、フィルムとしてスピンコートし架橋することができる架橋性オキセタン基を有するトリアリールアミン小分子の合成を記載している。上記の参考文献は、架橋ポリマーが開示されている範囲において、共役ポリマー主鎖を欠いており、制限された電荷輸送能しか有さない。
【0004】
フォトディスプレイ技術における最近の進歩によって、発光ダイオード(LED)などのエレクトロルミネッセンス素子に使用される化合物及び加工技術の改善がもたらされた。青色発光化合物を含めて、可視光スペクトルの大部分について、高輝度材料が入手可能である。最近、活性層又は発光層と陽極との間に電荷輸送層を組み込むことによって、多層LEDの活性層又は発光層の寿命及び効率が改善されることが見出された。このような層は、正孔注入層及び/又は正孔輸送層とも呼ばれ、その目的は、発光層への正孔注入を改善すること、及び陽極と発光層との間に緩衝層を提供することである。他の応用として、このような正孔輸送層と発光層の間の中間層は、改善された素子効率及び寿命を提供することが示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、多層LEDの種々の層、例えば多層LEDの正孔輸送層及び中間層に使用するための、並びに電界効果トランジスタ(FET)、光電池などのその他の電子素子に使用するための、さらには集積回路又はプリント回路基板に使用するための新規化合物を対象とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、次式のアリールアミン化合物
Z−(Ar−NX)−Ar−(NX−Ar)n’−Z(I)
[式中、
Arはそれぞれ独立して出現するごとに、1つ又は複数の2価の芳香族基を含む基であり、任意に、1つのNX基で隔てられた2つのAr基は、第2の共有結合又は橋かけ基(bridging group)によって結合し、それによって複数の環が縮合した系を形成し、
Xは、不活性置換基又は架橋性基(cross−linkable group)であり、但し、前記化合物での少なくとも1つの出現において、Xは架橋性基であり、
Zはそれぞれ独立して出現するごとに、水素又は脱離基であり、
【0007】
nは1又は2であり、
n’は0、1、又は2である]である。
架橋性基Xは懸垂性であるので、本発明の化合物は、比較的多量の共役不飽和を含むオリゴマー及びポリマーを形成し、それによって改善された電荷輸送特性をもたらすことができる。上記の化合物を含む架橋組成物から得られる、コポリマーを含めて、オリゴマー及びポリマーは、低減されたイオン化ポテンシャル、及び改善された導電性を特徴として有利である。さらに、この化合物は、エレクトロルミネッセンス装置において中間層として使用するのによく適した耐溶媒性架橋フィルムを形成することができる。
【0008】
したがって、第2の態様では、本発明は、次式の1つ又は複数の繰り返し基
Z’−(Ar−NX’)−Ar−(NX’−Ar)n’−Z’(Ia)
[式中、X’は、X、又は架橋性X基、好ましくは架橋すると共役不飽和を形成するような基の付加重合によって形成された2価の架橋残基、
Z’は、Z、共有結合、又は脱離基の置換若しくは反応によって形成された末端基であり、
Ar、X、Z、n及びn’は、式(I)の化合物に関して先に定義したとおりである]を有するオリゴマー、ポリマー又はその架橋誘導体を含む組成物である。
【0009】
第3の態様では、本発明は、式(Ia)の1つ又は複数の基を含む、コポリマーを含むオリゴマー、ポリマー及びその架橋誘導体の調製方法であって、式(I)の1つ又は複数の化合物、或いは1つ又は複数の付加重合性モノマーとのその混合物などこれを含む組成物を、場合によっては任意の他の非干渉化合物の存在下、式(Ia)の1つ又は複数の繰り返し基を有するオリゴマー又はポリマーを形成するのに十分な反応条件下で加熱する工程を含む方法である。
【0010】
第4の態様では、本発明は、本発明の第2の態様のオリゴマー又はポリマー、或いは本発明の第3の態様に従って調製可能なオリゴマー又はポリマーのうちの1つ又は複数を含むフィルムである。
【0011】
第5の態様では、本発明は、少なくとも1層が本発明の第4の態様によるフィルムを含む、1層又は複数層のポリマーフィルムを含むエレクトロルミネッセンス素子である。
【0012】
上記の化合物、オリゴマー及びポリマーは、電子素子において中間層を形成するために使用する場合に特に有効な正孔注入/輸送又は電子阻止特性を有することが見出され、低減されたイオン化ポテンシャル及び改善された導電性を特徴として有利である。さらに、この化合物は、LEDなどの電子素子においてこのような中間層として使用するのによく適した耐溶媒性架橋フィルムを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
米国特許の実務により、本明細書で引用した特許、特許出願又は刊行物についてその全ての内容が、特にモノマー、オリゴマー又はポリマーの構造、合成技術及び当技術分野における一般的な知識の記載が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書において用語「〜を含む」及びその類義語が使用された場合、そのものが本明細書に開示されているいないにかかわらず、さらなる成分、工程または手順の存在を排除しない。疑義を回避するために記すと、用語「〜を含む」を使用して本明細書でクレームされる組成物は全て、これに反する記述がない限り、さらなる添加剤、補助剤又は化合物を含むことができる。一方、本明細書において用語「〜から本質的になる」が使用された場合は、その語に続く列挙の範囲から、実施可能性にとって本質的でないものを除き、他の全ての成分、工程又は手順は排除される。用語「〜からなる」が使用された場合は、具体的に記述又は列挙されていない成分、工程又は手順は全て排除される。用語「又は」は、他に反対の記載がない限り、又は文脈から明らかでない限り、列挙された個々のメンバー及び任意の組み合わせを意味する。
【0014】
本明細書で使用する用語「芳香族」とは、(4δ+2)π電子を含む多原子環状環系を指し、δは、1以上の整数である。本明細書で2つ以上の多原子環状の環を含む環系に関して使用される用語「縮合した」とは、その少なくとも2つの環に関して、隣接する原子の少なくとも一対が2環に含まれていることを意味する。
【0015】
「B段階の(B−Staged)」とは、モノマーの部分重合から得られるオリゴマー混合物又は低分子量ポリマー混合物を指す。未反応モノマーがその混合物に含まれ得る。
【0016】
「共役」は、興味のあるポリマー鎖中の原子に関連した隣接するπ−、p−又はd−軌道電子の完全な又は部分的な重なりを指す。共役は、非局在化した電荷を有する原子を含有する2つの単位間に存在すると推定され、これらの単位はたとえば二重又は三重結合のような共有結合、又は−S−、−O−、−NR−、−PR−、−BR−又は−SiR−基によってそれぞれ結合される。
【0017】
「架橋性」は、不可逆的に硬化又は重合し、それによって再造形又は再形成することができない材料を形成することができる官能基を意味する。架橋を、熱によって、或いはUV、マイクロ波、X線又は電子線照射によって助長することができる。この用語は、架橋が熱的に行われる場合には「熱硬化性」としばしば互換可能に使用される。
【0018】
「ヒドロカルビル」は、炭素と水素の原子だけを含む1価の部分を指す。
【0019】
「ヒドロカルビレン」は、炭素と水素の原子だけを含む2価の部分を指す。
【0020】
「不活性置換基」は、モノマー又はオリゴマーの後続のどの望ましいカップリング又は重合反応をも妨害しないが、本明細書に開示する別の重合性部分を含むことができる置換基を意味する。適切な不活性の非重合性置換基には、水素、C1〜20ヒドロカルビル及びトリ(C1〜20ヒドロカルビル)シリル基が含まれる。
【0021】
「脱離基」は、カップリング条件下で分子から容易に置換又は脱離する置換基を意味する。適切な脱離基の例には、ハロ、シアノ、トリフラート、アジド、−B(OR、及び
【化1】


[式中、Rはそれぞれ独立して出現するごとに、水素又はC1〜10アルキル基であり、
はそれぞれ独立して出現するごとに、C2〜10アルキレン基である]が含まれる。好ましい脱離基はブロモである。
【0022】
架橋性X基の例は、二重結合、三重結合、二重結合をその場形成することができる前駆体、又はヘテロ環付加重合性基を含む部分である。好ましい架橋性X基としては、ベンゾシクロブタニル基;並びにベンゾシクロブタン、アジド、オキシラン、ジ(ヒドロカルビル)アミノ、シアン酸エステル、ヒドロキシ、グリシジルエーテル、C1〜10アルキルアクリレート、C1〜10アルキルメタクリレート、エテニル、エテニルオキシ、ペルフルオロエテニルオキシ、エチニル、マレイミド、ナジイミド、トリ(C1〜4)−アルキルシロキシ、トリ(C1〜4)アルキルシリル及びそれらのハロゲン化誘導体からなる群から選択される1つ又は複数の置換基を含む置換C6〜12アリーレン基がある。最も好ましい架橋性X基は、1−ベンゾ−3,4−シクロブタン及び4−フェニル−1−(ベンゾ−3,4−シクロブタン)である。
【0023】
適切な架橋性X基の具体例には、
【化2】


[式中、
は、水素、ハロゲン、C1〜20ヒドロカルビル、C1〜20ハロヒドロカルビル又はC1〜20ハロカルビルであり、
は、C1〜20ヒドロカルビレン、C1〜20ハロヒドロカルビレン又はC1〜20ハロカルビレンであり、
pは0又は1である]が含まれる。
【0024】
同じ趣旨で、X’は、X又はXの架橋残基である。X官能基の架橋は、2つ以上の異なる化合物、オリゴマー又はポリマー中の2つ以上のX基間の反応、或いはX基と、別に添加された重合性コモノマーとの反応によって前記分子を単一の化学単位に結合させるものであることが当業者によって理解されるであろう。
【0025】
本発明好ましい一実施形態では、X基は、芳香族部分、好ましくは式ArX”の部分(式中、Arは、先に定義したとおりであり、及びX”は、非局在化電子電荷を有するArの原子に共有結合するその架橋形成用原子のうちの少なくとも1つを有する架橋性基である)を含む。すなわち、X”基は、Arを含む芳香族基に直接結合している。この実施形態では特に適切なX”基には、1−エテニル又はベンゾ−3,4−シクロブタン−1−イル基、及びその不活性置換誘導体が含まれる。さらに別の好ましい実施形態では、X”基は自己架橋性であり、これは前記X”基が関与する架橋を開始するために酸、塩基又は過酸化物化合物などの開始剤が必要でないことを意味し、共重合性コモノマー、特にエチレン性不飽和化合物などの付加重合性コモノマーが、さらに存在することができると理解される。この実施形態では、酸、塩基又は過酸化物開始剤が存在しないので、得られた電子素子のカソード又は他の成分の腐食が低減され、中間層内でのプロトン移動に起因する問題が取り除かれる。
【0026】
適切な不活性非架橋性X基には、C1〜20ヒドロカルビル及びハロゲン化C1〜20ヒドロカルビル基、特にアリール及びアルカリール基が含まれる。好ましい非架橋性X基には、フェニル及びC1〜10アルキルフェニル、特にp−n−ブチルフェニルが含まれる。
【0027】
適切なアリール基には、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル、スチルベンジイル及びフルオレンジイル基、その不活性置換誘導体、並びに上記の基の組合せが含まれる。
好ましいフルオレンジイル基は、次式に対応する
【化3】


[式中、R’はそれぞれ独立して出現するごとに、不活性置換基、X又はX’である]。
【0028】
上記に述べたとおり、1つの−NX−基で隔てられた2つのAr基は、芳香族縮合環系を形成することができる。例には、次式に対応する基が含まれる
【化4】


[式中、Xは、先に定義するとおりであり、
Yは、共有結合、O、S又はNRであり、
Rはそれぞれ独立して出現するごとに、i)水素;ii)ハロゲン;iii)C1〜20ヒドロカルビル基;iv)S、N、O、P、B又はSiから選択されたヘテロ原子を含有する1つ又は複数の基で置換された、水素を数に入れずに最高20個の原子を含むヒドロカルビル基;v)ハロゲン化されたiii)又はiv)の誘導体;或いはvi)架橋性X基で置換されたiii)又はiv)の誘導体である]。
【0029】
好ましい置換基Rには、C1〜40ヒドロカルビル基、又は1つ若しくは複数のS、N、O、P若しくはSiヘテロ原子を含むC1〜40ヒドロカルビル基、及び架橋性X基で置換された上記のC1〜40ヒドロカルビル又はC1〜40ヘテロ原子含有基が含まれる。より好ましい実施形態では、Rは、C1〜10アルキル基である。
【0030】
本発明のモノマー、オリゴマー及びポリマーは、−(Ar−NX’)−Ar−(NX’−Ar)n’−で定義される主鎖に沿って、完全共役していないにしても、高度に共役していることが好ましい。さらに好ましい一実施形態では、これらは、この主鎖中にフルオレンとトリアリールアミンとの2つの官能基をもつ誘導体を含む。本発明の架橋オリゴマー及びポリマーも、少なくとも1つの次の基によって定義される架橋構造に沿って、完全共役していないにしても、高度に共役していることがさらに好ましい。
【化5】

【0031】
上記の化合物の極めて好ましい実施形態は、Arが出現するごとにそれぞれ、1,4−フェニレン、9,9−ジ(C1〜20アルキル)フルオレン−2,7−ジイル又はその組合せであり;Xが、3,4−ベンゾシクロブタン−1−イル、エテニル又はp−エテニルフェニルであり;Zが臭素又は水素であり;nが1又は2であり;n’が0又は1であるものである。これらの化合物のうち、Arが出現するごとにそれぞれ、フェニレンであり;X基がそれぞれ3,4−ベンゾシクロブタン−1−イルであり;Zが出現するごとにそれぞれ、臭素であり;nが1又は2であり;n’が0であるものがさらに好ましい。高度に好ましいのは、上記の化合物のうち、nが1であるものである。
【0032】
本発明による式1)の化合物の具体的な例は、次の構造
【化6】


[式中、n、n’、R、X、Y、及びZは先に定義するとおりである]を有するものである。
【0033】
本発明による式Ia)のオリゴマー及びポリマーの具体的な例は、次の構造
【化7】


[式中、n、n’、R、X’、Y、及びZ’は先に定義するとおりである]を有するものである。このようなオリゴマー及びポリマーは、脱離基Zの喪失又は重合及び残基Z’の形成をもたらす通常の合成技術を使用して容易に調製される。適切な技法には、周知のバックウォルド(Buchwald)又はハーフバックウォルド(half−Buchwald)反応、スズキカップリング反応、又は同様な技術が含まれる。
【0034】
オリゴマー及びポリマーは、エレクトロルミネッセンス素子における正孔輸送フィルムと中間層フィルムの両方の調製への使用に極めて適している。
【0035】
モノマーの架橋
本発明の式I)又はIa)のアリールアミン化合物は、このような化合物を含む組成物を、高温で、少なくともいくつかのXの官能基の付加重合、又は他の架橋反応を生じるのに十分な時間加熱することによって容易に重合して架橋オリゴマー又はポリマーを形成する。一実施形態では、化合物を、2価の架橋用部分を形成することができる1つ又は複数の共重合性モノマーと共重合する。本明細書での使用に好ましい共重合性化合物は、次式(II)又は(III)で示される。
【化8】


[式中、Qはそれぞれ独立して出現するごとに、C1〜20ヒドロカルビル、又は1つ若しくは複数のS、N、O、P又はSi原子を含むC1〜20ヒドロカルビル、C4〜16ヒドロカルビルカルボニルオキシ、C4〜16アリール(トリアルキルシロキシ)であり、或いは2つのQは共にフルオレン環上の9位の炭素と一緒になって、C5〜20環構造又はS、N又はOのうちの1つ又は複数を含むC4〜20環構造を形成してもよく、
はそれぞれ独立して出現するごとに、C1〜20ヒドロカルビル、C1〜20ヒドロカルビルオキシ、C1〜20チオエーテル、C1〜20ヒドロカルビルカルボニルオキシ又はシアノであり、
はそれぞれ独立して出現するごとに、C1〜20ヒドロカルビル、又はジ(C1〜20アルキル)アミノ、C1〜20ヒドロカルビルオキシ若しくはC1〜20ヒドロカルビルで置換されたC1〜20ヒドロカルビル、或いはトリ(C1〜10アルキル)シロキシであり、
aはそれぞれ独立して出現するごとに、0又は1であり、
Z”は、脱離基、特にブロモである。]
【0036】
好ましい一実施形態では、本発明のオリゴマー及びポリマーは、1〜99パーセント、より好ましくは2〜50パーセント、最も好ましくは2〜10パーセントの式Ia)の繰り返し単位、及び99〜1パーセント、より好ましくは98〜50パーセント、最も好ましくは98〜90パーセントの次式
【化9】


[式中、Q1’は共有結合又はQの2価の残基である]の繰り返し単位を含む。
【0037】
本発明のモノマー及びオリゴマー、又はb段階の誘導体は、一般的な有機溶媒に容易に可溶である。これらは、溶媒を使用して又は使用せずに、通常の技術、特に溶液スピンコーティング又はインクジェット印刷によって、薄いフィルム又はコーティングに加工することができる。
【0038】
本発明のオリゴマー又はポリマーは、好ましくは1000ダルトン以上、より好ましくは5000ダルトン以上、さらにより好ましくは10,000ダルトン以上、非常に好ましくは15,000ダルトン以上、及び最も好ましくは20,000ダルトン以上であり、好ましくは1,000,000ダルトン以下、より好ましくは500,000ダルトン以下、及び最も好ましくは200,000ダルトン以下である重量平均分子量を有する。分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用し、ポリスチレン換算で決定する。ポリマーの繰り返し単位数によって測定される本発明のポリマーの重合度は、好ましくは少なくとも2、より好ましくは少なくとも3である。オリゴマー又はポリマーは、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、最も好ましくは2.0以下の多分散性(Mw/Mn)を示す。
【0039】
オリゴマー又はポリマーの調製方法
本発明の化合物、オリゴマー、及びポリマーは、N.Miyaua及びA.SuzukiによってChemical Reviews、95巻、457〜2483頁(1995年)に報告されている「鈴木反応」と通常呼ばれる、芳香族ボロネートと臭化物との縮合反応を含む、任意の適切なプロセスによって調製される。米国特許第5,777,070号に教示されるように、このパラジウムを触媒とする反応は、相間移動触媒を添加し、高分子量ポリマー及びコポリマーを調製することに適用することができる。この反応は、通常は適切な溶媒又は希釈液中、70℃〜120℃で実施される。好ましい溶媒には、トルエンやジエチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、或いはテトラヒドロフランやジメチルホルムアミドなど脂肪族又は芳香族のエーテル、エステル、カルバマートが含まれる。上記の溶媒又は希釈液の混合物も使用することができる。最も好ましい溶媒は、トルエンである。水性塩基、好ましくは炭酸又は重炭酸ナトリウムを、脱離基の反応生成物、一般にはHBr用の捕捉剤として使用する。反応試薬の反応性及び所望の生成物の分子量に応じて、重合反応を1分〜100時間行う。一官能性アリールハロゲン化物又はアリールボロナート化合物を、このような反応の連鎖停止剤として添加してもよく、これによって末端にアリール基が形成される。
【0040】
本発明による化合物の形成に使用されるジハロ官能性反応物質しか関与しない重合方法は、ニッケルを触媒とするカップリング反応を使用して実施することもできる。このようなカップリング反応のひとつは、参照により本明細書に組み込まれるColonらのJournal of Polymer Science、Part A、Polymer Chemistry Edition、28巻、367頁(1990年)、及びColonらのJournal of Organic Chemistry、51巻、2627頁(1986年)に記載されている。この反応は、通常は極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド)中、触媒量のニッケル塩、多量のトリフェニルホスフィン及び大過剰の亜鉛末を用いて実施する。有機可溶性ヨウ化物を促進剤として使用したこの方法の変形は、IoydaらのBulletin of the Chemical Society of Japan、63巻、80頁(1990年)に記載されている。ジハロ芳香族化合物の混合物を不活性溶媒中で過剰量のニッケル(1,5−シクロオクタジエン)錯体で処理した、ニッケルを触媒とする別のカップリング反応は、YamamotoのProgress in Polymer Science、17巻、1153頁(1992年)に開示されている。ニッケルを触媒とするカップリング反応は、2つ以上の芳香族ジハロゲン化物の反応物質混合物に適用するとすべて、本質的にランダムコポリマーを生じる。このような重合反応は、少量の水を重合反応混合物に添加し、それによって末端のハロゲン基を水素基で置換することによって停止することができる。或いは、一官能性アリールハロゲン化物を連鎖停止剤として使用し、末端にアリール基を形成することができる。
【0041】
他の共役基を含むコポリマー
本発明のポリマーは、望ましくは共役不飽和基を含む。「共役基」は、1つの共有結合で隔てられた2つ以上の二重結合、三重結合、及び/又は芳香族環を含む部分を指す。このような基をポリマーに組み込むことによって、ポリマーの光吸収、イオン化ポテンシャル及び/又は電子諸特性を改変することができる。本明細書で使用する共役不飽和基を含むコモノマー中に存在する好ましい不飽和基には、ベンゼン、ナフタレン、アセナフテン、フェナントレン、アントラセン、フルオランテン、ピレン、ルブレン及びクリセンの2価の誘導体など炭化水素の2価の誘導体、並びにフラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラゼン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ベンゾチアジアゾール、ベンゾトリアジン、フェナジン、フェナントリジン、アクリジン、カルバゾール及びジフェニレンオキシドの2価の誘導体など不飽和のヘテロ環基が含まれる。極めて望ましい共重合性の共役不飽和基には、9,9−二置換フルオレンジイル基及びトリアリールアミン基が含まれる。
【0042】
モノマーフィードの順序及び組成を制御することによって、得られたコポリマー中のモノマー単位のシーケンスを制御することが可能であり、特に鈴木反応を使用する場合、可能である。例えば、交互ジアリールアミン−コモノマーオリゴマーの短いブロックに結合したポリフルオレンジイルホモポリマーの大きいブロックを主に含む高分子量コポリマーは、まず、交互フルオレンジイル−コモノマーオリゴマーを調製するために適した比の適切な反応物質を導入し、続いて、反反応試薬の総合的な化学量論的バランスが存在する範囲において、残部のジアリールアミン又は他のモノマー、すなわちホウ素及び臭素を含有する試薬を導入することによって調製することができる。
【0043】
さらに本発明のコポリマーに組み込むことができるジアリールアミン基の例は、2つの反応性置換基を含有する第三級芳香族アミンである。このような化合物は、対応するトリアリールアミン残基をコポリマーに含める。適切な第三級芳香族アミンの例には、トリフェニルアミン、アルキルジアリールアミン、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン及びN,N,N’,N’−テトラフェニル−1,4−フェニレンジアミンが含まれる。
【0044】
一般に、最高60個の炭素を含有する共重合性共役化合物は、この目的のために有用である。これらは、ポリマー組成物のフォトルミネセンス特性に有害でない1つ又は複数の置換基によって任意に置換することができる。適切な置換基の例には、C〜C20ヒドロカルビル基、C〜C20(チオ)アルコキシ基、C〜C20(チオ)アリールオキシ基、シアノ、フルオロ、クロロ、C〜C20アルコキシカルボニル、C〜C20アリーオキシルカルボニル、C〜C20カルボキシル及びアルキル(アリール)スルホニル基が含まれる。アリールカルボニル及びニトロ基など知られているフォトルミネセンスクエンチャーである置換基は望ましくなく、回避されるべきである。
【0045】
ポリマーブレンド
本発明のオリゴマー及びポリマーは、少なくとも2つのポリマーのブレンドを形成する際に使用することができる。ブレンドのオリゴマー又はポリマーのうちの1つ又は複数を所望により発光ポリマーとすることができる。ブレンドは、適切にはポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ(メタクリル酸メチル/メチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド)、フェノキシ樹脂、ポリカーボナート、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリイミド、架橋エポキシ樹脂、架橋フェノール樹脂、架橋アクリレート樹脂及び架橋ウレタン樹脂から選択される1つ又は複数のポリマー材料から構成される。これらのポリマーの例は、Preparative Methods of Polymer Chemistry、W.R.Sorenson及びT.W.Campbell、第2版、Interscience Publishers(1968年)に出ている。架橋したポリマーを含むブレンドは、架橋前の成分をブレンドし、後にその成分をその場で架橋させて形成することが好ましい。
【0046】
ブレンドは、少なくとも2つの発光ポリマーを含み、ブレンド中のポリマーのうちの1つの最大発光波長は、ブレンド中の少なくとも1つの他のポリマーの最大吸収波長の25nm内であることが好ましい。極めて望ましくは、ブレンドは、2つのポリマーの混合物を含み、本発明に対応するそれぞれは、それぞれ0.1〜99.9及び99.9〜0.1パーセントの範囲である。
【0047】
ポリマー用途
本発明のオリゴマー及びポリマーの場合の主な用途は、フィルムの形成におけるものである。このようなフィルムは、有機発光ダイオード、特にポリマー発光ダイオード、光電池、照明、フォトダイオード、センサー、薄膜トランジスタ及び他の素子などの電子素子における光ルミネセンス又は蛍光コーティング、並びに中間層、保護コーティング及び正孔輸送層を調製する際に使用することができる。コーティング又はフィルムの厚さは、最終用途に依存する。一般に、このような厚さは、0.01〜200マイクロメートルとすることができる。蛍光コーティングとして使用する場合、フィルムの厚さは、望ましくは50〜200マイクロメートルである。電子保護層として使用する場合、フィルムの厚さは、望ましくは5〜20マイクロメートルである。ポリマー発光ダイオードで層として使用する場合、フィルムの厚さは、望ましくは0.001〜2マイクロメートルである。本発明のオリゴマー又はポリマーは、実質的にピンホール及び他の欠陥のないフィルムを形成する。このようなフィルムは、スピンコーティング、スプレイコーティング(インクジェット印刷を含む)、ディップコーティング、及びロールコーティングを含めて当技術分野でよく知られている手段によって調製することができる。このようなコーティングは、本発明の化合物、オリゴマー又はポリマーを含む組成物を基板に塗布し、フィルムが一般に架橋反応によって形成されるような条件に曝露する方法によって調製する。フィルムを形成する条件は、塗布技術及びフィルム形成部分の反応性末端基に応じて異なる。溶液は、0.1〜10重量パーセントの本発明のオリゴマー又はポリマーを含み、残部は溶媒であることが好ましい。薄いコーティングの場合、組成物は0.5〜5.0重量パーセントの化合物、オリゴマー又はポリマーを含むことが好ましい。次いで、この組成物を、所望の方法によって適切な基板に塗布し、溶媒を蒸発させる。残留溶媒を真空及び/又は熱によって除去することができる。溶媒が低沸点である場合、低い溶液濃度、例えば0.1〜2パーセントが望ましい。溶媒が高沸点である場合、高濃度、例えば3〜10パーセントが望ましい。溶媒を除去した後、高い耐溶媒性及び耐熱性を有するフィルムを調製するために、必要に応じてコーティングをフィルムを硬化するのに必要な条件に曝露する。フィルムは、好ましくは厚さが実質的に均一であり、ピンホールが実質的にない。フィルムは好ましくは100℃以上、より好ましくは150℃以上、最も好ましくは200℃以上の温度に曝露すると硬化する。フィルムは好ましくは300℃以下の温度で硬化する。
【0048】
フィルムを調製する際、組成物は、架橋プロセスを促進する又は開始するのに適した触媒をさらに含むことができる。このような触媒は、当技術分野でよく知られている。例えば、エチレン性不飽和基を有する材料の場合、フリーラジカル触媒を使用することができる。グリシジルエーテルを末端基として有するアリール成分の場合、尿素類又はイミダゾール類を使用することができる。末端部分としてグリシジルエーテル置換アリール基を有するフルオレン類からフィルムを調製する場合、材料を、架橋を促進する一般的に知られている硬化剤と反応させることができる。好ましい硬化剤には、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物(無水ナディック酸)及び無水マレイン酸がある。
【0049】
別の望ましい実施形態では、フィルムを形成する前に、モノマー及びオリゴマーを部分硬化させるか又はB段階とすることができる。このような実施形態では、組成物を、反応性材料の一部分が硬化し、反応性材料の一部分が硬化しないような条件に曝露する。これは組成物の加工性を改善するためによく使用され、フィルムの調製を容易にする。このようなB段階の材料は、上記に記載した方法でその後コーティングを調製するために使用することができる。B段階化中、好ましくは反応性部分の10〜50パーセントを反応させる。
【0050】
本発明のさらに別の態様は、本発明のポリマーのフィルムを含む有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子に関する。有機EL素子は、一般に陽極と陰極との間に挟まれた有機フィルムからなり、プラスのバイアスが素子にかけられると、正孔が陽極から有機フィルムに注入され、電子が陰極から有機フィルムに注入される。正孔と電子が組み合わされるとエキシントンを生じることができ、それが光子を放出することによって基底状態への放射減衰を起す。実際には、陽極には一般的にその高い導電性及び透明性のためインジウムとスズの混合酸化物(ITO)が使用される。有機フィルムによる発光が観察できるように、混合酸化物を通常はガラスやプラスチックなど透明な基板上に蒸着する。有機フィルムは、それぞれ明確な機能又は目的のために設計された個別の層の複数からなる複合体とすることができる。正孔は陽極から注入されるため、陽極に隣接する層は、正孔を輸送するのに適した機能を有することが望ましい。同様に、陰極に隣接する層は、電子を輸送するのに適した機能を有することが望ましい。多くの場合、正孔又は電子輸送層は発光層としても働く。場合によっては、一層で正孔輸送、電子輸送及び発光の組み合わされた機能を果たす。一般に、本発明のポリマーを含むフィルムは、電子素子中で緩衝層又は正孔輸送層として働く。上記のポリマーフィルム層に加えて、望むなら、熱蒸発によって堆積させた小分子のフィルムを電子素子に組み込むことができる。有機フィルムの全厚は、1000nm未満、より好ましくは500nm未満、最も好ましくは300nm未満であることが好ましい。本発明の一実施形態は、その有機フィルムが本発明のポリマー組成物のうちの少なくとも1つを含むEL素子である。
【0051】
陽極として働くITO表面は、通常はまず曝露面を洗浄剤水溶液、有機溶媒、及び/又はUV若しくはプラズマ発生オゾン処理で清浄にしたのち、本発明によるフィルムで被覆することができる。望むなら、電導性物質の薄層で被覆して、正孔注入を容易にすることもできる。適切な電導性物質には、銅フタロシアニン、ポリアニリン及びポリ(3,4−エチレンジオキシ−チオフェン)(PEDT)が含まれる。この最後の2つは、有機の強酸、例えばポリ(スチレンスルホン酸)をドーピングすることによって導電性にする。導電性層を使用する場合その厚さは、好ましくは、200nm以下、より好ましくは100nm以下である。
【0052】
本発明の化合物は、多層素子の中間層の調製において、正孔輸送ポリマー層を形成する化合物の混合物の一成分として、又は多層電子素子、特にエレクトロルミネッセンス素子の別の正孔輸送層として使用することができる。本発明以外の正孔輸送ポリマーを使用する場合、既知の正孔導電性ポリマー、例えばポリビニルカルバゾール、又は米国特許第5,728,801号若しくは第5,929,194号に開示されたポリマーアリールアミンを使用することができる。次に塗布されるはずのコポリマーフィルム溶液による侵食に対するこの層の抵抗性は、多層素子の作製を成功させるには明らかに重要である。したがって、本発明のコポリマーは、通常は正孔輸送層が不溶であるキシレンやトルエンなどの有機溶媒の溶液から塗布する。正孔輸送ポリマーを本発明による架橋ポリマーを含む中間層で被覆又は保護することによって、正孔輸送ポリマーを電子素子の製造に使用するその後の試薬又は溶媒から保護することができる。本発明による正孔輸送層又は中間層の厚さは、望ましくは500nm以下、好ましくは300nm以下、最も好ましくは150nm以下である。
【0053】
適切な電子輸送層を使用する場合は、予め被着させたフィルム層を著しくは損傷しない溶媒を使用して、低分子量材料の熱蒸発によって、又は本発明によるポリマーなどポリマーの溶液塗布によって塗布することができる。電子輸送層を形成する際に通常使用される低分子量材料の例には、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体(BurrowsらのApplied Physics Letters、64巻、2718〜2720頁(1994年)に記載)、10−ヒドロキシベンゾ(h)キノリンの金属錯体(HamadaらのChemistry Letters、906〜906頁(1993年)に記載)、1,3,4−オキサジアゾール(HamadaらのOptoelectronics−Devices and Technologies、7巻、83〜93頁(1992年)に記載)、1,3,4−トリアゾール(KidoらのChemistry Letters、47〜48頁(1996年)に記載)、及びペリレンのジカルボキシミド(YoshidaらのApplied Physics Letters、69巻、734〜736頁(1996年)に記載)が含まれる。
【0054】
本発明のものに加えて、ポリマーの電子輸送材料は、1,3,4−オキサジアゾールを含むポリマー(LiらのJournal of Chemical Society、2211〜2212頁(1995年)、Yang及びPeiのJournal of Applied Physics、77巻、4807〜4809頁(1995年)に記載)、1,3,4−トリアゾールを含むポリマー(StrukeljらのScience、267巻、1969〜1972頁(1995年)に記載)、キノキサリンを含むポリマー(YamamotoらのJapan Journal of Applied Physics、33巻、L250〜L253頁(1994年)、O’BrienらのSynthetic Metals、76巻、105〜108頁(1996年)に記載)、及びシアノ−PPV(WeaverらのThin Solid Film、273巻、39〜47頁(1996年)に記載)によって例示される。この層の厚さは、500nm以下、好ましくは300nm以下、最も好ましくは150nm以下とすることができる。
【0055】
電子素子の最終層は、通常は任意の導電材料、好ましくは金属から形成することができる陰極である。適切な金属の例には、リチウム、カルシウム、マグネシウム、インジウム、銀、アルミニウム又は上記のブレンド及び合金が含まれる。金属陰極を知られている技法に従って熱的蒸発又はスパッタリングによって被着することができる。陰極の厚さは、100nm〜10,000nmとすることができる。好ましい金属は、カルシウム、マグネシウム、インジウム及びアルミニウムである。これらの金属の合金も使用することができる。1〜5パーセントのリチウムを含有するアルミニウムの合金及び少なくとも80パーセントのマグネシウムを含有するマグネシウムの合金が極めて好ましい。
【0056】
本発明のEL素子は50ボルト以下の印加電圧にかけると3.5Cd/Aの高輝度効率で発光する。望むなら、封緘又は保護コーティングを、仕上げ素子の1つ又は複数の曝露面に塗布することができる。
【0057】
好ましい実施形態では、エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも1つの正孔輸送ポリマーフィルム及び発光ポリマーフィルムを含み、そのうちの少なくとも1つは本発明のポリマーからなり、陽極材料と陰極材料との間に配置され、素子が順方向にバイアスをかけられたとき、印加電圧下で、正孔は陽極材料から正孔輸送ポリマーフィルムに注入され、電子は陰極材料から発光ポリマーフィルムに注入され、発光層からの発光が生じる。別の好ましい実施形態では、正孔輸送ポリマーの層は、陽極に最も近い層がより低い酸化電位を有し、隣接する層が徐々により高い酸化電位を有するように配置されている。これらの方法によって、単位電圧当たりの発光出力が比較的高いエレクトロルミネッセンス素子を調製することができる。
【0058】
本明細書で使用される用語「正孔輸送ポリマーフィルム」とは、ポリマーのフィルム層であって、2つの電極間に配置され、電界がかけられ、正孔が陽極から注入されるときに、正孔の発光ポリマーへの適切な輸送を可能にするポリマーのフィルム層を指す。本明細書で使用される用語「発光ポリマーフィルム」は、光子を放出することによって、好ましくは可視光範囲の波長に対応する光子を放出することによって励起状態から基底状態に戻ることができるポリマーのフィルム層を指す。本明細書で使用される用語「陽極材料」は、4.5電子ボルト(eV)〜5.5eVの仕事関数を有する半透明又は透明な導電フィルムを指す。その例は、金及び酸化物並びにインジウムとスズの混合酸化物である。本明細書で使用される用語「陰極材料」は、望ましくは2.5eV〜4.5eVの仕事関数を有する導電フィルムを指す。
【0059】
本発明の実施形態のうちのいずれか1つに関して好ましい又は所望の、より好ましい又はより所望の、極めて好ましい又は極めて所望の、或いは最も好ましい又は最も所望の置換基、範囲、最終用途、方法、又は組合せの上記の開示は、他のいずれの特定の置換基、範囲、用途、方法、又は組合せのアイデンティティーにかかわりなく、本発明の先行の又は後続の実施形態の他のいずれにも適用できることが明らかに意図されている。
【0060】
本発明の下記の具体的な実施形態は、特に望ましいものであり、及び添付の特許請求の範囲について詳細な開示を提供するために本明細書に記載する。
【0061】
1.次式のアリールアミン化合物
Z−(Ar−NX)−Ar−(NX−Ar)n’−Z (I)
[式中、
Arはそれぞれ独立して出現するごとに、1つ又は複数の2価の芳香族基を含む基であり、任意に、1つのNX基で隔てられた2つのAr基は、第2の共有結合又は橋かけ基によって結合し、それによって縮合した複数の環系を形成し、
Xは、不活性置換基又は架橋性基であり、但し、前記化合物での少なくとも1つの出現において、Xが架橋性基であり、
Zはそれぞれ独立して出現するごとに、水素又は脱離基であり、
nは1又は2であり、
n’は0、1又は2である]。
【0062】
2.Xが少なくとも1つの出現において、二重結合、三重結合、二重結合をその場形成することができる前駆体又はヘテロ環付加重合性基を含む部分である実施形態1に記載の化合物。
【0063】
3.Xが少なくとも1つの出現において、ベンゾシクロブタニル基;並びにベンゾシクロブタン、アジド、オキシラン、ジ(ヒドロカルビル)アミノ、シアン酸エステル、ヒドロキシ、グリシジルエーテル、C1〜4アルキルアクリレート、C1〜4アルキルメタクリレート、エテニル、エテニルオキシ、ペルフルオロエテニルオキシ、エチニル、マレイミド、ナジイミド、トリ(C1〜4)−アルキルシロキシ、トリ(C1〜4)アルキルシリル及びそれらのハロゲン化誘導体からなる群から選択される1つ又は複数の置換基を含む置換C6〜12アリーレン基;からなる群から選択される実施形態1に記載の化合物。
【0064】
4.Xが少なくとも1つの出現において、1−ベンゾ−3,4−シクロブタン又は4−フェニル−l−(ベンゾ−3,4−シクロブタン)である実施形態1に記載の化合物。
【0065】
5.Zが出現するごとにそれぞれ、ハロ、シアノ、トリフラート、アジド、−B(OR又は
【化10】


[式中、Rはそれぞれ独立して出現するごとに、水素又はC1〜10アルキル基であり、Rはそれぞれ独立して出現するごとに、C2〜10アルキレン基である]である実施形態1に記載の化合物。
【0066】
6.Arが出現するごとにそれぞれ、フェニレン、9,9−ジ(C1〜20アルキル)フルオレニル又はその組合せであり;Xが3,4−ベンゾシクロブタン−1−イル、エテニル又はp−エテニルフェニルであり;Zが臭素又は水素であり;nが1又は2であり;n’が0又は1である実施形態1に記載の化合物。
【0067】
7.Arが出現するごとにそれぞれ、フェニレンであり;X基がそれぞれ、3,4−ベンゾシクロブタン−1−イルであり;Zが出現するごとにそれぞれ、臭素であり;nは1又は2であり;n’が0である実施形態6に記載の化合物。
【0068】
8.nが1である実施形態7に記載の化合物。
【0069】
9.次式
【化11】


[式中、Yは、共有結合、O、S又はNRであり、
Rはそれぞれ独立して出現するごとに、i)水素;ii)ハロゲン;iii)C1〜20ヒドロカルビル基;iv)S、N、O、P、B又はSiから選択されたヘテロ原子を含有する1つ又は複数の基で置換された、水素を数に入れずに最高20個の原子を含むヒドロカルビル基;v)ハロゲン化されたiii)又はiv)の誘導体;或いはvi)架橋性X基で置換されたiii)又はiv)の誘導体であり、
n、n’、X及びZは、実施形態1で先に定義するとおりである]を有する実施形態1に記載の化合物。
【0070】
10.次式の1つ又は複数の繰り返し基
Z’−(Ar−NX’)−Ar−(NX’−Ar)n’−Z’ (Ia)
[式中、X’は、X、又は架橋性X基の付加重合によって形成された2価の架橋残基であり、
Z’は、Z、共有結合又は脱離基の置換若しくは反応によって形成された末端基であり、
Arはそれぞれ独立して出現するごとに、2価の芳香族基であり、任意に、1つのNX基で隔てられた2つのAr基は、第2の共有結合又は橋かけ基によって結合し、それによって縮合した複数の環系を形成し、
Xは、不活性置換基であり、但し、前記化合物での少なくとも1つの出現において、Xは架橋性基であり、
Zはそれぞれ独立して出現するごとに、水素又は脱離基であり、
nは1又は2であり、
n’は0、1又は2である]を有するオリゴマー又はポリマー。
【0071】
11.次式Ia)の1つ又は複数の繰り返し基
【化12】


[式中、X’は、X又は架橋性X基の付加重合によって形成された2価の架橋残基であり、
Xは、不活性置換基又は架橋官能基を形成することができる基であり、
Yは、O、S又はNR’であり、
Rはそれぞれ独立して出現するごとに、i)水素;ii)ハロゲン;iii)C1〜20ヒドロカルビル基;iv)S、N、O、P、B又はSiから選択されたヘテロ原子を含有する1つ又は複数の基で置換された、水素を数に入れずに最高20個の原子を含むヒドロカルビル基;v)ハロゲン化されたiii)又はiv)の誘導体;或いはvi)架橋性X基で置換されたiii)又はiv)の誘導体であり、
Z’は、Z、共有結合、又は脱離基の置換若しくは反応によって形成された末端基であり、
nは1又は2であり、
n’は0、1、又は2である]を有する実施形態10に記載のオリゴマー又はポリマー。
【0072】
12.X’が少なくとも1つの出現において、架橋性X基の付加重合によって形成された2価の架橋残基である実施形態10又は11に記載の架橋ポリマー。
【0073】
13.X’が共役不飽和を含む実施形態12に記載の架橋ポリマー。
【0074】
14.実施形態1に記載の化合物を含む組成物を、オリゴマー又はポリマーを形成するのに十分な反応条件下で加熱する工程を含む、実施形態10に記載のオリゴマー又はポリマーの調製方法。
【0075】
15.実施形態10に記載のオリゴマー又はポリマーのうちの1つ又は複数を含み、或いは実施形態14に従って調製することができるフィルム。
【0076】
16.1層又は複数層のポリマーフィルムを含み、そのうちの少なくとも1層が実施形態15に記載のフィルムを含む電子素子。
【0077】
以下の実施例は、例示の目的のために含まれているだけであって、特許請求の範囲を限定するものではない。特に明記しないかぎり、文脈から間接的に又は当技術分野の慣例で、本明細書の部及び百分率はすべて、重量に基づくものである。本発明が、具体的に開示されていない任意の成分がなくても実施可能であることは当然である。「一晩」という用語が使用される場合、約16〜18時間という時間を指し、「室温」が使用される場合、約20〜25℃という温度を指す。
【0078】
下記の反応スキーム1は、架橋性ベンゾシクロブタン官能基を含むトリアリールアミン化合物の調製、並びに5モルパーセントの架橋性共役ジアリールアミン官能基と95モルパーセントの非架橋性ジアリールアミン官能単位とを含む本発明による架橋性アミンコポリマーを作製するための重合反応でのその使用を開示している。
【化13】


[上記スキーム中、F8BEは、2,7−ビス(1,3,2−ジオキシボロール)−9,9−ジ(1−オクチル)フルオレンであり、TFBは、N,N−ジ(p−ブロモフェニル)−N−(4−(ブタン−2−イル)フェニル)アミンである]。
【実施例1】
【0079】
A)ジフェニルベンゾシクロブタンアミン(1)の合成
メカニカルスターラ、窒素インレット、及び(窒素アウトレットを有する)還流冷却器を装備した500mLの三つ口丸底フラスコ中で、酢酸パラジウム(II)(196mg、1.20mmol)及びトリ(o−トリル)ホスフィン(731mg、2.40mmol)をトルエン100mLに添加する。パラジウム触媒が溶解し溶液が黄色になるまで、混合物を窒素中、室温で撹拌する。ジフェニルアミン(20.0g、118mmol)、ブロモベンゾシクロブタン(23.8g、130mmol)及びトルエン400mL、続いてt−ブトキシドナトリウム(22.8g、237mmol)を添加する。t−ブトキシドナトリウムを添加すると、反応物が黒色になる。反応物を窒素下で22時間加熱還流する。1M HCL水溶液30mLを添加することによって、反応を止める。トルエン層を2M NaCO(100mL)で洗浄し、次いでトルエン溶液を塩基性アルミナに通す。トルエンを蒸発させると、黄色オイルが得られる。オイルをイソプロパノールとともに撹拌することによって、生成物を沈殿させる。固体を収集し、熱イソプロパノールで再結晶化する。H NMR(CDCl−d)δ:7.3−6.8(m,13H,Ar),3.12(d,4H,−CHCH−)。
【0080】
B)ジ(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブタンアミン(2)の合成
250mLの丸底フラスコ中で、ジフェニルベンゾシクロブタンアミン(8.00g、29.5mmol)を氷酢酸5滴を含有するジメチルホルムアミド(DMF)100mLに添加する。撹拌中の溶液に、N−ブロモスクシンイミド(NBS、10.5g、60.7mmol、1.97eq.)を添加する。5時間撹拌した後、反応混合物をメタノール/水(体積比1:1)600mLに注ぎ入れることによって、反応を止める。灰色固体をろ過によって回収し、イソプロパノールで再結晶化する。H NMR(CDCl−d)δ:7.3(d,4H,Ar),7.0(d,4H,Ar),6.95(t,Ar),6.8(s,Ar),3.12(d,4H,−CHCH−)。
【実施例2】
【0081】
A)BCBを含むフルオレン/トリアリールアミンポリマーの合成(P1)
還流冷却器及びオーバーヘッドスターラを装備した1リットルの三つ口丸底フラスコに、次のモノマー:F8BE(3.863g、7.283mmol)、TFB(3.177g、6.919mmol)及び化合物2(156.3mg、0.364mmol)を添加する。第四級アンモニウムクロライド触媒の0.74Mトルエン溶液(アリクアト(Aliquat)(商標)336、Sigma−Aldrich Corporationから入手、3.1mL)、続いてトルエン50mLを添加する。PdCl(PPh触媒(4.9mg)を添加した後、混合物を、モノマーのすべてが溶解する(約15分間)まで油浴(105℃)中で撹拌する。炭酸ナトリウム水溶液(2.0M、14mL)を添加し、反応物を油浴(105℃)中、16.5時間撹拌する。次いで、フェニルボロン酸(0.5g)を添加し、反応物を7時間撹拌する。水層を除去し、有機層を水50mLで洗浄する。有機層を反応フラスコに戻し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.75g及び水50mLを添加する。反応物を油浴(85℃)中、16時間撹拌する。水層を除去し、有機層を水(3×100mL)で洗浄し、次いでシリカゲル及び塩基性アルミナのカラムに通す。次いで、トルエン/ポリマー溶液をメタノールに沈殿させ(2回)、ポリマーを60℃で真空乾燥する。収量=4.2g(82パーセント)Mw=124,000;Mw/Mn=2.8
【実施例3】
【0082】
スキーム2は、架橋性ベンゾシクロブタン基を含むフェニレンジアミンモノマーの合成、及び共役架橋を実現することができる架橋性部分を5モルパーセント含むフルオレン/アミンコポリマーを作製するために使用する重合反応を示す。
【化14】


A)N,N’−ジフェニル−N,N’−ジベンゾシクロブタン−1,4−フェニレンジアミン(3)の合成
メカニカルスターラ、窒素インレット及び(窒素アウトレットを有する)還流冷却器を装備した500mLの三つ口丸底フラスコ中で、酢酸パラジウム(II)(173mg、0.80mmol)及びトリ(o−トリル)ホスフィン(486mg、1.60mmol)をトルエン50mLに添加する。パラジウム触媒が溶解し溶液が黄色になるまで、混合物を窒素下、室温で撹拌する。N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン(10.0g、38.4mmol)、ブロモベンゾシクロブタン(15.5g、76.8mmol)及びトルエン200mL、続いてt−ブトキシドナトリウム(7.37g、76.8mmol)を添加する。t−ブトキシドナトリウムを添加すると、反応物が黒色になる。反応物を窒素下で22時間加熱還流する。1M HCL水溶液30mLの添加によって、反応を止める。トルエン溶液を塩基性アルミナに通し、粗生成物を、トルエン/ヘキサン/メタノールの混合物で再結晶することによって精製する。収量=9.43g(53パーセント)。H NMR(THF−d8)δ:7.15(t,4H,Ar)、6.80〜7.01(m,16H,Ar)3.09(s,8H,−CHCH−)13C−NMR(THF−d8)δ:149.72、148.26、147.34、144.18、141.50、129.92、125.82、125.76、124.35、123.61、122.45、121.06、29.78。
【0083】
B)ジ(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブタンアミン(4)の合成
500mLの丸底フラスコ中で、化合物3(7.42g、16.0mmol)を、DMF200mL及び氷酢酸5滴を含有するTHF150mLに添加する。撹拌中の溶液に、N−ブロモスクシンイミド(NBS、5.57g、31.5mmol)を添加する。18時間撹拌した後、生成物が反応混合物から沈殿する。生成物をろ過によって収集し、3回トルエンで再結晶する。収量=4.44g(45パーセント)。
【実施例4】
【0084】
BCBを含むフルオレン/フェニレンジアミンポリマー(P2)の合成
還流冷却器及びオーバーヘッドスターラを装備した250mLの三つ口丸底フラスコに、次のモノマー:F8BE(2.922g、5.504mmol)、PFB(3.583g、5.229mmol)、化合物4(175mg、0.275mmol)、アリクアト(Aliquat)(商標)336(Sigma−Aldrich Corporationから入手、0.8g)及びトルエン(50mL)を添加する。PdCl(PPh触媒(3.8mg)を添加した後、混合物を、モノマーのすべてが溶解する(約15分間)まで油浴(105℃)中で撹拌する。炭酸ナトリウム水溶液(2.0M、12mL)を添加し、反応物を油浴(105℃)中で22時間加熱しながら撹拌する。次いで、フェニルボロン酸(0.5g)を添加し、反応物を24時間撹拌する。水層を除去し、有機層を水(50mL)で洗浄する。有機層を反応フラスコに戻し、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.75g、及び水50mLを添加する。反応物を油浴(85℃)中、16時間撹拌する。水層を除去し、有機層を水(3×100ml)で洗浄し、次いでシリカゲル及び塩基性アルミナのカラムに通す。次いで、トルエン/ポリマー溶液をメタノールに沈殿させ(2回)、ポリマーを60℃で真空乾燥する。収量=3.9g(78パーセント)Mw=61,348;Mw/Mn=2.8
【実施例5】
【0085】
架橋フィルム
A)実施例2及び4の架橋性モノマーを混合キシレン4mLに溶解する。溶液を室温で一晩振盪し、次いで0.45μmのナイロン製シリンジフィルタでろ過する。各溶液を4000rpmでスピンコーティングすることによって、厚さ約80nmの硬化フィルムを清浄したガラス基板上に被着させる。次いで、フィルムを、窒素を充満させたオーブン中、250℃で30分間加熱して、フィルムにおいて架橋を形成させる。フィルムのUV−Vis吸収スペクトルを測定する。次いで、フィルムをトルエンですすぎ、すすぎ、乾燥し、吸収スペクトルを再測定する。最後に、フィルムをトルエンに30分間浸漬し、すすぎ、乾燥し、吸収スペクトルを再測定する。吸収スペクトルではわずかなバラツキしか観察されず、硬化フィルムが本質的にトルエンへの曝露に影響されないことが示唆されている。
B)架橋性モノマーのN,N’−ジフェニル−N,N’−ジベンゾシクロブタン−1,4−フェニレンジアミン(実施例3A)試料16.0mgを示差走査熱分析(DSC)で分析する。初期加熱速度は5℃/分であり、25℃から始めて325℃にする。最初の加熱(図2)では、化合物の融点が126℃に見られ、懸垂型のベンゾシクロブタン基間の架橋反応に起因する、246℃にピーク最大値をもつ大きな発熱が観察される。その後の加熱(図3)では、融点と架橋発熱との消失が示され、安定な架橋材料の形成が生じたことが確認される。
【実施例6】
【0086】
架橋及び非架橋フィルムを中間層と使用する発光素子
通常の正孔輸送層ポリマー(バイトロン(Baytron)P(商標)、Sigma−Aldrich Corporationから入手)を、清浄したITO基板上で厚さ80nmにスピンコートし、200℃で15分間空気硬化させる。実施例2からの架橋性ポリマーの充填剤層をキシレン(0.5%w/v)で同様に被着させ、窒素雰囲気中250℃で30分間硬化(架橋)する。次に、米国特許第6,353,083号に教示に実質的に従って調製した発光ポリマーを、キシレン溶液(1.5%w/v)でスピンコートし、130℃の温度で硬化する。カソード用金属(Ca:10nm、及びAl:150nm)を得られたポリマーフィルムに蒸着させる。
【0087】
上記の手順を実質的に繰り返して、中間層(比較)をもたない発光ダイオード、及び乾燥しているものの非硬化(非架橋)の中間層を有する発光ダイオードを生成する。次いで、発光ダイオードのエレクトロルミネセンス特性を試験する。結果を図1に報告する。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施例6の発光素子電気的諸特性を含むグラフである。
【図2】実施例3Aの化合物のDSCスキャンを示す図である。
【図3】実施例3Aの化合物のDSCスキャンを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式のアリールアミン化合物
Z−(Ar−NX)−Ar−(NX−Ar)n’−Z (I)
[式中、
Arはそれぞれ独立して出現するごとに、1つ又は複数の2価の芳香族基を含む基であり、任意に、1つのNX基で隔てられた2つのAr基は、第2の共有結合又は橋かけ基によって結合し、それによって縮合した複数の環系を形成し、
Xは、不活性置換基又は架橋性基であり、但し、前記化合物での少なくとも1つの出現において、Xは架橋性基であり、
Zはそれぞれ独立して出現するごとに、水素又は脱離基であり、
nは1又は2であり、
n’は0、1又は2である]。
【請求項2】
Xが少なくとも1つの出現において、二重結合、三重結合、二重結合をその場形成することができる前駆体又はヘテロ環付加重合性基を含む部分である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが少なくとも1つの出現において、ベンゾシクロブタニル基;並びにベンゾシクロブタン、アジド、オキシラン、ジ(ヒドロカルビル)アミノ、シアン酸エステル、ヒドロキシ、グリシジルエーテル、C1〜4アルキルアクリレート、C1〜4アルキルメタクリレート、エテニル、エテニルオキシ、ペルフルオロエテニルオキシ、エチニル、マレイミド、ナジイミド、トリ(C1〜4)−アルキルシロキシ、トリ(C1〜4)アルキルシリル及びそれらのハロゲン化誘導体からなる群から選択される1つ又は複数の置換基を含む置換C6〜12アリーレン基;からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xが少なくとも1つの出現において、1−ベンゾ−3,4−シクロブタン又は4−フェニル−l−(ベンゾ−3,4−シクロブタン)である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Zが出現するごとにそれぞれ、ハロ、シアノ、トリフラート、アジド、−B(OR又は
【化1】


[式中、Rはそれぞれ独立して出現するごとに、水素又はC1〜10アルキル基であり、Rはそれぞれ独立して出現するごとに、C2〜10アルキレン基である]
である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
Arが出現するごとにそれぞれ、フェニレン、9,9−ジ(C1〜20アルキル)フルオレニル又はその組合せであり;Xが3,4−ベンゾシクロブタン−1−イル、エテニル又はp−エテニルフェニルであり;Zが臭素又は水素であり;nが1又は2であり;n’が0又は1である請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Arが出現するごとにそれぞれ、フェニレンであり;X基がそれぞれ、3,4−ベンゾシクロブタン−1−イルであり;Zが出現するごとにそれぞれ臭素であり、nは1又は2であり;n’が0である請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
nが1である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
次式
【化2】


[式中、Yは、共有結合、O、S又はNRであり、
Rはそれぞれ独立して出現するごとに、i)水素;ii)ハロゲン;iii)C1〜20ヒドロカルビル基;iv)S、N、O、P、B又はSiから選択されたヘテロ原子を含有する1つ又は複数の基で置換された、水素を数に入れずに最高20個の原子を含むヒドロカルビル基;v)ハロゲン化されたiii)又はiv)の誘導体;或いはvi)架橋性X基で置換されたiii)又はiv)の誘導体であり、
n、n’、X及びZは、請求項1で先に定義するとおりである]
を有する請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
次式の1つ又は複数の繰り返し基
Z’−(Ar−NX’)−Ar−(NX’−Ar)n’−Z’ (Ia)
[式中、X’は、X、又は架橋性X基の付加重合によって形成された2価の架橋残基であり、
Z’は、Z、共有結合又は脱離基の置換若しくは反応によって形成された末端基であり、
Arはそれぞれ独立して出現するごとに、2価の芳香族基であり、任意に、1つのNX基で隔てられた2つのAr基は、第2の共有結合又は橋かけ基によって結合し、それによって縮合した複数の環系を形成し、
Xは、不活性置換基であり、但し、前記化合物での少なくとも1つの出現において、Xは架橋性基であり、
Zはそれぞれ独立して出現するごとに、水素又は脱離基であり、
nは1又は2であり、
n’は0、1又は2である]
を有するオリゴマー又はポリマー。
【請求項11】
次式la)の1つ又は複数の繰り返し基
【化3】


[式中、X’は、X、又は架橋性X基の付加重合によって形成された2価の架橋残基であり、
Xは、不活性置換基又は架橋官能基を形成することができる基であり、
Yは、O、S又はNR’であり、
Rはそれぞれ独立して出現するごとに、i)水素;ii)ハロゲン;iii)C1〜20ヒドロカルビル基;iv)S、N、O、P、B、又はSiから選択されたヘテロ原子を含有する1つ又は複数の基で置換された、水素を数に入れずに最高20個の原子を含むヒドロカルビル基;v)ハロゲン化されたiii)又はiv)の誘導体;或いはvi)架橋性X基で置換されたiii)又はiv)の誘導体であり、
Z’は、Z、共有結合又は脱離基の置換若しくは反応によって形成された末端基であり、
nは1又は2であり、
n’は0、1、又は2である]
を有する請求項10に記載のオリゴマー又はポリマー。
【請求項12】
X’が少なくとも1つの出現において、架橋性X基の付加重合によって形成された2価の架橋残基である請求項10又は11に記載の架橋ポリマー。
【請求項13】
X’が共役不飽和を含む請求項12に記載の架橋ポリマー。
【請求項14】
請求項1に記載の化合物を含む組成物を、オリゴマー又はポリマーを形成するのに十分な反応条件下で加熱する工程を含む請求項10に記載のオリゴマー又はポリマーの調製方法。
【請求項15】
請求項10記載のオリゴマー又はポリマー、或いは請求項14記載にしたがって調製できるポリマーのうち1つ又は複数を含むフィルム。
【請求項16】
1層又は複数層のポリマーフィルムを含み、そのうちの少なくとも1層が請求項15に記載のフィルムを含む電子素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−511636(P2007−511636A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−539542(P2006−539542)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/035221
【国際公開番号】WO2005/052027
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】