説明

架橋組成物、架橋組成物の製造方法、成形体

【課題】柔軟性、耐熱性(高温下における圧縮永久歪み)、機械強度、成形加工性に優れた架橋組成物及び成形体を提供する。
【解決手段】(I)ビニル芳香族単量体単位を5〜70質量%、共役ジエン単量体単位を0.1〜30質量%含む、ビニル芳香族系共重合体ゴム:1〜99質量部と、(II)エチレン系共重合体ゴム:99〜1質量部とを含有し、前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムと前記(II)エチレン系共重合体ゴムとの合計量:100質量部に対し、(III)オレフィン系樹脂:10〜100質量部と、(IV)架橋剤:0.01〜50質量部とを含有する組成物を架橋し、架橋組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋組成物、架橋組成物の製造方法、及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、熱可塑性エラストマーの中でも、ビニル芳香族化合物−共役ジエン化合物のブロック共重合体であるスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)や、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS)などのスチレン系熱可塑性エラストマーは、柔軟性に富み、常温で良好なゴム弾性や加工性を有しており、これらを含有する熱可塑性エラストマー組成物は、加硫ゴムの代替品として広く使用されている。
また、上記熱可塑性エラストマー組成物中の、二重結合部分を水素添加した熱可塑性エラストマー組成物は、耐熱老化性(熱安定性)および耐候性を向上させた熱可塑性エラストマーとして、加硫ゴム代替品として更に広く使用されている。
しかしながら、これらの水素添加ブロック共重合体を用いた熱可塑性エラストマー組成物においては、未だゴム的特性、例えば、耐油性、加熱加圧変形率(圧縮永久歪み)や高温時のゴム弾性に改良すべき余地があるという問題がある。
【0003】
そこで、上記特性を改良するものとして、上記ブロック共重合体の水素添加誘導体を架橋させて得られる架橋組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0004】
また、オレフィン樹脂及びオレフィン共重合体ゴムを動的架橋して得られる熱可塑性エラストマー組成物も、多数知られている。
例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレン共重合体樹脂とハロゲン化ブチルゴム等のゴム類を動的架橋したエラストマー組成物(例えば、特許文献6参照。)、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエチレンコポリマー樹脂の存在下に動的加硫されたEPDMゴム(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)を含有するエラストマー組成物(例えば、特許文献7参照。)、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−ブテン共重合体の存在下に動的加硫されたハロゲン化ブチルゴム等を含有するエラストマー組成物(例えば、特許文献8参照。)、EPDM等のα−モノオレフィン共重合体ゴムと結晶性ポリプロピレン等との混合物を加硫処理して得られる熱可塑性エラストマーと低密度のエチレン−α−オレフィン共重合体を含有する組成物(例えば、特許文献9参照。)、加硫処理したEPDMと結晶性エチレン系ポリマーをブレンドした後、さらにフリーラジカル架橋処理した成形物品(例えば、特許文献10参照。)、EPDMと結晶性ポリプロピレンとの混合物を加硫処理して得られる熱可塑性エラストマーと高密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを含有する組成物(例えば、特許文献11参照。)、ターポリマーゴム等の架橋性ゴム、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、高流動性の線状ポリオレフィン加工添加剤の混合物を架橋処理したエラストマー(例えば、特許文献12参照。)が開示されている。
【0005】
また、オレフィン系エラストマーと飽和型のスチレン系エラストマー(SEEPSなど)とを併用することにより、高温領域における圧縮永久歪みおよび成形加工性に優れ、かつ、柔軟でオイルブリードのない熱可塑性エラストマー組成物が提案されている(例えば、特許文献13参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59−6236号公報
【特許文献2】特開昭63−57662号公報
【特許文献3】特公平3−49927号公報
【特許文献4】特公平3−11291号公報
【特許文献5】特公平6−13628号公報
【特許文献6】特公昭61−26641号公報
【特許文献7】特開平2−113046号公報
【特許文献8】特開平3−17143号公報
【特許文献9】特開平3−234744号公報
【特許文献10】特開平1−132643号公報
【特許文献11】特開平2−255733号公報
【特許文献12】特開2002−220493号公報
【特許文献13】特許第4231367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1〜5に開示されている水添ブロック共重合体の架橋組成物は、100℃以上の高温下における圧縮永久歪みが未だに不十分であり、更には、機械強度が低下し易いという問題があり、加硫ゴム用途で要求されている性能レベルに到達していないという問題がある。
また、上記特許文献6〜12に開示されている組成物も、高温の圧縮永久歪みが悪く、短期および長期の高温における圧縮永久歪みは従来加硫ゴム用途で要求されている性能レベルに到達していない。
さらに、上記特許文献6〜12に開示されているオレフィン系エラストマーは、オイル保持性が低く、硬度が50〜90Aに限定されてしまい、オレフィン系エラストマーにゴム用軟化剤を添加し、柔軟性を得ようとする場合、成形品からの軟化剤のブリードが著しく、50A以下の柔軟性を示すものでは押出・射出成形性が悪く、柔軟性を要求される用途には使用できないという不都合がある。
【0008】
さらにまた、特許文献13に開示されているような、オレフィン系エラストマー成分とスチレン系エラストマー成分とを併用した架橋組成物においては、不飽和結合を有するオレフィン系成分と飽和型のスチレン系成分との架橋反応速度差が大きく、架橋ムラ、架橋組成物の肌荒れや外観不良、機械物性や圧縮永久歪みなどの低下がしばしば生じるという問題がある。
【0009】
そこで本発明においては、上述した従来技術の問題点に鑑み、柔軟性に優れ、耐熱性(高温下における圧縮永久歪み)、機械強度に優れ、さらに、成形加工性に優れた架橋組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、特定のブロック構造を有するビニル芳香族系共重合体ゴム(水添ブロック共重合体)(I)、エチレン系共重合ゴム(II)、オレフィン系樹脂(III)、架橋剤(IV)を含有する架橋組成物が、上記従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち、本発明は下記の通りである。
【0011】
〔1〕
(I)ビニル芳香族単量体単位を5〜70質量%、共役ジエン単量体単位を0.1〜30質量%含む、ビニル芳香族系共重合体ゴム:1〜99質量部と、
(II)エチレン系共重合体ゴム:99〜1質量部と、
を、含有し、
前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムと前記(II)エチレン系共重合体ゴムとの合計量:100質量部に対し、
(III)オレフィン系樹脂:10〜100質量部と、
(IV)架橋剤:0.01〜50質量部と、
を、含有する組成物を、架橋することにより得られる架橋組成物。
【0012】
〔2〕
前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムが、末端部に共役ジエン単量体ブロックを有する前記〔1〕に記載の架橋組成物。
【0013】
〔3〕
前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムが、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなるビニル芳香族系ブロック共重合体の水素添加物である前記〔1〕に記載の架橋組成物。
【0014】
〔4〕
(V)ゴム用軟化剤を、前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムと前記(II)エチレン系共重合体ゴムとの合計量:100質量部に対して、1〜300質量部、さらに含有する前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の架橋組成物。
【0015】
〔5〕
前記(II)エチレン系共重合体ゴムが、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)である前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の架橋組成物。
【0016】
〔6〕
前記(III)オレフィン系樹脂が、ポリプロピレンである前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の架橋組成物。
【0017】
〔7〕
(I)ビニル芳香族単量体単位を5〜70質量%、共役ジエン単量体単位を0.1〜30質量%含む、ビニル芳香族系共重合体ゴム:1〜99質量部と、
(II)エチレン系共重合体ゴム:99〜1質量部と、
前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムと前記(II)エチレン系共重合体ゴムとの合計量:100質量部に対し、
(III)オレフィン系樹脂:10〜100質量部と、
(IV)架橋剤:0.01〜50質量部と、
を、混合し、溶融条件下で動的に架橋する工程を有する架橋組成物の製造方法。
【0018】
〔8〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の架橋組成物を成形した成形体。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、柔軟性、耐熱性、機械強度に優れ、成形加工性にも優れた架橋組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について説明するが、本発明は以下に示す形態に限定されるものではない。
【0021】
〔架橋組成物〕
本実施形態の架橋組成物は、
(I)ビニル芳香族単量体単位を5〜70質量%、共役ジエン単量体単位を0.1〜30質量%含む、ビニル芳香族系共重合体ゴム:1〜99質量部と、
(II)エチレン系共重合体ゴム:99〜1質量部と、
を、含有し、
前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムと前記(II)エチレン系共重合体ゴムとの合計量:100質量部に対し、
(III)オレフィン系樹脂:10〜100質量部と、
(IV)架橋剤:0.01〜50質量部と、
を、含有する組成物を、架橋することにより得られる架橋組成物である。
【0022】
本明細書中において、重合体を構成する各単量体単位の命名は、単量体単位が由来する単量体の命名に従う。
例えば、「ビニル芳香族単量体単位」とは、単量体であるビニル芳香族化合物を重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
また、「共役ジエン単量体単位」とは、単量体である共役ジエンを重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
【0023】
<(I)ビニル芳香族系共重合体ゴム>
(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムは、ビニル芳香族単量体単位を5〜70質量%と、共役ジエン単量体単位を0.1〜30質量%含有している。
(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムとしては、ビニル芳香族単量体単位を主体する重合体ブロックAと、炭素原子数5個以上の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックBを1個以上と、炭素原子数4個以上で重合体ブロックBを構成する共役ジエン単量体単位と異なる共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックCを1個以上、含有するビニル芳香族系ブロック共重合体を水素添加したもので、末端部に1個以上の不飽和ブロックを有するものが好ましい。
【0024】
本明細書中、「主体とする」とは、所定の単量体単位が所定のブロック中に60質量%以上含まれていることを言い、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。例えば、「A単位を主体とする重合体ブロック」の場合、重合体ブロック中にA(モノマー)単位が60質量%以上含まれている。
また、本明細書中、「末端部」とは、ポリマー鎖の末端及びポリマー鎖の末端に重合体ブロックAを有する場合、その内隣部も含む。例えば、不飽和ブロックとして重合体ブロックBを有し、A−B−C−B−Aのような構造であった場合、「重合体ブロックBは末端部に存在する」ことになる。すなわち、この例の場合、重合体ブロックBがハードセグメントである重合体ブロックAに隣接しているか、もしくは末端ブロックが炭素原子数5個以上の共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを主体とするランダム共重合体ブロック(A/B)であることを意味している。
【0025】
前記重合体ブロックAの(I)ビニル芳香族系共重合体ゴム中の含有量は、(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの機械物性、ゴム的特性の観点から、当該(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの全質量に対して、5質量%〜70質量%であることが好ましく、(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの柔軟性やゴム的特性の観点から、重合体ブロックAが70質量%以下であることが好ましい。
一方、(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムや、目的とする架橋組成物の取り扱い性(非タック性)及び生産性、加工性の観点から、重合体ブロックAが5質量%以上であることが好ましい。
前記重合体ブロックAの(I)ビニル芳香族系共重合体ゴム中の含有量は、10質量%〜60質量%の範囲がより好ましく、12質量%〜50質量%の範囲がさらに好ましく、15質量%〜40質量%の範囲がさらにより好ましい。
【0026】
前記重合体ブロックBは、上記のように、炭素原子数5個以上の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、複数種の炭素原子数5個以上の共役ジエン単量体単位とのランダム共重合でもよく、それらの共役ジエン単量体単位は、重合体ブロックB中に均一に分布しても、また不均一(例えばテーパー状)に分布してもよい。均一に分布した部分及び/又は不均一に分布した部分は、重合体ブロックB中に複数個共存してもよい。
重合体ブロックBは、架橋組成物の圧縮永久歪の観点から、5個以上の共役ジエン単量体単位の完全なブロック共重合体であることがより好ましい。
(I)ビニル芳香族系共重合体ゴム中の、重合体ブロックBの含有量としては、(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの全質量に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましい。
重合体ブロックBは、不飽和結合を含有するブロックであるため、酸化安定性、熱安定性、及び生産性、加工性の観点から、(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの全質量に対して20質量%以下が好ましく、架橋反応性の観点から0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%〜15質量%の範囲がより好ましく、1質量%〜10質量%の範囲がさらに好ましい。
【0027】
上記重合体ブロックCは、炭素原子数4個以上の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、重合体ブロックBを構成する共役ジエン単量体単位と異なる共役ジエン単量体単位を主体とし、複数種の炭素原子数4個以上の共役ジエン単量体単位とのランダム共重合でもよく、それらの共役ジエン単量体単位は重合体ブロックC中に均一に分布しても、また不均一(例えばテーパー状)に分布してもよい。
均一に分布した部分及び/又は不均一に分布した部分は、重合体ブロックC中に複数個共存してもよい。
重合体ブロックCは、圧縮永久歪の観点から、4個以上の共役ジエン単量体単位の完全なブロック共重合体であることがより好ましい。
重合体ブロックCの含有量としては、水添前の状態における(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの全質量に対して、10〜85質量%であることが好ましく、生産性、加工性等の観点から25〜85質量%であることがより好ましい。
重合体ブロックCは、水添によって不飽和結合が消失することとなるため、(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムに含まれる重合体ブロックCの量としてはそれほど多くない。
重合体ブロックCの水添率としては、酸化安定性、熱安定性、及び破断伸びの観点から80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上がさらにより好ましい。
【0028】
(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの水添前の状態におけるビニル芳香族系ブロック共重合体としては、例えば、一般式:H−(C−H)nで表される直鎖状ブロック共重合体、又は一般式:[(H−C)km−X、[H−(C−H)km−Xで表される直鎖状ブロック共重合体、あるいは放射状ブロック共重合体が挙げられる。
上記各一般式中、HはAの単独ブロック、Bの単独ブロック、A−B又はB−Aのブロック共重合体、又は炭素原子数5個以上の共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを主体とするランダム共重合体ブロック(A/B)を示す。
式中の複数のHは、同一でも異なってもよい。
例えば、A−B−C−A−Bタイプのブロック構造も包含される。
また、n及びkは1〜5の整数であり、mは2〜6の整数である。
Xはカップリング剤の残基、又は多官能開始剤の残基を示す。
共重合体中に複数存在する重合体ブロックA、重合体ブロックBは、それぞれ、それらの分子量や組成等の構造は同一でも異なっていてもよい。
【0029】
重合体ブロックHに含まれるビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAと、重合体ブロックBとの質量比率は特に制限されないが、(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムのベタツキ、ポリマーの融着(ブロッキング)、生産性、及び圧縮永久歪の観点から、重合体ブロックAが重合体ブロックHに対し60質量%以上、すなわち重合体ブロックBが40質量%以下であることが好ましく、また、(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの不飽和基数が多く、架橋反応性が高くなる点で重合体ブロックAが99質量%以下、すなわち重合体ブロックBが1質量%以上であることが好ましく、より好ましい重合体ブロックBの比率(B/H)は5〜25質量%である。さらに好ましくは7〜20質量%である。これは重合体ブロックBが殆ど水添されないものであるという特徴を有しているためである。
また、Hは圧縮永久歪の点でA−B、又はB−Aの完全なブロック共重合体であることが好ましい。
【0030】
前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムは、末端部に1個以上の不飽和ブロックを有するものであることが好ましく、2個以上の不飽和ブロックを有することがより好ましい。
なお、「不飽和ブロック」とは、オレフィン性不飽和二重結合を有する重合体ブロックであり、主として、上述した重合体ブロックB(炭素原子数5個以上の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロック)を指しており、重合体ブロックCと比べてオレフィン性不飽和二重結合である共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が低く、ブロック中における不飽和結合の存在割合が大きい。
従って、重合体ブロックBに用いる共役ジエン単量体単位は、重合体ブロックCに用いる共役ジエン単量体単位よりも水添速度が遅いものを選択する必要がある。
【0031】
また、上記重合体ブロックHが、炭素原子数5個以上の共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とを主体とするランダム共重合体ブロック(A/B)である場合には、該重合体ブロックも「不飽和ブロック」に包含される。
ここで、「ランダム」とは、2種類以上の単量体単位が均一に分布しても、また不均一(例えばテーパー状)に分布してもよい。
【0032】
(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムは、末端のハードセグメントと内部のソフトセグメントの間に1個以上の不飽和ブロックを有することが好ましい。
例えば、(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムが、ハードセグメントとして両末端にビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAを有し、その内隣に、すなわち、ハードセグメントと内部のソフトセグメントとの間に、不飽和ブロックである炭素原子数5個以上の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックBを含むタイプの非水添ブロック共重合体を水添して得られる水添ブロック共重合体であると、ミクロ相分離がより明瞭になり、ビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックAの凝集力がより強固になり、その結果、(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムのべと付き感と圧縮永久歪みが改善されるので好ましい。
(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムが、両末端部だけでなく分子鎖内部にも、複数の炭素原子数5個以上の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックBを含むタイプの構造であると、その架橋物において、耐油性、圧縮永久歪みが向上するので好ましい。
【0033】
上記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムを構成するビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。特にスチレンが好ましい。
【0034】
上記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムを構成する共役ジエンとは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンである。
上述した重合体ブロックBに含まれる共役ジエンとしては、例えば、イソプレン、2,3−ジメチル−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、ミルセン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ペンタジエン、3−フェニル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、3−メチル− 1,3−ヘキサジエン、2−ベンジル−1,3−ブタジエン、2−p−トリル−1,3−ブタジエン、1,3−シクロヘキサジエンまたはこれらの混合物等の中から、1種又は2種以上が使用でき、イソプレン、1,3−シクロヘキサジエンが好ましい。
【0035】
また、上述した重合体ブロックCに含まれる共役ジエンとしては、例えば1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、2,4−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、2,4−オクタジエン、3,5−オクタジエン、1,3−ノナジエン、2,4−ノナジエン、3,5−ノナジエン、1,3−デカジエン、2,4−デカジエン、3,5−デカジエン、1,3−シクロヘキサジエン又はこれらの混合物等の中から、1種又は2種以上が使用でき、1,3−ブタジエンが好ましく、圧縮永久歪みの観点から、重合体ブロックCは、共役ジエン単独ブロックであることが好ましい。
【0036】
重合体ブロックB、Cに使用される共役ジエンの炭素数は15以下であることが好ましい。
【0037】
(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムを構成する重合体ブロックに含まれる、「主体」とする成分以外の残りの成分としては、アニオン重合性を有する全てのモノマー種が該当する。
【0038】
本実施形態の架橋組成物を構成する(I)ビニル芳香族系共重合ゴムとして、上記のような末端部に不飽和ブロック、すなわちオレフィン性不飽和二重結合を有する重合体ブロックであり、主として、上述した重合体ブロックB(炭素原子数5個以上の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックを有する構造のものを用いた場合には、非常に優れた耐熱性を発揮するが、そのような特殊な構造に限られたものではない。
【0039】
ビニル芳香族単量体単位5〜70質量%と、共役ジエン単量体単位とからなるブロック共重合体を水素添加物したもので、水添されずに残っている共役ジエン単量体単位を0.1〜30質量%含有しているものであれば、(I)ビニル芳香族系共重合ゴムとして使用することで耐熱性や機械強度の向上に効果があり、生産の容易さやコスト面を重視する場合には後者、すなわちビニル芳香族単量体単位5〜70質量%と、共役ジエン単量体単位とからなるブロック共重合体を水素添加物したもので、水添されずに残っている共役ジエン単量体単位を0.1〜30質量%含有しているものの方にメリットがある。
【0040】
上記「ビニル芳香族単量体単位5〜70質量%と、共役ジエン単量体単位とからなるブロック共重合体を水素添加物したもので、水添されずに残っている共役ジエン単量体単位を0.1〜30質量%含有しているもの」のビニル芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられ、この中から1種又は2種以上が使用でき、スチレンが好ましい。
【0041】
上記を構成する共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、2,4−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、2,4−オクタジエン、3,5−オクタジエン、1,3−ノナジエン、2,4−ノナジエン、3,5−ノナジエン、1,3−デカジエン、2,4−デカジエン、3,5−デカジエン、1,3−シクロヘキサジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、ミルセン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ペンタジエン、3−フェニル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、3−メチル− 1,3−ヘキサジエン、2−ベンジル−1,3−ブタジエン、2−p−トリル−1,3−ブタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等が挙げられ、この中から1種又は2種以上が使用でき、1,3−ブタジエンやイソプレンが好ましい。
【0042】
上述したような構成を有する(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの具体例としては、スチレンとブタジエンのブロック共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)等の水素添加物で、共役ジエンの0.1〜30質量%を非水添の状態で残したものが挙げられる。
【0043】
上記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により測定でき、生産性、加工性や機械的強度、圧縮永久歪みのバランスの観点から、5000〜2000000が好ましく、より好ましくは10000〜1000000、さらに好ましくは30000〜500000である。
(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの分子量分布(Mw/Mn)(重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比)は、加工性や機械的強度のバランスの観点から、好ましくは10以下、より好ましくは1.01〜5、さらに好ましくは1.01〜2である。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた重量平均分子量である。
水添ブロック共重合体の分子量分布は、同様にGPCによる測定から求めることができる。
【0044】
また、上記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの、水素添加前の状態におけるブロック共重合体中の共役ジエン単量体単位部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、極性化合物等の使用により任意に変えることができ、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合含有量は一般に5〜90質量%、共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合には、3,4−ビニル結合含有量は一般に3〜80質量%である。
但し、生産性の観点から、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合含有量は10〜80質量%が好ましく、20〜75質量%がより好ましく、25〜75質量%がさらに好ましい。
共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合には、3,4−ビニル結合含有量は好ましくは5〜70質量%である。
【0045】
上記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴム中のビニル芳香族単量体単位含有量は、紫外分光光度計等を用いて求めることができる。
また、共役ジエン単量体単位含有量、共役ジエン単量体単位に基づくビニル結合含量、及び水添率は、核磁器共鳴装置(NMR)を用いることにより求めることができる。
ビニル芳香族単量体単位単独重合体ブロックの分子量は、四酸化オスミウムを触媒としてジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,et−al.,J.Polym.Sci.1,429(1946))により、水素添加前のブロック共重合体を分解して得たビニル芳香族単量体単位単独重合体ブロック成分(ただし重合度30以下の成分は除去されている)の紫外分光光度計やGPC測定を行うことにより求めることができる。また、その含有量は紫外分光光度計等を用いて求めることができる。
上記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの製造方法としては、公知の方法で良く、例えば特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特公昭51−49567号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
【0046】
<(II)エチレン系共重合体ゴム>
本実施形態の架橋性組成物における(II)エチレン系共重合体ゴムとしては、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等のα−オレフィンが共重合してなるエラストマー、あるいはこれらと非共役ジエンとが共重合してなるエチレン系共重合ゴムが挙げられる。
前記非共役ジエンとしては、例えば、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、1,6−オクタジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、3,7−ジメチル−1,6−オクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−ノルボルネン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン等が挙げられる。
【0047】
(II)エチレン系共重合体ゴムとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン−1−ブテン共重合体ゴム、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体ゴム等が挙げられる。
これらの中でも、架橋性の観点から、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)が好ましい。
【0048】
また、(II)エチレン系共重合体ゴムのエチレン含有量の範囲は、40〜80質量%が好ましく、50〜75質量%がより好ましい。特に60〜75質量%の範囲では、製造容易性と高温での圧縮永久歪み、引張強度のバランスがよく、非常に好ましい。
また、(II)エチレン系共重合体ゴムの非共役ジエン含有量は、0.5〜8質量%が好ましく、4〜8質量%がより好ましい。0.5質量%未満では、架橋による圧縮永久歪みの発現が不十分である。
【0049】
(II)エチレン系共重合体ゴムのムーニー粘度ML1+4(125℃)は、10〜180が好ましく、20〜150がより好ましい。
(II)エチレン系共重合体ゴムのムーニー粘度ML1+4(125℃)が10未満であると、本実施形態の架橋組成物の圧縮永久歪みが低下する。一方、180を超えると、成形性が悪化する。
【0050】
(II)エチレン系共重合ゴムの添加量は、前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴム+前記(II)エチレン系共重合ゴム=100質量部としたとき、1〜99質量部である。
(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムと、(II)エチレン系共重合体ゴムとを併用することで、動的架橋によって形成される架橋ゴム粒子を効果的に微分散化することができ、機械強度や圧縮永久歪み性を改善することができる。
オレフィン系樹脂が形成するマトリックスに分散する架橋ゴム粒子のサイズは、小さくなればなるほど圧縮永久歪みや機械強度が向上する傾向にある。
分散架橋ゴム粒子サイズとしては1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましい。0.3μm以下がさらに好ましく、0.1μm以下がさらにより好ましい。
【0051】
また、(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムを、0.1〜30質量%の共役ジエン単量体単位を含有するものとすることにより、エチレン系共重合体ゴム(II)の架橋速度と近づけることができ、それによって、架橋ムラ、架橋組成物の肌荒れや外観不良、機械物性や圧縮永久歪みなどの低下を抑制することができる。
【0052】
<(III)オレフィン系樹脂>
本実施形態の架橋組成物に含まれるオレフィン系樹脂(III)としては、結晶性オレフィン系樹脂が好ましい。
結晶性オレフィン系樹脂の添加量は、前記(I)+前記(II)=100質量部に対し、10〜100質量部であり、15〜80質量部が好ましく、20〜60質量部がより好ましい。
オレフィン系樹脂(III)の含有割合が10質量部よりも少ないと、架橋組成物の熱可塑性が不十分となり、成形加工性が劣るものとなる。
一方、100質量部よりも多いと、架橋組成物の柔軟性が不足する。
【0053】
本実施形態の架橋組成物に含まれるオレフィン系樹脂(III)としては、結晶性のエチレンもしくはプロピレンの単独重合体、又はこのエチレンもしくはプロピレンを主体とする結晶性の共重合体が挙げられる。
例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・ブテン−1共重合体等の結晶性エチレン系重合体、アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン−1共重合体等の結晶性プロピレン系重合体が挙げられる。その中でもプロピレン系樹脂が好ましい。
【0054】
<(IV)架橋剤>
本実施形態の架橋組成物における架橋剤(IV)の添加量は、前記(I)+前記(II)=100質量部に対し、0.01〜50質量部であり、0.05〜40質量部が好ましく、0.1〜30質量部がより好ましい。
架橋剤(IV)の使用量が0.01質量部未満であると、架橋組成物中に、十分な架橋結合を形成させることができず、一方、50質量部よりも多いと、ゴム用軟化剤(V)のブリードアウト、力学物性の低下などが生ずる。
【0055】
架橋剤(IV)の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤が利用できる。
例えば、有機過酸化物、硫黄系化合物、フェノール樹脂系化合物、キノイド系化合物、ビスマレイミド系化合物、イソシアネート系化合物、チウラム系化合物、モルホリンジスルフィド、ヒドロシリコーン系化合物等を挙げることができ、更には、必要に応じてステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛等の架橋助剤、共架橋剤、加硫促進剤等を併用することができる。
架橋助剤としては、従来公知の架橋助剤を使用することができ、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールの繰り返し単位数が9〜14のポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレートのような多官能性メタクリレート化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレートのような多官能性アクリレート化合物、ビニルブチラート、ビニルステアレート、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレートのような多官能性ビニル化合物を挙げることができる。
これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
このような化合物により、均一かつ効率的な架橋反応が期待できる。
【0056】
<(V)ゴム用軟化剤>
本実施形態の架橋組成物は、前記ゴム用軟化剤(V)を、上記(I)+上記(II)=100質量部に対して、1〜300質量部、さらに含有するものとしてもよい。
ゴム用軟化剤(V)の種類は、特に制限されず、鉱物油系及び/又は合成樹脂系のいずれもが使用できる。
鉱物油系軟化剤は、一般に芳香族系炭化水素、非芳香族系炭化水素(ナフテン系炭化水素およびパラフィン系炭化水素)の混合物であって、パラフィン系炭化水素の炭素原子数が全炭素原子中の50%以上を占めるものがパラフィン系オイルと呼ばれ、一方ナフテン系炭化水素の炭素原子が30〜45%のものがナフテン系オイルと呼ばれ、また芳香族系炭化水素の炭素原子が35%以上のものが芳香族系オイルと呼ばれている。
【0057】
これらの中で、本発明において好適に用いられるゴム用軟化剤は、パラフィン系オイルである。
パラフィン系軟化剤を構成している化合物としては、例えば、炭素数4〜155のパラフィン系化合物、好ましくは炭素数4〜50のパラフィン系化合物が挙げられ、具体的には、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、エイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、ペンタコサン、ヘキサコサン、ヘプタコサン、オクタコサン、ノナコサン、トリアコンタン、ヘントリアコンタン、ドトリアコンタン、ペンタトリアコンタン、ヘキサコンタン、ヘプタコンタン等のn−パラフィン(直鎖状飽和炭化水素)、イソブタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソヘキサン、イソペンタン、ネオヘキサン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、3−エチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、イソノナン、2−メチルノナン、イソデカン、イソウンデカン、イソドデカン、イソトリデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、イソエイコサン、4−エチル−5−メチルオクタン等のイソパラフィン(分岐状飽和炭化水素)及び、これらの飽和炭化水素の誘導体等を挙げることができる。
これらのパラフィンは、混合物で用いられ、室温で液状であるものが好ましい。
室温で液状であるパラフィン系軟化剤の市販品としては、日本油脂株式会社製のNAソルベント(イソパラフィン系炭化水素油)、出光興産株式会社製のPW−90(n−パラフィン系プロセスオイル)、出光石油化学株式会社製のIP−ソルベント2835(合成イソパラフィン系炭化水素、99.8質量%以上のイソパラフィン)、三光化学工業株式会社製のネオチオゾール(n−パラフィン系プロセスオイル)等が挙げられる。
【0058】
また、非芳香族系炭化水素軟化剤には、少量の不飽和炭化水素及びこれらの誘導体が共存していてもよい。
不飽和炭化水素としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチル−2−ブテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のエチレン系炭化水素、アセチレン、メチルアセチレン、1−ブチン、2−ブチン、1−ペンチン、1−ヘキシン、1−オクチン、1−ノニン、1−デシン等のアセチレン系炭化水素を挙げることができる。
【0059】
上記合成樹脂系軟化剤としては、ポリブテン、低分子量ポリブタジエンなどを挙げることができる。
【0060】
上述した軟化剤(V)は、上記(I)+上記(II)=100質量部に対して、1〜300質量部の割合で任意に添加することができる。
柔軟性と物性バランスに優れた組成物を得るためには、50〜250質量部がより好ましく、100〜200質量部がさらに好ましい。
1質量部未満であると、架橋組成物の柔軟性が不十分であり、300質量部を超えると、軟化剤のブリードアウト、及び架橋組成物および成形品の力学物性が低下しやすくなる。
【0061】
〔その他の添加剤〕
本実施形態の架橋組成物には、必要に応じて任意の硬度調整剤を配合することができる。
硬度調整剤としては、熱可塑性エラストマー組成物の配合に一般的に用いられる従来公知のものであれば特に制限はない。
硬度調整剤としては、例えば、ヒマシ油やその誘導体類(脂肪酸類、エステル類、変性ポリオール類、硫酸化油・塩類、脱水類等)、テルペン系オイル;炭素数10からなるテルペン系炭化水素やテルペンエーテル等、石油樹脂類;石油精製工業、石油化学工業の各種工程、特にナフサの分解工程で得られる不飽和炭化水素を原料として共重合して得られる樹脂であって、C5留分を原料とした脂肪族系石油樹脂、C9留分を原料とした芳香族系石油樹脂、ジシクロペンタジエンを原料とした脂環族系石油樹脂、並びにテルペン系樹脂およびこれら2種類以上が共重合した共重合系石油樹脂、さらにはこれらを水素化した水素化石油樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
また、本実施形態の架橋組成物には、必要に応じて任意の充填剤及び難燃剤を配合することができる。
充填剤及び難燃剤は、極性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられる物であれば特に制限はない。
充填剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラスフレーク、グラファイト、酸化チタン、チタン酸カリウムウイスカー、カーボンファイバー、アルミナ、カオリンクレー、ケイ酸、ケイ酸カルシウム、石英、マイカ、タルク、クレー、ジルコニア、チタン酸カリウム、アルミナ、金属粒子等の無機充填剤、木製チップ、木製パウダー、パルプ等の有機充填剤
が挙げられる。
充填剤の形状としては、鱗片状、球状、粒状、粉体、不定形状等 特に制限は無い。
これらは単独で用いてもよく、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
難燃剤としては、臭素等を含有するハロゲン系、リン系芳香族化合物、リン酸エステル系化合物等のリン系化合物、金属水酸化物等の難燃剤が挙げられるが、近年環境問題等により無機難燃剤が好ましい。
無機難燃剤としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、硼酸亜鉛、硼酸バリウム等の金属酸化物、その他炭酸カルシウム、クレー、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等、主に含水金属化合物等を例示することができる。
本実施形態においては、上記難燃剤のうち、難燃性向上の観点から、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物やリン系化合物難燃剤が好ましい。
なお、それ自身の難燃性発現効果は低いが、他の化合物と併用することで相乗的により優れた効果を発揮する難燃剤系を使用してもよく、公知の難燃剤と公知の難燃助剤とを組み合わせて用いてもよい。
【0064】
上述した充填剤、難燃剤は、シランカップリング剤等の表面処理剤で、予め表面処理を行ったタイプのものを使用してもよい。
また、これらの充填剤、難燃剤は、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
併用する場合は、特に限定される物ではなく、充填剤成分同士でも難燃剤成分同士でも、あるいは充填剤と難燃剤との併用でもよい。
【0065】
本実施形態の架橋組成物には、必要に応じてその他「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)などに記載された添加剤あるいはこれらの混合物等を添加してもよい。
【0066】
〔架橋組成物の製造方法〕
本実施形態の架橋組成物の製造方法は、
(I)ビニル芳香族単量体単位を5〜70質量%、共役ジエン単量体単位を0.1〜30質量%含む、ビニル芳香族系共重合体ゴム:1〜99質量部と、
(II)エチレン系共重合体ゴム:99〜1質量部と、
前記(I)+前記(II)=100質量部に対し、
(III)オレフィン系樹脂:10〜100質量部と、
(IV)架橋剤:0.01〜50質量部と、
を、混合し、溶融条件下で動的に架橋する工程を有する。
【0067】
動的架橋の方法は、特に制限なく、従来公知の方法が利用できる。
動的に架橋するとは、溶融混練等動的な状態で架橋処理することであり、非動的な架橋処理の場合には見られない、特異な分散形態を発現することから、架橋組成物の熱可塑性の発現に有利である。
動架橋に使用する装置としては、各成分を均一に混合し得る溶融混練装置のいずれもが使用でき、例えば単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどを挙げることができる。
特に、混練中の剪断力が大きく連続運転が可能な二軸押出機を使用するのが好ましい。
「溶融混練」とは組成物の融点以上の温度下で、組成物が溶融した状態での混合を意味し、好ましい温度としては100〜300℃であり、より好ましくは150〜250℃である。
【0068】
〔成形体〕
本実施形態の架橋組成物を成形することにより、各種成形体が得られる。
成形方法としては、押出成形、射出成形、中空成形、圧空成形、真空成形、発泡成形、複層押出成形、複層射出成形、高周波融着成形、スラッシュ成形及びカレンダー成形などを適用できる。
また、成形体の表面に必要に応じて外観性向上、耐候性、耐傷つき性等向上等を目的として、印刷、塗装、シボ等の加飾等を行うことができる。印刷性、塗装性等を向上させる目的で表面処理を行う場合、表面処理の方法としては、特に制限は無く、物理的方法、化学的方法等を 使用可能であり、例えば、コロナ放電処理、オゾン処 理、プラズマ処理、火炎処理、酸・アルカリ処理等を挙げることができる。これらのうち、コロナ放電処理が実施の容易さ、コスト、連続処理が可能等の点から好ましい
【0069】
〔用途〕
本実施形態の架橋組成物は、所望により各種添加剤を配合して様々な用途に用いることができる。
例えば、(i) 補強性充填剤配合物、(ii) 架橋物、(iii) 発泡体、(i
v) 多層フィルム及び多層シート、(v) 建築材料、(vi)制振・防音材料、(vii
)電線被覆材料、(viii)高周波融着性組成物、(ix)スラッシュ成形材料、
(x)粘接着性組成物、(xi)アスファルト組成物、 (xii)医療用具材料、(x
iii)自動車材料等に好適に用いることができる。
また、成形体としては、例えば、シート、フィルム、チューブや、不織布や繊維状の成形体、合成皮革等が挙げられ、具体的には、食品包装材料、医療用具材料、家電製品及びその部品、電子デバイス及びその部品、自動車部品、工業部品、家庭用品、玩具等の素材、履物用素材、繊維素材、粘・接着剤用素材、アスファルト改質剤などに利用できる。
自動車部品の具体例としては、サイドモール、グロメット、ノブ、ウェザーストリップ、窓枠とそのシーリング材、アームレスト、ドアグリップ、ハンドルグリップ、コンソールボックス、ベッドレスト、インストルメントパネル、バンパー、スポイラー、エアバック装置の収納カバー等が挙げられる。
医療用具の具体例としては、血液バッグ、血小板保存バック、輸液(薬液)バック、人工透析用バック、医療用チューブ、カテーテル等が挙げられる。
その他、工業用或いは食品用ホース、掃除機ホース、電冷パッキン、電線、その他の各種被覆材、グリップ用被覆材、軟質人形等、粘接着テープ・シート・フィルム基材、表面保護フィルム基材及び該フィルム用粘接着剤、カーペット用粘接着剤、ストレッチ包装用フィルム、熱収縮性フィルム、被覆鋼管用被覆材、シーラントなどに用いることができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を、具体的な実施例と比較例を挙げて説明する。
実施例及び比較例に適用した、物性の測定方法、評価方法について下記に示す。
【0071】
〔I.(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの組成および構造評価〕
(I−1)(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムのスチレン含有量
非水添のビニル芳香族系ブロック共重合体(水添前の(I))を用い、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて測定した。
【0072】
(I−2)(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムのポリスチレンブロック含有量
非水添のビニル芳香族系ブロック共重合体(水添前の(I))を用い、I.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の四酸化オスミウム酸分解法で測定した。
共重合体の分解にはオスミウム酸0.1g/125mL第3級ブタノール溶液を用いた。
【0073】
(I−3)(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムのビニル結合量
非水添のビニル芳香族系ブロック共重合体(水添前の(I))を用い、赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR−230)を用いて測定した。
ブロック共重合体のビニル結合量はハンプトン法により算出した。
【0074】
(I−4)(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの分子量及び分子量分布
GPC〔装置:東ソー HLC−8220、カラム:TSKgel SuperH−RC×2本〕で測定した。
溶媒にはテトラヒドロフランを用いた。
測定条件は、温度35℃で行った。
重量平均分子量と数平均分子量が既知の市販の標準ポリスチレンを用いて作成した検量線を使用し、ポリスチレン換算した重量平均分子量を求めた。
また、分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である。
【0075】
(I−5)(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムにおける共役ジエン単量単位の二重結合の水添率、およびイソプレン含有量
水添後の水添ブロック共重合体を用い、核磁気共鳴装置(装置名:DPX−400;ドイツ国、BRUKER社製)で測定した。
【0076】
〔II.架橋組成物の特性〕
(II−1)硬度:JIS K 7215に準拠して測定した。
なお、試験片は、6.3mm厚プレスシートを用い、デュロメータ硬さ・タイプAにて測定した。
ショアーA硬度は50〜70の範囲であれば、実用上十分な柔軟性を有しているものと判断した。
【0077】
(II−2)引張応力、引張強度、切断時伸び
JIS K6251に従い、3号ダンベル、クロスヘッドスピード500mm/分で引張試験を実施した。
引張応力(100%Mo)・・・100%伸張時の応力を測定した。
引張強度(Tb)・・・破断の際の応力を測定した。
切断時伸び(Eb)・・・破断の際の伸びを測定した。
【0078】
(II−3)耐熱性
JIS K6262に準拠し、圧縮永久歪試験を行った。
測定条件は、温度120℃、22時間とした。
圧縮永久歪は、35%以下であれば、良好であると判断した。
【0079】
(II−4)成形加工性
押出成形性:幅50mm×厚さ1mmのシートを押出成形し、溶融不良のブツ、ドローダウン性、表面外観や形状を観察し総合的に判断した。
○:良い:特に問題なし。
△:やや悪い:○と×の中間レベル。
×:悪い:明らかに改善が必要なレベル。
【0080】
次に、実施例及び比較例で使用した各成分を下記に示す。
<水添触媒の調製>
ブロック共重合体の水添反応に用いた水添触媒は下記の方法で調製した。
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビスシクロペンタジエニルチタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
【0081】
〔(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムの調製〕
<ポリマーA> イソプレン−スチレン−ブタジエン−スチレン−イソプレンの水素添加物
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、イソプレン1.5質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.05質量部とテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.55モル添加し、70℃で30分間重合した。
その後、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
次に、ブタジエン67質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で1時間重合した。
次に、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
最後に、イソプレン1.5質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で30分間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量30質量%、ポリスチレンブロック含有量29.7質量%、イソプレン含有量3質量%、ポリブタジエンブロック部のビニル結合量35質量%、ポリマー全体の分子量19.2万、ポリスチレンブロックの分子量5.8万、分子量分布1.04であった。
次に、得られたポリマーに、上記水添触媒を、ポリマー100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
このようにして得られた水添ブロック共重合体(ポリマーA)の水添率は、ブタジエンの水添率100%、イソプレンの水添率4%であった。
【0082】
<ポリマーB> スチレン−イソプレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンの水素添加物
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.05質量部とテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.55モル添加し、70℃で30分間重合した。
その後、イソプレン1.5質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
次に、ブタジエン67質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で1時間重合した。
次に、イソプレン1.5質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。最後にスチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で30分間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量30質量%、ポリスチレンブロック含有量29.8質量%、イソプレン含有量3質量%、ポリブタジエンブロック部のビニル結合量35質量%、ポリマー全体の分子量19.3万、ポリスチレンブロックの分子量5.8万、分子量分布1.04であった。
次に、得られたポリマーに、上記水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られた水添ブロック共重合体(ポリマーB)の水添率は、ブタジエンの水添率100%、イソプレンの水添率5%であった。
【0083】
<ポリマーC> スチレン−ブタジエン−スチレンの水素添加物
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.05質量部とテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.55モル添加し、70℃で30分間重合した。
その後、ブタジエン70質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
最後にスチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量30質量%、ポリスチレンブロック含有量29.7質量%、ポリブタジエンブロック部のビニル結合量35質量%、ポリマー全体の分子量18.9万、ポリスチレンブロックの分子量5.7万、分子量分布1.04であった。
次に、得られたポリマーに、上記水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。得られた水添ブロック共重合体(ポリマーC)のブタジエンの水添率は80%であった。
【0084】
<ポリマーD> スチレン−ブタジエン−スチレンの水素添加物
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を、洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.05質量部と、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.55モル添加し、70℃で30分間重合した。
その後、ブタジエン70質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
最後にスチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量30質量%、ポリスチレンブロック含有量29.7質量%、ポリブタジエンブロック部のビニル結合量35質量%、ポリマー全体の分子量18.9万、ポリスチレンブロックの分子量5.7万、分子量分布1.04であった。
次に、得られたポリマーに、上記水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られた水添ブロック共重合体(ポリマーD)のブタジエンの水添率は100%であった。ポリマー中にブタジエンが残存しておらず、共役ジエン単量体単位の含有量が0質量%であった。
【0085】
<ポリマーE> スチレン−ブタジエン−スチレンの水素添加物
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を、洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.05質量部と、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.55モル添加し、70℃で30分間重合した。
その後、ブタジエン70質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
最後にスチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量30質量%、ポリスチレンブロック含有量29.7質量%、ポリブタジエンブロック部のビニル結合量35質量%、ポリマー全体の分子量19.2万、ポリスチレンブロックの分子量5.7万、分子量分布1.04であった。
次に、得られたポリマーに、上記水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。
その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られた水添ブロック共重合体(ポリマーE)のブタジエンの水添率は50%であり、残存ブタジエン量は共重合体の35質量%の含有量となった。
【0086】
<ポリマーF> スチレン−ブタジエン−スチレン
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を、洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレン40質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.05質量部と、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.55モル添加し、70℃で30分間重合した。
その後、ブタジエン20質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
最後に、スチレン40質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で30分間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量80質量%、ポリスチレンブロック含有量79.8質量%、ポリブタジエンブロック部のビニル結合量35質量%、ポリマー全体の分子量18.8万、ポリスチレンブロックの分子量5.7万、分子量分布1.03であった。
【0087】
〔(II)エチレン系共重合体ゴム〕
EPDM 商品名:Nordel IP 4770R(ダウ・ケミカル社製)。
【0088】
〔(III)オレフィン系樹脂〕
ポリプロピレン樹脂 商品名:PL500A(サンアロマー社製)、MFR(230℃、2.16kg);3.3g/分。
【0089】
〔(IV)架橋剤〕
ポリメチロールフェノール樹脂 商品名:タッキロール250−I(田岡化学社製)。
【0090】
〔(V)架橋助剤〕
酸化亜鉛(和光純薬社製)
【0091】
〔(IV)ゴム用軟化剤〕
パラフィンオイル 商品名:PW−380(出光興産社製)
【0092】
〔実施例1〜3〕、〔比較例1〜8〕
上述した各成分を、下記表1に示す成分比率に従い、2軸押出機(東洋精機(株)製)を用いて、シリンダー温度210℃、スクリュウ回転数250rpmとして溶融混練し、架橋組成物を製造した。
得られた架橋組成物の物性を測定した結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
表1に示すように、実施例1〜3の架橋組成物は、柔軟性、機械強度、耐熱性に優れ、さらには成形加工性についても良好な結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の架橋組成物は、補強性充填剤配合物、架橋物、発泡体、多層フィルム及び多層シート用材料、建築材料、制振・防音材料、電線被覆材料、高周波融着性組成物、スラッシュ成形材料、粘接着性組成物、アスファルト組成物、医療用具材料、自動車材料等として産業上の利用可能性を有し、成形体は、シート、フィルム、チューブや、不織布や繊維状の成形体、合成皮革、食品包装材料、医療用具材料、家電製品及びその部品、電子デバイス及びその部品、自動車部品、工業部品、家庭用品、玩具等の素材、履物用素材、繊維素材、粘・接着剤用素材、アスファルト改質剤等として、産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)ビニル芳香族単量体単位を5〜70質量%、共役ジエン単量体単位を0.1〜30質量%含む、ビニル芳香族系共重合体ゴム:1〜99質量部と、
(II)エチレン系共重合体ゴム:99〜1質量部と、
を、含有し、
前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムと前記(II)エチレン系共重合体ゴムとの合計量:100質量部に対し、
(III)オレフィン系樹脂:10〜100質量部と、
(IV)架橋剤:0.01〜50質量部と、
を、含有する組成物を、架橋することにより得られる架橋組成物。
【請求項2】
前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムが、末端部に共役ジエン単量体ブロックを有する請求項1に記載の架橋組成物。
【請求項3】
前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムが、ビニル芳香族単量体単位と共役ジエン単量体単位とからなるビニル芳香族系ブロック共重合体の水素添加物である請求項1に記載の架橋組成物。
【請求項4】
(V)ゴム用軟化剤を、前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムと前記(II)エチレン系共重合体ゴムとの合計量:100質量部に対して、1〜300質量部、さらに含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の架橋組成物。
【請求項5】
前記(II)エチレン系共重合体ゴムが、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の架橋組成物。
【請求項6】
前記(III)オレフィン系樹脂が、ポリプロピレンである請求項1乃至5のいずれか一項に記載の架橋組成物。
【請求項7】
(I)ビニル芳香族単量体単位を5〜70質量%、共役ジエン単量体単位を0.1〜30質量%含む、ビニル芳香族系共重合体ゴム:1〜99質量部と、
(II)エチレン系共重合体ゴム:99〜1質量部と、
前記(I)ビニル芳香族系共重合体ゴムと前記(II)エチレン系共重合体ゴムとの合計量:100質量部に対し、
(III)オレフィン系樹脂:10〜100質量部と、
(IV)架橋剤:0.01〜50質量部と、
を、混合し、溶融条件下で動的に架橋する工程を有する架橋組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の架橋組成物を成形した成形体。

【公開番号】特開2011−184594(P2011−184594A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52196(P2010−52196)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】