説明

架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子及びそのシリコーンオイル分散体

【課題】非極性分散媒中での沈降が少なく、かつ分散安定性に優れ、また非極性分散媒に電荷制御剤等の分散剤を用いることなく、電圧印加により単独で電気泳動する着色樹脂粒子を提供する。
【解決手段】架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる基材樹脂に、顔料を顔料分散剤の存在下で分散させて得られる粒子であり、前記粒子が0.90〜1.04g/cm3の真密度を有することを特徴とする架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示用素子、静電潜像トナー用粒子、電気粘性流体用粒子等に好適に用いられる架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子及びそのシリコーンオイル分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
着色樹脂粒子は、塗料、トナー、流体の可視化等種々の分野で利用されている。その中でも、非極性溶媒中で電圧を印加することにより、相対する電極間を電気泳動により移動する特性を有する着色樹脂粒子は、電子ペーパー等の画像表示用素子、静電潜像用粒子、電気粘性流体等の用途として、各分野において不可欠な原料として注目されている。
【0003】
ここで、着色樹脂粒子が画像表示装置の画像表示用素子として用いられる一例を紹介する。スペーサーを介して対向配置された、少なくとも一方が透明である2枚の電極基板の間に、画像表示素子としての着色樹脂粒子が分散媒中に分散された表示液を封入した表示パネルを構成する。この表示パネルの2枚の電極基板間に電界を印加することで、着色樹脂粒子を電気泳動により移動させることにより、表示を得ることができる。このような原理による画像表示装置は、視野角が通常の印刷物並みに広い、消費電力が少ない、メモリー性を有する等の長所を有することから、安価な表示装置として注目されている。
【0004】
このような着色樹脂粒子の電気泳動を利用した画像表示装置には、表示液中の分散媒として、非極性のものが一般に用いられる。非極性の分散媒としては、シリコーンオイルやパラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類が挙げられる。しかし、着色樹脂粒子と分散媒との比重差が非常に大きいことから、着色樹脂粒子が表示液中で沈降凝集してしまい、画像表示装置に表示ムラや動作不良が生じるという問題があった。
【0005】
このような問題を改善する従来技術としては、二酸化チタン粒子の粒子径を非常に微細にする(0.001〜0.1μm)ことで、粒子がブラウン運動をし、表示液との比重差による重力に逆らって安定な分散状態を得ることにより粒子の分散性を向上させたものが知られている(特許文献1参照)。また、着色樹脂粒子を中空や多孔質にして分散粒子と分散媒との比重差を小さくすることにより、粒子の長期的な分散性を確保させたものが知られている(特許文献2及び3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−105990号公報
【特許文献2】特許3949308号公報
【特許文献3】特開2003−280045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の方法では、電気泳動する粒子は、0.1μm以下と非常に微細であるため、表示に必要な色濃度を確保するために粒子の濃度を高める必要があり、そうすると分散体の粘度が非常に高くなり、粒子の電気泳動による移動が困難となることが分かった。また、特許文献2及び3の方法では、中空粒子や多孔質粒子に存在する空隙の数や量を正確に調整することが非常に困難なため、得られた着色樹脂粒子の各粒子間に大きな比重分布が生じてしまい、電気泳動による着色樹脂粒子の移動のバラツキから、画像表示装置の表示ムラや動作不良を起こしてしまうことが分かった。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、その目的とするところは、非極性分散媒中での沈降が少なく、かつ分散安定性に優れ、また非極性分散媒に電荷制御剤等の分散剤を用いることなく、電圧印加により単独で電気泳動する着色樹脂粒子を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かくして本発明によれば、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる基材樹脂に、顔料を顔料分散剤の存在下で分散させて得られる粒子であり、前記粒子が0.90〜1.04g/cm3の真密度を有することを特徴とする架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記の架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子をシリコーンオイルに分散させてなる正帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明による架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子は、非極性分散媒中での沈降が少なく、かつ分散安定性に優れ、また非極性分散媒に電荷制御剤等の分散剤を用いることなく、電圧印加により単独で電気泳動することが可能であり、画像表示用素子、静電潜像トナー用粒子、電気粘性流体用粒子等として好適に用いられる。
【0012】
また、架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が、炭素数が8〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を少なくとも一種類以上含むビニル系重合性単量体に架橋剤、顔料及び顔料分散剤が混合された重合性単量体組成物を重合することによって得られる場合、更に非極性分散媒中での沈降が少なく、かつ分散安定性に優れた架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が得られる。
【0013】
また、顔料分散剤が、炭素数が8〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体と親和性の高い部分及び顔料と親和性が高い部分とを備える樹脂である場合、更に非極性分散媒中での沈降が少なく、かつ分散安定性に優れた架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が得られる。
【0014】
また、顔料分散剤が、炭素数が8〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体とアミノ基含有ビニル単量体との共重合により得られた樹脂である場合、更に非極性分散媒中での沈降が少なく、かつ分散安定性に優れた架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が得られる。
【0015】
また、顔料が、炭素数が8〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を少なくとも一種類以上含むビニル系重合性単量体に架橋剤、顔料及び顔料分散剤が混合された重合性単量体組成物100重量%に対して1〜30重量%添加され、かつ前記顔料分散剤が、前記重合性単量体組成物100重量%に対して0.05〜15重量%添加される場合、更に非極性分散媒中での沈降が少なく、かつ分散安定性に優れた架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が得られる。
【0016】
また、本発明による架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が、炭素数が8〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を少なくとも一種類以上含むビニル系重合性単量体に電子供与基を有する化合物、架橋剤、顔料及び顔料分散剤が混合された重合性単量体組成物を重合することにより得られ、正帯電性を示す場合、更に非極性分散媒中での沈降が少なく、かつ分散安定性に優れ、また非極性分散媒に電荷制御剤等の分散剤を用いることなく、電圧印加により単独で電気泳動し得る架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が得られる。
【0017】
更に、上記の架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子をシリコーンオイルに分散させてなるシリコーンオイル分散体は、正帯電性を示し、表示ムラや動作不良のない画像表示装置の表示液として好適に用いられる。
また、シリコーンオイルが、2〜20センチストークスの動的粘度を有し、架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が、分散体100重量%に対して1〜50重量%含まれる場合、画像表示装置の表示液として更に好適なシリコーンオイル分散体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例2による架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子のTEM像である。
【図2】本発明の実施例4による分散安定性の評価結果を示す写真である(分散直後の写真である)。
【図3】本発明の実施例4による分散安定性の評価結果を示す写真である(分散後48時間経過後の写真である)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子(以下、単に着色樹脂粒子ともいう)は、架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる基材樹脂に顔料を顔料分散剤の存在下で分散させて得られる粒子であり、真密度が0.90〜1.04g/cm3である。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを示す。基材樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル系単量体と架橋剤とを用いて得られる。また、真密度とは、物質自身が占める体積だけを密度算定用の体積とする密度のことを言う。真密度の測定方法については、実施例において述べる。
一般的な架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子(例えば、メタクリル酸メチル粒子)の真密度は約1.2g/cm3であり、たとえ着色剤が含まれていても、この真密度は大きく変わることはない。このような真密度の粒子は、分散媒中で沈降凝集する。本発明の発明者等は、真密度を0.90〜1.04g/cm3の範囲に調整することで、分散媒中での沈降凝集を抑制できることを意外にも見出している。
【0020】
真密度が0.90g/cm3未満だと、分子量が小さくなり、着色樹脂粒子を安定して製造することが困難となる場合がある。また、分散媒の種類によっては、着色樹脂粒子と分散媒との比重差により、ほとんどの着色樹脂粒子が分散媒中で浮遊することとなって、分散安定性が悪くなる場合がある。また、真密度が1.04g/cm3を超えると、分散媒中での着色樹脂粒子の沈降速度が速くなり、沈降凝集等が発生して、分散安定性が悪くなる場合がある。
着色樹脂粒子は、中実粒子でも、中空粒子でも、多孔質粒子でもよい。着色樹脂粒子の各粒子間に大きな比重分布が生じることにより、着色樹脂粒子が電気泳動でバラついてしまう結果、画像表示装置が表示ムラや動作不良を起こしてしまうことを防ぐという観点から、着色樹脂粒子は中実粒子であることが好ましい。ここで、中実とは、実質的に空間の存在しないことを意味し、意図せず形成された空間を含んでいてもよい。
【0021】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子の平均粒子径は、0.2〜50μmが好ましい。より好ましくは、1〜30μmである。平均粒子径が0.2μm未満では、表示に必要な色濃度を確保することが難しくなり、分散媒中の着色樹脂粒子の濃度を高めることが必要となる。そうすると分散体の粘度が非常に高くなり、着色樹脂粒子の電気泳動による移動が困難となる場合がある。一方、50μmを超えると、分散媒との比重差が小さい場合でも粒子径が大きいため沈降速度が速くなり分散媒中で直ぐに沈降してしまう場合がある。
【0022】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子は、単分散性に優れていることが好ましい。ここで言う単分散性とは、粒子の大きさが略均一であって凝集せずに散らばりやすい状態のことを指す。単分散性の1つの指標となる粒度分布において、変動係数(CV値)が40%以下であることが好ましい。より好ましくは、30%以下である。CV値が40%を超えると、着色樹脂粒子同士の電気泳動性に大きなバラツキが見られるようになるため、表示ムラ、更には動作不良が生じる可能性がある。なお、CV値測定方法については、実施例において述べる。
【0023】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を少なくとも一種類以上含むビニル系重合性単量体に架橋剤、顔料及び顔料分散剤が混合された重合性単量体組成物を重合することによって得られる。
(メタ)アクリル酸エステル系重合性単量体としては、重合可能なものであれば特に限定されるものではないが、炭素数が8〜20である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体であれば、より好ましい。このような単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸i−オクチル、(メタ)アクリル酸i−ノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリルが挙げられる。これらの単量体から1種のみ使用しても又は2種以上を併用してもよい。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体の添加量は、ビニル系重合性単量体、顔料及び顔料分散剤を混合した重合性単量体組成物100重量%中、50〜98重量%が好ましい。より好ましくは、60〜97重量%である。50重量%未満では、重合によって製造された着色樹脂粒子の真密度が大きくなるので、分散媒中での樹脂粒子の沈降速度が速くなり、沈降凝集等が発生する場合がある。一方、98重量%を越えると、得られる樹脂のガラス転移温度が低くなり、また耐溶剤性も低くなるため、一般的な使用条件下での製造及び使用が困難となる場合がある。
【0025】
その他のビニル系重合性単量体としては、得られる着色樹脂粒子が所定の真密度(0.90〜1.04g/cm3)となるのを妨げない範囲で、広く一般的に用いられる各種ビニル系単量体を使用することができる。例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体、アクリル酸、メタアクリル酸、塩化ビニル、酢酸ビニル等を1種のみで又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
その他のビニル系重合性単量体の添加量は、ビニル系重合性単量体、顔料及び顔料分散剤を混合した重合性単量体組成物100重量%中、40重量%以下が好ましい。より好ましくは、30重量%以下である。添加量が40重量%を超えると、得られる(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子の真密度が大きくなるので、分散媒中での樹脂粒子の沈降速度が速くなり、沈降凝集等が発生する場合がある。
【0027】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子を製造する際に用いられる架橋剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、これらの誘導体等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のジエチレン性不飽和カルボン酸エステル、N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸の全てのジビニル化合物及び3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。
【0028】
架橋剤の添加量は、ビニル系重合性単量体、顔料及び顔料分散剤を混合した重合性単量体組成物100重量%中、1〜30重量%が好ましい。より好ましくは、5〜20重量%である。架橋剤の添加量が1重量%未満では、樹脂の架橋度が低く、また耐溶剤が低くなるため、得られる着色樹脂粒子が膨潤することや一部溶解することがあり、また着色樹脂粒子同士が合着することがある。また、架橋剤の添加量が30重量%を超えると、架橋剤により樹脂密度が高くなり、得られる着色樹脂粒子の真密度が大きくなることにより、分散媒中での着色樹脂粒子の沈降速度が速くなり、沈降凝集等を生ずる場合がある。
【0029】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子を得るために重合される重合性単量体組成物には、電子供与基を有する化合物が混合されてもよい。
電子供与基を有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えばN−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジ−tert−ブチルアミノエチルアクリレート、N−フェニルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジフェニルアミノエチルメタクリレート及び2−N−ピペリジルエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、アミノスチレン、ジメチルアミノスチレン、N−メチルアミノエチルスチレン、ジメチルアミノエトキシスチレン、ジフェニルアミノエチルスチレン、N−フェニルアミノエチルスチレン等のスチレン類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−ビニル−6−メチルピリジン、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等の複素環類等の重合性単量体、並びにこれら一種以上からなる重合体並びに4級アンモニウム塩等の電子供与性の化合物が挙げられる。
【0030】
重合性単量体組成物に着色剤として混合される顔料には、公知の無機顔料や有機顔料が用いられてもよい。無機顔料としては、例えば、アルミナ、二酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ微粉体、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、炭化タングステン、炭化チタン等の粉末ないし粒子が挙げられる。有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等が挙げられる。
顔料は、酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等により表面処理されていてもよい。
【0031】
重合性単量体組成物中における顔料の混合割合としては、顔料の種類により多少異なるが、重合性単量体組成物100重量%中1〜30重量%が好ましい。より好ましくは1.5〜15重量%である。顔料の混合割合が1重量%未満では、得られる着色樹脂粒子における着色度が充分なものとならない場合がある。一方、30重量%を超えると、重合性単量体組成物の粘度が非常に高くなり、着色樹脂粒子が得られ難いことがある。また、粒子の比重が増加するため分散媒中において沈降凝集等を生ずる場合がある。
【0032】
重合性単量体組成物に混合される顔料分散剤には、公知の顔料分散剤が用いられてもよいが、炭素数が8〜20である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体と親和性の高い部分と顔料との親和性が高い部分からなる樹脂組成物が用いられることが好ましい。より好ましくは、炭素数が8〜20である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体とアミノ基含有ビニル単量体との共重合により得られた樹脂組成物である。これらの樹脂組成物は1種のみ用いられても、また2種以上が併用されてもよい。
【0033】
顔料分散剤用の炭素数が8〜20である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、上記着色樹脂粒子用の炭素数が8〜20である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体の例示中から選択できる。一方、アミノ基含有ビニル単量体としては、例えば、ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数1〜4)(メタ)アクリレート[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数1〜4)(メタ)アクリルアミド[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等]が挙げられる。
【0034】
重合性単量体組成物中における顔料分散剤の混合割合としては、顔料分散剤の種類により多少異なるが、重合性単量体組成物100重量%中0.05〜15重量%が好ましい。顔料分散剤の混合割合が0.05重量%未満では、着色樹脂粒子中の顔料の分散が悪く凝集を起こすため、均一な着色を示す着色樹脂粒子を得られ難い場合がある。一方、15重量%を超えると、顔料の分散性は添加量に見合った効果を得られないことがある。
【0035】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子を得るための重合性単量体組成物を重合する方法としては、公知の重合方法、例えば懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等を用いることができる。以下懸濁重合法による(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子の製造方法の一例について説明するが、本発明は、この製造方法のみに限定されるものではない。
【0036】
重合性単量体に着色剤としての顔料及びその他の添加物(重合開始剤、架橋剤、界面活性剤、顔料分散剤等)を添加、混合することにより重合性単量体組成物が得られる。得られた重合性単量体組成物は、水系分散媒に懸濁される。ここで、懸濁した粒子の安定化を図るために、重合性単量体組成物100重量部に対して、水系分散媒は100〜1000重量部使用するのが好ましい。なお、水系分散媒としては、水、又は水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール)との混合物が挙げられる。
懸濁安定剤は、重合性単量体組成物の添加前に水系分散媒へ添加することが好ましい。懸濁重合は、水系分散媒を、例えば40〜120℃、好ましくは45〜110℃の温度に加熱することにより行うことができる。懸濁重合が完了した後、得られた着色樹脂粒子を水系分散媒中より分離、洗浄、乾燥した後、必要に応じて分級工程を経て、所望粒径の着色樹脂粒子を得ることができる。
【0037】
懸濁安定剤としては、目的とする着色樹脂粒子が得られるものであれば何ら制限されるものではないが、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛等のリン酸塩、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸アルミニウム、ピロリン酸亜鉛等のピロリン酸塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、コロイダルシリカ等難水溶性無機化合物の分散安定剤が挙げられる。なかでも、重合終了後に系のpHを調整することにより容易に溶解し、除去可能な無機化合物を用いるのがよい。例えば、第三リン酸カルシウムや複分解生成法によるピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、コロイダルシリカを使用すると、目的とする着色樹脂粒子をより安定的に得ることができるため好ましい。
【0038】
懸濁安定剤は、得られる着色樹脂粒子の粒子径が所定の大きさになるようにその組成や使用量を適宜調節して使用される。懸濁安定剤の添加量は、重合性単量体組成物100重量部に対して、0.1〜30重量部が好ましい。より好ましくは0.5〜20重量部である。
【0039】
分散媒に水系分散媒を用いる場合には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性イオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等の界面活性剤が添加されてもよい。界面活性剤の添加量は、重合性単量体組成物100重量部に対して、0.01〜5重量部が好ましい。より好ましくは0.02〜3重量部である。
【0040】
アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油カリ等の脂肪酸油、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0041】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイドや、リン酸エステル系又は亜リン酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられる。
【0042】
重合に用いる重合開始剤としては、通常懸濁重合に用いられる油溶性の過酸化物系あるいはアゾ系開始剤が用いられる。一例を挙げると、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系開始剤、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,3,3−トリアゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、ジメチル−2,2−アゾビスイソブチレート等がある。重合開始剤の添加量は、重合性単量体組成物100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましい。特に、0.1〜5重量部が好ましい。
【0043】
重合完了後、着色樹脂粒子は、必要に応じて遠心分離されて水性媒体が除去され、水及び溶剤で洗浄された後、乾燥、単離される。本発明で行われる懸濁重合により、得られる着色樹脂粒子の水系分散媒からの単離方法は、特に限定されるものではないが、公知の方法として例えば、スプレードライヤーに代表される噴霧乾燥法、ドラムドライヤーに代表される加熱された回転ドラムに付着させて乾燥する方法又は凍結乾燥法が挙げられる。
【0044】
また、上記重合工程において水系での乳化粒子の発生を抑えるために、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等の水溶性の重合禁止剤が用いられてもよい。
得られる架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子は、画像表示用素子、電気粘性流体用粒子等の粒子の電気泳動を利用する用途、静電潜像トナー用粒子の用途に使用することができる。この内、電気泳動を利用する用途に使用することが好ましい。
【0045】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子の電気泳動に用いられる分散媒としては、非極性のものであればよく、特に限定されるものではない。非極性の分散媒としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン等のパラフィン系炭化水素、イソヘキサン、イソオクタン、イソドデカン等のイソパラフィン系炭化水素、流動パラフィン等のアルキルナフテン系炭化水素、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサン又は環状ポリアルキルフェニルシロキサン等のシリコーンオイルが挙げられる。
【0046】
これら非極性の分散媒のうち、環境への影響、着色樹脂粒子の電気泳動のし易さ等を考慮すると、動的粘度が2〜20センチストークスのジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、ジアルキルシリコーンオイル、アルキルフェニルシリコーンオイル、環状ポリジアルキルシロキサン又は環状ポリアルキルフェニルシロキサン等のシリコーンオイルを用いることが好ましい。これらのシリコーンオイルの25℃における液比重は、概ね0.79〜1.00g/cm3の範囲である。
【0047】
シリコーンオイルに着色樹脂粒子を分散させて得られる分散体において、着色樹脂粒子が占める割合は、分散体100重量%に対して1〜50重量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜40重量%である。1重量%未満の場合、表示に必要な色濃度を確保することができない場合がある。一方、50重量%を超える場合、分散体の粘度が高くなり、着色樹脂粒子が電気泳動により移動することができない場合がある。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
まず、平均粒子径及びCV値の測定方法、真密度の測定方法、着色樹脂粒子内での着色剤(顔料)の分散状態の確認方法、着色度の評価方法、極性の評価方法、分散安定性の評価方法について説明する。
【0050】
(平均粒子径及びCV値の測定方法)
着色樹脂粒子の平均粒子径の測定方法は、Coulter Electronics Limited発行のReference MANUAL FOR THE COULTER MULTISIZER(1987)に従って、粒子サイズに適した細孔径サイズを有するアパチャーを用いてキャリブレーションを行う方法とする。使用するアパチャーの細孔径サイズは、平均粒子径が1〜10μm未満の着色樹脂粒子に対しては50μmを、平均粒子径が10〜30μm未満の着色樹脂粒子に対しては100μmのものを用いた。
測定には、精密粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製: コールターマルチサイザーIII)が用いられる。具体的には、着色樹脂粒子0.1gを0.3%ノニオン系界面活性剤溶液10ml中にタッチミキサー及び超音波を用いて予備分散させ、これを本体備え付けのISOTONII(ベックマンコールター社製測定用電解液)を満たしたビーカー中に、緩く攪拌しながらスポイドで滴下して、本体画面の濃度計の示度を10%前後に合わせる。次にマルチサイザーIII本体にアパチャーをセットし、Current、Gain、Polarityをアパチャーサイズに合わせた所定の条件で測定を行う。測定中は気泡が入らない程度にビーカー内を緩く攪拌しておき、着色樹脂粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。
【0051】
体積加重の平均径(体積%モードの算術平均径:体積メジアン径)を着色樹脂粒子の平均粒子径(Y)として算出する。
変動係数(CV値)とは、標準偏差(σ)及び上記平均粒子径(Y)から以下の式により算出された値である。
CV値(%)=(σ/Y)×100
【0052】
(真密度の測定)
島津製作所−マイクロメリティックス社製 乾式密度計アキュピック1330(気体置換法)を用い、着色樹脂粒子4gを10ccセルに採り、繰り返し5回以上測定し、その平均値を求める。
【0053】
(着色樹脂粒子内での着色剤の分散状態の確認)
エポキシ樹脂に着色樹脂粒子を埋設し、超薄切片を作製し透過型電子顕微鏡写真にて、断面を観察する。なお、透過型電子顕微鏡装置としては日立製作所社製H−7600を用いる。
【0054】
(着色度の評価)
着色樹脂粒子の着色度は次の方法で測定する。
50μmのギャプを設け、並行平板とした2枚の片面に酸化インジウムスズ(ITO)をコートしたガラス板間に着色樹脂粒子10重量%のシリコーンオイル分散体(動粘度:10センチストークス、KF−96L−10CS、信越化学社製)を注入したセルを作成し、そのセルを白色板の上に置き、上部より分光測色計(コニカミノルタ社製504)を用いてL***値(F10)を測定する。また、黄色顔料を用いた着色樹脂粒子については、YI値(D1925)も測定する。
【0055】
(極性の評価)
シリコーンオイル中における着色樹脂粒子の極性については、次の方法により測定を行う。
20mlのガラス瓶に、着色樹脂粒子を量り取り、そこへ着色樹脂粒子固形分が5重量%となるようにシリコーンオイル(動粘度:2センチストークス、KF−96L−2CS、信越化学社製)を加えて10gとし、これを測定用試料とする。
次に、片面に酸化インジウムスズ(ITO)をコートしたガラス板2枚を、コート面を内側にし、銅テープを貼り付けたスペーサーをガラス板間に挟んでガラス板の間隔を1mmとした平行平板(冶具)を用意する。冶具を測定用試料に浸漬し、冶具の左側に+100Vの電圧を印加して10秒間静置する。10秒経過後、測定用試料から冶具を引き上げ、左側のガラス板に粒子が付着していればその粒子極性は負、右側のガラス板に粒子が付着していればその粒子極性は正とする。
【0056】
(分散安定性の評価)
シリコーンオイル中における着色樹脂粒子の分散安定性評価については、次の方法により行う。
実施例、比較例に記載の着色樹脂粒子を量り取り、そこへ着色樹脂粒子固形分が10重量%となるようにシリコーンオイル(動粘度:10センチストークス、KF-96L-10CS、信越化学社製)を加えて着色樹脂粒子を分散させ、これを測定用試料とする。測定用試料50mlを50mlメスシリンダーに移し、静置48時間経過後の着色樹脂粒子の分散状態を観察し、下記3段階の評価基準を基に評価する。
(評価基準)
◎:着色樹脂粒子の沈殿がほとんどなく、また無色透明な上澄み部分が10%未満
○:着色樹脂粒子の沈殿が若干見られるものの、無色透明な上澄み部分が40%未満
×:着色樹脂粒子が沈殿しており、無色透明な上澄み部分が40%以上
以下に実施例及び比較例について説明する。なお、特にことわりのない限り「部」は重量部、「%」は重量%を意味するものである。
【0057】
(実施例1)
300mlセパラブルフラスコにシリコーンオイル(動粘度:1センチストークス、商品名KF−96L−1CS,信越化学社製)100部と、予め開始剤として2,2−アゾ−ビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)(日本ヒドラジン工業社製、以下ABNV)2部を溶解したジエチルアミノエチルメタクリレート(DEAEMA)20.0部、アクリル酸イソステアリル(大阪有機化学工業社製、以下ISTA)79.0部及びα−メチルスチレンダイマー(商品名ノフマーMSD、日油社製)1.0部を添加し、窒素雰囲気下70℃にて攪拌を行いながら20時間溶液重合を行った。重合終了後、減圧下70℃にてシリコーンオイルを除去し無色透明な液体を得た。得られた液体を顔料分散剤とした。
【0058】
メタクリル酸イソステアリル(以下ISTA)200重量部、顔料(商品名Fast Yellow 7416、山陽色素社製)10重量部、顔料分散剤3重量部を直径5mmのジルコニアビーズの入ったビーズポッドに入れ6時間攪拌し、顔料を分散した。次に上記混合液の一部を計り取り、残りのISTA並びにエチレングリコールジメタクリレート(以下EGDMA)を添加してISTA/EGDMA/DEAEMA/顔料/顔料分散剤=95.6/2.0/0.2/2.0/0.2(重量%)とした重合性単量体組成物を調製した。
【0059】
この重合性単量体組成物100重量部に、ABNV0.5部及び過酸化ベンゾイル(商品名ナイパーBW,日油社製)を添加し溶解した。次に、予め調整された0.020重量%のラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムと1.0重量%のピロリン酸マグネシウムを分散した水500重量部に投入し、ホモミキサー(特殊機化工社製)を用い5000rpmで5分間撹拌し、1次懸濁液とした。次いで、ナノマイザーLA−33型(ナノマイザー社製)にナノマイザープロセッサーLD−500(ナノマイザー社製)を接続して、一次圧力5kg/cm2で1次懸濁液を処理し、2次懸濁液を得た。
【0060】
この懸濁液を窒素雰囲気下、全体を均一撹拌しながら昇温し、60℃で5時間重合を行った。更に、105℃に昇温し、1時間重合を継続し重合を終了した。次いで常温まで冷却し、塩酸を添加して懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウムを溶解した。次いで、固液分離、水洗浄を繰り返し行った後、70℃の熱風乾燥機で24時間乾燥し、架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子を得た。
【0061】
得られた着色樹脂粒子は、真密度0.94(g/cm3)、平均粒子径13.2μm、CV値19.4%であった。またシリコーンオイル中での極性は正であり、分散安定性に優れ、粒子の沈殿がほとんどなく、また無色透明な上澄み部分が10%未満(◎)であった。
【0062】
(実施例2)
ISTA200重量部、顔料(商品名Fast Yellow 7416、山陽色素社製)10重量部、実施例1の顔料分散剤3重量部を直径5mmのジルコニアビーズの入ったビーズポッドに入れ6時間攪拌し、顔料を分散した。次に上記混合液の一部を計り取り、残りのISTA並びにEGDMAを添加してISTA/EGDMA/DEAEMA/顔料/顔料分散剤=86.9/6.0/0.5/6.0/0.6(重量%)とした重合性単量体組成物を調製した。
【0063】
この重合性単量体組成物100重量部に、ABNV0.5部及び過酸化ベンゾイル(商品名ナイパーBW,日油社製)を添加し溶解した。次に、あらかじめ調整された0.025重量%のラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウムと1.0重量%のピロリン酸マグネシウムを分散した水500重量部に投入し、ホモミキサー(特殊機化工社製)を用い5000rpmで5分間撹拌し、1次懸濁液とした。次いで、ナノマイザーLA−33型(ナノマイザー社製)にナノマイザープロセッサーLD−500(ナノマイザー社製)を接続して、一次圧力5kg/cm2で1次懸濁液を処理し、2次懸濁液を得た。
【0064】
この懸濁液を窒素雰囲気下、全体を均一撹拌しながら昇温し、60℃で5時間重合を行った。更に、105℃に昇温し、1時間重合を継続した後、重合を終了した。次いで常温まで冷却し、塩酸を添加して懸濁安定剤としてのピロリン酸マグネシウムを溶解した。次いで、固液分離、水洗浄を繰り返し行った後、70℃の熱風乾燥機で24時間乾燥し、架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子を得た。
【0065】
得られた着色樹脂粒子は、真密度1.00(g/cm3)、平均粒子径9.2μm、CV値24.7%であった。図1に得られた架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子のTEM像を示す。図1中、黒色部分は顔料が主として存在している部分である。また、シリコーンオイル中での極性は正であり、分散安定性に優れ、粒子の沈殿が若干見られているものの、無色透明な上澄み部分が40%未満(○)であった。
【0066】
(実施例3〜10及び比較例1〜4)
実施例3〜10及び比較例1〜4として、モノマー/架橋剤/電子供与基含有化合物/顔料/顔料分散剤の各配合組成を変更した他は、実施例1と同条件とし、得られた着色樹脂粒子の測定と評価を行った。これらの結果について、上述の実施例1及び2とともに表1にまとめて示す。
更に、実施例4における分散安定性の評価結果を示す写真を図2及び図3に示す。図2は分散直後の写真であり、図3は分散後48時間経過後の写真である。分散液は50mlメスシリンダーの50mlの目盛まで入れられている。図3において着色樹脂粒子が沈殿して、上澄み部分が47.5〜50mlの目盛部分を占めていることが分かる。
【0067】
【表1】

STMA:メタクリル酸ステアリル
ISTA:アクリル酸イソステアリル
IOCA:アクリル酸イソオクチル
MMA:メタクリル酸メチル
St:スチレン
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
DVB:ジビニルベンゼン
DEAEMA:メタクリル酸ジエチルアミノエチル
4級アンモニウム塩:商品名BONTRON P−51(オリエント化学工業社製)
顔料Y:商品名Fast Yellow 7416(山陽色素社製)
顔料R:商品名クロモファインレッド6605T(大日精化工業社製)
顔料B:商品名Cyanine Blue KRO(山陽色素社製)
【0068】
比較例1〜4の評価は、着色樹脂粒子の真密度が1.04g/cm3を超えていたことが原因だと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋(メタ)アクリル酸エステル系樹脂からなる基材樹脂に、顔料を顔料分散剤の存在下で分散させて得られる粒子であり、前記粒子が0.90〜1.04g/cm3の真密度を有することを特徴とする架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子。
【請求項2】
前記架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が、炭素数が8〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を少なくとも一種類以上含むビニル系重合性単量体に架橋剤、顔料及び顔料分散剤が混合された重合性単量体組成物を重合することによって得られる請求項1に記載の架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子。
【請求項3】
前記顔料分散剤が、炭素数が8〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体と親和性の高い部分及び顔料と親和性が高い部分とを備える樹脂である請求項1又は2に記載の架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子。
【請求項4】
前記顔料分散剤が、炭素数が8〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体とアミノ基含有ビニル単量体との共重合により得られた樹脂である請求項1〜3のいずれか1つに記載の架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子。
【請求項5】
前記顔料が、炭素数が8〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を少なくとも一種類以上含むビニル系重合性単量体に架橋剤、顔料及び顔料分散剤が混合された重合性単量体組成物100重量%に対して1〜30重量%添加され、かつ前記顔料分散剤が、前記重合性単量体組成物100重量%に対して0.05〜15重量%添加される請求項1〜4のいずれか1つに記載の架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子。
【請求項6】
前記架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が、炭素数が8〜20の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を少なくとも一種類以上含むビニル系重合性単量体に電子供与基を有する化合物、架橋剤、顔料及び顔料分散剤が混合された重合性単量体組成物を重合することにより得られ、正帯電性を示す請求項1〜5のいずれか1つに記載の架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子をシリコーンオイルに分散させてなる正帯電性を示す架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体。
【請求項8】
前記シリコーンオイルが、2〜20センチストークスの動的粘度を有し、前記架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子が、分散体100重量%に対して1〜50重量%含まれる請求項7に記載の架橋(メタ)アクリル酸エステル系着色樹脂粒子のシリコーンオイル分散体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−153215(P2011−153215A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15521(P2010−15521)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】