説明

架空電線用難着雪テープ及び難着雪電線

【課題】架空電線にらせん状に巻き付けて使用する難着雪テープで、宙乗り機の走行などにより破損することのない架空電線用難着雪テープを提供する。
【解決手段】本発明に係る架空電線用難着雪テープは、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)24をガラス繊維製テープ14に含浸させて、架空電線に巻き付けた後に宙乗り機が走行する時に千切れなどの損傷が発生しない程度に引張り強度、引裂き強度を強化した繊維強化PTFEテープ16の片面に接着剤18を塗布したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空電線(架空地線を含む)の着氷雪を低減するための難着雪テープと、それを用いた難着雪電線に関するものである。
【背景技術】
【0002】
架空電線の着氷雪を低減するための一つの手段として、架空電線に、氷雪が付きにくい性質のPTFE(四フッ化エチレン樹脂)テープをらせん状に巻き付けることが公知である(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実願平2-120046号(実開平4-76213号)のマイクロフィルム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらPTFEテープを巻いた難着雪電線は次のような問題があった。
1) 電線に巻いたPTFEテープは難着雪リングで電線に固定しているが、難着雪リングで固定したときにPTFEテープが部分的に破損することがあり、また長期間使用していると、PTFEテープが宙乗り機の走行などにより破損することがある。PTFEテープが破損すると、巻き替えを行う必要があり、信頼性の点で問題があった。
2) PTFEテープを巻くと、電線の熱放散性が低下する傾向がある。
3) PTFEテープは電気絶縁性であるため、電線表面の電位傾度が高くなると、電線とテープの隙間でギャップ放電が生じ、テープが劣化する。
4) PTFEテープは電気絶縁性であるため、僅かではあるが電線のコロナ特性が低下する。
【0005】
本発明の第一の目的は、上記1)の課題を解決した架空電線用難着雪テープと、それを用いた難着雪電線を提供することにある。
本発明の第二の目的は、上記1)〜4)の課題を解決した架空電線用難着雪テープと、それを用いた難着雪電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記第一の目的を達成する、本発明の架空電線用難着雪テープは、PTFEをガラス繊維製テープに含浸させて、架空電線に巻き付けた後に宙乗り機が走行する時に千切れなどの損傷が発生しない程度に引張り強度、引裂き強度を強化した繊維強化PTFEテープの片面に接着剤を塗布したことを特徴とするものである。
【0007】
また上記第二の目的を達成する、本発明の架空電線用難着雪テープは、カーボンを混入して導電性をもたせたPTFEをガラス繊維製テープに含浸させて、架空電線に巻き付けた後に宙乗り機が走行する時に千切れなどの損傷が発生しない程度に引張り強度、引裂き強度を強化した繊維強化導電性PTFEテープの片面に導電性接着剤を塗布したことを特徴とするものである。
【0008】
また本発明に係る架空電線用難着雪テープは、カーボンを混入して導電性をもたせると共に黒色にしたPTFEをガラス繊維製テープに含浸させて、架空電線に巻き付けた後に宙乗り機が走行する時に千切れなどの損傷が発生しない程度に引張り強度、引裂き強度を強化すると共に電線の熱放散性、太陽熱吸収性をよくした繊維強化導電性PTFEテープの片面に導電性接着剤を塗布したものであることが好ましい。
【0009】
上記のように構成された架空電線用難着雪テープは、接着剤を内側にして、架空電線の外周にらせん状に巻き付けて使用するものである。
【0010】
また本発明に係る光ファイバ複合難着雪電線は、架空電線の外周に光ファイバケーブルをらせん状に巻き付け、その外周に上記のように構成された架空電線用難着雪テープを、接着剤を内側にしてらせん状に巻き付けて、着氷雪を低減すると共に光ファイバケーブルの鳥獣による食害を防止したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明の請求項1に係る架空電線用難着雪テープは、引張り強度、引裂き強度が高いので、架空電線に巻き付けた後の宙乗り機走行時などに損傷が発生しにくく、したがって長期信頼性の高い難着雪電線を構成できる。
【0012】
また本発明の請求項2又は3に係る架空電線用難着雪テープは、請求項1と同様の効果が得られるほか、導電性を有していることから、架空電線に巻き付けた状態でギャップ放電が発生せず、ギャップ放電による劣化がない。したがって、より長期信頼性の高い難着雪電線を構成できる。さらに本発明の請求項3に係る架空電線用難着雪テープは、テープの色が黒色になるため、架空電線の熱放散性がよくなり、電流容量を大きくすることができると共に、太陽熱の吸収性がよくなり、融雪効果も得ることができる。
【0013】
さらに本発明の請求項4に係る光ファイバ複合難着雪電線は、上記のような効果が得られるほか、光ファイバケーブルの鳥獣による食害を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔実施形態1〕 図1は本発明に係る架空電線用難着雪テープの一実施形態を示す。この架空電線用難着雪テープ10は、PTFE12をガラス繊維製テープ14に含浸させてなる繊維強化PTFEテープ16を使用し、この繊維強化PTFEテープ16の片面に接着剤18を塗布したものである。ガラス繊維製テープ14は織布の形態であることが好ましい。
【0015】
図2は図1の架空電線用難着雪テープを用いた難着雪電線の一例を示す。この難着雪電線20は、架空電線22の外周に、図1の架空電線用難着雪テープ10を、接着剤18を内側にしてらせん状に巻き付けたものである。
【0016】
この実施形態の架空電線用難着雪テープ10は、PTFEテープ16がガラス繊維製テープ14で強化された状態となっているため、引張り強度、引裂き強度が高く、架空電線22に巻き付けた後に宙乗り機が走行する時などに、千切れなどの損傷が発生することがなくなる。
【0017】
〔実施形態2〕 図3は本発明に係る架空電線用難着雪テープの他の実施形態を示す。この架空電線用難着雪テープ10は、カーボン微粉末を混入して導電性をもたせたPTFE24を、ガラス繊維製テープ14に含浸させてなる繊維強化導電性PTFEテープ26を使用し、この繊維強化導電性PTFEテープ26の片面に導電性接着剤28を塗布したものである。ガラス繊維製テープ14は実施形態1と同じものである。
【0018】
図4は図3の架空電線用難着雪テープを用いた難着雪電線の一例を示す。この難着雪電線20は、架空電線22の外周に、図3の架空電線用難着雪テープ10を、導電性接着剤28を内側にしてらせん状に巻き付けたものである。
【0019】
この実施形態の架空電線用難着雪テープ10は、導電性PTFEテープ26がガラス繊維製テープ14で強化された状態となっているため、引張り強度、引裂き強度が高く、架空電線22に巻き付け後に宙乗り機が走行する時などに、千切れなどの損傷が発生することがなくなる。
【0020】
またこの実施形態の架空電線用難着雪テープ10は、導電性を有しているため、高電圧の架空電線22との間でギャップ放電が発生することがなく、したがってギャップ放電によるテープの劣化がなくなる。また導電性を有しているため、コロナ特性も改善される。
【0021】
またカーボンが混入されていることから、テープの色が黒色になるので、電線の熱放散性がよくなって電線の電流容量が増加すると共に、太陽熱の吸収性もよくなり、融雪効果も得られる。
【0022】
〔実施形態3〕 図5及び図6は本発明のさらに他の実施形態を示す。この実施形態は巻付け型光ファイバ複合架空電線に本発明を適用したものである。すなわち、架空電線22の外周に光ファイバケーブル30をらせん状に巻き付けて光ファイバ複合架空電線とし、その外周に図1又は図3に示した架空電線用難着雪テープ10を、接着剤18又は28を内側にしてらせん状に巻き付けたものである。
【0023】
このような構成にすると、実施形態1又は2と同様な効果が得られるほか、次のような効果がある。すなわち、従来の巻付け型光ファイバ複合架空電線は、電線表面に光ファイバケーブルが露出しているため、光ファイバケーブルが鳥につつかれたり、飛翔動物(むささび、ももんが等)にかじられたりして、破損することがあったが、この実施形態のような構成にすると、光ファイバケーブル30が高強度の架空電線用難着雪テープ10によって保護されるため、上記のような鳥獣による食害を防止できる。
【0024】
なお光ファイバケーブルの鳥獣による食害を防止するためには、図5に示すように架空電線用難着雪テープ10を隙間なく巻くことが好ましいが、多少の隙間があっても鳥獣による食害を防止する効果はある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る架空電線用難着雪テープの一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1の架空電線用難着雪テープを用いた難着雪電線を示す側面図。
【図3】本発明に係る架空電線用難着雪テープの他の実施形態を示す斜視図。
【図4】図3の架空電線用難着雪テープを用いた難着雪電線を示す側面図。
【図5】本発明に係る難着雪電線の一実施形態を示す側面図。
【図6】図5の難着雪電線の断面図。
【符号の説明】
【0026】
10:架空電線用難着雪テープ
12:PTFE
14:ガラス繊維製テープ
16:繊維強化PTFEテープ
18:接着剤
20:難着雪電線
22:架空電線
24:カーボンを混入したPTFE
26:繊維強化導電性PTFEテープ
28:導電性接着剤
30:光ファイバケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空電線の外周にらせん状に巻き付ける難着雪テープであって、PTFE(四フッ化エチレン樹脂)をガラス繊維製テープに含浸させて、架空電線に巻き付けた後に宙乗り機が走行する時に千切れなどの損傷が発生しない程度に引張り強度、引裂き強度を強化した繊維強化PTFEテープの片面に接着剤を塗布したことを特徴とする架空電線用難着雪テープ。
【請求項2】
架空電線の外周にらせん状に巻き付ける難着雪テープであって、カーボンを混入して導電性をもたせたPTFEをガラス繊維製テープに含浸させて、架空電線に巻き付けた後に宙乗り機が走行する時に千切れなどの損傷が発生しない程度に引張り強度、引裂き強度を強化した繊維強化導電性PTFEテープの片面に導電性接着剤を塗布したことを特徴とする架空電線用難着雪テープ。
【請求項3】
架空電線の外周にらせん状に巻き付ける難着雪テープであって、カーボンを混入して導電性をもたせると共に黒色にしたPTFEをガラス繊維製テープに含浸させて、架空電線に巻き付けた後に宙乗り機が走行する時に千切れなどの損傷が発生しない程度に引張り強度、引裂き強度を強化すると共に電線の熱放散性、太陽熱吸収性をよくした繊維強化導電性PTFEテープの片面に導電性接着剤を塗布したことを特徴とする架空電線用難着雪テープ。
【請求項4】
架空電線の外周に光ファイバケーブルをらせん状に巻き付け、その外周に請求項1ないし3のいずれかに記載の架空電線用難着雪テープを、接着剤を内側にしてらせん状に巻き付けて、着氷雪を低減すると共に光ファイバケーブルの鳥獣による食害を防止したことを特徴とする光ファイバ複合難着雪電線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−282814(P2008−282814A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132606(P2008−132606)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【分割の表示】特願2002−5561(P2002−5561)の分割
【原出願日】平成14年1月15日(2002.1.15)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】