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架橋脂肪酸を基材とした生体物質
説明

架橋脂肪酸を基材とした生体物質

脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料、該生体材料を製造する方法、およびそれらを薬物送達担体として使用する方法が記載される。脂肪酸誘導生体材料を、1つまたは複数の治療薬の放出および局所送達のために、単独で、または医療デバイスと組み合わせて利用することができる。前記生体材料を形成し、それらの特性を調整する方法、および哺乳類における傷害を治療するために前記生体材料を使用する方法も提供される。特定の態様において、本発明は、予備硬化成分を含む脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年2月3日出願の米国特許出願番号第12/364,763号(これは2008年10月10日出願の米国仮特許出願番号第61/104,575号および2008年10月10日出願の米国仮特許出願番号第61/104,568号に対して優先権を主張する)に対しての優先権および利益を主張し;また2006年10月16日出願の米国特許出願番号第11/582,135号(これは2005年10月15日出願の米国仮特許出願番号第60/727,312号に対して優先権を主張する)の一部継続出願であり;また2005年9月28日出願の米国特許出願番号第11/237,264号(これは2004年9月28日出願の米国仮特許出願番号第60/613,808号に対して優先権を主張する)の一部継続出願であり;そしてまた2005年9月28日出願の米国特許出願番号第11/236,908号(これは2004年9月28日出願の米国仮特許出願番号第60/613,745号に対して優先権を主張する)の一部継続出願である。これら先行特許出願の全体の内容は、本明細書中で参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
血管再灌流処置、バルーン血管形成および機械的ステント展開などの血管介入は、狭窄血管の機械的拡張および管腔拡大(luminal expansion)による血管傷害をしばしば招き得る。当該血管内処置に続いて、新生内膜増殖および血管傷害再構築が、傷害血管の管腔表面に沿って生じることが多い。より具体的には、再構築は心臓、ならびに頸動脈、回腸動脈、大腿動脈および膝窩動脈のような脆弱な末梢血管に生じる。機械的再灌流処置による血管傷害の直後にそのような細胞増殖が生じるのを防止または抑制するための既知の機械的抑制手段は見いだされていない。欠陥介入後に未処置のまま放置されると、通常、血管傷害の数週間以内にその処置管腔内に再狭窄が生じる。限局した機械的傷害によって誘発される再狭窄は、再構築血管腔組織の増殖を引き起こして、乱血流線維素活性化による血栓閉塞、血小板沈着および血管流表面傷害の加速化を招き得る管腔の再狭窄をもたらす。再狭窄は、患者を血栓閉塞にかかりやすくし、他の部位への流れを止めて、しばしば病的状態を伴う危険な虚血事象をもたらす。
【0003】
機械的誘発血管傷害細胞再構築によって開始された再狭窄は、緩やかなプロセスであり得る。線維素活性化、トロンビン重合および血小板沈着、管腔血栓形成、炎症、カルシニューリン活性化、成長因子およびサイトカイン放出、細胞増殖、細胞移動および細胞外マトリックス合成を含む複数のプロセスが、それぞれ再狭窄プロセスに寄与する。再狭窄の生物機械的メカニズムの正確な筋道(sequence)は、完全に把握されてはいないが、細胞炎症、成長因子刺激ならびに線維素および血小板沈着に関与するいくつかの疑わしい生化学的経路が仮定されている。血小板、侵入するマクロファージおよび/または白血球から放出されるか、または平滑筋細胞から直接放出される血小板由来成長因子、線維芽細胞成長因子、表皮成長因子、トロンビン等のような細胞由来成長因子は、内側平滑筋細胞における増殖性応答および移動性応答を誘発する。これらの細胞は、収縮表現型から合成表現型に変化する。増殖/移動は、通常、傷害後1または2日以内で開始し、その数日後にピークに達する。正常の動脈壁においては、平滑筋細胞は、1日あたり約0.1パーセント未満の小さい速度で増殖する。
【0004】
しかし、娘細胞は、動脈平滑筋の内膜層に移動し、継続的に増殖し、重要な量の細胞外マトリックスタンパク質を分泌する。増殖、移動および細胞外マトリックス合成は、通常は傷害後7から14日以内に増殖が内膜内で緩慢になる、損傷した内皮層が修復されるときまで継続する。新たに形成された組織は新内膜と呼ばれる。次の3から6カ月間にわたって生じるさらなる血管狭窄は、主として陰性または収縮性再構築に起因する。
【0005】
局所的増殖および移動と同時に、血管壁の内側層から誘導される炎症性細胞は、治癒過程の一部として血管傷害の部位において継続的に侵入および増殖する。傷害後3から7日以内に、実質的な炎症性細胞形成および移動が開始して、血管壁に沿って蓄積して、血管傷害の部位を覆い、治癒させた。動物モデルにおいて、バルーン傷害またはステント移植のいずれかを採用すると、炎症性細胞は、少なくとも30日間にわたって血管傷害の部位に存続し得る。炎症性細胞は、再狭窄および血栓形成の急性相および遅延慢性相の両方に寄与し得る。
【0006】
今日、冠状動脈ステントなどの血管内医療デバイスによって引き起こされる血管傷害の部位への薬物の局所的送達の好適なアプローチは、薬物溶出コーティングをデバイスに配置することである。臨床的に、永久的ポリマーまたは分解性ポリマーのいずれかおよび適切な治療薬で構成された薬物溶出コーティングで被覆された医療デバイスは、血管傷害および/または血管再灌流処置後の血管壁増殖が、バルーン血管形成および/または機械的ステント展開に続く一定の時間にわたって消滅しなくても、減少し得るという血管造影的証拠を示した。薬物溶出医療デバイスを介する単一のシロリムスまたはタキソール化合物の局所的送達は、血管傷害直後に適用されると、細胞増殖および細胞再構築を最小限に抑えるか、または防止するのに有効であることが示された。これらの2つの抗増殖性化合物例の様々な類似体が、類似の薬物溶出コーティングと類似の抗増殖活性を示すことが実験的および臨床的に示された。しかし、シロリムスおよびタキソールなどの抗増殖性化合物は、ポリマー薬物溶出コーティング(polymeric drug eluting coating)とともに、薬物溶出コーティングからの主要薬物の放出の最中およびその後にいくつかの毒性副作用を示すことも臨床的に示された。これらの慢性および/または遅延副作用は、所定の期間にわたって実際に送達することができる薬物の量を制限するとともに、治療薬を炎症の部位に直接適用する場合に血管傷害の部位に局所的に送達するのに使用されるポリマーコーティングの相溶性および/または細胞再構築を損なう。加えて、シロリムスおよびタキソールのような化合物の局所的過剰投与は、医療デバイスの局在的組織領域内またはその周辺における細胞再構築または増殖を防止、制限、またはさらには停止させ得る。例えば、血管傷害治癒過程全体を通じての細胞増殖の中断の間の内皮細胞被覆の欠如は、管腔血栓形成の高い潜在性を示すことにより、線維素、および血小板の不断の沈着が、露出および非治癒型(non−healed)医療デバイスおよび/または損傷血管壁を覆う。薬物溶出医療デバイスの展開の前および後にASAなどの抗凝血薬と組み合せたクロピデグレルのような抗血小板薬の不断の全身維持または投与がなくては、そのようなデバイスは、展開の数日以内に血栓形成および閉塞を引き起こすことが臨床的に示された。加えて、医療デバイスに採用されるこれらの市販の薬物溶出ポリマーコーティングは、全般的に生体適合性があると特徴づけられるが、これらのポリマーを基材とした(polymer−based)化学物質のより小さく代謝がより容易な化学成分または生成物への化学的加水分解、分解および吸収の欠如は、抗血小板薬投与の停止の数日以内に不測の血栓閉塞を招き得る、血管傷害の部位における遅延局所炎症応答を引き起こすことがさらに臨床的に実証された。
【0007】
創傷治癒またはインビボ傷害に対する応答(例えばヘルニア修復)は、血管傷害と同じ全般的生物学的カスケードに従う(例えば、非特許文献1)。このカスケードは、天然の組織(native tissue)の炎症と、その後の血小板およびマクロファージを含む、炎症応答を軽減するための細胞の移動および増殖、ならびに線維素沈着および線維素マトリックスの形成と、その後の組織再構築とを含むその後の治癒段階を含む。ヘルニア修復の場合は、線維素マトリックスが適正に分解できなくするとともに、癒着物を形成させ得るマクロファージからの炎症性サイトカイン(例えばα−TNF)の発現が存在するときに、異常な腹膜治癒が起こり得る(非特許文献1)。ヘルニア修復後に形成される腹膜癒着は、疼痛、腸嵌頓、不妊、および場合によっては死を招き得る(非特許文献1)。
【0008】
傷害に対する血栓および炎症応答の持続的性質により、移植後の炎症および異物体応答の発生率を低減することができる生体材料を提供することが望ましい。当該細胞活性化応答を最小限に抑えるために、一定の時間にわたって1つまたは複数の治療薬を放出させる生体材料を有することも好ましい。また、生体吸収メカニズムを介して当該生体材料を代謝させることも好ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Y. G. Cheongら、Human Reproduction Update.2001年;第7巻、第6号、556〜566頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
治療薬またはコーティングの成分のいずれかによる慢性炎症を防止または軽減する、単独で、または薬物送達担体として利用できる生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)が所望される。また、生体材料が、治療薬を持続した様式でおよび制御した様式で局部組織に放出および送達することが望ましい。本発明は、この必要性に対応する様々な解決策に向けられる。
【0011】
細胞によって生体吸収することができる、そして、機械的に傷害された、または再灌流傷害により傷害された組織(例えば、腹膜組織または血管組織)に慢性の局所的炎症を引き起こさずに薬物を送達することができる、生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)もまた所望されるが、細胞が薬物を含む生体材料の加水分解生成物を消費するので、その生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)および治療薬は、その細胞によって消化される。
【0012】
様々な態様において、生体材料は、医療デバイス用コーティング、または独立型フィルムである。生体材料は、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料であり得る。様々な実施形態において、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料は非ポリマーである。特定の場合において、本明細書に記載されているように、脂肪酸源は、油、例えば魚油である。そのような場合には、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を「油を基材とした予備硬化誘導生体材料(oil−based, pre−cure−derived biomaterial)」と呼ぶこともできる。
【0013】
特定の態様において、本発明は、予備硬化成分を含む脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)を提供する。本明細書に記載されているように、「予備硬化」成分は、初期量の脂肪酸酸化および架橋を誘導して粘性脂肪酸誘導ゲルを形成するために(熱、UV等を使用して)部分的に硬化される(例えば魚油からの)脂肪酸を指す。予備硬化成分を溶媒に溶解し、デバイス、例えば医療デバイスに噴霧することができる。予備硬化成分を一旦医療デバイスに結合させると、デバイスを被験体における治療のために使用するか、またはさらなる硬化条件にさらに曝露させて、本明細書では「脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(コーティング)」と称する滑らかなコンフォーマルコーティングを得ることができる。予備硬化および/または脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料をゲルとして特徴づけることができる。
【0014】
予備硬化脂肪酸成分(本明細書では「予備硬化脂肪酸成分」または単に「予備硬化物」と称し、脂肪酸源が魚油などの油であるときは、それを「予備硬化油」と呼ぶこともできる)を治療薬に添加することができ、治療薬を油と場合により組合せ(combine)、得られた組合せ物をさらに硬化させることによって、油の脂肪酸をさらに架橋させて脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を得ることができ、それは、脂肪酸を基材とした生体材料の一部を配合前に予備硬化させ、次いで治療薬を存在させて曝露してさらに硬化させたことを意味する。一実施形態において、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料は、調整された薬物放出特性を有する。得られた予備硬化誘導生体材料は、医療デバイス用コーティングとして、または独立型フィルムとして使用されるときは、「脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング」または「脂肪酸を基材とした予備硬化誘導独立型フィルム」と称することもできる。
【0015】
(例えば魚油の)予備硬化物を生成するプロセスは、ヒト組織によって加水分解されることになる酸化脂肪酸架橋の初期プラットフォームを生成するという利点を有する。いくつかの実施形態において、予備硬化の硬化プロセスの一部を治療薬の非存在下で実施して、プロセスの後半の治療薬の添加を可能にすることができる。当該実施形態において、別の方法では、熱に/化学的に感受性の目的の治療薬(例えば、ラパマイシンまたはシクロスポリン誘導体)が、予備硬化プロセスの以下のような部分にわたって存在しないことを除いて、上記治療薬(例えば、ラパマイシンまたはシクロスポリン誘導体)の分解を招くことになる温度で、かつ/または上記治療薬(例えば、ラパマイシンまたはシクロスポリン誘導体)の分解を招くことになる期間にわたって予備硬化プロセスを実施することができる。このプロセスは、治療薬を含まない、酸化性反応部位(例えばC=C結合)が減少した部分架橋組成物をもたらす。予備硬化物が形成された後に、次に治療薬が添加され、場合によりビタミンEも添加される。ビタミンE成分は、薬物および予備硬化油をさらなる酸化から保護する利点を有するが、油の脂肪酸および/またはグリセリド成分のさらなる架橋(例えばエステル化)を抑制しない。
【0016】
よって、様々な態様において、本発明は、疎水性架橋予備硬化誘導生体材料を製造するための方法であって、予備硬化誘導生体材料が1つまたは複数の治療薬とともに利用され、治療薬が、制御充填量(controlled loading)を有し、コーティングが吸収されるに従って持続的様式で放出される方法を提供する。様々な実施形態において、油含有出発材料から予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)を製造するために使用される硬化条件を制御すること、予備硬化誘導生体材料が形成される元になる油含有出発材料に遊離ラジカル捕捉剤を使用すること、またはそれらの組合せによって予備硬化誘導生体材料の薬物放出プロファイルを調整する(tailoring)方法が提供される。様々な実施形態において、本発明の方法は、脂肪酸の架橋の程度を制御することによって、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)の薬物放出特性を調整する。様々な実施形態において、本発明の方法は、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料における脂肪酸、トコフェロール、脂質酸化生成物および可溶性成分の量(level)を制御することによって、予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)の薬物送達特性を調整する。
【0017】
様々な態様において、本発明は、1つまたは複数の治療薬に対する調整放出(tailored release)プロファイルを有する1つまたは複数の治療薬を含む予備硬化油成分を含む脂肪酸誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)を提供することができる。そのような材料は、本明細書では「脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料」と称する。様々な実施形態において、調整放出プロファイルは、持続放出プロファイルを含む。様々な実施形態において、調整放出プロファイル特性は、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料における脂肪酸、トコフェロール、脂質酸化生成物および可溶性成分の量によって制御される。本発明の様々な態様において、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料は、その多くがトリグリセリドに由来する脂肪酸を含む。トリグリセリド副生成物、例えば部分加水分解トリグリセリド、および脂肪酸分子は、細胞膜に組み込まれ、細胞膜への薬物の溶解性を高めることができることが以前に実証されている(M. Cote, J. of Controlled Release. 2004年、第97巻、269〜281頁;C. P. Burnsら、Cancer Research.1979年、第39巻、1726〜1732頁;R. Beckら、Circ. Res.1998年、第83巻、923〜931頁;B. Henningら、Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 1984年、第4巻、489〜797頁)。全トリグリセリドは、それらの分子サイズが比較的大きいことにより細胞膜を横断するのが困難であるため、全トリグリセリド、ならびに部分加水分解トリグリセリドは、細胞の取り込み(cellular uptake)を向上させないことが知られる。ビタミンE化合物も細胞膜に組み込まれて、膜流動性および細胞の取り込みを低下させ得る(P. P. Constantinides. Pharmaceutical Research.2006年;第23巻、2号,243−255頁)。
【0018】
様々な態様において、本発明は、脂肪酸、グリセリド、脂質酸化生成物およびアルファ−トコフェロールを、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料およびそれに組み合わされた任意の治療薬の細胞の取り込み特性に関して制御するようにして、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料に寄与する異なる量および割合で含む予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)を提供することができる。
【0019】
様々な態様において、本発明は、予備硬化誘導生体材料の1つまたは複数の層を含む脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料薬物放出コーティングを有する被覆医療デバイスであって、予備硬化誘導生体材料層の少なくとも1つが1つまたは複数の治療薬を含む医療デバイスを提供することができる。コーティングは、疎水性架橋予備硬化誘導生体材料(例えば魚油から誘導されるため、「油誘導予備硬化誘導生体材料」と呼ばれる)であり得る。様々な実施形態において、コーティングは非ポリマーである。様々な実施形態において、薬物放出コーティングは、インビボで加水分解して、実質的に非炎症性の化合物になる。様々な実施形態において、予備硬化誘導生体材料は、患者への治療薬の長期的局所送達を行うように患者に移植可能である医療デバイスに被覆される。様々な実施形態において、送達は、長時間にわたって放出される治療薬の全量および相対量によって少なくとも部分的に特徴づけられる。様々な実施形態において、調整送達プロファイルは、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料における脂質酸化、ビタミンEおよび/または可溶性成分の量によって制御される。様々な実施形態において、送達プロファイルは、インビボでのコーティング成分および治療薬の可溶性および親油性の関数である。予備硬化誘導生体材料は、上述の特性を有する独立型フィルム、ゲル、懸濁物またはエマルジョンであり得る。
【0020】
様々な実施形態において、本発明は、コーティングの薬物放出プロファイルが2つ以上のコーティングの供給および治療薬の配置(location)の選択を介して調整される脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングを提供することができる。例えば、医療デバイスの裸の部分を第1の出発材料で被覆し、第1の硬化コーティングを生成し、次いで第1の硬化コーティングの少なくとも一部を薬物−油処方物で被覆して、第2の被覆層コーティングを生成することによって、薬物の配置を変化させることができる。2つの層を設けるプロセスを拡大して3つ以上の層を設けることができ、それらの層の少なくとも1つが脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を含むことが理解されるべきである。加えて、それらの層の1つまたは複数の層は、薬物放出することができ、本明細書に記載の方法を使用して当該層の薬物放出プロファイルを調整することができる。
【0021】
本発明の様々な実施形態によれば、予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)は脂質を含む。予備硬化誘導生体材料を出発材料である魚油などの油から形成することができる。予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)は、飽和、不飽和または多価不飽和脂肪酸を含むことができる。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料は、架橋されると、オメガ−3脂肪酸を含むことができる。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料は、アルファ−トコフェロールまたはビタミンE誘導体および/または治療薬を含むこともできる。
【0022】
本発明のコーティングを、治療薬に加えて、薬学的に許容し得る担体、賦形剤、界面活性剤、結合剤、助剤(adjuvant agent)および/または安定剤(防腐剤、緩衝剤および酸化防止剤を含む)の1種または複数種を含むが、それらに限定されない様々な他の化学物質および成分(entity)を含むように配合することができる。一実施形態において、アルファ−トコフェロールTPGSを本発明のコーティングに添加することができる。
【0023】
様々な態様において、本発明は、例えばヒトなどの哺乳類における傷害を治療するための方法を提供することができる。様々な実施形態において、傷害は、血管傷害である。様々な実施形態において、上記方法は、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を含むコーティングからの1つまたは複数の治療薬の持続放出によって、1つまたは複数の治療薬を治療有効量で局所投与することを含む。
【0024】
本明細書における教示は、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を含む硬化コーティングおよび独立型フィルムが、フィルムからのまたは移植可能デバイスからの薬物装填脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料の放出プロファイルを調整する能力を提供することを実証する。様々な実施形態において、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)組成および硬化時間を変化させることによる油化学構造の変化を介して、放出プロファイルを制御することができる。それらの教示は、予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)からの治療化合物の放出を、油硬化条件、油出発材料、硬化の長さおよび架橋の量を変化させることにより改良できることを実証する。それらの教示は、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導油コーティングおよび脂肪酸を基材とした予備硬化誘導独立型フィルムの架橋およびゲル化が、油の温度および不飽和度の上昇に従って増加する油成分におけるヒドロペルオキシドの形成に直接依存し得ることを実証する。薬物放出およびコーティング分解は、より高い温度硬化条件(例えば約200°F)より低い温度硬化条件(例えば約150°F)を使用して生成された架橋コーティングの方がより迅速であることが分解実験(dissolution experiment)によって示された。
【0025】
別の態様において、本発明は、架橋された魚油を含む医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングを提供する。魚油は、治療薬を場合により含むことができる。コーティング用量が治療薬を含むときは、コーティングがインビボにて所望の放出速度で治療薬を放出するように、コーティングを本明細書に記載の方法に従って調製することができる。
【0026】
別の態様において、本発明は、脂肪酸および治療薬を含む医療デバイス用コーティングであって、脂肪酸が治療薬との会合前に部分的に架橋されたコーティングを提供する。すなわち、脂肪酸を部分的に硬化させて、初期量の脂肪酸架橋を誘導し、次いで治療薬と組合わせた。次いで、例えば医療デバイスに塗布した後に、得られた組成物にさらなる硬化処理を施すことによって、脂肪酸をさらに架橋させてコーティングを形成することができる。一実施形態において、治療薬は、治療薬が向上した放出プロファイルを有するようにコーティング内に含められる。本明細書に使用されているように、「向上した放出プロファイル」という語句は、本発明の方法を使用して調製される予備硬化誘導生体材料による治療薬の放出プロファイルを指す。すなわち、本明細書に記載されているように、予備硬化物を調製し、治療薬を予備硬化物に添加し、治療薬−予備硬化物組成物をさらに硬化させることによって、本発明の方法に従って調製されなかった調製物と異なる方式で治療薬を放出する治療架橋生体材料(すなわち、予備硬化組成物を使用して調製されなかった脂肪酸誘導生体材料)が生成される。
【0027】
例えば、最初に治療薬の不在下で予備硬化物を調製することによって、治療薬は、さもなければその分解を招く処理条件に曝露されない。次いで、治療薬をさらなる処理のために予備硬化物に添加することができる。治療薬構造がこのように保持されるため、コーティングの製造の間における治療薬の分解がより少ない。よって、特に、予備硬化物を用いずに調製されたコーティングと比較して(すなわち、未硬化の脂肪酸含有材料を最初に治療薬と組合わせ、次いで硬化させたコーティングと比較して)放出できるより高量の治療薬がコーティングに存在する。したがって、治療薬の放出プロファイルが「向上される」。
【0028】
一実施形態において、本発明のコーティングは、予備硬化グリセリドをさらに含む。コーティングは、5〜25%のC14脂肪酸および/または5〜30%のC16脂肪酸を含む。インビボで代謝されるとグリセリドを生成するようにコーティングを構成することができる。コーティングは、約30〜90%飽和脂肪酸;約30〜80%不飽和脂肪酸;グリセリド;そのいずれも部分架橋することができる、グリセリド、グリセロールおよび脂肪アルコールからなる群の1種または複数種;および/またはビタミンEを含むことができる。
【0029】
別の実施形態において、コーティングは、移植可能デバイスと会合される。コーティングを医療デバイスと会合することができ、医療デバイスは、ステント、カテーテル、外科用メッシュまたはバルーンである。
【0030】
一実施形態において、コーティングと会合した治療薬は、抗増殖薬、抗炎症薬、抗微生物薬または抗生物質である。別の実施形態において、治療薬は、(以下に記載される)化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、シクロスポリン誘導体またはラパマイシン誘導体である。
【0031】
【化1】

【0032】
【化2】

別の実施形態において、コーティングは、0.01Mリン酸緩衝食塩水(PBS)中で約5〜20日間まで治療薬を放出する放出プロファイルを有する。コーティングは、前記治療薬をインビボにて所望の放出速度で放出することができる。一実施形態において、コーティングは、0.01Mリン酸緩衝食塩水(PBS)中で20日間を超える日数まで治療薬を放出する放出プロファイルを有する。
【0033】
別の実施形態において、コーティングは、約10〜20%のC14飽和脂肪酸および約25〜50%のC16飽和脂肪酸を含む。コーティングは、ラクトンおよびエステル架橋を含むことができる。コーティングは、赤外吸収およびX線回折によって測定される無秩序炭化水素鎖(disordered hydrocarbon chain)を含むことができる。
【0034】
別の実施形態において、コーティングは、架橋剤を含まない。
【0035】
さらに別の実施形態において、コーティングは、インビボで脂肪酸、グリセロールおよびグリセリドに加水分解し;インビボで非炎症性成分に加水分解し;かつ/またはインビボでの加水分解を促進するのに十分な量のカルボン酸基を含む。
【0036】
コーティングは、約50〜90%飽和脂肪酸;約10〜50%不飽和脂肪酸;グリセリド;および/またはそのいずれも部分架橋することができる、グリセリド、グリセロールおよび脂肪アルコールからなる群の1種または複数種を含むことができる。一実施形態において、脂肪酸源は、魚油、オリーブ油、グレープ油、パーム油または亜麻仁油などの油である。一実施形態において、脂肪酸源は魚油である。
【0037】
別の態様において、本発明は、約5〜50%のC16脂肪酸を含む予備硬化架橋脂肪酸を含む医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングを提供する。
【0038】
さらに別の態様において、本発明は、約5〜25%のC14脂肪酸および約5〜50%のC16脂肪酸を含む非ポリマー架橋脂肪酸を含む医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備架橋誘導コーティングを提供する。
【0039】
別の態様において、本発明は、脂肪酸およびグリセリドが、コーティングを柔軟かつ水和性にする無秩序アルキル基を有する、架橋脂肪酸およびグリセリドを含む医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングを提供する。
【0040】
さらに別の態様において、本発明は、デルタ−ラクトンを含む脂肪酸誘導生体材料を含む医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングを提供する。
【0041】
さらに別の態様において、本発明は、それぞれ約1740〜1850cm−1にピークを有する赤外吸収スペクトルによって示されるラクトンおよびエステル架橋(ester cross link)を含む医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングを提供する。
【0042】
別の態様において、本発明は、架橋脂肪酸誘導生体材料の約60〜90%が、500未満の分子量を有する脂肪酸で構成される上記架橋脂肪酸誘導生体材料を含む医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングを提供する。
【0043】
さらに別の態様において、本発明は、モジュレートされた治癒の達成を必要とする組織領域でモジュレートされた治癒を達成するのに好適な脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料であって、上記生体材料が、上記組織領域またはその付近における血小板または線維素沈着のモジュレーションを含む上記モジュレートされた治癒を達成するのに十分な量で投与される、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を提供する。一実施形態において、組織領域は、被験体の血管を基材としたである。
【0044】
さらに別の態様において、本発明は、モジュレートされた治癒の達成を必要とする血管傷害の部位でモジュレートされた治癒を達成するのに好適な脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料であって、上記組成物が、少なくとも1測定基準(one metric)の器質化組織修復(organized tissue repair)のモジュレーションを含む上記モジュレートされた治癒を達成するのに十分な量で投与される、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を提供する。一実施形態において、血管治癒は、血管治癒の炎症段階である。別の実施形態において、器質化組織修復は、血管傷害の部位における血小板または線維素沈着を含む。別の実施形態において、少なくとも1測定基準の器質化組織修復のモジュレーションは、血管傷害の部位における治癒プロセスの遅延である。
【0045】
別の実施形態において、本発明の生体材料は、カテーテル、バルーン、ステント、外科用メッシュ、外科用包帯または移植片を介して、それを必要とする領域に投与される。
【0046】
別の態様において、医療デバイス用コーティングを得る(derive)ための調製物であって、上記調製物は予備硬化架橋脂肪酸油を含み、コーティングがエステルおよびラクトン架橋を含み、上記調製物の一部が予備硬化天然油を含む調製物が本明細書に提供される。上記調製物は、治療薬をさらに含むことができる。上記調製物は、約1.0×10から約1.0×10cpsの粘度を有する。上記調製物をさらに有機溶媒に溶解させることができる。
【0047】
また、医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングを製造するための方法であって、
第1の硬化条件に従って油含有出発材料を硬化して第2の材料を形成する工程と、
治療薬と第2の材料とを組合わせて第3の材料を形成する工程と、
コーティングを製造するように第3の材料を硬化させる工程とを含む方法が本明細書に提供される。
【0048】
上記方法の一実施形態において、第2の材料と組合わせる前に、治療薬を油含有材料または有機溶媒と組合わす。別の実施形態において、第1の硬化条件の硬化温度および/または全硬化期間は、治療薬の分解温度を上回る。さらに別の実施形態において、第1の硬化条件は、脂肪酸の実質的な架橋が第2の硬化条件の間に生じるように油におけるエステルおよびラクトンの認識可能な形成をもたらす。さらに別の実施形態において、治療薬の放出プロファイルを調整するように、硬化温度および期間が調整される。ビタミンEを第2の材料に添加することができる。別の実施形態において、第3の材料を有機溶媒と組合わせ、硬化の前に医療デバイスに塗布してコンフォーマルコーティングを形成する。次いで、第3の材料を、硬化前に医療デバイスに噴霧してコーティング、例えば非コンフォーマルコーティングを形成することができる。上記方法の別の実施形態において、油含有出発材料は魚油である。上記方法のさらに別の実施形態において、医療デバイスは、ステント、カテーテル、外科用メッシュまたはバルーンである。
【0049】
上記方法によって製造された第2の材料は、約1.0×10から約1.0×10cpsの粘度を有する。
【0050】
上記方法に使用される治療薬は、抗増殖薬または抗炎症薬であり得る。上記方法に使用される治療薬は、また、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、シクロスポリン誘導体またはラパマイシン誘導体であり得る。
【0051】
上記方法の別の実施形態において、第2の材料が、医療デバイスに塗布されると、医療デバイスに非コンフォーマルコーティングを与えるように第1の硬化条件を調整し、第3の材料が、コーティングに塗布されると、コンフォーマルコーティングを与えるように第2の硬化条件を調整する。別の実施形態において、最終コーティングの所望の機械特性を得るために第2の硬化条件に必要とされる硬化時間を短くするために第1の硬化条件の硬化時間を実質的に長くすることができる。別の実施形態において、第2の硬化条件に必要とされる硬化時間を短くして、所望の機械特性を得るとともに、最終コーティングまで感熱性薬物を保持するために、第1の硬化条件を実質的に長くすることができる。
【0052】
別の態様において、疎水性非ポリマー架橋魚油および治療薬を含み、16〜22psiの圧縮力に耐えることができる医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングが本明細書に提供される。
【0053】
さらに別の態様において、インビボで脂肪酸、グリセロールおよびグリセリドに加水分解する脂肪酸を基材とした予備硬化誘導医療デバイスコーティングが本明細書に提供される。
【0054】
さらに別の態様において、非ポリマー部分架橋脂肪酸および治療薬を含む医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングであって、該治療薬が向上した放出プロファイルを有するように該治療薬がコーティング内に含まれる脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングが本明細書に提供される。
【0055】
別の態様において、医療デバイス用コーティングを得るための調製物であって、その調製物が非ポリマー部分架橋脂肪酸および治療薬を含み、コーティングがエステルおよびラクトン架橋を有する調製物が本明細書に提供される。
【0056】
さらに別の態様において、架橋脂肪酸油および治療薬を含み、天然油含有出発材料を硬化させて脂肪酸の一部の架橋を誘発し、治療薬を部分架橋脂肪酸油に添加して治療薬−油組成物を形成し、治療薬−油組成物を硬化させて、コーティングが形成されるように脂肪酸におけるさらなる架橋を誘発することによって調製される医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングが本明細書に提供される。コーティングの一実施形態において、治療薬を、部分架橋脂肪酸油と組合わせる前に、天然油含有材料、有機溶媒および/またはビタミンEと組合わす。別の実施形態において、治療薬が向上した放出プロファイルを有するように、治療薬を、部分架橋脂肪酸油と組合わせる前にビタミンEと組合わせる。
【0057】
別の態様において、予備硬化脂肪酸を含む独立型フィルムが本明細書に提供される。独立型フィルムは、約5〜50%のC16脂肪酸、5〜25%のC14脂肪酸、5〜40%のC16脂肪酸および/またはビタミンEを含むことができる。フィルムは、生体吸収性であり、かつ/または癒着防止(anti−adhesive)特性を維持することができる。独立型フィルムは、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、シクロスポリン誘導体またはラパマイシン誘導体などの治療薬をさらに含むことができる。治療薬をフィルムの形成前に脂肪酸化合物と組合わせて、治療薬をフィルム全体に分散させることができる。
【0058】
別の態様において、架橋脂肪酸油および治療薬を含む独立型フィルムが本明細書で提供されるが、ここで、
上記独立型フィルムは、天然油含有出発材料を硬化させて、脂肪酸の一部の架橋を得る工程、
部分架橋した脂肪酸油に治療薬を添加して、治療薬−油組成物を形成する工程、
治療薬−油組成物を硬化させて、脂肪酸におけるさらなる架橋を得る工程によって調製され、それによって独立型フィルムを形成させる。
【0059】
別の態様において、部分架橋脂肪酸および治療薬を含む脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料であって、治療薬が生体材料組成物の少なくとも40重量%を含む脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料が本明細書に提供される。別の実施形態において、治療薬は、生体材料組成物の少なくとも50重量%を含む。
【図面の簡単な説明】
【0060】
本発明の上記および他の態様、実施形態、目的、特徴および利点を、添付の図面とともに以下の説明からより深く理解することができる。図面において、それぞれの図面全体を通じて、同様の参照符号は、同様の特徴および構造要素を指す。図面は、必ずしも縮尺に従って作成されず、むしろ本発明の原理を例示することが強調されている。
【図1】図1は、多価不飽和油における過酸化物およびエーテル架橋の生成の例の概略図である。
【図2】図2は、多価不飽和油における炭素−炭素架橋の生成(ディールス・アルダー型反応)の例の概略図である。
【図3】図3は、疎水性予備硬化誘導生体材料コーティングの形成のためのメカニズムを示す図である。
【図4】図4は、予備硬化誘導生体材料反応化学の概要を示す図である。
【図5】図5は、エステル基を形成させる油の反応の概略図である。
【図6】図6は、トリグリセリドにおけるエステル結合の加水分解を概略的に示す図である。
【図7】図7は、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料コーティングと生体組織との間の脂肪酸組成の類似性を示す棒グラフを示す図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態による、本発明の被覆医療デバイスを製造する方法を示すフローチャートである。
【図9】図9は、本発明の一実施形態による図8の方法の変形を示すフローチャートである。
【図10】図10A〜10Eは、被覆医療デバイスの様々な画像である。
【図11】図11は、実施例1に記載の完全硬化生体材料(非予備硬化成分)の30日の曝露後の0.1MのPBS溶液からのGC−FID脂肪酸プロファイルを示す図である。
【図12】図12は、最終硬化を施したおよび最終硬化を施さなかったクーポンに噴霧された治療薬/生体材料処方物について得られた脂肪酸プロファイルクロマトグラムを示す図である。
【図13】図13は、実施例に2に概説される、治療薬が充填されたステントに脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングを生成する方法を示す流れ図を示す。
【図14】図14は、実施例2に記載されている0.01MのPBSバッファーにおける硬化油治療コーティングについての薬物放出プロファイルを示す図である。
【図15】図15は、実施例3に記載されている脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料についての薬物放出プロファイルを示す図である。
【図16】図16は、実施例4に記載されている脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料についての追従力(trackability force)データを示す図である。
【図17】図17は、最終硬化時間の関数としてのCo−Crステントからのアッセイ回収結果を示す図である。
【図18】図18は、実施例4に記載されている脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料についての薬物回収を示す図である。
【図19】図19は、実施例6Aに記載の予備硬化誘導生体材料の粘度を示す図である。
【図20】図20Aおよび20Bは、予備硬化誘導生体材料で被覆されたステントのSEMである。
【図21A】図21A、21Bおよび21Cは、硬化前および硬化後の予備硬化魚油のFTIR分析を示す図である。
【図21B】図21A、21Bおよび21Cは、硬化前および硬化後の予備硬化魚油のFTIR分析を示す図である。
【図21C】図21A、21Bおよび21Cは、硬化前および硬化後の予備硬化魚油のFTIR分析を示す図である。
【図22】図22は、最終硬化前および最終硬化後のクーポンに噴霧された予備硬化魚油(MTBE中)について得られたGC脂肪酸プロファイルデータを示す図である。
【図23】図23は、最終硬化前および最終硬化後のクーポンに噴霧された部分硬化(すなわち予備硬化)魚油(MTBE中)について得られた脂肪酸プロファイルクロマトグラムを示す図である。
【図24A】図24、24Bおよび24Cは、MTBEに溶解され、最終硬化を施したおよび最終硬化を施さなかったクーポンに噴霧された、ビタミンEのFTIRスペクトルを示す図である。
【図24B】図24、24Bおよび24Cは、MTBEに溶解され、最終硬化を施したおよび最終硬化を施さなかったクーポンに噴霧された、ビタミンEのFTIRスペクトルを示す図である。
【図24C】図24、24Bおよび24Cは、MTBEに溶解され、最終硬化を施したおよび最終硬化を施さなかったクーポンに噴霧された、ビタミンEのFTIRスペクトルを示す図である。
【図25】図25A、25Bおよび25Cは、硬化前および硬化後のクーポンに噴霧されたビタミンEで上のせされた(overlaid)ビタミンE対照のHPLCクロマトグラムを示す図である。
【図26A】図26A、26Bおよび26Cは、硬化前および硬化後のクーポンへの噴霧後の治療薬のFTIR分析を示す図である。
【図26B】図26A、26Bおよび26Cは、硬化前および硬化後のクーポンへの噴霧後の治療薬のFTIR分析を示す図である。
【図26C】図26A、26Bおよび26Cは、硬化前および硬化後のクーポンへの噴霧後の治療薬のFTIR分析を示す図である。
【図27】図27A、27Bおよび27Cは、硬化前および硬化後のクーポンへの噴霧後の治療薬のHPLCクロマトグラムを示す図である。
【図28A】図28A、28Bおよび28Cは、最終硬化前および最終硬化後の化合物B脂肪酸誘導予備硬化生体材料コーティングのFTIRスペクトルを示す図である。
【図28B】図28A、28Bおよび28Cは、最終硬化前および最終硬化後の化合物B脂肪酸誘導予備硬化生体材料コーティングのFTIRスペクトルを示す図である。
【図28C】図28A、28Bおよび28Cは、最終硬化前および最終硬化後の化合物B脂肪酸誘導予備硬化生体材料コーティングのFTIRスペクトルを示す図である。
【図29】図29Aおよび29Bは、最終硬化後に予備硬化誘導生体材料から得られた、化合物Bで上のせされた化合物B対照のHPLCクロマトグラムアッセイ結果を示す図である。
【図30】図30は、最終硬化を施したおよび最終硬化を施さなかったクーポンに噴霧された、治療薬/生体材料処方物について得られた脂肪酸プロファイルデータを示す図である。
【図31A】図31A、31Bおよび31Cは、ステントに噴霧され、それぞれの時間に硬化された75:25予備硬化魚油:ビタミンE中の治療薬のFTIRスペクトルを示す図である。
【図31B】図31A、31Bおよび31Cは、ステントに噴霧され、それぞれの時間に硬化された75:25予備硬化魚油:ビタミンE中の治療薬のFTIRスペクトルを示す図である。
【図31C】図31A、31Bおよび31Cは、ステントに噴霧され、それぞれの時間に硬化された75:25予備硬化魚油:ビタミンE中の治療薬のFTIRスペクトルを示す図である。
【図32】図32、33および34は、実施例15に記載されているインビボ実験の結果を示す図である。
【図33】図32、33および34は、実施例15に記載されているインビボ実験の結果を示す図である。
【図34】図32、33および34は、実施例15に記載されているインビボ実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明は、1つまたは複数の治療薬の放出および局所送達のために単独で、または医療デバイスと組み合わせて利用できる脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料の形成、前記コーティングの特性を形成し調整する方法、および哺乳類における傷害を治療するために前記コーティングを使用する方法に向けられる。また、生体材料の基礎にある化学の独自の特性により、コーティングは、そのインビボ性能を向上させる移植中の組織傷害の部位における異物対応および炎症を軽減するのに役立つ特定の化学成分を含むことが実証されることになる。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を予備硬化物、例えば予備硬化脂肪酸から形成することができる。
【0062】
本発明をさらに説明する前に、傷害およびそれに対する生体応答を概略的かつ手短に説明することが有益であり得る。
【0063】
血管傷害
内膜肥厚を引き起こす血管傷害を、生物学的または機械的に誘発されるもののいずれかとして広く分類することができる。生物学的に媒介される血管傷害は、エンドトキシンおよびサイトメガロウィルスなどのヘルペスウィルスを含む感染障害に起因する傷害;アテローム硬化症などの代謝障害;ならびに低温症および照射に起因する血管傷害を含むが、それらに限定されない。機械的に媒介される血管傷害は、カテーテル挿入処置または血管掻爬処置(vascular scraping procedure)、例えば経皮経管冠動脈形成;血管外科手術;移植手術;レーザ治療;ならびに血管内膜または内皮の完全性を破壊する他の侵襲的処置によって引き起こされる血管傷害を含むが、それらに限定されない。一般に、新生内膜形成は、血管傷害に対する治癒応答である。
【0064】
炎症性応答
血管傷害の際の創傷治癒は、いくつかの段階で生じる。第1の段階は、炎症期である。炎症期は、止血および炎症によって特徴づけられる。創傷形成の間に露出するコラーゲンは、凝固カスケード(内因性経路および外因性経路の両方)を活性化させて、炎症期を開始させる。組織に対する傷害が生じた後に、傷形成により損傷された細胞膜は、強力な血管収縮物質であるトロンボキサンA2およびプロスタグランジン2−アルファを放出する。この初期応答は、出血を制限するのに役立つ。短期間の後、毛細血管拡張が局所的ヒスタミン放出に続発して生じ、炎症の細胞は、創傷層に移動することが可能である。正常な創傷治癒プロセスにおける細胞移動のタイムラインが予測可能である。第1の応答細胞である血小板は、上皮成長因子(EGF)、フィブロネクチン、フィブリノゲン、ヒスタミン、血小板由来成長因子(PDGF)、セロトニンおよびフォン・ウィルブランド因子を含む複数のケモカインを放出する。これらの因子は、凝血塊形成を介して創傷を安定させるのに役立つ。これらの媒介物は、出血を制御し、傷害の範囲を制限するように作用する。血小板脱顆粒は、また、好中球に対する強力な化学誘引物質である補体カスケード、具体的にはC5aを活性化させる。
【0065】
炎症期が継続するに従って、より多くの免疫細胞が創傷部に移動する。創傷部に移動する第2の応答細胞、すなわち好中球は、細片除去(debris scavenging)、細菌の補体−媒介オプソニン化、および酸化バースト(oxidative burst)メカニズム(すなわち超酸化物および過酸化水素形成)を介する細菌破壊に関与する。好中球は、細菌を死滅させ、外来細片から創傷部を除染する。
【0066】
創傷部に存在する次の細胞は、白血球およびマクロファージ(単球)である。オーケストレータと呼ばれるマクロファージは、創傷治癒に不可欠である。多くの酵素およびサイトカインがマクロファージによって分泌される。これらは、創傷部を鮮創するコラゲナーゼ;線維芽細胞を刺激し(コラーゲンを生成し)、新脈管形成を促進するインターロイキンおよび腫瘍壊死因子(TNF);ならびにケラチノサイトを刺激する形質転換成長因子(TGF)を含む。このステップは、組織再構成のプロセス、すなわち増殖段階への移行をマークする。
【0067】
細胞増殖
創傷治癒の第2段階は、増殖期である。上皮形成、新脈管形成、顆粒化組織形成およびコラーゲン沈着は、創傷治癒の同化部分における主たる段階である。上皮形成は、創傷修復において早期に生じる。創傷部の縁において、表皮が直ちに肥厚し始める。辺縁の基底細胞は、フィブリン鎖に沿って創傷部を移動し始め、それらが互いに接触すると停止する(接触阻害)。傷害後最初の48時間以内に、創傷部全体が上皮形成される。上皮形成の層化が再確立される。この点における創傷の深部は、炎症細胞およびフィブリン鎖を含む。ほとんどでなくても多くの問題の創傷がより高齢の人口に生じるため、老化効果は、創傷治癒において重要である。例えば、より高齢の患者の細胞は、増殖しにくく、より短い寿命を有し、より高齢の患者の細胞は、サイトカインに対する応答が弱い。
【0068】
心臓疾患は、内膜平滑筋細胞肥厚が先行する、心臓に血液供給する血管の部分血管閉塞によって引き起こされ得る。内膜平滑筋細胞肥厚の基本的な原因は、血管平滑筋傷害および内皮層の完全性の破壊である。動脈傷害に続く内膜肥厚を3つの連続的ステップ、すなわち1)血管傷害に続く平滑筋細胞増殖の開始、2)平滑筋細胞の内膜への移動および3)マトリックスの沈着による内膜における平滑筋細胞のさらなる増殖、に分類することができる。内膜肥厚の病因の調査は、動脈傷害後に、血小板、内皮細胞、マクロファージおよび平滑筋細胞が、パラクリンおよびオートクリン成長因子(血小板由来成長因子、表皮成長因子、インシュリン様成長因子および形質転換成長因子)、ならびに平滑筋細胞の増殖および移動をもたらすサイトカインを放出することを示した。T細胞およびマクロファージは、新生内膜にも移動する。この事象のカスケードは、動脈傷害に限定されず、静脈および細動脈に対する傷害後にも生じる。
【0069】
肉芽腫性炎症
慢性炎症または肉芽腫性炎症は、血管傷害の治癒を通じてさらなる合併症を引き起こし得る。肉芽腫は、ミリメートルサイズ範囲の結節を形成する特定の型の慢性炎症細胞の凝集体である。肉芽腫は、集密的であり、より大きい領域を形成し得る。肉芽腫の必須成分は、通常はリンパ球の周囲域を含む、類上皮細胞と呼ばれる変性マクロファージ(modified macrophage)の集合体である。類上皮細胞は、上皮細胞に対するそれらの組織的類似性により伝統的にそのように呼ばれるが、実際は上皮細胞でない。それらは、すべてのマクロファージと同様に血液単球から誘導される。類上皮細胞は、他のマクロファージより食作用が弱く、分泌機能について修飾されているようである。それらの機能の全範囲は、まだ不明である。一般には、肉芽腫におけるマクロファージをさらに修飾して、多核巨細胞を形成する。これらは、数十個もの核を含むことができる巨大単一細胞を形成する核または細胞分裂を伴わない類上皮マクロファージの融合によって生じる。いくつかの場合において、核は、ラングハンス型巨細胞と呼ばれる細胞の周縁に配置され、他の場合において、核は、細胞質全体を通じて無作為に散在する(すなわち、組織における他の消化しにくい物質の存在に応答して形成される異物型巨細胞)。肉芽腫炎症の部分は、一般に壊死する。
【0070】
肉芽腫炎症の形成は、(細菌または他の源に由来する)消化しにくい異物の存在および/または傷害性物質に対する細胞媒介免疫反応(IV型過敏性反応)を必要とするようである。
【0071】
薬物溶出脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料:コーティングおよび独立型フィルム
本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えばコーティングおよび独立型フィルム)は、疎水性架橋脂肪酸誘導生体材料、および場合により、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料に含まれる1つまたは複数の治療薬を含む。加えて、本発明の予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングおよび独立型フィルム)は、本明細書に記載されるように生体吸収性である。治療薬は、コーティングに含まれる活性薬、および/または例えばコーティングから一旦放出されると活性になるプロドラッグであり得る。本発明の一実施形態において、薬物溶出予備硬化誘導生体材料は、架橋脂肪酸、例えばオメガ−3脂肪酸で構成される。架橋脂肪酸は、非ポリマーであり得る。オメガ−3脂肪酸の源は、天然に存在する油、例えば魚油であり得る。
【0072】
本発明の疎水性予備硬化誘導予備硬化生体材料コーティングおよび独立型フィルムを油成分から形成することができる。油成分は、油または油組成物のいずれかであり得る。油成分は、合成油、または魚油、タラ肝油、亜麻仁油、ブドウ種子油、もしくは所望の特性を有する他の油などの天然に存在する油であり得る。本発明の一実施形態は、オメガ−3脂肪酸の含有量が多いことから、一部に魚油を利用する。魚油は、癒着防止剤として働きをすることもできる。加えて、魚油は、抗炎症特性または非炎症特性も維持する。本発明は、魚油を油出発材料とする予備硬化誘導生体材料の形成に限定されない。しかし、以下の説明は、1つの例示的な実施形態として魚油の使用に関する。他の天然に存在する油を、本明細書に記載の本発明に従って利用することができる。
【0073】
本明細書に利用されているように、魚油脂肪酸という用語は、オメガ−3脂肪酸、油脂肪酸、遊離脂肪酸、モノグリセリド、ジグリセリドまたはトリグリセリド、脂肪酸のエステル、あるいはそれらの組合せを含むが、それらに限定されないことに留意されたい。魚油脂肪酸はアラキジン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸またはそれらの誘導体、類似体および薬学的に許容し得る塩の1種または複数種を含む。
【0074】
また、本明細書に利用されているように、遊離脂肪酸という用語は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレン酸、ステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アルファ−リノレン酸、ガンマ−リノレン酸、ベヘン酸、エルシン酸、リグノセリン酸、それらの類似体および薬学的に許容し得る塩を含むが、それらに限定されない。魚油を含む天然油を上記のように硬化させて、コーティングを生成する疎水性架橋脂肪酸誘導予備硬化生体材料を形成する。
【0075】
本発明は、抗炎症特性、非炎症(non−inflammatory)特性および癒着防止特性を発揮することができる生体吸収性医療デバイスコーティングおよび独立型フィルム、ならびに対応する製造方法に関する。独立型フィルムは、一般に、魚油などの天然油で形成される。加えて、油組成物は、薬物または他の生体活性薬などの治療薬成分を含むことができる。独立型フィルムは、短時間または長時間適用に向けて患者に移植可能である。本明細書に実装されるように、独立型フィルムは、少なくとも一部に脂肪酸化合物から誘導される脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料であり、ここで、独立型フィルムは、本発明の方法に従って調製される。本発明のさらなる態様によれば、独立型フィルムは、脂肪酸化合物の一部を形成するビタミンE化合物をさらに含むことができる。
【0076】
本発明のさらなる態様によれば、独立型フィルムは、治療薬をさらに含む。治療薬は、酸化防止剤、抗炎症剤、抗凝血剤、脂質代謝を変化させる薬物、抗増殖薬、抗腫瘍薬、組織成長刺激薬、機能性タンパク質/因子送達薬、抗感染薬、造影剤、麻酔薬、化学療法薬、組織吸収エンハンサー、癒着防止剤、殺菌薬、鎮痛薬、プロドラッグおよび防腐薬を含むことができる。
【0077】
本発明のさらなる態様によれば、治療薬を、フィルムの形成前に脂肪酸化合物と組合わせて、治療薬をフィルム全体に分散させる。代替的に、治療薬をコーティングの形でフィルムに塗布する。本発明のさらなる態様によれば、独立型フィルムは生体吸収性である。独立型フィルムは、さらに、癒着防止特性を維持することができる。
【0078】
本発明のさらに別の実施形態によれば、独立型フィルムを形成する方法が導入される。上記方法は、脂肪酸化合物を液体の形で供給する工程と、脂肪酸化合物を基材(substrate)に塗布する工程とを含む。上記方法は、また、脂肪酸化合物を硬化させて、独立型フィルムを形成する工程を含む。本発明の一態様によれば、基材は、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む。本発明のさらなる態様によれば、硬化は、UV光をあてることおよび熱を加えることを含む硬化方法の群から選択される少なくとも1つの硬化方法を使用することを含む。UV光を照射して、さらなる硬化の前に液体の形の脂肪酸化合物の上面に皮を形成することにより脂肪酸化合物を固めることもできる。本発明のさらなる態様によれば、基材は、独立型フィルムを成形するための鋳型として使用される窪みを有する。代替的に、上記方法は、フィルムを望ましい形状に裁断する工程をさらに含むことができる。
【0079】
本発明の独立型フィルムをバリヤとして使用して組織を分離させて癒着を避けることができる。癒着防止のための用途例は、腹部外科手術、脊髄修復、整形外科手術、腱および靱帯修復、婦人科を基材としたおよび骨盤手術、ならびに神経修復用途を含む。独立型フィルムを外創傷部位一面に貼付するか、または組織もしくは器官のまわりに巻きつけて、癒着形成を制限することができる。これらの癒着防止用途に使用される独立型フィルムへの治療薬の添加を、疼痛軽減または感染最小化などのさらなる有益な効果のために利用することができる。独立型フィルムの他の外科用途は、硬膜パッチ、バットレス材料、内部創傷医療(移植片吻合部など)および内部薬物送達を基材としたとして独立型フィルムを使用することを含む。独立型フィルムを経皮創傷治癒の用途および非外科分野に使用することもできる。独立型フィルムを、火傷または皮膚潰瘍に対する治療など、外部創傷医療に使用することができる。独立型フィルムを清浄な不透過性、非癒着性、非炎症性、抗炎症性包帯として治療薬を含めずに使用することができ、あるいは独立型フィルムをさらなる有益な効果のために1つまたは複数の治療薬とともに使用することができる。独立型フィルムに1つまたは複数の治療薬を充填または塗布すると、経皮薬物送達パッチとして使用することもできる。
【0080】

前記油に関して、脂肪酸の不飽和度が高くなるほど、脂肪の融点が低下し、炭化水素鎖が長くなるほど、脂肪の融点が高くなることが一般的に公知である。したがって、多価不飽和脂肪はより低い融点を有し、飽和脂肪はより高い融点を有する。より低い融点を有する脂肪は、室温で油であることが多い。より高い融点を有する脂肪は、室温で蝋または固体であることが多い。したがって、室温で液体の物理的状態を有する脂肪は油である。概して、多価不飽和脂肪は、室温で液体油であり、飽和脂肪は、室温で蝋または固体である。
【0081】
多価不飽和脂肪は食物から体によって誘導される4つの基本型の脂肪の1つである。他の脂肪は、飽和脂肪、ならびに一不飽和脂肪およびコレステロールを含む。多価不飽和脂肪はさらにオメガ−3お脂肪酸よびオメガ−6脂肪酸で構成することができる。炭素のその第1の二重結合の位置に従って不飽和脂肪酸を命名する慣習に基づき、分子のメチル末端からの第3の炭素原子におけるそれらの第1の二重結合を有する脂肪酸は、オメガ−3脂肪酸と称する。同様に、第6の炭素原子における第1の二重結合は、オメガ−6脂肪酸と呼ばれる。一不飽和および多価不飽和オメガ脂肪酸の両方が存在し得る。
【0082】
オメガ−3およびオメガ−6脂肪酸は、また、人体が自分自身でそれらを作り出すことができないという事実にもかかわらず、それらが良好な健康を維持するのに重要であるため、必須脂肪酸として公知である。そのように、オメガ−3およびオメガ−6脂肪酸を食物などの外部源から得なければならない。オメガ−3脂肪酸を、さらに、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(docosahexanoic acid)(DHA)およびアルファ−リノレン酸(ALA)を含むものとして特徴づけることができる。EPAおよびDHAは両方とも、人体内で抗炎症効果および創傷治癒効果を有することが公知である。
【0083】
本明細書に利用されているように、「生体吸収性(bio−absorbable)」という用語は、一般に、患者の体の組織に浸透することが可能であるという特性または特徴を有することを指す。本発明の一部の実施形態において、生体吸収は、親油性メカニズムを介して生じる、生体吸収性物質は、体組織の細胞のリン脂質二重層において可溶でり得るため、生体吸収性物質が細胞内に浸透するか方法に影響を及ぼし得る。
【0084】
生体吸収性物質は、生分解性物質と異なることに留意されたい。生分解性は、一般には、生物学的物質によって分解することが可能であるか、または微生物もしくは生物学的プロセスによって分解することが可能であるものとして定義される。生分解性物質は、親物質、または分解中に形成された物質のいずれかにより炎症応答を引き起こすことができ、それらは、組織に吸収されてもされなくてもよい。本発明の材料は、生体適合性を有し、非炎症性成分に加水分解し、続いて周囲の組織に吸収されるため、「生体材料」と称する。
【0085】
薬物送達
本発明の予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングおよび独立型フィルム)は、治療を必要とする患者の選択された標的の組織部位(targeted tissue location)にコーティングを保持する独立型フィルム、医療デバイスまたは装置を使用して、1つまたは複数の治療薬を目標部分に局所的に送達する。治療薬は、生体材料から標的の組織部位に放出される。治療薬の局所送達は、より広い全身副作用をもたらすことなく、より高濃度およびより高量の治療薬を標的の組織部位に直接送達することを可能にする。局所送達により、標的の組織部位からのがれた治療薬は、患者の体の他の部分に移動するに従って希釈するため、全身副作用を実質的に低減するか、またはなくす。
【0086】
脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングおよび独立型フィルム)を使用する標的の局所治療薬送達を2つの範疇、すなわち短期および長期にさらに分類することができる。治療薬の短期送達は、一般には、数秒または数分以内から数日または数週間まで行われる。治療薬の長期送達は、一般には数週間以内から数カ月まで行われる。
【0087】
「持続放出」という語句は、本明細書に使用されているように、活性薬の長期送達をもたらす生体活性薬の放出を指す。
【0088】
「制御放出」という語句は、本明細書に使用されているように、それが放出される元になる医療デバイスに生体活性薬が形成された際の所望および予定された数週間または数カ月の期間にわたる実質的に予測可能な形態の生体活性薬の放出を指す。制御放出は、移植後の規定量(provision)の初期バースト放出、およびその後の前記期間にわたる実質的に予測可能な放出を含む。
【0089】
薬物放出メカニズム
ステントの分野などのフィルムおよび薬物送達プラットフォームを生成する先の試みは、主として、高分子量合成ポリマーを基材とした材料を利用して、治療薬の放出をより良好に制御する能力を提供する。基本的に、プラットフォームにおけるポリマーは、患者体内の部位に一旦移植されると、所定の速度で薬物または薬剤を放出する。どの程度の量の治療薬が損傷組織に最も有益であるかにかかわらず、ポリマーは、ポリマーの特性、例えば、生体安定性ポリマーにおける拡散および生分解性ポリマー材料におけるバルク浸食に基づいて治療薬を放出する。よって、治療薬の効果は、コーティングを有する医療デバイスと接触する組織の表面において実質的に局所的である。場合によっては、例えば、治療されている組織部位に対して押しつけられたステントストラットまたはメッシュの特定の部位に向けてさらに局在化される。炎症応答を誘発するポリマーに隣接する組織に存在する高濃度の治療薬は、局在化した毒性作用の可能性をもたらし得る。
【0090】
本発明の様々な実施形態において、本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングおよび独立型フィルム)は、浸食に基づく放出メカニズムに加えて、溶解メカニズム、例えば、コーティングに接触する媒体(例えば組織)への、コーティングの可溶性成分に含まれる治療薬の溶解によって1つまたは複数の治療薬を放出する。その結果、薬物放出メカニズムは、周囲媒体中での治療薬の溶解度に基づくことができる。例えば、疎水性コーティングと周囲媒体との間の界面付近の治療薬は、治療薬を油を基材としたコーティングから追い出して周囲媒体中で溶液にすることができる化学ポテンシャル勾配を経験し得る。よって、様々な実施形態において、治療薬の放出は、コーティングの分解またはバルク浸食によって速度制限されない。
【0091】
様々な実施形態において、本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料の分解生成物は、それら自体が溶解メカニズムを介して治療薬の1種または複数種を放出することができる非炎症性副生成物、例えば遊離脂肪酸およびグリセリドである。
【0092】
様々な実施形態において、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料は、制御された表面浸食メカニズムに従って分解することによって、1つまたは複数の治療薬を、溶解メカニズムを介して周囲媒体、例えば組織に放出する。
【0093】
治療薬
本明細書に利用されているように、「治療薬(複数可)」という語句は、入手可能ないくつかの異なる薬物または薬剤、ならびに本発明の脂肪酸誘導予備硬化生体材料(例えば、コーティングおよび独立型フィルム)との使用に有益であり得る将来的な薬剤を指す。治療薬成分は、酸化防止剤、抗炎症薬、抗凝血薬、脂質代謝を変化させる薬物、抗増殖薬、抗腫瘍薬、組織成長刺激薬、機能性タンパク質/因子送達薬、抗感染薬、抗造影剤、麻酔薬、治療薬、組織吸収エンハンサー、癒着防止剤、殺菌薬、防腐薬、鎮痛薬、それらのプロドラッグ、および以下の表1に示される治療薬などの任意のさらなる所望の治療薬を含むいくつかの異なる形をとることができる。
【0094】
【表1−1】

【0095】
【表1−2】

【0096】
【表1−3】

抗再狭窄分野において有用な治療薬の具体例としては、セレバスタチン、シロスタゾール、フルバスタチン、ロバスタチン、パクリタキセル、プラバスタチン、ラパマイシン、(例えば、米国特許第7,160,867号に記載の)ラパマイシン炭水化物誘導体、(例えば、米国特許第6,200,985号に記載の)ラパマイシン誘導体、エベロリムス、セコ−ラパマイシン、セコ−エベロリムスおよびシンバスタチンが挙げられる。全身投与については、治療薬が経口または静脈内投与されて、患者により全身的に処理される。しかし、治療薬の全身送達には欠点があり、その1つは、治療薬が患者の体のすべての部分に移動し、治療薬による治療の標的でない領域に望ましくない作用を有し得ることである。また、高投与量の治療薬は、非標的領域において望ましくない作用を増大するだけである。したがって、全身投与する場合は、患者における具体的な標的部位への適用をもたらす治療薬の量を低減して、より高投与量の治療薬に起因する毒性による合併症を軽減する必要があり得る。
【0097】
「mTOR標的化合物」という用語は、mTORを直接または間接的にモジュレートする任意の化合物を指す。「mTOR標的化合物」の例は、FKBP12に結合して、例えば、ホスホイノスチド(PI)−3キナーゼ、すなわちmTORを阻害することになる複合体(complex)を形成する化合物を指す。様々な実施形態において、mTOR標的化合物は、mTORを阻害する。好適なmTOR標的化合物としては、例えば、ラパマイシンおよびその誘導体、類似体、プロドラッグ、エステルおよび薬学的に許容し得る塩が挙げられる。
【0098】
カルシニューリンは、セリン/トレオニンホスホ−タンパク質ホスファターゼであり、触媒(カルシニューリンA)および調節(カルシニューリンB)サブユニット(それぞれ約60および約18kDa)で構成される。哺乳類において、その触媒サブユニットについての3つの異なる遺伝子(A−アルファ、A−ベータ、A−ガンマ)が特徴づけられており、それぞれがさらなるバリアントを生成するための選択的スプライシングを生じ得る。すべての3つの遺伝子に対するmRNAがたいていの組織に発現されるようであるが、2つのイソ型(A−アルファおよびA−ベータ)が脳において最も支配的である。
【0099】
カルシニューリンシグナル伝達経路は、免疫応答、ならびにニューロン細胞におけるグルタメート興奮毒性によるアポトーシス誘発に関与する。カルシニューリンの低酵素レベルは、アルツハイマー病に関連していた。心臓または脳カルシニューリンは、低酸素または虚血後のストレス応答にも主要な役割を果たす。
【0100】
カルシニューリンシグナル経路を遮断することが可能な物質は、本発明の好適な治療薬であり得る。当該治療薬の例としては、FK506、タクロリムス、シクロスポリンおよびそれらの誘導体、類似体、エステル、プロドラッグ、薬学的に許容し得る塩、ならびにそれらまたはそれらの代謝生成物が同じ作用メカニズムを有するそれらの結合体が挙げられるが、それらに限定されない。シクロスポリン誘導体のさらなる例としては、完全もしくは半合成手段、または改良型培養技術によって調製された天然に存在するおよび非天然シクロスポリンが挙げられるが、それらに限定されない。シクロスポリンを含むクラスは、例えば、天然に存在するシクロスポリンAからZ、ならびに様々な非天然シクロスポリン誘導体、人工または合成シクロスポリン誘導体を含む。人工または合成シクロスポリンは、ジヒドロシクロスポリン、誘導体化シクロスポリン、ならびに改変体アミノ酸がペプチド配列内の特定の位置に組み込まれたシクロスポリン、例えばジヒドロ−シクロスポリンDを含むことができる。
【0101】
様々な実施形態において、治療薬は、mTOR標的化合物およびカルシニューリン阻害薬の1種または複数種を含む。様々な実施形態において、mTOR標的化合物は、ラパマイシン、またはその誘導体、類似体、エステル、プロドラッグ、薬学的に許容し得る塩、あるいはそれらまたはそれらの代謝生成物が同じ作用メカニズムを有するそれらの結合体である。様々な実施形態において、カルシニューリン阻害薬は、タクロリムス、またはその誘導体、類似体、エステル、プロドラッグ、薬学的に許容し得る塩、あるいはそれらまたはそれらの代謝生成物が同じ作用メカニズムを有するそれらの結合体の化合物、あるいはシクロスポリン、またはその誘導体、類似体、エステル、プロドラッグ、薬学的に許容し得る塩、あるいはそれらまたはそれらの代謝生成物が同じ作用メカニズムを有するそれらの結合体の化合物である。
【0102】
本発明の脂肪酸誘導予備硬化生体材料とともに使用できる治療薬は、抗ウィルス薬、抗生物質、抗真菌薬および抗寄生虫薬を含む抗微生物薬を含むこともできる。本発明の脂肪酸誘導予備硬化生体材料とともに使用できる具体的な抗微生物薬は、ペニシリンG、エファロチン、アンピシリン、アモキシシリン、オウグメンチン、アズトレオナム、イミペネム、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、バンコマイシン、クリンダマイシン、エリトロマイシン、アジスロマイシン、ポリミキシン、バシトラシン、アンホテリシン、ナイスタチン、リファンピシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、クロラムフェニコール、ナルジクス酸(nalidixic acid)、シプロフロキサシン、スルファニルアミド、ガントリシン、トリメトプリム、イソニアジド(INH)、パラ−アミノサリチル酸(PAS)およびゲンタマイシンを含む。
【0103】
治療有効量および投薬量
治療有効量は、症候の軽減、例えば、関連する医学的状態の治療、治癒、予防または改善、あるいはそのような状態の治療、治癒、予防または改善の速度の向上をもたらすのに十分な化合物の量を指す。単独で投与される個々の活性成分に適用される場合は、治療有効量は、その単独の成分を指す。組合せに適用される場合は、治療有効量は、組合せ投与が連続的であるか同時的であるかにかかわらず、治療効果をもたらす活性成分の組合わせた量を指す。製剤が2つ以上の治療薬を含む様々な実施形態において、そのような製剤を、適応A(indication A)に対する治療有効量の化合物Aおよび適応Bに対する治療有効量の化合物Bと記述することができ、そのような記述は、適応Aに対する治療効果を有するが必ずしも適応Bには有さないAの量、および適応Bに対する治療効果を有するが必ずしも適応Aには有さないBの量を指す。
【0104】
本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングおよび独立型フィルム)における活性成分の実際の投薬量を、許容することができない毒性をもたらすことなく所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変更することができる。選択される投薬量は、採用される特定の治療薬(薬物)、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、薬物作用のメカニズム、投与時間、コーティングの薬物放出プロファイル、採用されている特定の化合物の排泄速度、治療継続時間、採用される特定の化合物と併用される他の薬物、化合物および/または材料、ならびに医学技術分野で公知の同様の要因に依存することになる。例えば、本発明は、部分架橋脂肪酸および治療薬を含む脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料であって、治療薬が、生体材料組成物の少なくとも30重量%、例えば少なくとも40重量%、例えば少なくとも50重量%、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%を含む脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を提供する。治療薬に加えて、生体材料は、治療薬の他にビタミンEを含むことができる。
【0105】
他の薬剤
本発明の予備硬化生体材料(例えば、コーティングおよび独立型フィルム)は、治療薬に加えて、薬学的に許容し得る担体、賦形剤、界面活性剤、結合剤、助剤および/または安定剤(防腐剤、緩衝剤および酸化防止剤を含む)の一種または複数種を含むが、それらに限定されない1つまたは複数の他の化学物質および成分を含むことができる。他の薬剤は、1つまたは複数の機能を発揮することができ、例えば、助剤は安定剤として機能することもできる。
【0106】
様々な実施形態において、本発明のコーティングおよび独立型フィルムは、遊離ラジカル捕捉剤および吸収エンハンサーの一種または複数種を含む。様々な実施形態において、コーティングおよび独立型フィルムは、ビタミンEを含む。
【0107】
本発明を説明するために本明細書に利用されているように、ビタミンEという用語およびアルファ−トコフェロールという用語は、それらが互換性を有し、一方の使用が両者の暗示的言及を含むように同一または実質的に類似の物質を指すことを意図する。さらに、ビタミンEという用語に関連して、アルファ−トコフェロール、ベータ−トコフェロール、デルタ−トコフェロール、ガンマ−トコフェロール、アルファ−トコトリエノール、ベータ−トコトリエノール、デルタ−トコトリエノール、ガンマ−トコトリエノール、酢酸アルファ−トコフェロール、酢酸ベータ−トコフェロール、酢酸ガンマ−トコフェロール、酢酸デルタ−トコフェロール、酢酸アルファ−トコトリエノール、酢酸ベータ−トコトリエノール、酢酸デルタ−トコトリエノール、酢酸ガンマ−トコトリエノール、コハク酸アルファ−トコフェロール、コハク酸ベータ−トコフェロール、コハク酸ガンマ−トコフェロール、コハク酸デルタ−トコフェロール、コハク酸アルファ−トコトリエノール、コハク酸ベータ−トコトリエノール、コハク酸デルタ−トコトリエノール、コハク酸ガンマ−トコトリエノール、混合トコフェロール、ビタミンE TPGS、それらの誘導体、類似体および薬学的に許容し得る塩の一種または複数種が含まれるがそれらに限定されないそのような変形物が含まれる。
【0108】
組織をあまりにも迅速に移動する化合物は、目的の領域に十分に高濃度の用量を供給する上で効果的でない可能性がある。逆に、組織において移動しない化合物は、目的の領域に到達し得ない。脂肪酸などの細胞の取り込みエンハンサーおよびアルファ−トコフェロールなどの細胞の取り込み阻害薬を単独で、または組み合わせて使用して、所定の化合物の所定の領域または部位への効果的な輸送を提供することができる。脂肪酸およびアルファ−トコフェロールの両方を本明細書に記載の本発明の脂肪酸誘導予備硬化生体材料(例えば、コーティングおよび独立型フィルム)に含めることができる。よって、コーティングおよびそれに混合されたあらゆる治療薬の細胞の取り込み特性を制御するように、脂肪酸誘導予備硬化生体材料(例えば、コーティングおよび独立型フィルム)に寄与するために異なる量および割合で脂肪酸とアルファ−トコフェロールを組合わせることができる。
【0109】
例えば、コーティングにおけるアルファ−トコフェロールの量を変更することができる。アルファ−トコフェロールは、ヒドロペルオキシド形成を低下させることによって魚油における自己酸化を緩慢にすることが公知であり、硬化した脂肪酸誘導予備硬化生体材料における架橋の量の低下をもたらす。加えて、アルファ−トコフェロールを使用して、コーティングを形成する油中での薬物の溶解度を高めることができる。様々な実施形態において、アルファ−トコフェロールは、硬化中に治療薬を実際に保護して、硬化後のコーティング中の薬物充填量の増加をもたらすことができる。なおその上、特定の治療薬では、コーティング中のアルファ−トコフェロールの増加は、コーティング中のアルファ−トコフェロール成分への薬物の溶解度の向上により、薬物放出を緩慢にするおよび伸ばすように作用することができる。これは、薬物の吸収を緩慢にして、長時間にわたって持続させる点において、アルファ−トコフェロールの細胞の取り込み阻害薬の機能性を反映している。
【0110】
硬化、ならびに予備硬化物および脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料の形成
(例えば、米国特許出願公開第2008/0118550号、同第2007/0202149号、同第2007/0071798号、同第2006/0110457号、2006/0078586号、同第2006/0067983号、同第2006/0067976号、同第2006/0067975号に記載されているように)油出発材料を硬化させて予備硬化物を形成し、次いで(1つまたは複数の治療薬を場合により含む)予備硬化物を硬化させて、本発明による薬物放出および送達コーティングまたは独立型フィルムのための脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を製造するためのいくつかの方法が利用可能である。出発材料を硬化させて予備硬化物を、次いで脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を製造するための好適な方法としては、(例えば、オーブン、広帯域赤外線(IR)光源、干渉性IR光源(例えばレーザ)およびそれらの組合せを採用する)加熱および紫外線(UV)照射が挙げられるが、それに限定されない。出発材料を自己酸化により架橋することができる(例えば酸化性架橋)。
【0111】
本明細書に記載の様々な実施形態によれば、本発明の薬物放出コーティングは、飽和および不飽和脂肪酸化合物(例えば、遊離脂肪酸、脂肪酸エステル、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、金属塩等)から得ることができる予備硬化誘導生体材料で形成される。好ましくは、本明細書に記載の脂肪酸の源は、様々な油(例えば魚油)においてトリグリセリドの形で容易に入手可能なものなどの飽和および不飽和脂肪酸である。予備硬化誘導生体材料を形成する1つの方法は、油の自己酸化を介して実施される。不飽和脂肪酸を含む液体油が加熱されると、酸素の油への吸収により自己酸化が生じて、油における不飽和(C=C)部の量に依存する量でヒドロペルオキシドを生成する。しかし、(C=C)結合は、この初期反応で消費されない。ヒドロペルオキシドの形成と並行して、二重結合のコンジュゲーションの他に、シスからトランスへの(C=C)二重結合の異性化が進行する。油の継続的な加熱は、架橋の形成を介して、かつヒドロペルオキシドのさらなる反応、ならびにそれらを、コーティング内に残留することができ、かつ/またはそのプロセスの間に揮発するアルデヒド、ケトン、アルコール、脂肪酸、エステル、ラクトン、エーテルおよび炭化水素を含む低分子量の二次酸化副生成物に変換するC=C二重結合の開裂によってコーティングを固体化させる。
【0112】
油酸化中に形成された架橋の種類および量を選択された条件(コーティングの厚さ、温度、金属組成物等)に応じて調整することができる。例えば、油の加熱は、過酸化物(C−O−O−C)、エーテル(C−O−C)と炭化水素(C−C)架橋(bridge)の組合せを使用して魚油不飽和鎖の間の架橋を可能にする(例えば、F. D. Gunstone、「Fatty Acid and Lipid Chemistry」、1999年参照)。しかし、より低温(すなわち150℃未満)で加熱すると、主として過酸化物架橋が形成され、より高い温度(すなわち150℃を超える温度)で加熱すると、過酸化物の熱分解が生じ、C=Cおよびエーテル架橋が支配的になる(F. D. Gunstone、1999年)。様々な架橋メカニズムおよびスキームの概略図を図1〜2に示す。
【0113】
熱硬化方法に加えて、油の酸化を光によって誘導することもできる(例えば光酸素付加)。光酸素付加は、C=C炭素原子に限定され、(熱で開始される硬化とともに生じる)硬化の間のシスからトランスC=C異性体への変換をもたらす。しかし、UVを使用する光酸素付加は、約1000〜1500倍速い範囲で熱硬化による自己酸化より比較的高速の反応である。より高速の反応は、特に、本発明の魚油に基づく実施形態に見いだされるEPAおよびDHAなどのメチレン中断(methylene interrupted)多価不飽和脂肪酸に当てはまる。
【0114】
熱硬化と比較した場合のUV硬化の重要な側面は、両硬化方法によって得られた副生成物が類似しているが、量または化学構造が必ずしも同一でないことである。この1つの理由は、より可能性の高いC=C部にヒドロペルオキシドを生成する光酸素付加の能力によるものである。
【0115】
UV硬化に起因するものなどの光酸素付加は、内部ヒドロペルオキシドを生成するその能力が向上しているため、魚油炭化水素鎖の間の過酸化物架橋にも関連する比較的多量の環式副生成物を形成することも可能である。例えば、リノレネートの光酸素付加は、6つの異なる種類のヒドロペルオキシドを形成させるが、自己酸化は4種類のみをもたらす。光酸素付加を使用して生成されたより多量のヒドロペルオキシドは、熱硬化による自己酸化と比較して、類似しているが、わずかに異なる構造および量の二次副生成物を形成させる。具体的には、これらの副生成物は、アルデヒド、ケトン、アルコール、脂肪酸、エステル、ラクトン、エーテルおよび炭化水素である。
【0116】
出発油の油硬化条件および脂肪酸組成に応じて、脂肪酸誘導生体材料(すなわち、予備硬化および予備硬化誘導)を、不飽和脂肪酸鎖の二重結合を酸化しながら、トリグリセリドエステル官能基を優先的に保持するように油を硬化させることによって製造することができる。不飽和脂肪酸鎖の酸化は、継続的な硬化により、アルデヒド、ケトン、アルコール、脂肪酸、エステル、ラクトン、エーテルおよび炭化水素に変換されるヒドロペルオキシドを形成させる。酸化油を継続的に加熱すると、副生成物が揮発し、エステル架橋の形成に加えて、コーティング粘度が上昇する。エステルとラクトンの架橋の形成は、酸化プロセスから形成されたコーティングにおけるヒドロキシルとカルボキシル官能成分(すなわちグリセリドと脂肪酸)との間に異なる種類のメカニズム(すなわち、F. D. Gunstone、1999年に記載されている、エステル化、アルコール分解、酸分解、エステル交換)で生じ得る。架橋反応は、エステル、無水物、脂肪族過酸化物、およびラクトンなどの様々なタイプのエステル結合を形成できる。図3〜4は、それぞれ油誘導生体材料の形成のメカニズムおよび反応化学の概要を示す。図3に示されるように、油の酸化後、すなわち予備硬化物の形成後に、治療薬を場合により添加することができる。治療薬の他に、薬剤および予備硬化油をさらなる酸化から保護するが、油の脂肪酸および/またはグリセリド成分のさらなる架橋を阻害しないビタミンEを添加することもできる。図5は、例示の目的で、油反応スキームからエステルを形成するための異なる方法の概略を示すが、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0117】
本発明の予備硬化誘導生体材料コーティングおよび独立型フィルムを油成分から形成することができる。「油成分」という用語は、本明細書では「油含有出発材料」と称する。「油含有出発材料」は、天然であっても、合成源から誘導されてもよい。好ましくは、「油含有出発材料」は、不飽和脂肪酸を含む。油成分は、油または油組成物であり得る。油成分は、魚油、亜麻仁油、ブドウ種子油などの天然に存在する油、合成油、または所望の特性を有する他の油であり得る。本発明の1つの例示的な実施形態は、一部に、本明細書で考察するように損傷組織に対する治癒支援を提供できる高含有量のオメガ−3脂肪酸を有するという理由から魚油を利用する。魚油は、癒着防止薬として機能することもできる。加えて、魚油は、抗炎症特性または非炎症特性をも維持する。本発明は、魚油を天然に存在する油とする脂肪酸誘導予備硬化生体材料の形成に限定されない。しかし、以下の説明は、1つの例示的な実施形態として魚油の使用に言及する。他の天然に存在する油または合成油を、本明細書に記載されるように、本発明に従って利用することができる。
【0118】
脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料のコーティング加水分解および生体吸収化学反応
エステル、ラクトンおよび無水物官能基を有する生分解性および生体吸収性移植可能材料は、典型的には、化学加水分解メカニズムおよび/または酵素加水分解メカニズムによって分解される(K. Parkら、「Biodegradable Hydrogels for Drug Delivery」、1993年;J. M. Andersen, 「Perspectives on the In−Vivo Responses of Biodegradable Polymers」、Biomedical Applications of Synthetic Biodegradable Polymers、Jeffrey O. Hollinger編、1995年、223〜233頁)。材料に存在する官能基が水によって開裂されると、予備硬化誘導生体材料の化学加水分解が生じる。塩基性条件下でのトリグリセリドの化学加水分解の例が図6に示されている。酵素加水分解は、特定の酵素との反応によって引き起こされる予備硬化誘導生体材料における官能基の開裂である(すなわち、トリグリセリドが、次に細胞膜を横切って輸送され得る遊離脂肪酸を生成するリパーゼ(酵素)によって分解される)。生分解性および/または生分解性硬化誘導生体材料が加水分解するのに要する時間の長さは、材料の架橋密度、厚さ、コーティングの水和能力、予備硬化誘導生体材料の結晶性、および体によって加水分解生成物を代謝する能力などのいくつかの要因に依存する(K. Parkら、1993年およびJ. M. Andersen、1995年)。
【0119】
生体吸収性物質は、生分解性物質とは異なる。生分解性は、一般的に、生体物質(biological agent)によって分解することが可能である、または微生物もしくは生物学的プロセスによって分解することが可能であると定義される。生分解性物質は、親物質または分解中に形成される物質のいずれかにより炎症応答を引き起こすことができ、それらは、組織によって吸収されてもされなくてもよい。いくつかの生分解性物質は、分解についてのバルク浸食メカニズムに限定される。例えば、広く使用される生分解性ポリマー、PLGA(ポリ(乳酸−共−グリコール酸))は、インビボで化学加水分解をうけ、2つのアルファ−ヒドロキシ酸、具体的にはグリコール酸および乳酸を形成する。グリコール酸および乳酸は、体の様々な代謝経路の副生成物であるが、先の医学的移植および局所薬部物送達用途において、これらの生成物の局所濃度は、炎症および損傷を局所組織にもたらし得る酸性環境を生成させることが既に実証された(S. Dumitriu、「Polymeric Biomaterials」、2002年)。臨床的には、これは、再狭窄などの損なわれた臨床転帰(D. E. DrachmanおよびD. I. Simon、Current Atherosclerosis Reports、2005年、第7巻、44〜49頁; S. E. Goldblumら、Infection and Immunity、1989年、第57巻、第4号、1218〜1226頁)および腹部ヘルニア修復における後期ステント血栓形成または癒着形成を招き得る冠状動脈ステント使用における損なわれた治癒(Y. C. Cheongら、Human Reproduction Update、2001年;第7巻、第6号:556〜566頁)をもたらし得る。したがって、理想的な予備硬化生体材料は、移植すると優れた生体適合性を実証する必要があるだけでなく、その加水分解副生成物が局所組織によって吸収可能でありながら、その移植の寿命の間に生体適合性を維持する必要がある。
【0120】
独立型フィルム、医療デバイス用コーティングとして使用されるか、または薬物送達用途に使用される予備硬化誘導生体材料の生体吸収性の特徴は、生体材料を体組織の細胞に長時間にわたって吸収させる。様々な実施形態において、コーティングまたはコーティングのインビボ変換副生成物において、炎症応答を誘導する物質が実質的に存在しない。例えば、コーティングは、インビボで非炎症性成分に変換する。例えば、様々な実施形態において、本発明のコーティングは、吸収に際しておよび加水分解に際して、測定可能な量の乳酸およびグリコール酸分解生成物を生成しない。本明細書に記載の予備硬化誘導生体材料の化学は、細胞膜を横断して輸送され得る脂肪酸およびグリセリド成分を放出させる化学的手段および/または酵素的手段のいずれかによってインビボで加水分解できる脂肪酸およびグリセリド成分から主としてなる。続いて、予備硬化誘導生体材料から溶出した脂肪酸およびグリセリド成分は、細胞によって直接代謝される(すなわち、それらは生体吸収性である)。本発明のコーティングおよび独立型フィルムの生体吸収性の特徴は、コーティングを長時間にわたって吸収させて、基底送達(underlying delivery)のみをもたらすかまあるいは生体適合性である他の医療デバイス構造を残す。本発明の好適な実施形態においては、生体吸収性コーティングまたはその加水分解による分解生成物に対する異物炎症応答が実質的に存在しない。
【0121】
脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料の生体適合性およびインビボ性能
本明細書に記載される予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)を製造する方法(process)は、油の酸化に関する従来の科学報告書に鑑みて、いくつかの予想外の化学的プロセスをもたらす(J. Duboisら、JAOCS、1996年、第73巻、第6号、787〜794頁、H. Ohkawaら、Analytical Biochemistry、1979年、第95巻、351〜358頁;H. H. Draper、2000年、第29巻、第11号、1071〜1077頁)。油酸化は、生体適合性がないと考えられるヒドロペルオキシドおよびアルファ−ベータ不飽和アルデヒドなどの反応性副生成物を形成するため、油硬化法にとって従来よりの懸念事項であった(H. C. Yeoら、Methods in Enzymology、1999年、第300巻、70〜78頁;S−S. Kimら、Lipids、1999年、第34巻、第5号、489〜496頁)。しかし、油および脂肪の脂肪酸の酸化は、普通であり、インビボの生化学的プロセスの制御に重要である。例えば、炎症の促進または軽減などの特定の生化学的経路の調節が、異なる脂質酸化生成物によって制御される(V. N. Bochkov and N. Leitinger、J. Mol. Med.、2003年;第81巻、613〜626頁)。また、オメガ−3脂肪酸は、人間の健康に重要であることが公知であり、特にEPAおよびDHAは、インビボで抗炎症特性を有することが公知である。しかし、EPAおよびDHAは、それ自体が抗炎症性でないが、それらが生化学的に変換される酸化性副生成物はインビボで抗炎症硬化をもたらす(V. N. BochkovおよびN. Leitinger、2003年;L. J. Roberts IIら、The Journal of Biological Chemistry、1998年; 第273号、第22号、13605〜13612頁)。したがって、生体適合性ではない特定の油酸化生成物が存在するが、インビボで正の生化学特性を有するいくつかの他の生成物も存在する(V. N. BochkovおよびN. Leitinger、2003年;F. M. SacksおよびH. Campos. J Clin Endocrinol Metab、2006;第91巻、第2号、398〜400頁;A. Mishraら、Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2004年;1621〜1627頁)。したがって、適切なプロセス条件を選択することにより、インビボで好ましい生物学的性能を有することになる最終的な化学的プロファイルを有する油酸化の化学反応を使用して(例えば魚油から)脂肪酸誘導架橋疎水性の(fatty acid−derived cross−linked hydrophobic)脂肪酸誘導予備硬化生体材料を生成および制御することができる。
【0122】
本明細書に記載されている予備硬化誘導生体材料を製造する方法は、生体適合性を有する最終的な化学的プロファイルをもたらし、癒着形成を最小限に抑え、組織分離遮断物(tissue separating barrier)として作用し、材料化学、ならびにインビボでの身体による加水分解および吸収により生成される生成物に関して非炎症性である。これらの特性の理由は、本発明の脂肪酸誘導予備硬化生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)のいくつかの独自の特性による。
【0123】
本発明の1つの重要な態様は、本発明の脂肪酸誘導予備硬化生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)を形成するために、有毒な短鎖架橋剤(グルタルアルデヒドなど)を使用しないことである。短鎖架橋剤は、生分解性ポリマーの加水分解中に溶出し、局所の組織炎症を引き起こし得ることが文献において既に実証されている。予備硬化誘導生体材料を生成するプロセスは、油の自己酸化または光酸化化学反応を使用して専ら油をコーティング中に硬化させるため、架橋剤を含まない。酸化プロセスは、予備硬化誘導生体材料が非常に迅速に水和され、滑りやすくなって、移植の最中および後の摩擦傷害を有意に低減および/または除去することを可能にする、カルボキシルおよびヒドロキシル官能基を形成させる。本明細書に記載の予備硬化誘導生体材料を作製する方法により、コーティングに存在する脂肪酸、グリセリドおよび他の脂質副生成物のアルキル鎖を無秩序化することを可能にし、それにより、柔軟性があって、移植の間にその材料を処理する(handle)のに役立つコーティングを生み出す。
【0124】
コーティングの生体適合性、およびインビボで観察されるその低または非炎症応答に寄与する、コーティングのいくつかの個々の化学成分が存在する。1つの重要な態様は、本明細書に記載されている予備硬化誘導生体材料を生み出す方法が、アルデヒドなどの生体適合性の問題を有する酸化脂質副生成物を低量から検出されない量までとすることである。本明細書に記載されるように、これらの生成物は、硬化プロセスの間にほぼ完全に反応するかまたは揮発するかのいずれかである。予備硬化誘導生体材料を生成するプロセスは、未変性の(native)油トリグリセリドのエステルを十分に保護し、生体適合性を有するエステルおよび/またはラクトン架橋を形成する(K. Parkら、1993年;J. M. Andersen、1995年)。
【0125】
その生体適合性を助ける予備硬化誘導生体材料の全般的な化学特性に加えて、明確な生物学的特性を有する特定の化学成分も存在する。別の態様は、予備硬化誘導生体材料の生成により生成される脂肪酸化学物質が、図7に示される組織の脂肪酸化学物質と類似することである。したがって、脂肪酸がコーティングから溶出しているときに、それらは、身体によって「異物」と見なされず、炎症応答を引き起こす。実際、コーティングに存在するC14(ミリスチン酸)およびC16(パルミチン酸)脂肪酸は、文献において、炎症性サイトカインであるα−TNFの生成を低減することが示された。α−TNFの発現は、後に異常治癒および癒着形成をもたらし得る、ヘルニア修復後の腹膜の(peoritoneal)炎症の「誘発(turning on)」に関与する主たるサイトカインの1つと特定された(Y. C. Cheongら、2001年)。α−TNFは、また、ステント展開の間に引き起こされる血管傷害などの血管傷害および炎症における重要なサイトカインである(D. E. DrachmanおよびD. I. Simon、2005年;S. E. Goldblum、1989年)。ここに特定された脂肪酸に加えて、抗炎症特性を有するさらなる酸化脂肪酸も特定された。本明細書に記載されている脂肪酸誘導コーティングから特定された最終成分は、デルタ−ラクトン(すなわち6−員環環式エステル)である。デルタ−ラクトンは、抗腫瘍特性を有すると特定された(H. Tanakaら、Life Sciences 2007;第80巻、1851〜1855頁)。
【0126】
特定されたこれらの成分は、出発油組成および/またはプロセス条件の変化が脂肪酸および/または酸化性副生成物プロファイルを常に変化させることができ、脂肪酸予備硬化生体材料の適用の意図された目的および部位により必要に応じて調整され得るため、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0127】
要約すると、本明細書に記載の予備硬化誘導生体材料の生体適合性および観察されたインビボ性能は、移植および治癒の間における材料の加水分解中の脂肪酸の溶出に起因し、天然の組織に対するその材料の脂肪酸組成の類似性(すなわち生体「ステルス」コーティング)によるインビボの異物応答を防止するのに有益であるばかりでなく、コーティングから溶出する特定の脂肪酸および/または他の脂質酸化成分が、異物反応を防止し、炎症を低減または解消して、患者の転帰の向上をもたらすことに役立つ。また、予備硬化誘導生体材料から溶出する脂肪酸およびグリセリド成分は、局所組織に吸収され、例えばクエン酸回路で細胞により代謝されることが可能である(M. J. Campell、「Biochemistry: Second Edition.」、1995年、366〜389頁)。したがって、本明細書に記載の予備硬化誘導生体材料(例えばコーティングまたは独立型フィルム)は、生体吸収性をも有する。
【0128】
よって、一態様において、本発明は、予備硬化成分を有する架橋脂肪酸油誘導生体材料および治療薬を含む医療デバイス用生体吸収性油を基材としたコーティングを提供する。本発明は、また、予備硬化成分を有する架橋脂肪酸油誘導生体材料および治療薬を含む生体吸収性油を基材とした独立型フィルムを提供する。コーティングおよび独立型フィルムを本明細書に記載の方法に従って調製することができる。
【0129】
脂肪酸誘導材料を使用する治療方法
血管傷害および/または血管炎症に関連する障害を治療または予防するのに好適な脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料も本明細書に提供される。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を使用して、組織、例えば軟部組織の傷害を治療または予防に使用することもできる。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料は、医療デバイス用コーティングまたは独立型フィルムであり得る。別の実施形態において、生体材料のための脂肪酸源は、魚油などの油である。
【0130】
概して、人間には4つのタイプの軟部組織、すなわち上皮組織、例えば、皮膚ならびに血管および多くの器官の内層;結合組織、例えば、腱、靱帯、軟骨、脂肪、血管および骨;筋肉、例えば、(横紋のある)骨格筋、心筋または平滑筋;ならびに神経組織、例えば、脳、脊髄および神経が存在する。本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、予備硬化誘導独立型フィルム)を使用して、これらの軟部組織領域の傷害を治療することができる。したがって、一実施形態において、本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、予備硬化独立型フィルム)を創傷治癒のための軟部組織の増殖の促進に使用することができる。また、急性外傷に続いて、軟部組織は、治癒および修復プロセスの結果としての変化および順応を経験し得る。当該変化は、限定するものではないが、1種類の組織をその組織にとって正常でない形に変換することである異形成;組織の異常発達である形成異常;正常組織の配列における正常細胞の過剰増殖である過形成;細胞死および再吸着または細胞増殖の低下による組織サイズの減少である萎縮を含む。よって、本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、予備硬化独立型フィルム)を、軟部組織における急性外傷に伴う、またはそれによって引き起こされる少なくとも1つの症候の低減または軽減のために使用することができる。
【0131】
本発明の一実施形態において、以下に記載されるように、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を使用して、例えば、組織癒着を予防することができる。組織癒着は、例えば、ブラントディセクションの結果であり得る。ブラントディセクションを、一般に、切除を伴わない自然割線(natural cleavage line)に沿って組織を分離することによって実施される切開と記載することができる。ブラントディセクションは、当業者に理解されるように、いくつかの異なるブラント外科用具を使用して実施される。ブラントディセクションは、心臓血管、結腸−直腸、泌尿器、婦人科、上部GIおよび形成外科用途等で実施されることが多い。
【0132】
ブラントディセクションが所望の組織を個別の領域に分離した後に、それらの組織の分離を維持することがしばしば必要である。実際、ほぼあらゆるタイプの外科手術の後に外科手術後癒着が生じて、深刻な手術後合併症を引き起こし得る。外科手術癒着の形成は、通常は身体内で分かれて存在している組織が、外科手術外傷の結果として、互いに物理的に接触し、互いに接着する複雑な炎症プロセスである。
【0133】
損傷組織の血漿タンパク質を有する出液(bleeding)および漏出物が腹腔内に沈着し、所謂線維素滲出物を形成すると癒着が形成されると考えられる。傷害組織を回復させる線維素は粘着性であるため、線維素滲出物は、腹部における隣接する解剖学的構造体に接着し得る。線維素沈着が局所炎症に対する均一の宿主応答であるため、外傷後または連続的炎症はこのプロセスを悪化させる。この接着は、線維素滲出物が、線維素溶解因子、最も顕著には組織型プラスミノゲン活性化因子(t−PA)の放出によって引き起こされる酵素分解を経るため、傷害後最初の数日間の間可逆的であると思われる。t−PAとプラスミノゲン活性化因子インヒビターの間に一定の作用がある。外科手術外傷は、通常、t−PA活性を低下させ、プラスミノゲン活性化因子インヒビターを減少させる。これが起こると、線維素滲出物における線維素がコラーゲンに置き換えられる。血管が形成し始めて、癒着の発生に至る。これが生じると、癒着は不可逆的になると考えられる。したがって、外傷後最初の数日間にわたる線維素沈着と分解との均衡は、癒着の発生にとって重要である(Holmdahl L. Lancet 1999;353:1456〜57頁)。正常な線維素溶解活性を維持するか、または迅速に回復することができれば、線維沈着物が溶解し、永久的な癒着を回避することができる。癒着は、組織の薄いシートまたは厚い線維帯として現れることができる。
【0134】
炎症応答は、また、移植された医療デバイスなどのインビボの外来物質(foreign substance)によって誘発されることが多い。身体は、この移植片を外来物質と見なし、炎症応答は、異物を隔離するための細胞反応である。この炎症は、移植されたデバイスに対する癒着形成を招き得るため、炎症応答をほとんどまたは全く引き起こさない材料が所望される。
【0135】
したがって、本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、独立型フィルム)を、組織の分離を維持するための遮断物として使用して、癒着、例えば外科手術癒着の形成を回避することができる。癒着防止の用途例は、腹部外科手術、脊髄修復、整形外科手術、腱および靱帯修復、婦人科を基材としたおよび骨盤手術、ならびに神経修復用途を含む。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、独立型フィルム)を外傷部位にわたって貼付するか、または組織もしくは器官のまわりに巻きつけて、癒着形成を制限することができる。これらの癒着防止用途に使用される脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料への治療薬の添加を、疼痛軽減または感染最小化などのさらなる有益な効果のために利用することができる。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料の他の外科用途は、硬膜パッチ、バットレス材料、内部傷治療(移植片吻合部など)および内部薬物送達系として独立型フィルムを使用することを含み得る。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を、経皮創傷治癒の用途および非外科分野に使用することもできる。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を、火傷または皮膚潰瘍に対する治療などの外的傷の治療に使用することができる。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を、清浄な不透過性、非癒着性、非炎症性、抗炎症性包帯として治療薬を含めずに使用することができ、あるいは脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料をさらなる有益な効果のために1つまたは複数の治療薬とともに使用することができる。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料に1つまたは複数の治療薬が充填または塗布されている場合に、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を経皮薬物送達貼付薬として使用することもできる。
【0136】
創傷治癒のプロセスは、傷害に応答する組織修復を含み、それは、上皮成長および分化、線維組織生成および機能、新脈管形成ならびに炎症を含む多くの異なる生物学的プロセスを包含する。よって、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、独立型フィルム)は、創傷治癒用途に好適な優れた材料を提供する。
【0137】
モジュレートされた治癒
モジュレートされた治癒の達成を必要とする組織領域におけるモジュレートされた治癒を達成するのに好適な脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料であって、組成物が上記モジュレートされた治癒を達成するのに十分な量で投与される脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料も本明細書に提供される。一実施形態において、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料は、医療デバイス用医療コーティングまたは独立型フィルムである。別の実施形態において、生体材料のための脂肪酸の供給源は、魚油などの油である。
【0138】
モジュレートされた治癒を、生物学的応答を変化させて異物応答を有意に低減する、移植後に観察されるインビボ効果と記載することができる。本明細書に利用されるように、「モジュレートされた治癒」という語句およびこの用語の変形物は、一般には、実質的にそれらの炎症効果を低減する、局在化した組織傷害に応答する異なるカスケードまたは順序の自然発生的組織修復を含むプロセスのモジュレーション(例えば、変化、延滞、減速、低減、抑止)を指す。モジュレートされた治癒は、上皮成長、線維素沈着、血小板活性化および接着、阻害、増殖および/または分化、結合線維組織生成および機能、新脈管形成、ならびにいくつかの段階の急性および/または慢性炎症、ならびにそれらの相互作用を含む多くの異なる生物学的プロセスを包含する。例えば、本明細書に記載の脂肪酸は、炎症相(例えば、血小板または線維素沈着)および増殖相を含むが、それらに限定されない、医学的処置によって引き起こされる血管傷害の治癒に伴う相の1種または複数種を変化、遅延、減速、低減および/または抑止することができる。一実施形態において、「モジュレートされた治癒」は、組織治癒プロセスの開始のときに実質的な炎症相(例えば、血小板または線維素沈着)を変化させる脂肪酸誘導生体材料の能力を指す。本明細書に使用されているように、「実質的な炎症相を変化させる」という語句は、傷害部位における炎症応答を実質的に低減させる脂肪酸誘導生体材料の能力を指す。そのような場合では、少量の炎症が組織傷害に応答できるが、このレベルの炎症応答、例えば、血小板および/または線維素沈着は、脂肪酸誘導生体材料の不在下で生じる炎症と比較すると、実質的に減少している。
【0139】
例えば、本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングまたは脂肪酸を基材とした予備硬化誘導独立型フィルム)は、血管傷害に伴う炎症応答、ならびに組織傷害の後の結合線維組織の過剰形成を遅延または変化させることが動物モデルで実験的に示された。本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)は、血管傷害の後の線維素沈着および血液接触面への血小板接着を遅延または低減することができる。
【0140】
よって、本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)は、瘢痕組織の生成を回避し、傷害後のモジュレートされた期間または遅延された期間に結局は健康な組織の形成を促進する、モジュレートされた治癒効果をもたらす外科用具または医療デバイスとの使用に好適な優れた吸収性細胞界面を提供する。理論に縛られることなく、このモジュレートされた治癒効果は、血管傷害の治癒プロセスに伴う分子プロセスのいずれかのモジュレーション(例えば、変化、遅延、減速、低減、抑止)に起因し得る。例えば、本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングまたは脂肪酸を基材とした予備硬化誘導フィルム)は、医療デバイス移植片(例えば、外科用メッシュ、グラフトもしくはステント)または外科用具と、血管の内面を裏打ちする内皮細胞および平滑筋細胞などの血管壁を構成する細胞およびタンパク質との間の遮断物または遮断層として作用することができる。遮断層は、外科移植片と血管表面との相互作用を防止することによって、血管壁の細胞およびタンパク質による治癒プロセスの開始を防止する。この点において、遮断層は、血管壁に結合し、血管壁の細胞およびタンパク質が外科移植片を認識するのを阻止するパッチとして作用する(すなわち、遮断層は、細胞―デバイスおよび/またはタンパク質−デバイス相互作用を阻止する)ことによって、血管治癒プロセスの開始を阻止し、線維素活性化および沈着ならびに血小板活性化および沈着を回避する。
【0141】
別の非結合例において、モジュレートされた治癒効果は、血管壁を構成する細胞およびタンパク質と、さもなければ血管治癒プロセスを開始する血流の様々な成分との間のシグナル伝達のモジュレーション(例えば、変化、遅延、減速、低減、抑止)に起因し得る。言い方を変えれば、血管傷害の部位において、本発明の脂肪酸誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)は、内皮細胞および/または平滑筋細胞などの血管壁の細胞と、さもなければ損傷細胞と相互作用して治癒プロセスを開始する血管の他の細胞および/またはタンパク質との相互作用をモジュレートすることができる。また、血管傷害の部位において、本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)は、血管壁のタンパク質と、血液の他の細胞および/またはタンパク質との相互作用をモジュレートすることによって、治癒プロセスをモジュレートすることができる。
【0142】
本発明の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料(例えば、コーティングまたは独立型フィルム)を、所望の期間にわたってその完全性を維持し、次いで加水分解を開始し、それを取り囲む組織に吸収されるように設計することができる。代替的に、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料を、脂肪酸誘導生体材料が被験体に挿入された直後に、それが周囲組織にある程度吸収されるように設計することができる。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料の配合に応じて、1日から24カ月、例えば、1週間から12カ月、例えば1カ月から10カ月、例えば3カ月から6カ月の期間内にそれを周囲組織に完全に吸収させることができる。動物試験は、移植により生じ、3から6カ月間以上にわたっておよびそれを超えて継続する脂肪酸誘導生体材料の再吸収を示した。
【0143】
薬物放出プロファイルの調整
様々な態様において、本発明は、脂肪酸誘導コーティング、好ましくは魚油を硬化して、コーティングまたはフィルムからの治療薬の放出プロファイルを調整できる、1つまたは複数の治療薬を含む脂肪酸誘導予備硬化生体材料コーティングまたは独立型フィルムを得る方法を提供する。例えば、コーティング組成、温度および硬化時間を変化させることによる油(例えば魚油)の化学的性質の変化を介して放出プロファイルを調整することができる。被覆デバイス上の薬物含有層の位置は、非ポリマー架橋脂肪酸誘導予備硬化生体材料コーティングの放出プロファイルを変化させるさらなるメカニズムを提供する。これを、例えば、薬物を硬化された基部コーティング層に充填し、上塗被覆層硬化コーティング(topcoat overlayer cured coating)を既に硬化された封入基部層(base layer)上に塗布することによって達成することができる。
【0144】
本発明の様々な実施形態における硬化魚油コーティングおよび独立型フィルムの利点は、利用される硬化条件(すなわち硬化時間および温度)が、後のコーティング分解に影響を与えるコーティング架橋密度および副生成物形成の量に直接影響を及ぼし得ることである。したがって、採用される硬化条件を変化させることによって、コーティングに含まれる目的の治療化合物の溶解速度を変化させることもできる。
【0145】
本発明の様々な実施形態において、例えば遊離ラジカル捕捉剤などの薬剤を出発材料に添加して、形成される脂肪酸誘導予備硬化生体材料の薬物放出プロファイルを調整することができる。様々な実施形態において、例えば、ヒドロペルオキシド形成を低減することによって魚油における自動酸化を緩慢化するためにビタミンEを出発材料に添加することで、硬化魚油コーティングに観察される架橋の量を減少させることができる。加えて、他の薬剤を使用して、出発材料の油組成物中での治療薬の溶解度を高めるか、または薬物が硬化プロセスの間に分解するのを防止するか、またはその両方を行うことができる。例えば、ビタミンEを使用して、魚油出発材料中での特定の薬物の溶解度を高めることによって、究極的な硬化コーティングが有する薬物充填量の調整を容易にすることができる。したがって、コーティングに存在するビタミンEの量を変化させると、本発明の脂肪酸誘導予備硬化生体材料(例えば、コーティングおよび独立型フィルム)の架橋および化学組成を変化させるさらなるメカニズムが得られる。
【0146】
様々な実施形態において、本発明は、脂肪酸誘導予備硬化生体材料の薬物放出プロファイルが、2つ以上のコーティングの調製(provision)および治療薬の位置の選択を介して調整される、コーティングおよび独立型フィルムを提供する。例えば、医療デバイスの裸の部分を第1の出発材料で被覆して第1の硬化コーティングを生成し、次いで第1の硬化コーティングの少なくとも一部を薬物−油処方物で被覆して、第2の被覆コーティング(overlayer coating)を生成することによって,薬物の位置を変化させることができる。第1の出発材料は、1つまたは複数の治療薬を含むことができる。様々な実施形態において、第2の被覆コーティングも硬化される。第1のコーティングまたは被覆コーティングまたはその両方の薬物充填量(drug load)または薬物放出プロファイルまたはその両方を、異なる硬化条件の使用および/または本明細書に記載の遊離ラジカル捕捉剤(例えばビタミンE)の添加を介して調整することができる。2つの層を設けるプロセスを拡大して3つ以上の層を設けることができ、それらの層の少なくとも1つは、魚油などの脂肪酸含有油から調製された疎水性架橋脂肪酸誘導予備硬化生体材料を含む。加えて、それらの層の1つまたは複数の層は、薬物を溶出することができ、そのような層の薬物放出プロファイルを、本明細書に記載の方法を使用して調整することができる。
【0147】
様々な実施形態において、本発明は、コーティング全体の薬物放出プロファイルが、異なる薬物放出プロファイルを有する2つ以上のコーティング領域の調製ならびに治療薬の位置の選択を介して調整されるコーティングを提供する。様々な実施形態において、異なる薬物放出特性を有する異なるコーティング領域の形成が、位置特異的硬化条件、例えば位置特異的UV放射、および/または例えばインクジェット印刷法による被覆デバイスへの出発材料の位置特異的沈着によって得られる。
【0148】
コーティングアプローチ
図8は、本発明の一実施形態による、例えば薬物溶出被覆ステントなどの本発明の医療デバイスを製造する1つの方法を示す。上記方法は、ステントなどの医療デバイスを提供する工程(ステップ100)を含む。次いで、非ポリマー架橋脂肪酸誘導予備硬化生体材料コーティングである出発材料のコーティングを医療デバイスに塗布する(ステップ102)。コーティングをステントなどの医療デバイスに塗布するこの基本的方法は、記載の方法に含まれるいくつかの異なる変形を有することができることを当業者なら理解するはずである。コーティング物質を塗布して、医療デバイスにコーティングを形成する工程は、いくつかの異なる塗布方法を含むことができる。例えば、医療デバイスをコーティング物質の液体溶液に浸漬させることができる。コーティング物質をデバイスに噴霧することができる。別の塗布方法は、コーティング物質を医療デバイスに塗ることである。静電接着(electrostatic adhension)などの他の方法を利用して、コーティング物質を医療デバイスに塗布することができることを当業者なら理解するはずである。いくつかの塗布方法は、コーティング物質に、および/またはコーティングを受ける医療デバイスの構造に特異的であってよい。よって、本発明は、本明細書に記載の出発材料塗布の具体的な実施形態に限定されず、一般には、得られたコーティングに所望の特性を維持させるのに必要なあらゆる措置を講じて、医療デバイスの脂肪酸誘導予備硬化生体材料コーティングとなる、出発材料の塗布に適用されることを意図する。
【0149】
図9は、図8の方法の1つの例示的な実施を示すフローチャートである。図9に示されるステップによれば、生体吸収性担体成分(例えば、天然に存在する油などの脂肪酸源)を調製する(ステップ110)。次いで、担体を予備硬化(「部分硬化」)させて、初期量の架橋を誘導する(ステップ112)。次いで、得られた材料を治療薬と組合わせて、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料コーティングとなる、予備硬化材料を形成することができる(ステップ114)。予備硬化材料をステント10などの医療デバイスに塗布してコーティングを形成する(ステップ116)。次いで、本明細書に記載の硬化方法のいずれかによってコーティングを硬化させて(ステップ118)、脂肪酸誘導予備硬化生体材料コーティングを形成する。
【0150】
場合によって、脂肪酸誘導生体材料コーティングへの組み込みに所望される治療薬は、デバイスコーティングを生成するのに利用される熱/UV硬化プロセスに対して安定ではない(例えば、有意な量の薬物分解が観察される)。治療薬組成を維持し、治療薬の分解を最小限に抑えるために、脂肪酸出発材料(例えば魚油)を治療薬の不在下で最初に部分硬化(「予備硬化」)させて、油中の不飽和成分を酸化させることができる。当該プロセスは、例えば医療デバイスコーティング用途では、油の粘度を高め、油の脂肪酸を部分架橋させることによってその反応性を低下させる。次いで、治療薬を有機溶媒中の予備硬化物と組合わせ、医療デバイス上に、かつ/または独立型フィルム材料として噴霧する、および/または流し込み(cast)、続いて加熱して、その意図する用途での使用のための最終の架橋材料(すなわち脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング)を形成することができる。このプロセスにより、コーティングからの長期間の薬物放出に向けて治療薬を脂肪酸誘導予備硬化生体材料に取り込む。代替的に、予備硬化の生成後、ビタミンEなどの酸化防止剤を治療薬および有機溶媒と組合わせて、医療デバイスに塗布するか、または独立型フィルムを生成することができる。次いで、このコーティングを、また、最終硬化させて、脂肪酸誘導予備硬化生体材料にする。酸化防止剤(例えばビタミンE)は、最終硬化工程の間に酸化されるが、治療薬および油成分がさらに酸化されるのを防止し、薬物組成および活性を維持する。酸化防止剤は、治療薬および予備硬化油成分のさらなる酸化を防止するが、脂肪酸誘導予備硬化生体材料を生成するために必要とされる反応性カルボキシルおよびヒドロキシル官能基が、油出発材料の最初の熱/UV硬化処理の間、すなわち予備硬化物の生成の間に生成されたため、硬化の際の脂肪酸同士のエステル架橋の形成を抑制しない。
【0151】
次いで、任意の数の異なる滅菌プロセスを使用して被覆医療デバイスを滅菌する(ステップ118)。例えば、酸化エチレン、ガンマ線、Eビーム、水蒸気、ガスプラズマまたは蒸気化過酸化水素を利用して滅菌を実施することができる。他の滅菌法も適用できること、および本明細書に示される滅菌法は、好ましくはコーティング20に悪影響を与えることなく、被覆ステントを滅菌させる滅菌法の例にすぎないことを当業者なら理解するはずである。
【0152】
脂肪酸成分(例えば魚油)を複数回添加して、コーティングを形成するに際して複数の階層(tier)を生成できることに留意されたい。例えば、より厚いコーティングが所望される場合は、ステップ100、102、110、112、114、116、118および/または120の後に脂肪酸成分のさらなる階層を追加することができる。脂肪酸を硬化させるときおよび他の物質を添加するときと関連する異なる変形が、いくつかの異なるプロセス構成で可能である。よって、本発明は、例示される具体的な順序に限定されない。むしろ、例示される基本的なステップの異なる組合せが本発明によって予測される。
【0153】
図10A〜10Eは、本発明のコーティング10と組み合わされる上記医療デバイスの他の形の一部を示す。図10Aは、コーティング10が結合または接着されたグラフト50を示す。図10Bは、コーティング10が結合または接着されたカテーテルバルーン52を示す。図10Cは、コーティング10が結合または接着されたステント54を示す。図10Dは、本発明の一実施形態によるステント10を示す。ステント10は、治療結果に影響を与えるようにコーティングを塗布するのに好適である医療デバイスを表す。ステント10は、空隙14がその間に形成された一連の相互接続された支柱12(strut 12)で構成される。ステント10は、全体的に円筒形である。よって、ステント10は、内面16および外面18を維持する。図10Eは、本発明の一実施形態に従って生体適合性メッシュ構造体10として表される被覆外科用メッシュを示す。生体適合性メッシュ構造体10は、平坦構成、湾曲構成またはロール構成で患者内に配置できる程度に柔軟である。生体適合性メッシュ構造体10は、短期間および長期間の適用の両方に対して移植可能である。生体適合性メッシュ構造体10の具体的な配合に応じて、生体適合性メッシュ構造体10は、移植後数時間から数日間の期間、または恐らくは数カ月間の期間、または永久に存在することになる。
【0154】
具体的に例示または記載されていない医療デバイスに加えて、例示されている医療デバイスの各々を、本明細書に記載の方法またはそれらの変形を使用してコーティング10と組み合わせることができる。よって、本発明は、例示されている例示的な実施形態に限定されない。むしろ、例示の実施形態は、本発明の例示的な実施態様にすぎない。
【0155】
別の実施形態において、本発明の生体材料、すなわち予備硬化生体材料または脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料をエマルジョンの形で使用することができる。ある種の懸濁液である「エマルジョン」は、特定のエネルギー的に不安定な状態の2つ以上の非混和性の液体を組合わせたものである。エマルジョンは、2つを超える非混和性の液体を組合わせたものであり得ても、明瞭にするために、以下の説明は、2つの液体のみのエマルジョンを想定して示される。第1の液体は、第2の液体の連続相に分散または懸濁される。これは、第2の液体の連続「プール」全体を通じて分配された第1の懸濁液の「液滴」であると考えることができる。第1の液体の混合物が第2の液体の混合物に対して非混和性であれば、第1の液体は、任意の数の混和性液体の混合物を含むことができ、第2の液体は、任意の数の混和性液体の混合物を含むことができる。3つ以上の非混和性液体の混合物を使用してエマルジョンを調製することができ、当該実施形態は本明細書にさらに記載されていないが、それらが、本発明の範囲内に含まれると考えられることを当業者なら理解するはずである。
【0156】
本発明の様々な態様および実施形態を以下の実施例によりさらに記載する。本実施例は、例示の目的で示され、限定することを目的とするものではない。
【実施例】
【0157】
以下の実施例は、本明細書に記載の新規の脂肪酸誘導生体材料の化学的性質を特徴づけ、形成の化学的メカニズムに伴う境界の一部、およびそれらのメカニズムの変化が最終生成物の特性(例えば、治療便益および/または薬物放出プロファイル)にどのように影響するかを示す。加水分解生成物のいくつかの本質(identity)を、インビトロ実験を介して特定し、インビボ実験と関連づけて、コーティングまたは独立型フィルムを生体吸収させる能力を実証する。最後に、冠状動脈ステントおよびヘルニアメッシュデバイス上の薬物送達用途における本明細書に記載の脂肪酸誘導生体材料の有用性を示す実施例を提示する。
【0158】
以下の実施例は、実証を目的とするものであって、限定することを意図しない。
【0159】
(実施例1)
0.1MのPBS溶液中の魚油から誘導された新規の生体材料のインビトロ加水分解化学反応の分析
以下の実施例において、被覆医療デバイス(例えばポリプロピレンメッシュ)を高空気流オーブンにて200°Fで24時間にわたって硬化させた後、魚油に存在するC=C結合を酸化させて酸化副生成物(すなわち、炭化水素、アルデヒド、ケトン、グリセリド、脂肪酸)を形成させ、元々の油のトリグリセリドから誘導されたエステルを十分に保護しながら、魚油を、ポリプロピレンメッシュを封入する架橋生体材料ゲルコーティングに変換した。副生成物を揮発させた後、エステルとラクトンの架橋を形成させ、油を固化させて生体吸収性疎水性架橋生体材料を得た。コーティングを徐々に加水分解させる能力を、0.1MのPBS溶液を使用して調べた。30日間にわたるPBS中での油誘導生体材料の加水分解の後に、GC−FID脂肪酸プロファイルおよびGPCクロマトグラフィー測定を使用してPBS溶液を分析した。
【0160】
図11は、PBS溶液を乾燥させ、次いでAOCS公定法Ce1−89bに記載されるGC−FID脂肪酸プロファイル分析を実施して、溶液に存在する脂肪酸を特定して得られた脂肪酸プロファイル結果を要約したものである。図11は、PBS溶液から特定された脂肪酸がコーティングそのものから検出された脂肪酸と同じであることを示す。加水分解溶液に対してもGPC分析を実施し、それらの結果を表5に要約する。GPC結果は、特定された大多数の分子量成分(80%)が、コーティングの脂肪酸成分と一致して、分子量500未満であることを示した。また、コーティングのグリセリド成分は、分子量が約1000であることを特定することが可能であった(コーティングの15%)。GPC結果は、また、無視できる量(約4%)の高分子量ゲルを示した。それらのGPC結果は、油誘導生体材料が架橋グリセリドおよび脂肪酸で構成されること、ならびにコーティングの大部分が非ポリマーである(すなわち、特定された成分の約80%が500未満の分子量を有していた)ことを示す油誘導コーティングに対する他の分析的特徴づけ実験を裏づけている。
【0161】
【表5】

(実施例2)
治療薬が充填され、金属ステントに塗布された、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング
本発明のこの特定の実施形態において、治療薬が充填され、心臓ステントに塗布された、硬化油コーティングの施用を示す。治療薬が充填されたステント上に硬化コーティングを生成するための方法を示す流れ図の概要を図13に示す。手短に述べると、酸素の存在下で200°Fにて20時間にわたって加熱しながら撹拌下で反応容器内に予備硬化魚油コーティングを生成する。そのコーティングを目的の治療薬と組合わせ、ビタミンEを溶媒と組合わせ、次いでステントに噴霧してコーティングを生成する。200°Fで7時間にわたって加熱することによってそのコーティングをステント表面にアニールして、均一なコーティングを生成する。典型的な抗炎症薬を含むコーティングは、HPLC分析による薬物のデバイスからの抽出を用いて測定された場合にこのプロセスが薬物の90%を硬化後に回収することが可能であることを示した。図14は、この方法を使用すると、90%を超える薬物の回収率で、20日までに停止する0.01MのPBSバッファー中のこのコーティングに対する薬物放出プロファイルを示す。
【0162】
(実施例3)
脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングの制御放出
60%の化合物C、30%の予備硬化魚油、10%のトコフェロールからなる化合物C薬物コーティング処方物で被覆された3バッチの16mmステンレス鋼ステントについて薬物放出を定量した。予備硬化した魚油を使用して93℃で予備硬化魚油を製造し、22℃で測定して1.3×10cpsの予備硬化粘度を達成した。コーティングを噴霧によって16mmのアトリウムフライヤステンレス鋼ステントの表面に塗布して、ステント1つ当たり約100μgの化合物Cの全ステント薬物充填量を達成した。被覆ステントに第2の熱硬化処理を施すことによって、コーティングをオーブンにて93℃で7.5時間にわたって後硬化(post−cured)させた。37℃の温度で0.01M精製緩衝食塩水(PBS)を含む4ml溶液にて溶解を行った。
【0163】
HPLC法を用いて、化合物C薬物被覆ステントからのインビトロでの薬物溶解を定量した。化合物C薬物コーティングからの薬物放出が20日間の期間にわたって持続すること、および放出プロファイルがバッチ間で再現性を有することを示す薬物放出プロファイルデータを図15に示す。
【0164】
(実施例4)
裸金属ステント、被覆ステントおよび薬物被覆ステントについての追従力
バルーンカテーテルに装着された3.0mm×13mmCoCrステントについてデバイス追従力(trackability force)を定量した。追従力を3つの異なるステントコーティング群、すなわち裸金属CoCrステント、75%の予備硬化魚油、25%のトコフェロールコーティングで被覆されたCoCrステント、および60%の化合物B、22.5%の予備硬化魚油、12.5%のトコフェロールコーティングで被覆されたCoCrステントについて追従力を定量した。予備硬化した魚油を使用して93℃で予備硬化魚油を製造し、22℃で測定して、1.0×10cpsの予備硬化粘度を達成した。75%予備硬化魚油を25%トコフェロールとともにMTBE溶媒に溶解させることによって脂肪酸誘導予備硬化生体材料を調製し、1%固形分の処方物を達成した。処方物を3000RPMで1分間にわたって渦撹拌する。次いで、処方物を噴霧法を介してステントに塗布して、約167μgの全ステントコーティング重量を達成する。93℃で6時間にわたって被覆ステントを熱後硬化させる。後硬化処理に続いて、ステントをバルーンカテーテル上にクリンピングし、16から22psiの圧縮荷重を出す12点クリンピング装置を使用して、約0.04インチのステントプロファイル寸法を達成する。75%の予備硬化魚油を25%のトコフェロールとともにMTBE溶媒に溶解させることによって、化合物B、予備硬化魚油、トコフェロール処方物を調製して、25%固形分の処方物を達成した。一定量の化合物Bを適当なガラスバイアルに秤取り、一定容積の予備硬化FOおよびトコフェロール処方物をそのガラスバイアルに加えて、60%の化合物B、40%の予備硬化魚油−トコフェロール比を達成する。さらなるMTBEをそのガラスバイアルに加えて、1%の全固形分比を達成する。処方物を3000rpmで1分間にわたって渦撹拌する。次いで、噴霧法を介して処方物をステントに塗布して約167μgの全ステントコーティング重量を達成する。93℃で6時間にわたって被覆ステントを熱後硬化させる。後硬化処理に続いて、ステントをバルーンカテーテル上にクリンピングして、約0.04インチのステントプロファイル寸法を達成する。次いで、ステントがバルーンセグメントにわたって装着されたカテーテルを、全設定移動距離を395mmとして22mmおよび14mmの半径を有する2つの湾曲部(bend)を含む解剖学的モデルからなる曲がりくねった(torturous)経路に挿入される6Frメドトロニックランチャガイドカテーテルに通す。脱イオン水を試験環境として使用した。カテーテルを前方に駆動させるのに使用する機構上で荷重計により力を測定する。
【0165】
追従力データを図16に示す。このデータは、裸金属ステントと比較して、トコフェロール、化合物Bおよび予備硬化魚油を含む脂肪酸誘導予備硬化生体材料コーティングを含むデバイスを押しつけるのに必要な全追従力が小さいことを示しており、コーティングが、ステント表面の摩擦係数を実質的に低下させ、そして続いて、ガイドカテーテル内のバルーンカテーテルを曲がりくねった経路に通す過程の間、ステントとガイドカテーテル壁との間の摩擦力を低下させることを示唆している。
【0166】
(実施例5)
機械特性に対する後硬化時間および温度の影響
CoCrステントを化合物B/予備硬化魚油/トコフェロールの油誘導予備硬化生体材料コーティングで被覆する試験で、コーティング機械特性に対する後硬化時間および温度の影響を評価した。CoCrステントをアセトンで予備洗浄し、60%の化合物B、30%の予備硬化魚油、10%のトコフェロールの処方物で被覆した。75%の予備硬化魚油を25%のトコフェロールとともにMTBE溶媒に溶解させることによって、化合物B、予備硬化魚油、トコフェロール処方物を調製して、25%固形分の処方物を達成した。一定量の化合物Bをガラスバイアルに秤取り、一定容積の予備硬化FOおよびトコフェロール処方物をそのガラスバイアルに加えて、60%の化合物B、40%の予備硬化魚油−トコフェロール比を達成する。追加のMTBEをそのガラスバイアルに加えて、1%の全固形分比を達成する。処方物を3000RPMで1分間にわたって渦撹拌する。次いで、噴霧法を介して処方物をステントに塗布して、約167μgの全ステントコーティング重量を達成する。次いで、60℃から100℃の範囲の温度で被覆ステントを後熱硬化させた。
【0167】
後硬化処理に続いて、16〜22psiのクリンピング圧力を必要とする12点クリンピング装置を使用し、ステントをバルーンカテーテル上にクリンプして、約0.043インチのステントプロファイル寸法を達成する。続いて、バルーンカテーテルを9気圧の名目膨張圧力まで空気で膨張させた。クリンピングおよび膨張後に、物理的損傷について目視で薬物コーティングの評価を行う。この試験の結果は、80℃を超える温度で後硬化させたステントが、80℃以下で後硬化させたステントより、クリンピングおよびその後の膨張後に実質的により少ないコーティング損傷を示すことを実証し、コーティングを後硬化させる温度を変更することにより最終の架橋密度を変化させることによってコーティングの機械特性を顕著に変化させることができることを実証する。
【0168】
(実施例6)
感熱性薬物の薬物回収に対する硬化時間および温度の影響
疎水性架橋ゲルコーティング内に取り込まれる感熱性薬物の薬物回収に対する硬化時間および温度の影響を評価および定量した。酸素をディヒューザーを通して注入しながら全体で26時間にわたって反応器内で93℃で魚油を加熱することによって予備硬化魚油(PCFO)を調製した。得られた予備硬化魚油の粘度は、22℃で測定した場合に5×10cpsであった。3.76gのPCFOと1.3gのビタミンEを組合わせて、75%PCFO、25%ビタミンE下塗コーティング(base coating)を形成することによって、60%の化合物B、30%のPCFOおよび10%のビタミンEからなる処方物を作製した。15.04gのメチル−tert−ブチル−エーテル(MTBE)を添加して、75%の溶媒、25%の固形分の下塗コーティング溶液を製造した。この溶液を透明になるまで30分間にわたって渦撹拌した。次に、529mgの下塗コーティング溶液を198.8mgの化合物Bに添加した。この混合物を32.8gのメチル−tert−ブチル−エーテル(MTBE)で希釈して、噴霧コーティングのための1.0%固形分の最終溶液を製造した。超音波噴霧コーティングシステム(SonoTek,Inc.)を使用して、CoCrステント(3.0×13mm)を100μgの目標充填量の化合物Bで噴霧被覆した。各被覆ステントをコーティングの前およびコーティングの後に秤量して、各ステントに塗布されたコーティングの実際の重量を重量法で測定した。後硬化時間を0時間から24時間の範囲として、60℃から100℃の範囲の温度で被覆ステントにオーブン後硬化を施した。後硬化に続いて、薬物コーティングを100%アセトニトリル溶液で抽出し、HPLCを介して分析して、ステントから抽出された全薬物質量を求める元になる溶液中の薬物濃度を測定した。ステントから抽出された全薬物質量を、重量法で測定されたステント上の実際のコーティング重量とともに使用して、後硬化処理後に回収されるコーティング中のステントに塗布される薬物の割合を計算する。薬物回収率データを図18に示す。このデータは、ステントの噴霧コーティングの後および後硬化の前に100%の薬物が回収されることを示している。しかし、薬物回収率は、後硬化により低下するとともに、後硬化時間が長くなるに従って低下する。データは、また、薬物回収率が経時的に低下する速度が、後硬化を実施する温度に直接影響されることを示す。
【0169】
(実施例6A)
粘度によって測定される予備硬化魚油の架橋密度に対する硬化時間の影響
予備硬化魚油粘度に対する硬化時間の影響を評価および定量した。酸素をディヒューザーを通して注入しながら全体で33時間にわたって反応器中93℃で魚油(Ocean Nutrition 18/12TG魚油)を加熱することによって予備硬化魚油(PCFO)を調製した。この反応を通じて、油の酸化が生じ、架橋が形成される。反応の継続時間は、生じる酸化および架橋の程度に直接影響を与え、反応の間に経時的に油の粘度を上昇させる。したがって、予備硬化魚油の最終粘度を架橋および酸化の程度に関連づけることができる。魚油を23時間、26時間、30.5時間および33時間にわたって93℃で酸素と反応させた。粘度を22℃で測定した。それらの結果(図19)は、粘度の増加がより長い反応時間に対応することを示しており、従って、より高い密度に関連する架橋密度の増加も硬化時間とともに大きくなることが間接的に確認される。
【0170】
(実施例7)
治療薬の化合物Cを使用して脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングをステント上に生成する方法
酸素をディヒューザーを通して注入しながら全体で23時間にわたって反応器中93℃で魚油(Ocean Nutrition 18/12TG魚油)を加熱することによって予備硬化魚油(PCFO)を調製した。得られた予備硬化魚油の粘度は、22℃で測定した場合に1×10cpsであった。3.7561gのPCFOと1.2567gのビタミンEを組合わせて、75%のPCFO、25%のビタミンEの下塗コーティングを形成することによって、70%の化合物C、22.5%のPCFOおよび7.5%ビタミンE(DSM Nutritional Products)からなる化合物C薬物コーティング処方物を作製した。15.04gのメチル−tert−ブチル−エーテル(MTBE)を添加して、75%の溶媒、25%の固形分の下塗コーティング溶液を製造した。この溶液を透明になるまで30分間にわたって渦撹拌した。次に、767.6mgの下塗コーティング溶液を447.8mgの化合物Cに添加した。この混合物を7.84gのメチル−tert−ブチル−エーテル(MTBE)で希釈して、噴霧コーティングのための7.6%固形分の最終溶液を製造した。中程度のサイズのニードルを備えたBadgerエアブラシを使用して、Atrium Cinatra(商標)CoCrステント(3.5×13mm)を噴霧被覆した。目標コーティング充填量は、ステント1つ当たり100μgの化合物Cであった。ステントを回転させながら、30psiの空気圧を用いて1.5秒間にわたって各ステントを噴霧被覆した。これにより、95.2μgの平均コーティング充填量の化合物Cを生成した。被覆ステントを93℃に設定されたオーブンにて7時間にわたって硬化させた。この処理により、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して撮像すると、滑らかな表面特性を有するコンフォーマルステントコーティングが生成される。図20Aは、93℃で7時間後硬化させた後の50倍の倍率での化合物C薬物被覆ステントのSEMである。
【0171】
(実施例8)
治療薬の化合物Bを使用して脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングをステント上に生成する方法
酸素をディヒューザーを通して注入しながら全体で23時間にわたって反応器中93℃で魚油(Ocean Nutrition 18/12TG魚油)を加熱することによって予備硬化魚油(PCFO)を調製した。得られた予備硬化魚油の粘度は、1×10cpsであった。3.7582gのPCFOと1.2562gのビタミンEを組合わせて、75%のPCFO、25%のビタミンEの下塗コーティングを形成することによって、60%の化合物B、30%のPCFOおよび10%ビタミンE(DSM Nutritional Products)からなる処方物を作製した。15.04gのメチル−tert−ブチル−エーテル(MTBE)を添加して、75%の溶媒、25%の固形分の下塗コーティング溶液を製造した。この溶液を透明になるまで30分間にわたって渦撹拌した。次に、529mgの下塗コーティング溶液を198.8mgの化合物Bに添加した。この混合物を32.8gのメチル−tert−ブチル−エーテル(MTBE)で希釈して、噴霧コーティングのための1.0%固形分の最終溶液を製造した。超音波噴霧コーティングシステム(SonoTek,Inc.)を使用して、CoCrステント(3.0×13mm)を100μgの目標充填量の化合物Bで噴霧被覆した。被覆ステントを93℃のオーブンにて6時間にわたって硬化させた。この処理により、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して撮像すると、滑らかな表面特性を有するコンフォーマルステントコーティングが生成される。図20Bは、93℃で6時間後硬化させた後の50倍での倍率の化合物B薬物被覆ステントのSEMである。
【0172】
(実施例9)
個々の処方物成分各々に対する脂肪酸を基材とした予備硬化誘導ステントコーティングプロセスの化学的影響のシミュレーション
各々の処方物成分(すなわち、予備硬化魚油、ビタミンEおよび化合物B)を最終硬化前および最終硬化後に試験して、化合物B油誘導予備硬化生体材料コーティングの化学的性質に対する処理の影響を把握した。この実験群において、個々の成分各々をメチル−tert−ブチル−エーテル(MBTE)で希釈した後にクーポン(coupon)に噴霧して、被覆ステントを模倣した。6時間にわたる200°Fでの最終硬化前および最終硬化後に適切な分光法およびクロマトグラフィー法を使用して個別の成分を分析した。
【0173】
FTIR分析を使用して、最終硬化前および最終硬化後に、予備硬化魚油をMTBE溶媒に溶解させ、それをステンレス鋼クーポンに噴霧する効果を図21A、21Bおよび21Cに示す。硬化前および硬化後の予備硬化魚油のFTIR分析は、油における二重結合が、6時間の硬化処理により酸化してラクトン/エステル架橋を形成していることを明らかにしている。酸化は、OHバンド吸収の増加ならびにシスおよびトランスC=Cピークの低下(図21Aおよび21C)、ならびにカルボニル副生成物の形成を示すカルボニルピークの拡大(図21B)によって示される。最終硬化物における架橋の証拠は、ラクトン/エステルピーク吸収バンドの増加によって確認される(図21B)クーポンのGC脂肪酸プロファイル分析は、最終硬化処理前および最終硬化処理後の油酸化とも一致する。図22は、硬化処理前および硬化処理後にクーポン上に噴霧された予備硬化魚油の脂肪酸組成プロファイルを示す。GC脂肪酸プロファイルの結果は、最終硬化後の不飽和脂肪酸の減少および飽和脂肪酸の増加を示すプロファイルの変化を示しており(図22)、それは、不飽和脂肪酸の酸化と一致する。この結果は予備硬化GCクロマトグラムおよび後硬化GCクロマトグラムにも反映されており、C16:1およびC18:1不飽和脂肪酸ピークがクロマトグラムにおいて低下している(図23)。
【0174】
MTBEに溶解させ、クーポンに噴霧された最終硬化を行った場合と行わない場合のビタミンEのFTIRスペクトルを図24A、24Bおよび24Cに示す。FTIR結果は、最終硬化処理が酸化をもたらすことを示しており、これは、1800〜1600cm−1におけるピークの形成によって裏づけられる(図24C)。この結果は、ビタミンEの酸化後に生じる、最終硬化ステップ後のフェノールOH吸収バンドの低下によってさらに裏づけられる(図24B)。硬化前および硬化後にクーポンに塗布されたビタミンEをクーポンから抽出除去してHPLCによりアッセイした(表8)。各試験は、3つのサンプルの平均を表す。この試験の結果は、ビタミンEが硬化(すなわち酸化)されると、回収率が81%に低下することを示している。292nmにおける硬化前および硬化後にクーポンに噴霧されたビタミンEで上塗りされた(overlaid)ビタミンE対照のHPLCクロマトグラムを図25A、25Bおよび25Cに示す。
【0175】
【表8】

硬化前および硬化後のクーポンへの噴霧後の化合物B薬物粉末のFTIR分析を図26A、26Bおよび26Cに示す。FTIRは、化合物BをMBTE溶媒に溶解させ、それをクーポンに噴霧すると、対照薬物の粉末のスペクトルと比較して、薬物の構造の立体配座が変化することを明らかにしている。具体的には、FTIR結果は、噴霧処理の後に、化合物B粉末対照と比較してアミドバンドが左にシフトし、ピーク分割の開始の徴候(beginning sign)を示すことを示している(図26B)。これは、対照サンプルと比較して形状が変化した指紋領域における約1375cm−1のピークに関連すると思われる(図26C、ピーク1)。約1280cm−1において対照サンプルには存在しないピークも形成される(図26C、ピーク2)。化合物Bサンプルの硬化後に、いくつかの他のスペクトル変化を認めることができる。カルボニルバンドが、2つのピークから1つのピークに合流する(図26B)。このピークは、化合物B粉末対照より顕著に広い(図26B)。また、硬化処理の後に約1025cm−1のC−Oピークが消える(図26C、ピーク3)。これらの変化は、硬化の結果としての化合物Bの構造的変化を示す。硬化後にその強度が大きく低下する、約990cm−1のトランスC=Cトリエンピークの変化があり(図26C)、それは、化合物Bの酸化が生じたことを示している。これらの変化は、化合物B構造体の構造変化を示す。
【0176】
HPLCによる化合物B薬物充填量のアッセイは、化合物B(最終硬化前)の回収率がその化合物Bをクーポンに噴霧する前および噴霧した後で等しいことを明らかにしている。上記噴霧前の化合物のクロマトグラム(図27B)を調べると、噴霧後に何ら顕著な分解生成物が形成されていないようである(図27Aは対照)。しかし、硬化処理の後に、化合物B薬物粉末回収率は、約9%まで低下し(表9)、HPLCによって検出されるようにいくつかの新しい副生成物ピークが形成される(図27C)。これらの結果は、図26Cに示されるFTIRデータと一致しており、それは、最終硬化処理の後に化合物Bの分解が生じたことを示す。
【0177】
【表9】

要約すると、これらの試験は、油誘導生体材料コーティングが単独で硬化されると、油誘導生体材料コーティングの各成分が硬化処理の間に酸化され、特に、油誘導ステントコーティング処方物には存在しない化合物B治療化合物が硬化処理の結果として顕著に分解することを示した。これは、本発明による本明細書に記載の予備硬化処理の保護的性質を証明している。
【0178】
(実施例10)
組合わされて、クーポンに噴霧された、化合物B脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング処方物成分の分析
この実験群では、化合物B油誘導予備硬化生体材料コーティングにおける各成分についての化学的性質の変化を調べた。それらの成分を混ぜ合わせ、クーポンに噴霧し、ステントコーティング製造プロセスの異なる段階に供した。30%の予備硬化魚油中の60%の化合物B、および10%のビタミンEをMTBEに溶解させ、クーポンに噴霧被覆した。93℃で6時間にわたる最終硬化前および最終硬化後にサンプルを分析した。コーティングに対してFTIR、HPLCおよびGC分析を実施した。図28A、28Bおよび28Cは、最終硬化前および最終硬化後の化合物B油誘導予備硬化生体材料コーティングのFTIRスペクトルを示す。興味深いことに、特に、化合物B治療化合物に割り当てられた官能基において、最終硬化後にスペクトルのスペクトル変化がほとんどない。具体的には、トランスC=Cバンドに明確な強度変化が存在せず、FTIRの指紋領域に構造の如何なる顕著な変化がないようである(図28C)。加熱後の化合物B生体材料コーティングにおける最大の変化は、硬化の魚油成分のラクトン/エステル架橋と一致し、硬化後に魚油そのものにも観察された1780cm−1付近の吸収の増加である(図21B)。これらの結果は、最終硬化後に顕著な構造変化が認められた、化合物B粉末単独について得られた結果(図26)と対照をなし、化合物Bが、油誘導生体材料処方物に混合されるとより化学的に安定であることを示している。
【0179】
化合物Bにおける薬物構造の保持についてのさらなる証拠が、表10に示される化合物BのHPLCアッセイ結果によって示される。処方物における平均化合物B回収率は、クーポン上で約62%であり、単に薬物粉末として存在する場合は約9%にすぎなかった。しかし、コーティングにおける平均ビタミンE回収率は、処方物中、最終硬化後にそれ自体では81%から68%まで低下する傾向にある。脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング処方物からの化合物BのHPLCクロマトグラムの分析は、薬物分解が薬物のみの結果と比較して大きく低減されることを示す(図27C対図29B)。
【0180】
最終硬化前後の化合物B油誘導生体材料処方物のGC脂肪酸組成分析は、処方物における魚油の脂肪酸の酸化が、それ自身で硬化した場合と比較して顕著に低減されることを明らかにした(図23対図30)。ビタミンEは、酸化防止剤である(すなわち魚油より高速で酸化する)ため、この結果は予想外ではない。油成分の不飽和脂肪酸の酸化の抑制は、最終硬化前および最終硬化後の最終硬化前のGCクロマトグラムにおいても観察される(図12)。
【0181】
【表10】

(実施例11)
FTIRを使用する化合物B脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングのインサイツ動態学的分析およびHPLC分析
この実験において、実施例3および4のモデルクーポン実験を化合物B油誘導生体材料ステントコーティング処理に関連づけるために、30%の予備硬化魚油中の60%の化合物BおよびビタミンEをMTBEに溶解させ、3.5×13mmコバルトクロミウムステントに噴霧被覆した。被覆ステントをオーブン内に配置して、200°Fで硬化させ、6時間の硬化処理の1時間毎にサンプルを取り出した。FTIR分光分析を時点毎に実施した。化合物BおよびビタミンEのHPLCアッセイ試験をT=0、3および6時間の硬化点で実施した。
【0182】
様々な時点において実施されたFTIR分析(図31A、31Bおよび31C)は、クーポン上の化合物B油誘導処方物について得られたものと最終的な化学的性質が類似する傾向を明らかにした(図28)。具体的には、吸収バンドのほんの小さなシフトを認めることができたが、化合物B薬物粉末FTIRクーポン実験と比較して、化合物B構造の極端な低下は認められなかった(図26対図31)。化合物BについてT=0、3および6時間においてステントサンプルに対して実施されたHPLCアッセイ試験を図17に示す。化合物Bは、硬化時間の関数として回収率の低下を示し、薬物の酸化により化合物Bについての最終硬化平均回収率は75%であったが、わずかに9%の回収率を示した、加熱のみが施された化合物B薬物粉末よりはるかに小さい程度であった。ビタミンEアッセイ結果は、化合物Bと類似する傾向があり、時間の関数として回収率が低下して、69%の最終回収率が得られる。
【0183】
(実施例12)
脂肪酸を基材とした予備硬化誘導ステントコーティング形成のメカニズムの概要
実施例11〜13で実施された実験により、化合物B油誘導予備硬化生体材料ステントコーティングの形成の化学反応を解明するいくつかの結論をデータから導くことができる。実施例11で、MTBE中の各処方物の成分をクーポンに噴霧し、次いでクーポン表面を後硬化させ、それにより、処理における各成分についての化学的性質の変化を測定した。予備硬化魚油のみのクーポンの分析は、シスC=C結合が維持されていないため、最終硬化が存在する二重結合をさらに酸化させることを明らかにした。さらなるラクトン架橋およびカルボニル副生成物の形成が検出される。後硬化前および後硬化後の予備硬化魚油のみのクーポンのGC脂肪酸プロファイル分析は、魚油脂肪酸二重結合の酸化とも一致した。ビタミンEのみのクーポンのFTIR分析でも、最終硬化処理がビタミンEを酸化させることが測定された。これは、カルボニル吸収領域におけるビタミンE副生成物ピークの形成およびフェノールOH吸収バンドの減少(loss)によって証明された。酸化は、最終硬化後のビタミンE回収率の20%低下を示したHPLCアッセイによって確認された。最後に、クーポンに噴霧された化合物B薬物粉末の試験は、薬物を溶媒に溶解させ、それをクーポンに噴霧すると、対照粉末スペクトルと比較して、化合物B構造が変化すること(すなわち、アミド吸収バンドのシフト)を示した。最終硬化後、化合物B薬物粉末化学構造は、FTIRによるいくつかの吸収形態変化によって証明されるように顕著に変化し、わずか9%の化合物Bの回収率がHPLCアッセイによって得られ、分解を示す副生成物ピークがHPLCクロマトグラムに存在した。これらの試験の結果は、最終硬化処理を介してビタミンE、予備硬化魚油および化合物B薬物粉末成分が酸化されることを明確に示しているが、これらの結果は、典型的な化合物BのHPLCアッセイ結果が油誘導ステントコーティングからの化合物Bの75〜85%の回収率の範囲であるため、一緒に混合され、次いで最終硬化処理が施された場合の処方物成分(すなわちビタミンEおよび予備硬化魚油)の間にさらなる相互作用が存在することを示唆している。
【0184】
第2の実験群において、化合物B、予備硬化魚油およびビタミンEをMTBE中に混合し、クーポンに噴霧し、最終後硬化処理ステップの前および最終後硬化処理ステップの後にサンプルを分析した。これらのデータは、FTIRスペクトルによって証明される薬物構造の保持の顕著な向上およびHPLCアッセイによって測定されるように、コーティングからの薬物回収率の上昇(すなわち約62%)を明らかにした。さらに、化合物Bについての副生成物ピークがHPLCによって検出されたが、薬物そのものに最終後硬化処理が施されたときに検出されるピークよりはるかに低強度であった。予備硬化魚油は、ビタミンEが配合されると、GC脂肪酸組成分析で検出されるように、ビタミンEを含まない予備硬化魚油と比較した場合、処方物における酸化の低下を示した(図23対図12)。しかし、ラクトン/エステル架橋は、依然として観察された。
【0185】
概して、ステント試験から得られた結果は、平均化合物B回収率が75%に上昇したことを除いて、クーポン処方物試験から得られた結果を反映していた。
【0186】
この試験で実施した実験に基づいて、いくつかの結論を得ることができる。噴霧後、ステントに塗布されたコーティングは均一ではないようであり、加熱後、コーティングは、ステントの表面全体に広がり、予備硬化魚油が架橋し、均一なコーティングが生成される。処方物からの化合物Bの回収率は、化合物Bそのものをアッセイしたときに得られた回収率(9%)より顕著に高く、それは、配合物(すなわちビタミンE)が薬物安定性に対していくぶんかの保護を与えることを示している。
【0187】
処方物中のビタミンEの分析により、最終硬化処理の結果としてビタミンEは酸化するが、予備硬化魚油は、GC脂肪酸プロファイルによって検出されるように酸化しにくいことが、FTIRおよびHPLC試験を使用して示された。化合物B分析データと同様に、この結果は、ビタミンEが酸化過程の間に油に対する保護を与えていることを示している。しかし、ビタミンEが存在しても、最終硬化後のクーポン上の処方物における魚油成分中のラクトン/エステル架橋を依然として検出できた。処方物に使用される魚油は、使用前に予備硬化されるため、油誘導生体材料コーティングにおいてもラクトン/エステル架橋が生じ得る。魚油を部分硬化させると、ラクトン/エステル架橋を形成するのに必要なカルボキシルおよびヒドロキシル官能基が生成されるため、最終硬化工程におけるビタミンEの存在は、さらなる酸化を低減することのみに働くが、酸化、または予備硬化油に既に形成された酸化または酸化分子種を逆転することはできない。
【0188】
認めることができるように、例えば、治療薬の構造を保持することによって、治療薬は、コーティングから放出されるときの放出プロファイルが向上することになる。
【0189】
(実施例13)
化合物Eを使用して脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングをステント上に生成する方法
酸素をディヒューザーを通して注入しながら全体で23時間にわたって反応器中93℃で魚油を加熱することによって予備硬化魚油(PCFO)を調製した。得られた予備硬化魚油の粘度は、1×10cpsであった。18.5mgのPCFOと6.4mgのビタミンEと57.9mgの化合物Eと8.20gのメチル−tert−ブチル−エーテル(MTBE)(Sigma Chemicals)とを組合わせて、99%の溶媒、1%の固形分を有する噴霧コーティングのためのコーティング溶液を生成することによって、70%の化合物E、22.5%のPCFOおよび7.5%のビタミンEからなるコーティング処方物を作製した。この溶液を透明になるまで30分間にわたって渦撹拌した。SonoTek Medicoat DES1000超音波噴霧システムを使用して、Atrium Cinatra(商標)CoCrステント(3.5×13mm)を噴霧被覆した。目標コーティング充填量は、133.28μgの実際のコーティング重量を有するステント1つ当たり100μgの化合物Eであり、それは、コーティングにおける計算された最終薬物分率に基づいて93.2μgの計算された薬物充填量になる。被覆ステントを6時間にわたって93℃までに設定されたオーブンにて硬化させた。この処理により、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して撮像すると、滑らかな表面特性を有する乾燥した非粘着性の(non−tacky)コンフォーマルステントコーティングが生成される。
【0190】
関連するが、個別の実験において、上記と同じ薬物コーティング処方物の20μLを、化合物Eの目標薬物充填量を100μgとしてコバルトクロミウムクーポン上にピペットで添加した(pipetted)。被覆クーポンを93℃でオーブンにて6時間にわたって後硬化させた。6時間の最終後硬化処理後の被覆クーポンの重量測定により、69.92%の化合物Eの計算された薬物分率に基づいて、クーポン1つ当たりの平均薬物充填量が106.7μgの化合物Eになる、152.603μgの平均コーティング充填量が実証された。後硬化後に、薬物コーティングを100%のアセトニトリル溶液でクーポンから抽出し、HPLCを介して分析して、溶液における薬物濃度を測定し、それによりクーポンから抽出した全薬物質量を測定した。クーポンから抽出された全薬物質量を、重量法で測定したクーポン上の実際のコーティング重量と一緒に用いて、後硬化処理後に回収される、コーティング中のクーポンに塗布された薬物の比率を計算する。93℃にて6時間にわたってCoCrクーポン上で硬化したコーティングからの薬物回収率を計算したところ96.7%であった。薬物回収率データは、薬物完全性が、コーティング処方物、塗布、および最も重要なこととして熱後硬化処理を通して保持されることを明確に示している。
【0191】
(実施例14)
治療薬の化合物Dを使用して脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングをステント上に生成する方法
酸素をディヒューザーを通して注入しながら全体で23時間にわたって反応器中93℃で魚油を加熱することによって予備硬化魚油(PCFO)を調製した。得られた予備硬化魚油の粘度は、1×10cpsであった。55.4mgのPCFOと18.5mgのビタミンEと74.3mgの化合物Dと、60%のメチル−tert−ブチル−エーテル(MTBE)、40%のアセトンからなる14.67gの溶媒とを組合わせて、99%の溶媒、1%の固形分を有する噴霧コーティングのためのコーティング溶液を生成することによって、50%の化合物D、37.5%のPCFOおよび12.5%のビタミンEからなる化合物D薬物コーティング処方物を作製した。この溶液を透明になるまで30分間にわたって渦撹拌した。SonoTek Medicoat DES1000超音波噴霧システムを使用して、Atrium Cinatra(商標)CoCrステント(3.5×13mm)を噴霧被覆した。目標コーティング充填量は、164.16μgの実際のコーティング重量を有するステント1つ当たり100μgの化合物Dであり、それは、コーティングにおける計算された最終薬物分率に基づいて82.3μgの計算された薬物充填量になる。被覆ステントを6時間にわたって93℃までに設定されたオーブンにて硬化させた。この処理により、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して撮像すると、滑らかな表面特性を有する乾燥した非粘着性のコンフォーマルステントコーティングが生成される。
【0192】
関連するが、個別の実験において、上記と同じ薬物コーティング処方物の40μLを、シロリムス薬の目標薬物充填量を100μgとしてコバルトクロミウムクーポン上にピペットで添加した。被覆クーポンを93℃でオーブンにて6時間にわたって後硬化させた。6時間の最終後硬化処理後の被覆クーポンの重量測定により、50.13%のシロリムスの計算された薬物分率に基づいて、クーポン1つ当たりの平均薬物充填量が153.1μgのシロリムスになる、305.59μgの平均コーティング充填量が実証された。後硬化後に、薬物コーティングを80%のメタノール、20%(0.2%酢酸)溶液中でクーポンから抽出し、HPLCを介して分析して、溶液中の薬物濃度を測定し、それによりクーポンから抽出した全薬物質量を測定した。クーポンから抽出された全薬物質量を、重量法で測定したクーポン上の実際のコーティング重量と一緒に用いて、後硬化処理後に回収される、コーティング中のクーポンに塗布された薬物の比率を計算する。93℃にて6時間にわたってCoCrクーポン上で硬化したコーティングからの薬物回収率を計算したところ71.5%であった。薬物回収率データは、薬物完全性が、コーティング処方物、塗布、および最も重要なこととして熱後硬化処理を通して保持されることを明確に示している。シロリムス薬回収率は、本実施例において100%未満であるが、その回収率は、魚油の予備硬化工程が除かれ、すべてのコーティング硬化が、薬物を含めて最終コーティングで生じるときに得られる0に近い回収率よりはるかに良好である。
【0193】
(実施例15)
治療薬を組み込んでいる架橋脂肪酸を基材としたコーティングで被覆された冠状動脈ステントのインビボ性能および生体応答
この試験では、50%の化合物D、37.5%の予備硬化魚油および12.5%のトコフェロールを含むコーティング処方物を、25℃で測定した場合の粘度が1×10cpsである予備硬化魚油を使用して調製した。続いて、中程度のサイズのニードルを備えたBadgerエアブラシを使用して、コーティング処方物を3.0mm×13mmおよび3.5mm×13mmのAtrium Cinatra CoCrステントに噴霧した。ステントへのコーティングの噴霧コーティング塗布に続いて、被覆ステントを93℃にて6時間にわたってオーブンで後硬化させて、均一かつコンフォーマルな薬物コーティング層を達成した。HPLCで測定したとおりステント1つ当たりの最終薬物充填量は、68μgの化合物Dであった。後硬化に続いて、被覆ステントをそれぞれ3.0mm×14mmおよび3.5mm×14mmのPTCAカテーテルにクリンピングし、続いてそれらのデバイスを梱包し(packaged)、35kgyの公称の線量のe−ビーム滅菌により滅菌した。次に無菌薬物被覆ステントデバイスを使用して、単一ステントをブタ心臓の3つの冠動脈、すなわち左前下行動脈(left anterior descending artery)(LAD)、左回旋動脈(LCX)および右冠動脈(RCA)に移植するブタモデルの前臨床試験を実施した。1)裸金属ステント、2)コーティングのみを含む(薬物を含まない)ステントおよび3)薬物被覆ステント(DCS)の3つの群のステントを移植して、それらの生体応答を比較して評価した。1.10:1のステントと血管の直径比を達成するようにすべてのステントを適当に膨張させて移植した。移植後、動物を回復させ、28±2日間維持し、その時点で動物を犠牲にし、心臓を取り出し、ホルマリンで固定した。固定後、ステント移植血管を単離し、心臓から切除した。ステント移植動脈を、薄切および組織病理評価のために切除し、メチルメタクリレートに埋め込んだ。切片を各ステントの近位部、中間部および遠位部から切除した。図32の画像は、BMSステントを有する代表的な血管断面である。図33の画像は、コーティングのみを含む(薬物を含まない)ステントを有する代表的な血管断面である。図34の画像は、DCSステントを有する代表的な血管断面である。これらの比較画像に認めることができるように、(以下に記載の)DCSに見られるより高量の線維素を除いて、それら3つの群の間には全体的な組織反応に顕著な相違がない。組織形態および組織病理の包括的および定量的分析を試験の一部として評価し、すべての3つの群についての平均傷害スコア、平均内膜炎症、平均直径狭窄率、平均線維素スコアおよび内皮化率(%)の具体的な結果を表11にまとめる。表11に認めることができるように、3つの群にわたる平均傷害スコアは、非常に類似しており(統計的な差がない)、ステント移植の間に誘発された機械的血管傷害の程度に関して群間に有意差が存在しないことを示している。一般に、1未満の傷害スコアは、低いと見なされる。傷害スコアと同様に、平均内膜炎症スコアも全群にわたって類似しており(統計的な差がない)、コーティング単独(薬物を含まない)およびDCSの両方に伴う炎症が、コーティングを全く含まないステントのそれと同じであることを示している。平均直径狭窄率(%)のデータは、群の間で細胞増殖に有意差がないことを示しており、すべての群が28日の時点で全体の直径狭窄率(%)が低いことを示している。1.10:1の伸展比(overstretch)がステント移植過程の間に比較的小さい傷害をもたらすため、それぞれの実験群間のこの細胞増殖のレベルは予想外のものではない。生体薬物応答の指標として使用される平均線維素スコアは、BMS群およびコーティング単独群が、同様に低い線維素スコアを有するのに対して、DCS群の線維素スコアがそれより有意に高く、薬物が局所ステントを移植した血管セグメントに効果的に送達されたことを示すことを明確に示しており、化合物Dに対する明確な生体応答を実証している。この応答は、化合物D、または類似の作用メカニズムを有する類似体を含む他の市販のステント製品で観察されたものと一致する。最後に、内皮化率は、ステントおよびステントを移植した血管セグメントが内皮単層で被覆される程度を示す(内皮単層は、正常に機能する動脈血管に存在し、血栓形成を防止する上で重要な最も多い内膜細胞/組織層である)。内皮化データは、すべての3つの群にわたり実質的に100%のステントを移植した血管セグメントの再内皮化を示し、下塗コーティング(base coating)も薬物コーティングもどちらも内皮治癒プロセスに干渉しないことを示している。
【0194】
【表11】

本発明の多くの修正および代替的な実施形態は、これまでの説明を読めば当業者に明らかになるはずである。よって、この説明は、単に例示と見なされるべきであり、本発明を実施するための最良の形態を当業者に教示することを目的とする。構造の詳細は、本発明の主旨から逸脱することなく実質的に変更されてよく、添付の特許請求の範囲内に含まれるすべての修正の排他的な使用が確保される。本発明は、添付の特許請求の範囲および適用可能な法律の規則が必要とする範囲のみに限定されることを意図する。
【0195】
本出願に引用されているすべての文献および類似の資料は、特許、特許出願、記事、書籍、論文、学位論文およびウェブ頁を含めて、当該文献および類似の資料の形式に関係なく、それらの全体が参照により明示的に組み込まれている。1つ以上の組み込まれた文献および類似の資料が、用語定義、用語使用または記載技術等を含めて、本出願と異なるか、または矛盾する場合は、本出願が優先される。
【0196】
本明細書に使用されるセクション見出しは、単に編成上の目的のためであり、いかなる場合も記載の主題を限定するものと見なされるべきでない。
【0197】
本発明を様々な実施形態および実施例とあわせて記載したが、これらの教示は、当該実施形態または実施例に限定されることを意図しない。対照的に、本発明は、当業者に理解されるように、様々な変更、修正および同等物を包含する。
【0198】
特許請求の範囲は、そのように指定される場合を除いて、記載の順序または要素に限定されるものとして読まれるべきでない。添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、形および詳細の様々な変更を加えることができることが理解されるべきである。したがって、以下の特許請求の範囲およびそれらの同等物の範囲および主旨内に含まれるすべての実施形態が主張される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋脂肪酸油および治療薬を含む医療デバイス用コーティングであって、前記脂肪酸が、前記治療薬との結合の前に部分架橋されたコーティング。
【請求項2】
前記治療薬が向上した放出プロファイルを有するような様式で、前記治療薬が前記コーティング内に含まれる、請求項1に記載のコーティング。
【請求項3】
予備硬化グリセリドをさらに含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項4】
約5〜50%のC16脂肪酸を含む予備硬化架橋脂肪酸を含む、医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング。
【請求項5】
前記油が5〜25%のC14脂肪酸を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項6】
前記油が5〜30%のC16脂肪酸を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項7】
約5〜25%のC14脂肪酸および5〜50%のC16脂肪酸を含む非ポリマー架橋脂肪酸を含む、医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング。
【請求項8】
架橋脂肪酸およびグリセリドを含む医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングであって、前記脂肪酸およびグリセリドが、前記コーティングを柔軟かつ水和性にする無秩序アルキル基を有する、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング。
【請求項9】
脂肪酸誘導生体材料を含む医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングであって、前記脂肪酸誘導生体材料がデルタ−ラクトンを含む、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング。
【請求項10】
それぞれ約1740〜1850cm−1にピークを有する赤外吸収スペクトルによって示されるラクトンとエステルの架橋を含む、医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング。
【請求項11】
架橋脂肪酸誘導生体材料を含む医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングであって、前記生体材料の約60〜90%が、500未満の分子量を有する脂肪酸によって構成される、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング。
【請求項12】
モジュレートされた治癒の達成を必要とする組織領域でモジュレートされた治癒を達成するのに好適な脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料であって、前記生体材料が、前記組織領域内または前記組織領域付近の血小板または線維素沈着のモジュレーションを含む前記モジュレートされた治癒を達成するのに十分な量で投与される、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料。
【請求項13】
前記組織領域が被験体の血管を基材としたである、請求項12に記載の生体材料。
【請求項14】
モジュレートされた治癒の達成を必要とする血管傷害の部位でモジュレートされた治癒を達成するのに好適な脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料であって、前記組成物が、少なくとも1測定基準の器質化組織修復のモジュレーションを含む前記モジュレートされた治癒を達成するのに十分な量で投与される、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料。
【請求項15】
前記血管治癒が、血管治癒の炎症段階である、請求項14に記載の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料。
【請求項16】
前記器質化組織修復が、前記血管傷害の部位における血小板または線維素沈着を含む、請求項14に記載の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料。
【請求項17】
前記少なくとも1測定基準の器質化組織修復のモジュレーションが、血管傷害の部位における治癒プロセスの遅延である、請求項14に記載の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料。
【請求項18】
前記組成物が、カテーテル、バルーン、ステント、外科用メッシュ、外科用包帯または移植片を介して、それを必要とする領域に投与される、請求項12または14に記載の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料。
【請求項19】
インビボで代謝されるとグリセリドを生成するように構成される、請求項1に記載のコーティング。
【請求項20】
約30〜90%の飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項21】
約30〜80%の不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項22】
グリセリドをさらに含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項23】
グリセリド、グリセロールおよび脂肪アルコールからなる群の1種または複数種をさらに含み、そのいずれも部分架橋することができる、請求項1に記載のコーティング。
【請求項24】
ビタミンEをさらに含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項25】
移植可能デバイスに結合される、請求項1に記載のコーティング。
【請求項26】
前記コーティングが医療デバイスに結合され、前記医療デバイスがステント、カテーテル、外科用メッシュまたはバルーンである、請求項1に記載のコーティング。
【請求項27】
前記治療薬が抗増殖薬、抗炎症薬、抗微生物薬または抗生物質である、請求項1に記載のコーティング。
【請求項28】
前記治療薬が化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、シクロスポリン誘導体またはラパマイシン誘導体である、請求項1に記載のコーティング。
【請求項29】
0.01Mリン酸緩衝食塩水(PBS)中で約5〜20日間まで前記治療薬を放出する放出プロファイルを有する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項30】
前記治療薬をインビボにて所望の放出速度で放出する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項31】
0.01Mリン酸緩衝食塩水(PBS)中で20日間を超える日数まで前記治療薬を放出する放出プロファイルを有する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項32】
約10〜20%のC14飽和脂肪酸および約25〜50%のC16飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項33】
ラクトンおよびエステル架橋を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項34】
赤外吸収およびX線回折によって測定される無秩序炭化水素鎖を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項35】
架橋剤を含まない、請求項1に記載のコーティング。
【請求項36】
インビボで脂肪酸、グリセロールおよびグリセリドに加水分解する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項37】
インビボで非炎症性成分に加水分解する、請求項1に記載のコーティング。
【請求項38】
インビボでの加水分解を促進するのに十分な量のカルボン酸基を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項39】
約50〜90%の飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項40】
約10〜50%の不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項41】
グリセリドをさらに含む、請求項1に記載のコーティング。
【請求項42】
グリセリド、グリセロールおよび脂肪アルコールからなる群の1種または複数種をさらに含み、そのいずれも部分架橋することができる、請求項1に記載のコーティング。
【請求項43】
前記脂肪酸の源が油である、請求項1に記載のコーティング。
【請求項44】
前記油が魚油、オリーブ油、グレープ油、パーム油またはヒマシ油である、請求項43に記載のコーティング。
【請求項45】
前記油が魚油である、請求項43に記載のコーティング。
【請求項46】
医療デバイス用コーティングを得るための調製物であって、前記調製物が予備硬化架橋脂肪酸油を含み、前記コーティングがエステルおよびラクトン架橋を含み、前記調製物の一部が予備硬化天然油を含む、調製物。
【請求項47】
治療薬をさらに含む、請求項46に記載の調製物。
【請求項48】
約1.0×10cpsから約1.0×10cpsの粘度を有する、請求項46に記載の調製物。
【請求項49】
さらに有機溶媒に溶解する、請求項46に記載の調製物。
【請求項50】
医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングを製造するための方法であって、
第1の硬化条件に従って油含有出発材料を硬化して第2の材料を形成する工程と、
治療薬と前記第2の材料とを組合わせて第3の材料を形成する工程と、
前記第3の材料を硬化させてコーティングを製造する工程とを含む、方法。
【請求項51】
前記第2の材料と組合わせる前に、前記治療薬を油含有材料または有機溶媒と組合わせる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記第1の硬化条件の硬化温度および/または全硬化期間が、前記治療薬の分解温度を上回る、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記第1の硬化条件は、脂肪酸の実質的な架橋が前記第2の硬化条件の間に生じるように前記油中でのエステルおよびラクトンの認識可能な形成をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記治療薬の放出プロファイルを調整するように、硬化温度および期間が調整される、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
ビタミンEを前記第2の材料に添加する、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記第3の材料を有機溶媒と組合わせ、硬化の前に医療デバイスに塗布してコンフォーマルコーティングを形成する、請求項50に記載の方法。
【請求項57】
前記第3の材料を、硬化前に医療デバイスに噴霧してコーティングを形成する、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記油含有出発材料が魚油である、請求項50に記載の方法。
【請求項59】
前記医療デバイスがステント、カテーテル、外科用メッシュまたはバルーンである、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
請求項50に記載の方法によって製造される第2の材料。
【請求項61】
約1.0×10cpsから約1.0×10cpsの粘度を有する、請求項60に記載の第2の材料。
【請求項62】
請求項50に記載の方法によって製造される非ポリマーコーティング。
【請求項63】
前記治療薬が抗増殖薬である、請求項50に記載の方法。
【請求項64】
前記治療薬が抗炎症薬である、請求項50に記載の方法。
【請求項65】
前記第2の材料が、医療デバイスに塗布されると、前記医療デバイスに非コンフォーマルコーティングを与えるように前記第1の硬化条件を調整し、前記第3の材料が、コーティングに塗布されると、コンフォーマルコーティングを与えるように前記第2の硬化条件を調整する、請求項56に記載の方法。
【請求項66】
最終コーティングの所望の機械特性を得るために前記第2の硬化条件に必要とされる硬化時間を短くするために、前記第1の硬化条件の硬化時間を実質的に長くすることができる、請求項50に記載の方法。
【請求項67】
所望の機械特性を得るとともに、最終コーティングまで感熱性薬物を保持するために前記第2の硬化条件に必要とされる硬化時間を短くするために、前記第1の硬化条件の硬化時間を実質的に長くすることができる、請求項50に記載の方法。
【請求項68】
疎水性非ポリマー架橋魚油および治療薬を含み、16〜22psiの圧縮力に耐えることができる、医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング。
【請求項69】
インビボで脂肪酸、グリセロールおよびグリセリドに加水分解する、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導医療デバイスコーティング。
【請求項70】
非ポリマー部分架橋脂肪酸および治療薬を含み、前記治療薬が向上した放出プロファイルを有するような様式で含まれている、医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング。
【請求項71】
医療デバイス用コーティングを得るための調製物であって、前記調製物が非ポリマー部分架橋脂肪酸および治療薬を含み、前記コーティングがエステル架橋およびラクトン架橋を含む、調製物。
【請求項72】
架橋脂肪酸油および治療薬を含む、医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティングであって、ここで、前記コーティングは、天然油含有出発材料を硬化させて前記脂肪酸の一部の架橋を誘導する工程、治療薬を前記部分架橋脂肪酸油に添加して治療薬−油組成物を形成する工程、前記治療薬−油組成物を硬化させて、前記コーティングが形成されるように前記脂肪酸中にさらなる架橋を誘導する工程によって調製される、医療デバイス用脂肪酸を基材とした予備硬化誘導コーティング。
【請求項73】
前記治療薬を、前記部分架橋脂肪酸油と組合わせる前に、天然油含有材料、有機溶媒および/またはビタミンEと組合わせる、請求項72に記載のコーティング。
【請求項74】
前記治療薬が向上した放出プロファイルを有するように、前記治療薬を、前記部分架橋脂肪酸油と組合わせる前にビタミンEと組合わせる、請求項72に記載のコーティング。
【請求項75】
予備硬化脂肪酸を含む独立型フィルム。
【請求項76】
約5〜50%のC16脂肪酸を含む、請求項75に記載の独立型フィルム。
【請求項77】
5〜25%のC14脂肪酸を含む、請求項75に記載の独立型フィルム。
【請求項78】
5〜40%のC16脂肪酸を含む、請求項75に記載の独立型フィルム。
【請求項79】
ビタミンEをさらに含む、請求項75に記載の独立型フィルム。
【請求項80】
生体吸収性である、請求項75に記載の独立型フィルム。
【請求項81】
癒着防止特性を維持する、請求項75に記載の独立型フィルム。
【請求項82】
治療薬をさらに含む、請求項75に記載の独立型フィルム。
【請求項83】
前記治療薬は、化合物A、化合物B、化合物C、化合物D、化合物E、シクロスポリン誘導体またはラパマイシン誘導体である、請求項75に記載の独立型フィルム。
【請求項84】
前記治療薬が前記フィルムの形成前に前記脂肪酸化合物と組合わされ、前記治療薬が前記フィルム全体に分散している、請求項75に記載の独立型フィルム。
【請求項85】
架橋脂肪酸油および治療薬を含む独立型フィルムであって、
天然油含有出発材料を硬化させて、前記脂肪酸の一部の架橋を誘導する工程、
治療薬を前記部分架橋した脂肪酸油に添加して、治療薬−油組成物を形成する工程、
前記治療薬−油組成物を硬化させて、前記脂肪酸中にさらなる架橋を誘導することで、前記独立型フィルムを形成させる工程によって調製される、独立型フィルム。
【請求項86】
部分架橋脂肪酸および治療薬を含む脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料であって、前記治療薬が前記生体材料組成物の少なくとも40重量%を構成する、脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料。
【請求項87】
前記治療薬が、前記生体材料組成物の少なくとも50重量%を構成する、請求項86に記載の脂肪酸を基材とした予備硬化誘導生体材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図22】
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【図23】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図27】
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【図28A】
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【図28B】
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【図28C】
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【図29】
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【図30】
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【図31A】
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【図31B】
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【図31C】
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【図32】
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【公表番号】特表2012−505030(P2012−505030A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531038(P2011−531038)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2009/037364
【国際公開番号】WO2010/042241
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(506087004)アトリウム メディカル コーポレーション (8)
【氏名又は名称原語表記】ATRIUM MEDICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】5 Wentworth Drive, Hudson, NH03051 (US).
【Fターム(参考)】