Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
架橋方法
説明

架橋方法

本発明は、分岐多価不飽和モノマーをメタセシス重合反応により重合する工程を含んでなる架橋ポリマーの調製方法であって、前記分岐多価不飽和モノマーが、メタセシス重合が架橋ポリマーを生成し、不揮発性エチレン型不飽和副生成物を実質的に全く生成しないようにメタセシス反応による重合を受けることのできる鎖状エチレン型不飽和基を含んでいる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリマーの調製方法および前記方法により調製された架橋ポリマーに関する。本発明は、前記方法により架橋できる前駆体組成物および架橋ポリマーの調製に使用できる化合物を調製する方法にも関する。架橋ポリマーを調製する方法は、ポリマー系コーティングおよび接着剤用途に使用するのに特に好適であり、したがって、以下でこれらの用途に関して本発明を説明するのが簡便であろう。しかし、前記方法が他の用途にも利用できることを理解されたい。
【背景技術】
【0002】
架橋ポリマーは、ポリマー鎖のネットワークであって少なくとも鎖の一部が橋かけ基により結合しているネットワークとして一般的に特徴づけることができる。橋かけの性質は、橋かけ基がポリマー鎖と結合を形成する方法と同様に、かなり変わることがある。架橋ポリマー中に存在する橋かけ基の数、すなわち架橋度も著しく変わることがあり、ポリマー中の架橋度の増加と共に有効分子量、粘度および溶解度も変化する。相当な架橋度を持つポリマーは、一般的に溶媒に実質的に不要である。
【0003】
架橋ポリマーは、一般的に、非架橋の対応物に比べ優れた物性および機械的性質を示す。したがって、ポリマー系コーティングおよび接着剤(すなわち、塗料、接着剤、フィラー、プライマーおよびシーラントなど)の性質は、そのような製品に架橋ポリマー構造を与えることにより一般的に向上させることができる。しかし、その架橋ポリマー構造のため、架橋ポリマーは、一般的に、コーティングおよび接着剤のほとんどの用途に要求される方法で基材に塗布することができない。特に、架橋ポリマーは、一般的に望まれる形状に成型できず、基材の表面に層として塗布することもできない。
【0004】
ポリマー系コーティングおよび接着剤に架橋構造および基材に容易に塗布される能力を与えるため、製品の基材への塗布の後にそのような架橋が起こるように製品が配合されることが多い。そのような塗布後架橋(post−application crosslinking)を達成するために利用される通常の配合技術の1つは、反応性官能基を含む少なくとも1種のポリマーを製品に与えることである。反応性官能基は、製品の塗布後に反応して架橋を促進する部位を与える。
【0005】
そのような製品にこれらの反応性官能基を与える1手法は、不飽和天然油(例えばグリセリド油)またはそれからつくられるアルキド樹脂を製品に配合することであった。これらの物質が配合された組成物は、世界的に使用されているコーティングの高いパーセンテージを占めており、自然乾燥エナメルまたは油性塗料と通常称されている。そのような塗料の乾燥または硬化は、大気中の酸素とそのような油から誘導されるエチレン型不飽和基との反応から生じ、次に自動酸化として知られるプロセスにおいて組成物の架橋を促進する。
【0006】
しかし、架橋ポリマー構造の形成に効果的であるにもかかわらず、自動酸化プロセスは非常に時間がかかる。第1の膜を乱さずに第2の塗料膜を塗布するのに十分な架橋は、膜を一晩乾燥しないと得られない。その場合でさえ、温度および湿度などのある種の環境的な因子が乾燥速度を遅くすることがある。
【0007】
自動酸化のプロセスは長期間続き(すなわち、塗料の乾燥後)、塗料膜の物性の低下を起こすこともある。この低下が、特に外部環境でのそのようなコーティングの性能を限定する。油性塗料もやはり、直射日光の存在しない状態で黄変を起こしやすい。これらの塗料の黄変する傾向は、ポリマーの脂肪酸セグメントから誘導された残存不飽和の大気による種々の反応から生じると考えられている。
【0008】
そのような製品にこれらの反応性官能基を与える別な手法は、水と反応する官能基を含むポリマーをそれらに配合することであった。この場合、製品は、塗布後に大気中の水分に曝されて架橋構造を形成するように配合できる。しかし、それらに固有な感湿性のため、そのような製品の製造、包装および貯蔵の間湿気を排除するよう多大な配慮が必要である。製品から湿気を排除する配慮をしても、湿分硬化製品は貯蔵寿命が限られている場合が多い。
【0009】
コーティングおよび接着剤は2液型の形態でも通常提供されており、1液が、他の液に含まれるポリマーの官能基に対して反応性のある官能基を含むポリマーを含んでいる。この場合、各液は塗布の前に混合され、架橋は、塗布後に、各液から提供されるそれぞれの官能基の反応により起こる。2液型のコーティングおよび接着剤調合品は、一般的に感湿性が低いという利点を有し、したがって良好な貯蔵寿命を有することが多い。しかし、その反応性のため、各成分は、最も簡便であろうはずの1液組成物の形態で提供することができない。さらに、2液が混合されると、比較的短い時間の間に製品を使用しなければならない。
【0010】
上述の湿分硬化および2液型コーティングおよび接着剤製品は塗布後架橋ポリマー構造を効果的に形成するものの、架橋部位を与えるために使用される反応性官能基は製品を毒性にする。例えば、そのような製品に通常使用される反応性官能基には、イソシアネート、アミン、エポキシドおよびシアノアクリレートエステルがある。したがって、そのような製品の製造および使用の両方に関連して職業上の健康・安全のリスクがあり得る。さらに、そのような製品に使用される反応性官能基を含んでなるモノマーは一般的に比較的高価である。
【0011】
塗布後架橋を得るために使用される他の一般的な配合技術は、1液がラジカル開始剤を含みもう1つの液が架橋性ポリマー組成物を含む2液形態で製品を提供することである。この場合、開始剤は塗布の前にポリマー組成物と混合され、次いで混合物が一般的にすぐに基材に塗布され、開始剤により引き起こされるラジカル媒介架橋反応により塗布後に架橋が起こる。前記の配合技術と同様に、この技術も塗布後架橋を得る効果的な手段を提供する。しかし、そのようなポリマー組成物は時期尚早で自発的な架橋を起こしやすく、その過程は非常に発熱性で潜在的に爆発性である。したがって、これらのポリマー組成物には、典型的には、これを防止するための抑制剤が配合される必要がある。抑制剤の使用にもかかわらず、ポリマー組成物は、その貯蔵寿命が限定されていることが多い。さらに、ペルオキシ結合を含むものなど、これらの製品に通常使用されている開始剤は、典型的には、非常に毒性が高く、それ自体潜在的に爆発性である。
【0012】
したがって、上述の方法に関連する不都合の少なくともいくつかを克服または緩和できる、架橋ポリマーを調製する別な方法を提供する必要がある。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、架橋ポリマーを調製する方法であって、メタセシス重合反応により分岐多価不飽和モノマーを重合する工程を含む方法を提供するが、前記分岐多価不飽和モノマーは、メタセシス重合が架橋ポリマーを生成し不揮発性エチレン型不飽和副生成物を実質的に全く生成しないようなメタセシス反応による重合を受けることのできる鎖状エチレン型不飽和基を含む。
【0014】
典型的には、本願に言及される分岐多価不飽和モノマーは、少なくとも3つの部分が結合している原子またはコアを含んでなるが、その少なくとも3つの部分は、メタセシス反応による重合を受けることのできる1つまたは複数の鎖状エチレン型不飽和基を含む。
【0015】
分岐多価不飽和モノマーがメタセシス経路により重合して架橋ポリマー構造を与えることが見いだされた。本発明の方法は、ポリマー系コーティングおよび接着剤に使用できる架橋ポリマーを調製するのに特に好適であり、塗布後架橋を与えるのに容易に利用できる。
【0016】
以下に詳細に議論するように、分岐多価不飽和モノマーは、ジエンモノマーなどの他の不飽和モノマーとともに重合することもできる。
【0017】
当業者は、メタセシス重合反応がポリマー生成物および副生成物としてエチレン型不飽和化合物を生み出すことを理解するであろう。本発明による架橋ポリマーを形成する際に、メタセシス重合が不揮発性エチレン型不飽和副生成物を実質的に全く生み出さないことが重要である。言い換えると、架橋ポリマーに加え、実質的に全てのメタセシス重合の副生成物が揮発性エチレン型不飽和副生成物である。揮発性であるとは、エチレン型不飽和副生成物が反応混合物から容易に分離可能であることである。これは架橋ポリマーの形成を促進するばかりでなく、好都合にも、架橋反応生成物が、例えば塗料、接着剤、フィラー、プライマーおよびシーラント製品(以下で簡単に、コーティング(複数可)および接着剤(複数可)またはコーティングおよび接着剤製品と称する)に効果的に使用されることを可能にもする。
【0018】
メタセシス重合反応における不揮発性エチレン型不飽和副生成物の形成は、コーティングおよび接着剤製品としての使用に不適な架橋反応生成物を生み出しやすい。特に、コーティングおよび接着剤中にそのような不揮発性エチレン型不飽和副生成物が存在すると、乾燥を妨げ(すなわち、それらは粘着性のままでいる)、その接着性または結合性を低下または阻害し、一般的にその物性および/または機械的性質を低下させる。
【0019】
あるエチレン型不飽和副生成物が不揮発性であるか揮発性であるかは、この性質が評価される圧力および温度の両方に依存するであろう。本発明の文脈において、「不揮発性」および「揮発性」の用語は、あるエチレン型不飽和副生成物の絶対的な性質を意味するものではなく、架橋ポリマーのコーティングまたは接着剤としての使用の適性を考慮する際の実際的な指針として使用されるものである。したがって、不揮発性エチレン型不飽和副生成物を実質的に全く生み出さないこれらのメタセシス重合反応は、コーティングまたは接着剤としての使用に好適な架橋ポリマーを提供しやすい。この文脈において「実質的に全くない」とは、一般的に、メタセシス重合反応により生み出されるエチレン型不飽和副生成物の全量に対して、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満の不揮発性エチレン型不飽和副生成物を意味するであろう。
【0020】
簡便な評価基準としてだけであるが、コーティングおよび接着剤の文脈において、当業者は、エチレン型不飽和副生成物が、(1)室温で(約15−35℃)24時間以内に、(2)約150℃で10分以内に、または(3)約230℃で約30秒以内に(すなわち、そのような製品を使用するための通常の乾燥形態)、本発明により形成された架橋ポリマーを含んでなるコーティングまたは接着剤から大気圧で気化しない場合、そのエチレン型不飽和副生成物を「不揮発性」であると考えるであろう。
【0021】
あるいは、簡便な評価基準としてだけであるが、コーティングおよび接着剤の文脈において、当業者は、エチレン型不飽和副生成物が、約12を超える炭素原子を含む場合、そのエチレン型不飽和副生成物を「不揮発性」であると考えるであろう。言い換えると、エチレン型不飽和副生成物は、好ましくは2から約12の、より好ましくは2から約9の炭素原子を含む。
【0022】
したがって、本発明は、コーティングまたは接着剤として、あるいはコーティングまたは接着剤の一部として好適な架橋ポリマーを調製する方法をさらに提供するが、前記方法はメタセシス重合反応により分岐多価不飽和モノマーを重合する工程を含んでなり、前記分岐多価不飽和モノマーは、メタセシス重合が架橋ポリマーを生み出すようなメタセシス反応による重合を受けることのできる鎖状エチレン型不飽和基を含む。
【0023】
本発明により提供される顕著な利点は、架橋ポリマーが多種多様なモノマーから調製できる点である。特に、使用されるモノマーは比較的不活性な鎖状エチレン型不飽和基を含むだけでよい。したがって、そのようなモノマーは一般的に、従来の架橋ポリマー調製に使用されるものより毒性が低く、時期尚早で自発的な架橋も一般的に起こしにくい。さらに、好適なモノマーは、天然油などの比較的安価で持続可能な資源から提供可能である。
【0024】
本発明により架橋ポリマーを調製する際に、末端または近末端(near terminal)鎖状エチレン型不飽和基を含む分岐多価不飽和モノマーの使用が好ましいことがある。そのようなモノマーを使用すると、不揮発性エチレン型不飽和副生成物の形成が、実質的に避けられないとしても、好都合にも低減できる。「末端または近末端」という表現は、鎖状エチレン型不飽和基が、有機部分(すなわちビニル基)の端に、またはそのような部分の端から6原子以内、好ましくは4原子以内に位置することを意味する。例えば、不飽和基(複数可)は、Rで示される有機部分の端の6原子以内に位置し、すなわち、R−C=C−C−C−C−C、R−C−C=C−C−C−C、R−C−C−C=C−C−C、R−C−C−C−C=C−C、またはR−C−C−C−C−C=Cである。
【0025】
末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基を含む分岐多価不飽和モノマーはどのような好適な手段で調製してもよい。しかし、交差メタセシス反応を利用してこれらのモノマーを調製するのが特に便利であることが見いだされた。
【0026】
したがって、本発明は架橋ポリマーを調製する方法であって、
1)1つまたは複数の鎖状エチレン型不飽和基を含んでなる化合物に、低分子量エチレン型不飽和化合物による交差メタセシス反応を施し、
(a)分岐多価不飽和モノマーとして使用可能な、かつ/または
(b)1種または複数の他の化合物と反応して、分岐多価不飽和モノマーとして使用可能な化合物を提供する
1つまたは複数の末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基を含んでなる化合物を製造することにより、メタセシス反応による重合を受けることのできる末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基を有する分岐多価不飽和モノマーを調製する工程;および
2)メタセシス重合反応により分岐多価不飽和モノマーを重合し架橋ポリマーを与える工程を含んでなる方法も提供する。
【0027】
そのような交差メタセシス反応経路の利用により、安価な天然油から誘導される分岐多価不飽和モノマーが、独特な架橋性コーティングおよび接着剤の調製に好都合にも利用できる。とりわけ、そのような方法論により、今までコーティングおよび接着剤に使用するのが不適であった、いわゆる不乾性または半乾性天然油の多くが今や利用できるようになる。例えば、モノ不飽和トリグリセリド(すなわち、トリグリセリドの各脂肪酸の腕中に1つの二重結合)を容易に利用して架橋性コーティングおよび接着剤を調製できる。
【0028】
したがって、本発明は、架橋ポリマーを形成するメタセシス反応による重合を受けることのできる鎖状エチレン型不飽和基を含む分岐多価不飽和モノマーおよびオレフィンメタセシス触媒を含んでなるコーティング(塗料など)または接着剤製品も提供する。
【0029】
本発明の他の態様を以下に記載する。
【0030】
発明の態様
特に断りのない限り、「鎖状」という用語が、「ジエンモノマー」、「エチレン型不飽和基」または「エチレン型不飽和」または類似の表現と共に本願で使用される場合、これは、その基またはモノマーの不飽和性の性質を言及するものであり、その基を含むモノマーまたは部分の他の側面を言及するものではないとする。したがって、「鎖状」エチレン型不飽和基を含む部分は環状基を含むこともあるが、エチレン型不飽和基自体は環状構造に含まれていないという点でその性質が鎖状である。「鎖状」ジエンモノマーの場合、エチレン型不飽和基のみがその性質として鎖状である必要がある。
【0031】
メタセシスによる鎖状ジエンモノマーの重合は一般的によく知られており、通常ADMET(鎖状ジエンメタセシス)重合と称される。メタセシス反応全てと同様に、ADMET重合は、通常オレフィンメタセシス触媒と呼ばれる遷移金属アルキリデン錯体と鎖状エチレン型不飽和基が反応するものである。機械論的には、ADMET重合によるポリマー鎖の成長は、2つのメタロシクロブタン中間体種の形成を含み、各成長工程の間ポリマー鎖は活性金属種から放出される。成長工程は、好ましくはエチレンなどの揮発性分子であるエチレン型不飽和反応副生成物の遊離も伴うが、これは重合を促進するため反応環境から除去する必要がある。
【0032】
ADMET重合反応は、本来直鎖不飽和骨格を有するポリマーを与える。研究により、これらのポリマーの不飽和性を二次反応に使用し架橋部位を与えられることが示された。特に、ADMET重合反応から誘導されるポリマーに、従来の熱、紫外線および化学修飾プロセスを施すと架橋ポリマー構造が得られた(Macromolecules,1992,25,2049−2052)。
【0033】
メタセシス反応経路を利用して効果的で効率よい方法で架橋ポリマーが直接調製できることが見いだされた。
【0034】
本発明によると、架橋ポリマーは、分岐多価不飽和モノマーを重合して調製できる。分岐多価不飽和モノマーは、典型的には、少なくとも3つの部分が結合している少なくとも1つの原子またはコアを有し、前記の少なくとも3つの部分は鎖状エチレン型不飽和性を含む。原子またはコアは、それに接続する3を超える部分を有してもよく、前記の3を超える部分は鎖状エチレン型不飽和性を含んでよい。
【0035】
「少なくとも3つの部分が結合している原子またはコア」を有する分岐多価不飽和モノマーの意味するところをはっきりと説明するため、少なくとも一般構造単位(I)を含むものとしてモノマーを簡便に表すことができる:
BR123(I)
上式において、Bは原子またはコアであり、同じでも異なっていてもよい各部分R1、R2およびR3はメタセシス反応による重合を受けることのできる少なくとも1つの鎖状エチレン型不飽和基を含む。
【0036】
原子またはコア(B)は、それに結合している少なくとも3つの部分を持つことができなくてはならず、単純化するとそれ自体分岐点または接合点として見ることができる。本発明により使用される分岐多価不飽和モノマーは、1を超えるそのような分岐点または接合点を有してよい。この場合、さらなる分岐点(複数可)または接合点(複数可)は、一般構造単位(I)中の原子またはコア(B)に結合している1つまたは複数の部分に存在する他の原子またはコアにより提供できる。したがって、分岐多価不飽和モノマーは、分岐点または接合点を与える原子およびコアの両方を含んでよい。
【0037】
一般構造単位(I)中のBは原子である場合、一般的にはC、SiまたはNであろう。前記原子がCまたはSiである場合、分岐原子は、それに結合している第4の部分を有し、それもメタセシス反応による重合を受けることのできる少なくとも1つの鎖状エチレン型不飽和基を含んでよい。
【0038】
分岐多価不飽和モノマーと共に使用される「コア」という用語は、少なくとも3つの部分が結合している分子構造を意味する。例えば、コアは、ベンゼンまたはシクロヘキサン環により与えられる環状芳香族または非芳香族構造でも、その縮合誘導体でもよく、あるいはアルキル基により共に結合しているそのような環の集合体のこともある。コアは、オリゴマー構造でもポリマー構造でもよい。Bが原子である一般構造単位(I)と対照的に、Bが「コア」である場合、コアに結合できる少なくとも1つの鎖状エチレン型不飽和基を含む部分の数は、4よりはるかに高いことがある。
【0039】
上述のとおり、分岐多価不飽和モノマーは、典型的には、原子またはコアに結合している少なくとも3つの部分を含んでなり、そのそれぞれは、メタセシス反応による重合を受けることのできる鎖状不飽和基を少なくとも1つ含んでいる。この方式で構成されているエチレン型不飽和基を持つことにより、好都合にもメタセシス反応によりモノマーを重合して架橋ポリマーを直接得ることができる。対照的に、鎖状ジエンモノマーを従来のADMET重合反応により重合すると、本質的に、直鎖骨格を有するポリマーが得られる。
【0040】
鎖状エチレン型不飽和基が「メタセシス反応による重合を受けることのできる」といわれる場合または「メタセシス媒介反応経路により」起こる架橋反応への言及がなされる場合、これらの記述は、モノマーの鎖状エチレン型不飽和基が、架橋ポリマー構造を形成する過程でメタセシス触媒と反応できるまたは反応することを意味するものとする。
【0041】
当業者は、ある鎖状エチレン型不飽和基がメタセシス反応による重合を受ける感受性に影響する因子を理解するであろう。例えば、鎖状エチレン型不飽和基を含む部分は、メタセシス触媒に対する不飽和基の反応性に影響する立体的および/または電子的効果を与えることができる。さらに、上記で議論したとおり、メタセシス反応を促進するには、重合されるモノマーからそれ自体誘導される、前記反応のエチレン型不飽和副生成物が、反応媒体から除去できるように十分に揮発性でなくてはならない。
【0042】
一般的に、鎖状エチレン型不飽和基がメタセシス反応による重合を受ける感受性は、前記不飽和基の一般的近接(general proximity)における立体混雑を低下させることにより増大可能である。したがって、原子またはコアに結合している前記の少なくとも3つの部分のそれぞれに含まれるエチレン型不飽和基は、末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基であることが好ましく、できる限り非置換の末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基であることが好ましい。
【0043】
実質的に避けられないとしても、架橋反応の間の望ましくない不揮発性エチレン型不飽和副生成物の形成を低減するには、モノマー中の実質的に全てのエチレン型不飽和基が末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基であることが好ましく、できる限り非置換の(すなわち、−CH=CH−、または−CH=CH2)末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基であることが好ましい。
【0044】
鎖状エチレン型不飽和基の機能および分岐モノマー内のそれらの配置を理解すれば、当業者は、鎖状不飽和基自体を除けば、モノマーの残りの部分の構造および組成は、架橋プロセスに関して特に重要ではないことを理解するであろう。したがって、原子またはコアに結合できメタセシス反応による重合を受けることのできる少なくとも1つの鎖状エチレン型不飽和基を含めば、一般的に、どのような有機基も部分として機能できる。したがって、前記部分は環状および/または分岐および/または直鎖基を含んでよく、種々の官能基を含みまたはそれらにより置換されていてよく、N、O、S、Pなどの1つまたは複数のヘテロ原子を含んでよく、上記で定義した1つまたは複数のさらなる原子またはコア(B)を含んでもよい。
【0045】
本発明により与えられる利点は、架橋ポリマーが多種多様な分岐不飽和モノマーを利用して調製できることである。前記のことを考慮して、当業者であれば好適なモノマーを容易に選択できるであろう。モノマーは、比較的低分子量であってもよいし、オリゴマー性化合物またはポリマー化合物を含んでもよい。例えば、分岐多価不飽和プレポリマーを利用して架橋ポリマーを調製できる。
【0046】
本発明により使用できるオリゴマー性またはポリマー性分岐多価不飽和モノマーはきわめて複雑な構造を持っていてもよい。例えば、モノマーは、少なくとも3つの部分がペンダント基として結合している分岐または直鎖骨格を有するポリマー/オリゴマーの形態でもよく、その場合ペンダント基の少なくとも3つはそれぞれ、メタセシス反応による重合を受けることのできる少なくとも1つの鎖状エチレン型不飽和基を含む。実際、そのようなポリマー/オリゴマー骨格は、このようなペンダント基を多く含み、例えば20を超えるペンダント基を含むことがある。
【0047】
ポリマー性/オリゴマー性分岐多価不飽和モノマーは、フリーラジカルおよび縮合およびメタセシス重合技術などの従来の重合技術を利用して調製可能である。
【0048】
そのような手法の1つは、重合すると、必要な不飽和性を含むペンダント基を与えるモノマーを利用してポリマー性/オリゴマー性分岐多価不飽和モノマーを調製するものである。この場合、利用される重合の様式は、ペンダント基がその必要な不飽和性を保持できるようにしなければならない。
【0049】
他の手法は、後に反応して必要な不飽和性を有するペンダント基を与えることのできる反応性官能基を有するポリマー/オリゴマーを調製するものである。例えば、スチレン無水マレイン酸コポリマーを従来の手段により調製し、その後ウンデシレンアルコールなどの試薬と反応させて、必要な不飽和性を有するペンダント基を与えることができる。
【0050】
直前に記載した手法のどちらにおいても、ポリマー骨格に結合しているペンダント基の数は、ポリマー/オリゴマーの調製に利用されるモノマーの比を変えることにより、好都合にも変えることができる。
【0051】
本発明により使用される分岐多価不飽和モノマーは、交差メタセシス反応により直接または間接的に調製できる。例えば、末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基を含む分岐多価不飽和モノマーを提供するには、1つまたは複数の鎖状エチレン型不飽和基を含んでなる化合物に、低分子量エチレン型不飽和化合物による交差メタセシス反応を施すことができる。そのような化合物は、一般的に、3つ以上の末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基をすでに含んではいないであろう。
【0052】
1つまたは複数の鎖状エチレン型不飽和基を含んでなる化合物は、少なくとも3つの部分が結合している原子またはコアを有する分岐多価不飽和化合物でよく、前記の少なくとも3つの部分は1つまたは複数のエチレン型不飽和基を含み、例えば天然油である。この場合、交差メタセシス生成物は、末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基を含む分岐多価不飽和モノマーであろうし、本発明による架橋ポリマーの調製に使用できるであろう。得られた分岐多価不飽和モノマーを、1種または複数の他の化合物または試薬と反応させて、例えば、化合物の分子量を増加させる(すなわち、プレポリマーを形成する)こともできる。次いで、この「修飾」分岐多価不飽和モノマーを使用して本発明による架橋ポリマーを調製できる。
【0053】
直前に記載した交差メタセシス反応の具体例は、以下に示す植物油とエテンの交差メタセシス反応であろう。
【化1】

【0054】
1つまたは複数の鎖状エチレン型不飽和基を含んでなる化合物は、直前に記載した分岐多価不飽和化合物のプレポリマーの形態でもよい。例えば、前記化合物は、モノグリセリドと無水フタル酸との反応から調製されたアルキド樹脂でもよい。樹脂に、低分子量エチレン型不飽和化合物による交差メタセシス反応を施し、末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基を含んでなるアルキド樹脂を得て、次いでそれを使用して本発明による架橋ポリマーを調製することもできる。そのようなアルキドモノマーの理想構造を以下に示す。
【化2】

【0055】
あるいは、交差メタセシス反応を利用して、1種または複数の化合物と反応して、本発明による架橋ポリマーを調製するのに使用できる分岐多価不飽和モノマーを形成できる前駆体化合物を調製してもよい。例えば、1つまたは複数の鎖状エチレン型不飽和基を含んでなる化合物は天然油から誘導された脂肪酸または脂肪酸エステルでもよい。そのような化合物に、低分子量エチレン型不飽和化合物による交差メタセシス反応を施し、末端または近末端鎖状エチレン型不飽和脂肪酸または脂肪酸エステルを得ることができる。次いで、得られた化合物を、1種または複数の化合物と反応させ、本発明による架橋ポリマーを調製するのに使用できる分岐多価不飽和モノマーを得ることができる。この場合、そうでなくてはコーティングおよび接着剤製品に使用されないであろう脂肪酸または脂肪酸エステルを、そのような製品のための貴重な資源に転換できる。
【0056】
直前に記載した交差メタセシス反応の具体例は、以下に示す脂肪酸エステルとエテンの交差メタセシス反応であろう。
【化3】

【0057】
当業者は、上述の交差メタセシス反応がエチレン型不飽和反応副生成物も生み出すことを理解するであろう。しかし、架橋ポリマーの形成中に生み出されるエチレン型不飽和反応副生成物とは違い、そのような交差メタセシス反応の間に生み出される所望の末端または近末端エチレン型不飽和化合物とエチレン型不飽和反応副生成物は一般的に互いから容易に分離できる。
【0058】
「天然油」とは、通常植物油と称される油およびさらに魚油を意味する。そのような油は、少なくとも1つのエチレン型不飽和基を含むはずであり、一般的にはトリグリセリドを含むであろう。好適な天然油には、キャノーラ油、大豆油、亜麻または亜麻仁油、桐油、ヒマシ油およびこれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0059】
そのような油から誘導された不飽和脂肪酸および脂肪酸エステルも本発明にしたがい使用できる。
【0060】
交差メタセシス反応の文脈における「低分子量エチレン型不飽和化合物」とは、C2−C6エチレン型不飽和化合物を意味する。
【0061】
低分子量の単純なアルケンを使用する交差メタセシス反応が長年研究されてきた。上記の反応に示されているとおり、これらの交差メタセシス反応に使用されている単純なアルケンの1つであるエテンは最大の関心を集めてきた。エテンを含む交差メタセシス反応は一般的にエテノリシス反応と呼ばれている。
【0062】
そのようなエテノリシス反応を研究するのに捧げられた多大な研究にもかかわらず、この技術を利用する末端不飽和化合物の調製、特に末端不飽和カルボニル化合物の調製に関連して多くの問題が残っている。これらの問題には、低い転化率および選択性、比較的高い触媒添加量の必要性、長い反応時間および供給原料の種類に対するいくつかの制限などがある。
【0063】
今でも克服するのが困難であるエテノリシス反応に関する大きな問題として、触媒サイクル中のメチリデン中間体の生成がある。ルテニウムメチリデン錯体は、オレフィンメタセシス反応において比較的低い開始速度を持つことが示されている。メチリデン中間体が存在する反応では、温度を上げることにより持続したメタセシス活性が得られる。しかし、この手法は触媒分解の速度も高めるので、触媒添加量を増やすことが必要となる。
【0064】
エテノリシス反応に関するさらなる問題は、反応の生成物(すなわち末端オレフィン)およびエテンが、メタセシス触媒との結合に、出発物質に存在する内部オレフィンと競争することがある点である。これは反応時間を長くし、反応の間に触媒の著しい分解が起こるので触媒添加量にも影響を与える。
【0065】
上述のとおり、エテノリシス反応に使用できる供給原料の種類にもいくつかの制限がある。例えば、桐油など共役多価不飽和脂肪酸を含む天然油は、一般的にエテノリシス反応において転化率が低い。この問題は、共役でない他の多価不飽和油にも広がることがある。例えば、ルテニウム系オレフィンメタセシス触媒は、オレフィンメタセシス反応に加えオレフィン異性化反応を触媒する傾向がある。したがって、多価不飽和天然油に通常存在する1,4−ジエンは、メタセシス触媒の存在下で異性化を起こして共役オレフィンを与えることがあり、そのため上記と同じ問題である。
【0066】
したがって、上述のエテノリシス反応に関連する欠点の少なくとも一部を克服または緩和できる、鎖状不飽和化合物を調製する別な方法を提供する必要がある。
【0067】
本発明は、近末端エチレン型不飽和カルボニル化合物を調製する方法であって、鎖状エチレン型不飽和基を含んでなるカルボニル化合物に、実質的に純粋な2−ブテンとの交差メタセシス反応を施す工程を含んでなる方法をさらに提供する。
【0068】
実質的に純粋な2−ブテンは、近末端エチレン型不飽和カルボニル化合物の調製に効果的かつ効率よく利用可能であることが見いだされた。2−ブテンは、シスでもトランスでも、あるいはこれらの組み合わせでもよい。交差メタセシス反応に2−ブテンを使用する、エチレン型不飽和カルボニル化合物の製造が報告された。しかし、そのような反応は、非常に収率が低かった。理論に拘束されることを望むわけではないが、2−ブテンの市販供給源は、そのような反応に使用されるオレフィンメタセシス触媒(例えば、ルテニウム系メタセシス触媒)を被毒する十分な量の不純物を含むと考えられている。そのような不純物は、少なくとも、鎖状メタセシス反応の毒である1,3−ブタジエンを含んでいると考えられている。したがって、2−ブテンを利用する交差メタセシス反応(すなわちブテノリシス)は現在まで効率が低く実際的には無効であった。
【0069】
実質的に純粋な2−ブテンを使用することにより、生産ターンオーバー数(TON)(productive turn over number)が約5,000を超え、好ましくは約10,000を超え、より好ましくは約20,000を超え、最も好ましくは90,000以上である交差メタセシス反応が好都合にも実施できる。
【0070】
「実質的に純粋な」2−ブテンとは、約5,000を超えるターンオーバー数が得られるほど2−ブテンが不純物を含まないことを意味する。典型的には、不純物は、2−ブテンに対して約0.1モル%以下の量で存在すべきである。
【0071】
2−ブテンの使用は、メチリデン中間体が触媒サイクルの間に形成されるのを好都合にも防ぎ、そのためエテノリシス反応におけるメチリデン中間体に関連する問題を回避できると考えられている。2−ブテンを使用する他の利点は、内部エチレン型不飽和化合物として未反応エチレン型不飽和カルボニル化合物と競争して触媒に結合する程度がエチレンと比べて低いことがある。
【0072】
ブテノリシス反応の転化率および選択性は、2−ブテンとエチレン型不飽和カルボニル化合物の比により制御できる。高い選択性および転化率を達成するために、エチレン型不飽和カルボニル化合物に対して大過剰の2−ブテンを使用すべきである。反応は、追加の溶媒があってもなくても実施でき、好ましくは、高温(1℃を超える)および高圧(1気圧を超える)または低温(1℃以下)および大気圧のいずれかで実施できる。
【0073】
当業者は、そのようなブテノリシス反応が、ペンダント基の第2原子と第3原子の間にエチレン型不飽和基がある近末端エチレン型不飽和カルボニル化合物を与えることを理解するであろう。言い換えると、エチレン型不飽和基は、末位から2番目のエチレン型不飽和基(すなわち、R−C−C−C−C=C−C)であろう。
【0074】
本発明によるブテノリシス反応は、多種多様なエチレン型不飽和カルボニル化合物を使用して簡便に実施できる。「エチレン型不飽和カルボニル化合物」とは、エステル、アミド、ケトン、アルデヒドまたはカルボン酸などの1つまたは複数のカルボニル官能基を含んでなるエチレン型不飽和化合物を意味する。上記のことを考慮して、当業者ならば、この目的のために好適なエチレン型不飽和カルボニル化合物を容易に選択できるであろう。
【0075】
不飽和天然油あるいはそれから誘導される脂肪酸または脂肪酸エステルを使用し本発明によるブテノリシス反応を簡便に実施して、近末端エチレン型不飽和カルボニル化合物を調製できる。ブテノリシス反応は、本発明により架橋できる分岐多価不飽和モノマーの調製に利用するのに特に好適である。例えば、ブテノリシス反応を利用し、以下に示すとおり亜麻仁油から分岐多価不飽和モノマーを調製できる。
【化4】

【0076】
本発明による架橋ポリマーを調製する方法は、好都合にも、数多くの方法および種々の条件で実施できる。そのような汎用性は、一部分は、液体または固体形態で分岐多価不飽和モノマーを提供する能力から生じ、室温でメタセシス反応により重合ができるようにモノマーを選択する能力からも生じている。
【0077】
架橋速度を高め、密に架橋し不活性なコーティングを製造するため、架橋性コーティングによる車体または連続コイルのコーティングなどの工業プロセスは、高温(すなわち、約240℃まで)で実施されることが多い。しかし、高温の利用が都合悪く、または不可能である温度に敏感な基材または民生用(consumer applications)には、室温で、または穏やかな加熱(すなわち100℃未満の温度)のみで利用しやすい架橋反応を利用することが非常に望ましい。そのような架橋反応は、もちろん加熱すれば加速されるであろうが、主な利点は、反応が民生用に利用可能である点である。本発明による架橋方法は、そのような民生用に特に好適である。
【0078】
本発明の方法を実施する際に、必要な試薬は、種々の異なる2液系で提供可能である。本発明のコーティングおよび接着剤製品は、そのような2液硬化系の形態で簡便に提供できる。
【0079】
単純な2液系は、本発明による反応に好適な分岐多価不飽和モノマーを含んでなる第1液およびメタセシス触媒を含んでなる第2液を含んでなる。各液の調合物は塗布の前に容易に混合でき、メタセシス媒介反応経路により塗布後に架橋が起こることが可能となる。
【0080】
従来の2液系に対してそのような2液系がもたらす利点の1つは、2種の液が混合された後、密封容器に混合物を封入するだけで架橋反応を遅らせることができる点である。混合物をこのように閉じ込めることにより、揮発性アルケン副生成物が反応環境から出ることができず、メタセシス反応を遅延できる。次に、これが、混合後の製品加工可能塗布時間を拡大することができる。
【0081】
モノマーおよび触媒の性質により、架橋は室温で起こることもあるが、混合された2液調合物を加熱して架橋を促進することが必要な場合もある。加熱して架橋の促進が必要な場合の例は、モノマーが固体形態で与えられる場合である。固体形態では、好都合にも、モノマーを粉体化して、従来の粉体塗装技術を利用して基材に塗布できる。次いで、触媒を噴霧などの技術によりモノマーに塗布できる。あるいは、触媒と固体モノマーの間の反応性が限られているため、基材に塗布する前に触媒を粉体化モノマーと合わせてもよい。架橋を促進するため、触媒/モノマーの組み合わせは、赤外(IR)放射などの公知の方法で加熱できる。これらの状況で、一般的にモノマーの融解を起こすに十分な熱が加えられる。
【0082】
別な2液系として、第1液が分岐多価不飽和モノマーおよび鎖状ジエンモノマーを含んでなり、第2液がメタセシス触媒を含んでなる。この2液系は、上述の系とほぼ同じ方法で利用できる、しかし、この場合鎖状ジエンモノマーの存在により、生じる架橋ポリマーの組成および構造を調整するのにかなりの融通が得られる。とりわけ、得られる架橋ポリマーの架橋密度は容易に調整できる。例えば、第1液にジエンモノマーを与えると、得られる架橋ポリマーの架橋密度を下げることができる。逆に、第1液にジエンモノマーをほとんどまたは全く与えないと、得られる架橋ポリマーの架橋密度を上げることができる。
【0083】
したがって、本発明の方法は、メタセシス重合反応による鎖状ジエンモノマーの重合をさらに含んでなる。
【0084】
本発明により調製される架橋ポリマーの架橋密度は、分岐多価不飽和モノマーの性質を変えることにより変動可能であることにも留意されたい。この場合、互いに一番近いモノマーの鎖状エチレン型不飽和基を有することにより、得られる架橋ポリマーの架橋密度は、不飽和基同士がより離れている場合よりも一般的に高くなるであろう。
【0085】
したがって、分岐多価不飽和モノマーの性質の変化および鎖状ジエンモノマーの使用により、前記方法は、得られる架橋ポリマーの組成および構造を調整するかなりの融通を供給する。
【0086】
架橋ポリマーの調製時に分岐多価不飽和モノマーと共に使用すると、鎖状ジエンモノマーも、架橋プロセスの間にメタセシス触媒と反応するはずである。したがって、ジエンモノマーは、メタセシス反応による重合を受けることに感受性のある少なくとも2つのエチレン型不飽和基をも持たなければならない。好適な鎖状ジエンモノマーは一般的に公知であり容易に利用可能である。特に、従来のADMET重合での使用に好適なモノマーは鎖状ジエンモノマーとして使用できる。
【0087】
分岐多価不飽和モノマーと共に使用される鎖状ジエンモノマーは、液体でも固体形態でもよい。分岐鎖状多価不飽和モノマーおよびジエンモノマーの両方が固体形態である場合、両モノマーは、例えば押出により簡便に溶融混合でき、その後上述のとおり粉体塗装プロセスで使用するために粉体化できる。
【0088】
別な2液系は、本発明による反応に好適な分岐多価不飽和モノマーを含んでなる第1液およびADMET重合により調製されるポリマーを含んでなる第2液を含んでなる。この場合、ADMET誘導ポリマーが活性触媒成分を保持していることが重要である。「活性触媒成分を保持している」とは、ADMET重合反応のポリマー反応生成物が、さらなる重合反応を促進できるメタセシス触媒と会合したことを意味する。
【0089】
この特別な2液系において、各液の調合物は塗布の前に混合されて、メタセシス媒介反応経路により塗布後に架橋が起こることが可能となる。しかし、前記の2液系とは異なり、触媒成分はADMET誘導ポリマーにより提供されている。この場合、各液の成分が混合されるまで、触媒は事実上休止状態のままである。この2液系は上述の系とほとんど同様に利用できる。例えば、モノマーおよびADMET誘導ポリマーを固体形態で提供でき、粉体塗装技術により塗布できる。あるいは、モノマーおよび/またはADMET誘導ポリマーを好適な溶媒により溶媒和でき、液体硬化系を供給できる。
【0090】
本発明による架橋ポリマーの調製方法は、バルク重合として、または有機溶媒中で実施できる。低粘度液体として、または固体形態において分岐多価不飽和モノマーを提供することにより、上述の2液系は、有機溶媒をほとんどまたは全く使用しないで配合できる。そのような系で有機溶媒をほとんどまたは全く使用しない能力は、コーティングおよび接着剤製品の許容される揮発性有機分(VOC)に関する、多くの国で適用されるやっかいな法定要件を考慮すれば特に好都合である。
【0091】
本発明によるポリマーの架橋方法は、効果的なコーティングおよび接着剤の提供に容易に適用可能である。本発明によるコーティングおよび接着剤は、架橋ポリマーを形成するメタセシス触媒による重合を受けることのできる鎖状エチレン型不飽和基を含む分岐多価不飽和モノマーおよびオレフィンメタセシス触媒を含んでなる。当業者は、コーティングおよび接着剤に含まれてよい他の好適な配合成分を理解するであろう。そのような配合成分の例には、増粘剤、抗真菌剤、UV吸収剤、増量剤、顔料および着色剤があるが、これらに限定されない。
【0092】
本発明によるコーティングおよび接着剤から形成された硬化製品は、メタセシス架橋反応により形成されていないポリマー物質を含んでもよい。したがって、コーティングおよび接着剤は、メタセシス重合反応から形成されていない、またはメタセシス重合反応に参加する他のポリマーおよび/またはモノマーとのブレンドとして配合してもよい。
【0093】
本発明によるコーティングおよび接着剤の顕著な利点は、製品架橋ポリマー構造が自動酸化により形成されていない点である。上述のとおり、自動酸化の過程は長期間(すなわち、コーティングまたは接着剤の乾燥の後)続くことがあり、コーティングまたは接着剤の物性の低下を起こすことがある。例えば、油性塗料において、架橋ポリマーの劣化により、塗料膜表面の顔料粒子が露出され、チョーキングとして知られる問題を起こす。油性塗料は、塗料膜を形成するポリマー中の残留共役不飽和性の存在または形成による黄変も起こしやすい。
【0094】
自動酸化の進行性の性質とは異なり、本発明の架橋方法で機能するメタセシス媒介反応経路は、組成物全体で均一に有限の時間枠内で起こる。さらに、メタセシス架橋反応の供給原料モノマーは、得られる架橋ポリマー生成物中に残留共役不飽和性を含んだり生じさせたりしそうにない。したがって、本発明による架橋ポリマー生成物は、典型的には、従来の手段により形成された生成物に比べ、時間が経過してもその物性を維持し黄変を起こしにくいであろう。
【0095】
本発明は、オレフィンメタセシス触媒の使用を含む。当業者なら、本発明の実施に好適な触媒を容易に選択して得ることができるであろう。好適なオレフィンメタセシス触媒の例には、第一世代グラブス触媒すなわちベンジリデン−ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム、第二世代グラブス触媒すなわちベンジリデン[1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン]ジクロロ(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムおよび第二世代ホベイダ−グラブス触媒すなわち1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−2−イミダゾリジニリデン)ジクロロ(o−イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムがあるが、これらに限定されない。
【0096】
ブテノリシス反応およびブテノリシス生成物による架橋には、第二世代グラブス触媒および第二世代ホベイダ−グラブス触媒が好ましい。
【0097】
オレフィンメタセシス触媒は、重合を促進するのが可能などのような形態で提供してもよい。例えば、触媒を溶媒などの好適なキャリア物質または固体と合わせて錠剤を形成することもできる。そのようなキャリア物質は、硬化系の他の成分と適合性がなくてはならないことが理解されるであろう。
【実施例】
【0098】
実施例1
トリオレインのブテノリシス
マグネティックスターラーのバーを備えたシュレンク管を脱気し、アルゴンで満たし、−5℃に冷却したメタノール浴中においた。管に、シス−2−ブテン(1.30g、23.2ミリモル)およびトリオレイン(0.75mL、7.7ミリモル)を入れた。ジクロロメタン(10μL)中の第二世代ホベイダ−グラブス触媒(0.145μg、2.32ナノモル)の溶液を管に加え、混合物を、256分間マグネティックスターラーで攪拌した。この時間の後、エチルビニルエーテル(500μL)の添加により反応を停止した。生成物の試料を、従来の手段によりメタノールでエステル交換して、ガスクロマトグラフィー(GC)によりエステル交換生成物を分析すると、90%を超えるオレイン鎖の9−ウンデセン鎖への転化が示された。この転化は、この触媒の90,000を超えるTONに等しい。
【0099】
実施例2
種々の純度の2−ブテンによるオレイン酸メチルのブテノリシス
マグネティックスターラーのバーを備えたシュレンク管を脱気し、アルゴンで満たし、−5℃に冷却したメタノール浴中においた。様々な源から得た2−ブテンの試料を使用して種々の試料を調製した;
試料A(比較):シス+トランス2−ブテン(2.6%の1,3ブタジエンを含む)
試料B:シス−2−ブテン(1,3ブタジエン含まず)
試料(比較):2%ブタジエンを添加したシス2−ブテン(1,3ブタジエン含まず)
【0100】
各場合で加えた2−ブテンの量は同じであった(1.30g、23.2ミリモル)。一定量の一回蒸留したオレイン酸メチル(1.45mg、4.88ミリモル)およびジクロロメタン(10μL)中の第二世代ホベイダ−グラブス触媒(0.145μg、2.32ナノモル)の溶液を管に加え、混合物を256分間マグネティックスターラーで攪拌した。この時間の後、エチルビニルエーテル(500μL)の添加により反応を停止した。試料をGCにより分析し、オレイン鎖の9−ウンデセン鎖への転化の程度を比較した。
【表1】

【0101】
実施例3
オレイン酸メチルのブテノリシス
ガラスライナー付きのステンレススチールオートクレーブにマグネティックスターラーのバーを入れ、オレイン酸エチル(0.34g、1.1ミリモル)および第二世代グラブス触媒(9.3mg、0.11マイクロモル)を入れた。オートクレーブにアルゴンを流した。オートクレーブを脱気し、次いで、シス2−ブテンで15プシーに加圧した。オートクレーブを攪拌しながら一晩60℃に加熱した。次いで、圧力を開放し、エチルビニルエーテル(50μL)を反応混合物に加えた。生成物の試料を従来の手段によりメタノールでエステル交換し、エステル交換生成物をGCにより分析すると、オレイン鎖の9−ウンデセン鎖への85%を超える添加が示された。
【0102】
実施例4
キャノーラ油のブテノリシス
マグネティックスターラーのバーを備えた2Lの丸底フラスコをメタノール浴に浸した。フラスコにキャノーラ油(80.97g)を入れ、次いで脱気して、油を1時間高速で攪拌した。次いで、フラスコにアルゴンを満たし、メタノール浴を−7℃に冷却した。次いで、フラスコにシス+トランス−2−ブテン(204.5g、3.65モル)を入れた。ジクロロメタン(1mL)中の第二世代ホベイダ−グラブス触媒(11.4mg、0.18マイクロモル)の溶液をフラスコに加え、マグネティックスターラーで混合物を64分間攪拌した。この時間の後トリシクロヘキシルホスフィン(0.15g)を混合物に加えた。浴の温度をゆっくりとおよそ40℃に上げ、蒸留により揮発分を回収した。生成物の少量の試料を従来の手段によりメタノールでエステル交換し、エステル交換生成物をGCにより分析すると、95%を超える不飽和脂肪酸鎖の9−ウンデセン鎖への転化が示された。
【0103】
実施例5
大豆系アルキド樹脂のブテノリシス
マグネティックスターラーのバーを備えた2Lの丸底フラスコを、−10℃に冷却したメタノール浴に浸した。フラスコを脱気してアルゴンで満たした。フラスコに、ジクロロメタン(100mL)中の大豆系アルキド樹脂(90g)、シス+トランス−2−ブテン(166g、2.96モル)および第二世代ホベイダ−グラブス触媒(0.10g、16.0ミリモル)の脱気した溶液を入れた。マグネティックスターラーを使って混合物を約90分間攪拌した。この時間の後、追加の第二世代ホベイダ−グラブス触媒(0.10g、16.0ミリモル)を反応に加え、さらに60分間攪拌を続けた。トリシクロヘキシルホスフィン(0.10g)を混合物に加えた。浴の温度をゆっくりと室温まで上げ、揮発分を蒸留により回収した。残りの溶液に一晩空気をバブリングした。生成物の少量の試料を従来の手段によりメタノールでエステル交換し、エステル交換生成物をGCにより分析すると、90%を超える不飽和脂肪酸鎖のウンデセ−9−エン鎖への転化が示された。生成物を、高真空中で15分間150℃で加熱し、追加の揮発性化合物を生成物から除去した。
【0104】
実施例6
2,2−ビス((ウンデセ−10−エノイルオキシ)メチル)プロパン−1,3−ジイルジウンデセ−10−エノエートの調製
トリメチロールプロパン(2.73g、20.34ミリモル)、ウンデセニル酸(undecenylenic acid)(15.0g、81.39ミリモル、4当量)およびDMAP(0.99g、8.136ミリモル、0.4当量)をテトラヒドロフラン(150ml)に溶かし、混合物を0℃に冷却した。テトラヒドロフラン(45ml)中のDCC(16.77g、81.39ミリモル、4当量)を混合物に滴下し、30分間0℃に保ち、次いで20℃まで温め、3日間攪拌した。混合物を濾過し(N,N−ジシクロヘキシルウレアを除くため)沈殿を除去した。残りの透明な液体を分圧下で減量した。残渣をエーテルに溶かし、炭酸ナトリウム(10%水溶液)、ブラインで洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、分圧下で減量した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン、5/95)により精製すると、黄色の油として9.55g(74%)のエタン−1,1,1−トリイルトリウンデセ−10−エノエートを与えた;IR(フィルム)3467、3076、2922、2855、2120、1746、1640、1464、1417、1386、1355、1236、1158、1116、1056、994、909、783、724cm-11H NMR(CDCl3):δ=5.90−5.72(m,3H)、5.04−4.87(m,6H)、4.00(s,6H)、2.28(t,6H,J=2.26Hz)、2.07−1.99(m,6H)、1.62−1.55(m,6H)、1.52−1.43(m,2H)、1.42−1.34(m,30H)、0.88(t,3H,J=2.12Hz);13C NMR(CDCl3):δ=173.2、138.9、114.0、63.6、40.5、34.1、33.6、29.2、29.1、29.0、28.9、28.7、24.8、23.0、7.2:MS−ESI m/z 655.6(M+Na+)。分析、C39686の計算値:C,74.00;H,10.83、実測値:C,73.98;H,11.01。
【0105】
実施例7
2−エチル−2−((ウンデセ−10−エノイルオキシ)メチル)プロパン−1,3−ジイルジウンデセ−10−エノエートの調製
ペンタエリトリトール(2.94g、21.59ミリモル)、ウンデセン酸(20.0g、108.53ミリモル、5当量)およびDMAP(1.32g、10.85ミリモル、0.5当量)をTHF(150ml)に溶解し、混合物を0℃に冷却した。テトラヒドロフラン(50ml)中のDCC(22.28g、108.53ミリモル、5当量)を混合物に滴下し、30分間0℃に保ち、次いで20℃まで温め、3日間攪拌した。混合物を濾過し分圧下で減量した。残渣をエーテル(200ml)に溶かし、Na2CO3(10%水溶液)、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過し、分圧下で減量した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン、5/95)により精製すると、黄色の油として12.65g(72%)の2−エチル−2−((ウンデセ−10−エノイルオキシ)メチル)プロパン−1,3−ジイルを与えた;IR(フィルム)3469、3076、2926、2855、1745、1640、1466、1416、1389、1355、1235、1157、1116、994、909、724cm-11H NMR(CDCl3):δ=5.86−5.72(m,4H)、5.01−4.89(m,8H)、4.10(s,8H,CCH2O)、2.31−2.26(m,8H)、2.06−1.99(m,8H)、1.63−1.53(m,8H)、1.42−1.22(m,40H);13C NMR(CDCl3):δ=173.1、139.0、114.1、62.1、41.83、34.0、33.7、29.2、29.1、29.0、28.9、28.8、24.8:MS−ESI m/z 801.8(M+H+)。分析、C49848の計算値:C,73.46;H,10.57、実測値:C,73.39;H,10.65。
【0106】
実施例8
ビスフェノールAと10−ウンデセン酸のジエステルの調製
2,2−ジアリルビスフェノールA(1.577g、5.11ミリモル)およびウンデセン酸クロライド(3.11g、15.34ミリモル、3当量)を合わせ、混合物を60℃で16時間加熱した。混合物をエーテル(50ml)に溶かし、炭酸水素ナトリウム(飽和水溶液)(3×50ml)で洗浄し、次いでブライン(2×40ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、分圧下で減量した。粗物質をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン、5/95)により精製すると、薄黄色の油として3.11g(95%)の生成物を与えた;1H NMR(CDCl3):δ=7.09−7.04(m,4H)、6.92−6.90(m,2H)、5.90−5.77(m,4H)、5.04−4.92(m,8H)、6.50(d,4H,J=6.3Hz)、2.54(t,4H,J=7.5Hz)、2.08−2.01(m,4H)、1.77−1.70(m)、1.64(s,6H)、1.43−1.32(bs,24H);13C NMR(CDCl3):δ=172.8、148.3、147.1、139.4、136.3、131.2、128.9、126.2、121.9、116.7、114.4、42.7、35.1、34.6、34.0、31.2、29.5、29.4、29.3、29.2、29.1、25.2:MS−ESI m/z (M+H+)。分析、C43604の計算値:C,80.58;H,9.44、実測値:C,78.81;H,9.30。
【0107】
実施例9
キャノーラ油のブテノリシス生成物の架橋による膜の生成
キャノーラ油のブテノリシス生成物(例えば、実施例4の段階1から誘導される生成物)から単純なアルケンを真空蒸留により除くと、薄黄色の油が残った。この油(0.46g)の試料を、二酸化チタン(0.29g)と合わせ、粉砕して均一な混合物にした。この混合物を顕微鏡スライドの上に置き、ジクロロメタン(10μL)中の第二世代ホベイダ−グラブス触媒(15mg)の溶液を加え、完全に混合した。混合物を広げて40×60mmの領域を覆った。1時間後、膜は硬化して固体膜になっていたことが分かり、質量で0.025gを失っていた。膜は、以下の溶媒、水、メタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、トルエンに不溶であることが分かった。
【0108】
実施例10
9−ウンデセン酸に基づくアルキド樹脂の架橋による膜の生成
実施例5の生成物の試料(1.0g)を、二酸化チタン(0.63g)およびトルエン0.5mLと粉砕して均一な混合物にした。第二世代ホベイダ−グラブス触媒(15mg)を混合物中に完全に混合し、次いで、顕微鏡スライド上に塗布した。10分後、膜は硬化して光沢のある表面を与えていた。初めのうちわずかに柔らかかったこの膜は、次の12時間の間徐々に固くなり、ついにガラスに良好に張り付く固い丈夫な膜を与えた。この膜は、以下の溶媒、水、メタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、トルエンに不溶であることが分かった。
【0109】
色の比較
実験から得た白色顔料塗料から誘導された膜を、市販の白色顔料アルキド塗料(Dulux High Gloss Enamel)から誘導された膜と比較した。実験試料と市販製品の膜を、40番ワイヤードローダウンバー(wire drawdown bar)を使って密閉パネル(sealed panel)上にキャストし、48時間かけて膜を完全に乾燥させた。実験膜と市販膜の間の色差を、同じ参照白色タイルと比較し、CIE 1976表色系を利用して色差座標を計算した。次いで、同じパネルを取り、缶の内部の雰囲気を飽和させる10%水酸化アンモニウム溶液5mlが入っている、密封できる蓋を有する金属缶の内部に試料をテープで留めることにより、試料の経年変化を加速した。パネルを48時間これらの状態に暴露した。
【表2】

アンモニアに暴露する前の実験試料と比較試料の間の黄度の著しい違い(+1.30)は目視でも明らかであった。アンモニア暴露の効果は、時間と共に黄変する従来のエナメルの傾向と相関があると知られている試験である。アンモニア暴露後、比較試料は、さらに著しい黄変を示した(+11.41)。実験試料から誘導された膜での自動酸化がないため、これらの結果は、時間経過に伴う自然の暴露により得られるであろう違いを反映していると思われる。言い換えると、本発明による架橋膜は、時間経過による黄変を、全くでないとしてもほとんど起こさないと思われる。
【0110】
実施例11
2−エチル−2−((ウンデセ−10−エノイルオキシ)メチル)プロパン−1,3−ジイルジウンデセ−10−エノエートの架橋による膜の生成
第一世代グラブス触媒(10mg)をジクロロメタンの最小体積に溶解し、2−エチル−2−((ウンデセ−10−エノイルオキシ)メチル)プロパン−1,3−ジイルジウンデセ−10−エノエート(0.80g)と混合した。混合物をペトリ皿上に広げた。17時間後、混合物は、固くて弾力のある膜になった。
【0111】
本明細書および以下の特許請求の範囲において、文脈により他の意味にならない限り、「comprise(含んでなる)」という言葉および「comprises(含んでなる)」および「comprising(含んでなる)」という変形は、述べられた整数または工程あるいは1群の整数または工程を含むが、他の整数または工程あるいは1群の整数または工程を排除しないと理解される。
【0112】
本明細書における先の刊行物(またはそれから誘導される情報)への言及または公知であることへの言及は、先の刊行物(またはそれから誘導される情報)または公知のものが、本明細書が関連する努力の分野において通常の一般知識の一部を形成するという認知または容認あるいはどのような形態の示唆ではなく、そうであると取られるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐多価不飽和モノマーをメタセシス重合反応により重合する工程を含んでなる架橋ポリマーの調製方法であって、前記分岐多価不飽和モノマーが、メタセシス重合が架橋ポリマーを生成し、不揮発性エチレン型不飽和副生成物を実質的に全く生成しないようにメタセシス反応による重合を受けることのできる鎖状エチレン型不飽和基を含んでいる方法。
【請求項2】
分岐多価不飽和モノマーをメタセシス重合反応により重合する工程を含んでなる、コーティングまたは接着剤として、またはその一部として使用するのに好適な架橋ポリマーを調製する方法であって、前記分岐多価不飽和モノマーが、メタセシス重合が架橋ポリマーを生成するようにメタセシス反応による重合を受けることのできる鎖状エチレン型不飽和基を含んでいる方法。
【請求項3】
メタセシス重合反応による鎖状ジエンモノマーの重合をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記分岐多価不飽和モノマーが、末端または近末端である鎖状エチレン型不飽和基を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基が非置換である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記分岐多価不飽和モノマーが天然油であるか、または天然油から誘導されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記天然油が、キャノーラ油、大豆油、亜麻油、亜麻仁油、桐油、ヒマシ油およびこれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分岐多価不飽和モノマーが、交差メタセシス反応から直接または間接的に調製されている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
架橋ポリマーを調製する方法であって、
1)1つまたは複数の鎖状エチレン型不飽和基を含んでなる化合物に低分子量エチレン型不飽和化合物による交差メタセシス反応を施し、
(a)分岐多価不飽和モノマーとして使用可能な、かつ/または
(b)1種または複数の他の化合物と反応して、分岐多価不飽和モノマーとして使用可能な化合物を提供する
1つまたは複数の末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基を含んでなる化合物を製造することにより、メタセシス反応による重合を受けることのできる末端または近末端鎖状エチレン型不飽和基を有する分岐多価不飽和モノマーを調製する工程;および
2)メタセシス重合反応により分岐多価不飽和モノマーを重合し架橋ポリマーを与える工程を含んでなる方法。
【請求項10】
前記の1つまたは複数の鎖状エチレン型不飽和基を含んでなる化合物が、天然油、天然油から誘導される脂肪酸または天然油から誘導される脂肪酸エステルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記低分子量エチレン型不飽和化合物が実質的に純粋な2−ブテンである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
架橋ポリマーを形成するメタセシス反応による重合を受けることのできる鎖状エチレン型不飽和基を含む分岐多価不飽和モノマーおよびオレフィンメタセシス触媒を含んでなるコーティングまたは接着剤製品。
【請求項13】
分岐多価不飽和モノマーが第1液に提供され、オレフィンメタセシス触媒が第2液に提供される2液硬化系の形態である、請求項12に記載のコーティングまたは接着剤製品。
【請求項14】
前記第1液が鎖状ジエンモノマーをさらに含んでなる、請求項13に記載のコーティングまたは接着剤製品。
【請求項15】
前記第2液が、鎖状ジエンメタセシス重合により形成されるポリマーをさらに含んでなる、請求項13に記載のコーティングまたは接着剤製品。
【請求項16】
前記分岐多価不飽和モノマーが天然油であるか、または天然油から誘導されている、請求項12に記載のコーティングまたは接着剤製品。
【請求項17】
前記オレフィンメタセシス触媒が、第一世代および第二世代グラブス触媒から選択される、請求項12に記載のコーティングまたは接着剤製品。
【請求項18】
鎖状エチレン型不飽和基を含んでなるカルボニル化合物に、実質的に純粋な2−ブテンによる交差メタセシス反応を施す工程を含んでなる、近末端エチレン型不飽和カルボニル化合物を調製する方法。
【請求項19】
前記カルボニル化合物が、エステル、アミド、ケトン、アルデヒド、カルボン酸およびこれらの組み合わせから選択される1つまたは複数のカルボニル官能基を含んでなる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記交差メタセシス反応が、約10,000を超える生産ターンオーバー数を与える、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記カルボニル化合物が、天然油、天然油から誘導される脂肪酸または天然油から誘導される脂肪酸エステルである、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2008−545021(P2008−545021A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518570(P2008−518570)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000930
【国際公開番号】WO2007/002999
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(504248768)オリカ オーストラリア プロプライアタリー リミティド (4)
【出願人】(304044531)モナシュ ユニバーシティー (9)
【Fターム(参考)】