説明

架橋樹脂組成物およびそれを用いた電線

【課題】難燃剤を配合せずに耐熱性に優れた架橋樹脂組成物ならびにそれを用いた信頼性の高い電線を提供する。
【解決手段】主剤が、ポリエチレン30〜90重量%とゴムが70〜10重量%とでなり、主剤100重量部に、シラン化合物を0.1〜5重量部と、ラジカル発生剤を0.05〜1重量部と、シラノール縮合触媒を0.05〜1重量部と、補強材を3〜50重量部と、接着性樹脂3〜20重量部とを配合してなる架橋樹脂組成物とし、この架橋性組成物3を押出成形し、導体2を被覆して電線1を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋樹脂組成物およびそれを絶縁被覆として用いた電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、架橋樹脂組成物としてポリエチレン系の樹脂組成物が知られている。このポリエチレン系の樹脂組成物は、電気的特性、機械的特性、化学的特性などに優れるため、電線・ケーブルの絶縁被覆などの工業用としての他に、家庭用としての多くの用途に用いられている。そして、このような架橋樹脂組成物の耐熱性を向上させるために難燃剤を配合する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された架橋樹脂組成物(シラン架橋ポリエチレン)は、第1の重合体成分100重量部に、第2の重合体成分0.1重量部と、難燃剤5〜200重量部と、を含む組成物である。第1の重合体成分は、ポリオレフィン系樹脂またはゴム5〜95重量%と、炭素同士の不飽和結合を有するエチレン共重合体95〜5重量%とからなる。第2の重合体成分は、1種以上の官能基を含有するポリエチレン系樹脂またはゴムを含む。第1の重合体成分と第2の重合体成分の中には、外官能基を全重合体成分1g当たり10−8〜10−3g当量を有している。上記官能基としては、カルボン酸基または酸無水基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルケニル環状イミノエーテル基、シラン基、チタネート基が挙げられている。上記難燃剤としては、ハロゲン化難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−62158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示された架橋樹脂組成物の耐熱性のレベルは、加熱変形特性(120℃)(JIS C3005)を満足させる程度である。電線・ケーブルの絶縁被覆材料として用いる架橋樹脂組成物としては、さらに高い耐熱性が要望されている。また、架橋樹脂組成物の難燃性を高めるために、無機系難燃剤を配合した場合、配合率が高くなると機械的強度や可撓性および加工性、耐摩耗性が低下するという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、難燃剤を配合せずに耐熱性に優れた架橋樹脂組成物ならびにそれを用いた信頼性の高い電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴は、架橋樹脂組成物であって、ポリエチレンとゴムとでなる主剤に、シラン化合物、ラジカル発生剤、シラノール縮合触媒、および補強材を配合してなることを要旨とする。さらに具体的には、本発明の架橋樹脂組成物は、[I](a)ポリエチレン30〜90重量%と(b)ゴム70〜10重量%とでなる主剤100重量部と、[II]シラン化合物0.1〜5重量部と、[III]ラジカル発生剤0.05〜1重量部と、[IV]シラノール縮合触媒0.05〜1重量部と、[V]補強材3〜50重量部と、を配合してなる。なお、これらの配合構成に、[VI]接着性樹脂3〜20重量部をさらに配合してもよい。
【0008】
本発明では、[I]主剤を構成する(a)ポリエチレンと(b)ゴムの割合は、(a)ポリエチレンの30〜90重量%に対応して(b)ゴムが70〜10重量%となり、このような割合の[I]主剤を100重量部に対して、[II]シラン化合物、[III]ラジカル発生剤、[IV]シラノール縮合触媒、[V]補強材、およびこれらの配合構成に、[VI]接着性樹脂を添加する。
【0009】
(a)ポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを挙げることができる。(b)ゴムとしては、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴムなどを挙げることができる。[II]シラン化合物については、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどを挙げることができる。[III]ラジカル発生剤としては、ジクロロプロパノール(DCP)、第3ブチルーベルオキシドなどを挙げることができる。[IV]シラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジラウレートなどを用いる。[V]補強材としては、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどを挙げることができる。また、[VI]接着性樹脂としては、変性ポリエチレンを用いる。
【0010】
本発明の第2の特徴は、電線であって、上述の第1の特徴に係る架橋樹脂組成物を、200〜240℃の温度で押出成形して、導体を被覆してなることを要旨とする。
【0011】
本発明では、架橋樹脂組成物の上記主剤に補強材を配合することにより耐熱性を向上させ、その上でシラン架橋を行うことで、更に耐熱性を向上させている。よって、本発明によれば、従来のシラン架橋ポリエチレンよりも低架橋度でホットセット特性を満足させることができる。また、接着性樹脂を配合したことにより、ポリエチレン、ゴム、補強材の均一分散および相互密着性を向上させることができる。
【0012】
本発明によれば、絶縁被覆の外観が良好で且つ耐熱性を向上した電線を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、難燃剤を配合せずに耐熱性に優れ、200℃のホットセット試験を満足する耐熱性を持つ架橋樹脂組成物およびそれを用いた電線を実現することができる。
【0014】
また、本発明によれば、難燃剤を配合しなくてすむため、電線のコストを大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る架橋樹脂組成物を絶縁被覆として用いた電線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る架橋樹脂組成物およびそれを用いた電線について詳細に説明する。
【0017】
[電線]
図1は、本発明の一実施の形態に係る電線1を示している。この電線1は、複数の撚った導体2と、これらを一体に覆う絶縁被覆3とからなる。この絶縁被覆3は、後述する架橋樹脂組成物を用いて押出成形される。後述するように、架橋樹脂組成物の配合割合によっては、絶縁被覆3の外観を満足できない場合や、ホットセット特性(200℃)を満足できない場合がある。本実施の形態に係る電線1は、(a)ポリエチレン30〜90重量%と(b)ゴム70〜10重量%とでなる(I)主剤100重量部と、(II)シラン化合物0.1〜5重量部と、(III)ラジカル発生剤0.05〜1重量部と、(IV)シラノール縮合触媒0.05〜1重量部と、(V)補強材3〜50重量部と、(VI)接着性樹脂3〜20重量部とを配してなる架橋樹脂組成物を絶縁被覆3として押出成形したものである。
【0018】
[架橋樹脂組成物]
本発明に係る架橋樹脂組成物は、以下の配合比で材料が配合されたものであり、これら配合材料の主剤などを結合・架橋させることで、立体網目構造にし、耐熱性能、クリープ特性などを向上させている。
【0019】
本発明に係る架橋樹脂組成物は、架橋樹脂組成物であって、(a)ポリエチレン30〜90重量%と(b)ゴム70〜10重量%とでなる(I)主剤100重量部と、(II)シラン化合物0.1〜5重量部と、(III)ラジカル発生剤0.05〜1重量部と、(IV)シラノール縮合触媒0.05〜1重量部と、(V)補強材3〜50重量部とを配合する。これらの配合構成に、(VI)接着性樹脂3〜20重量部をさらに配合してしてもよい。
【0020】
(I)主剤について
(a)ポリエチレン
ポリエチレンとしては、プロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とする他のα−オレフィンとのブロック共重合体あるいはランダム共重合体などの公知のポリプロピレン(共)重合体を使用することができる。高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを用いる。
【0021】
高圧法低密度ポリエチレンは、高圧法にて製造され、繰り返し単位のエチレンがランダムに分岐を持って結合した、結晶性の熱可塑性樹脂に属する。高圧法低密度ポリエチレンは、他のポリエチレンと比較し柔らかい性質の軟質ポリエチレンである。低密度ポリエチレンとは、密度が0.91〜0.93である。高圧法低密度ポリエチレンは、その分岐構造から結晶化があまり進まず、
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が低く柔らかい性質を持つ。なお、分岐構造をあまり持たない低密度ポリエチレンは、上記の直鎖状低密度ポリエチレンである。
【0022】
高密度ポリエチレンは、繰り返し単位のエチレンが分岐をほとんど持たず直鎖状に結合した熱可塑性樹脂であり、密度は0.942以上である。この高密度ポリエチレンは、他のポリエチレンと比較し硬い硬質ポリエチレンであり、製法から中低下法ポリエチレンと呼ばれる。
【0023】
中密度ポリエチレンは、低密度ポリエチレンよりも分岐の結合が少なく密度が0.925〜0.940程度である。
【0024】
(b)ゴム
ゴムとしては、シリコーンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴムなどを用いる。エチレン−プロピレンゴムは、エチレンおよびプロピレンを主成分とするランダム共重合体、および第3成分としてジエンモノマーを加えたものを主成分とするランダム共重合体(EPDM)を用いる。
【0025】
(II)シラン化合物について
シラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどを用いる。
【0026】
(III)ラジカル発生剤について
ラジカル発生剤としては、ジクロロプロパノール(DCP)、第3ブチルーベルオキシドなどを用いる。
【0027】
(IV)シラノール縮合触媒について
シラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジラウレートなどを用いる。
【0028】
(V)補強材について
補強材としては、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどを用いる。
【0029】
(VI)接着性樹脂について
接着性樹脂としては、変性ポリエチレンを用いる。
【0030】
その他の配合剤について
その他の配合剤としては、酸化防止剤、滑剤などの添加剤を必要に応じて添加してもよい。
【0031】
本発明に係る架橋樹脂組成物では、上記主剤に補強材を配合することにより耐熱性を向上させ、その上でシラン架橋を行うことで、更に耐熱性を向上させている。よって、従来のシラン架橋ポリエチレンよりも低架橋度でホットセット特性を満足させることができる。また、接着性樹脂を配合したことにより、ポリエチレン、ゴム、補強材の均一分散および相互密着性を向上させることができる。
【0032】
[実施例]
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
(I)主剤
(a)ポリエチレン[ダウ・ケミカル日本株式会社、商品名NUCG−9301、密度0.920]
(b)ゴム[JSR株式会社、商品名EP11]
(II)シラン化合物[信越化学工業、商品名KBM−1003、比重0.97]
(III)ラジカル発生剤[化薬アクゾ株式会社、商品名PERKADOX BC]
(IV)シラノール縮合触媒[日東化成株式会社、商品名U−100]
(V)補強材[三共製粉株式会社、商品名エスカロン#1500]
(VI)接着性樹脂[日本ポリエチレン、商品名DU2500、密度0.92]
【0033】
(試験法)
耐熱性試験として、JIS C 3660−2−1で定めるホットセット特性試験(200℃試験)を行った。なお、ホットセット特性試験は、試料形状をダンベル形状もしくは管状に成型し、オーブン温度を200℃として、上部および下部を支持した状態で熱変形を観察した。この耐熱性試験の他に、架橋樹脂組成物を押出成型した後に、その外観の良否を確認した。
【0034】
(実施例1)
実施例1は、下表1に示すような配合比、すなわち、ポリエチレン30重量%、ゴム70重量%、これらポリエチレンとゴムとでなる主剤100重量部としたときに、シラン化合物1.0重量部と、ラジカル発生剤0.1重量部と、シラノール縮合触媒0.1重量部と、補強材30重量部と、接着性樹脂10重量部を添加してブレンドした後、溶融混練して架橋樹脂組成物の試料を作製した。ホットセット特性試験の結果、および外観の良否を下表1に示す。なお、以下の表において、ホットセット特性試験および外観の良否は、「OK」、「NG」で表す。
【0035】
(実施例2)
実施例2は、表1に示す配合の架橋樹脂組成物を実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。本実施例2では、ポリエチレンが90重量%で、ゴムが70重量%に設定されている。試験結果は、表1に合わせて示す。
【0036】
(比較例1)
比較例1は、表1に示す配合の架橋樹脂組成物を実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。比較例1では、ポリエチレンが10重量%で、ゴムが90重量%に設定されている。試験結果は、表1に合わせて示す。
【0037】
(比較例2)
比較例2は、表1に示す配合の架橋樹脂組成物を実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。この比較例2では、ポリエチレンが95重量%で、ゴムが5重量%に設定されている。試験結果は、表1に合わせて示す。
【0038】
(比較例3)
比較例3は、表1に示す配合の架橋樹脂組成物を実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。この比較例3では、実施例1における補強材を0重量部としたものであり、補強材がホットセット特性ならびに外観に対してどのような影響があるかどうかを示す。試験結果は、表1に合わせて示す。
【0039】
(比較例4)
比較例4は、表1に示す配合の架橋樹脂組成物を実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。この比較例4では、実施例1における補強材を70重量部としたものであり、補強材の増量がホットセット特性ならびに外観に対してどのような影響があるかどうかを示す。試験結果は、表1に合わせて示す。
【0040】
(比較例5)
比較例5は、表1に示す配合の架橋樹脂組成物を実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。この比較例5では、実施例1における接着性樹脂を0重量部としたものであり、接着性樹脂がホットセット特性ならびに外観に対してどのような影響があるかどうかを示す。試験結果は、表1に合わせて示す。
【0041】
【表1】

【0042】
(比較例6)
比較例6は、下表2に示す配合の架橋樹脂組成物を上記実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。この比較例6では、上記実施例1における接着性樹脂を30重量部としたものであり、接着性樹脂が多量の場合のホットセット特性ならびに外観に対してどのような影響があるかどうかを示す。試験結果は、表2に合わせて示す。
【0043】
(比較例7)
比較例7は、表2に示す配合の架橋樹脂組成物を上記実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。この比較例7では、上記実施例2の配合においてシラン化合物が0重量部としたものであり、シラン化合物がホットセット特性ならびに外観に対してどのような影響があるかどうかを示す。試験結果は、表2に合わせて示す。
【0044】
(比較例8)
比較例8は、表2に示す配合の架橋樹脂組成物を上記実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。この比較例8では、上記比較例1の配合においてシラン化合物が10.0重量部としたものであり、シラン化合物がホットセット特性ならびに外観に対してどのような影響があるかどうかを示す。試験結果は、表2に合わせて示す。
【0045】
(比較例9)
比較例9は、表2に示す配合の架橋樹脂組成物を上記実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。この比較例9では、上記比較例2の配合においてラジカル発生剤が0重量部としたものであり、ラジカル発生剤がホットセット特性ならびに外観に対してどのような影響があるかどうかを示す。試験結果は、表2に合わせて示す。
【0046】
(比較例10)
比較例10は、表2に示す配合の架橋樹脂組成物を上記実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。この比較例10では、上記実施例1の配合においてラジカル発生剤が10.0重量部としたものであり、ラジカル発生剤が多くなった場合にホットセット特性ならびに外観に対してどのような影響があるかどうかを示す。試験結果は、表2に合わせて示す。
【0047】
(比較例11)
比較例11は、表2に示す配合の架橋樹脂組成物を上記実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。この比較例11では、上記実施例1の配合においてシラノール縮合触媒が0重量部の場合であり、シラノール縮合触媒がホットセット特性ならびに外観に対してどのような影響があるかどうかを示す。試験結果は、表2に合わせて示す。
【0048】
(比較例12)
比較例12は、表2に示す配合の架橋樹脂組成物を上記実施例1と同様に成形して試料を作製し、試験に供した。この比較例12では、上記実施例1の配合においてシラノール縮合触媒が6.0重量部としたものであり、シラノール縮合触媒がホットセット特性ならびに外観に対してどのような影響があるかどうかを示す。試験結果は、表2に合わせて示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表1および表2に示した実施例1、実施例2、比較例1、および比較例2の結果から、シラン化合物1.0重量部と、ラジカル発生剤0.1重量部と、シラノール縮合触媒0.1重量部と、補強材30重量部と、接着性樹脂10重量部とを配合した場合に、主剤を、ポリエチレン10重量%とゴム90重量%の割合にすると、押出成形した架橋樹脂組成物の外観が悪化することが判る。また、シラン化合物1.0重量部と、ラジカル発生剤0.1重量部と、シラノール縮合触媒0.1重量部と、補強材30重量部と、接着性樹脂10重量部とを配合した場合に、主剤が、ポリエチレン95重量%とゴム5重量%の割合にすると、ホットセット特性試験の結果がNGとなることが判る。したがって、ポリエチレンは10重量%以下では外観に与える影響が大きくなり、好ましくは、30重量%以上あることが好ましい。ポリエチレンの重量%の上限は、95重量%以上でホットセット特性が悪化するため、好ましくは、90重量%以下であることが好ましい。したがって、ポリエチレン30〜90重量%であるため、ゴムが70〜10重量%となる。
【0051】
シラン化合物は、比較例7のように添加量を0重量部にすると、ホットセット特性を満足しなくなり、比較例8においてシラン化合物が10.0重量部でホットセット特性を満足している。したがって、本発明では、シラン化合物が0.1〜5重量部で配合されることが好ましいと考えられる。
【0052】
ラジカル発生剤は、比較例9において0.0重量部であるが、その試験結果はホットセット特性を満足しないものであった。しかし、比較例10のように10.0重量部にするとホットセット特性を満足するが、外観を満足しないものであった。したがって、外観を満足させつつホットセット特性を満足させるには、ラジカル発生剤が0.05〜1の範囲であることが有効と考えられる。
【0053】
シラノール縮合触媒は、比較例11で0.0重量部としたが、その試験結果はホットセット特性を満足できず、比較例12では多めの割合の6.0重量部としたが、この場合、外観を満足できなかった。シラノール縮合触媒の配合割合は、0.05〜1.0重量部の範囲が有効と考えられる。
【0054】
補強材の配合割合は、比較例3で0重量部としたがその試験結果から、ホットセット特性を満足できないものであった。比較例4において補強材を70重量部としたが、外観を満足できないものであった。したがって、補強材の配合割合は、3〜50重量部の範囲が好ましい。
【0055】
接着性樹脂の配合割合は、比較例6のように30重量部であるとホットセット特性を満足できずNGであった。また、比較例5のように接着性樹脂0重量部としてもホットセット特性を満足できない。したがって、接着性樹脂の配合割合は、3〜20重量部が適当であると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、電線・ケーブルやその絶縁被覆などの絶縁材料などの製造分野で利用できる。
【符号の説明】
【0057】
1…電線
2…導体
3…絶縁被覆

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンとゴムとでなる主剤に、シラン化合物、ラジカル発生剤、シラノール縮合触媒、および補強材を配合してなることを特徴とする架橋樹脂組成物。
【請求項2】
前記主剤が、ポリエチレン30〜90重量%とゴムが70〜10重量%とでなり、
前記主剤100重量部に、
前記シラン化合物を0.1〜5重量部と、
前記ラジカル発生剤を0.05〜1重量部と、
前記シラノール縮合触媒を0.05〜1重量部と、
前記補強材を3〜50重量部と、
を配合してなることを特徴とする請求項1に記載の架橋樹脂組成物。
【請求項3】
接着性樹脂3〜20重量部をさらに配合してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の架橋樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の架橋樹脂組成物を、200〜240℃の温度で押出成形して、導体を被覆してなることを特徴とする電線。

【図1】
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【公開番号】特開2010−265349(P2010−265349A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116157(P2009−116157)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】