説明

架橋材料を含むフリース布

本発明は、気孔を備えた母剤を有し、架橋された結合剤を含んでいるシート材に関する。また、前記シート材の製造方法、前記シート材の使用ならびに、前記シート材を含んだ装置も本発明の対象である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気孔を備えた母材を有し、架橋された結合剤を含むシート材に関する。また、前記シート材の製造方法、前記シート材の使用ならびに、前記シート材を含んだ装置も本発明の対象である。
【背景技術】
【0002】
上記の類のシート材は従来の技術から公知である。この種のシート材は、エネルギー蓄積に使用される電池および蓄電池のセパレータとして使用される。電池および蓄電池における電荷の蓄積は、化学的、物理的または両者の混合形態、例えば化学吸着によって行われる。
【0003】
電池または蓄電池内部の内部放電を回避すべく、互いに逆の電荷を帯びた電子は非電子伝導材料いわゆるセパレータまたはスペーサによって機械的に互いに分離される。同時に、セパレータまたはスペーサは当該エネルギー蓄積システムと該システムの使用に適合したそれらの多孔性によって電解質のイオン性荷電粒子の電極間移動を可能にする。
【0004】
従来の技術から公知のセパレータは互いに架橋されたマイクロメータレベルの小さな穴を示している。含浸されたセパレータの電解質導電率をできるだけ高くし、こうして電池が高い出力密度を有するようにするには、これらの穴はできるだけ大きくなければならない。ただし、これらの穴が過大であると、メタルデンドライトの成長によって本来互いに電気的に分離されているべき電極間に短絡が生じ得る。これらのメタルデンドライトはリチウムまたは電池内部に不純物として存在し得るその他の金属からなっている。
【0005】
さらに、導電性電極材料に由来する粒子がこれらの穴を通って移動することがある。こうした現象によって電極間の短絡が生じ得ると共に、電池または蓄電池の自己放電が大幅に促進されることがある。
【0006】
短絡発生時には局所的に非常に高い電流が流れ、これによって熱が放出される。こうした熱はセパレータを溶融させることがあり、これによってまたもセパレータの絶縁作用は著しく低下させられることになる。非常に急速に自己放電する電池は、それゆえ、電池の高いエネルギー量ならびに電解質およびその他の成分の可燃性によって高い安全リスクを有している。
【0007】
従来の技術から公知のセパレータのさらにもう一つの短所は、温度上昇時の耐久性に欠陥があることである。ポリエチレン使用時の融点は約130℃であり、ポリプロピレン使用時のそれは約150℃である。
【0008】
短絡発生の原因としては、電池内部の過度の高温によるセパレータの収縮、金属イオン(リチウム、鉄、マンガンまたはその他の金属不純物)の還元によるメタルデンドライト成長、電極粒子の剥離、電極被覆の切断剥離ないし破断および加圧下における2つのフラット電極の直接接触を挙げることができる。
【0009】
欧州公開第0892448号には、いわゆる「シャットダウン」機構か開示されている。この機構は、例えば短絡によって局所的な加熱が生ずる際に、最初の短絡の近傍におけるイオン伝導が抑止されることによって短絡の面的拡大を阻止するように作用する。短絡の損失熱によってポリエチレンは大幅に加熱される結果、それは溶融して、セパレータの気孔を閉塞する。融点が相対的に高いポリプロピレンは機械的に無傷のままである。
【0010】
米国特許公報第2002−0168569号は、製造工程において溶剤で溶解され、二酸化ケイ素粒子と混合されて薄膜とされるポリ二フッ化ビニルからなるセパレータの造成を記載している。溶剤を除去すると、多孔質の膜が残留する。
【0011】
国際公開第2006−068428号は、さらにゲル状ポリマーと無機粒子とで満たされるポリオレフィンセパレータを使用したリチウムイオン電池用のセパレータの製造を記載している。
【0012】
国際公開第2004−021475号は、ケイ素有機プライマと無機結合剤とを介して元素であるケイ素、アルミニウムまたはあるいはその両方ジルコンの酸化物から薄い面状製品に形成されるセラミック粒子の使用を記載している。
【0013】
十分な機械的フレキシビリティーを付与すべく、セラミック粒子は支持材料、例えばフリース布にしみ込ませられる。これは国際公開第2005−038959号に開示されている。
【0014】
短絡をメタルデンドライト形成の初期段階で抑止すべく、国際公開第2005−104269号には、セラミックペーストへの添加物としての低融点ワックスの使用が記載されている。
【0015】
国際公開第2007−028662号には、セパレータの機械的特性を改善するために、100℃以上の融点を有するポリマー粒子をセラミック充填材に添加することが記載されている。この文献に述べられている材料はリチウムイオン材料用のセパレータとして使用することが意図されている。これらのセパレータによれば膜に比較してもっと優れた耐熱性の達成が可能であるが、これらはまだ商業的に普及し得ていない。これは一方でコストが比較的高いことに起因していると共に、他方で25μmを超える過大な材料厚さに原因があると思われる。
【0016】
国際公開第2000−024075号は、燃料電池に使用可能な膜の製造を記載している。この膜は、同所にケイ酸結合剤によってフルオロ炭化水素ポリマーが固着されるガラス繊維材料からなっている。
【0017】
最後に、日本公開公報第2005268096号は、ポリエチレン−ポリプロピレン繊維支持材料への熱可塑性粒子の加熱融合によって表されるリチウムイオン電池用のセパレータを記載している。このセパレータは気孔直径0.1から15μmの気泡状多孔質構造を有している。
【0018】
欧州特許第1138092号は電気化学電池用の複合体に関する。この複合体は2つのシート材からなり、その際、粒子と結合剤からなる一方のシート材は第2のシート材上に被着される。第2のシート材はシートまたはフリースであってもよい。
【0019】
米国特許公報第2006−0078722号は架橋ポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜を開示している。
【0020】
欧州公開第1271673号は電池用のガス透過性セパレータに関する。この場合、架橋ポリマーシート材が多孔質下地上に被着される。
【0021】
ただし従来の技術は、僅かな厚さで高い気孔率と優れた温度安定性とを有すると共に、高い出力・エネルギー密度を有する電池に広い温度範囲にわたって高度な安全要件を満たして使用することのできる低コストのセパレータを示していない。公知の材料の特別な問題は、それらが高温時に収縮し、それによって、気孔率が低下すると共に材料特性に不適な影響がもたらされることである。加えてさらに、効果的なセパレータを少ない工程で容易に製造するための方法が欠如している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州公開第0892448号
【特許文献2】米国特許公報第2002−0168569号
【特許文献3】国際公開第2006−068428号
【特許文献4】国際公開第2004−021475号
【特許文献5】国際公開第2005−038959号
【特許文献6】国際公開第2005−104269号
【特許文献7】国際公開第2007−028662号
【特許文献8】国際公開第2000−024075号
【特許文献9】日本公開公報第2005268096号
【特許文献10】欧州特許第1138092号
【特許文献11】米国特許公報第2006−0078722号
【特許文献12】欧州公開第1271673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、本発明の目的は、上述した問題を克服するシート材を提供することである。
【0024】
本発明の目的は、特に、低コストでの製造後に、僅かな厚さで高い気孔率と優れたイオン伝導率ならびに高度な温度安定性を有するようにシート材を形成、改良することである。この材料はとりわけ、高い出力密度を有していなければならない。高い出力密度によって、電池内使用時に、僅かな自己加熱と高い効率がもたらされる。この材料はとりわけ、高温時にその構造を保ち続け、収縮することもあるいはその他の望ましくない変化も生じてはならない。また、この種のシート材を容易に均一かつ速やかに製造することを可能にする方法も提供されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は上記課題を特許請求項1から33に記載した特徴によって解決する。
【0026】
本発明の対象は、気孔を備えた母材を有し、架橋された結合剤を含んでなるシート材である。
【0027】
この場合、母材は少なくとも部分的に粒子で満たされていてよく、その際、粒子は第1の気孔を少なくとも部分的に充填して、粒子で満たされたゾーンを形成すると共に、該粒子は粒子で満たされた上記ゾーンにおいて第2の気孔を形成する。
【0028】
結合剤は上記の気孔内に含まれている。気孔内にさらに粒子が含まれていれば、結合剤は第2の気孔内に含まれている。本発明によれば、結合剤はポリマーであり、特に有機ポリマーである。該ポリマーは架橋されている。したがって、結合剤は第1の気孔内ないし第2の気孔内に網状組織を形成する。これにより、シート材は全体として安定化される。必要に応じ、母材内への粒子の埋封を安定化させることが可能である。本発明によるシート材は、特に、架橋が母材の存在において行われることによって得られる。粒子が含まれている場合には、結合剤は粒子をフリース布に結合することができる。さらに、結合剤はフリース布の繊維を互いに結合する。結合剤は本発明により架橋(交差架橋)されている。これは結合剤のポリマー鎖同士が少なくとも部分的に互いに共有結合されていることを意味している。こうして、結合分子は三次元網状組織を形成する。この網状組織は微孔性を有し、液体ならびに液体中に含まれているイオン性および非イオン性化合物の移動と拡散を可能にする。このポリマー網状組織は好ましくは、埋封された粒子も安定化させる。
【0029】
上記粒子は該粒子で満たされたゾーンにおいて第2の気孔を形成するが、この場合、粒子の平均直径は大多数の第2の気孔の平均気孔サイズよりも大きい。
【0030】
平均気孔サイズの頻度分布は本発明により好ましくは、第2の気孔の50%以上が粒子の平均直径以下の平均気孔サイズを示すように設定される。低コストの母材、例えばフリース布の気孔構造は、結合剤および、場合により、粒子の、架橋ならびに適切な配置および選択によって変更可能である。
【0031】
本発明によるシート材の気孔率は、ポリオレフィン膜に比較して、シート材の安定性を損なうことなく引き上げることが可能である。粒子で満たされたゾーンにおける大多数の第2の気孔の平均気孔サイズよりも大きな平均直径を有する多数の粒子を配置することにより、高い気孔率の形成と共に、母材による好適な電解質吸収が可能になる。また同時に、有害なメタルデンドライトの形成をほぼ排除することのできる気孔構造がつくり出される。架橋ならびに粒子の配置によって、気泡状ではなく、ラビリンス状に延伸した気孔を有する気孔構造をつくり出すことができる。この種の気孔構造にあっては、シート材の片側から反対側に達するまでの一貫したデンドライト状結晶成長が生ずることはほぼあり得ない。その限りで、電池または蓄電池内の短絡は効果的に防止される。それゆえ、本発明によるシート材は、高い出力・エネルギー密度を有する電池ならびに蓄電池用のセパレータとして特に適している。本発明によるシート材は広い温度範囲にわたって高度な安全要件を満たして使用することが可能である。
【0032】
上記粒子は球体であってもよい。これにより、好適なものとして、母材、特にフリース布の第1の気孔内におおむね最密の球体パッキングをつくり出すことが可能である。この場合、大多数の第2の気孔の平均気孔サイズは球体パッキングの幾何的条件によって基本的に決定される。最密球体パッキングをつくり出すには無数の可能性が存在するが、それらに共通しているのは、それらが六方最密球体成層からなっていることである。最も重要な2つの代表的なものは六方最密球体パッキング(成層順序A,B,A,B,A,B)と立方最密球体パッキング(成層順序A,B,C,A,B,C,A)である。立法最密球体パッキングは面心立方球体パッキングとも称される。最密球体パッキングにおいて、各々の球体は12個の隣接球体を有しており、そのうち6個は自己と同じ層にあり、その層の上下にそれぞれ3個の球体が位置している。これらは立方パッキングにあっては立方八面体を形成し、六方パッキングにあってはねじれ立方八面体を形成する。最密球体パッキングの空間充填率は74%である。ただし、できるだけ高い気孔率を生み出すことが意図される。したがって、必ずしもすべての粒子は母材の第1の気孔内に最密球体パッキングを形成するわけではない。むしろ、粒子が分散して存在するゾーンも生じ、これによって、高い気孔率の達成が促進される。
【0033】
本発明のさらに別の一実施形態において粒子は球状ではないか、または非球状粒子が一成分として含まれていると好都合である。この実施形態は特に無機粒子の使用に関する。これらの粒子は、角や縁のある、ゴツゴツした不規則な形状を有していることか多い。この種の粒子は球状粒子と、例えば10、20または50重量%の割合で混合されてもよい。このようにして、粒子の特性を好適な形でコンビネーションすることが可能である。
【0034】
粒子は母材に面状に均等に分散されていると好都合である。この具体的な態様により、短絡を特に効果的に防止することが可能である。メタルデンドライトおよび剥離片は均一に被覆された面を通り抜けて移動することはほとんど不可能である。さらに、圧力作用時の電極の直接の接触はこの種の面によって回避される。この点をバックグラウンドとして、母材の第1の気孔のすべてが粒子によって均等に充填されて、シート材が主として、粒子の平均直径よりも小さい平均気孔サイズを示すようにすることが具体的に思料可能である。
【0035】
母材には粒子からなるコーティングが施されていると好都合である。コーティングは同じく好適には、先述した短絡の抑止をもたらす。シート材にコーティングが施されていれば、少なくとも部分的に粒子で満たされている母材に必然的に境界ゾーンが現れる。ただし、本発明によるシート材は、フリースと、粒子および結合剤からつくられるさらに別のシート材とからなる複合材料ではないという点で、例えば欧州特許第1138092号から公知のセパレータとは有意に相違している。本発明によれば、架橋は全面的または少なくとも部分的に母材内部と場合により粒子の存在とにおいて行われる。粒子が使用されるかぎり、それらは母材内に埋封されて、架橋ポリマーによって包囲されている。好ましくは、粒子は母材に基本的に均等に分布されている。ただし、本発明によれば、粒子は不均等に分布されていてもよい。例えば、多くの粒子が母材の表面方向に向かって配置されていると好都合である。好ましくは、母材内において、第1の気孔の少なくとも2、5、10または20体積%が粒子で満たされている。
【0036】
本発明によるシート材は結合剤を含んでいる。この場合、結合剤は好ましくは有機ポリマーからなっている。有機ポリマーからなる結合剤を使用することにより、シート材に十分な機械的フレキシビリティーを付与することができる。
【0037】
結合剤の架橋は、結合分子の架橋基が結合されることによって行われる。適切な架橋性結合剤は、重合によって重合体が分子鎖中に架橋基を含むようにして製造されるポリマーまたはコポリマーである。
【0038】
ポリマーには重合後にも架橋基を化学的に設けることが可能である。本発明によれば、少なくとも1架橋性結合剤を含む混合結合剤の使用も可能である。
【0039】
本発明によれば、結合剤は好ましくは、母材および場合により粒子の存在において実施される重合の反応生成物である。結合剤は、例えばβ−不飽和カルボン酸、その塩、そのエステル、アミドおよびニトリルおよびこれらの化合物のコポリマーからなる重合体の群から選択される。その際、特に好ましいのは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの誘導体ならびに当該アミドである。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態において、結合剤は、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリカルボキシレートから選択されるポリマー、ポリカルボン酸、ポリビニル化合物、ポリオレフィン、ゴム、ポリビニルピロリドン、ハロゲン化ポリマーおよび/または不飽和ポリマーまたはそれらのコポリマーである。この場合、結合剤は架橋性を有していなければならない。したがって、結合剤が、例えば非架橋性ポリオレフィンであれば、それは架橋箇所が含まれるように化学的に改質されていなければならない。
【0041】
結合剤はホモポリマーの形によるかまたはコポリマーとして使用可能である。コポリマーとしては、例えば、ランダムコポリマー、グラデーションコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが適している。コポリマーは2、3、4またはそれ以上の異なったモノマーからなっていると好都合である(三元ポリマー、四元ポリマー)。
【0042】
本発明の好ましい一実施形態において、結合剤はポリエステルまたはポリアミドまたはそれらのコポリマーである。これらのコポリマーは異なったポリアミドおよび/またはポリエステルモノマーからなるかまたはこの種のモノマーとその他のモノマーからなるコポリマーであってもよい。この種の結合剤は非常に優れた付着性を特徴としている。
【0043】
結合剤はシート材の安定化をもたらす。これは気孔内の結合剤によって形成される三次元網状組織によってもたらされる。粒子が含まれていれば、それらの粒子はシート材内のそれらのポジションに固着される。本発明によれば、さらに、結合剤と母材間または結合剤と粒子間の架橋も行われる。これは、例えば、表面処理された反応性粒子および/または母材が使用される場合に可能である。結合剤は粒子および/または母材に対して非共有・物理的親和性を有していてもよい。
【0044】
結合剤および/または粒子の融点は母材繊維の融点以下であると好都合である。この種の結合剤/粒子の選択によって、シート材は部分的にいわゆる「シャットダウン機構」を実現することができる。「シャットダウン機構」において、溶融する粒子および/または結合剤は母材の気孔を閉塞するため、気孔を貫くデンドライト状結晶成長は生じえず、したがって、短絡が生ずることはない。
【0045】
この点をバックグラウンドとして、融点の異なる粒子からなる混合物を使用することが思料可能である。これにより、温度の上昇につれて気孔の漸進的または段階的な閉塞が達成可能である。
【0046】
ただし、微孔質母材はモノマー混合物の架橋のせいで完全には溶融しない。母材はある程度まで熱的に安定な組織を形成し、したがって、全体として優れた熱的安定性を示す。電池内部でのこの種のセパレータのメルトダウンは高温になって初めて生ずるために、セパレータが崩壊することはない。ただし、充填粒子は部分的な溶融を許容する。これによって、意図的かつ領域選択的なシャットダウン機構が結果し、こうして、電池の安全性が改善される。かくて、好適な特性のコンビネーションすなわち高いメルトダウン温度と適合可能なシャットダウン温度とのコンビネーションが得られる。これは例えば自動車分野での使用にあたって好適である。
【0047】
架橋によって、シート材を温度安定セパレータとして使用することが可能になる。本発明によれば、架橋によって温度安定性が改善されることが観察された。これに対して、非架橋材料は高温での連続負荷下で緩和を生じて、収縮し得る。本発明によるシート材は好ましくは温度200℃にて重度の収縮を示すことがない。例えば、温度200℃にて、好ましくは30分後またはより好ましくは60分後の収縮率は10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは1%以下である。(測定方法:フラットな試験片を所与の温度および時間にわたって炉内に置き(通例、空気中)、続いて面の収縮率を測定する)。
【0048】
粒子は、0.01から50μm、特に0.01から10μm、特に好ましくは0.05から5μmの平均直径を有していると好都合である。この範囲からの平均直径の選択は、デンドライト状結晶成長または剥離片の形成による短絡を回避するのに特に好適であることが判明した。
【0049】
粒子は有機ポリマーからなっていると好都合である。適切なポリマーは、例えば、ポリアセタール、ポリシクロオレフィンコポリマー、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリカルボン酸、ポリカルボキシレート、ゴム、ポリビニル化合物、ポリエーテル、ポリニトリル、ポリスルホン、ポリテレフタレート、ポリナフタレートおよびハロゲン化ポリマー、特にフッ素化および塩素化ポリマーである。
【0050】
有機ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーであってもよい。コポリマーとしては、例えば、ランダムコポリマー、グラデーションコポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーが適切である。これらのコポリマーは、2、3またはそれ以上の異なったモノマーからなっていると好都合である(三元ポリマー、四元ポリマー)。上述した材料は混合物の形で粒子に加工されてもよい。一般に熱可塑性ポリマーとポリマー混合物とが使用可能であるかまたは架橋ポリマーとポリマー混合物、例えばエラストマーまたは熱硬化性プラスチックが使用可能である。
【0051】
粒子は、特に、ポリプロピレン、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロ−エチレン−プロピレン(FEP)、ポリスチレン、スチレンブタジエンコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルピリジン、ポリエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリオキシメチレン、ポリベンゾイミダゾールまたはニトリルブタジエンポリマーを含むかまたはそれらからなっていてよく、あるいは上述したポリマーのコポリマーを含むかまたはそれらからなっていると好都合である。特に好ましいのは、フッ化ビニリデン(VDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリオキシメチレン(POM、ポリアセタールまたはポリホルムアルデヒドとも称される)のホモポリマー、コポリマーまたはブロックコポリマーである。
【0052】
本発明の好ましい一実施形態において、粒子はポリアセタール、例えばポリオキシメチレン(POM)からなるか、あるいは粒子はポリアセタールを含んでいる。また、例えばコモノマーとしてトリオキサンを有するアセタールのコポリマーも使用可能である。ポリアセタールは卓越した寸法・温度安定性を特徴としている。
【0053】
上記はさらに、僅かな吸水性を有するにすぎない。これは、本発明によれば、充填された母材はこの場合、総じて僅かに水を吸収するにすぎないために好適である。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態において、粒子はシクロオレフィンコポリマー(COC)からなるかまたはそれを含んでいる。COCの熱的特性は環状および直鎖状オレフィンの組み込み比率を広い範囲で変化させることによって適確に変化させることが可能であり、こうして、所望の使用範囲に適合させることができる。これにより、基本的に、65から175℃の範囲に耐熱寸法安定性を設定することができる。COCは極めて低い吸水性と非常に優れた電気絶縁性を特徴としている。
【0055】
本発明のさらに別の実施形態において、粒子はポリエステルからなるかまたはそれを含んでいる。好ましいのは特に液晶ポリエステル(LCP)である。これは例えば「ベクトラLCP」[Vectra LCP]の商品名でTiconaによって提供される。液晶ポリエステルは優れた寸法安定性、優れた耐熱性ならびに優れた化学薬品耐性を特徴としている。
【0056】
本発明のさらに別の実施形態において、粒子はポリイミド(PI)またはそのコポリマーからなるかまたはそれらを含んでいる。適切なコポリマーは、例えばポリエーテルイミド(PEI)およびポリアミドイミド(PAI)である。ポリイミドの使用はそれが優れた機械的強度と優れた耐熱性を有する点で好適である。それはさらに、親水性から疎水性に至るまで意図的に調節可能な優れた表面特性を示す。
【0057】
本発明のさらに別の実施形態において、粒子はポリエーテルケトン(PEK)またはそのコポリマーからなるかまたはそれらを含んでいる。特に適切なのはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)である。ポリエーテルケトンは高温安定性を有すると共に、優れた化学薬品耐性を有している。
【0058】
本発明のさらに別の実施形態において、粒子はポリカルボン酸またはポリカルボキシレートまたはそれらのコポリマーからなるかまたはそれらを含んでいる。適切なのは、特に、ホモポリマーとコポリマー、とりわけブロックコポリマーである。これらのポリマーは特に、メタクリル酸、メタクリレート、メタクリルアミドおよびメタクリル酸エステル、例えばメチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−、ヘキシル−、2−エチルヘキシル−、ステアリル−、ラウリル−、シクロへキシル−、ベンジル−、トリフルオロメチル−、ヘキサフルオロプロピル−、テトラフルオロプロピルメタクリレート、−メタクリルアミドおよび−メタクリル酸から製造される。また、当該アクリレート、アクリルアミドおよびアクリル酸化合物も使用可能である。これらのホモポリマーおよびコポリマーの使用によって、所望の熱的特性、したがって、例えばセパレータのシャットダウン、母材および結合剤との付着性ならびに粒子の湿潤特性を適確に調節することが可能である。
【0059】
本発明のさらに別の実施形態において、粒子はゴムからなるかまたはゴムを含んでいる。ゴムは好ましくは架橋されている。一般に公知のゴム、例えばエチレンプロピレンジエンゴム(EPDMゴム)が使用可能である。特にEPDMゴムは高い弾性と、とりわけ極性有機溶剤に対する化学耐性とを有しており、広い温度範囲にわたって使用可能である。また、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴムおよびニトリルブタジエンゴムから選択されるゴムも使用可能である。これらのゴムのポリマーは架橋性不飽和二重結合を含んでおり、Rゴムと称される。これらのゴムは好ましくは架橋されている。これらは、例えばホモポリマーまたはコポリマーとりわけブロックコポリマーとして使用することが可能である。
【0060】
また、フッ素化ゴム、例えばペルフルオロゴム(FFKM)、フルオロゴム(FKM)またはテトラフルオロエチレンプロピレンゴム(FPM)ならびにそれらのコポリマーも使用可能である。特に好ましいのはFFKMである。これらの結合剤、特にFFKMは、高い温度使用範囲、非常に優れた耐溶剤性と化学薬品耐性ならびに非常に低い膨潤性を特徴としている。したがって、これらは特に、燃料電池におけるような、高温にて腐食性を有する環境中での使用に適している。
【0061】
本発明の好ましい一実施形態において、粒子はフッ素化またはハロゲン化ポリマーからなるかまたはそれらを含んでいる。これらのポリマーは、例えばフッ化ビニリデン(VDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)またはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)から製造されていると好都合である。この場合、例えばホモポリマーまたはコポリマー、とりわけブロックコポリマーが使用可能である。これらのコポリマーは異なったハロゲン化モノマーからなるか、あるいはハロゲン化モノマーとその他のモノマーからなっていると好都合である。これらのポリマーおよびモノマーは全面的にフッ素化または塩素化されているかまたは部分的にフッ素化または塩素化されていると好都合である。本発明の特別な一実施形態において、ポリマー全体に占める、特にHFPおよびCTFEのハロゲン化モノマーのコモノマー比率は1から25重量%である。ハロゲン化ポリマーは、優れた耐熱性と化学薬品耐性ならびに優れた湿潤性を特徴としている。これらは特にフッ素化または部分フッ素化された結合剤との使用に適している。コポリマーの使用ならびに選択によって、広い温度範囲にわたって耐熱性と加工温度とを変化させることが可能である。これによって、結合剤の加工温度を粒子の溶融温度に適合させることができる。さらに、シャットダウン温度の調節が可能になる。
【0062】
特に好ましいのは、PTFEおよびペルフルオロ−3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテン−スルホン酸(PFSA)からなるコポリマーの使用である。これはナフィオン[Nafion]の商品名でDupontから入手可能である。これは、本発明によれば、優れたカチオンおよびプロトン伝導性を有するために好適である。
【0063】
粒子用に有機ポリマーを使用することにより、「シャットダウン効果」を達成するための粒子の溶融が可能になる。架橋されているために、千切れることなく、問題なく裁断可能なシート材を作製することができる。シート材の千切れは、ほとんどの場合、シート材内に無機粒子が比較的高い割合で存在する場合に生ずる。この点をバックグラウンドとして、異なった粒子の混合物またはコアシェル粒子を使用することが思料可能である。これにより、温度の上昇につれて気孔の漸進的または段階的な閉塞が達成可能である。
【0064】
本発明によって使用可能な結合剤ならびに粒子、特に有機粒子は好ましくは高度な耐熱性を有する。好ましいのは、結合剤および/または粒子は温度100、120、150、175または200℃にて、特に24時間にわたって耐熱性を有することである。これによって、燃料電池への使用が可能になる。
【0065】
また、無機粒子または無機・有機ハイブリッド粒子を使用または混入することも思料可能である。これらの粒子は温度400℃以下では溶融しない。さらに、塩基性を有するこれらの粒子を選択して、電池内に存在するプロトン活性を少なくとも部分的に低下させ、こうして、その他の電池成分の老化ないしガス発生を積極的に防止することが可能である。
【0066】
無機粒子としては、例えば、金属酸化物、金属水酸化物、窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物、ホウ酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、炭酸塩およびガラス粒子が適している。これらの粒子は、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、チタン酸塩および/またはペロブスカイトからなるかまたはそれらを含んでいると好都合である。また、これらの粒子の混合物またはその他の材料との混合物も使用可能である。ガラス粒子としては、特に、ナノおよびマイクロガラス粒子が適している。これらは、アルカリ硫酸塩およびアルカリ土類硫酸塩、アルカリ炭酸塩およびアルカリ土類炭酸塩、ホウ酸リチウムからなるかまたはそれらを含んでいると好都合である。これらの無機粒子は無処理であってもあるいは、存在する電解質による理想的な湿潤特性を実現すべく、塩基性によってプロトン活性を低下すべく、錯体形成機能によって不純物を固定化すべくかつ錯体形成機能によって選択的に電解質中のLiイオン輸率を高めるべく、化学的に改質されてもよい。また、有機粒子、結合剤およびフリース布もこれらの作用を発揮することが可能である。
【0067】
本発明の一実施形態において、無機粒子は有機粒子と混合されて使用される。無機粒子は元来、ひび割れたもしくは多孔質の構造を有しており、これによって特に粒子混合物の気孔率を高めることができる。また、これらは優れた耐熱性、優れた化学耐性ならびに優れた湿潤性も有している。それゆえ、例えば、粒子全体の2、5、10、25または99重量%までが無機粒子であるような有機粒子と無機粒子の混合物を使用することができる。
【0068】
また、球状であるかまたは面が均等に配置されて球に近い外形をなしている無機粒子も使用することが可能である。この種の粒子は、例えば晶出によって得ることができる。
【0069】
本発明によって使用可能な粒子は公知の方法によって製造することが可能である。例えば、適切な、特に球状の有機粒子がすでに重合の反応生成物として得られる方法が公知である。好ましい方法は乳化重合法または分散重合法である。
【0070】
さらに別の実施形態において、粒子はポリマーの再加工によって得られる。例えば、ポリマーグラニュールが粉砕される。場合により、続いて、所望の粒度分布を得るために、分離法、例えば篩い分けが使用される。粒子は異なった粒度の混合物からなっていると好都合である。これにより、気孔率と気孔サイズ分布を変化させることが可能である。
【0071】
粒子は不活性であるか、膨潤性を有するか、またはモノマー溶液に可溶であってもよい。粒子は化学的に、例えば表面改質によって処理されていてもよい。例えば、表面は親水化されていると好都合である。また、表面は結合剤との架橋反応基を有するように処理されていてもよい。
【0072】
母材は、フリース布、クロス、編織布、膜、シート、フェルト、紙または発泡材であってもよい。特に好ましいのはフリース布の使用である。フリース布(またはフリース)は個々の繊維からなる繊維製の面状構造物である。フリース布は好ましくは強化されている。
【0073】
本発明の好ましい一実施形態において、母材、特にフリース布は繊維からなり、この場合、気孔は繊維から形成される。
【0074】
母材、特にフリース布の繊維は、有機ポリマー、特にポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリビニルピロリドンまたはセルロース、例えばビスコースから製造されているかまたはそれらを含んでいると好都合である。また、複合繊維を使用することも可能である。これらは上述したポリマーを有するかまたは含んでいると好都合である。適切なのは、例えば、商品名ビジル[Visil]で提供される、セルロースとポリ珪酸からなる混合繊維である。これらの有機ポリマーの使用によって、僅かな熱収縮を示すにすぎないシート材を製造することが可能である。さらに、これらの材料は、電池および蓄電池に使用される電解質およびガスに対して電気化学的にほぼ安定である。
【0075】
本発明によるシート材は、乾燥重量を基準にして、以下のように構成することができる:
母材、20から98重量%、特に50から95重量%、
粒子、0から80重量%、特に2から50重量%、
結合剤、0.1から30重量%、特に0.5から15重量%。
【0076】
好ましい一連の実施形態において、本発明によるシート材は母材の単位面積重量の110から500%、特に120から300%または140から200%である単位面積重量を有している。
【0077】
フリース布の繊維の平均長さはその平均直径を少なくとも2倍、好ましくは何倍も上回っていてもよい。この具体的な態様により、繊維は互いに絡み合うことができるために、特に引張りに強いフリース布を造ることが可能である。
【0078】
母材、特にフリース布の繊維の少なくとも90%はせいぜい12μmの平均直径を有していると好都合である。この具体的な態様により、第1の気孔の気孔サイズが比較的小さいシート材を構成することができる。もっと微細な多孔質は少なくとも40%の繊維がせいぜい8μmの平均直径を有するようにすることによって達成可能である。
【0079】
シート材はせいぜい100μmの厚さを特徴とすることができる。この厚さのシート材は問題なく巻回可能であり、非常に安全な電池稼動を可能にする。好ましくは、厚さはせいぜい60μmまたはせいぜい40μmまたは30μmであってもよい。この厚さによって、巻回性が改善され、さらにそれにもかかわらず安全な電池稼動が可能になる。厚さは、特に好ましくは、せいぜい25μmまたはせいぜい5μmであってもよい。この種の厚さのシート材によって、非常にコンパクトな構造の電池および蓄電池を構成することができる。
【0080】
架橋された結合剤を有する本発明になるシート材の構造により、高い気孔率を有するが、それにもかかわらず非常に安定したシート材を製造することが可能である。このシート材は、少なくとも25%または少なくとも30%の気孔率を有していると好都合である。これらの気孔率を有するシート材は、その材料密度によって、短絡の形成を特に効果的に抑止する。シート材は好ましくは、少なくとも15%または少なくとも40%の気孔率を有しているとよい。好ましい一実施形態において、気孔率は55%以上である。この気孔率を有するシート材によって、高い出力密度を有する電池を製造することができる。ここに述べたシート材は高い気孔率にもかかわらず、非常に小さな気孔を有しており、そのため、シート材の片側から反対側に達するデンドライト状の結晶成長が生ずることはあり得ない。この点をバックグラウンドとして、第2の気孔はシート材の片側から反対側に達するデンドライト状の結晶成長が生ずることのないラビリンス状の組織を形成することが思料可能である。
【0081】
シート材は、せいぜい15μmまたはせいぜい3μmの平均気孔サイズを有していると好都合である。こうした気孔サイズの選択は短絡を回避するのに特に好適であることが判明した。平均気孔サイズは特に好ましくはせいぜい1μmであってもよい。この種のシート材は、特に好適には、メタルデンドライト成長、電極粒子の剥離片および圧力作用時の電極の直接接触等による短絡を回避する。
【0082】
シート材は長手方向に少なくとも15ニュートン/5cmまたは少なくとも5N/5cmの最大引っ張り強さを示してよい(EN 29 073−T3に準拠した測定)。こうした強さを有するシート材は、引裂することなく、電池の電極に巻回することが可能である。
【0083】
本発明によるシート材を製造するための方法も本発明の対象であり、その際、
a)第1の気孔を有する母材と架橋性ポリマーとを含んだ溶液または分散液が準備され、
b)ポリマーが架橋され、
c)コーティングされた母材は、場合により乾燥および/または加熱される。
【0084】
ここで、ポリマーは結合剤として使用される。この場合、本発明の一実施形態において、先ず、架橋性ポリマーを含んだ溶液または分散液が準備される。その際、ポリマーは溶液または分散液中で重合によって造られるかまたは溶液または分散液に外部から加えられてよい。引き続き、母材は溶液または分散液で含浸され、続いて、架橋される。
【0085】
さらに別の実施形態において、ポリマーは母材の存在において重合によって造られる。モノマーは、架橋されたポリマーまたは架橋性ポリマーが得られるようにして、選択される。この実施形態において、重合と架橋は好ましくは単一の反応材料中で行われる。その際、双方の反応は同時に進行するかまたは互いに連続するようにすることが可能である。これは、例えば、二官能価モノマーと多官能価モノマーが材料中に含まれている場合に達成可能である。これらは分子ごとに二重または多重に反応に関与し、それによって、2つまたはそれ以上のポリマー鎖を結合することができる。この場合、重合と架橋は基本的に同一の機構により単一の反応で進行するのが好適である。
【0086】
また、先ず重合を基本的に完了させ、続いて、例えば触媒の添加、照射または加熱によって架橋を適切に実施することも可能である。この実施形態において、二官能価または多官能価あるいはその両方のモノマーの官能基は好ましくは基の一部が重合の間反応しないように選択されている。
【0087】
上記ステップa)の溶液または分散液はさらに粒子を含んでいると好都合である。
【0088】
本発明によるシート材を製造するための方法も本発明の対象であり、その際、
a)重合性モノマー(この場合、モノマーの少なくとも一部は架橋性を有する)を含んだ溶液または分散液が作られ、
b)第1の気孔を有する母材が上記溶液または分散液で含浸され、
c)上記モノマーは重合され、
d)ステップc)で得られたポリマーが重合中または重合後に架橋され、
e)コーティングされた母材は、場合により乾燥および/または加熱される。
【0089】
上記ステップa)の溶液または分散液はさらに粒子を含んでいると好都合である。
【0090】
本発明の好ましい一実施形態において、モノマーは、一官能価と多官能価のモノマーからなる混合物を含んでいる。
【0091】
上記ステップc)の重合は、好ましくはイオン重合またはラジカル重合である。重合は母剤および場合により粒子の存在において行われる。ステップd)の架橋は好ましくは熱的に行われるかまたは照射、特にUV照射によって行われる。
【0092】
本発明の好ましい一実施形態において、モノマーは、一官能価と多官能価のモノマーからなる混合物である。混合物中に占める二官能価または多官能価のモノマーの割合は好ましくは0.1から50重量%、特に0.5から30重量%である。
【0093】
種々異なったモノマーのコンビネーションおよび/または架橋によって、シート材の湿潤特性を最適化することができる。この場合、湿潤特性は架橋密度に依存している。これは例えばシート材がセパレータとして使用される場合に重要である。
【0094】
本発明のさらに別の実施形態において、溶液または分散液は、架橋性結合剤をつくるためのモノマーと、光重合開始剤、ラジカル重合開始剤、イオン重合開始剤、熱重合開始剤、連鎖移動剤、連鎖調節剤、プロトン性ならびに非プロトン性溶媒のうちから選択される少なくとも1つのさらに別の成分とを含んでいる。
【0095】
好ましくは、特に、ラジカル重合またはイオン重合可能なモノマーが使用される。これらの反応は好ましくは光重合開始剤によって促進される。ただし、モノマーが光化学的に活性であれば、その場合、モノマーは自己開始性を有し、重合自体が開始するために、光重合開始剤は不要である。重合中の架橋に際しては二官能価または多官能価のモノマーが使用される。
【0096】
光重合開始剤にさらに加えて、熱重合開始剤が付加されてもよい。これにより、重合と共に架橋も促進されるため、共同効果を達成することができる。この場合、例えばIR線とUV線との照射処理のコンビネーションが好ましい。これにより、総じて生産速度を向上させることができる。
【0097】
ラジカル重合用の一官能価化合物として適しているのは、特に、少なくとも2つの共役二重結合を有する化合物である。重合に際して、架橋可能な不飽和ポリマーが得られる。
【0098】
ラジカル重合にあっては、一官能価のモノマーとして、β−不飽和カルボン酸、その塩、そのエステル、アミドまたはニトリルが使用されるのが好ましい。この場合、β−ポジションに二重結合または三重結合が含まれている。エステルおよび酸は好ましくは一般式RC=C−COORを有している。この場合、R,RおよびRは有機基またはHである。有機基は、特に、アルキル基、アリール基およびアルカリル基である。アルキル基、特にRは、特に、分枝のないまたは枝分かれしたC1〜C20基、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、エチル−2−n−プロピル基、ベンジル−2−n−プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、デシル基、イソデシル基、ステアリル基、ラウリル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、2−ヒドキシエチル基、エトキシ−エトキシ基、フルフリル基、テトラヒドロフルフリル基またはアリール基、例えばベンジル基、フェニル基およびフェノキシエチル基である。また、エステル基の位置にアミド基を有する当該化合物も好ましい。
【0099】
本発明の一連の好ましい実施形態において、一官能価モノマーは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミドまたはそれらの誘導体である。適切なモノマーは、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のエステルとその誘導体であり、その際、エステル成分は基中に20個までのC原子を有しており、したがって、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、エチル−2−n−プロピル基、ベンジル−2−n−プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、デシル基、イソデシル基、ステアリル基、ラウリル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、フェニル基、ベンジル基、フェノキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、エトキシ−エトキシ基、フルフリル基、テトラヒドロフルフリル基である。
【0100】
好ましいのは、特に、フッ素化されたまたは全フッ素置換されたアクリレートおよびメタクリレート、エチレングリコール−メチルエーテル−アクリレート、エチレングリコール−ジシクロペンテニルエーテル−アクリレート、分子量約200から500のポリ(エチレングリコール)−メチルエーテル−アクリレート、分子量約200から500のポリ(プロピレングリコール)−アクリレート、ジ(エチレングリコール)−2−エチルヘキシル−エーテル−アクリレート、2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)−エチル−メタクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル−アクリレート、2−(ジエチルアミノ)−エチル−メタクリレート、4−アクリロイルモルホリンである。また、一官能価のウレタンアクリレートおよびメタクリレート、スチレン、α−アルキルスチレン、ビニルトルエン、ビニルステアレートも適切である。また、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、不飽和ニトリル、例えばアクリルニトリル、メタクリルニトリルも適切である。その他の適切な一官能価モノマーは、ビニルエーテル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、1−ビニル−2−ピロリドン、2−ビニルピリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルホルムアルデヒド、N−ビニルフタルイミド、3−ビニルアニゾール、2−ビニルアニゾール、クロトン酸およびクロトン酸のエステル、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、マレイン酸およびマレイン酸のエステル、フマル酸およびフマル酸のエステルならびにイタコン酸およびイタコン酸のエステルである。また、上記の一官能価モノマーの混合物も使用可能である。
【0101】
ラジカル重合用の二官能価または多官能価のモノマーとしては、特に、分子中の2箇所またはそれ以上のポジションで重合および/または架橋可能な化合物が適している。これにより、重合中に網状組織が生じ得る。この種の化合物は、好ましくは二つの同一または類似した反応性官能価を有している。別法として、少なくとも二つの異なった反応性官能価を有する化合物を使用することが可能である。例えば、一方の反応基は重合および重合に関与しない他方の反応基は適切に架橋可能である。
【0102】
ラジカル重合用の適切な二官能価または多官能価のモノマーは、例えば、ジアクリレート、ジメタクリレート、トリアクリレート、トリメタクリレート、テトラアクリレート、テトラメタクリレート、ペンタアクリレート、ペンタメタクリレート、ヘキサアクリレートおよびヘキサメタクリレートである。特に適切なのは、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオール−エトキシレートジアクリレート、1,6−ヘキサンジオール−プロポキシレートジアクリレート、3−(アクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネートジアクリレート、5−エチル−5−(ヒドロキシメチル)−β、β−ジメチル−1,3−ジオキサン−2−エタノールジアクリレート、分子量約450から700のビスフェノール−A−エトキシレートジアクリレート、ビスフェノール−A−プロポキシレートジアクリレート、ジ(エチレングリコール)−ジアクリレート、ペンタエリトールジアクリレートモノステアレート、分子量約250から1000のポリ(エチレングリコール)−ジアクリレート、テトラ(エチレングリコール)−ジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリ(プロピレングリコール)−グリセロレート−ジアクリレート、トリメチロールプロパン−ベンゾエートジアクリレート、ビニルクロトネート、ジビニルベンゼン、1,6−ビス(3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキサンカルボン酸)ヘキシルジエステル、ビニルアクリレート、ビニルメタクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)−テトラアクリレート、ジペンタエリトール−ペンタ−/ヘキサ−アクリレート、ペンタエリトールプロポキシレート−トリアクリレート、ペンタエリトール−テトラアクリレート、分子量400から1000のトリメチロールプロパン−エトキシレート−トリアクリレートおよびトリス[2−(アクリロイルオキシ)エチル]−イソシアヌレートである。
【0103】
本発明によれば、イオン重合を実施することも可能である。これは陰イオン重合または陽イオン重合であってもよい。モノマーとしては、不飽和化合物、特に炭素−炭素・二重結合を有する不飽和化合物が適している。
【0104】
イオン重合用の一官能価モノマーとしては、例えば、グリシジル−フェニルエーテル、リモネンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、ブチル−グリシジルエーテル、グリシジル−イソブチルエーテル、グリシジル−イソプロピルエーテル、2−エチルヘキシル−グリシジルエーテル、2−メチル−2−ビニルオキシラン、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、20個までの炭素原子を有するフッ素化および全フッ素置換されたオキシランが適している。
【0105】
イオン重合に際しては、特に、以下の二官能価および多官能価モノマーと架橋剤が使用される:ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,3−ブタジエンジエポキシド、4,ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノール−ジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、4,4’−メチレンビス(N,N−ジグリシジルアニリン)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、エチレングリコール−ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール−ジグリシジルエーテル、約350から1100g/molのMnを有するポリ[(o−クレシルグリシジルエーテル)−co−ホルムアルデヒド、約330から600g/molのMを有するポリエチレングリコール−ジグリシジルエーテル、約350から700g/molのMを有するポリ(プロピレングリコール)−ジグリシジルエーテル、5−アミノ−1,3,3−トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル)、トリエチレンテトラミン、4,4’−メチレンジアニリン、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物。
【0106】
溶液または分散液には重合開始剤を添加することができる。イオン重合およびラジカル重合の場合には、好ましくは光重合開始剤が使用される。さらに別の一実施形態にあっては、光重合開始剤は含まれていない。若干の公知のモノマーは、光重合開始剤なしで、放射線の吸収によるだけで重合を開始する。これが当てはまらない場合には、光重合開始剤が添加される。これらの開始剤はラジカル重合および/またはイオン重合を開始することができる。この場合、重合開始は放射線によって行われる。溶液または分散液に占める重合開始剤の割合は0.05から10重量%または0.05から5重量%、特に0.1から3重量%であってもよい。開始剤の量によって重合に影響を及ぼすことができる。一般に、開始剤の使用量が多くなるほど、ポリマー鎖は短くなるということができる。これにより、得られるシート材の膨潤性および耐熱性に影響が及ぼされる。
【0107】
ラジカル重合にあっては反応開始剤を使用することができる。これらは通例、一定の条件下、例えば照射下または高温下でラジカルを遊離する化合物である。ラジカル重合用の適切な開始剤は、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルホリノブチロフェノン、ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−オクチルカルバゾール、3’−ヒドロキシアセトフェノン、4’−エトキシアセトフェノン、4’−ヒドロキシアセトフェノン、4’−フェノキシアセトフェノン、4’−tert−ブチル−2’,6’−ジメチルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾイン、4’−ジメチルベンジル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド、[2−(アクリロイルオキシ)エチル](4−ベンゾイルベンジル)ジメチルアンモニウムブロミド、5−ジメチルベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,4−ジメチルベンゾフェノン、3−ヒドロキシベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−(p−トリルチオ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス[2−(1−プロペニル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンおよびベンゾフェノンである。
【0108】
熱ラジカル重合開始剤の使用も可能である。これらは高温時に、重合を開始するラジカルに分解する。適切な熱ラジカル重合開始剤は、例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、ベンゾイルペルオキシド、2,5−ビス(tert−ブチルペロキシ)−2,5−ジメチルヘキサン、ビス[1−(tert−ブチルペルオキシ)−1−メチルエチル]ベンゼン、tert−ブチルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシドおよびラウリルペルオキシドである。
【0109】
イオン重合にあっては開始剤を使用することができる。これは第1の反応においてイオンを生成する通例の化合物、例えばルイス塩基またはブレンステッド酸である。イオン重合のための適切な開始剤は、例えば、(4−ブロモフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−クロロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−フルオロフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−ヨードフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−メチルチオフェニル)メチルフェニルスルホニウムトリフラート、(4−フェノキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(4−tert−ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフラート、(tert−ブトキシカルボニルメトキシナフチル)−ジフェニルスルホニウムトリフラート、Boc−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフラート、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−ナフチルジフェニルスルホニウムトリフラート、[4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムp−トルエンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフラート、ジフェニルヨードニウムp−トルエンスルホネート、ジフェニルヨードニウムトリフラート、ジフェニルヨードニウム−9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシミドペルフルオロ−1−ブタンスルホネート、N−ヒドロキシナフタルイミドトリフラート、N−ヒドロキシフタルイミドトリフラート、チオビス(トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート)、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、トリフェニルスルホニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムトリフラート、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムペルフルオロ−1−ブタンスルホネート、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムトリフラート、および2−tert−ブチルアントラキノンである。
【0110】
重合反応を促進するその他の公知の添加物も使用可能である。適切なのは、例えば、連鎖移動剤および調節剤である。連鎖移動剤および調節剤として適しているのは、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、1−ブタンチオール、2,2’−(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、4,4’−チオビスベンゼンチオール、ブチル3−メルカプトプロピオネート、エチル3−メルカプトプロピオネート、メチル3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、tert−ノニルメルカプタンおよびRaft試薬である。
【0111】
本発明の好ましい一実施形態において、母剤は以下の溶液または分散液で含浸される:
a)重合性モノマー、1から100重量%、特に2から80重量%、
b)粒子、0から80重量%、特に2から70重量%、
c)重合開始剤、0から10重量%、特に0.05から5重量%、
d)連鎖移動剤、0から5重量%、特に0.05から3重量%、
e)溶媒、0から95重量%、特に0から90重量%または0から75重量%。
【0112】
重合用の適切な溶液または分散液は、例えば、メタクリレート、ジメタクリレートおよびPVP;またはビニルピロリドン、PVPおよびPVP粒子;またはPVDF粒子、PVP、モノメタクリレートおよびジメタクリレート;またはアクリル酸および場合により酸化アルミニウム粒子またはPTFE粒子と結びついた界面活性剤を含んでいる。
【0113】
重合性モノマーは好ましくは50重量%まで、特に0.1から30重量%または0.2から20重量%、二官能価または多官能価のモノマーを含んでいる。その他のモノマーは一官能価モノマーである。溶剤の添加は任意である。モノマーが液状であれば、粒子はモノマー中にも可溶である。
【0114】
好ましい一実施形態において、含浸された母剤の重合および架橋は光化学的に行われ、続いて、シート材の乾燥が行われる。
【0115】
本発明によれば、温度安定性を有する微孔質の単層シート材を得ることができる。本発明によるシート材はその他の成分と組合わせて多層シート材系とすることも可能である。本発明によれば、本発明によるシート材を複数組み合わせることも可能である。
【0116】
本発明の好ましい一実施形態において、シート材を後処理して、ポリマー結合剤および粒子の少なくとも部分的な分解を達成することができる。これによって、微孔質構造が得られる。こうした分解は、結合剤および粒子として、限定的にしか適合性を有していない異なったポリマーが使用される場合に達成される。
【0117】
本発明の好ましい1実施形態において、先ずに溶液または分散液が作製される。これらはモノマーと場合により粒子およびその他の添加物を含んでいる。
【0118】
添加剤はそれが分散液のレオロジーおよびそれと共に加工性および/または安定性に影響を及ぼし、重合ならびに電池特性を損なうことがないようにして選択することができる。通例の分散液添加剤、例えば、酸、塩基、界面活性剤、例えばイオン性または非イオン性界面活性剤、増粘剤、例えばアルギン酸、寒天、カラゲーン、イナゴマメデンプン、グアーデンプン、トラガカント、アラビアゴム、キサンタン、カラヤゴム、タロイモデンプン、ゲル化剤、ペクチン、セルロース、セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、改質されたデンプン、ポリエチレングリコールおよびカーボポル、ポリマー、例えばポリアクリレート、オリゴエーテル、ポリエーテルおよび高分子電解質を使用することが可能である。増粘剤としては、ケイ酸塩、特にベントナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ウォラストナイトおよび水和酸化物粒子、例えばSiO粒子、Al粒子またはTiO粒子も使用可能である。使用される粒子はすでにその製造後に分散液として存在しているかまたは製造人により分散液の形で使用されることができる。これらは、場合により、先ず分散されなければならない。その際、常用の分散助剤、例えば界面活性剤および乳化剤を使用することができる。
【0119】
分散液の製造には、一連の成分が混合されて、攪拌下で、場合により加熱下で、均等に分散される。分散液は水性分散液であってもよい。ただしまた、溶剤中への分散液または水/溶剤混合物中への分散液も使用可能である。分散液の固体含有量は好ましくは5から70重量%、好適には20から65重量%。特に好適には25から45重量%である。
【0120】
分散液は公知のコーティング法によって母剤、特にフリース布に塗布することが可能である。一連の特別な実施形態において、母剤は好ましくは連続的または半連続的に常用のコーティング法でコーティングされる。適切な方法は、例えば、ナイフ塗布、噴霧、フローコーティング(カーテンコーティング)、ロールシステム、例えば2、3および5ロールシステム、3ロールコンビシステム、マイクロロールシステム、リバースロールシステム、彫刻ロールシステム、浸漬システム、スロットダイシステム、ナイフシステム、両面システム、コンマバーシステム、フォームアプリケーションまたは好ましくは含浸である。その際、コーティング速度は0.5から1000m/分または0.5から200m/分、好ましくは20から200m/分または20から1000m/分、特に好ましくは50から200m/分または50から100m/分であってもよい。続いて、コーティングされた母剤は好ましくは乾燥され、場合により強化される。コーティングは50から500℃または50から200℃、好ましくは100から200℃、特に好ましくは120から200℃にて乾燥されてよい。加熱および/または乾燥は接触式(カレンダリング、ドラムドライヤー、コンベアドライヤー)で行われても、非接触式(温風、熱風、IR照射、マイクロ波)で行われても、あるいは従来の技術によるその他の加熱法によって行なわれてもよい。
【0121】
カレンダリングによってシート材は機械的に強化されてよい。カレンダリングによって表面粗さは減少させられる。場合により母材の表面に使用される粒子はカレンダリングに付された後は扁平化を示す。
【0122】
シート材の存在において重合されるモノマーを使用した本発明による方法はさまざまな利点を有している。一つの利点は、この方法が非常に速やかに実施可能なことである。母材は1製造ステップにおいてコーティングされ、光化学的に架橋される。光化学架橋の大きな利点はその速さと一様性に存している。したがって、この方法は、フリース布がコーティングされ、続いて熱処理され、カレンダリングに付されるかまたは類似の方法で再加工される公知の方法に比較して遥かに速やかに実施可能である。
【0123】
加えてさらに、この方法は非常に可変性に富んでおり、したがって、特別な要件、例えば電極、電解質および電池設計に関する電池のそれぞれの固有な要件に良好に適合させることができる。モノマーおよび場合により粒子の選択により、例えば、それぞれの電解質によるセパレータの湿潤特性を最適化することが可能である。モノマー、架橋密度および粒子の選択によって、電解質の存在におけるセパレータの膨潤特性を最適化することが可能である。
【0124】
材料の選択により、例えばセパレータとしてのシート材の電極への付着性も改善することができる。これはLiポリマー電池の製造時の一つの重要なステップである、セパレータと電極との貼り合せにとって重要である。
【0125】
ここに述べたシート材は、それが短絡を特に効果的に防止するために、特に電池および蓄電池にセパレータとして使用することができる。
【0126】
上記のシート材はまた、それが優れた湿潤特性を示しかつ液体を輸送することができるために、燃料電池においてガス拡散シート材または膜として使用することもできる。したがって、少なくとも1つの本発明によるシート材を含んだ、燃料電池、電池、電池電解質系または蓄電池も本発明の対象である。
【0127】
本発明によるシート材は通常の電池電解質系とのコンビネーションに特に適している。これらの電池電解質系は1以上の液体と1以上の導電塩から合成されている。電解質系の適切な溶剤は、例えばカーボネート、例えばエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネートおよびプロピレンカーボネートまたはラクトン、例えばブチロラクトンをベースとした溶剤である。しばしばこれらの溶剤の混合物も使用される。
【0128】
従来の溶剤、例えば上述した一連のカーボネートは、容易に発火し得るという短所を有している。そのため、イオン性液体をベースとした別の電解質系が開発された。これらのイオン性液体は、上記のカーボネートに比較して遥かに発火しにくいという利点を有している。イオン性液体の混合物も利用されるが、ただし、イオン性液体(IL)と上述したような従来の溶剤との混合物も利用される。イオン性液体は、例えば、アンモニウム、ピリジニウム、ピロリウム、オキサゾリウム、オキサゾリニウム、イミダゾリウムをベースとした陽イオンまたはホスホニウムイオンを有する液体塩からなっている。
【0129】
多用される導電塩は特にリチウム塩、例えばLiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFCFSO、LiSbF、LiAlCl、LiGaCl、LiCl、LiNO、LiSCN、LiOSCF、LiCSO、LiOCCF、LiFSO、LiB(C、LiB(C、Li(NTF)である。導電塩の濃度は(電解質溶剤を基準にして)0.2mol/kgから固溶限まで、好ましくは0.2mol/kg〜0.8mol/kg、特に好ましくは0.4mol/kg〜0.6mol/kgである。
【0130】
最後に、本願明細書に含まれている一連の具体的な実施形態は単に本発明による思想の討究に資するものであって、それを制限するものではない旨特に強調しておくこととする。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0131】
測定方法
単位面積重量を測定するため、それぞれ3個の100×100mmの大きさの試料が打ち抜かれ、これらの試料が秤量され、測定値が100倍された。
【0132】
厚さは精密厚さ測定器、モデル2000 U/Elektrikによって測定した。測定面積は2cm、測定圧力は1000cN/cmであった。
【実施例1】
【0133】
重量比320の50%メトキシポリエチレングリコール750−メタクリレート溶液(PLEX(登録商標)6850−O、Evonik)に、不断の攪拌下で、重量比130のポリビニルピロリドン溶液(PVP;Luvitec K90、BASF)を加えた。次いで、重量比4のポリエチレングリコール200−ジメタクリレート、重量比2.7のイルガキュア754(Ciba)および重量比1.3のイルガキュア819 DW(Ciba)を、同じく攪拌下および遮光下で加えた。
コーティング
【0134】
30×49.5cmの大きさのPETフリース布(Freudenberg、厚さ:20μm、単位面積重量:11.6g/m)をロール塗布法によってコーティングし、UVテーブルドライヤー(Technigraf、モデルAktiprint T)を通して120℃にて乾燥させた。
単位面積重量15g/m、厚さ23μmのコーティングされたフリース布が得られた。
【実施例2】
【0135】
重量比65の5%PVP(ポリビニルピロリドン)溶液(Luvitec K90、BASF)に、不断の攪拌下で、重量比100の25%PVP粒子分散液(Luvicross、BASF)、重量比75のビニルピロリドンおよび重量比140の脱イオン水を加えた。次いで、重量比2.7のイルガキュア754(Ciba)および重量比1.3のイルガキュア819 DW(Ciba)を、同じく攪拌下および遮光下で加えた。
コーティング
【0136】
30×49.5cmの大きさのPETフリース布(Freudenberg;厚さ:20μm、単位面積重量:11.6g/m)がロール塗布法によってコーティングされ、複数回にわたってUVテーブルドライヤー(Technigraf、モデルAktiprint T)を通して120℃にて乾燥された。単位面積重量16g/m、厚さ23μmのコーティングされたフリース布が得られた。
【実施例3】
【0137】
重量比200の57%PVDF分散液(KYNAR 301F、Arkema、平均粒径0.25μm)に、櫂形攪拌機による不断の攪拌下で、重量比200の2%PVP(ポリビニルピロリドン)溶液(Luvitec K90、BASF)、重量比15のポリエチレングリコール200−ジメタクリレート溶液(Evonik)および重量比60の50%メトキシポリエチレングリコール750−メタクリレート溶液(Evonik)を加えた。次いで、重量比2.7のイルガキュア754(Ciba)および重量比1.3のイルガキュア819 DW(Ciba)を、同じく攪拌下および遮光下で加えた。
コーティング
【0138】
幅15cmのPETフリース布(Freudenberg、厚さ:20μm、単位面積重量:11.3g/m)をロール塗布法によって連続的にコーティングし、複数回にわたってUVテーブルドライヤー(Technigraf、モデルAktiprint T)を通して120℃にて乾燥させた。単位面積重量22g/m、厚さ30μmのコーティングされたフリース布が得られた。
【実施例4】
【0139】
重量比50.89の80%アクリル酸溶液(Ceda Chemicals)に、櫂形攪拌機による不断の攪拌下および遮光下で、重量比12.50の界面活性剤(アルキルポリエチレングリコールエーテルエトキシレート;ルテンゾールON 118;BTC)、重量比1.75の2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Aldrich)、重量比6.52のトリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(Aldrich)および重量比28.34の脱イオン水を加えた。
コーティング
【0140】
幅15cmのPETフリース布(Freudenberg、厚さ:20μm、単位面積重量:11.3g/m)をロール塗布法によって連続的にコーティングし、UVテーブルドライヤー(Technigraf、モデルAktiprint T)を通して60℃にて乾燥させた。単位面積重量17g/m、厚さ25μmのコーティングされたフリース布が得られた。
【実施例5】
【0141】
重量比50.89の80%アクリル酸溶液(Ceda Chemicals)に、櫂形攪拌機による不断の攪拌下および遮光下で、重量比12.50のルテンゾールON 118(BTC)、重量比14の60%酸化アルミニウム分散液(Al)(平均粒径0.7μm)、重量比1.75の2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Aldrich)、重量比6.52のトリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(Aldrich)および重量比28.34の脱イオン水を加えた。
コーティング
【0142】
幅15cmのPETフリース布(Freudenberg、厚さ:20μm、単位面積重量:11.3g/m)をロール塗布法によって連続的にコーティングし、UVテーブルドライヤー(Technigraf、モデルAktiprint T)を通して120℃にて乾燥させた。単位面積重量22g/m、厚さ29μmのコーティングされたフリース布が得られた。
【実施例6】
【0143】
重量比50.89の80%アクリル酸溶液(Ceda Chemicals)に、櫂形攪拌機による不断の攪拌下および遮光下で、重量比12.50のルテンゾールON 118(BTC)、重量比10の60%PTFE分散液(ダイニオンTF 5032R、3M、平均粒径160nm)、重量比1.75の2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(Aldrich)、重量比6.52のトリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(Aldrich)および重量比28.34の脱イオン水を加えた。
コーティング
【0144】
幅15cmのPETフリース布(Freudenberg、厚さ:20μm、単位面積重量:11.3g/m)をロール塗布法によって連続的にコーティングし、UVテーブルドライヤー(Technigraf、モデルAktiprint T)を通して120℃にて乾燥させた。単位面積重量23g/m、厚さ28μmのコーティングされたフリース布が得られた。
【0145】
表1には、実施例1〜6によって得られたサンプルの厚さおよび重量に関して得られた値がまとめられている。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気孔を備えた母材を有し、架橋された少なくとも1つの結合剤を含んでいるシート材。
【請求項2】
前記母材が少なくとも部分的に粒子で満たされており、その際、前記粒子は第1の気孔を少なくとも部分的に充填して、前記粒子で満たされたゾーンを形成すると共に、前記粒子は前記粒子で満たされた前記ゾーンにおいて第2の気孔を形成することを特徴とする請求項1に記載のシート材。
【請求項3】
前記粒子の平均直径が大多数の前記第2の気孔の平均気孔サイズよりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のシート材。
【請求項4】
前記粒子が球状に形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のシート材。
【請求項5】
前記粒子が前記母材に面状に均等に分散されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項6】
前記粒子で満たされた前記ゾーンの少なくとも一部が前記粒子による前記母材のコーティングとして形成されていることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項7】
前記結合剤が、β−不飽和カルボン酸、その塩、そのエステル、アミドおよびニトリルならびにアクリレート、メタクリレートおよびそれらの誘導体およびこれらの化合物のコポリマーからなる群から選択される有機ポリマーを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項8】
前記結合剤の融点が前記粒子または前記母材あるいはその両方の融点以下であることを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項9】
前記粒子が0.01から10μmの範囲内の平均直径を有していることを特徴とする請求項2から8のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項10】
前記粒子が、ポリアセタール、ポリシクロオレフィンコポリマー、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルケトン、ポリカルボン酸、ポリカルボキシレート、ゴム、ポリビニル化合物、ポリエーテル、ポリニトリル、ポリスルホン、ポリテレフタレート、ポリナフタレート、ハロゲン化ポリマーおよび不飽和ポリマーならびにコポリマーおよびそれらの混合物の群から選択される有機ポリマーから製造されていることを特徴とする請求項2から9のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項11】
前記粒子が、ポリプロピレン、ポリビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ペルフルオロ−エチレン−プロピレン(FEP)、ポリスチレン、スチレンブタジエンコポリマー、ポリアクリレート、ニトリルブタジエンポリマー、ポリメタクリレート、ポリエーテルアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、EPDMゴム、フッ素化ゴム、ポリビニルビリジン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリルニトリル、ポリエチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリオキシメチレン、ポリベンゾイミダゾールならびに上述したポリマーのコポリマーおよび混合物の群から選択される有機ポリマーから製造されていることを特徴とする請求項2から10のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項12】
前記粒子が無機粒子であるかまたは前記粒子の一部が無機粒子でありかつ一部が有機粒子であり、つまり前記粒子は粒子混合物として設けられていることを特徴とする請求項2から11のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項13】
前記無機粒子が、金属酸化物、金属水酸化物、窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物、ホウ酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ガラス粒子、ケイ酸塩、特に酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ゼオライト、チタン酸塩またはあるいはその両方ペロブスカイトからなる群から選択される請求項12記載のシート材。
【請求項14】
前記母材が、フリース布、クロス、編織布、膜、フェルト、紙および発泡材またはその他の連続気泡構造またはスケルトン構造三次元構造体からなる群から選択されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項15】
前記フリース布の繊維の平均長さが該繊維の平均直径を少なくとも2倍、好ましくは何倍も大きいことを特徴とする請求項14に記載のシート材。
【請求項16】
前記フリース布の繊維の少なくとも90%が12μmの平均直径を有していることを特徴とする請求項14から15のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項17】
前記フリース布の繊維の少なくとも40%が8μmの平均直径を有していることを特徴とする請求項14から16のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項18】
100μm、好ましくは60μm、特に好ましくは20μmの厚さを有していることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項19】
少なくとも15%、好ましくは少なくとも35%の気孔率を有していることを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項20】
前記第1の気孔および前記第2の気孔がラビリンス状組織を形成していることを特徴とする請求項2から19のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項21】
前記第2の気孔の気孔サイズがせいぜい3μm、好ましくはせいぜい1μmであることを特徴とする請求項2から20のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項22】
長手方向に少なくとも15N/5cmの最大引っ張り強さを有していることを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項23】
前記母材がカレンダリングされていることを特徴とする請求項1から22のいずれか一項に記載のシート材。
【請求項24】
a)前記第1の気孔を有する前記母材と架橋性ポリマーとを含んだ溶液または分散液が準備され、
b)前記ポリマーは架橋され、
c)前記コーティングされた母材は乾燥または加熱あるいはその両方の処理がなされることを特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載のシート材を製造するための方法。
【請求項25】
a)重合性モノマー(この場合、前記モノマーの少なくとも一部は架橋性を有する)を含んだ溶液または分散液が作られ、
b)前記第1の気孔を有する前記母材が前記溶液または分散液で含浸され、
c)前記モノマーは重合され、
d)ステップc)で得られたポリマーが重合中または重合後に架橋され、
e)前記コーティングされた母材は乾燥または加熱あるいはその両方の処理がなされることを特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載のシート材を製造するための方法。
【請求項26】
前記モノマーが、一官能価、二官能価、多官能価あるいはそれらのいずれかを組み合わせたモノマーからなる混合物であることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
ステップc)の重合がイオンまたはラジカルによって行われることを特徴とする請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
ステップd)の架橋が熱的に行われるかまたは照射、特にUV照射によって行われることを特徴とする請求項25から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ステップa)の溶液または分散液が、光重合開始剤、ラジカル重合開始剤、イオン重合開始剤、熱重合開始剤、連鎖移動剤、連鎖調節剤およびプロトン性ならびに非プロトン性溶媒のうちから選択される少なくとも1つのさらに別の成分を含むことを特徴とする請求項25から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
ステップa)の前記溶液または分散液がさらに粒子を含むことを特徴とする請求項24から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
燃料電池、電池または蓄電池のセパレータとして、ガス拡散シート材として、または膜としての請求項1から23のいずれか一項に記載のシート材の使用。
【請求項32】
請求項24から30のいずれか一項に記載の方法によって得られたシート材。
【請求項33】
請求項1から23または32のいずれか一項に記載の少なくとも1つのシート材を含んだ燃料電池、電池または蓄電池。

【公表番号】特表2011−517704(P2011−517704A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547109(P2010−547109)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001197
【国際公開番号】WO2009/103537
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(510057615)カール・フロイデンベルク・カー・ゲー (19)
【Fターム(参考)】