架橋性湿潤剤を有する多孔質ポリマー材料
相互連結された細孔を規定する透明なポリマーマトリックスおよび湿潤剤を含む、多孔質材料を提供する。湿潤剤の少なくとも一部はポリマーマトリックスと架橋される。多孔質ポリマー材料を形成するための方法もまた提供する。水、湿潤剤、モノマーおよびこのモノマーと共重合可能な界面活性剤を含む両連続マイクロエマルジョンを重合させて、相互連結された細孔を規定するポリマーを形成させる。湿潤剤は架橋性湿潤剤を含み、そのため、重合後、架橋性湿潤剤の少なくとも一部がポリマーと架橋される。湿潤剤はメタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)などのアクリル化ヒアルロン酸(AHA)を含んでもよい。湿潤剤はまた、ヒアルロン酸(HA)を含んでもよい。湿潤剤は結合しなかった部分を含んでもよく、これは材料から放出可能である。多孔質材料からコンタクトレンズを製造してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2006年11月17日に出願された米国特許仮出願第60/859,517号の恩典を主張し、この全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、湿潤剤を有する多孔質ポリマー材料、およびそのような材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ドライアイは多くの人が、特にコンタクトレンズを装着する場合に経験する一般的な状態である。ドライアイの状態に対処する公知の技術は、コンタクトレンズに湿潤剤を包含させることである。使用者がコンタクトレンズを装着する場合、湿潤剤が放出され、このため、コンタクトレンズの表面が濡れ、使用者の不快感が減少する。しかしながら、そのようなコンタクトレンズの有用な寿命はコンタクトレンズ中に包含させ、レンズから放出させることができる湿潤剤の量が制限されているため、限定される。さらに、いくつかの湿潤剤は水性環境で分解する傾向があり、このため、さらにその適用が制限される。このように、改善された性能を有し、または極めて長期間にわたり安定した性能を維持することができる湿潤剤を有する多孔質材料を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の1つの局面によれば、多孔質ポリマー材料を形成する方法が提供される。水、湿潤剤、モノマーおよびモノマーと共重合可能な界面活性剤を含む両連続マイクロエマルジョンを重合させ、相互連結された細孔を規定するポリマーを形成させる。湿潤剤は、架橋性湿潤剤を含み、そのため、重合後、架橋性湿潤剤の少なくとも一部がポリマーと架橋される。湿潤剤はヒアルロン酸を含んでもよい。架橋性湿潤剤はメタクリル化ヒアルロン酸などのアクリル化ヒアルロン酸であってもよい。重合後、湿潤剤のうちの結合しなかった部分は、ポリマーおよび細孔中に分散させてもよく、湿潤剤のうちの結合しなかった部分は材料から放出可能であり得る。湿潤剤はポリビニルピロリドンまたはデキストランを含んでもよい。モノマーはメチルメタクリレートまたは2-ヒドロキシエチルメタクリレートであってもよい。界面活性剤は双性イオン界面活性剤、例えば3-((11-アクリロイルオキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネートとしてもよい。マイクロエマルジョンは約0.1〜約0.5wt%、例えば約0.25〜約0.35wt%の湿潤剤を含んでもよい。マイクロエマルジョンは約15〜約50wt%の水、約5〜約40wt%のモノマー、および約10〜約50wt%の界面活性剤を含んでもよい。
【0005】
本発明の別の局面によれば、本明細書に記載した方法により形成された多孔質ポリマー材料が提供される。
【0006】
本発明のさらなる局面によれば、相互連結された細孔を規定する透明なポリマーマトリックス;および湿潤剤を含み、湿潤剤の少なくとも一部がポリマーマトリックスと架橋される、多孔質材料が提供される。湿潤剤はメタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)を含んでもよく、MeHAの少なくとも一部がポリマーマトリックスと架橋されてもよい。湿潤剤はアクリル化ヒアルロン酸(AHA)を含んでもよく、AHAの少なくとも一部がポリマーマトリックスと架橋されてもよい。湿潤剤は、ポリマーマトリックスおよび細孔の1つまたは両方に分散された結合しなかった部分を含んでもよく、湿潤剤のうちの結合しなかった部分は材料から放出可能である。湿潤剤は、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンまたはデキストランを含んでもよい。ポリマーマトリックスは重合メチルメタクリレートまたは2-ヒドロキシエチルメタクリレートを含んでもよい。材料は、約0.1〜約0.5wt%、例えば約0.25〜約0.35wt%の湿潤剤を含んでもよい。細孔は約60〜約120nmの細孔直径を有してもよい。
【0007】
本発明の別の局面によれば、本明細書で記載された多孔質ポリマー材料を含むコンタクトレンズが提供される。
【0008】
本発明の別の局面および特徴は、本発明の特定の態様の下記説明を、添付の図面と共に再検討することにより、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面では、ほんの一例として、本発明の態様を示す。
【0010】
【図1】本発明の態様の一例のコンタクトレンズの概略図である。
【図2】ヒアルロン酸(HA)の化学式である。
【図3】メタクリル化HA(MeHA)の化学式である。
【図4】コンタクトレンズ材料の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図5】コンタクトレンズ材料の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図6】コンタクトレンズ材料の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図7】MeHAを調製するための反応経路を示す。
【図8】鋳型を用いて、マイクロエマルジョンからコンタクトレンズ材料を形成するための方法を示す概略図である。
【図9】鋳型を用いて、マイクロエマルジョンからコンタクトレンズ材料を形成するための方法を示す概略図である。
【図10】鋳型を用いて、マイクロエマルジョンからコンタクトレンズ材料を形成するための方法を示す概略図である。
【図11】鋳型を用いて、マイクロエマルジョンからコンタクトレンズ材料を形成するための方法を示す概略図である。
【図12】界面活性剤を形成するために使用する様々な化合物の化学式である。
【図13】界面活性剤を形成するために使用する様々な化合物の化学式である。
【図14】界面活性剤を形成するために使用する様々な化合物の化学式である。
【図15】MeHA化合物の1H-NMRスペクトルを示す。
【図16】異なる試料化合物の測定した透明度を示す棒グラフである。
【図17】異なる試料化合物の放出プロファイルを示す直線図である。
【図18】異なる試料化合物の測定した弾性率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
図1で概略的に示されるように、本発明の例示的な態様は透明な多孔質ポリマー12から作製されたコンタクトレンズ10に関する。本明細書で使用されるように、「透明な」という用語は、コンタクトレンズまたは同様の装置に対し許容される透明度を広く説明し、例えば、コンタクトレンズまたは他の眼科用装置の製造において使用される他の材料に等しい、ポリマーを通る可視光の透過度を説明する。
【0012】
ポリマー12としては、1つまたは複数の重合されたモノマー、例えば、メチルメタクリレート(MMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸(AA)およびメタクリル酸(MA)などのモノカルボン酸、グリシジルメタクリレート(GMA)を含むエチレン不飽和モノマー、シリコーン型モノマー、などが挙げられる。
【0013】
湿潤剤(WA)14をコンタクトレンズ10に組み入れる。WA14の少なくとも一部がポリマー12と架橋され、これは本明細書では「架橋部分」と呼ばれる。本明細書で使用されるように、湿潤剤分子は、湿潤剤分子がポリマー12の2つまたはそれ以上の隣接する鎖と共有結合により結合された場合、ポリマー12と「架橋される」。WA14のいくらかはポリマー12およびポリマー12により規定される細孔の1つまたは両方に分散され得るが、ポリマー12とは架橋されず、そのようなWA14は本明細書では「結合しなかった部分」と呼ばれる。含まれる場合、WA14のうちの結合しなかった部分は、コンタクトレンズ10が目に置かれ、コンタクトレンズ10の表面16が目と接触した場合に、コンタクトレンズ10から目の中に放出可能である。WA14は1つまたは複数の湿潤剤を含んでもよい。特に、WA14の架橋部分は1つまたは複数の架橋性湿潤剤(CLWA)を含む。WA14のうちの結合しなかった部分は1つもしくは複数のCLWAまたは1つもしくは複数の非架橋性湿潤剤(n-CLWA)、またはCLWAおよびn-CLWAの混合物を含んでもよい。WA14の架橋部分および結合しなかった部分は、同じ湿潤剤からか、または異なる湿潤剤から形成させてもよい。
【0014】
WA14は任意のある特別な用途における制約を受ける、任意の湿潤剤を含んでもよい。例えば、コンタクトレンズ用途では、湿潤剤はヒトの目に適合するべきである。コンタクトレンズ用途では、適した湿潤剤としては、ヒアルロン酸(HA)、アクリル化HA(AHA)、メタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、または眼科用途に対し適している他の湿潤剤を挙げることができる。本明細書において、項目リストにおいて使用される場合、「または」という用語は、列挙した項目の各々がそれ自体可能な選択肢であること、列挙した項目の任意の2つまたはそれ以上の任意の組み合わせもまた可能な選択肢であるが、当業者により理解されるように、組み合わせのうちの2つの項目が相互排他的である場合などの、適していない任意の組み合わせは除かれることを示す。いくつかの用途では、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、グリセリン、キトサン、ポリビニルアルコール、などの湿潤剤が適している場合がある。
【0015】
HAはまた、ヒアルロネートまたはヒアルロナンと呼ばれる。HAはグルコサミノグリカンであり、ムコ多糖とも呼ばれ、これはD-グルコロン酸およびD-N-アセチルグルコサミンから構成され、交互のβ-1,4およびβ-1,3グルコシド結合を介して共に結合された二糖類のポリマーである。例示的なHAはヒアルロン酸ナトリウムである。
【0016】
例えば、適したHAは、図2で示した化学式を有してもよい。適したMeHAは図3で示した式を有してもよい。図2および3の両方において、数「n」は、分子が約10〜約100,000ダルトンの分子量を有するように選択してもよい。他の何らかの態様では、適したWAの分子量は約100と約10,000,000ダルトンとの間であってもよい。異なる態様では、分子量は特別な用途によって変動してもよく、上記範囲外であってもよい。
【0017】
PVPおよびデキストランは、周知の、商業的供給源から容易に入手可能な化合物である。約10〜約100,000ダルトンの分子量を有するPVPおよびデキストランが適している場合がある。異なる態様では、分子量は特別な用途によって、変動してもよく、上記範囲外であってもよい。
【0018】
CLWAはメタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)、または別のアクリル化HA(AHA)としてもよい。MeHA中のアクリレート基は、上記重合モノマーを架橋することができ、MeHA中のペンダントHA鎖は得られた材料に改善された濡れ性を提供する。他の適したCLWAもまた、使用してもよい。例えば、ポリマーを架橋することができる官能基(例えば、アクリレート基)を含み、得られた材料において表面親水性を提供することができる親水性官能基(例えば、ペンダントHA鎖)を含む、任意のWAが適している可能性がある。
【0019】
n-CLWAは、ヒアルロン酸(HA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、または本明細書で使用される特別なポリマーと架橋できない任意の他の適した湿潤剤としてもよい。
【0020】
1つの態様では、WA14はMeHAである。別の態様では,WA14はMeHAおよびHAの両方を含む。さらなる態様では、WA14はMeHAならびにPVPおよびデキストランのうちの1つを含む。さらに別の態様では、WA14はMeHAならびにn-CLWAの2つまたはそれ以上の混合物を含む。
【0021】
好都合なことに、MeHAなどのCLWAを組み入れることにより、驚くべき利点が提供される:架橋および結合していないWAは材料の表面濡れ性を改善し、湿潤剤として作用することができる。架橋MeHAはポリマーマトリックスに結合され、そこから容易に放出することができないとしても、レンズ表面で改善された湿潤性を提供し、これはHAなどの結合していない湿潤剤により提供される改善された湿潤性に匹敵する(例えば、表IIを参照されたい)。この結果の好都合な利点は、架橋MeHAが、細孔内の空間を占めることなく湿潤剤として作用することができることである。そのため、細孔は他の望ましい溶液、または追加の結合していない湿潤剤、例えばHA、追加のMeHA、PVP、デキストランなどを負荷するように都合よく完全に使用される。架橋MeHAが放出されないので、良好な濡れ性および酸素透過性がレンズの寿命全体の間維持できる。さらに、MeHAの再負荷が必要なくなるが、製造中または使用中のいずれかで追加の湿潤剤を負荷すると増強された性能が提供される可能性がある。
【0022】
架橋WAはまた、細孔内の表面特性も改善する可能性があり、これにより細孔の内表面で、または内表面付近で結合していないWAの移動度および他の輸送特性が影響を受ける可能性がある。このように、結合していないWAの放出プロファイルは架橋WAの存在により変動する場合がある。例えば、架橋MeHAはまた細孔の内表面の濡れ性を改善する場合があり、これにより、細孔内に最初存在する結合していないWAの放出、および周囲からの水溶液の再負荷の両方が促進される可能性がある。
【0023】
MeHAを別の適したCLWA、例えば別のAHAと置換しても、前の段落または本明細書の他の箇所で記載した利点および長所の1つまたは複数が依然として得られる可能性がある。
【0024】
特別なWAの選択は、特別な用途に依存する可能性がある。例えば、WAが他の材料と適合することが望ましい場合がある。さらに、WAは、水結合能力および粘弾性を増加させるように選択してもよく、そのため、湿潤剤はより多くの水分子に結合することができ、または、迅速に分散するが、極めて長い時間レンズまたは角膜表面にとどまることができる。WA14が、レンズ内に依然として分散されている場合、または目の中に放出された場合のいずれかで、有意の視覚のぼやけを引き起こさない、またはレンズの透明性を実質的に減少させないこともまた望ましい可能性がある。典型的には、分子量の高いWAは、より多くの水分子と結合することができ、より厚い涙液層を支持することができる。涙液層を安定化することができる湿潤剤はまた、いくつかの態様で有利である可能性がある。いくつかの態様では、HAはn-CLWAとして有利に使用してもよい。例えば、HAはより長い平均半減期を示す可能性があり、他のいくつかの湿潤剤よりも良好に前角膜涙液層を安定化することができる。
【0025】
好都合なことに、コンタクトレンズ10に組み入れたWA14はドライアイ症状またはアレルギー反応を軽減することができ、コンタクトレンズの装着をより快適なものとすることができる。WAのいくらかが架橋するために、極めて多量のWAをコンタクトレンズ材料内に組み入れることができ;良好な濡れ性および非常に高い放出速度での湿潤剤の持続放出を極めて長期間にわたり、例えば20日を超えて維持することができる。さらに、コンタクトレンズ材料は、架橋しない湿潤剤のみを含むポリマーコンタクトレンズ材料に比べ、改善された機械的強度を示す可能性がある。
【0026】
同様に好都合なことに、MeHAおよびHAを組み入れた場合、コンタクトレンズ材料はヒト角膜上皮細胞(HCEC)などの細胞に対し改善された生体適合性を示すことができる。例えば、HCECはHA/MeHA-負荷コンタクトレンズ材料の表面に付着し、成長することができることが示されている。
【0027】
図4〜6で示されているように、これらはポリマー12として使用するのに適したポリマー膜試料の内部構造の代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、ポリマーは相互連結された細長い細孔22(暗い部分として示されている)を規定するポリマーマトリックス20(明るい部分として示されている)を有する。細孔は、それらの少なくともいくつかが互いに連結または結合された場合に相互連絡され、1つまたは複数の連続ネットワークが形成される。細孔22は水およびWAの混合物を含む水性液体24で充填される(図4〜6の像では識別できない)。
【0028】
細孔22は円形または他の断面形状を有してもよく、異なるサイズを有してもよい。図4〜6で示した細孔は約60〜約120nmの細孔直径を有する。
【0029】
本明細書で使用されるように、細孔直径は細孔の断面の平均または有効直径を示す。円形でない断面の有効直径は、非円形断面の面積と同じ断面積を有する円形断面の直径に等しい。いくつかの態様では、例えば、ポリマーが膨潤性であり、細孔が水で充填される場合、細孔のサイズはポリマー内の含水量によって変化する可能性がある。ポリマーを乾燥させた場合、細孔のいくつかまたは全てが空気などのガスにより充填され、または部分的に充填される可能性がある。このようにポリマーはスポンジのように挙動する可能性がある。いくつかの態様では、ポリマーが乾燥状態にある場合、この場合、ポリマーの含水量が最小または最小付近であり、細孔直径は約10〜約100nmの範囲であってもよい。ポリマーが完全に膨潤した場合、細孔直径は約60〜約120nmの範囲であってもよい。
【0030】
細孔22はランダムに分布させてもよい。細孔22は多孔質材料全体に分布させてもよい。細孔22のいくつかは閉鎖細孔であってもよく、これは、他の細孔と結合または連結されておらず、またはポリマー表面に開かれていないことを意味する。下記でより詳細に記載しているように、使用によって、ポリマーは当業者により理解されるように、多かれ少なかれ、相互連結された細孔を有するように調製することができるので、細孔22全てが相互連絡されている必要はない。
【0031】
コンタクトレンズ材料に組み入れられたWA分子のいくらかはポリマーマトリックスと架橋される。最初に、水および結合していないWAをポリマーマトリックスおよび細孔内に分散させてもよい。使用中に、水および結合していないWAは、存在すれば、細孔およびポリマーマトリックスから除去または放出させてもよい。
【0032】
図4〜6で示した材料では、ポリマー材料中の水性液体含量は図4では約25wt%であり、図5では約30wt%であり、図6では約35wt%である。各々の場合において、水性液体は約1wt%のWAを含み、残りは主に水である。明確にするために、「wt%」は水性材料を含む材料の総重量に基づく重量パーセントを示す。
【0033】
図1について説明すると、WA14のうちの結合しなかった部分は、コンタクトレンズが目に置かれ、目と接触した場合に、コンタクトレンズ10から放出され得る。結合していないWA分子は相互連結された細孔内の液相を通して、ポリマー12の内側領域から表面領域に、例えばコンタクトレンズ10の表面16に拡散する可能性がある。ポリマー12内に分散された結合していないWA分子はまた、ポリマーマトリックスを通して移動または拡散した後、細孔に入り得る。
【0034】
WA14のうちの結合しなかった部分の放出は相互連結細孔および細孔内の水性液体により促進される。結合していないWAの放出速度は、細孔のサイズおよび相互連結度、ならびに細孔内の液体の特性を変化させることにより部分的に制御することができる。このように、ポリマー12は使用中に制御した様式で湿潤剤を送達させるために都合よく使用することができる。
【0035】
結合していないWA分子は、拡散などによりポリマー12または細孔内で、動き、または移動することができる。一般に、結合していないWA分子はランダムな方向に移動するが、濃度勾配が存在する場合、高濃度領域から低濃度領域までのWA分子の最終的な流れが存在する。WA分子は、細孔が液体で充填されている場合、ポリマー12内よりも細孔内でより速く移動する可能性がある。
【0036】
好都合なことに、湿潤剤の放出は、長期間の間、例えば、本発明の例示的な態様では20日を超える間、維持することができるが、これは、WA14が細孔およびポリマー12内に分散され、いくらかがポリマーマトリックスと架橋されるからである。最初、細孔内に分散されたWAは高い放出速度で急速に放出される。高い放出速度は、例えば、数日間続く場合がある。その後、最初に細孔内で自由に分散されたWA分子がすでにほとんど放出されると、放出速度は減少する。しかしながら、結合していない湿潤剤の放出は極めて長期間の間、より低い放出速度で続くことができ、これは、ポリマー内に分散された結合していないWAが徐々に細孔内に移動し、コンタクトレンズ10の内側領域からレンズ表面まで拡散することに起因する。
【0037】
好都合なことに、湿潤剤の一部がポリマーマトリックスと架橋すると、多孔質材料の強度も改善される可能性がある。
【0038】
コンタクトレンズ10を使用者が装着した場合、レンズ表面の改善された濡れ性により、ドライアイ症状、アレルギー反応、ならびにドライアイ状態およびコンタクトレンズの装着により生じる不快感が軽減できる。任意の結合していないWAが存在する場合、連続して目の中に放出させることができ、これによりさらにコンタクトレンズの性能が改善できる。
【0039】
1つの態様では、ポリマー12は、1つまたは複数の共重合性モノマー、モノマーの少なくとも1つと共重合可能な1つまたは複数の界面活性剤、水およびWAを含む両連続マイクロエマルジョンを重合することにより調製してもよく、そのため、得られたポリマーは水性液体で充填された相互連結細孔を有する。WAは重合前にマイクロエマルジョンに、例えば水性ドメインに分散させる。マイクロエマルジョンはまた、重合開始剤、例えば光開始剤を含んでもよい。好都合なことに、WAの少なくとも一部はまた、架橋剤として機能する。このように、いくつかの態様では、追加の架橋剤が必要ない。別の態様では、追加の架橋剤をマイクロエマルジョンに含有させてもよい。
【0040】
明確にするために、「マイクロエマルジョン」は1つの液相の別の液相への熱力学的に安定な分散を示す。マイクロエマルジョンは界面活性剤の界面膜により安定化させてもよい。2つの液相のうちの1つは親水性または疎油性(例えば水)であり、もう一方は疎水性または親油性(例えば油)である。典型的には、マイクロエマルジョン中の液滴またはドメイン直径は約100nmまたはそれ以下であり、したがってマイクロエマルジョンは透明である。両連続マイクロエマルジョンでは、2つの液相の各々が連続している。
【0041】
WAはCLWAを含み、これはMeHA、例えば、図3で示したものであってもよい。図3で示したMeHAは、図7で示した反応経路により調製することができる。図7によるMeHAの製造は当業者に公知である。簡単に説明すると、アタクチックポリメチルメタクリレート(aPMMA)の第1級アミン基は、カップリング剤として1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]-カルボジイミド塩酸塩(EDC)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を使用することにより、ヒアルロン酸中のカルボン酸にコンジュゲートされる。MeHAの調製はまた、M.A. Princz et al., “Release of wetting agents from Nelfilcon contact lenses”,Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2005;46:E-Abstract 907(以後、「Princz」);およびM.R., Kim and T.G. Park, “Temperature-responsive and degradable hyaluronic acid/Pluronic composite hydrogels for controlled release of human growth hormone,” Journal of Controlled Release, 2002, vol.80, pp.69〜77(9)などの文献において記載されており、これらの各々の関連内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0042】
WAはまた、HA、例えば、図2で示した化学式を有するものを含んでもよく、これはChisso Corporation of Japanなどの商業的化学物質提供者から入手できる。HAはまた、例えば、P.A.Band, “Hyaluronan derivatives: chemistry and clinical applications”,in The Chemistry, Biology and Medical Applications of Hyaluronan and Its Derivatives, T.C. Laurent ed., Portland Press Ltd., London, UK, 1998, pp.33-42において開示された技術に基づき調製することができるが、この関連内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0043】
上記のように、PVPおよびデキストランは商業的供給源から容易に入手できる一般的な化学物質である。
【0044】
両連続マイクロエマルジョンを形成するためのモノマーは当業者に公知の任意の適したモノマーとすることができ、これを別のモノマーと共重合させてコポリマーを形成させることができる。モノマーは界面活性剤などの別のモノマーと共重合可能であるが、モノマーはそれ自体と重合可能であってもよい。適した両連続マイクロエマルジョンを調製するために使用してもよいモノマーの種類および量は当業者に公知である。例示的なモノマーは、MMA、HEMA、2-ヒドロキシエチルアクリレート、AAおよびMAなどのモノカルボン酸、GMAを含むエチレン不飽和モノマー、ならびにシリコーン型モノマーである。これらのモノマーの適した組み合わせもまた、使用することができる。
【0045】
重合性界面活性剤は、それ自体と、または他のモノマー化合物と重合し、ポリマーを形成することができる。混合のための界面活性剤は、マイクロエマルジョン中のモノマーの少なくとも1つと共重合することができる任意の適した界面活性剤とすることができる。認識され得るように、界面活性剤がポリマー中に共重合された場合、重合後ポリマーから界面活性剤を分離する必要はない。これは、ポリマー形成過程が簡略化されるので有利である可能性がある。
【0046】
1つの態様では、界面活性剤は双性イオン界面活性剤である。いくつかの用途では、双性イオン界面活性剤が有利である可能性がある。例えば、双性イオン界面活性剤を含有させると、マイクロエマルジョン中のpHを変動させることによりWA放出プロファイルを調整することができると予測される。双性イオン界面活性剤は3-((11-アクリロイルオキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネート(AIPSA)、またはSO3-(CH2)m+NCHCHCHN(CH2)nVであってもよく、式中、mは1〜20の範囲の整数であり、nは6〜20の範囲の整数であり、xは10〜110の範囲の整数であり、Vは(メチル)アクリレートまたは他の共重合可能な不飽和基である。
【0047】
異なる態様では、他の適した界面活性剤、例えばChowにおいて開示されているものを使用してもよい。いくつかの態様では、非イオンまたはアニオン界面活性剤を使用してもよい。例えば、適した非イオン界面活性剤はPEO(ポリエチレンオキシド)基(例えば約15〜約110)を含んでもよく、適したアニオン界面活性剤はスルホネートおよびカルボキシレート基を含んでもよい。
【0048】
AIPSAは下記のように合成してもよい。11-ヒドロキシウンデシルイミダゾールを、11-ブロモウンデカノールをイミダゾールとSN2反応機構により反応させることにより形成し、その後、前駆体中間体を1,3-プロパン-スルトンを用いてスルホン化に供し、対応するスルホネート(3-((11-ヒドロキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネート)とする。最後に、アクリレート基を前駆体スルホネートに添加し、分子の「尾(tail)」に位置する重合性基を有するAIPSAを生成させる。AIPSAの調製はまた、L.Liu et al.,“Wetting agent release from contact lenses”, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2005; 46:E-Abstract 908(以後、「Liu」)などの文献において記載されており、この関連内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0049】
本明細書で使用されるように、レンズ材料の形成において使用される成分化合物はベース化合物およびその適した塩または誘導体の両方を含む。例えば、MeHAは図3で示した化合物、およびその化合物の任意の適した塩または誘導体の両方であってもよい。適した誘導体は、ベース化合物の特性官能基を保持し、このため、ベース化合物の同じ特性官能性を提供するベース化合物の誘導体である。例えば、MeHAの適した誘導体は、ポリマーと架橋するための官能基および表面濡れ性を改善するためのHA鎖を保持するものであってもよい。
【0050】
マイクロエマルジョンの調製は一般に当技術分野において公知である。例えば、同様の両連続マイクロエマルジョンを調製するための例示的な手順は、2006年9月2日に公開された、ChowらへのPCT特許出願公開WO2006/014138号(以後、「Chow」)において記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で記載した変更点を用い、本発明の局面に従って、コンタクトレンズ10の膜材料はChowにおいて記載された手順に従い調製してもよい。
【0051】
1つの態様では、両連続マイクロエマルジョンは下記のように調製してもよい。マイクロエマルジョンのための成分の混合物を分散させ、混合物中で異なる相の微小滴を生成するための超音波処理、ボルテックス、または他の撹拌技術などの標準技術によりマイクロエマルジョンを形成させてもよい。また、混合物を、ナノメートルスケールの細孔を有するフィルタを通過させ、微細な滴を生成させてもよい。様々な成分の割合および界面活性剤の親水性-親油性値によって、滴は油で膨潤し、水中に分散され(正またはO/Wマイクロエマルジョンと呼ばれる)、または水で膨潤するが油中に分散され(逆またはW/Oエマルジョンと呼ばれる)、またはマイクロエマルジョンは両連続性とすることができる。この態様では、成分およびそれらの割合は、ポリマー12を調製するために両連続エマルジョンが形成されるように選択される。
【0052】
両連続マイクロエマルジョンの構造はChowにおいて記載されたものと同様であってもよい。マイクロエマルジョン中には、モノマーを含む油ドメインおよび水性液体を含む水性ドメインが存在する。これらのドメインはランダムに分布され、それぞれ相互連結され、三次元全てにおいて延在している。油ドメインが重合された場合、水性ドメインが存在すると、水性ドメインに存在した水性液体で充填された相互連結細孔が得られる。WAは最初に水性液体中に分散され、CLWAの少なくともいくらかが重合中にポリマーと架橋される。
【0053】
ある用途のための特別なモノマーおよび界面活性剤の選択および重量比は用途に依存しうる。一般に、得られたポリマーが、ポリマーが使用される環境に適し、環境と適合し、所望の特性を有するように選択されるべきである。
【0054】
マイクロエマルジョン中の水は純水または水系液体とすることができる。記載したように、WAは最初、水に分散または溶解されてもよい。水は任意で特異的な特性を有する様々な他の添加剤を含んでもよい。そのような添加剤は、得られたポリマーにおいて1つまたは複数の所望の特性を達成するために選択することができ、薬物、タンパク質、酵素、フィラー、無機電解質、pH調整物質、などのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0055】
当業者には理解されるように、マイクロエマルジョンの成分が適した比率にあり、滴またはドメインが適当なサイズを有する場合、ナノ多孔性の、透明なポリマーマトリックスを得ることができる。当業者に公知のように、両連続マイクロエマルジョンの形成に適した成分の適当な割合を決定するために、モノマー、水および界面活性剤の三成分相図を用意してもよい。単相マイクロエマルジョンに対応する図上の領域を同定してもよく、成分の割合を、同定した領域内に含まれるように選択してもよい。当業者であれば、得られたポリマーにおいてある所望の特性を達成するために、相図にしたがい、割合を調整することができる。さらに、両連続マイクロエマルジョンの形成は、当業者に公知の技術を用いて確認することができる。例えば、混合物の導電率は、マイクロエマルジョンが両連続性である場合実質的に増加する可能性がある。混合物の導電率は、0.1M塩化ナトリウム溶液を混合物中に漸増させた後、導電率計を用いて測定してもよい。
【0056】
成分の割合をそれぞれ、水性液体(水およびWAを含む)では約15〜約50wt%、モノマーでは約5〜約40wt%、および界面活性剤では約10〜約50wt%とした場合、適した両連続マイクロエマルジョンを形成させることができる。水性液体は主に水を含んでもよい。マイクロエマルジョン中のWA含量は約0.1〜約0.5wt%まで、例えば約0.25〜約0.35wt%まで変動してもよい。1つの態様では、MeHAをCLWAとして使用し、MeHA含量は約0.25wt%であってもよい。MeHAおよびHAの混合物もまた使用してもよく、総量が約0.25〜0.35wt%である。WAは水性液体に分散または溶解させてもよい。
【0057】
当業者であれば、どのようにして異なるモノマーおよび界面活性剤を異なる比率で組み合わせて、得られたポリマーの様々な特性に対し所望の効果を達成するか、例えば得られたポリマーの機械的強度または親水性を改善するかを理解するであろう。
【0058】
ポリマーはヒト細胞およびヒトの目に安全で、生体適合性でなければならない。ポリマーは涙液のガス(例えば、O2およびCO2)、様々な塩、栄養素、水および様々な他の成分などの流体に対し透過性であることが望ましい。ポリマー内に分配されたナノ細孔の存在によりガス、分子、栄養素およびミネラルの目または周囲への輸送が促進される。本発明のいくつかの態様による例示的なポリマーは、負荷された湿潤剤または他の流体材料の制御された、長期間の送達を提供することができることが認識される。
【0059】
マイクロエマルジョンに含まれるWA(およびCLWA)の量は、様々な因子に基づき決定することができる。一般に、1つの因子は、WA(CLWA)の濃度が、所望の表面濡れ性、および任意で、使用中の結合していない湿潤剤の望ましい放出速度を提供するのに十分高くなければならないことである。一般に、負荷が高いと放出速度が高くなる。得られたポリマー材料の透明度および清澄度は別の因子である。非常に高いWA負荷は、マイクロエマルジョン前駆体の相平衡に影響する場合があり、得られたポリマー材料は十分透明でない場合がある。試験により、いくつかの態様では、約0.35wt%までのHAまたはMeHAがマイクロエマルジョンに含まれる場合に透明なポリマーを調製することができることが示される。さらなる因子は得られたポリマーの機械的特性である。実験から、CLWAの濃度はポリマーの機械的特性に影響する可能性があることが示される。いくつかの態様では、CLWAの濃度が約0.1〜約0.35wt%である場合に、改善された機械的特性を達成することができる。マイクロエマルジョンを重合させ、透明な多孔質ポリマーを形成させるが、ここで、WAはポリマーおよび細孔内に分散され、CLWA分子の少なくともいくらかはポリマーと架橋される。
【0060】
マイクロエマルジョンは当業者に公知の標準技術を用いて重合させてもよい。例えば、熱、触媒添加、マイクロエマルジョンの照射、またはフリーラジカルのマイクロエマルジョン中への導入により重合させてもよい。選択した重合法はマイクロエマルジョンの成分の性質に依存する。
【0061】
マイクロエマルジョンの重合は触媒の使用を伴ってもよい。触媒はモノマーおよび界面活性剤の重合を促進する任意の触媒または重合開始剤としてもよい。選択した特定の触媒は、特別なモノマー、および使用した重合性界面活性剤または重合法に依存してもよい。例えば、重合は、光開始剤を触媒として使用した場合、マイクロエマルジョンを紫外線(UV)照射に供することにより達成することができる。例示的な光開始剤としては、2.2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)およびジベンジルケトンが挙げられる。レドックス開始剤もまた、使用してもよい。例示的なレドックス開始剤としては、過硫酸アンモニウムおよびN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が挙げられる。光開始剤およびレドックス開始剤の組み合わせもまた使用してもよい。この点で、混合物中に開始剤を含めることは有利である可能性がある。重合開始剤はマイクロエマルジョンの約0.1wt%〜約0.4wt%としてもよい。
【0062】
好都合なことに、CLWAはポリマーを架橋する。しかしながら、得られたポリマー中でのポリマー分子間の架橋をさらに促進するために、追加の架橋剤を混合物に添加してもよい。適した架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレートおよびジエチレングリコールジアクリレート、などが挙げられる。一般に、架橋されるポリマー分子が多いほど、分散させた湿潤剤がポリマーを通って拡散または移動することがより困難になり、これにより湿潤剤の放出がより遅くなる。そのため、架橋剤の量を、放出速度を調整するように選択することができる。さらに、架橋剤の全体濃度を増加させると、得られたポリマーの機械的強度を改善することができる。
【0063】
上記のように、MeHAなどのCLWAはそれ自体架橋剤であり、そのようなものとして、別の架橋剤を含む必要はない。CLWAは湿潤剤および架橋剤の両方として機能することができるので、別々の架橋剤および湿潤剤を使用する場合に比べ、CLWAを使用することは有利であり得る。さらに、CLWAを含有させると柔軟性が提供される可能性があり、添加する追加の架橋剤の量を、ポリマー分子の全体の架橋を減少させずに低減させることができるので有利である可能性がある。
【0064】
マイクロエマルジョンは重合前に所望の最終形状およびサイズに形成させてもよい。1つの態様では、コンタクトレンズ10は図8〜11に示した方法により、マイクロエマルジョンから形成させてもよい。
【0065】
図8に示されるように、鋳型24を提供するが、これは雄部分26および雌部分28を含む。雄部分26および雌部分28は着脱可能に結合させることができる。雄部分26の内表面30は凸形状であり、雌部分28の内表面32はこれに応じて凹形状であり、そのため、雄および雌部分が共に結合された場合、内表面30および32はコンタクトレンズに対し所望のプロファイルを規定する。
【0066】
図9に示されるように、調製したマイクロエマルジョン34の適した量を最初に雌部分28に入れる。図10に示されるように、雄部分26をその後、雌部分28と結合させ、マイクロエマルジョン34を圧縮し、内表面30および32により規定される所望の形状36とする。
【0067】
あるいは、雄部分および雌部分26および28を最初に結合させ、その後に、マイクロエマルジョンを鋳型の空洞に注入してもよい。このために、注入口(図示せず)を設けてもよい。
【0068】
その後、鋳型24内のマイクロエマルジョン36を重合反応に供する。重合は、紫外線(UV)照射などの照射により実施してもよい。モノマーをその後重合させ、上記のようにポリマー材料を形成させる。
【0069】
図11に示されるように、得られたポリマーは所望の形状を有するコンタクトレンズ38を形成する。コンタクトレンズ38は重合後、鋳型24から取り出してもよい。
【0070】
コンタクトレンズ38を水ですすぎ、水と平衡化させ、未反応モノマーおよびポリマー中に組み入れられていないWAを除去してもよい。コンタクトレンズ38の細孔内に分散された少量のWAはすすいでいる間に失われる場合があるが、失われる量はすすぎ時間および程度を制限することにより制限することができる。さらに、すすぎ中に失われたWAを補償するために、マイクロエマルジョン中のWAの初期濃度を、コンタクトレンズ38中のWAの最終濃度が所望の放出速度を提供するように選択してもよい。
【0071】
任意で、すすいだポリマー材料を貯蔵または将来の使用の準備のために、乾燥させ、滅菌してもよい。乾燥および滅菌はどちらも、当業者に公知の任意の適した様式で達成することができる。いくつかの態様では、乾燥および滅菌のどちらも低温で、例えば、エチレンオキシドガスまたはUV照射を用いて実施することができ、そのため、ポリマー材料に分散されたWAに悪影響を及ぼすことはない。
【0072】
コンタクトレンズ10または38中の結合していないWAは、ポリマーが目と接触した場合、ポリマーから長期間にわたって放出させることができる。WAの放出速度は、適当なモノマーおよびその比例量を選択することにより制御することができる。
【0073】
コンタクトレンズ10または38は視力矯正、目の色の変更のために、または糖尿病患者用コンタクトレンズとして使用することができる。
【0074】
好都合なことに、本発明の様々な態様によるコンタクトレンズ材料は、ヒト皮膚線維芽細胞と適合し、機械的に強いものとすることができ、目に入れるためのコンタクトレンズを製造するのに有利に使用することができる。
【0075】
上記ポリマー材料は、コンタクトレンズ用途で有用であるだけでなく、他の用途でも有用である。例えば、本明細書で説明した例示的な材料および方法、または同様の材料もしくは方法を使用して、処方レンズ、3-D(次元)組織工学スキャホールド、人工角膜などの用途で使用するための親水性のナノ多孔質材料を調製してもよい。
【0076】
これらのポリマー材料は様々な所望の物理、化学、および生物化学的特性を有することができる。例示のために、ポリマー材料試料の調製および特性を下記に記載する。
【0077】
実施例
実施例I(成分材料の調製)
実施例で使用した材料は下記のように入手し、または調製した。
【0078】
ヒアルロン酸ナトリウム(HA)はChisso Corporation of Japanから入手した。
【0079】
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メチルメタクリレート(MMA)およびエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)はAldrich(商標)から入手し、さらに、使用前に減圧下で精製した。
【0080】
2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)はAldrich(商標)から入手し、受け取ったまま使用した。
【0081】
マイクロエマルジョン試料全てにおいて使用した水は脱イオンし、蒸留した。
【0082】
重合性双性イオン界面活性剤、3-((11-アクリロイルオキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネート(AIPSA)を、Liuにおいて記載されている手順に従い、下記のように合成した。
【0083】
図12に示した式を有する、11-ヒドロキシウンデシルイミダゾール(HUI)を下記のように調製した。エタノール200mlに溶解した11-ブロモウンデカン-1-オール(25.0g、0.1mol)、イミダゾール(0.08mol)および水酸化ナトリウムペレット4g(水6mlに溶解)の溶液を6時間、還流させた。溶液を室温まで冷却すると、沈殿を濾過して除去し、エタノール溶媒を濾液から蒸発させた。エタノールを蒸発させた後、残渣をエーテルに溶解し、水で2度洗浄し、硫酸マグネシウムにより一晩中乾燥させた。濾過後、濾液を冷却し、白色生成物を溶液から沈殿させた。白色固体生成物が得られ、これを真空で一定重量となるまで乾燥させた。
【0084】
図13に示した式を有する、3-((11-ヒドロキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネート(HUIPS)を下記のように調製した。乾燥アセトニトリル200mlに溶解した11-ヒドロキシウンデシルイミダゾール(0.1mol)の磁気撹拌溶液に、1,3-プロパン-スルトン(0.1mol)を30分にわたり滴下した。溶液を1日、窒素雰囲気下で還流させた。生成物が反応混合物から析出し、これを濾過により取り出した。その後、生成物を真空オーブンで1日、周囲温度で乾燥させた。
【0085】
図14で示した式を有する、3-((11-アクリロイルオキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネート(AIPSA)をその後、下記のように調製した。約0℃の乾燥アセトニトリル(200ml)に溶解したHUIPS(0.1mol)の磁気撹拌溶液に塩化アクリロイル(0.3mol)を徐々に添加することにより、混合物を形成させた。溶液はN2ガスでパージした。混合物をさらに室温で約3日間反応させた。その後、混合物を濾過し、過剰の塩化アクリロイルおよびアセトニトリルをロータリーエバポレータで除去した。残渣を蒸留クロロホルムに溶解し、2度飽和重炭酸ナトリウム溶液、続いて飽和塩類溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムより一晩中乾燥させた。無水エーテル中で粗生成物を再沈殿させることにより、AIPSAの純粋生成物が得られた。沈殿を濾過し、真空オーブンで乾燥させた。
【0086】
そのように調製した、前駆物質中間体および界面活性剤の1H NMRスペクトルを測定し、下記のように割り当てた。
【0087】
実施例II(MeHAの合成)
下記のように、Princzで開示された手順に従い、図7で示した反応経路に基づきMeHAを合成した。
【0088】
ヒアルロン酸ナトリウム(500mg、2.85310mmol)およびaPMMA(472mg、2.64mmole、ヒアルロン酸ナトリウム中の-COOHに対し2倍モル過剰)を脱イオン水(pH6.8)150mlに溶解した。ジメトキシスルホキシドおよび水の1:1混合物10mlに溶解したEDC(252.8mg、1.32)およびHOBt(178mg、1.32mmol)を上記溶液に添加した。ヒアルロン酸ナトリウム/EDC/HOBt中の-COOHの化学量論比は1:1:1であった。結合反応物が、1日間溶液中で発生した。反応生成物、aPMMA誘導HAを脱イオンH2Oに対し12時間透析し(Mwカットオフ10000)、その後凍結乾燥させた。HAのaPMMAによる修飾%を、図15に示した1H-NMRスペクトルを分析することにより決定した。
【0089】
HAの置換度を、aPMMA中のビニル基の2つのプロトン(=CH2、5.5、5.8ppm)とHAのメトキシ基中の3つのプロトン(-C=OCH3、2.1ppm)間の相対ピーク強度比を比較することにより計算した。置換度は約30〜約33%の間にあることがわかった。
【0090】
実施例III(マイクロエマルジョン試料)
マイクロエマルジョン試料I〜IXを調製した。マイクロエマルジョン試料のための前駆体溶液の組成を表Iに列挙する。各試料は、様々な濃度のモノマー(HEMA/MMA)、界面活性剤AIPSAならびに水および任意でHAまたはMeHAを含む水性内容物を有する、両連続マイクロエマルジョンを含んだ。マイクロエマルジョンから形成させ、得られた膜の機械的強度を増加させるために、架橋剤、EGDMAを各前駆体溶液に、重合性モノマー全ての総重量に基づき約5wt%の量で添加した。約1wt%のDMPAもまた、各試料において、重合性モノマー全ての総重量に基づき添加した。
【0091】
(表I)マイクロエマルジョン試料のための前駆体溶液
【0092】
その後、膜試料をこれらのマイクロエマルジョン試料から下記のように形成させた。
【0093】
各試料に対し、約1gのマイクロエマルジョンをネジ蓋付きチューブで調製した。マイクロエマルジョンを20秒間超音波処理し、その成分の混合中に形成した小さな泡を除去した。ゲル状半重合マイクロエマルジョンをその後、前に洗浄し、室温で乾燥させておいた2つの20cm×20cmのガラスプレート上に広げさせ、その間に挟ませた。約35℃の光反応器チャンバ内で約2時間、ガラスプレート間のマイクロエマルジョンをさらなる重合に供した後、膜を形成させた。列挙した全ての試料では、形成した膜は透明であり、高い機械的強度を有した。
【0094】
膜試料の形態はSEM写真で確認し、そのいくつかを図4〜6に示す。これらの図から見られるように、材料は両連続のナノ多孔質ネットワークを有する。推定平均細孔直径は、マイクロエマルジョン配合物中の初期含水量によって、約60〜約120nmの範囲である。35wt%の含水量で形成させた試料中の細孔はより含水量の少ないもので形成させたものよりも極めて大きかった。
【0095】
試料材料の透明度もまた測定し、結果を図16にまとめて示したが、これはまた、WAを含まない他の材料とHA/MeHA負荷膜の透明度を比較している。結果から、HA/MeHA負荷膜は自然の角膜または市販のコンタクトレンズの透明度と同様の透明度を有したことが示される。
【0096】
実施例IV(インビトロHA放出)
HA負荷膜試料からのHAの放出を測定した。
【0097】
HAを有する各マイクロエマルジョン試料から形成した膜試料を、PBS緩衝液を含む3つの別個の5mlバイアルに入れた。バイアルを50rpmの回転速度の、34℃のインキュベータに入れた。1時間の間隔毎に、溶液の1mlの部分をUV-VIS分光測光アッセイのためにバイアルから取り出した。取り出す毎に、1mlの新たなPBS緩衝液をバイアルに添加し、5mlの総体積を維持した。この過程を、さらに放出されたWAが検出できなくなるまで続けた。
【0098】
図17は時間の関数としての、インビトロHA放出の測定結果を示す。示した結果から、累積HA放出特性が示される。より高いHAおよび含水量を有する膜試料は、極めて速い放出を示した。各試料に対する放出速度は4日以内にプラトーに到達し、その後は、10〜20日間、放出速度が極めて低いが、非常に安定な速度で維持された。この放出プロファイルは、レンズ配合物中の初期含水量がより高いレンズ材料のより高いHA濃度およびより大きな細孔サイズによる可能性があった。放出速度はまた、マイクロエマルジョン配合物中のHA含量の増加と共に増加した。
【0099】
実施例V(動的機械分析)
膜試料の貯蔵弾性率およびガラス転移温度を3度、動的機械分析計(Dynamic Mechanical Analyzer、TA Instruments、DMA2980)で測定した。測定結果のいくつかを図18に示す。
【0100】
動的機械分析は、異なる水およびHA/MeHA含量を有する膜試料の貯蔵弾性率に関する変化を示した。弾性率は、レンズ材料のなじみ性に影響する可能性があり、このために、特別な材料から形成されたコンタクトレンズを装着する使用者の快適さに影響を与える可能性がある。コンタクトレンズ材料の強度は、コンタクトレンズの取り扱いおよび引き裂き特性に影響する。図18に示されるように、同じ初期含水量を有する場合、HA/MeHA負荷試料は、HAまたはMeHA負荷のない試料よりも高い弾性率を示した。試験した試料のうち、MeHA負荷試料が相対的により高い弾性率を示した。さらに、試験した範囲内では、含水量が増加した場合、貯蔵弾性率が増加した。
【0101】
実施例VI(接触角測定)
膜試料の動的水接触角を、恒温水浴を備えたKruss(商標)張力計(K14、KRUSS、ドイツ)を用いて測定した。WAを負荷した試料を、試料中の結合していない湿潤剤を除去する前に測定した。測定を3度繰り返し、結果を平均し、表IIにまとめて示した。
【0102】
表面接触角を使用して、レンズ材料の表面湿潤性を評価した。表面濡れ性の評価基準は、その前進接触角(θA)である。別の有用な評価基準は、前進接触角と後退接触角(θR)の間の差である、接触角のヒステリシスであった。表IIで示されるように、HA/MeHA負荷のない試料に比べHA/MeHAを含む試料は、より小さい接触角およびヒステリシスの両方を示した。これから、HA/MeHA負荷材料は増強した親水性を有することが示される。さらに、MeHA負荷材料は基も低いヒステリシスを示した。対照的に、WAを有さない試料材料では、非常に高いヒステリシスを示した(40°を超える)。
【0103】
(表II)動的水接触角
【0104】
実施例VII(細胞培養および生存率アッセイ)
ヒト角膜上皮細胞(HCEC)(Cascade Biologics, USA)を膜試料上、添加EpiLife(商標)培地(ヒト角膜成長サプリメント、抗生物質および抗真菌剤)中で培養し、細胞が新しい培養条件に適合するまで、37℃の5% CO2を含む加湿雰囲気中で、インキュベートした。細胞の形態を、カメラ(Nikon(商標)4500)を備えた位相差顕微鏡(AVIOVERT(商標)、ZEISS、ドイツ)下でモニタし、写真撮影した。初代ヒト角膜上皮細胞を試料上に、培地中15,000細胞/mlの密度で播種した。膜に付着した生存細胞数をDAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)染色を用いることにより分析した。
【0105】
培養HCECの形態を、レンズ材料試料上での培養4日後に研究した。DAPI染色および蛍光性量子ドットを使用して生存細胞の核および細胞質を標識した。試料を画像化し、画像から、HCEC細胞が膜試料に付着し、膜表面を被覆したことが示された。これにより、試料材料が、さらに処理しなくても細胞成長のための生物活性膜として機能することができたことが示される。これは、従来のポリマー膜は細胞外マトリックス(ECM)表面コーティング無しで細胞付着を示すことができなかったので、人工角膜のために使用される現存するポリマーに比べると改善されていることを示した。
【0106】
実施例VIII(コンタクトレンズ試料)
コンタクトレンズ試料を、対応するマイクロエマルジョン配合物70μlを図10に示した鋳型に注入することにより、マイクロエマルジョン試料から調製した。気泡が鋳型中にトラップされないように注意した。マイクロエマルジョンを5〜15°mW/cm2の間で動作するUVランプ下、約30分間37℃でUV硬化させた。硬化後、硬化レンズ材料を鋳型から取り出した。硬化材料は重合されており、透明であった。レンズは角膜形状を有した。レンズをその後、レンズが膨潤して平衡に達するまで緩衝塩類溶液に浸漬させた。
【0107】
レンズ試料の特性を測定し、結果のいくらかを表IIIにまとめた。
【0108】
(表III)コンタクトレンズ試料の特性
【0109】
レンズまたはレンズ材料試料の酸素透過性(Dk)を、親水性コンタクトレンズのDk値を測定するためのOptiPerm(サービスマーク)技術を用いて決定した。各試料材料に対し、5つの異なる試料を用いて測定を行い、平均結果をさらなる分析のために使用した。結果から、HAまたはMeHAを含むレンズ材料試料のDk値は、HAを含まないレンズ材料試料よりも高く、このために良好であることが示された。Dk値はまた、ある範囲内の最終レンズ配合物中のWA濃度と共に変動した。WA濃度のあるしきい値を超えると、Dk値は配合物中の絶対含水量により制御された。このように、適した量のHAまたはMeHAを配合物に添加すると、得られたレンズ材料の酸素透過性特性を調整することができることが示された。
【0110】
平衡含水量(EWC)を測定するために、レンズ材料試料(膜)を真空中、室温で、一定重量が得られるまで完全に乾燥させた。乾燥膜を30℃の水に、膨潤平衡に到達するまで浸漬させた。膨潤膜を軽く拭き取り、過剰の表面エタノールまたは水を除去し、その後、重さを量った。EWCは下記のように計算したパーセンテージとして表した。
式中、Wsは膨潤平衡時の試料重量であり、Wは乾燥試料重量である。結果から、EWCは試料配合物中の水およびWA含量の両方と共に増加したことが示される。MeHA/HAを有する試料材料は、MeHA/HAを含まない、他の試験した材料に比べ親水性が増大した。膜試料のいくつかが示した高い吸水能力はいくつかの因子によるものであると予測される。第1に、これらの膜試料は、その高い親水性のために水に対し高い親和力を有する可能性がある。第2に、膜試料は、マイクロエマルジョン配合物中の含水量が増加した場合、増加した多孔度を有した。
【0111】
膜試料の膨張係数はまた、前駆体マイクロエマルジョンの含水量の増加と共に増加したが、これは、膜細孔中にすでに存在した水の他に、重合膜の親水性特性により、より多くの水が吸収できたからである。膨張係数は、レンズのサイズ、例えば直径を測定することにより測定してもよい。
【0112】
ポリビニルピロリドン(PVP)またはデキストランなどの他の湿潤剤は、HAおよびMeHAが示す改善点および利点のいくつかを同様に示すと予測される。しかしながら、HAまたはMeHAはそのような他の湿潤剤よりもさらなる利点を提供する可能性がある。例えば、HAまたはMeHAは、残渣形成、ぼやけまたは摩擦を引き起こさずに、極めて高い粘度を維持することができる。さらに、MeHA/HAは細胞増殖、細胞分化、細胞移動、などを増強するのに関与することができる。好都合なことに、MeHAが本発明の態様のポリマー内で架橋されると、湿潤剤の分解が、WAが架橋されていないポリマーの場合に比べて減少する。このように、コンタクトレンズ中でのWAの安定性が改善され、性能が長期間にわたり非常に安定に維持できる。対照的に、HAなどのいくつかの湿潤剤は、水溶液中で溶解された場合、典型的には極めて迅速に分解し、これがこれらの湿潤剤の適用を制限する公知の因子である。
【0113】
上記で明確に言及されていない、本明細書で記載した態様の別の特徴、利益および利点はこの記載および図面から、当業者であれば理解することができる。
【0114】
当然、上記態様は、一例にすぎず、いかなる意味においても制限するものではない。記載した態様は、部品の形態、配列、動作の詳細および順序の多くの改変を受けやすい。むしろ、本発明はそのような改変全てを、特許請求の範囲により規定される、その範囲内に含めるものである。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2006年11月17日に出願された米国特許仮出願第60/859,517号の恩典を主張し、この全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、湿潤剤を有する多孔質ポリマー材料、およびそのような材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
ドライアイは多くの人が、特にコンタクトレンズを装着する場合に経験する一般的な状態である。ドライアイの状態に対処する公知の技術は、コンタクトレンズに湿潤剤を包含させることである。使用者がコンタクトレンズを装着する場合、湿潤剤が放出され、このため、コンタクトレンズの表面が濡れ、使用者の不快感が減少する。しかしながら、そのようなコンタクトレンズの有用な寿命はコンタクトレンズ中に包含させ、レンズから放出させることができる湿潤剤の量が制限されているため、限定される。さらに、いくつかの湿潤剤は水性環境で分解する傾向があり、このため、さらにその適用が制限される。このように、改善された性能を有し、または極めて長期間にわたり安定した性能を維持することができる湿潤剤を有する多孔質材料を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の1つの局面によれば、多孔質ポリマー材料を形成する方法が提供される。水、湿潤剤、モノマーおよびモノマーと共重合可能な界面活性剤を含む両連続マイクロエマルジョンを重合させ、相互連結された細孔を規定するポリマーを形成させる。湿潤剤は、架橋性湿潤剤を含み、そのため、重合後、架橋性湿潤剤の少なくとも一部がポリマーと架橋される。湿潤剤はヒアルロン酸を含んでもよい。架橋性湿潤剤はメタクリル化ヒアルロン酸などのアクリル化ヒアルロン酸であってもよい。重合後、湿潤剤のうちの結合しなかった部分は、ポリマーおよび細孔中に分散させてもよく、湿潤剤のうちの結合しなかった部分は材料から放出可能であり得る。湿潤剤はポリビニルピロリドンまたはデキストランを含んでもよい。モノマーはメチルメタクリレートまたは2-ヒドロキシエチルメタクリレートであってもよい。界面活性剤は双性イオン界面活性剤、例えば3-((11-アクリロイルオキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネートとしてもよい。マイクロエマルジョンは約0.1〜約0.5wt%、例えば約0.25〜約0.35wt%の湿潤剤を含んでもよい。マイクロエマルジョンは約15〜約50wt%の水、約5〜約40wt%のモノマー、および約10〜約50wt%の界面活性剤を含んでもよい。
【0005】
本発明の別の局面によれば、本明細書に記載した方法により形成された多孔質ポリマー材料が提供される。
【0006】
本発明のさらなる局面によれば、相互連結された細孔を規定する透明なポリマーマトリックス;および湿潤剤を含み、湿潤剤の少なくとも一部がポリマーマトリックスと架橋される、多孔質材料が提供される。湿潤剤はメタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)を含んでもよく、MeHAの少なくとも一部がポリマーマトリックスと架橋されてもよい。湿潤剤はアクリル化ヒアルロン酸(AHA)を含んでもよく、AHAの少なくとも一部がポリマーマトリックスと架橋されてもよい。湿潤剤は、ポリマーマトリックスおよび細孔の1つまたは両方に分散された結合しなかった部分を含んでもよく、湿潤剤のうちの結合しなかった部分は材料から放出可能である。湿潤剤は、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンまたはデキストランを含んでもよい。ポリマーマトリックスは重合メチルメタクリレートまたは2-ヒドロキシエチルメタクリレートを含んでもよい。材料は、約0.1〜約0.5wt%、例えば約0.25〜約0.35wt%の湿潤剤を含んでもよい。細孔は約60〜約120nmの細孔直径を有してもよい。
【0007】
本発明の別の局面によれば、本明細書で記載された多孔質ポリマー材料を含むコンタクトレンズが提供される。
【0008】
本発明の別の局面および特徴は、本発明の特定の態様の下記説明を、添付の図面と共に再検討することにより、当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面では、ほんの一例として、本発明の態様を示す。
【0010】
【図1】本発明の態様の一例のコンタクトレンズの概略図である。
【図2】ヒアルロン酸(HA)の化学式である。
【図3】メタクリル化HA(MeHA)の化学式である。
【図4】コンタクトレンズ材料の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図5】コンタクトレンズ材料の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図6】コンタクトレンズ材料の走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
【図7】MeHAを調製するための反応経路を示す。
【図8】鋳型を用いて、マイクロエマルジョンからコンタクトレンズ材料を形成するための方法を示す概略図である。
【図9】鋳型を用いて、マイクロエマルジョンからコンタクトレンズ材料を形成するための方法を示す概略図である。
【図10】鋳型を用いて、マイクロエマルジョンからコンタクトレンズ材料を形成するための方法を示す概略図である。
【図11】鋳型を用いて、マイクロエマルジョンからコンタクトレンズ材料を形成するための方法を示す概略図である。
【図12】界面活性剤を形成するために使用する様々な化合物の化学式である。
【図13】界面活性剤を形成するために使用する様々な化合物の化学式である。
【図14】界面活性剤を形成するために使用する様々な化合物の化学式である。
【図15】MeHA化合物の1H-NMRスペクトルを示す。
【図16】異なる試料化合物の測定した透明度を示す棒グラフである。
【図17】異なる試料化合物の放出プロファイルを示す直線図である。
【図18】異なる試料化合物の測定した弾性率を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細な説明
図1で概略的に示されるように、本発明の例示的な態様は透明な多孔質ポリマー12から作製されたコンタクトレンズ10に関する。本明細書で使用されるように、「透明な」という用語は、コンタクトレンズまたは同様の装置に対し許容される透明度を広く説明し、例えば、コンタクトレンズまたは他の眼科用装置の製造において使用される他の材料に等しい、ポリマーを通る可視光の透過度を説明する。
【0012】
ポリマー12としては、1つまたは複数の重合されたモノマー、例えば、メチルメタクリレート(MMA)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸(AA)およびメタクリル酸(MA)などのモノカルボン酸、グリシジルメタクリレート(GMA)を含むエチレン不飽和モノマー、シリコーン型モノマー、などが挙げられる。
【0013】
湿潤剤(WA)14をコンタクトレンズ10に組み入れる。WA14の少なくとも一部がポリマー12と架橋され、これは本明細書では「架橋部分」と呼ばれる。本明細書で使用されるように、湿潤剤分子は、湿潤剤分子がポリマー12の2つまたはそれ以上の隣接する鎖と共有結合により結合された場合、ポリマー12と「架橋される」。WA14のいくらかはポリマー12およびポリマー12により規定される細孔の1つまたは両方に分散され得るが、ポリマー12とは架橋されず、そのようなWA14は本明細書では「結合しなかった部分」と呼ばれる。含まれる場合、WA14のうちの結合しなかった部分は、コンタクトレンズ10が目に置かれ、コンタクトレンズ10の表面16が目と接触した場合に、コンタクトレンズ10から目の中に放出可能である。WA14は1つまたは複数の湿潤剤を含んでもよい。特に、WA14の架橋部分は1つまたは複数の架橋性湿潤剤(CLWA)を含む。WA14のうちの結合しなかった部分は1つもしくは複数のCLWAまたは1つもしくは複数の非架橋性湿潤剤(n-CLWA)、またはCLWAおよびn-CLWAの混合物を含んでもよい。WA14の架橋部分および結合しなかった部分は、同じ湿潤剤からか、または異なる湿潤剤から形成させてもよい。
【0014】
WA14は任意のある特別な用途における制約を受ける、任意の湿潤剤を含んでもよい。例えば、コンタクトレンズ用途では、湿潤剤はヒトの目に適合するべきである。コンタクトレンズ用途では、適した湿潤剤としては、ヒアルロン酸(HA)、アクリル化HA(AHA)、メタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、または眼科用途に対し適している他の湿潤剤を挙げることができる。本明細書において、項目リストにおいて使用される場合、「または」という用語は、列挙した項目の各々がそれ自体可能な選択肢であること、列挙した項目の任意の2つまたはそれ以上の任意の組み合わせもまた可能な選択肢であるが、当業者により理解されるように、組み合わせのうちの2つの項目が相互排他的である場合などの、適していない任意の組み合わせは除かれることを示す。いくつかの用途では、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、グリセリン、キトサン、ポリビニルアルコール、などの湿潤剤が適している場合がある。
【0015】
HAはまた、ヒアルロネートまたはヒアルロナンと呼ばれる。HAはグルコサミノグリカンであり、ムコ多糖とも呼ばれ、これはD-グルコロン酸およびD-N-アセチルグルコサミンから構成され、交互のβ-1,4およびβ-1,3グルコシド結合を介して共に結合された二糖類のポリマーである。例示的なHAはヒアルロン酸ナトリウムである。
【0016】
例えば、適したHAは、図2で示した化学式を有してもよい。適したMeHAは図3で示した式を有してもよい。図2および3の両方において、数「n」は、分子が約10〜約100,000ダルトンの分子量を有するように選択してもよい。他の何らかの態様では、適したWAの分子量は約100と約10,000,000ダルトンとの間であってもよい。異なる態様では、分子量は特別な用途によって変動してもよく、上記範囲外であってもよい。
【0017】
PVPおよびデキストランは、周知の、商業的供給源から容易に入手可能な化合物である。約10〜約100,000ダルトンの分子量を有するPVPおよびデキストランが適している場合がある。異なる態様では、分子量は特別な用途によって、変動してもよく、上記範囲外であってもよい。
【0018】
CLWAはメタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)、または別のアクリル化HA(AHA)としてもよい。MeHA中のアクリレート基は、上記重合モノマーを架橋することができ、MeHA中のペンダントHA鎖は得られた材料に改善された濡れ性を提供する。他の適したCLWAもまた、使用してもよい。例えば、ポリマーを架橋することができる官能基(例えば、アクリレート基)を含み、得られた材料において表面親水性を提供することができる親水性官能基(例えば、ペンダントHA鎖)を含む、任意のWAが適している可能性がある。
【0019】
n-CLWAは、ヒアルロン酸(HA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストラン、または本明細書で使用される特別なポリマーと架橋できない任意の他の適した湿潤剤としてもよい。
【0020】
1つの態様では、WA14はMeHAである。別の態様では,WA14はMeHAおよびHAの両方を含む。さらなる態様では、WA14はMeHAならびにPVPおよびデキストランのうちの1つを含む。さらに別の態様では、WA14はMeHAならびにn-CLWAの2つまたはそれ以上の混合物を含む。
【0021】
好都合なことに、MeHAなどのCLWAを組み入れることにより、驚くべき利点が提供される:架橋および結合していないWAは材料の表面濡れ性を改善し、湿潤剤として作用することができる。架橋MeHAはポリマーマトリックスに結合され、そこから容易に放出することができないとしても、レンズ表面で改善された湿潤性を提供し、これはHAなどの結合していない湿潤剤により提供される改善された湿潤性に匹敵する(例えば、表IIを参照されたい)。この結果の好都合な利点は、架橋MeHAが、細孔内の空間を占めることなく湿潤剤として作用することができることである。そのため、細孔は他の望ましい溶液、または追加の結合していない湿潤剤、例えばHA、追加のMeHA、PVP、デキストランなどを負荷するように都合よく完全に使用される。架橋MeHAが放出されないので、良好な濡れ性および酸素透過性がレンズの寿命全体の間維持できる。さらに、MeHAの再負荷が必要なくなるが、製造中または使用中のいずれかで追加の湿潤剤を負荷すると増強された性能が提供される可能性がある。
【0022】
架橋WAはまた、細孔内の表面特性も改善する可能性があり、これにより細孔の内表面で、または内表面付近で結合していないWAの移動度および他の輸送特性が影響を受ける可能性がある。このように、結合していないWAの放出プロファイルは架橋WAの存在により変動する場合がある。例えば、架橋MeHAはまた細孔の内表面の濡れ性を改善する場合があり、これにより、細孔内に最初存在する結合していないWAの放出、および周囲からの水溶液の再負荷の両方が促進される可能性がある。
【0023】
MeHAを別の適したCLWA、例えば別のAHAと置換しても、前の段落または本明細書の他の箇所で記載した利点および長所の1つまたは複数が依然として得られる可能性がある。
【0024】
特別なWAの選択は、特別な用途に依存する可能性がある。例えば、WAが他の材料と適合することが望ましい場合がある。さらに、WAは、水結合能力および粘弾性を増加させるように選択してもよく、そのため、湿潤剤はより多くの水分子に結合することができ、または、迅速に分散するが、極めて長い時間レンズまたは角膜表面にとどまることができる。WA14が、レンズ内に依然として分散されている場合、または目の中に放出された場合のいずれかで、有意の視覚のぼやけを引き起こさない、またはレンズの透明性を実質的に減少させないこともまた望ましい可能性がある。典型的には、分子量の高いWAは、より多くの水分子と結合することができ、より厚い涙液層を支持することができる。涙液層を安定化することができる湿潤剤はまた、いくつかの態様で有利である可能性がある。いくつかの態様では、HAはn-CLWAとして有利に使用してもよい。例えば、HAはより長い平均半減期を示す可能性があり、他のいくつかの湿潤剤よりも良好に前角膜涙液層を安定化することができる。
【0025】
好都合なことに、コンタクトレンズ10に組み入れたWA14はドライアイ症状またはアレルギー反応を軽減することができ、コンタクトレンズの装着をより快適なものとすることができる。WAのいくらかが架橋するために、極めて多量のWAをコンタクトレンズ材料内に組み入れることができ;良好な濡れ性および非常に高い放出速度での湿潤剤の持続放出を極めて長期間にわたり、例えば20日を超えて維持することができる。さらに、コンタクトレンズ材料は、架橋しない湿潤剤のみを含むポリマーコンタクトレンズ材料に比べ、改善された機械的強度を示す可能性がある。
【0026】
同様に好都合なことに、MeHAおよびHAを組み入れた場合、コンタクトレンズ材料はヒト角膜上皮細胞(HCEC)などの細胞に対し改善された生体適合性を示すことができる。例えば、HCECはHA/MeHA-負荷コンタクトレンズ材料の表面に付着し、成長することができることが示されている。
【0027】
図4〜6で示されているように、これらはポリマー12として使用するのに適したポリマー膜試料の内部構造の代表的な走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、ポリマーは相互連結された細長い細孔22(暗い部分として示されている)を規定するポリマーマトリックス20(明るい部分として示されている)を有する。細孔は、それらの少なくともいくつかが互いに連結または結合された場合に相互連絡され、1つまたは複数の連続ネットワークが形成される。細孔22は水およびWAの混合物を含む水性液体24で充填される(図4〜6の像では識別できない)。
【0028】
細孔22は円形または他の断面形状を有してもよく、異なるサイズを有してもよい。図4〜6で示した細孔は約60〜約120nmの細孔直径を有する。
【0029】
本明細書で使用されるように、細孔直径は細孔の断面の平均または有効直径を示す。円形でない断面の有効直径は、非円形断面の面積と同じ断面積を有する円形断面の直径に等しい。いくつかの態様では、例えば、ポリマーが膨潤性であり、細孔が水で充填される場合、細孔のサイズはポリマー内の含水量によって変化する可能性がある。ポリマーを乾燥させた場合、細孔のいくつかまたは全てが空気などのガスにより充填され、または部分的に充填される可能性がある。このようにポリマーはスポンジのように挙動する可能性がある。いくつかの態様では、ポリマーが乾燥状態にある場合、この場合、ポリマーの含水量が最小または最小付近であり、細孔直径は約10〜約100nmの範囲であってもよい。ポリマーが完全に膨潤した場合、細孔直径は約60〜約120nmの範囲であってもよい。
【0030】
細孔22はランダムに分布させてもよい。細孔22は多孔質材料全体に分布させてもよい。細孔22のいくつかは閉鎖細孔であってもよく、これは、他の細孔と結合または連結されておらず、またはポリマー表面に開かれていないことを意味する。下記でより詳細に記載しているように、使用によって、ポリマーは当業者により理解されるように、多かれ少なかれ、相互連結された細孔を有するように調製することができるので、細孔22全てが相互連絡されている必要はない。
【0031】
コンタクトレンズ材料に組み入れられたWA分子のいくらかはポリマーマトリックスと架橋される。最初に、水および結合していないWAをポリマーマトリックスおよび細孔内に分散させてもよい。使用中に、水および結合していないWAは、存在すれば、細孔およびポリマーマトリックスから除去または放出させてもよい。
【0032】
図4〜6で示した材料では、ポリマー材料中の水性液体含量は図4では約25wt%であり、図5では約30wt%であり、図6では約35wt%である。各々の場合において、水性液体は約1wt%のWAを含み、残りは主に水である。明確にするために、「wt%」は水性材料を含む材料の総重量に基づく重量パーセントを示す。
【0033】
図1について説明すると、WA14のうちの結合しなかった部分は、コンタクトレンズが目に置かれ、目と接触した場合に、コンタクトレンズ10から放出され得る。結合していないWA分子は相互連結された細孔内の液相を通して、ポリマー12の内側領域から表面領域に、例えばコンタクトレンズ10の表面16に拡散する可能性がある。ポリマー12内に分散された結合していないWA分子はまた、ポリマーマトリックスを通して移動または拡散した後、細孔に入り得る。
【0034】
WA14のうちの結合しなかった部分の放出は相互連結細孔および細孔内の水性液体により促進される。結合していないWAの放出速度は、細孔のサイズおよび相互連結度、ならびに細孔内の液体の特性を変化させることにより部分的に制御することができる。このように、ポリマー12は使用中に制御した様式で湿潤剤を送達させるために都合よく使用することができる。
【0035】
結合していないWA分子は、拡散などによりポリマー12または細孔内で、動き、または移動することができる。一般に、結合していないWA分子はランダムな方向に移動するが、濃度勾配が存在する場合、高濃度領域から低濃度領域までのWA分子の最終的な流れが存在する。WA分子は、細孔が液体で充填されている場合、ポリマー12内よりも細孔内でより速く移動する可能性がある。
【0036】
好都合なことに、湿潤剤の放出は、長期間の間、例えば、本発明の例示的な態様では20日を超える間、維持することができるが、これは、WA14が細孔およびポリマー12内に分散され、いくらかがポリマーマトリックスと架橋されるからである。最初、細孔内に分散されたWAは高い放出速度で急速に放出される。高い放出速度は、例えば、数日間続く場合がある。その後、最初に細孔内で自由に分散されたWA分子がすでにほとんど放出されると、放出速度は減少する。しかしながら、結合していない湿潤剤の放出は極めて長期間の間、より低い放出速度で続くことができ、これは、ポリマー内に分散された結合していないWAが徐々に細孔内に移動し、コンタクトレンズ10の内側領域からレンズ表面まで拡散することに起因する。
【0037】
好都合なことに、湿潤剤の一部がポリマーマトリックスと架橋すると、多孔質材料の強度も改善される可能性がある。
【0038】
コンタクトレンズ10を使用者が装着した場合、レンズ表面の改善された濡れ性により、ドライアイ症状、アレルギー反応、ならびにドライアイ状態およびコンタクトレンズの装着により生じる不快感が軽減できる。任意の結合していないWAが存在する場合、連続して目の中に放出させることができ、これによりさらにコンタクトレンズの性能が改善できる。
【0039】
1つの態様では、ポリマー12は、1つまたは複数の共重合性モノマー、モノマーの少なくとも1つと共重合可能な1つまたは複数の界面活性剤、水およびWAを含む両連続マイクロエマルジョンを重合することにより調製してもよく、そのため、得られたポリマーは水性液体で充填された相互連結細孔を有する。WAは重合前にマイクロエマルジョンに、例えば水性ドメインに分散させる。マイクロエマルジョンはまた、重合開始剤、例えば光開始剤を含んでもよい。好都合なことに、WAの少なくとも一部はまた、架橋剤として機能する。このように、いくつかの態様では、追加の架橋剤が必要ない。別の態様では、追加の架橋剤をマイクロエマルジョンに含有させてもよい。
【0040】
明確にするために、「マイクロエマルジョン」は1つの液相の別の液相への熱力学的に安定な分散を示す。マイクロエマルジョンは界面活性剤の界面膜により安定化させてもよい。2つの液相のうちの1つは親水性または疎油性(例えば水)であり、もう一方は疎水性または親油性(例えば油)である。典型的には、マイクロエマルジョン中の液滴またはドメイン直径は約100nmまたはそれ以下であり、したがってマイクロエマルジョンは透明である。両連続マイクロエマルジョンでは、2つの液相の各々が連続している。
【0041】
WAはCLWAを含み、これはMeHA、例えば、図3で示したものであってもよい。図3で示したMeHAは、図7で示した反応経路により調製することができる。図7によるMeHAの製造は当業者に公知である。簡単に説明すると、アタクチックポリメチルメタクリレート(aPMMA)の第1級アミン基は、カップリング剤として1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]-カルボジイミド塩酸塩(EDC)および1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を使用することにより、ヒアルロン酸中のカルボン酸にコンジュゲートされる。MeHAの調製はまた、M.A. Princz et al., “Release of wetting agents from Nelfilcon contact lenses”,Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2005;46:E-Abstract 907(以後、「Princz」);およびM.R., Kim and T.G. Park, “Temperature-responsive and degradable hyaluronic acid/Pluronic composite hydrogels for controlled release of human growth hormone,” Journal of Controlled Release, 2002, vol.80, pp.69〜77(9)などの文献において記載されており、これらの各々の関連内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0042】
WAはまた、HA、例えば、図2で示した化学式を有するものを含んでもよく、これはChisso Corporation of Japanなどの商業的化学物質提供者から入手できる。HAはまた、例えば、P.A.Band, “Hyaluronan derivatives: chemistry and clinical applications”,in The Chemistry, Biology and Medical Applications of Hyaluronan and Its Derivatives, T.C. Laurent ed., Portland Press Ltd., London, UK, 1998, pp.33-42において開示された技術に基づき調製することができるが、この関連内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0043】
上記のように、PVPおよびデキストランは商業的供給源から容易に入手できる一般的な化学物質である。
【0044】
両連続マイクロエマルジョンを形成するためのモノマーは当業者に公知の任意の適したモノマーとすることができ、これを別のモノマーと共重合させてコポリマーを形成させることができる。モノマーは界面活性剤などの別のモノマーと共重合可能であるが、モノマーはそれ自体と重合可能であってもよい。適した両連続マイクロエマルジョンを調製するために使用してもよいモノマーの種類および量は当業者に公知である。例示的なモノマーは、MMA、HEMA、2-ヒドロキシエチルアクリレート、AAおよびMAなどのモノカルボン酸、GMAを含むエチレン不飽和モノマー、ならびにシリコーン型モノマーである。これらのモノマーの適した組み合わせもまた、使用することができる。
【0045】
重合性界面活性剤は、それ自体と、または他のモノマー化合物と重合し、ポリマーを形成することができる。混合のための界面活性剤は、マイクロエマルジョン中のモノマーの少なくとも1つと共重合することができる任意の適した界面活性剤とすることができる。認識され得るように、界面活性剤がポリマー中に共重合された場合、重合後ポリマーから界面活性剤を分離する必要はない。これは、ポリマー形成過程が簡略化されるので有利である可能性がある。
【0046】
1つの態様では、界面活性剤は双性イオン界面活性剤である。いくつかの用途では、双性イオン界面活性剤が有利である可能性がある。例えば、双性イオン界面活性剤を含有させると、マイクロエマルジョン中のpHを変動させることによりWA放出プロファイルを調整することができると予測される。双性イオン界面活性剤は3-((11-アクリロイルオキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネート(AIPSA)、またはSO3-(CH2)m+NCHCHCHN(CH2)nVであってもよく、式中、mは1〜20の範囲の整数であり、nは6〜20の範囲の整数であり、xは10〜110の範囲の整数であり、Vは(メチル)アクリレートまたは他の共重合可能な不飽和基である。
【0047】
異なる態様では、他の適した界面活性剤、例えばChowにおいて開示されているものを使用してもよい。いくつかの態様では、非イオンまたはアニオン界面活性剤を使用してもよい。例えば、適した非イオン界面活性剤はPEO(ポリエチレンオキシド)基(例えば約15〜約110)を含んでもよく、適したアニオン界面活性剤はスルホネートおよびカルボキシレート基を含んでもよい。
【0048】
AIPSAは下記のように合成してもよい。11-ヒドロキシウンデシルイミダゾールを、11-ブロモウンデカノールをイミダゾールとSN2反応機構により反応させることにより形成し、その後、前駆体中間体を1,3-プロパン-スルトンを用いてスルホン化に供し、対応するスルホネート(3-((11-ヒドロキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネート)とする。最後に、アクリレート基を前駆体スルホネートに添加し、分子の「尾(tail)」に位置する重合性基を有するAIPSAを生成させる。AIPSAの調製はまた、L.Liu et al.,“Wetting agent release from contact lenses”, Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 2005; 46:E-Abstract 908(以後、「Liu」)などの文献において記載されており、この関連内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0049】
本明細書で使用されるように、レンズ材料の形成において使用される成分化合物はベース化合物およびその適した塩または誘導体の両方を含む。例えば、MeHAは図3で示した化合物、およびその化合物の任意の適した塩または誘導体の両方であってもよい。適した誘導体は、ベース化合物の特性官能基を保持し、このため、ベース化合物の同じ特性官能性を提供するベース化合物の誘導体である。例えば、MeHAの適した誘導体は、ポリマーと架橋するための官能基および表面濡れ性を改善するためのHA鎖を保持するものであってもよい。
【0050】
マイクロエマルジョンの調製は一般に当技術分野において公知である。例えば、同様の両連続マイクロエマルジョンを調製するための例示的な手順は、2006年9月2日に公開された、ChowらへのPCT特許出願公開WO2006/014138号(以後、「Chow」)において記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。本明細書で記載した変更点を用い、本発明の局面に従って、コンタクトレンズ10の膜材料はChowにおいて記載された手順に従い調製してもよい。
【0051】
1つの態様では、両連続マイクロエマルジョンは下記のように調製してもよい。マイクロエマルジョンのための成分の混合物を分散させ、混合物中で異なる相の微小滴を生成するための超音波処理、ボルテックス、または他の撹拌技術などの標準技術によりマイクロエマルジョンを形成させてもよい。また、混合物を、ナノメートルスケールの細孔を有するフィルタを通過させ、微細な滴を生成させてもよい。様々な成分の割合および界面活性剤の親水性-親油性値によって、滴は油で膨潤し、水中に分散され(正またはO/Wマイクロエマルジョンと呼ばれる)、または水で膨潤するが油中に分散され(逆またはW/Oエマルジョンと呼ばれる)、またはマイクロエマルジョンは両連続性とすることができる。この態様では、成分およびそれらの割合は、ポリマー12を調製するために両連続エマルジョンが形成されるように選択される。
【0052】
両連続マイクロエマルジョンの構造はChowにおいて記載されたものと同様であってもよい。マイクロエマルジョン中には、モノマーを含む油ドメインおよび水性液体を含む水性ドメインが存在する。これらのドメインはランダムに分布され、それぞれ相互連結され、三次元全てにおいて延在している。油ドメインが重合された場合、水性ドメインが存在すると、水性ドメインに存在した水性液体で充填された相互連結細孔が得られる。WAは最初に水性液体中に分散され、CLWAの少なくともいくらかが重合中にポリマーと架橋される。
【0053】
ある用途のための特別なモノマーおよび界面活性剤の選択および重量比は用途に依存しうる。一般に、得られたポリマーが、ポリマーが使用される環境に適し、環境と適合し、所望の特性を有するように選択されるべきである。
【0054】
マイクロエマルジョン中の水は純水または水系液体とすることができる。記載したように、WAは最初、水に分散または溶解されてもよい。水は任意で特異的な特性を有する様々な他の添加剤を含んでもよい。そのような添加剤は、得られたポリマーにおいて1つまたは複数の所望の特性を達成するために選択することができ、薬物、タンパク質、酵素、フィラー、無機電解質、pH調整物質、などのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0055】
当業者には理解されるように、マイクロエマルジョンの成分が適した比率にあり、滴またはドメインが適当なサイズを有する場合、ナノ多孔性の、透明なポリマーマトリックスを得ることができる。当業者に公知のように、両連続マイクロエマルジョンの形成に適した成分の適当な割合を決定するために、モノマー、水および界面活性剤の三成分相図を用意してもよい。単相マイクロエマルジョンに対応する図上の領域を同定してもよく、成分の割合を、同定した領域内に含まれるように選択してもよい。当業者であれば、得られたポリマーにおいてある所望の特性を達成するために、相図にしたがい、割合を調整することができる。さらに、両連続マイクロエマルジョンの形成は、当業者に公知の技術を用いて確認することができる。例えば、混合物の導電率は、マイクロエマルジョンが両連続性である場合実質的に増加する可能性がある。混合物の導電率は、0.1M塩化ナトリウム溶液を混合物中に漸増させた後、導電率計を用いて測定してもよい。
【0056】
成分の割合をそれぞれ、水性液体(水およびWAを含む)では約15〜約50wt%、モノマーでは約5〜約40wt%、および界面活性剤では約10〜約50wt%とした場合、適した両連続マイクロエマルジョンを形成させることができる。水性液体は主に水を含んでもよい。マイクロエマルジョン中のWA含量は約0.1〜約0.5wt%まで、例えば約0.25〜約0.35wt%まで変動してもよい。1つの態様では、MeHAをCLWAとして使用し、MeHA含量は約0.25wt%であってもよい。MeHAおよびHAの混合物もまた使用してもよく、総量が約0.25〜0.35wt%である。WAは水性液体に分散または溶解させてもよい。
【0057】
当業者であれば、どのようにして異なるモノマーおよび界面活性剤を異なる比率で組み合わせて、得られたポリマーの様々な特性に対し所望の効果を達成するか、例えば得られたポリマーの機械的強度または親水性を改善するかを理解するであろう。
【0058】
ポリマーはヒト細胞およびヒトの目に安全で、生体適合性でなければならない。ポリマーは涙液のガス(例えば、O2およびCO2)、様々な塩、栄養素、水および様々な他の成分などの流体に対し透過性であることが望ましい。ポリマー内に分配されたナノ細孔の存在によりガス、分子、栄養素およびミネラルの目または周囲への輸送が促進される。本発明のいくつかの態様による例示的なポリマーは、負荷された湿潤剤または他の流体材料の制御された、長期間の送達を提供することができることが認識される。
【0059】
マイクロエマルジョンに含まれるWA(およびCLWA)の量は、様々な因子に基づき決定することができる。一般に、1つの因子は、WA(CLWA)の濃度が、所望の表面濡れ性、および任意で、使用中の結合していない湿潤剤の望ましい放出速度を提供するのに十分高くなければならないことである。一般に、負荷が高いと放出速度が高くなる。得られたポリマー材料の透明度および清澄度は別の因子である。非常に高いWA負荷は、マイクロエマルジョン前駆体の相平衡に影響する場合があり、得られたポリマー材料は十分透明でない場合がある。試験により、いくつかの態様では、約0.35wt%までのHAまたはMeHAがマイクロエマルジョンに含まれる場合に透明なポリマーを調製することができることが示される。さらなる因子は得られたポリマーの機械的特性である。実験から、CLWAの濃度はポリマーの機械的特性に影響する可能性があることが示される。いくつかの態様では、CLWAの濃度が約0.1〜約0.35wt%である場合に、改善された機械的特性を達成することができる。マイクロエマルジョンを重合させ、透明な多孔質ポリマーを形成させるが、ここで、WAはポリマーおよび細孔内に分散され、CLWA分子の少なくともいくらかはポリマーと架橋される。
【0060】
マイクロエマルジョンは当業者に公知の標準技術を用いて重合させてもよい。例えば、熱、触媒添加、マイクロエマルジョンの照射、またはフリーラジカルのマイクロエマルジョン中への導入により重合させてもよい。選択した重合法はマイクロエマルジョンの成分の性質に依存する。
【0061】
マイクロエマルジョンの重合は触媒の使用を伴ってもよい。触媒はモノマーおよび界面活性剤の重合を促進する任意の触媒または重合開始剤としてもよい。選択した特定の触媒は、特別なモノマー、および使用した重合性界面活性剤または重合法に依存してもよい。例えば、重合は、光開始剤を触媒として使用した場合、マイクロエマルジョンを紫外線(UV)照射に供することにより達成することができる。例示的な光開始剤としては、2.2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)およびジベンジルケトンが挙げられる。レドックス開始剤もまた、使用してもよい。例示的なレドックス開始剤としては、過硫酸アンモニウムおよびN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が挙げられる。光開始剤およびレドックス開始剤の組み合わせもまた使用してもよい。この点で、混合物中に開始剤を含めることは有利である可能性がある。重合開始剤はマイクロエマルジョンの約0.1wt%〜約0.4wt%としてもよい。
【0062】
好都合なことに、CLWAはポリマーを架橋する。しかしながら、得られたポリマー中でのポリマー分子間の架橋をさらに促進するために、追加の架橋剤を混合物に添加してもよい。適した架橋剤としては、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレートおよびジエチレングリコールジアクリレート、などが挙げられる。一般に、架橋されるポリマー分子が多いほど、分散させた湿潤剤がポリマーを通って拡散または移動することがより困難になり、これにより湿潤剤の放出がより遅くなる。そのため、架橋剤の量を、放出速度を調整するように選択することができる。さらに、架橋剤の全体濃度を増加させると、得られたポリマーの機械的強度を改善することができる。
【0063】
上記のように、MeHAなどのCLWAはそれ自体架橋剤であり、そのようなものとして、別の架橋剤を含む必要はない。CLWAは湿潤剤および架橋剤の両方として機能することができるので、別々の架橋剤および湿潤剤を使用する場合に比べ、CLWAを使用することは有利であり得る。さらに、CLWAを含有させると柔軟性が提供される可能性があり、添加する追加の架橋剤の量を、ポリマー分子の全体の架橋を減少させずに低減させることができるので有利である可能性がある。
【0064】
マイクロエマルジョンは重合前に所望の最終形状およびサイズに形成させてもよい。1つの態様では、コンタクトレンズ10は図8〜11に示した方法により、マイクロエマルジョンから形成させてもよい。
【0065】
図8に示されるように、鋳型24を提供するが、これは雄部分26および雌部分28を含む。雄部分26および雌部分28は着脱可能に結合させることができる。雄部分26の内表面30は凸形状であり、雌部分28の内表面32はこれに応じて凹形状であり、そのため、雄および雌部分が共に結合された場合、内表面30および32はコンタクトレンズに対し所望のプロファイルを規定する。
【0066】
図9に示されるように、調製したマイクロエマルジョン34の適した量を最初に雌部分28に入れる。図10に示されるように、雄部分26をその後、雌部分28と結合させ、マイクロエマルジョン34を圧縮し、内表面30および32により規定される所望の形状36とする。
【0067】
あるいは、雄部分および雌部分26および28を最初に結合させ、その後に、マイクロエマルジョンを鋳型の空洞に注入してもよい。このために、注入口(図示せず)を設けてもよい。
【0068】
その後、鋳型24内のマイクロエマルジョン36を重合反応に供する。重合は、紫外線(UV)照射などの照射により実施してもよい。モノマーをその後重合させ、上記のようにポリマー材料を形成させる。
【0069】
図11に示されるように、得られたポリマーは所望の形状を有するコンタクトレンズ38を形成する。コンタクトレンズ38は重合後、鋳型24から取り出してもよい。
【0070】
コンタクトレンズ38を水ですすぎ、水と平衡化させ、未反応モノマーおよびポリマー中に組み入れられていないWAを除去してもよい。コンタクトレンズ38の細孔内に分散された少量のWAはすすいでいる間に失われる場合があるが、失われる量はすすぎ時間および程度を制限することにより制限することができる。さらに、すすぎ中に失われたWAを補償するために、マイクロエマルジョン中のWAの初期濃度を、コンタクトレンズ38中のWAの最終濃度が所望の放出速度を提供するように選択してもよい。
【0071】
任意で、すすいだポリマー材料を貯蔵または将来の使用の準備のために、乾燥させ、滅菌してもよい。乾燥および滅菌はどちらも、当業者に公知の任意の適した様式で達成することができる。いくつかの態様では、乾燥および滅菌のどちらも低温で、例えば、エチレンオキシドガスまたはUV照射を用いて実施することができ、そのため、ポリマー材料に分散されたWAに悪影響を及ぼすことはない。
【0072】
コンタクトレンズ10または38中の結合していないWAは、ポリマーが目と接触した場合、ポリマーから長期間にわたって放出させることができる。WAの放出速度は、適当なモノマーおよびその比例量を選択することにより制御することができる。
【0073】
コンタクトレンズ10または38は視力矯正、目の色の変更のために、または糖尿病患者用コンタクトレンズとして使用することができる。
【0074】
好都合なことに、本発明の様々な態様によるコンタクトレンズ材料は、ヒト皮膚線維芽細胞と適合し、機械的に強いものとすることができ、目に入れるためのコンタクトレンズを製造するのに有利に使用することができる。
【0075】
上記ポリマー材料は、コンタクトレンズ用途で有用であるだけでなく、他の用途でも有用である。例えば、本明細書で説明した例示的な材料および方法、または同様の材料もしくは方法を使用して、処方レンズ、3-D(次元)組織工学スキャホールド、人工角膜などの用途で使用するための親水性のナノ多孔質材料を調製してもよい。
【0076】
これらのポリマー材料は様々な所望の物理、化学、および生物化学的特性を有することができる。例示のために、ポリマー材料試料の調製および特性を下記に記載する。
【0077】
実施例
実施例I(成分材料の調製)
実施例で使用した材料は下記のように入手し、または調製した。
【0078】
ヒアルロン酸ナトリウム(HA)はChisso Corporation of Japanから入手した。
【0079】
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、メチルメタクリレート(MMA)およびエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)はAldrich(商標)から入手し、さらに、使用前に減圧下で精製した。
【0080】
2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)はAldrich(商標)から入手し、受け取ったまま使用した。
【0081】
マイクロエマルジョン試料全てにおいて使用した水は脱イオンし、蒸留した。
【0082】
重合性双性イオン界面活性剤、3-((11-アクリロイルオキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネート(AIPSA)を、Liuにおいて記載されている手順に従い、下記のように合成した。
【0083】
図12に示した式を有する、11-ヒドロキシウンデシルイミダゾール(HUI)を下記のように調製した。エタノール200mlに溶解した11-ブロモウンデカン-1-オール(25.0g、0.1mol)、イミダゾール(0.08mol)および水酸化ナトリウムペレット4g(水6mlに溶解)の溶液を6時間、還流させた。溶液を室温まで冷却すると、沈殿を濾過して除去し、エタノール溶媒を濾液から蒸発させた。エタノールを蒸発させた後、残渣をエーテルに溶解し、水で2度洗浄し、硫酸マグネシウムにより一晩中乾燥させた。濾過後、濾液を冷却し、白色生成物を溶液から沈殿させた。白色固体生成物が得られ、これを真空で一定重量となるまで乾燥させた。
【0084】
図13に示した式を有する、3-((11-ヒドロキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネート(HUIPS)を下記のように調製した。乾燥アセトニトリル200mlに溶解した11-ヒドロキシウンデシルイミダゾール(0.1mol)の磁気撹拌溶液に、1,3-プロパン-スルトン(0.1mol)を30分にわたり滴下した。溶液を1日、窒素雰囲気下で還流させた。生成物が反応混合物から析出し、これを濾過により取り出した。その後、生成物を真空オーブンで1日、周囲温度で乾燥させた。
【0085】
図14で示した式を有する、3-((11-アクリロイルオキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネート(AIPSA)をその後、下記のように調製した。約0℃の乾燥アセトニトリル(200ml)に溶解したHUIPS(0.1mol)の磁気撹拌溶液に塩化アクリロイル(0.3mol)を徐々に添加することにより、混合物を形成させた。溶液はN2ガスでパージした。混合物をさらに室温で約3日間反応させた。その後、混合物を濾過し、過剰の塩化アクリロイルおよびアセトニトリルをロータリーエバポレータで除去した。残渣を蒸留クロロホルムに溶解し、2度飽和重炭酸ナトリウム溶液、続いて飽和塩類溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムより一晩中乾燥させた。無水エーテル中で粗生成物を再沈殿させることにより、AIPSAの純粋生成物が得られた。沈殿を濾過し、真空オーブンで乾燥させた。
【0086】
そのように調製した、前駆物質中間体および界面活性剤の1H NMRスペクトルを測定し、下記のように割り当てた。
【0087】
実施例II(MeHAの合成)
下記のように、Princzで開示された手順に従い、図7で示した反応経路に基づきMeHAを合成した。
【0088】
ヒアルロン酸ナトリウム(500mg、2.85310mmol)およびaPMMA(472mg、2.64mmole、ヒアルロン酸ナトリウム中の-COOHに対し2倍モル過剰)を脱イオン水(pH6.8)150mlに溶解した。ジメトキシスルホキシドおよび水の1:1混合物10mlに溶解したEDC(252.8mg、1.32)およびHOBt(178mg、1.32mmol)を上記溶液に添加した。ヒアルロン酸ナトリウム/EDC/HOBt中の-COOHの化学量論比は1:1:1であった。結合反応物が、1日間溶液中で発生した。反応生成物、aPMMA誘導HAを脱イオンH2Oに対し12時間透析し(Mwカットオフ10000)、その後凍結乾燥させた。HAのaPMMAによる修飾%を、図15に示した1H-NMRスペクトルを分析することにより決定した。
【0089】
HAの置換度を、aPMMA中のビニル基の2つのプロトン(=CH2、5.5、5.8ppm)とHAのメトキシ基中の3つのプロトン(-C=OCH3、2.1ppm)間の相対ピーク強度比を比較することにより計算した。置換度は約30〜約33%の間にあることがわかった。
【0090】
実施例III(マイクロエマルジョン試料)
マイクロエマルジョン試料I〜IXを調製した。マイクロエマルジョン試料のための前駆体溶液の組成を表Iに列挙する。各試料は、様々な濃度のモノマー(HEMA/MMA)、界面活性剤AIPSAならびに水および任意でHAまたはMeHAを含む水性内容物を有する、両連続マイクロエマルジョンを含んだ。マイクロエマルジョンから形成させ、得られた膜の機械的強度を増加させるために、架橋剤、EGDMAを各前駆体溶液に、重合性モノマー全ての総重量に基づき約5wt%の量で添加した。約1wt%のDMPAもまた、各試料において、重合性モノマー全ての総重量に基づき添加した。
【0091】
(表I)マイクロエマルジョン試料のための前駆体溶液
【0092】
その後、膜試料をこれらのマイクロエマルジョン試料から下記のように形成させた。
【0093】
各試料に対し、約1gのマイクロエマルジョンをネジ蓋付きチューブで調製した。マイクロエマルジョンを20秒間超音波処理し、その成分の混合中に形成した小さな泡を除去した。ゲル状半重合マイクロエマルジョンをその後、前に洗浄し、室温で乾燥させておいた2つの20cm×20cmのガラスプレート上に広げさせ、その間に挟ませた。約35℃の光反応器チャンバ内で約2時間、ガラスプレート間のマイクロエマルジョンをさらなる重合に供した後、膜を形成させた。列挙した全ての試料では、形成した膜は透明であり、高い機械的強度を有した。
【0094】
膜試料の形態はSEM写真で確認し、そのいくつかを図4〜6に示す。これらの図から見られるように、材料は両連続のナノ多孔質ネットワークを有する。推定平均細孔直径は、マイクロエマルジョン配合物中の初期含水量によって、約60〜約120nmの範囲である。35wt%の含水量で形成させた試料中の細孔はより含水量の少ないもので形成させたものよりも極めて大きかった。
【0095】
試料材料の透明度もまた測定し、結果を図16にまとめて示したが、これはまた、WAを含まない他の材料とHA/MeHA負荷膜の透明度を比較している。結果から、HA/MeHA負荷膜は自然の角膜または市販のコンタクトレンズの透明度と同様の透明度を有したことが示される。
【0096】
実施例IV(インビトロHA放出)
HA負荷膜試料からのHAの放出を測定した。
【0097】
HAを有する各マイクロエマルジョン試料から形成した膜試料を、PBS緩衝液を含む3つの別個の5mlバイアルに入れた。バイアルを50rpmの回転速度の、34℃のインキュベータに入れた。1時間の間隔毎に、溶液の1mlの部分をUV-VIS分光測光アッセイのためにバイアルから取り出した。取り出す毎に、1mlの新たなPBS緩衝液をバイアルに添加し、5mlの総体積を維持した。この過程を、さらに放出されたWAが検出できなくなるまで続けた。
【0098】
図17は時間の関数としての、インビトロHA放出の測定結果を示す。示した結果から、累積HA放出特性が示される。より高いHAおよび含水量を有する膜試料は、極めて速い放出を示した。各試料に対する放出速度は4日以内にプラトーに到達し、その後は、10〜20日間、放出速度が極めて低いが、非常に安定な速度で維持された。この放出プロファイルは、レンズ配合物中の初期含水量がより高いレンズ材料のより高いHA濃度およびより大きな細孔サイズによる可能性があった。放出速度はまた、マイクロエマルジョン配合物中のHA含量の増加と共に増加した。
【0099】
実施例V(動的機械分析)
膜試料の貯蔵弾性率およびガラス転移温度を3度、動的機械分析計(Dynamic Mechanical Analyzer、TA Instruments、DMA2980)で測定した。測定結果のいくつかを図18に示す。
【0100】
動的機械分析は、異なる水およびHA/MeHA含量を有する膜試料の貯蔵弾性率に関する変化を示した。弾性率は、レンズ材料のなじみ性に影響する可能性があり、このために、特別な材料から形成されたコンタクトレンズを装着する使用者の快適さに影響を与える可能性がある。コンタクトレンズ材料の強度は、コンタクトレンズの取り扱いおよび引き裂き特性に影響する。図18に示されるように、同じ初期含水量を有する場合、HA/MeHA負荷試料は、HAまたはMeHA負荷のない試料よりも高い弾性率を示した。試験した試料のうち、MeHA負荷試料が相対的により高い弾性率を示した。さらに、試験した範囲内では、含水量が増加した場合、貯蔵弾性率が増加した。
【0101】
実施例VI(接触角測定)
膜試料の動的水接触角を、恒温水浴を備えたKruss(商標)張力計(K14、KRUSS、ドイツ)を用いて測定した。WAを負荷した試料を、試料中の結合していない湿潤剤を除去する前に測定した。測定を3度繰り返し、結果を平均し、表IIにまとめて示した。
【0102】
表面接触角を使用して、レンズ材料の表面湿潤性を評価した。表面濡れ性の評価基準は、その前進接触角(θA)である。別の有用な評価基準は、前進接触角と後退接触角(θR)の間の差である、接触角のヒステリシスであった。表IIで示されるように、HA/MeHA負荷のない試料に比べHA/MeHAを含む試料は、より小さい接触角およびヒステリシスの両方を示した。これから、HA/MeHA負荷材料は増強した親水性を有することが示される。さらに、MeHA負荷材料は基も低いヒステリシスを示した。対照的に、WAを有さない試料材料では、非常に高いヒステリシスを示した(40°を超える)。
【0103】
(表II)動的水接触角
【0104】
実施例VII(細胞培養および生存率アッセイ)
ヒト角膜上皮細胞(HCEC)(Cascade Biologics, USA)を膜試料上、添加EpiLife(商標)培地(ヒト角膜成長サプリメント、抗生物質および抗真菌剤)中で培養し、細胞が新しい培養条件に適合するまで、37℃の5% CO2を含む加湿雰囲気中で、インキュベートした。細胞の形態を、カメラ(Nikon(商標)4500)を備えた位相差顕微鏡(AVIOVERT(商標)、ZEISS、ドイツ)下でモニタし、写真撮影した。初代ヒト角膜上皮細胞を試料上に、培地中15,000細胞/mlの密度で播種した。膜に付着した生存細胞数をDAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)染色を用いることにより分析した。
【0105】
培養HCECの形態を、レンズ材料試料上での培養4日後に研究した。DAPI染色および蛍光性量子ドットを使用して生存細胞の核および細胞質を標識した。試料を画像化し、画像から、HCEC細胞が膜試料に付着し、膜表面を被覆したことが示された。これにより、試料材料が、さらに処理しなくても細胞成長のための生物活性膜として機能することができたことが示される。これは、従来のポリマー膜は細胞外マトリックス(ECM)表面コーティング無しで細胞付着を示すことができなかったので、人工角膜のために使用される現存するポリマーに比べると改善されていることを示した。
【0106】
実施例VIII(コンタクトレンズ試料)
コンタクトレンズ試料を、対応するマイクロエマルジョン配合物70μlを図10に示した鋳型に注入することにより、マイクロエマルジョン試料から調製した。気泡が鋳型中にトラップされないように注意した。マイクロエマルジョンを5〜15°mW/cm2の間で動作するUVランプ下、約30分間37℃でUV硬化させた。硬化後、硬化レンズ材料を鋳型から取り出した。硬化材料は重合されており、透明であった。レンズは角膜形状を有した。レンズをその後、レンズが膨潤して平衡に達するまで緩衝塩類溶液に浸漬させた。
【0107】
レンズ試料の特性を測定し、結果のいくらかを表IIIにまとめた。
【0108】
(表III)コンタクトレンズ試料の特性
【0109】
レンズまたはレンズ材料試料の酸素透過性(Dk)を、親水性コンタクトレンズのDk値を測定するためのOptiPerm(サービスマーク)技術を用いて決定した。各試料材料に対し、5つの異なる試料を用いて測定を行い、平均結果をさらなる分析のために使用した。結果から、HAまたはMeHAを含むレンズ材料試料のDk値は、HAを含まないレンズ材料試料よりも高く、このために良好であることが示された。Dk値はまた、ある範囲内の最終レンズ配合物中のWA濃度と共に変動した。WA濃度のあるしきい値を超えると、Dk値は配合物中の絶対含水量により制御された。このように、適した量のHAまたはMeHAを配合物に添加すると、得られたレンズ材料の酸素透過性特性を調整することができることが示された。
【0110】
平衡含水量(EWC)を測定するために、レンズ材料試料(膜)を真空中、室温で、一定重量が得られるまで完全に乾燥させた。乾燥膜を30℃の水に、膨潤平衡に到達するまで浸漬させた。膨潤膜を軽く拭き取り、過剰の表面エタノールまたは水を除去し、その後、重さを量った。EWCは下記のように計算したパーセンテージとして表した。
式中、Wsは膨潤平衡時の試料重量であり、Wは乾燥試料重量である。結果から、EWCは試料配合物中の水およびWA含量の両方と共に増加したことが示される。MeHA/HAを有する試料材料は、MeHA/HAを含まない、他の試験した材料に比べ親水性が増大した。膜試料のいくつかが示した高い吸水能力はいくつかの因子によるものであると予測される。第1に、これらの膜試料は、その高い親水性のために水に対し高い親和力を有する可能性がある。第2に、膜試料は、マイクロエマルジョン配合物中の含水量が増加した場合、増加した多孔度を有した。
【0111】
膜試料の膨張係数はまた、前駆体マイクロエマルジョンの含水量の増加と共に増加したが、これは、膜細孔中にすでに存在した水の他に、重合膜の親水性特性により、より多くの水が吸収できたからである。膨張係数は、レンズのサイズ、例えば直径を測定することにより測定してもよい。
【0112】
ポリビニルピロリドン(PVP)またはデキストランなどの他の湿潤剤は、HAおよびMeHAが示す改善点および利点のいくつかを同様に示すと予測される。しかしながら、HAまたはMeHAはそのような他の湿潤剤よりもさらなる利点を提供する可能性がある。例えば、HAまたはMeHAは、残渣形成、ぼやけまたは摩擦を引き起こさずに、極めて高い粘度を維持することができる。さらに、MeHA/HAは細胞増殖、細胞分化、細胞移動、などを増強するのに関与することができる。好都合なことに、MeHAが本発明の態様のポリマー内で架橋されると、湿潤剤の分解が、WAが架橋されていないポリマーの場合に比べて減少する。このように、コンタクトレンズ中でのWAの安定性が改善され、性能が長期間にわたり非常に安定に維持できる。対照的に、HAなどのいくつかの湿潤剤は、水溶液中で溶解された場合、典型的には極めて迅速に分解し、これがこれらの湿潤剤の適用を制限する公知の因子である。
【0113】
上記で明確に言及されていない、本明細書で記載した態様の別の特徴、利益および利点はこの記載および図面から、当業者であれば理解することができる。
【0114】
当然、上記態様は、一例にすぎず、いかなる意味においても制限するものではない。記載した態様は、部品の形態、配列、動作の詳細および順序の多くの改変を受けやすい。むしろ、本発明はそのような改変全てを、特許請求の範囲により規定される、その範囲内に含めるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、湿潤剤、モノマー、および該モノマーと共重合可能な界面活性剤を含む両連続マイクロエマルジョンを重合させて、相互連結された細孔を規定するポリマーを形成させる工程を含む、多孔質ポリマー材料の形成法であって、
前記湿潤剤が架橋性湿潤剤を含み、そのため、前記重合後、該架橋性湿潤剤の少なくとも一部が前記ポリマーと架橋される、形成法。
【請求項2】
架橋性湿潤剤がアクリル化ヒアルロン酸である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
架橋性湿潤剤がメタクリル化ヒアルロン酸である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
重合後、湿潤剤のうちの結合しなかった部分が、ポリマーおよび細孔内に分散され、該湿潤剤のうちの結合しなかった部分が材料から放出可能である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
湿潤剤がヒアルロン酸を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
湿潤剤がポリビニルピロリドンまたはデキストランを含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
モノマーがメチルメタクリレートまたは2-ヒドロキシエチルメタクリレートである、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
界面活性剤が双性イオン界面活性剤である、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
双性イオン界面活性剤が、3-((11-アクリロイルオキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネートである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
マイクロエマルジョンが約0.1〜約0.5wt%の湿潤剤を含む、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
マイクロエマルジョンが約0.25〜約0.35wt%の湿潤剤を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
マイクロエマルジョンが約15〜約50wt%の水、約5〜約40wt%のモノマー、および約10〜約50wt%の界面活性剤を含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項記載の方法により形成された多孔質ポリマー材料。
【請求項14】
請求項13記載の多孔質ポリマー材料を含むコンタクトレンズ。
【請求項15】
相互連結された細孔を規定する透明なポリマーマトリックス;および
その少なくとも一部が前記ポリマーマトリックスと架橋される、湿潤剤
を含む多孔質材料。
【請求項16】
湿潤剤がメタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)を含み、該MeOHの少なくとも一部がポリマーマトリックスと架橋される、請求項15記載の材料。
【請求項17】
湿潤剤がアクリル化ヒアルロン酸(AHA)を含み、該AHAの少なくとも一部がポリマーマトリックスと架橋される、請求項15記載の材料。
【請求項18】
湿潤剤が、ポリマーマトリックスおよび細孔のうちの1つまたは両方に分散された結合しなかった部分を含み、湿潤剤のうちの該結合しなかった部分が材料から放出可能である、請求項15〜17のいずれか一項記載の材料。
【請求項19】
湿潤剤がヒアルロン酸を含む、請求項15〜18のいずれか一項記載の材料。
【請求項20】
湿潤剤がポリビニルピロリドンまたはデキストランを含む、請求項15〜19のいずれか一項記載の材料。
【請求項21】
ポリマーマトリックスが、重合されたメチルメタクリレートまたは2-ヒドロキシエチルメタクリレートを含む、請求項15〜20のいずれか一項記載の材料。
【請求項22】
約0.1〜約0.5wt%の湿潤剤を含む、請求項15〜20のいずれか一項記載の材料。
【請求項23】
約0.25〜約0.35wt%の湿潤剤を含む、請求項21記載の材料。
【請求項24】
細孔が約60〜約120nmの細孔径を有する、請求項15〜23のいずれか一項記載の材料。
【請求項25】
請求項15〜24のいずれか一項記載の材料を含むコンタクトレンズ。
【請求項1】
水、湿潤剤、モノマー、および該モノマーと共重合可能な界面活性剤を含む両連続マイクロエマルジョンを重合させて、相互連結された細孔を規定するポリマーを形成させる工程を含む、多孔質ポリマー材料の形成法であって、
前記湿潤剤が架橋性湿潤剤を含み、そのため、前記重合後、該架橋性湿潤剤の少なくとも一部が前記ポリマーと架橋される、形成法。
【請求項2】
架橋性湿潤剤がアクリル化ヒアルロン酸である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
架橋性湿潤剤がメタクリル化ヒアルロン酸である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
重合後、湿潤剤のうちの結合しなかった部分が、ポリマーおよび細孔内に分散され、該湿潤剤のうちの結合しなかった部分が材料から放出可能である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
湿潤剤がヒアルロン酸を含む、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
湿潤剤がポリビニルピロリドンまたはデキストランを含む、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
モノマーがメチルメタクリレートまたは2-ヒドロキシエチルメタクリレートである、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
界面活性剤が双性イオン界面活性剤である、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
双性イオン界面活性剤が、3-((11-アクリロイルオキシウンデシル)-イミダゾリル)プロピルスルホネートである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
マイクロエマルジョンが約0.1〜約0.5wt%の湿潤剤を含む、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
マイクロエマルジョンが約0.25〜約0.35wt%の湿潤剤を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
マイクロエマルジョンが約15〜約50wt%の水、約5〜約40wt%のモノマー、および約10〜約50wt%の界面活性剤を含む、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項記載の方法により形成された多孔質ポリマー材料。
【請求項14】
請求項13記載の多孔質ポリマー材料を含むコンタクトレンズ。
【請求項15】
相互連結された細孔を規定する透明なポリマーマトリックス;および
その少なくとも一部が前記ポリマーマトリックスと架橋される、湿潤剤
を含む多孔質材料。
【請求項16】
湿潤剤がメタクリル化ヒアルロン酸(MeHA)を含み、該MeOHの少なくとも一部がポリマーマトリックスと架橋される、請求項15記載の材料。
【請求項17】
湿潤剤がアクリル化ヒアルロン酸(AHA)を含み、該AHAの少なくとも一部がポリマーマトリックスと架橋される、請求項15記載の材料。
【請求項18】
湿潤剤が、ポリマーマトリックスおよび細孔のうちの1つまたは両方に分散された結合しなかった部分を含み、湿潤剤のうちの該結合しなかった部分が材料から放出可能である、請求項15〜17のいずれか一項記載の材料。
【請求項19】
湿潤剤がヒアルロン酸を含む、請求項15〜18のいずれか一項記載の材料。
【請求項20】
湿潤剤がポリビニルピロリドンまたはデキストランを含む、請求項15〜19のいずれか一項記載の材料。
【請求項21】
ポリマーマトリックスが、重合されたメチルメタクリレートまたは2-ヒドロキシエチルメタクリレートを含む、請求項15〜20のいずれか一項記載の材料。
【請求項22】
約0.1〜約0.5wt%の湿潤剤を含む、請求項15〜20のいずれか一項記載の材料。
【請求項23】
約0.25〜約0.35wt%の湿潤剤を含む、請求項21記載の材料。
【請求項24】
細孔が約60〜約120nmの細孔径を有する、請求項15〜23のいずれか一項記載の材料。
【請求項25】
請求項15〜24のいずれか一項記載の材料を含むコンタクトレンズ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2010−510347(P2010−510347A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537125(P2009−537125)
【出願日】平成19年11月17日(2007.11.17)
【国際出願番号】PCT/SG2007/000398
【国際公開番号】WO2008/060249
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(508305029)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (36)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月17日(2007.11.17)
【国際出願番号】PCT/SG2007/000398
【国際公開番号】WO2008/060249
【国際公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(508305029)エージェンシー フォー サイエンス, テクノロジー アンド リサーチ (36)
【Fターム(参考)】
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