架空配管の撤去工法および撤去作業用ゴンドラ
【課題】架空のガーター上に設置された架空配管の撤去工法において、高所足場を仮設するための費用を縮減することができ、且つ高所足場の仮設に伴う危険を回避するための負担を軽減することができる架空配管の撤去工法およびその撤去工法において用いられる撤去作業用ゴンドラを提供する。
【解決手段】架空のガーター上に設置された架空配管の撤去工法において、揚重機によって揚重された吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを利用して、前記架空配管を撤去する撤去工程を含むことを特徴とするものである。
【解決手段】架空のガーター上に設置された架空配管の撤去工法において、揚重機によって揚重された吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを利用して、前記架空配管を撤去する撤去工程を含むことを特徴とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガーター上に設置された小口径(おおよそ300A以下)の架空配管を撤去する工事の工法およびその工法において用いられる撤去作業用ゴンドラに関する。具体的には、配管の受け架台となるトラス構造の架構に複数本の架空配管が設置されている状態において、架構や他の架空配管に影響を与えることなく、目的とする架空配管の一部(または一本)を撤去する工事の工法およびその工法において用いられるバケット型の撤去作業用ゴンドラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の架空配管の撤去工法では、架空配管を切断する位置に作業用の足場(以下、単に「高所足場」ともいう。)を地上から組み上げ、組み上げられた高所足場に作業床を設けて架空配管の撤去作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−341992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の撤去工法では、架空配管の切断距離に応じて高所足場を仮設する必要がある。長距離の架空配管を撤去する場合には多数箇所で架空配管を切断する必要があり、その結果多数の高所足場が必要となる。ゆえに、従来の撤去工法には、高所足場を仮設するための費用(以下、単に「工事費」ともいう。)が嵩むという問題があった。さらに、この足場の仮設には、高所での作業が必要となり、危険を回避するための対策も手厚くする必要がある。このため、従来の撤去工法には、危険を回避するための負担が大きいという問題があった。
そこで、本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、上記工事費を縮減することができ、且つ上記危険を回避するための負担を軽減することができる架空配管の撤去工法およびその撤去工法において用いられる撤去作業用ゴンドラを提供することを目的とするものである。
【0005】
なお、例えば特許文献1で開示された高所作業車を活用した架空配管の撤去工法も考えられるが、図13(a)〜(c)に示すように、トラス構造の架構10の梁が邪魔して架空配管11aに近づくことができない。このため、高所作業車14aを活用した架空配管11aの撤去工法は、現実性に乏しい。ここで、図13(a)は架構10の正面から高所作業車14aの作業者14を近づけた場合の模式図であり、図中には複数本の架空配管11が示されており、その架空配管11であって切断する架空配管11aに手が届かない状況を表したものである。また、図13(b)、(c)はそれぞれ架構10の下側、上側から高所作業車14aの作業者14を近づけた場合の模式図であり、図13(a)の場合と同様に切断する架空配管11aに手が届かない状況を表したものである。
また、トラス架台に張り出し足場を仮設して架空配管11aを撤去する工法も考えられるが、危険回避のために手摺や歩廊を別に設置する等の手厚い対策が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、架空のガーター上に設置された架空配管の撤去工法において、揚重機によって揚重された吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを利用して、前記架空配管を撤去する撤去工程を含むことを特徴とする架空配管の撤去工法である。
上記態様であれば、移動・回転・俯仰可能な揚重機によって少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを吊り梁を介して揚重し、そして撤去する架空配管上に移動させることができる。このため、少なくとも2台の前記ゴンドラを利用して(例えば、前記ゴンドラに架空配管を固定した後、その配管を切断することで)、架空配管を撤去することができる。このように、ゴンドラの移動と架空配管の撤去とを繰り返すことで、長距離の架空配管の場合であっても架空配管を撤去することができる。ゆえに、長距離の架空配管を撤去するために多数の高所足場を仮設する必要はなくなるので、高所足場の仮設費用(つまり、工事費)を縮減することができる。
【0007】
また、上記態様であれば、架空配管を撤去する際、高所足場や手摺その他を仮設する必要はなくなるので、高所足場の仮設に伴う危険を回避するための負担を軽減することもできる。
また、本発明の別の態様は、前記撤去工程では、前記有人式バケット型ゴンドラの床部を部分的に開口した開口部を利用して、前記有人式バケット型ゴンドラ内から前記架空配管を切断することを特徴とするものである。
上記態様であれば、有人式バケット型ゴンドラに設置された開口部を通して、目的とする架空配管に作業者の手が届く。よって、前記ゴンドラ内から前記架空配管を固定し切断することができる。このため、より合理的に架空配管の撤去作業を行うことができる。
【0008】
また、本発明の別の態様は、前記少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラで併行して、前記架空配管を緊縛し切断することを特徴とするものである。
上記態様であれば、少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラで併行して、架空配管の緊縛および切断を実施することができる。このため、さらに合理的に架空配管の撤去作業を行うことができる。
また、本発明の別の態様は、架空のガーター上に設置された架空配管の撤去作業で用いられる撤去作業用ゴンドラであって、揚重機によって揚重される吊り梁と、前記吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラと、を含むことを特徴とする撤去作業用ゴンドラである。
【0009】
上記態様であれば、吊り梁に固定された、少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを例えば揚重機によって揚重し、そして撤去する架空配管上に前記ゴンドラを移動させることができる。このため、少なくとも2台の前記ゴンドラを利用すれば、架空配管を前記ゴンドラに固定し切断することができるので、架空配管を撤去することができる。このように、ゴンドラの移動と架空配管の撤去とを繰り返すことで、長距離の架空配管を撤去することができる。ゆえに、長距離の架空配管を撤去するために多数の高所足場を仮設する必要はなくなるので、高所足場を仮設するための費用を縮減することができる。
【0010】
また、上記態様であれば、架空配管を撤去する際、高所足場や手摺その他を仮設する必要はなくなるので、高所足場の仮設に伴う危険を回避するための負担を軽減することもできる。
また、本発明の別の態様は、前記有人式バケット型ゴンドラは、前記有人式バケット型ゴンドラの床部を部分的に開口した開口部を有することを特徴とするものである。
上記態様であれば、有人式バケット型ゴンドラの床部には開口部が配置されているので、この開口部を通して、目的とする架空配管に作業者の手が届くようになる。よって、バケット型ゴンドラ内から前記架空配管を固定し切断することができるので、より合理的に架空配管の撤去作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを揚重機で揚重し移動させることで、有人式バケット型ゴンドラを利用して架空配管を撤去することができる。このため、架空配管を撤去するために高所足場を仮設する必要はなくなるので、高所足場を仮設するための費用を縮減することができる。さらに、高所足場を仮設する必要はなくなるので、高所足場の仮設に伴う危険を回避するための負担を軽減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る撤去作業用ゴンドラを模式的に表す正面図である。
【図2】本実施形態に係る撤去作業用ゴンドラを模式的に表す側面図である。
【図3】本実施形態に係る有人式バケット型ゴンドラを模式的に表す側面図である。
【図4】本実施形態に係る有人式バケット型ゴンドラを模式的に表す正面図である。
【図5】本実施形態に係る有人式バケット型ゴンドラを模式的に表す側面断面図である。
【図6】本実施形態に係る有人式バケット型ゴンドラを模式的に表す正面断面図である。
【図7】本実施形態に係る架空配管の撤去工法を模式的に表す正面図である。
【図8】本実施形態に係る架空配管の撤去工法を模式的に表す側面図である。
【図9】本実施形態に係る撤去作業用ゴンドラに架空配管が固定されている状態を模式的に表す正面図である。
【図10】本実施形態に係る撤去作業用ゴンドラに架空配管が固定されている状態を模式的に表す側面図である。
【図11】本実施形態に係る架空配管の撤去工法の変形例を模式的に表す正面図である。
【図12】本実施形態に係る架空配管の撤去工法の変形例を模式的に表す側面図である。
【図13】従来の高所作業車を用いた撤去工法を模式的に表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本実施形態に係る架空配管の撤去工法において用いられる撤去作業用ゴンドラ100について図1〜6を参照しつつ説明する。次に、本実施形態に係る架空配管の撤去工法について図7〜10を参照しつつ説明する。最後に、本実施形態に係る架空配管の撤去工法の変形例について図11、12を参照しつつ説明する。
(撤去作業用ゴンドラ)
本発明の実施形態に係る撤去作業用ゴンドラ100は、図1に示すように、作業者が作業可能な2台の有人式バケット型ゴンドラ(以下、単に「ゴンドラ」ともいう。)1と、ゴンドラ1と連結された吊り梁4と、吊り梁4に設置された吊りピース5と、吊りピース5と揚重用ワイヤーロープとを連結するワイヤーロープ6と、を含んで構成されている。ここで、図2は図1の側面図を示すものである。以下、撤去作業用ゴンドラ100を構成する上記主要構成部の詳細について説明する。
【0014】
ゴンドラ1の一態様を図3〜6に示す。図3はゴンドラ1の側面図であり、図4はゴンドラ1の正面図である。図5は図3の断面を記載したものであり、ゴンドラ1内には作業者14を配置させている。図6は図4の断面を記載したものであり、図5と同様に、ゴンドラ1内には作業者14を配置させている。
ゴンドラ1は鋼製であり、図3〜6に示すように箱型形状をしている。具体的には、ゴンドラ1は、四角形の床部1aと、床部1aと対向配置された四角形の天井部1bと、床部1aの四隅に配置され、天井部1bを支える4本の支柱1cと、支柱1c間に配置され、ゴンドラ1に搭乗した作業者14がゴンドラ1から転落するのを防止する4面の転落防止用柵1dと、を含んでいる。
【0015】
転落防止用柵1dは、床部1aとの間に隙間を生じないように設置されている。そして、この転落防止用柵1dの高さは、床部1aから天井部1bに至る高さ(つまり、ゴンドラ1自身の高さ)の6割程度である。仮にゴンドラ1自身の高さが2mである場合、床部1aから1.2m程度の高さまで転落防止用柵1dが設置されている。なお、前記各部の寸法は一例であり、他の寸法であっても良い。そして、4面の転落防止用柵1dのうち1面には、作業者14が乗り降りするための扉2が設置されている。また、4面の転落防止用柵1dのうち1面には、ゴンドラ1に搭乗した作業者14がゴンドラ1から転落するのを防止する転落防止用フック1eが設置されている。この転落防止用フック1eと作業者14とを転落防止用ロープ1fで連結し、作業者14がゴンドラ1から転落するのを防止している。
【0016】
床部1aには、床部1aの一部を開口する開口部3が設けられている。開口部3の形状は、図5、6に示すように例えば四角形である。開口部3を構成する4辺は、例えば四角形である床部1aを構成する4辺とそれぞれ平行となるように配置されている。ゴンドラ1に搭乗した作業者14は、後述するようにこの開口部3を利用して架空配管をゴンドラ1の底面1h(つまり、床部1aであって、作業者14側の面とは反対側の面)に固定し、その後架空配管を切断する作業を行う。ここで、底面1hであって、開口部3を構成する4辺のうち1辺の近傍に、配管固定用フック1gが例えば2箇所設置されている。図6には、配管固定用フック1gが扉2と対向配置された転落防止用柵1d側に配置されている様子が記載されている。ここで、この配管固定用フック1gは、ゴンドラ1に架空配管を固定するためのものである。
【0017】
また、床部1aには、開口部3から作業者14が転落するのを防止する転落防止用蓋3aが開閉可能に配置されている。
天井部1bには、天井梁(図示せず)が配置されている。この天井梁には、吊り梁4とゴンドラ1とを固定するための第1貫通穴が4箇所設けられている。そして、ゴンドラ1は、この天井梁を介して吊り梁4に固定されている。この様子(つまり、ゴンドラ1が吊り梁4の両端に4組のボルトナット7でそれぞれ固定されている様子)は図1に示されている。ここで、図1に示すように、2台のゴンドラ1は配管固定用フック1g同士が両ゴンドラ1の各開口部3よりも接近するようにして固定されている。
【0018】
吊り梁4は、図1、2に示すように、その横断面がH型をした鋼(いわゆるH形鋼)であり、それぞれ対向配置された2つのフランジ4a、4bと、2つのフランジ4a、4bを連結するウェブ4cと、を備えている。フランジ4aの両端には、ゴンドラ1を吊り梁4に固定するための第2貫通穴が4箇所設けられている。この第2貫通穴は、上述したゴンドラ1の天井梁に設けられた第1貫通穴と同じ寸法で設けられている。このため、第1貫通穴と第2貫通穴とにボルトと貫通させ、ナットでそのボルトを固定することができる。このようにして、吊り梁4とゴンドラ1とは固定されている。
【0019】
フランジ4bの両端にはクレーン(図示せず)で吊り梁4を吊り上げるための吊りピース5が設置されている。そして、各ワイヤーロープ6の一端は各吊りピース5と連結しており、その他端はクレーン本体に含まれる揚重用ワイヤーロープ12aの先端に設けたフック12bと連結している(図7、8を参照)。そして、フック12bは、吊り下げられた吊り梁4の長さの中心に位置している。このため、クレーン本体に備わる巻き取り機で揚重用ワイヤーロープ12aを巻き上げると、撤去作業用ゴンドラ100は水平に揚重される仕組みになっている。
【0020】
(架空配管の撤去工法)
次に、上述した撤去作業用ゴンドラ100を用いた架空のガーター上に設置された架空配管11aの撤去工法について、図7〜12を参照しつつ説明する。図7は、撤去作業用ゴンドラ100を用いた架空配管11aの撤去の様子を模式化したものである。図8は、図7の側面図を記載したものである。図7、8に示すように、架空配管11aの受け架台となるトラス構造の架橋10には複数本の架空配管11が設置されている。
架空のガーター上に設置された架空配管11aを撤去するに際し、まず、地上に置かれた各ゴンドラ1に架空配管11aを撤去するための作業者14がそれぞれ搭乗する。そして、転落防止用フック1eと作業者14とを転落防止用ロープ1fで連結する。
【0021】
次に、クレーンの巻き取り機で揚重用ワイヤーロープ12aを巻き上げ、撤去作業用ゴンドラ100を水平に吊り上げる。その後、クレーンのブーム12を旋回させて、架空配管11aを撤去する箇所に撤去作業用ゴンドラ100をセッティングする。この作業においては、所定の場所に撤去作業用ゴンドラ100をセッティングするとともに、移動中における撤去作業用ゴンドラ100の回転を防止する必要がある。このため、地上にいる案内補助者13aが各ゴンドラ1に繋がる案内ロープ13を使用して、各ゴンドラ1の位置を誘導する。なお、本実施形態の「クレーン」は本発明の「揚重機」に相当し、「吊り上げ」は「揚重され」に相当するものである。
【0022】
次に、各ゴンドラ1内の作業者14は、ゴンドラ1の床部1aに配置された転落防止用蓋3aを開く。転落防止用蓋3aを開くと床部1aには開口部3が現れる(図5、6を参照)ので、この開口部3を利用して架空配管11aを撤去する撤去工程を実施する。この撤去工程は具体的には、まず、作業者14はゴンドラ1内から開口部3を通して、撤去する架空配管11aに配管固定用ワイヤー8やベルト等を巻き付ける。次に、図9、10に示すように、作業者14は架空配管11aに巻き付けた配管固定用ワイヤー8等の両端を配管固定用フック1gに掛けて、架空配管11aをゴンドラ1の底面1hに固定する。その後、作業者14はゴンドラ1内から開口部3を通して架空配管11aを切断する。この切断には、例えば電動ノコやガス溶断器、セイバーソーを用いる。こうして切断された架空配管11a(つまり、撤去配管9)は、配管固定用ワイヤー8等でゴンドラ1の底面1hに固定されているため、地上または架構10上に落下することもない。ここで、架空配管11aの切断作業時にはゴンドラ1は未切断の配管11aに固定されているので、ゴンドラ1が揺れることもない。
【0023】
次に、図7、8に示すように、クレーンの巻き取り機で揚重用ワイヤーロープ12aを巻き上げ、撤去配管9とともに撤去作業用ゴンドラ100を水平に吊り上げる。その後、クレーンのブーム12を旋回させて、撤去配管9を架構10上から撤去する。
次に、クレーンの巻き取り機から揚重用ワイヤーロープ12aを巻き出して、ゴンドラ1の底面1hに固定された撤去配管9をトレーラーやトラックの荷台に水平に着床させる。この際、撤去作業用ゴンドラ100を所定の場所にセッティングする時と同様に、地上にいる案内補助者13aが各ゴンドラ1に繋がる案内ロープ13を使用して、撤去作業用ゴンドラ100の位置を誘導する。最後に、ゴンドラ1と撤去配管9とを固定していた配管固定用ワイヤー8等を配管固定用フック1gから外して、撤去作業用ゴンドラ100から撤去配管9を切り離す。
【0024】
以上のようにして、架空配管9の撤去作業が完了する。この撤去作業を繰り返すことで、長距離の架空配管9を撤去する作業であっても合理的に撤去作業を実施することができる。
なお、本実施形態では、図9、10に示すように、配管固定用ワイヤー8でゴンドラ1の底1hに架空配管11aを固定することを説明したが、これに限定させるものではない。例えば配管固定用ワイヤー8を吊り梁4に直接取り付けることで架空配管11aを固定し、架空配管11aを切断した後は吊り梁4にその配管を水平に吊り下げても良い。
【0025】
また、本実施形態では、図7、8に示すように、揚重機にクレーンを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではない。本実施形態の変形例として、図11、12に示すように、例えば吊り梁4の長さの中心位置に俯仰可能な高所作業車14aのブームの先端を直接または間接的に固定しても良い。この場合であっても、揚重機としてクレーンを用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。なお、本実施形態の変形例は、揚重機をクレーンに代えて高所作業車14aにした以外は、撤去作業用ゴンドラ100の構造や架空配管の撤去工法等は同じであるので、それらの説明については省略する。
【0026】
また、本実施形態では、地上にいる案内補助者13aが各ゴンドラ1に繋がる案内ロープ13を使用して撤去作業用ゴンドラ100の位置を誘導することについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば各ゴンドラ1にジャイロスコープ付きの位置安定化装置を取り付けることで、案内補助者13aの誘導なしに、架空配管11aを撤去する箇所に撤去作業用ゴンドラ100をセッティングすることも、撤去配管9をトレーラーやトラックの荷台に着床させることもできる。
【0027】
また、本実施形態では、同じ構造をした2台のゴンドラ1を用いて構成された撤去作業用ゴンドラ100について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ゴンドラ1と、ゴンドラ1と左右対称の構造をした他のゴンドラと、を用いて撤去作業用ゴンドラを構成しても良い。この場合であっても、同じ構造をした2台のゴンドラ1を用いて構成された撤去作業用ゴンドラ100と同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
また、本実施形態では、2台のゴンドラ1を用いて構成された撤去作業用ゴンドラ100について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態で説明した2台のゴンドラ1と同じ構造のゴンドラを吊り梁4の中間点に固定し、合計3台のゴンドラで構成された撤去作業用ゴンドラとしても良い。この場合であれば、吊り梁4の両端に配置されたゴンドラ1に架空配管11aを固定し、さらに吊り梁4の中間点に配置されたゴンドラにも架空配管11aを固定することで架空配管11aの荷重を分散することができる。このように、ゴンドラを3台以上含んで構成される撤去作業用ゴンドラであっても、上述した撤去作業用ゴンドラ100と同じ作用効果を得ることができる。
【0029】
(実施例)
ゴンドラ1の主材は65mmの等辺山形鋼である。そして、ゴンドラ1の形状は箱型形状である。ゴンドラ1の床面の大きさは1500mm×1500mmであり、使用された床板は3.2mmの縞鋼板である。吊り梁4には250mmのH形鋼を長さ5mで使用した。
撤去作業用ゴンドラ100を吊り下げるためのクレーンには、定格総荷重45tonの能力を有するものを使用し、地上から5.5mの高さの架構10に設置されていた250Aの架空配管11aを撤去した。
【0030】
(本実施形態の効果の一例)
上述したように、本実施形態に係る架空配管11aの撤去工法によれば、トラス構造の架構10に複数本の架空配管11が設置されている場合であっても、高所足場を仮設することなく架空配管11aの撤去作業を行うことができた。
本実施形態に係る架空配管11aの撤去工法の効果の一例を、250Aの配管750mを撤去する場合の工事時間で従来工法と比較して説明する。
本実施形態に係る架空配管11aの撤去工法では、架空配管11aの切断作業1回あたりに4.5mの架空配管11aを撤去でき、所要時間はクレーンの準備なども含めて2時間であった。従って、配管750mを撤去するために掛った時間は、
750m÷4.5m×2h=333h(時間)
である。仮に1日8時間の作業として試算すると約42日間で作業を完了することができた。
【0031】
それに対し従来工法の場合は、約10m間隔で地上から高所足場を仮設するため、75箇所の高所足場を仮設する必要がある。1箇所の高所足場の仮設に12時間、高所足場の解体に8時間係るため、合計で
75箇所×(12h+8h)=1500h(時間)
必要となる。さらに、10m毎の配管撤去作業を75回実施する必要があり、1回の作業にクレーンの準備なども含めて1.5時間係るため、113時間が必要となる。
【0032】
よって、従来工法では、合計1613時間が必要となり、1日8時間の作業として約216日間の期間が必要となる。
従って、本実施形態に係る工法により従来の約1/5の作業負荷で撤去工事を行うことができるとともに、高所足場を仮設するための高所での危険作業が無くなり安全に作業を行うことができた。
【符号の説明】
【0033】
1 有人式バケット型ゴンドラ
1a 床部
1b 天井部
1c 支柱
1d 転落防止用柵
1e 転落防止用フック
1f 転落防止用ロープ
1g 配管固定用フック
1h 底面
2 扉
3 開口部
3a 転落防止用蓋
4 吊り梁
4a フランジ
4b フランジ
4c ウェブ
5 吊りピース
6 ワイヤーロープ
7 ボルトナット
8 配管固定用ワイヤー
9 撤去配管
10 架構
11 複数本の架空配管
11a 架空配管
12 クレーンのブーム
12a 揚重用ワイヤーロープ
12b クレーンのフック
13 案内ロープ
13a 案内補助者
14 作業者
14a 高所作業車
100 撤去作業用ゴンドラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガーター上に設置された小口径(おおよそ300A以下)の架空配管を撤去する工事の工法およびその工法において用いられる撤去作業用ゴンドラに関する。具体的には、配管の受け架台となるトラス構造の架構に複数本の架空配管が設置されている状態において、架構や他の架空配管に影響を与えることなく、目的とする架空配管の一部(または一本)を撤去する工事の工法およびその工法において用いられるバケット型の撤去作業用ゴンドラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の架空配管の撤去工法では、架空配管を切断する位置に作業用の足場(以下、単に「高所足場」ともいう。)を地上から組み上げ、組み上げられた高所足場に作業床を設けて架空配管の撤去作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−341992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の撤去工法では、架空配管の切断距離に応じて高所足場を仮設する必要がある。長距離の架空配管を撤去する場合には多数箇所で架空配管を切断する必要があり、その結果多数の高所足場が必要となる。ゆえに、従来の撤去工法には、高所足場を仮設するための費用(以下、単に「工事費」ともいう。)が嵩むという問題があった。さらに、この足場の仮設には、高所での作業が必要となり、危険を回避するための対策も手厚くする必要がある。このため、従来の撤去工法には、危険を回避するための負担が大きいという問題があった。
そこで、本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、上記工事費を縮減することができ、且つ上記危険を回避するための負担を軽減することができる架空配管の撤去工法およびその撤去工法において用いられる撤去作業用ゴンドラを提供することを目的とするものである。
【0005】
なお、例えば特許文献1で開示された高所作業車を活用した架空配管の撤去工法も考えられるが、図13(a)〜(c)に示すように、トラス構造の架構10の梁が邪魔して架空配管11aに近づくことができない。このため、高所作業車14aを活用した架空配管11aの撤去工法は、現実性に乏しい。ここで、図13(a)は架構10の正面から高所作業車14aの作業者14を近づけた場合の模式図であり、図中には複数本の架空配管11が示されており、その架空配管11であって切断する架空配管11aに手が届かない状況を表したものである。また、図13(b)、(c)はそれぞれ架構10の下側、上側から高所作業車14aの作業者14を近づけた場合の模式図であり、図13(a)の場合と同様に切断する架空配管11aに手が届かない状況を表したものである。
また、トラス架台に張り出し足場を仮設して架空配管11aを撤去する工法も考えられるが、危険回避のために手摺や歩廊を別に設置する等の手厚い対策が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、架空のガーター上に設置された架空配管の撤去工法において、揚重機によって揚重された吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを利用して、前記架空配管を撤去する撤去工程を含むことを特徴とする架空配管の撤去工法である。
上記態様であれば、移動・回転・俯仰可能な揚重機によって少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを吊り梁を介して揚重し、そして撤去する架空配管上に移動させることができる。このため、少なくとも2台の前記ゴンドラを利用して(例えば、前記ゴンドラに架空配管を固定した後、その配管を切断することで)、架空配管を撤去することができる。このように、ゴンドラの移動と架空配管の撤去とを繰り返すことで、長距離の架空配管の場合であっても架空配管を撤去することができる。ゆえに、長距離の架空配管を撤去するために多数の高所足場を仮設する必要はなくなるので、高所足場の仮設費用(つまり、工事費)を縮減することができる。
【0007】
また、上記態様であれば、架空配管を撤去する際、高所足場や手摺その他を仮設する必要はなくなるので、高所足場の仮設に伴う危険を回避するための負担を軽減することもできる。
また、本発明の別の態様は、前記撤去工程では、前記有人式バケット型ゴンドラの床部を部分的に開口した開口部を利用して、前記有人式バケット型ゴンドラ内から前記架空配管を切断することを特徴とするものである。
上記態様であれば、有人式バケット型ゴンドラに設置された開口部を通して、目的とする架空配管に作業者の手が届く。よって、前記ゴンドラ内から前記架空配管を固定し切断することができる。このため、より合理的に架空配管の撤去作業を行うことができる。
【0008】
また、本発明の別の態様は、前記少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラで併行して、前記架空配管を緊縛し切断することを特徴とするものである。
上記態様であれば、少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラで併行して、架空配管の緊縛および切断を実施することができる。このため、さらに合理的に架空配管の撤去作業を行うことができる。
また、本発明の別の態様は、架空のガーター上に設置された架空配管の撤去作業で用いられる撤去作業用ゴンドラであって、揚重機によって揚重される吊り梁と、前記吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラと、を含むことを特徴とする撤去作業用ゴンドラである。
【0009】
上記態様であれば、吊り梁に固定された、少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを例えば揚重機によって揚重し、そして撤去する架空配管上に前記ゴンドラを移動させることができる。このため、少なくとも2台の前記ゴンドラを利用すれば、架空配管を前記ゴンドラに固定し切断することができるので、架空配管を撤去することができる。このように、ゴンドラの移動と架空配管の撤去とを繰り返すことで、長距離の架空配管を撤去することができる。ゆえに、長距離の架空配管を撤去するために多数の高所足場を仮設する必要はなくなるので、高所足場を仮設するための費用を縮減することができる。
【0010】
また、上記態様であれば、架空配管を撤去する際、高所足場や手摺その他を仮設する必要はなくなるので、高所足場の仮設に伴う危険を回避するための負担を軽減することもできる。
また、本発明の別の態様は、前記有人式バケット型ゴンドラは、前記有人式バケット型ゴンドラの床部を部分的に開口した開口部を有することを特徴とするものである。
上記態様であれば、有人式バケット型ゴンドラの床部には開口部が配置されているので、この開口部を通して、目的とする架空配管に作業者の手が届くようになる。よって、バケット型ゴンドラ内から前記架空配管を固定し切断することができるので、より合理的に架空配管の撤去作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを揚重機で揚重し移動させることで、有人式バケット型ゴンドラを利用して架空配管を撤去することができる。このため、架空配管を撤去するために高所足場を仮設する必要はなくなるので、高所足場を仮設するための費用を縮減することができる。さらに、高所足場を仮設する必要はなくなるので、高所足場の仮設に伴う危険を回避するための負担を軽減することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る撤去作業用ゴンドラを模式的に表す正面図である。
【図2】本実施形態に係る撤去作業用ゴンドラを模式的に表す側面図である。
【図3】本実施形態に係る有人式バケット型ゴンドラを模式的に表す側面図である。
【図4】本実施形態に係る有人式バケット型ゴンドラを模式的に表す正面図である。
【図5】本実施形態に係る有人式バケット型ゴンドラを模式的に表す側面断面図である。
【図6】本実施形態に係る有人式バケット型ゴンドラを模式的に表す正面断面図である。
【図7】本実施形態に係る架空配管の撤去工法を模式的に表す正面図である。
【図8】本実施形態に係る架空配管の撤去工法を模式的に表す側面図である。
【図9】本実施形態に係る撤去作業用ゴンドラに架空配管が固定されている状態を模式的に表す正面図である。
【図10】本実施形態に係る撤去作業用ゴンドラに架空配管が固定されている状態を模式的に表す側面図である。
【図11】本実施形態に係る架空配管の撤去工法の変形例を模式的に表す正面図である。
【図12】本実施形態に係る架空配管の撤去工法の変形例を模式的に表す側面図である。
【図13】従来の高所作業車を用いた撤去工法を模式的に表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本実施形態に係る架空配管の撤去工法において用いられる撤去作業用ゴンドラ100について図1〜6を参照しつつ説明する。次に、本実施形態に係る架空配管の撤去工法について図7〜10を参照しつつ説明する。最後に、本実施形態に係る架空配管の撤去工法の変形例について図11、12を参照しつつ説明する。
(撤去作業用ゴンドラ)
本発明の実施形態に係る撤去作業用ゴンドラ100は、図1に示すように、作業者が作業可能な2台の有人式バケット型ゴンドラ(以下、単に「ゴンドラ」ともいう。)1と、ゴンドラ1と連結された吊り梁4と、吊り梁4に設置された吊りピース5と、吊りピース5と揚重用ワイヤーロープとを連結するワイヤーロープ6と、を含んで構成されている。ここで、図2は図1の側面図を示すものである。以下、撤去作業用ゴンドラ100を構成する上記主要構成部の詳細について説明する。
【0014】
ゴンドラ1の一態様を図3〜6に示す。図3はゴンドラ1の側面図であり、図4はゴンドラ1の正面図である。図5は図3の断面を記載したものであり、ゴンドラ1内には作業者14を配置させている。図6は図4の断面を記載したものであり、図5と同様に、ゴンドラ1内には作業者14を配置させている。
ゴンドラ1は鋼製であり、図3〜6に示すように箱型形状をしている。具体的には、ゴンドラ1は、四角形の床部1aと、床部1aと対向配置された四角形の天井部1bと、床部1aの四隅に配置され、天井部1bを支える4本の支柱1cと、支柱1c間に配置され、ゴンドラ1に搭乗した作業者14がゴンドラ1から転落するのを防止する4面の転落防止用柵1dと、を含んでいる。
【0015】
転落防止用柵1dは、床部1aとの間に隙間を生じないように設置されている。そして、この転落防止用柵1dの高さは、床部1aから天井部1bに至る高さ(つまり、ゴンドラ1自身の高さ)の6割程度である。仮にゴンドラ1自身の高さが2mである場合、床部1aから1.2m程度の高さまで転落防止用柵1dが設置されている。なお、前記各部の寸法は一例であり、他の寸法であっても良い。そして、4面の転落防止用柵1dのうち1面には、作業者14が乗り降りするための扉2が設置されている。また、4面の転落防止用柵1dのうち1面には、ゴンドラ1に搭乗した作業者14がゴンドラ1から転落するのを防止する転落防止用フック1eが設置されている。この転落防止用フック1eと作業者14とを転落防止用ロープ1fで連結し、作業者14がゴンドラ1から転落するのを防止している。
【0016】
床部1aには、床部1aの一部を開口する開口部3が設けられている。開口部3の形状は、図5、6に示すように例えば四角形である。開口部3を構成する4辺は、例えば四角形である床部1aを構成する4辺とそれぞれ平行となるように配置されている。ゴンドラ1に搭乗した作業者14は、後述するようにこの開口部3を利用して架空配管をゴンドラ1の底面1h(つまり、床部1aであって、作業者14側の面とは反対側の面)に固定し、その後架空配管を切断する作業を行う。ここで、底面1hであって、開口部3を構成する4辺のうち1辺の近傍に、配管固定用フック1gが例えば2箇所設置されている。図6には、配管固定用フック1gが扉2と対向配置された転落防止用柵1d側に配置されている様子が記載されている。ここで、この配管固定用フック1gは、ゴンドラ1に架空配管を固定するためのものである。
【0017】
また、床部1aには、開口部3から作業者14が転落するのを防止する転落防止用蓋3aが開閉可能に配置されている。
天井部1bには、天井梁(図示せず)が配置されている。この天井梁には、吊り梁4とゴンドラ1とを固定するための第1貫通穴が4箇所設けられている。そして、ゴンドラ1は、この天井梁を介して吊り梁4に固定されている。この様子(つまり、ゴンドラ1が吊り梁4の両端に4組のボルトナット7でそれぞれ固定されている様子)は図1に示されている。ここで、図1に示すように、2台のゴンドラ1は配管固定用フック1g同士が両ゴンドラ1の各開口部3よりも接近するようにして固定されている。
【0018】
吊り梁4は、図1、2に示すように、その横断面がH型をした鋼(いわゆるH形鋼)であり、それぞれ対向配置された2つのフランジ4a、4bと、2つのフランジ4a、4bを連結するウェブ4cと、を備えている。フランジ4aの両端には、ゴンドラ1を吊り梁4に固定するための第2貫通穴が4箇所設けられている。この第2貫通穴は、上述したゴンドラ1の天井梁に設けられた第1貫通穴と同じ寸法で設けられている。このため、第1貫通穴と第2貫通穴とにボルトと貫通させ、ナットでそのボルトを固定することができる。このようにして、吊り梁4とゴンドラ1とは固定されている。
【0019】
フランジ4bの両端にはクレーン(図示せず)で吊り梁4を吊り上げるための吊りピース5が設置されている。そして、各ワイヤーロープ6の一端は各吊りピース5と連結しており、その他端はクレーン本体に含まれる揚重用ワイヤーロープ12aの先端に設けたフック12bと連結している(図7、8を参照)。そして、フック12bは、吊り下げられた吊り梁4の長さの中心に位置している。このため、クレーン本体に備わる巻き取り機で揚重用ワイヤーロープ12aを巻き上げると、撤去作業用ゴンドラ100は水平に揚重される仕組みになっている。
【0020】
(架空配管の撤去工法)
次に、上述した撤去作業用ゴンドラ100を用いた架空のガーター上に設置された架空配管11aの撤去工法について、図7〜12を参照しつつ説明する。図7は、撤去作業用ゴンドラ100を用いた架空配管11aの撤去の様子を模式化したものである。図8は、図7の側面図を記載したものである。図7、8に示すように、架空配管11aの受け架台となるトラス構造の架橋10には複数本の架空配管11が設置されている。
架空のガーター上に設置された架空配管11aを撤去するに際し、まず、地上に置かれた各ゴンドラ1に架空配管11aを撤去するための作業者14がそれぞれ搭乗する。そして、転落防止用フック1eと作業者14とを転落防止用ロープ1fで連結する。
【0021】
次に、クレーンの巻き取り機で揚重用ワイヤーロープ12aを巻き上げ、撤去作業用ゴンドラ100を水平に吊り上げる。その後、クレーンのブーム12を旋回させて、架空配管11aを撤去する箇所に撤去作業用ゴンドラ100をセッティングする。この作業においては、所定の場所に撤去作業用ゴンドラ100をセッティングするとともに、移動中における撤去作業用ゴンドラ100の回転を防止する必要がある。このため、地上にいる案内補助者13aが各ゴンドラ1に繋がる案内ロープ13を使用して、各ゴンドラ1の位置を誘導する。なお、本実施形態の「クレーン」は本発明の「揚重機」に相当し、「吊り上げ」は「揚重され」に相当するものである。
【0022】
次に、各ゴンドラ1内の作業者14は、ゴンドラ1の床部1aに配置された転落防止用蓋3aを開く。転落防止用蓋3aを開くと床部1aには開口部3が現れる(図5、6を参照)ので、この開口部3を利用して架空配管11aを撤去する撤去工程を実施する。この撤去工程は具体的には、まず、作業者14はゴンドラ1内から開口部3を通して、撤去する架空配管11aに配管固定用ワイヤー8やベルト等を巻き付ける。次に、図9、10に示すように、作業者14は架空配管11aに巻き付けた配管固定用ワイヤー8等の両端を配管固定用フック1gに掛けて、架空配管11aをゴンドラ1の底面1hに固定する。その後、作業者14はゴンドラ1内から開口部3を通して架空配管11aを切断する。この切断には、例えば電動ノコやガス溶断器、セイバーソーを用いる。こうして切断された架空配管11a(つまり、撤去配管9)は、配管固定用ワイヤー8等でゴンドラ1の底面1hに固定されているため、地上または架構10上に落下することもない。ここで、架空配管11aの切断作業時にはゴンドラ1は未切断の配管11aに固定されているので、ゴンドラ1が揺れることもない。
【0023】
次に、図7、8に示すように、クレーンの巻き取り機で揚重用ワイヤーロープ12aを巻き上げ、撤去配管9とともに撤去作業用ゴンドラ100を水平に吊り上げる。その後、クレーンのブーム12を旋回させて、撤去配管9を架構10上から撤去する。
次に、クレーンの巻き取り機から揚重用ワイヤーロープ12aを巻き出して、ゴンドラ1の底面1hに固定された撤去配管9をトレーラーやトラックの荷台に水平に着床させる。この際、撤去作業用ゴンドラ100を所定の場所にセッティングする時と同様に、地上にいる案内補助者13aが各ゴンドラ1に繋がる案内ロープ13を使用して、撤去作業用ゴンドラ100の位置を誘導する。最後に、ゴンドラ1と撤去配管9とを固定していた配管固定用ワイヤー8等を配管固定用フック1gから外して、撤去作業用ゴンドラ100から撤去配管9を切り離す。
【0024】
以上のようにして、架空配管9の撤去作業が完了する。この撤去作業を繰り返すことで、長距離の架空配管9を撤去する作業であっても合理的に撤去作業を実施することができる。
なお、本実施形態では、図9、10に示すように、配管固定用ワイヤー8でゴンドラ1の底1hに架空配管11aを固定することを説明したが、これに限定させるものではない。例えば配管固定用ワイヤー8を吊り梁4に直接取り付けることで架空配管11aを固定し、架空配管11aを切断した後は吊り梁4にその配管を水平に吊り下げても良い。
【0025】
また、本実施形態では、図7、8に示すように、揚重機にクレーンを用いた場合について説明したが、これに限定されるものではない。本実施形態の変形例として、図11、12に示すように、例えば吊り梁4の長さの中心位置に俯仰可能な高所作業車14aのブームの先端を直接または間接的に固定しても良い。この場合であっても、揚重機としてクレーンを用いた場合と同様の作用効果を得ることができる。なお、本実施形態の変形例は、揚重機をクレーンに代えて高所作業車14aにした以外は、撤去作業用ゴンドラ100の構造や架空配管の撤去工法等は同じであるので、それらの説明については省略する。
【0026】
また、本実施形態では、地上にいる案内補助者13aが各ゴンドラ1に繋がる案内ロープ13を使用して撤去作業用ゴンドラ100の位置を誘導することについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば各ゴンドラ1にジャイロスコープ付きの位置安定化装置を取り付けることで、案内補助者13aの誘導なしに、架空配管11aを撤去する箇所に撤去作業用ゴンドラ100をセッティングすることも、撤去配管9をトレーラーやトラックの荷台に着床させることもできる。
【0027】
また、本実施形態では、同じ構造をした2台のゴンドラ1を用いて構成された撤去作業用ゴンドラ100について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ゴンドラ1と、ゴンドラ1と左右対称の構造をした他のゴンドラと、を用いて撤去作業用ゴンドラを構成しても良い。この場合であっても、同じ構造をした2台のゴンドラ1を用いて構成された撤去作業用ゴンドラ100と同様の作用効果を得ることができる。
【0028】
また、本実施形態では、2台のゴンドラ1を用いて構成された撤去作業用ゴンドラ100について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本実施形態で説明した2台のゴンドラ1と同じ構造のゴンドラを吊り梁4の中間点に固定し、合計3台のゴンドラで構成された撤去作業用ゴンドラとしても良い。この場合であれば、吊り梁4の両端に配置されたゴンドラ1に架空配管11aを固定し、さらに吊り梁4の中間点に配置されたゴンドラにも架空配管11aを固定することで架空配管11aの荷重を分散することができる。このように、ゴンドラを3台以上含んで構成される撤去作業用ゴンドラであっても、上述した撤去作業用ゴンドラ100と同じ作用効果を得ることができる。
【0029】
(実施例)
ゴンドラ1の主材は65mmの等辺山形鋼である。そして、ゴンドラ1の形状は箱型形状である。ゴンドラ1の床面の大きさは1500mm×1500mmであり、使用された床板は3.2mmの縞鋼板である。吊り梁4には250mmのH形鋼を長さ5mで使用した。
撤去作業用ゴンドラ100を吊り下げるためのクレーンには、定格総荷重45tonの能力を有するものを使用し、地上から5.5mの高さの架構10に設置されていた250Aの架空配管11aを撤去した。
【0030】
(本実施形態の効果の一例)
上述したように、本実施形態に係る架空配管11aの撤去工法によれば、トラス構造の架構10に複数本の架空配管11が設置されている場合であっても、高所足場を仮設することなく架空配管11aの撤去作業を行うことができた。
本実施形態に係る架空配管11aの撤去工法の効果の一例を、250Aの配管750mを撤去する場合の工事時間で従来工法と比較して説明する。
本実施形態に係る架空配管11aの撤去工法では、架空配管11aの切断作業1回あたりに4.5mの架空配管11aを撤去でき、所要時間はクレーンの準備なども含めて2時間であった。従って、配管750mを撤去するために掛った時間は、
750m÷4.5m×2h=333h(時間)
である。仮に1日8時間の作業として試算すると約42日間で作業を完了することができた。
【0031】
それに対し従来工法の場合は、約10m間隔で地上から高所足場を仮設するため、75箇所の高所足場を仮設する必要がある。1箇所の高所足場の仮設に12時間、高所足場の解体に8時間係るため、合計で
75箇所×(12h+8h)=1500h(時間)
必要となる。さらに、10m毎の配管撤去作業を75回実施する必要があり、1回の作業にクレーンの準備なども含めて1.5時間係るため、113時間が必要となる。
【0032】
よって、従来工法では、合計1613時間が必要となり、1日8時間の作業として約216日間の期間が必要となる。
従って、本実施形態に係る工法により従来の約1/5の作業負荷で撤去工事を行うことができるとともに、高所足場を仮設するための高所での危険作業が無くなり安全に作業を行うことができた。
【符号の説明】
【0033】
1 有人式バケット型ゴンドラ
1a 床部
1b 天井部
1c 支柱
1d 転落防止用柵
1e 転落防止用フック
1f 転落防止用ロープ
1g 配管固定用フック
1h 底面
2 扉
3 開口部
3a 転落防止用蓋
4 吊り梁
4a フランジ
4b フランジ
4c ウェブ
5 吊りピース
6 ワイヤーロープ
7 ボルトナット
8 配管固定用ワイヤー
9 撤去配管
10 架構
11 複数本の架空配管
11a 架空配管
12 クレーンのブーム
12a 揚重用ワイヤーロープ
12b クレーンのフック
13 案内ロープ
13a 案内補助者
14 作業者
14a 高所作業車
100 撤去作業用ゴンドラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空のガーター上に設置された架空配管の撤去工法において、
揚重機によって揚重された吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを利用して、前記架空配管を撤去する撤去工程を含むことを特徴とする架空配管の撤去工法。
【請求項2】
前記撤去工程では、前記有人式バケット型ゴンドラの床部を部分的に開口した開口部を利用して、前記有人式バケット型ゴンドラ内から前記架空配管を切断することを特徴とする請求項1に記載の架空配管の撤去工法。
【請求項3】
前記少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラで併行して、前記架空配管を緊縛し切断することを特徴とする請求項2に記載の架空配管の撤去工法。
【請求項4】
架空のガーター上に設置された架空配管の撤去作業で用いられる撤去作業用ゴンドラであって、
揚重機によって揚重される吊り梁と、
前記吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラと、を含むことを特徴とする撤去作業用ゴンドラ。
【請求項5】
前記有人式バケット型ゴンドラは、前記有人式バケット型ゴンドラの床部を部分的に開口した開口部を有することを特徴とする請求項4に記載の撤去作業用ゴンドラ。
【請求項1】
架空のガーター上に設置された架空配管の撤去工法において、
揚重機によって揚重された吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラを利用して、前記架空配管を撤去する撤去工程を含むことを特徴とする架空配管の撤去工法。
【請求項2】
前記撤去工程では、前記有人式バケット型ゴンドラの床部を部分的に開口した開口部を利用して、前記有人式バケット型ゴンドラ内から前記架空配管を切断することを特徴とする請求項1に記載の架空配管の撤去工法。
【請求項3】
前記少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラで併行して、前記架空配管を緊縛し切断することを特徴とする請求項2に記載の架空配管の撤去工法。
【請求項4】
架空のガーター上に設置された架空配管の撤去作業で用いられる撤去作業用ゴンドラであって、
揚重機によって揚重される吊り梁と、
前記吊り梁に吊り下げ固定された少なくとも2台の有人式バケット型ゴンドラと、を含むことを特徴とする撤去作業用ゴンドラ。
【請求項5】
前記有人式バケット型ゴンドラは、前記有人式バケット型ゴンドラの床部を部分的に開口した開口部を有することを特徴とする請求項4に記載の撤去作業用ゴンドラ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−112439(P2013−112439A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258072(P2011−258072)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】
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