説明

架線の衝撃荷重緩和装置

【課題】簡単な構成で長期に亘り良好な衝撃緩和が確保できると共に管理維持の簡素化が得られるが架線の衝撃荷重緩和装置を提供する。
【解決手段】架線1を把持する引留クランプ2に端部が連結されてピン軸41が設けられた板状の第1支持金具11と、碍子6に端部が連結されて第1支持金具11の両面に配置されてピン軸が貫通する長孔25が形成された2枚の第2支持金具21を有し、第2支持金具21にピン軸41の移動を規制する軸保持金具31を設ける。通常時はピン軸41が軸保持金具31に当接して第1支持金具11と第2支持金具21の移動を規制して架線1に張力を付与する。一方、所定以上の衝撃荷重には第1支持金具11と第2支持金具21の相対移動によりピン軸11が軸保持金具31を破断して第1支持金具11及び第2支持金具21が相対移動して架線1の張力の増加を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線の衝撃荷重緩和装置に関し、特に架線に加わる衝撃荷重による架線の断線や架線把持部及び固定部の破損を防止する架線の衝撃荷重緩和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄塔や電柱間に張架される架線は、例えば引留クランプに把持固定され、碍子等を介して鉄塔や電柱に引き留められる。このような鉄塔や電柱間に張架された架線は、強風や着雪等による強振動や張力増加等により異常な衝撃荷重、例えば過大な張力が加わると、架線の断線、引留クランプや碍子等の破損が懸念される。
【0003】
この対策として引留クランプと碍子との間に介装されて衝撃荷重を緩和する衝撃荷重緩和装置が種々提案されている。この種の衝撃荷重緩和装置の一例として例えば特許文献1がある。
【0004】
この特許文献1の衝撃荷重緩和装置は、図11(a)に断面図及び同図(b)に平面図を示すように、細長矩形板状の第1支持金具101及び第1支持金具101の両側面に配置した2枚の第2支持金具111を有する。第1支持金具101は、一端側に引留クランプにコッタ等によって連結する連結孔102が穿設され、中央部から他端に亘る直線状の長孔103が穿設される。一方、第1支持金具101を両側面から挟み、かつ張力方向Fとなる長手方向にずらすように配置された2枚の第2支持金具111は、一端側に第1支持金具101に形成された長孔103の各端部103a、103bに臨むピン挿入孔113、114が穿設されると共に、他端側に碍子にコッタ等によって連結する連結孔112が穿設される。
【0005】
第1支持金具101の長孔103と各第2支持金具111のピン挿入孔113を貫通するピン121及び長孔103と各ピン挿入孔114を貫通するピン122により、第1支持金具101と各第2支持金具111を一体化して衝撃荷重緩和装置100が構成される。
【0006】
そして、通常時においては引留クランプと碍子との間に張力方向Fに沿って介装された衝撃荷重緩和装置100は、第1支持金具101の長孔103及び各第2支持金具111のピン挿入孔113を貫通するピン121が長孔103の端部103aに当接して架線の張力を保持する。
【0007】
一方、所定以上の大きな衝撃荷重、即ち過大な張力が架線に加わると、その衝撃荷重Pが引留クランプを介して第1支持金具101に作用して相対移動する第1支持金具101と第2支持金具111との間でピン121を破断、即ち剪断して第1支持金具101と第2支持金具111が張力方向Fに相対移動する。これにより図11(c)に示すように第1支持金具101の長孔103と第2支持金具111のピン挿入孔113を貫通するピン122が長孔103内を移動して破断したピン121の中間部材121aが長孔103内を移動し、端部103aとの間に中間部材121aを挟んでピン122に当接して第1支持金具101及び第2支持金具111が停止することで架線の張力を保持する。この結果、第1支持金具101と第2支持金具111が相対移動した分だけ架線の弛度が大きくなり、その分張力が低下して架線の断線や引留クランプ或いは碍子等の破損等が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2009−23551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1の衝撃荷重緩和装置100によると、所定以上の大きな衝撃荷重が架線に加わると架線の張力増加により相対移動する第1支持金具101と第2支持金具111との間でピン121を破断して更に張力方向Fに相対移動する第1支持金具101と第2支持金具111によって架線の張力増加を低下させて架線の断線や引留クランプ或いは碍子等の破損等を回避する。
【0010】
しかし、相対移動する第1支持金具101と第2支持金具111とでピン121を剪断するには、第1支持金具101と第2支持金具111との間隔を適切に維持しなければならず、その管理が極めて困難である。即ち、第1支持金具101と第2支持金具111との間隔が過少であると、第1支持金具101と第2支持金具111の間の摩擦抵抗が大きくなり、また、第1支持金具101と第2支持金具111との間隔が過大であるとピン121に対する良好な剪断応力が得られず、第1支持金具101と第2支持金具111の相対移動が阻害されて衝撃荷重緩和装置100の所期の機能が達成できないおそれがある。
【0011】
また、長期経過に伴い、第1支持金具101と第2支持金具111との間に、雨水や塩水、更に砂塵を含む塵埃等の浸入による発錆や摩耗等により第1支持金具101と第2支持金具111との隙間が変化して衝撃荷重緩和装置100の機能に影響を及ぼすことも懸念される。
【0012】
また、仕様変更等により衝撃荷重緩和特性を変更する際に、ピン121の径を変更すると、このピン121の変更に伴い第1支持金具101の長孔103やピン挿入孔113の変更等が必要になり、第1支持金具101及び第2支持金具111等の多くを変更しなければならず、その設定変更が困難である。
【0013】
従って、係る点に鑑みなされ本発明の目的は、簡単な構成で長期に亘り良好な衝撃緩和特性が確保できると共に管理維持の簡素化が得られる架線の衝撃荷重緩和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する請求項1に記載の架線の衝撃荷重緩和装置は、架線把持部と固定部に両端部が連結されて該架線把持部と固定部の間に介装されて架線把持部と固定部が離反する張力を保持すると共に衝撃を緩和する架線の衝撃荷重緩和装置であって、端部が前記架線把持部或いは固定部の一方に連結される板状の第1支持金具と、該第1支持金具に保持されて該第1支持金具の両側面から突出するピン軸と、端部が前記架線把持部と固定部の他方に連結されて前記第1支持金具の両面にそれぞれ配置される板状で、前記ピン軸が貫通すると共に張力方向の移動を許容する長孔が形成された2枚の第2支持金具と、該第2支持金具に前記長孔を隔てた両側にそれぞれ固定された一対の係止ピンに両端部が支持されて該両係止ピン間に架設されると共に前記ピン軸の移動を規制する軸保持金具とを備え、前記ピン軸が軸保持金具に当接して第1支持金具と第2支持金具の相対移動を規制する一方、所定以上衝撃荷重による第1支持金具と第2支持金具の相対移動により前記ピン軸が前記軸保持金具を破断すると共にピン軸が長孔の端部に当接して停止することを特徴とする。
【0015】
これによると、通常時においては第1支持金具に設けたピン軸が第2支持金具に支持された軸保持金具に当接して第1支持金具と第2支持金具の相対移動が阻止されて架線把持部に把持された架線の張力を保持する。一方、所定以上の衝撃荷重、即ち過大な張力が作用した際には、その衝撃荷重により相対的に移動する第1支持金具と各第2支持金具によりピン軸が軸保持金具を破断して衝撃荷重を吸収して低減させると共に、更に第1支持金具と第2支持金具が張力を弱める伸長方向に相対移動してピン軸が長孔の端部に当接して移動が停止する。この結果、第1支持金具と第2支持金具の相対移動分だけ架線の弛度が大きくなり、その分だけ張力が低下して架線の断線や架線把持部及び固定部等の破損等を回避する。また、破断された軸保持金具、即ち各分断片は係止ピンによって第2支持金具に保持されて落下が防止される。
【0016】
また、第1支持金具に設けられたピン軸で第2支持金具に架設支持された軸保持金具を破断する際に必要な破断力は、第1支持金具、第2支持金具及び軸保持金具等の組付精度に影響されることが比較的少なく、第1支持金具、第2支持金具及び軸保持金具等の形状及び取付精度が緩和されて各構成部材の簡素化が可能になり、簡単な構成で長期に亘り確実な衝撃緩和を確保することができると共に、メンテナンス等の管理維持の簡素化がえられる。
【0017】
また、仕様変更等により衝撃荷重緩和特性を変更する際に、その仕様変更に応じて軸保持金具の形状を変更する等の簡単な変更で対応することができ、第1支持金具、第2支持金具及びピン軸等の変更を伴うことなく種々の仕様に適用することが可能であり、優れた汎用性を有する。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の架線の衝撃荷重緩和装置において、前記第2支持金具の長孔は、張力方向の第1端部と第2端部の両端間が対向する一対の側面を有するガイド部によって連結され、前記軸保持部材によりピン軸を長孔の第1端部に保持する一方、所定以上衝撃荷重による第1支持金具と第2支持金具の相対移動により前記ピン軸が前記軸保持金具を破断すると共にガイド部に沿って移動して第2端部に当接して停止することを特徴とする。
【0019】
請求項2は第2支持金具に形成される長孔及び軸保持金具等の具体的構成であって、通常時において第1支持金具に設けられたピン軸が第2支持金具に係止ピンによって両端側が支持された軸保持金具に当接してピン軸が長孔の第1端部に保持される。一方、架線等に過大な衝撃荷重が作用した際には、その衝撃荷重によりピン軸が軸保持金具を破断して衝撃荷重を低減させると共に、更に第1支持金具と第2支持金具が張力を弱める伸長方向に相対移動して張力を減少せしめてピン軸が第2端部に当接して停止して架線の張力を保持する。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の架線の衝撃荷重緩和装置において、前記ガイド部にピン軸に当接して衝撃を減衰する衝撃減衰手段を備えたことを特徴とする。
【0021】
これによると、ガイド部に形成された衝撃減衰手段によって衝撃荷重を減衰しつつピン軸が移動し第2端部に当接して移動が停止することから、第1実施の形態に加え、効率的に衝撃荷重が減衰されて、架線の断線、衝撃荷重緩衝装置及び架線把持部や固定部等の破損がより確実に回避できる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の架線の衝撃荷重緩和装置において、前記衝撃減衰手段は、ガイド部の側面に複数形成された突起であることを特徴とする。これによると、衝撃減衰手段をガイド部の側面に複数形成された突起によって構成することで、第1支持金具と第2支持金具が伸長方向に相対移動する際に、ピン軸がガイド部の側面に形成された各突起に係止されるような押接が繰り返されて衝撃荷重が効率的に減衰できる。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の架線の衝撃荷重緩和装置において、前記軸保持金具は、両係止ピン間における前記ピン軸との当接部に脆弱部を有することを特徴とする。これによると、ピン軸が当接する軸保持金具の当接部に脆弱部を形成することで、該部において軸保持金具を確実に破断することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の架線の衝撃荷重緩和装置において、前記各係止ピンは、軸保持金具を第2支持金具に対して揺動可能に支持することを特徴とする。
【0025】
これによると、軸保持金具を係止ピンにより揺動可能に支持することで、破断された軸保持金具、即ち分断片が確実に第2支持金具に保持されて落下が防止できる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の架線の衝撃荷重緩和装置において、前記一対の第2支持金具は、端部において一体的に連結されたこと特徴とする。
【0027】
これによると、第1支持金具の両面に配置される各第2支持金具を一体に形成することで、衝撃荷重緩和装置の構成部材が削減されて構成の簡素化が得られると共に、各第2支持金具の間隔が一定に保持されて第1支持金具と各第2支持金具との間隔等の相互位置が一定に保持され、安定した衝撃荷重緩和特性が得られる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、通常時において第1支持金具に設けられたピン軸が第2支持金具に係止ピンによって両端側が支持された軸保持金具に当接して第1支持金具と第2支持金具の相対移動が規制されて架線把持部に把持された架線の張力を保持する。一方、所定以上の衝撃荷重が作用した際には、その衝撃荷重により相対的に移動する第1支持金具と各第2支持金具により、ピン軸が軸保持金具を破断して衝撃荷重を低減させ、更に第1支持金具と第2支持金具が伸長方向に相対移動して張力を減少せしめてピン軸が長孔の端部に当接して移動が停止する。これにより架線の断線や架線把持部或いは固定部等の破損等が回避される。
【0029】
また、第1支持金具に設けられたピン軸によって第2支持金具に係止ピンによって架設支持された軸支持金具を破断して衝撃を緩和することから、第1支持金具、第2支持金具及び軸支持金具等の形状及び組付精度が軸支持金具の破断作用に影響することが少なく、これらの精度を抑制することが可能になり、簡単な構成で長期に亘り確実な衝撃緩和が確保できると共に、メンテナンス等の管理維持の簡素化がえられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る架線の衝撃荷重緩和装置を示す斜視図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1の平面図となるB矢視図である。
【図5】衝撃荷重緩和装置の使用状態を示す図である。
【図6】衝撃荷重緩和装置の作用を示す断面図である。
【図7】図6のC矢斜視図である。
【図8】第2実施の形態に係る衝撃荷重緩和装置の分解斜視図である。
【図9】図8のD−D線断面図である。
【図10】第3実施の形態に係る衝撃荷重緩和装置の斜視図である。
【図11】従来の衝撃荷重緩和装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下本発明の架線の衝撃荷重緩和装置の実施の形態を図を参照して説明する。
【0032】
(第1実施の形態)
本発明に係る架線の衝撃荷重緩和装置の第1実施の形態を図1乃至図7を参照して説明する。
【0033】
図1は衝撃荷重緩和装置10の概要を示す斜視図、図2は衝撃緩荷重和装置1の分解斜視図、図3は図1のA−A線断面図、図4は平面図となる図1のB矢視図である。
【0034】
衝撃荷重緩和装置10は、例えば鋼或いはアルミニウム材等の金属材からなる第1支持金具11及びこの第1支持金具11の両側面に配置した2枚の第2支持金具21を有し、これら第1支持金具11と第2支持金具21を連結するピン軸41を備える。
【0035】
第1支持金具11と第2支持金具21を連結するピン軸41は、図2に示すように先端にねじ部42aが形成された軸部42及び軸部42の基端に軸部42より大径の頭部43を有するボルト状であって、ねじ部42aに螺合可能なナット部44を有する。
【0036】
第1支持金具11は、細長矩形板状であって、その一端部に架線把持部となる引留クランプ或いは固定部となる碍子の一方、本実施の形態では引留クランプ2に連結するための連結孔12が穿設され、他端部にピン軸41の軸部42が貫通する共に圧入保持される軸挿入孔13が形成される。
【0037】
一方、第1支持金具11を両側面から挟み、かつ長手方向にずらすように配置される各第2支持金具21は、細長矩形板状であって、その一端部に引留クランプ或いは碍子の他方、本実施の形態では碍子6に連結するための連結孔22が穿設され、中央部から他端部側に亘って長手方向に沿って直線状に連続する長孔25が穿設される。長孔25は中央側の第1端部26及び他端側の第2端部27がピン軸41の軸部42が挿入可能な円弧状に形成され、第1端部26と第2端部27との間はピン軸41の軸部42の径と同等或いは若干大きく離間して対向する側面28a、28bを有する直線状のガイド部28が形成される。また、第2支持金具21には、長孔25の第1端部26の近傍においてガイド部28を隔てた両側に係止孔29a、29bが穿設される。
【0038】
更に、各第2支持金具21の側面に長孔25の第1端部26の近傍においてガイド部28の両側間に長孔25を跨ぐように軸保持金具31を架け渡す。軸保持金具31は、両端部に係止孔29a及び29bに対応して離間する係止ピン挿入孔32a、32bが穿孔された細長矩形板状で、第1端部26側の縁部の長手方向中央にピン軸41の軸部42が嵌合可能な凹状の当接部33を形成し、該部に剛性が比較的低い脆弱部34が形成される。
【0039】
この軸保持金具31は、各係止ピン挿入孔32a、32bから挿入して第2支持金具21の係止孔29a、29bに挿入して固定される係止ピン36a、36bによって揺動可能に軸支された状態で第2支持金具21に取り付けられる。係止ピン36a、36bは係止孔29a、29bに打ち込み等により脱落しないように固定すると共に軸保持金具31が脱落しないように大径の頭部を形成することが好ましい。
【0040】
この第2支持金具21に取り付けられた軸保持金具31の当接部33と長孔25の第1端部26によってピン軸41の軸部42が挿入可能でかつ頭部43及びナット部44の挿入を阻止する径を有する開口部が形成される。
【0041】
このように構成された第1支持金具11及び軸保持金具31が取り付けられた各第2支持金具21は、第1支持金具11の両面側に各軸保持金具31を外側にして第1支持金具11の軸挿入孔13に各第2支持金具21の長孔25の第1端部26を臨ませて重ね合わせられる。
【0042】
この第1支持金具11の両側に第2支持金具21を重ね合わせた状態で、一方の第2支持金具21に形成された長孔25の第1端部26と軸保持金具31の当接部33とによって形成された開口部からピン軸41の軸部42を先端から挿入し、第1支持金具11の軸挿入孔13に圧入すると共に貫通して他方の第2支持金具21に形成された長孔25の第1端部26と軸保持金具31の当接部33によって形成された開口部から軸部42の先端を突出させると共に、ねじ部42aにナット部44を螺合して第1支持金具11と各第2支持金具21を一体化して図1に斜視図、図3に断面図、及び図4に平面図を示すように衝撃荷重緩和装置10が構成される。
【0043】
このような衝撃荷重緩和装置10は、例えば図5に示すように、架線1を把持固定する引留クランプ2のクレビス部2aに第1支持金具11の連結孔12がコッタ3によって連結される一方、各第2支持金具21の端部側で電柱等に設けた支持具5に連結される碍子6の連結金具7を挟持すると共に各連結孔22がコッタ8によって連結されて引留クランプ2と碍子6との間に介装される。この引留クランプ2と碍子6が互いに離間する方向が張力方向Fとなる。
【0044】
この第1支持金具11が引留クランプ2に連結し第2支持金具22が碍子6に連結された通常時において衝撃荷重緩和装置10は、図3及び図4に示すように第1支持金具11に保持されて両側面から突出するピン軸41の軸部42が各第2支持金具20に設けられた軸保持金具31に凹設された当接部33に当接して第1支持金具11と第2支持金具21の張力方向F、即ち伸長方向の相対移動が規制された状態で引留クランプ2と碍子6との間に架設される。これにより碍子6と引留クランプ2の間に衝撃荷重緩和装置10によって張力が付与され、引留クランプ2に把持固定された架線1は衝撃荷重緩和装置10、碍子6等を介して鉄塔や電柱に引き留められると共に予め設定された通常の張力が保持される。
【0045】
一方、このようにして鉄塔や電柱間に通常の張力で張架された架線1に、強風や着雪等による強振動や張力増加等により異常な衝撃荷重、即ち過大な張力が加わると、その衝撃荷重Pが図3に示すように引留クランプ2を介して衝撃荷重緩和装置10の第1支持金具11の端部に作用する。この衝撃荷重Pにより第1支持金具11と各第2支持金具21が張力方向Fに相対移動し、第1支持金具11に支持されたピン軸41の軸部42が、第2支持金具21に係止ピン36a、36bによって両端部が軸支された軸保持金具31の当接部33に圧接乃至衝打して軸保持金具31の長手方向中央部に形成された脆弱部34を破断させて衝撃荷重を吸収して低減させる。
【0046】
この軸保持金具31の中央部を破断したピン軸41が長孔25の第1端部26側からガイド部28に移動する際に、分断された軸保持金具31の分断片31A及び31Bは、ピン軸41によって互いに押し広げられて係止ピン36a及び36bを中心に揺動する。ここで、分断片31A、31Bはそれぞれ係止ピン36a、36bにより第2支持金具21に保持され、衝撃荷重緩和装置10から落下することが防止される。
【0047】
そして、図6及び図7のように第1支持金具11に設けられたピン軸41の軸部42が各第2支持金具21の長孔25の第1端部27側からガイド部28内を移動して第2端部27に当接して第1支持金具11及び第2支持金具21の張力方向Fとなる伸長方向の移動が停止する。
【0048】
これにより、第1支持金具11と第2支持金具21の張力方向Fの伸張に応じて引留クランプ2に把持された架線1の弛度が大きくなり、その分張力が低下して架線1の断線や引留クランプ2或いは碍子6等の破損が回避できる。
【0049】
従って、本実施の形態による衝撃荷重緩和装置10は、通常時において第1支持金具11に設けられたピン軸41が第2支持金具21に係止ピン36a、36bによって両端側が支持された軸保持金具31に当接して第1支持金具11と第2支持金具21の相対移動を規制して架線1の張力を保持する。一方、架線1に過大な張力が作用した際には、その衝撃荷重により相対的に移動する第1支持金具11と各第2支持金具21により、ピン軸41の軸部42によって軸保持金具31を破断して衝撃荷重を低減させ、更に第1支持金具11と第2支持金具21が張力を弱める張力方向Fに相対移動してピン軸41が第2端部27に当接して第1支持金具11及び第2支持金具21の伸長方向の移動が停止する。
【0050】
これにより第1支持金具11と第2支持金具21の張力方向Fの伸長に応じて引留クランプ2に把持された架線1の弛度が大きくなり、その分張力が低下して架線1の断線や引留クランプ2或いは碍子6等の破損等が回避される。
【0051】
また、第1支持金具11に設けられたピン軸41の圧接乃至衝打によって第2支持金具21に係止ピン36a、36bによって架設支持された軸保持金具31の脆弱部33を破断する破断力を確保する必要があるが、第1支持金具11、第2支持金具21及び軸保持金具31等の相互位置精度が軸支持金具31の破断作用に影響することが少なく、これら第1支持金具11,第2支持金具21、軸保持金具31及びピン軸41等の形状及び組付精度を抑制することが可能になり、簡単な構成で長期に亘り確実な衝撃緩和が確保できると共に、メンテナンス等の管理維持の簡素化がえられる。
【0052】
また、要求衝撃荷重緩和特性等の仕様変更等に応じて、衝撃荷重緩和装置1の軸保持金具31の形状、例えば板厚や当接部33の形状を変更する等の簡単な変更で適用することができ、第1支持金具11、第2支持金具21及び軸部材41等の変更を伴うことなく種々の仕様に対応することが可能であり、優れた汎用性を有する。
【0053】
(第2実施の形態)
次に、図8及び図9を参照して架線の衝撃荷重緩和装置の第2実施の形態を説明する。
【0054】
図8は衝撃荷重緩和装置10の分解斜視図であり、図9は第2支持金具21の断面形状を示す図8のD−D線断面図である。なお、図8及び図9において図1乃至図7と対応する部位に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略し、異なる部位を主に説明する。
【0055】
衝撃荷重緩和装置10は、第1実施の形態と同様に第1支持金具11及び第1支持金具11の両側面に配置した2枚の第2支持金具21、軸保持金具31及びピン軸41を有する。更に、第2支持金具21に形成される長孔25のガイド部28の側面に28a、28bに本実施の形態の特徴となる複数の突起30からなる衝撃荷重減衰手段を備える。
【0056】
この衝撃荷重減衰手段を備えた第2支持金具21は、図8及び図9に示すように細長矩形板状であって、その一端側に連結孔22が穿設され、中央部から他端側に直線状で連続する長孔25は、中央側の第1端部26及び他端側の第2端部27がピン軸41の軸部42が挿入可能な円弧状に形成され、第1端部26と第2端部27との間はピン軸41の軸部42の直径と同等或いは若干大きく離間して対向する側面28a、28bを有し、側面28a及び28bに対向して第1端部26側から第2端部27側に亘って等間隔或いは不等間隔で複数の突起30が形成され、対向する突起30の頂端間はピン軸41の軸部42の外径より小さく設定される。
【0057】
このように構成された衝撃荷重緩和装置10によると、通常時において第1支持金具11に支持されたピン軸41が第2支持金具21に形成された長孔25の第1端部26と軸保持金具31との間から突出して軸保持金具31に当接して第1支持金具11と第2支持金具21の相対移動が規制され、架線1の張力を維持する。一方、過大な張力が架線1に作用した際には、第1支持金具11に支持されたピン軸41の軸部42が各第2支持金具21に係止ピン36a、36bによって取付支持された軸保持金具31に圧接乃至衝打して脆弱部34を破断して衝撃荷重を低減させると共に、第1支持金具11と第2支持金具21が張力を弱める伸長方向への相対移動に伴ってピン軸41の軸部42がガイド部28の側面28a、28bに形成された各突起30に係止されるように押接を繰り返して衝撃荷重を減衰しつつ移動し第2端部27に当接して第1支持金具11及び第2支持金具21の移動が停止する。
【0058】
従って、第1実施の形態に加え、過大な張力が架線1に作用した際の衝撃荷重緩衝装置1による衝撃緩和が効率的に円滑に行われ、衝撃荷重緩衝装置10及び引留クランプ2或いは碍子6等の衝撃が緩和されて架線1の断線や引留クランプ2或いは碍子6等の破損がより確実に回避できる。
【0059】
また、要求衝撃荷重緩和特性等の仕様変更に応じて、突起30の大きさ形状及び数を適宜変更することができる。
【0060】
(第3実施の形態)
次に図10を参照して衝撃荷重緩和装置の第3実施の形態を説明する。
【0061】
図10は衝撃荷重緩和装置10の概要を示す斜視図である。なお、図10において図1乃至図7と対応する部位に同一符号を付することで該部の詳細な説明を省略する。
【0062】
衝撃荷重緩和装置10は、第1支持金具11の両面に配置される各第2支持金具21が端部において結合されて一体のブロック状に形成される。このように両第2支持金具21を一体に形成することで、第1の実施の形態に加え、衝撃荷重緩和装置10の構成部材の削減が得られると共に、各第2支持金具21の間隔が一定に保持され、第1支持金具11と各第2支持金具21との間隔等の相互位置が一定に保持され、安定した衝撃荷重緩和特性が確保できる。また、第2実施の形態と同様に長孔25のガイド部28の側面28a、28bに突起30等の衝撃荷重減衰手段を施すこともできる。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば上記実施の形態では、第2支持金具21の長孔25におけるガイド部28の側面28a及び28bに形成された複数の突起30により衝撃荷重減衰手段を構成したが、衝撃荷重減衰手段は一対の突起30或いは、側面28a及び28bを粗面状に形成することや、側面28a及び28bに摩擦板等を設けて構成することもできる。
【符号の説明】
【0064】
1 架線
2 引留クランプ(架線把持部)
6 碍子(固定部)
10 衝撃荷重緩和装置
11 第1支持金具
13 軸挿入孔
21 第2支持金具
25 長孔
26 第1端部
27 第2端部
28 ガイド部
28a、28b 側面
30 突起(衝撃荷重減衰手段)
31 軸保持金具
33 当接部
34 脆弱部
36a、36b 係止ピン
41 ピン軸
42 軸部
F 張力方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架線把持部と固定部に両端部が連結されて該架線把持部と固定部の間に介装されて架線把持部と固定部が離反する張力を保持すると共に衝撃を緩和する架線の衝撃荷重緩和装置であって、
端部が前記架線把持部或いは固定部の一方に連結される板状の第1支持金具と、
該第1支持金具に保持されて該第1支持金具の両側面から突出するピン軸と、
端部が前記架線把持部と固定部の他方に連結されて前記第1支持金具の両面にそれぞれ配置される板状で、前記ピン軸が貫通すると共に張力方向の移動を許容する長孔が形成された2枚の第2支持金具と、
該第2支持金具に前記長孔を隔てた両側にそれぞれ固定された一対の係止ピンに両端部が支持されて該両係止ピン間に架設されると共に前記ピン軸の移動を規制する軸保持金具とを備え、
前記ピン軸が軸保持金具に当接して第1支持金具と第2支持金具の相対移動を規制する一方、所定以上衝撃荷重による第1支持金具と第2支持金具の相対移動により前記ピン軸が前記軸保持金具を破断すると共にピン軸が長孔の端部に当接して停止することを特徴とする架線の衝撃荷重緩和装置。
【請求項2】
前記第2支持金具の長孔は、張力方向の第1端部と第2端部の両端間が対向する一対の側面を有するガイド部によって連結され、
前記軸保持金具によりピン軸を長孔の第1端部に保持する一方、所定以上衝撃荷重による第1支持金具と第2支持金具の相対移動により前記ピン軸が前記軸保持金具を破断すると共にガイド部に沿って移動して第2端部に当接して停止することを特徴とする請求項1に記載の架線の衝撃荷重緩和装置。
【請求項3】
前記ガイド部にピン軸に当接して衝撃を減衰する衝撃減衰手段を備えたことを特徴とする請求項2に記載の架線の衝撃荷重緩和装置。
【請求項4】
前記衝撃減衰手段は、ガイド部の側面に複数形成された突起であることを特徴とする請求項3に記載の架線の衝撃荷重緩和装置。
【請求項5】
前記軸保持金具は、両係止ピン間における前記ピン軸との当接部に脆弱部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の架線の衝撃荷重緩和装置。
【請求項6】
前記各係止ピンは、軸保持金具を第2支持金具に対して揺動可能に支持することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の架線の衝撃荷重緩和装置。
【請求項7】
前記一対の第2支持金具は、端部において一体的に連結されたこと特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の架線の衝撃荷重緩和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−102583(P2013−102583A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244159(P2011−244159)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】