説明

架線運搬装置、およびその架線配索方法

【課題】本発明は架線運搬装置、およびその架線配索方法に関し、ホールバック・ラインと、スラックプリング・ラインと、メイン・ラインとの索材に関連するドラム相互のインターロック制御を行って馬力回生をなし、効率的な運転が行い、木材の集材を最適に行う。
【解決手段】搬器2の後部に一端を結着したホールバック・ライン5を巻取可能なホールバック・ドラムD1,D′1と、方向変換ドラム6を介してメイン・ライン7を捲取可能なメイン・ドラムD2,D′2と、メイン・ラインの他端側のスラックプリング・ライン8を捲取るスラックプリング・ドラムD3,D′3と、方向変換ドラムに連係する吊ドラム10に捲回され、被運搬物Wを吊下げるホイスト・ライン11とを備え、ホールバック・ドラムと、メイン・ドラムと、スラックプリング・ドラムとをクラッチ手段12A,12Bを介してモータM1,M2,M3により回転可能に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は架線運搬装置、およびその架線配索方法に関し、例えば搬器の運搬に寄与するホールバック・ラインまたはスラックプリング・ラインと被運搬物の吊上げに寄与するメイン・ラインとの索材に関連するドラム相互のインターロック制御を行って馬力回生をなし、損失が少なく効率的な運転が可能であり、また索張りが容易であり、山林において伐採される木材の集材を最適に行うのに使用する。
【背景技術】
【0002】
従来、傾斜地、谷、川、凹面部、木株や岩等の障害物が存在する山林等において伐採した木材の集材をするのには、先ず木材の枝をチェーン・ソー等の工具にて裁断し、その後一定場所に集材をしていた。この際、例えば山林等において足場が不安定な傾斜地等で伐採した木材の集材をなすために、木材を架線にて空中に吊り上げ、運搬を行う方法として例えばランニング・スカイライン方式という2索を用いた架線運搬方法がある(特許文献1参照。)。
【0003】
すなわち、モータ等の駆動により、同速に回転自在に例えば台車上に設けた第1,第2の1組のウインチ部と、該ウインチ部に捲回可能および繰出可能に一端側が捲回されるホールバック・ラインおよびメイン・ラインの2索と、立木等の一定高さに取付けられて設置される方向変換用の定滑車を介して前記ホールバック・ラインの他端が固着された基枠部、該基枠部の上部に回転自在に装着され、前記ホールバック・ラインの上側架線部に移動自在に載置される2個の移動滑車、木材等の被運搬物を吊上可能に前記メイン・ラインの他端側のホイスト・ラインに縛束するように基枠部の下方に装着された吊滑車により形成される搬器とから成る構造である。
【0004】
そして、木材を運搬するのには、先ずチェーン・ソー等の工具により枝を払った木材等の所望の一端側(根元)を前記メイン・ラインの一端のホイスト・ラインに縛束する。その後、ホールバック・ラインとメイン・ラインの一端がそれぞれ捲回されて回転方向が異なる第1,第2のウインチ部をモータ等により駆動することによりそのドラム素体をそれぞれ回転してホールバック・ラインおよびメイン・ラインを相反する方向に同速に繰出すとともに捲揚げると、ホールバック・ラインの一端が結着された基枠部を有する搬器がホールバック・ラインの上側架線部に案内されながらメイン・ラインの引張力を受けることにより移動するので、この搬器の下方部に装設された吊滑車に捲回して垂れ下げられるホイスト・ラインの(先端)により一端(根元側)が結束された木材は傾斜地等に沿って空中に吊上げられながら所望の場所に運搬され、集材が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−61189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の上記従来のランニング・スカイライン方式という架線運搬方法は、木材等の被運搬物の運搬時に、ホールバック・ラインおよびメイン・ラインを捲取ったり、繰出すための第1,第2のウインチ部をモータ等により駆動して運転する場合に、第1,第2のウインチ部のドラム素体間にはインターロック機構による相互の連係手段が何ら施されていないので、伐採された木材等の所望の一端側(根元)を搬器から垂れ下げられたホイスト・ラインの一端に縛束する場合に、被運搬物としての木材の荷重に伴う反制動力をホールバック・ラインにかけることにより搬器が不用意に独走するのを防止したり、木材の降下を防止した状態にホイスト・ラインの一端に縛束しなければならない。この反制動力をホールバック・ラインにかけるには、一例として例えぱ油圧ブレーキ、手動ブレーキ、およびスリッピングクラッチが用いて行われるが、ブレーキが過熱したり、ライニングが摩耗して部品の寿命が短命になり、しかも大きな馬力の損失を招き、燃料が無駄に損失することになる。
【0007】
また、実際の運転操作において反制動力をかけるための加減が難しく、搬器が不用意に降下し過ぎたり、上昇し過ぎたりするという乱高下することになる。例えば、山地の傾斜に沿って被運搬物を山側から谷側へ移送、運搬させる下荷を実施する場合、搬器から吊下げられるホイスト・ラインに被運搬物を結束するのに、索の引き回し作業は容易に行えるが、被運搬物の運搬には荷重やホールバック・ラインの移動速度を考慮しなければ、被運搬物が運搬中に乱高下したり、揺れを生じ易く、不安定になり、荷崩れを生じてしまう。また、山地の傾斜に沿って被運搬物を谷側から山側へ移送、運搬させる上荷の場合、谷側において架線の架設高さの高い位置にある搬器からホイスト・ラインを吊降ろす。その後、吊降ろされたホイスト・ラインの一端に被運搬物を荷重に抗して結束するという、ホイスト・ラインの引き回し作業に多くの時間と、手間を要していた。そして、被運搬物の移送、運搬を行うのに、搬器が往復移動される架線の架設高さと、山地の傾斜に沿ってメイン・ラインと、ホールバック・ラインとの繰出し、および捲取り操作での、ホールバック・ラインに対する反制動力を制御しなければ、被運搬物を考えながら移送、運搬することはできなかった。しかも、上記のように反制動力をホールバック・ラインにかけながら運転が行われるので、高速運転がしにくく、能率が低いものであった。
【0008】
しかも、搬器を移送、運搬するためのメイン・ライン、およびホールバック・ラインの索張り作業も多くの時間と手間がかかっていた。また、前述のように油圧ブレーキ、手動ブレーキ、およびスリッピングクラッチを運転機構に組込む必要があるのと、索張りには反制動力に耐える太い索径の索材を用いるので、第1,第2のウインチ部のドラム素体のドラム径が大きくなるため、装置自体等が大型化し、重量も増大するという不都合があった。
【0009】
本発明は上記従来の不都合を解決し、運転が簡単な取扱い操作にて行え、高速運転が可能であり、また、搬器が不用意に降下したり、上昇したりせずに、被運搬物を安定した吊り上げ高さにて運搬が行え、また、ブレーキの過熱やライニングの摩耗が少なく部品の寿命が長くなり、これらの装置を必要とせず、しかも、馬力の損失を招くことなしにドラム相互のインターロック制御を行って馬力回生させ、以て燃料の無駄な損失がなく、効率的な運転が行え、そして、索張りが容易且つ確実に行え、必要以上に太い索材を用いなくても済む架線運搬装置、およびその架線配索方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題に鑑みなされ、請求項1に記載の発明は、搬器を移送可能に支持する上側架線部を有し、所望間隔をおいて設置される定滑車に捲回されることにより前記搬器の後部に一端が結着されたホールバック・ラインを捲取可能になすホールバック・ドラムと、搬器に設けた方向変換ドラムに所望複数回捲回わされるメイン・ラインの一端側を捲取可能に設けたメイン・ドラムと、前記メイン・ラインの他端側のスラックプリング・ラインが捲回わされるスラックプリング・ドラムと、前記方向変換ドラムに対して動力伝達部品を介して回転可能に前記搬器に連係して設ける吊ドラムに一端が捲取可能に固定され、被運搬物を吊上げ可能に搬器から吊下げられるホイスト・ラインとを備え、前記ホールバック・ドラムと、前記メイン・ドラムと、前記スラックプリング・ドラムとは個別のモータの駆動力により回転可能に設けられ、前記ホールバック・ドラムと前記メイン・ドラム、または前記メイン・ドラムとスラックプリング・ドラムとの間を油圧クラッチ手段を介してそれぞれ接離自在に接続することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記ホールバック・ドラムは、前記メイン・ドラムと前記スラックプリング・ドラムに対して略同径に形成され、前記ホールバック・ドラムは前記メイン・ドラムと前記スラックプリング・ドラムに対して数倍速の移動速度にてラインを捲取可能に設けられていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記ホイスト・ラインが、その一端を捲取可能に搬器に固定される供給側の第1分割索と、捲取側の第2分割索とに区分され、前記第1分割索と前記第2分割索とは前記吊ドラムに対して対向側の各一端が固着手段により着脱可能に固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラムに捲回されていることにより、該ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れかにおいて、前記吊ドラムが、左右および中間部に設置した3つのフランジにより供給側の第1吊ドラム部と、該第1吊ドラム部に軸長方向に一体に連設される繰出側の第2吊ドラム部とよりなる2つの区分域に分割され、前記ホイスト・ラインは、一端が前記搬器に固定され、必要な所望長さを捲取可能に複数回前記第1吊ドラム部に捲回され、他端側が前記固着手段により着脱可能に固着される供給側の第1分割索と、一端が前記固着手段により前記第2吊ドラム部に着脱可能に固着されて少なくとも1回以上が捲回された繰出側の第2分割索とにより構成されることにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れかにおいて、前記メイン・ライン側に配索される第3分割索、および前記スラックプリング・ライン側に配索される第4分割索の対向端が、方向変換ドラムに固着手段により着脱可能に固着されるとともに、該記固着端から少なくとも1捲き以上が方向変換ドラムに捲回されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れかにおいて、前記搬器に設けられる方向変換ドラムが、前段に設置される第1溝付ドラムと、後段に設置される第2溝付ドラムとの複数段に構成され、前記メイン・ライン、および前記スラックプリング・ラインに使用される索材は、前記メイン・ライン側に配索される第3分割索と、前記スラックプリング・ライン側に配索される第4分割索とに区分されて前記第1溝付ドラムと、前記第2溝付ドラムとに捲回されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記第1溝付ドラムおよび第2溝付ドラムが、基板部と該基板部に対してヒンジを介して外側に枢動可能に枢着されている可動板部とにより搬器の少なくとも一方の側板を構成する前記可動板部に回転軸の一端が着脱可能に取付けられることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項8に記載の発明は、請求項1〜5の何れかにおいて、前記固着手段が、前記第1分割索と前記第2分割索との対向端、または前記メイン・ライン側に配索される前記第3分割索と前記スラックプリング・ライン側に配索される前記第4分割索との対向端に設けられた平面略T字状の係止片と、前記吊ドラム、または前記方向変換ドラムの周面に、前記係止片が略合致して挿入可能な開口部が設けられると共に、該開口部の奥には前記係止片が周方向に摺動可能になって係止可能に連設された幅広の摺動溝よりなる被係合孔と、前記被係合孔内に前記係止片を係入後に前記被係合孔を閉止、固定する閉止板と、よりなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項9に記載の発明は、請求項1〜8の何れかにおいて、前記メイン・ドラムは、並列に配索される1対のドラムのうち、後段のドラムは、前記ホールバック・ドラムに対し第1のクラッチ手段を介して接続可能に設けられ、また前段のドラムは前記スラックプリング・ドラムに対し第2のクラッチ手段を介して前記スラックプリング・ドラムの後段に接続可能に設けられることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項10に記載の発明は、請求項1〜9の何れかにおいて、前記メイン・ドラムまたは前記スラックプリング・ドラムは、必要に応じて並列に対向して配索される1対の溝付ドラムにより形成され、該溝付ドラム相互はチェーンおよびスプロケット、またはベルトおよびプーリ等の動力伝達部品を介して回転自在に連結されることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の請求項11に記載の発明は、ホールバック・ドラムにより一端が捲取可能に設けられ、所定間隔をおいて定滑車に捲回されて搬器に他端が固定されることにより、前記搬器を移送可能に支持したホールバック・ラインと、メイン・ドラムに一端が捲取可能に設けられ、前記搬器に設けられた方向変換ドラムに所望複数回捲回されるメイン・ラインと、スラックプリング・ドラムに他端が捲取可能に設けられ、前記メイン・ラインの他端側に配されるスラックプリング・ラインと、前記方向変換ドラムに対して動力伝達部品を介して回転可能に前記搬器に連繋して設けた吊ドラムに一端が捲取可能に固定され、被運搬物を吊上げ可能に搬器から吊下げられるホイスト・ラインと、を備える架線運搬装置の架線配索方法において、
前記ホイスト・ラインは、前記吊ドラムに対して前記搬器に固定される供給側の第1分割索と捲取側の第2分割索とに区分され、
前記ホイスト・ラインの供給側の前記第1分割索の一端を前記搬器に固定する工程と、
前記第1分割索と前記第2分割索とは、前記吊ドラムに対して対向側の各一端が固着手段により着脱可能に固定される工程と、
前記第1分割索と前記第2分割索とは、該固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラムに捲回される工程とにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けた
ことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の請求項12に記載の発明は、ホールバック・ドラムにより一端が捲取可能に設けられ、所定間隔をおいて定滑車に捲回されて搬器に他端が固定されることにより、前記搬器を移送可能に支持したホールバック・ラインと、メイン・ドラムに一端が捲取可能に設けられ、前記搬器に設けられた方向変換ドラムに所望複数回捲回されるメイン・ラインと、スラックプリング・ドラムに他端が捲取可能に設けられ、前記メイン・ラインの他端側に配されるスラックプリング・ラインと、前記方向変換ドラムに対して動力伝達部品を介して回転可能に前記搬器に連繋して設けた吊ドラムに一端が捲取可能に固定され、被運搬物を吊上げ可能に搬器から吊下げられるホイスト・ラインと、を備える架線運搬装置の架線配索方法において、
前記ホイスト・ラインは、前記吊ドラムに対して前記搬器に固定される供給側の第1分割索と捲取側の第2分割索とに区分され、
前記ホイスト・ラインの供給側の前記第1分割索の一端を前記搬器に固定する工程と、
前記第1分割索と前記第2分割索との対向端に設けた平面略T字状の係止片を前記吊ドラムの周面に設けた被係合孔の開口部を介して該開口部の奥に設けた幅広の摺動溝内に摺動し、前記被係合孔内に前記係止片を係入後に前記被係合孔を閉止板により閉止、固定することより前記吊ドラムに対向側の各一端を固着手段により着脱可能に固定する工程と、
前記第1分割索と前記第2分割索とは、該固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラムに捲回される工程とにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けた
ことを特徴とする。
【0022】
また、本発明の請求項13に記載の発明は、請求項11または12において、前記吊ドラムが、左右および中間部に設置した3つのフランジにより供給側の第1吊ドラム部と、該第1吊ドラム部に軸長方向に一体に連設される繰出側の第2吊ドラム部とよりなる2つの区分域に分割され、前記ホイスト・ラインは、一端が前記搬器に固定され、必要な所望長さを捲取可能に複数回前記第1吊ドラム部に捲回され、他端側が前記固着手段により着脱可能に固着される供給側の第1分割索と、一端が前記固着手段により前記第2吊ドラム部に着脱可能に固着されて少なくとも1回以上が捲回された繰出側の第2分割索とにより構成されることにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明の請求項14に記載の発明は、請求項11〜13の何れかにおいて、前記搬器に設けられる方向変換ドラムが、前段に設置される第1溝付ドラムと、後段に設置される第2溝付ドラムの複数段に構成され、前記メイン・ライン、および前記スラックプリング・ラインに使用される索材は、前記メイン・ライン側に配索される第3分割索と、前記スラックプリング・ライン側に配索される第4分割索とに区分されて前記第1溝付ドラムと、前記第2溝付ドラムとに捲回されることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の請求項15に記載の発明は、請求項14において、前記第1溝付ドラムおよび第2溝付ドラムが、基板部と該基板部に対してヒンジを介して枢動可能に枢着されている可動板部とにより搬器の少なくとも一方の側板を構成する前記可動板部に回転軸の一端が着脱可能に取付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の請求項1に記載の発明によれば、搬器を移送可能に支持する上側架線部を有し、所望間隔をおいて設置される定滑車に捲回されることにより前記搬器の後部に一端が結着されたホールバック・ラインを捲取可能になすホールバック・ドラムと、搬器に設けた方向変換ドラムに所望複数回捲回わされるメイン・ラインの一端側を捲取可能に設けたメイン・ドラムと、前記メイン・ラインの他端側のスラックプリング・ラインが捲回わされるスラックプリング・ドラムと、前記方向変換ドラムに対して動力伝達部品を介して回転可能に前記搬器に連係して設ける吊ドラムに一端が捲取可能に固定され、被運搬物を吊上げ可能に搬器から吊下げられるホイスト・ラインとを備え、前記ホールバック・ドラムと、前記メイン・ドラムと、前記スラックプリング・ドラムとは個別のモータの駆動力により回転可能に設けられ、前記ホールバック・ドラムと前記メイン・ドラム、または前記メイン・ドラムとスラックプリング・ドラムとの間を油圧クラッチ手段を介してそれぞれ接離自在に接続するので、運転が簡単な取扱い操作にて行え、高速運転が可能であり、また、搬器が不用意に降下したり、上昇したりせずに、被運搬物を安定した設置高さにて運搬が行え、また、ブレーキの過熱やライニングの摩耗が少なく部品の寿命が長くなり、しかも燃料の無駄な損失がなく、効率的な運転が行え、そして、必要以上に太い索材を用いなくても索張りが容易かつ確実に行え、さらには外容積も大型化することなく、軽量になり、製作、組立も容易である。
【0026】
また、本発明の請求項2に記載の発明によれば、前記ホールバック・ドラムは、前記メイン・ドラムと前記スラックプリング・ドラムに対して略同径に形成され、前記ホールバック・ドラムは前記メイン・ドラムと前記スラックプリング・ドラムに対して数倍速の移動速度にてラインを捲取可能に設けられているので、上側架線部に移動滑車が移動可能に吊下げられている搬器は数倍速にて移動される。そして、搬器の前端部側に一端部が係留されるスラックプリング・ラインの捲取時の移動速度よりも数倍速の移動速度にてホールバック・ドラムに捲取られるので、ホールバック・ラインは撓みを生ぜず、最適な緊張度になるため、搬器はホールバック・ラインに対して上下動することなく、所定の吊上げ高さを維持して運搬される。しかも、ホールバック・ドラムのトルクは、メイン・ドラムとスラックプリング・ドラムのトルクに対して数倍になり、小さな馬力で荷重の大きな被運搬物を容易かつ確実に架線運搬することができる。
【0027】
また、本発明の請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2において、前記ホイスト・ラインが、その一端を捲取可能に搬器に固定される供給側の第1分割索と、捲取側の第2分割索とに区分され、前記第1分割索と前記第2分割索とは前記吊ドラムに対して対向側の各一端が固着手段により着脱可能に固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラムに捲回されていることにより、該ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたので、搬器に被運搬物を吊下げるためのホイスト・ラインを取付けるのには、区分されたホイスト・ラインの供給側の第1分割索の一端を搬器に固定し、この第1分割索の他端と第2分割索の対向側の各一端とを固着手段により吊ドラムに固着するとともに、これらの固着端から少なくとも第1分割索、および第2分割索を1捲き以上が前記吊りドラムに捲回されていることにより、ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたので、被運搬物を搬器に取付けて吊り下げたり、分解が容易かつ確実に行え、保守・管理が便利である。
【0028】
そして、ホイスト・ラインの下端に装着したロージング・ブロックのフックに被運搬物として集材した木材を縛り、吊下げる。この際、一端が搬器に固定されているホイスト・ラインの第1分割索に対して捲取側の第2分割索を、例えば手動操作により引いたり、または戻したりすると、ホイスト・ラインの第1分割索と前記第2分割索とは対向側の各一端が固着手段により吊ドラムに対して固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラムに捲回されているので、例えば捲取側の第2分割索を、例えば手動操作により引いたり、または戻したりすることにより、偶力による小さな操作力により吊ドラムを迅速かつ確実に回動操作させ、搬器に対する被運搬物の初期の吊上高さを小さな操作力で容易に高低調整することができる。
【0029】
このようにして、搬器のホイスト・ラインに被運搬物を初期の吊上高さにて吊下げてから、ホールバック・ドラムによるホールバック・ラインの捲取り、または繰出と、メイン・ドラムによるメイン・ラインの捲取り、または繰出、およびスラックプリング・ドラムによるスラックプリング・ラインの捲取り、または繰出により、搬器をホールバック・ラインにおける上側架線部上に移送させることができる。そして、メイン・ドラムによるメイン・ラインの捲取り、または繰出、およびスラックプリング・ドラムによるスラックプリング・ラインの捲取り、または繰出により、搬器の方向変換ドラムを正転、または逆転すると、方向変換ドラムの回転が動力伝達部品のスプロケット、チェーンを介して吊ドラムは受動して回転するので、被運搬物を乱高下することがないように、ホイスト・ラインを緊張させ、制御することができる。しかも、メイン・ドラムによるメイン・ラインの捲取り、または繰出、およびスラックプリング・ドラムによるスラックプリング・ラインの捲取り、または繰出に対して被運搬物としての木材の荷重に伴う反制動力をホールバック・ラインにかけることにより、搬器が不用意に独走するのを防止したり、木材が乱高下するのを防止することができる。そして、この反制動力をホールバック・ラインにかけるのに、油圧ブレーキを用いて行われるのでないから、ブレーキが過熱したり、ライニングが摩耗して部品が短命になることなく、燃料が無駄になることはない。
【0030】
また、本発明の請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れかにおいて、前記吊ドラムが、左右および中間部に設置した3つのフランジにより供給側の第1吊ドラム部と、該第1吊ドラム部に軸長方向に一体に連設される繰出側の第2吊ドラム部とよりなる2つの区分域に分割され、前記ホイスト・ラインは、一端が前記搬器に固定され、必要な所望長さを捲取可能に複数回前記第1吊ドラム部に捲回され、他端側が前記固着手段により着脱可能に固着される供給側の第1分割索と、一端が前記固着手段により前記第2吊ドラム部に着脱可能に固着されて少なくとも1回以上が捲回された繰出側の第2分割索とにより構成されることにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたので、例えば施工現場においてホイスト・ラインの配索を行うのには、供給側の第1吊ドラム部の外周に固着手段により供給側の第1分割索の一端を着脱自在に固着するとともに、必要な所望長さを複数回捲回して他端を搬器に固定し、また一端を前記第1吊ドラム部と一体にフランジを介して形成した第2吊ドラム部の外周に着脱自在に固着手段を介して固着した第2分割索を少なくとも1回以上第2吊ドラムの外周に捲回するという簡単な取扱操作により、ホイスト・ラインの配索作業が簡単かつ確実に行える。また、補修が容易になる。そして、繰出側の第2分割索を手動により繰出操作および捲揚操作を行うことにより、ホイスト・ラインにロージング・ブロックを介して吊上げられる被運搬物の吊上操作を容易かつ確実に行うことができる。
【0031】
また、本発明の請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4の何れかにおいて、前記メイン・ライン側に配索される第3分割索、および前記スラックプリング・ライン側に配索される第4分割索の対向端が、方向変換ドラムに固着手段により着脱可能に固着されるとともに、該記固着端から少なくとも1捲き以上が方向変換ドラムに捲回されるので、方向変換ドラムの周面にメイン・ライン側に配索される第3分割索と、スラックプリング・ライン側に配索される第4分割索とを固着手段により着脱可能に取付けることができ、方向変換ドラムのメイン・ラインまたはスラックプリング・ラインの索張り作業が容易かつ確実に行える。
【0032】
また、本発明の請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5の何れかにおいて、前記搬器に設けられる方向変換ドラムが、前段に設置される第1溝付ドラムと、後段に設置される第2溝付ドラムとの複数段に構成され、前記メイン・ライン、および前記スラックプリング・ラインに使用される索材は、前記メイン・ライン側に配索される第3分割索と、前記スラックプリング・ライン側に配索される第4分割索とに区分されて前記第1溝付ドラムと、前記第2溝付ドラムとに捲回されるので、例えば施工現場において搬器に設けられる方向変換ドラムに対するメイン・ライン、およびスラックプリング・ラインの配索を行うのには、1本の索材を2つ折りした略中間部分を第1溝付ドラムおよび第2溝付ドラムに複数回づつ捲回するという簡単な取扱操作により、メイン・ライン、およびスラックプリング・ラインの配索作業が簡単かつ確実に行うことができ、補修も容易になる。
【0033】
また、本発明の請求項7に記載の発明によれば、請求項6において、前記第1溝付ドラムおよび第2溝付ドラムが、基板部と該基板部に対してヒンジを介して外側に枢動可能に枢着されている可動板部とにより搬器の少なくとも一方の側板を構成する前記可動板部に回転軸の一端が着脱可能に取付けられるので、例えば施工現場において搬器に設けられる方向変換ドラムに対するメイン・ライン、およびスラックプリング・ラインの配索を行うのには、先ず、搬器の少なくとも一方の側板を構成する可動板部を基板部に対してヒンジを介して外側に枢動し、側板から第1溝ドラムおよび第2溝ドラムを取外す。次いで、メイン・ライン側に配索される第3分割索と、スラックプリング・ライン側に配索される第4分割索とを配索するのには、1本の索材を2つ折りした略中間部分を第1溝付ドラムおよび第2溝付ドラムに複数回づつ捲回するという簡単な取扱操作により、メイン・ライン、およびスラックプリング・ラインの配索作業が簡単かつ確実に行うことができ、補修も容易になる。
【0034】
また、本発明の請求項8に記載の発明によれば、請求項1〜5において、前記固着手段が、前記第1分割索と前記第2分割索との対向端、または前記メイン・ライン側に配索される前記第3分割索と前記スラックプリング・ライン側に配索される前記第4分割索との対向端に設けられた平面略T字状の係止片と、前記吊ドラム、または前記方向変換ドラムの周面に、前記係止片が略合致して挿入可能な開口部が設けられると共に、該開口部の奥には前記係止片が周方向に摺動可能になって係止可能に連設された幅広の摺動溝よりなる被係合孔と、前記被係合孔内に前記係止片を係入後に前記被係合孔を閉止、固定する閉止板と、よりなるので、先ず、搬器に被運搬物を吊下げるためのホイスト・ラインを搬器に取付けたり、メイン・ライン、およびスラックプリング・ラインを方向変換ドラムに取付けるのには、区分されたホイスト・ラインの供給側の第1分割索の一端を搬器に固定し、この第1分割索の他端と第2分割索の対向端に設けられたり、または第3分割索と、第4分割索の対向端に設けられた平面略T字状の係止片を、吊ドラムの周面に設けられた被係合孔の開口部に合致させて挿入したり、または方向変換ドラムの周面に設けられた被係合孔の開口部に合致させて挿入し、その後、前記係止片を前記開口部の奥に設けた幅広の摺動溝内に摺動させ、係止する。それから、被係合孔から係止片が不用意に抜け出さないように、閉止板により被係合孔を塞いで閉止、固定することにより、搬器に被運搬物を吊下げるためのホイスト・ラインの索張り作業や、または方向変換ドラムに対するメイン・ライン及びスラックプリング・ラインの索張り作業を容易かつ確実に行うことができ、また、分解も容易かつ確実に行え、保守・管理に便利である。
【0035】
また、本発明の請求項9に記載の発明によれば、請求項1〜8において、前記メイン・ドラムは、並列に配索される1対のドラムのうち、後段のドラムは、前記ホールバック・ドラムに対し第1のクラッチ手段を介して接続可能に設けられ、また前段のドラムは前記スラックプリング・ドラムに対し第2のクラッチ手段を介してスラックプリング・ドラムの後段に接続可能に設けられるので、ホールバック・ドラムと、メイン・ドラムと、スラックプリング・ドラムとはクラッチ手段を介して接離自在に直列的に配列されるため、モータを同期して同方向に回転駆動させて搬器の移動を行い、被運搬物の架線運搬を行う時点においてクラッチ手段を介してホールバック・ドラムとメイン・ドラムとを、またメイン・ドラムとスラックプリング・ドラムとは連結されて一体に回転され、2個所におけるインターロックが完成され、動力の馬力回生が行われることにより各ドラム間で力の補完を達成でき、ホールバック・ライン、メイン・ライン、スラックプリング・ラインを寸分の狂いがなく適正にかつ応答性が良く動作することができる。このため、動力の伝達ロスを省き、回生することにより、原動力が小さい馬力で大きな荷重の運搬作業を行うことができ、高速運転可能になり操作性、作業性が飛躍的に向上できる。
【0036】
また、本発明の請求項10に記載の発明によれば、請求項1〜9において、前記メイン・ドラムまたは前記スラックプリング・ドラムは、必要に応じて並列に対向して配索される1対の溝付ドラムにより形成され、該溝付ドラム相互はチェーンおよびスプロケット、またはベルトおよびプーリ等の動力伝達部品を介して回転自在に連結されるので、捻れを生じたり、偏芯することなくメイン・ライン、またはスラックプリング・ラインを繰出したり、または捲回される時のトルクが一定し、移動スピードが定速になるため、メイン・ライン、またはスラックプリング・ラィンの張力が一定になり、緊張または緩みを生ずることなく、木材等の被運搬物の運搬が間欠的に移動したり、吊り上げ高さに高低差を生じて横揺れおよび縦揺れを生ずることなく、スムーズに運搬が行え、メイン・ドラムまたはスラックプリング・ドラムのドラム径は大きくならず、装置自体は大形化しないで済み、軽量化されるとともに索張りが容易になる。
【0037】
また、本発明の請求項11に記載の発明によれば、ホールバック・ドラムにより一端が捲取可能に設けられ、所定間隔をおいて定滑車に捲回されて搬器に他端が固定されることにより、前記搬器を移送可能に支持したホールバック・ラインと、メイン・ドラムに一端が捲取可能に設けられ、前記搬器に設けられた方向変換ドラムに所望複数回捲回されるメイン・ラインと、スラックプリング・ドラムに他端が捲取可能に設けられ、前記メイン・ラインの他端側に配されるスラックプリング・ラインと、前記方向変換ドラムに対して動力伝達部品を介して回転可能に前記搬器に連繋して設けた吊ドラムに一端が捲取可能に固定され、被運搬物を吊上げ可能に搬器から吊下げられるホイスト・ラインと、を備える架線運搬装置の配索方法において、前記ホイスト・ラインは、前記吊ドラムに対して前記搬器に固定される供給側の第1分割索と捲取側の第2分割索とに区分され、前記ホイスト・ラインの供給側の前記第1分割索の一端を前記搬器に固定する工程と、前記第1分割索と前記第2分割索とは、前記吊ドラムに対して対向側の各一端が固着手段により着脱可能に固定する工程と、前記第1分割索と前記第2分割索とは、該固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラムに捲回される工程とにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたので、ホイスト・ラインの供給側の第1分割索を搬器に固定し、ホイスト・ラインの供給側の第1分割索と捲取側の第2分割索との対向側の各一端は、固着手段により吊りドラムに着脱可能に固定されるため、ホイスト・ラインの吊ドラムに対する索張りを容易かつ確実に行うことができる。
【0038】
しかも、ホイスト・ラインの供給側の第1分割索と捲取側の第2分割索との対向側の各一端は、固着手段により着脱可能に固定される吊りドラムの固着端から少なくとも1捲き以上が吊ドラムに捲回されるので、例えば捲取側の第2分割索を、手動操作により引いたり、または戻したりする偶力による小さな操作力により吊ドラムを迅速かつ確実に回動操作させ、搬器に対する被運搬物の初期の吊上高さを容易に高低調整することができる。
【0039】
また、本発明の請求項12に記載の発明によれば、ホールバック・ドラムにより一端が捲取可能に設けられ、所定間隔をおいて定滑車に捲回されて搬器に他端が固定されることにより、前記搬器を移送可能に支持したホールバック・ラインと、メイン・ドラムに一端が捲取可能に設けられ、前記搬器に設けられた方向変換ドラムに所望複数回捲回されるメイン・ラインと、スラックプリング・ドラムに他端が捲取可能に設けられ、前記メイン・ラインの他端側に配されるスラックプリング・ラインと、前記方向変換ドラムに対して動力伝達部品を介して回転可能に前記搬器に連繋して設けた吊ドラムに一端が捲取可能に固定され、被運搬物を吊上げ可能に搬器から吊下げられるホイスト・ラインと、を備える架線運搬装置の配索方法において、前記ホイスト・ラインは、前記吊ドラムに対して前記搬器に固定される供給側の第1分割索と捲取側の第2分割索とに区分され、前記ホイスト・ラインの供給側の前記第1分割索の一端を前記搬器に固定する工程と、前記第1分割索と前記第2分割索との対向端に設けた平面略T字状の係止片を前記吊ドラムの周面に設けた被係合孔の開口部を介して該開口部の奥に設けた幅広の摺動溝内に摺動し、前記被係合孔内に前記係止片を係入後に前記被係合孔を閉止板により閉止、固定することより前記吊ドラムに対向側の各一端を着脱可能に固定する工程と、前記第1分割索と前記第2分割索とは、該固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラムに捲回される工程とにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたので、ホイスト・ラインの供給側の第1分割索の一端を搬器に固定し、ホイスト・ラインの供給側の第1分割索と捲取側の第2分割索との対向側の各一端は、平面略T字状の係止片を前記方向変換ドラムの周面に設けた被係合孔の開口部を介して該開口部の奥に設けた幅広の摺動溝内に摺動し、前記被係合孔内に前記係止片を係入後に前記被係合孔を閉止板により閉止、固定させて前記吊ドラムに着脱可能に固定されるため、ホイスト・ラインの吊ドラムに対する配索を容易かつ確実に行うことができ、保守・管理にも優れる。
【0040】
しかも、ホイスト・ラインの供給側の第1分割索と捲取側の第2分割索との対向側の各一端は、平面略T字状の係止片を前記吊りドラムの周面に設けた被係合孔の開口部を介して該開口部の奥に設けた幅広の摺動溝内に摺動し、前記被係合孔内に前記係止片を係入後に前記被係合孔を閉止板により閉止、固定される吊りドラムの固着端から少なくとも1捲き以上が吊ドラムに捲回されるので、例えば捲取側の第2分割索を、例えば手動操作により引いたり、または戻したりすると、偶力による小さな操作力により吊ドラムを迅速かつ確実に回動操作させて搬器に対する被運搬物の初期の吊上高さを容易に高低調整することができる。
【0041】
また、本発明の請求項13に記載の発明によれば、請求項11または12において、前記吊ドラムが、左右および中間部に設置した3つのフランジにより供給側の第1吊ドラム部と、該第1吊ドラム部に軸長方向に一体に連設される繰出側の第2吊ドラム部とよりなる2つの区分域に分割され、前記ホイスト・ラインは、一端が前記搬器に固定され、必要な所望長さを捲取可能に複数回前記第1吊ドラム部に捲回され、他端側が前記固着手段により着脱可能に固着される供給側の第1分割索と、一端が前記固着手段により前記第2吊ドラム部に着脱可能に固着されて少なくとも1回以上が捲回された繰出側の第2分割索とにより構成されることにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたので、例えば施工現場においてホイスト・ラインの配索を行うのには、供給側の第1吊ドラム部の外周に固着手段により供給側の第1分割索の一端を着脱自在に固着するとともに、必要な所望長さを複数回捲回して他端を搬器に固定し、また一端を前記第1吊ドラム部と一体にフランジを介して形成した第2吊ドラム部の外周に着脱自在に固着手段を介して固着した第2分割索を少なくとも1回以上第2吊ドラムの外周に捲回するという簡単な取扱操作により、ホイスト・ラインの配索作業が簡単かつ確実に行うことができ、補修が容易になる。そして、繰出側の第2分割索を手動により繰出操作および捲揚操作を行うことにより、ホイスト・ラインにロージング・ブロックを介して吊上げられる被運搬物の吊上操作を容易かつ確実に行うことができる。
【0042】
また、本発明の請求項14に記載の発明によれば、請求項11〜13の何れかにおいて、前記搬器に設けられる方向変換ドラムが、前段に設置される第1溝付ドラムと、後段に設置される第2溝付ドラムとの複数段に構成され、前記メイン・ライン、および前記スラックプリング・ラインに使用される索材は、前記メイン・ライン側に配索される第3分割索と、前記スラックプリング・ライン側に配索される第4分割索とに区分されて前記第1溝付ドラムと、前記第2溝付ドラムとに捲回されるので、例えば施工現場において搬器に設けられる方向変換ドラムに対するメイン・ライン、およびスラックプリング・ラインの配索を行うのには、1本の索材を2つ折りした略中間部分を第1溝付ドラムおよび第2溝付ドラムに複数回づつ捲回するという簡単な取扱操作により、メイン・ライン、およびスラックプリング・ラインの配索作業が簡単かつ確実に行うことができ、補修も容易になる。
【0043】
また、本発明の請求項15に記載の発明によれば、請求項14において、前記第1溝付ドラムおよび第2溝付ドラムが、基板部と該基板部に対してヒンジを介して枢動可能に枢着されている可動板部とにより搬器の少なくとも一方の側板を構成する前記可動板部に回転軸の一端が着脱可能に取付けられるので、例えば施工現場において搬器に設けられる方向変換ドラムに対するメイン・ライン、およびスラックプリング・ラインの配索を行うのには、先ず、搬器の少なくとも一方の側板を構成する可動板部を基板部に対してヒンジを介して外側に枢動し、側板から第1溝付ドラムおよび第2溝付ドラムを取外す。次いで、1本の索材を2つ折りした略中間部分を第1溝付ドラムおよび第2溝付ドラムに複数回づつ捲回することにより、メイン・ライン側に第3分割索と、スラックプリング・ライン側に第4分割索とをそれぞれ配索するという簡単な取扱操作により、メイン・ライン、およびスラックプリング・ラインの配索作業が簡単かつ確実に行うことができ、補修も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は本発明の架線運搬装置の実施形態1の使用状態を示す側面図である。
【図2】図2は同じく動力伝達機構部を示す拡大平面図である。
【図3】図3は本実施形態1におけるホイスト・ラインでの吊りドラムに対する第1分割索と、第2分割索の配索状態を示す拡大側面図である。
【図4】図4は同じく索材のドラムに対する固着手段の一例を示した拡大正面図である。
【図5】図5は同じく固着手段を示す斜視図である。
【図6】図6は本発明の架線運搬装置の実施形態2の使用状態を示す側面図である。
【図7】図7は同じく搬器部分を示す拡大平面図である。
【図8】図8は本発明の架線運搬装置の実施形態3を示し、搬器部分の拡大側面図である。
【図9】図9は同じく拡大正面図である。
【図10】図10は本発明の架線運搬装置の実施形態4を示す拡大平面図である。
【図11】図11は同じく本発明の架線運搬装置の実施形態5を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<実施形態1>
以下、図1乃至図に従って本発明の実施の形態の具体例を説明する。
【0046】
本実施形態1において、架線運搬装置1は搬器2を移送可能に支持する上側架線部3を有し、所望問隔をおいて設置される定滑車4に捲回されることにより該搬器2の後部に一端が結合されたホールバック・ライン5を捲取可能になすホールバック・ドラムD1,D′1と、搬器2に設けた方向変換ドラム6に所望複数回、捲回わされるメイン・ライン7の一端側を捲取可能に設けたメイン・ドラムD2,D′2と、前記メイン・ライン7の他端側のスラックプリング・ライン8が捲回わされるスラックプリング・ドラムD3,D′3と、前記方向変換ドラム6に対してスプロケット9a,9b;チェーン9c等の動力伝達部品9を介して回転可能に前記搬器2に連係して設ける吊ドラム10に後記他端20aが捲取可能に固定され、被運搬物Wを吊上げ可能に搬器2から吊下げられるホイスト・ライン11とを備える。
【0047】
そして、前記ホールバック・ドラムD1,D′1と、メイン・ドラムD2,D′2と、スラックプリング・ドラムD3,D′3とは、個別のモータM1,M2,M3の駆動力により回転可能に設けられる。12A,12Bは、前記ホールバック・ドラムD1,D′1とメイン・ドラムD2,D′2、またはメイン・ドラムD2,D′2とスラックプリング・ドラムD3,D′3との間をそれぞれ接離自在に接続する第1のクラッチ手段、または第2のクラッチ手段である。
【0048】
前記ホールバック・ドラムD1,D′1、前記メイン・ドラムD2,D′2、スラックプリング・ドラムD3,D′3は、並列に対向配索される1対のドラム13a,13b;13′a,13′b;13″a,13″bにより形成される。このように、ホールバック・ドラムD1,D′1、メイン・ドラムD2,D′2、またはスラックプリング・ドラムD3,D′3が並列的に対向配索される1対のドラム13a,13b;13′a,13′b;13″a,13″bにより形成したのは、ホールバック・ライン5とメイン・ライン7とスラックプリング・ライン8とを並列的に対向配索される1対のドラム13a,13b;13′a,13′b;13″a,13″bに分担して捲回することにより捲回量を多くして長距離間での索張を容易になすためである。
【0049】
そして、ホールバック・ドラムD1と、メイン・ドラムD′2とは、第1のクラッチ手段12Aを介して接離自在に接続され、また該メイン・ドラムD2とスラックプリング・ドラムD3とは第2のクラッチ手段12Bを介して接離自在に接続されることによりホールバック・ドラムD1,D′1と、メインドラムD2,D′2と、スラックプリング・ドラムD3,D′3とは第1のクラッチ手段12A、および第2のクラッチ手段12Bを介して接離自在に直列的に配列される。この第1のクラッチ手段12A、および第2のクラッチ手段12Bは、本実施形態1では油圧クラッチが使用される。
【0050】
また、これらのドラム13a,13b;13′a,13′b;13″a;13″b相互は動力伝達部品としてチェーン14,14′,14″と、スプロケット15a,15b;15′a,15′b;15″a,15″bとを介して回転自在に連結され、一体に回転または停止するようになっている。この動力伝達部品としては、図示する実施形態1では例えぱチェーン14,14′,14″と、該チェーン14,14′,14″が捲回されるスプロケット15a,15b;15′a,15′b;15″a,15″bとが使用されるが、このほかに、図には示さないが、例えばベルトとプーリなどの動力伝達部品が挙げられる。
【0051】
このように、チェーン14,14′,14″と、スプロケット15a,15b;15′a,15′b;15″a,15″bとの動力伝達部品を介して回転自在に連結される1対のドラム13a,13b;13′a,13′b;13″a,13″b相互に、ホールバック・ライン5、メイン・ライン7、またはスラックプリング・ライン8が分担して捲回されるので、ホールバック・ドラムD1、メイン・ドラムD2またはスラックプリング・ドラムD3に捲回されるホールバック・ライン5、メイン・ライン7、またはスラックプリング・ライン8の捲回量を多くして長距離間での索張を容易にすることができる。
【0052】
また、メイン・ドラムD2,D′2を形成する1対のドラム13′a,13′bのうち前段のドラム13′aは、ホールバック・ドラムD1に対し第1のクラッチ手段12Aを介して接続可能に設けられる。また、後段のドラム13′bは、スラックプリング・ドラムD3に対し第2のクラッチ手段12Bを介して接続可能に設けられる。
【0053】
また、前記ホールバック・ドラムD1,D′1、メイン・ドラムD2,D′2およびスラックプリング・ドラムD3,D′3は、本実施形態1では、図1、および図2に示すように、略同径φに形成され、そして、一方のホールバック・ドラムD1は、他方のホールバック・ドラムD′1、メイン・ドラムD2,D′2およびスラックプリング・ドラムD3,D′3に対し2倍速、乃至は数倍速に捲取られるようになっている。これは代表的例示であり、図には示さないが、一方の前記ホールバック・ドラムD1は、他方のホールバック・ドラムD′1、メイン・ドラムD2,D′2およびスラックプリング・ドラムD3,D′3に対し略2倍径の2×φ、乃至は適宜数倍径に形成されることにより、ホールバック・ドラムD1は、他方のホールバック・ドラムD′1、メイン・ドラムD2,D′2およびスラックプリング・ドラムD3,D′3に対し2倍速、乃至は数倍速に捲取られるようにした場合にも本発明の適用範囲である。
【0054】
前記ホイスト・ライン11は、その一端11aを捲取可能に搬器2に固定される供給側の第1分割索11Aと、捲取側の第2分割索11Bとに区分され、前記第1分割索11Aと前記第2分割索11Bとは前記吊ドラム10に対して対向側の各一端20a,20bが固着手段Kにより着脱可能に固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラム10に捲回されていることにより、該ホイスト・ライン11の吊下長さLを長短調整可能に設けている。この際、吊ドラム10に対してホイスト・ライン11の対向側の各一端20a,20bが固着手段Kにより着脱可能に固着される固着端からの捲数の増減変更は自由である。
【0055】
すなわち、本実施形態1では、図4および図5に示すように、前記吊ドラム10が、左右および中間部に設置した3つのフランジf1,f2,f3により供給側の第1吊ドラム部10aと、該第1吊ドラム部10aに軸長方向Iに一体に連設される繰出側の第2吊ドラム部10bとよりなる2つの区分域に分割され、前記ホイスト・ライン11は、一端11aが前記搬器2に固定され、必要な所望長さを捲取可能に複数回前記第1吊ドラム部10aに捲回され、他端20aが前記固着手段Kにより着脱可能に固着される供給側の前記第1分割索11Aと、一端20bが前記固着手段Kにより前記第2吊ドラム部10bに着脱可能に固着されて少なくとも1回以上が捲回された繰出側の第2分割索11Bとにより構成されることにより、前記ホイスト・ライン11の吊下長さLを長短調整可能に設けている。
【0056】
そして、22はホイスト・ライン11の下端に装着した動滑車22Aを有するロージング・ブロックであり、23はフックであり、このフック23は被運搬物Wとして集材した木材の根本を縛り、吊下げるためのものである。
【0057】
前記メイン・ライン7、および前記スラックプリング・ライン8に使用される索材は、前記方向変換ドラム6に対して前記メイン・ライン7側に配索される第3分割索24と、前記スラックプリング・ライン8側に配索される第4分割索25とに区分され、前記第3分割索24と前記第4分割索25とは前記方向変換ドラム6に対して対向側の各一端24a,25aが固着手段Kにより固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が前記方向変換ドラム6に捲回されている。
【0058】
また、前記固着手段Kが、本実施形態では図4および図5に示すように前記第1分割索11Aと前記第2分割索11Bとの対向端20a,20bに設けられた平面略T字状の係止片26と、前記吊ドラム10の周面に、前記係止片26が略合致して挿入可能な開口部27が設けられると共に、該開口部27の奥には前記係止片26が周方向Sに摺動可能になって係止可能に連設された幅広の摺動溝28よりなる被係合孔29と、前記被係合孔29内に前記係止片26が係入後に前記被係合孔29を塞いで閉止、固定する閉止板30とよりなる。同様に、図3に示す本実施形態1のように、前記第3分割索24と前記第4分割索25との対向端としての各一端24a,25aを前記方向変換ドラム6に着脱可能に取り付けるための固着手段Kも、前記第3分割索24と前記第4分割索25との対向端としての各一端24a,25aに設けられた平面略T字状の係止片26と、前記方向変換ドラム6の周面に、前記係止片26が略合致して挿入可能な開口部27が設けられると共に、該開口部27の奥に前記係止片26が周方向Sに摺動可能になって係止可能に連設された幅広の摺動溝28よりなる被係合孔29と、前記被係合孔29内に前記係止片26が係入後に前記被係合孔29を塞いで閉止、固定する閉止板30とよりなる。
【0059】
そして、ホイスト・ライン11に使用される第1分割索11Aと第2分割索11Bとを搬器2に設けた吊ドラム10に配索して固着手段Kを用いて着脱自在に取付けたり、またはメイン・ライン7、および前記スラックプリング・ライン8に使用される索材の第3分割索24と前記第4分割索25とを前記方向変換ドラム6に配索して取付けるのには、第1分割索11Aと第2分割索11Bとの対向端20a,20bと、または前記メイン・ライン7側に配索される第3分割索24、および前記スラックプリング・ライン8側に配索される第4分割索25との対向端24a,25aに設けられた平面略T字状の係止片26を、吊ドラム10、または方向変換ドラム6の周面に設けられた被係合孔29の開口部27に合致させて挿入し、その後、前記係止片26を前記開口部27の奥に設けた幅広の摺動溝28内に周方向に摺動させ、係止する。それから、被係合孔29から係止片26が不用意に抜け出さないように、閉止板30により被係合孔29を塞いで閉止、固定する。この固定は、例えばボルト固定による。
【0060】
このようにしてホイスト・ライン11に使用される第1分割索11Aと第2分割索11Bとを搬器2に設けた吊ドラム10に配索して固着手段Kを用いて着脱自在に取付けたり、またはメイン・ライン7側に配索される第3分割索24とスラックプリング・ライン8側に配索される第4分割索25とを搬器2に設けた方向変換ドラム6に各一端24a,25aとを固着手段Kにより着脱自在に固着するとともに、これらの固着端から少なくとも第1分割索11Aと第2分割索11B、もしくは第3分割索24と第4分割索25を1捲き以上、吊ドラム10、または前記方向変換ドラム6に捲き付けることにより、ホイスト・ライン11に使用される第1分割索11Aと第2分割索11Bを吊ドラム10に配索して取付けたり、もしくは第3分割索24と第4分割索25をメイン・ライン7側に配索される第3分割索24とスラックプリング・ライン8側に配索される第4分割索25とに取付けたり、分解が容易かつ確実に行え、保守・管理が便利になる。
【0061】
31は搬器2をホールバック・ラィン5の上側架線部3に移動可能となすために搬器2に設けられる移動滑車である。
【0062】
本発明の架線運搬装置の実施形態1は以上の構成からなり、被運搬物Wとして木材を運搬する方法を以下作用とともに工程毎に説明する。
【0063】
先ず、第1工程として、例えばチェーン・ソー等により伐採した木材を被運搬物Wとして所望個所、例えば先端(根本)側を搬器2に設けた吊ドラム10に第1分割索11Aと第2分割索11Bとの対向側の各一端20a,20bが固着手段K,Kにより固着されるとともに、固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊りドラム10に捲回されたホイスト・ライン11の下端に装着しているロージング・ブロック22のフック23に集材した木材を縛り、搬器2に対する吊上げ状態に備える。
【0064】
すなわち、本実施形態1では、吊ドラム10に第1分割索11Aと第2分割索11Bとの対向側の各一端20a,20bを固着手段K,Kにより固着するのに、図4および図5に示すように、左右および中間部に設置した3つのフランジf1,f2,f3cにより供給側の第1吊ドラム部10aと、該第1吊ドラム部10aに軸長方向Iに一体に連設された繰出側の第2吊ドラム部10bとよりなる吊ドラム10の第1吊ドラム部10aに一端11aが前記搬器2に固定された供給側の前記第1分割索11Aの他端20aを固着手段Kにより着脱可能に固着して必要な所望長さを捲取可能に複数回捲回し、しかも繰出側の第2分割索11Bの一端20bを前記固着手段Kにより前記第2吊ドラム部10bに着脱可能に固着させて少なくとも1回以上が捲回されることにより、前記ホイスト・ライン11の吊下長さLを長短調整可能に設けている。
【0065】
この際、前述のようにホイスト・ライン11の第1分割索11Aと前記第2分割索11Bとは対向側の各一端20a,20bが固着手段K,Kにより吊ドラム10に対して固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラム10に捲回されているので、例えば捲取側の第2分割索11Bを、例えば手動操作により引いたり、または戻したりすると、偶力による小さな操作力により吊ドラム10を迅速かつ確実に回動操作させることにより搬器2に対する被運搬物Wの初期の吊上高さHを容易に高低調整することができる。そして、吊ドラム10には、第1分割索11Aと、第2分割索11Bとに必要以上に太い架線を用いなくても済み、吊ドラム10の捲数も少なくても済むから、吊ドラム10自体は大径化されずに済み、コンパクトの仕上がりになる。このようにして、捲取側の第2分割索11Bの操作により、被運搬物Wの初期の吊上げ高さHを調整後は、第2分割索11Bの捲取側を搬器2に係留させておく。
【0066】
そして、モータM1を駆動してホールバック・ドラムD1,D′1を先ず回転することにより搬器2の後部に一端が結着されているホールバック・ライン5を捲回または繰出しを行うことにより適当に緊張させて搬器2を静止させ、不用意に移動するのを防止しておく。
【0067】
次いで、図には示さないレバーを引いてモータM2を駆動すると、矢印イ方向にメイン・ドラムD2,D′2からメイン・ライン7が繰り出され、またモータM3を駆動することにより搬器2に設けた方向変換ドラム6に複数回捲回されるメイン・ライン7の他端側のスラックプリング・ライン8を矢印ロ方向に移動してスラックプリング・ドラムD3に捲取ることにより前述のように搬器2の後部に一端が固定されているホールバック・ライン5の緊張に対して搬器2に設ける方向変換ドラム6に複数回が捲回されるメイン・ライン7と、方向変換ドラム6を介して該メイン・ライン7の他端側のスラックプリング・ライン8とを捲取りまたは繰出して緊張度を加減することにより搬器2自体の吊り上げ高さHさを容易に高低を調整することができる。
【0068】
この際、ホールバック・ドラムD1と、メイン・ドラムD′2とを接続する第1のクラッチ手段12Aは分離され、また該メイン・ドラムD2とスラックプリング・ドラムD3とを接続する第2のクラッチ手段12Bとは分離されることによりホールバック・ドラムD1,D′1と、メイン・ドラムD2,D′2と、スラックプリング・ドラムD3,D′3とは第1のクラッチ手段12A、および第2のクラッチ手段12Bを介して接離自在に単独運転可能になり、ホールバック・ライン5とメイン・ライン7およびスラックプリング・ライン8との緊張度を迅速かつ確実に応答性良く微調整することができ、操作性は向上する。
【0069】
そして、搬器2に設ける方向変換ドラム6に複薮回が捲回されているメイン・ライン7をメイン・ドラムD2,D′2から繰り出し、方向変換ドラム6を介して該メイン・ライン7の他端側のスラックプリング・ライン8をスラックプリング・ドラムD3,D′3に捲取ることにより方向変換ドラム6の回転をスプロケット9a,9b;チェーン9c等の動力伝達部品9を介して連係されている吊ドラム10を回転させると、この吊ドラム10の第1吊りドラム部10aと、第2吊りドラム部10bとに第1分割索11Aと第2分割索11Bとの対向側の各一端20a,20bが固着手段Kにより固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラム10に捲回されてホイスト・ライン11の下端に装着しているロージング・ブロック22のフック23に集材した木材が縛束されているホイスト・ライン11は吊ドラム10から繰出されて搬器2に対して降下し、ホイスト・ライン11の吊下長さLは長くなる。
【0070】
また、モータM2を駆動して反転させると、メイン・ライン7はメイン・ドラムD2,D′2に捲取られ、搬器2に設けた方向変換ドラム6に第3分割索24と第4分割索25との対向側の各一端24a,25aが固着手段K,Kにより固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が捲回されたメイン・ライン7の他端側のスラックプリング・ライン8はスラックプリング・ドラムD3,D′3から繰り出され、方向変換ドラム6にスプロケット9a,9b、チェーン9c等の動力伝達部品9を介して連係されている吊ドラム10にホイスト・ライン11は捲回されて上昇し、ホイスト・ラィン11の吊下長さLは短くなる。
【0071】
こうして、モータM2を駆動してメイン・ライン7をメイン・ドラムD2,D′2に対して捲取るか、または繰出すかし、しかもスラックプリング・ライン8をスラックプリング・ドラムD3,D′3に捲取るかまたは繰出すかすることにより被運搬物Wとしての木材のホイスト・ライン11に対する吊り上げ高さHを迅速かつ確実に長短調整することができ、被運搬物Wとして集材時毎に木材を吊り上げるのに便利になる。
【0072】
次いで、第2工程として、被運搬物Wとしての木材をホイスト・ライン11に縛束した後に、図には示さないレバーを引いてモータM1、M2、M3を同期して駆動し、回転すると、搬器2に吊ドラム10を介して吊下げたホイスト・ライン11の一端に被運搬物Wとしての木材を縛束して吊上げ状態としているメイン・ライン7は、モータM2により回動されるメイン・ドラムD2,D′2から繰り出され、矢印イ方向へ移動する。また、モータM3の駆動によりメイン・ドラムD2,D′2に対して同期して回転されるスラックプリング・ドラムD3に搬器2に設けた方向変換ドラム6に第3分割索24と第4分割索25との対向側の各一端24a,25aが固着手段K,Kにより固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が捲回されている他端側のスラックプリング・ライン8は矢印ロ方向へ移動され、スラックプリング・ドラムD3,D′3に捲き取られる。すなわち、メイン・ライン7とスラックプリング・ライン8とは移動方向が相反し、移動速度は等しくなり、緊張度は略一定になり弛みを生じないため、搬器2は上がり下がりの乱高下が少なく略一定した吊り上げ高さHで被運搬物Wを移送することができる。そして、メイン・ドラムD2,D′2によるメイン・ライン7の捲取り、または繰出、およびスラックプリング・ドラムD3,D′3によるスラックプリング・ラインD3,D′3の捲取り、または繰出に対して被運搬物Wとしての木材の荷重に伴う反制動力をホールバック・ライン5にかけることにより、搬器2が不用意に独走するのを防止したり、木材が乱高下するのを防止できる。
【0073】
ところで、本実施形態1では、ホールバック・ドラムD1,D′1と、メイン・ドラムD2,D′2と、スラックプリング・ドラムD3,D′3とは個別のモータM1,M2,M3の駆動力により回転可能に設けられ、前記ホールバック・ドラムD1とメイン・ドラムD′2、またはメイン・ドラムD2とスラックプリング・ドラムD3とは、それぞれ第1のクラッチ手段12Aおよび第2のクラッチ手段12Bにより接離自在に接続され、また前記ホールバック・ドラムD1,D′1と、前記メイン・ドラムD2,D′2と、スラックプリング・ドラムD3,D′3は、1対のドラム13a,13b;13′a,13′b;13″a,13″bが並列に対向して配索されて形成されている。
【0074】
しかも、ホールバック・ドラムD1と、メイン・ドラムD′2とは、第1のクラッチ手段12Aを介して接離自在に接続され、また、該メイン・ドラムD2とスラックプリング・ドラムD3とは第2のクラッチ手段12Bを介して接離自在に接続されることによりホールバック・ドラムD1,D′1と、メインドラムD2,D′2と、スラックプリング・ドラムD3,D′3とは第1および第2のクラッチ手段12A,12Bを介して接離自在に直列的に配列される。さらに、前記ドラム13a,13b;13′a,13′b;13″a,13″b相互は動力伝達部品としてチェーン14,14′,14″と、スプロケット15a,15b;15′a,15′b;15″a,15″bとを介して回転自在に連結されているので、図には示さないレバーを引いて前述のようにモータM1、M2、M3を同期して同方向に回転駆動させて搬器2の移動を行い、被運搬物Wの架線運搬を行うが、この時点においてホールバック・ドラムD1とメイン・ドラムD′2とを第1のクラッチ手段12Aを介して連結すると一体に回転され、また第2のクラッチ手段12Bを介してメイン・ドラムD2とスラックプリング・ドラムD3とは一体に連結して一体に回転される。このため、2個所にインターロックが完成し、動力の馬力回生が行われるとともに各ドラム間で力の補完を達成でき、ホールバック・ライン5、メイン・ライン7、スラックプリング・ライン8を寸分の狂いがなく適正にかつ応答性が早く動作することができる。このため、モータM1,M2,M3による動力の伝達ロスを省き、回生することにより、原動力が小さい馬力で大きな荷重の運搬作業が行え、高速運転可能になり操作性、作業性が飛躍的に向上する。こうして、ホイスト・ライン11に被運搬物Wを縛束することにより集材地から所望の目的地まで搬器2とともに被運搬物Wを移送し、目的地に到達すると、モータM1、M2、M3を停止した後にホイスト・ライン11から被運搬物Wの縛束を解き放ち、移送を終える。
【0075】
そして、特許文献1に示すような従来の架線運搬方法のように、ホールバック・ライン5にブレーキ手段を用いて直接的に反制動力をかける必要がないので、反制動力を直接かけるための油圧ブレーキやライニング等の部品が不用になるため、ブレーキが過熱したり、ライニングが摩耗することがなくなり、部品の寿命が伸び燃料の消費も少なくなる。しかも、反制動力をホール・バックライン5にかけるための油圧ブレーキ、手動ブレーキ、およびスリッピングクラッチ等の運転機構を組込む必要がなくなる。また、反制動力に耐え得る太い索径の索材を用いなくても済むのと、ホールバック・ドラムD1,D′1と、メイン・ドラムD2,D′2と、スラックプリング・ドラムD3,D′3とは対向する1対のドラム13a,13b;13′a,13′b;13″a,13″bに形成されてメイン・ライン7と、スラックプリング・ライン8とは分担して捲回されるので、ホールバック・ドラムD1,D′1、メイン・ドラムD2,D′2、スラックプリング・ドラムD3,D′3等のドラム径は大きくならず、装置自体は大形化しないで済み、軽量化と小形化がはかれる。
【0076】
また、モータM1,M2,M3を同期して駆動し、前述の操作とは反対方向に回転した場合には、メイン・ライン7は、矢印イ方向とは反対方向に移動してメイン・ドラムD2,D′2に捲取られ、また、スラックプリング・ライン8は矢印ロ方向とは反対方向へ移動され、スラックプリング・ドラムD3,D′3から繰り出され、さらに、ホール・バックライン5は矢印ハ方向とは反対方向へ移動され、ホールバック・ドラムD1,D′1から繰り出される。こうして、被運搬物Wを降ろした後の空になった搬器2を所望集材場所まで後退し、再びホイスト・ライン11に被運搬物Wとしての木材を縛束し、集材を行うことができる。
【0077】
また、図示する本実施形態では、ホールバック・ドラムD1は、直径φのホールバック・ドラムD′1、メイン・ドラムD2,D′2およびスラックプリング・ドラムD3,D′3に対し略同径のφに形成されるものを用いているので、直径φのメイン・ドラムD2,D′2から繰り出されるメイン・ライン7およびスラックプリング・ドラムD3,D′3に捲取られるスラックプリング・ライン8の移動速度Vsec/mに対して2倍速の移動速度2×Vsec/mにより巻取れば、メイン・ライン7の一端が結合され、上側架線部3に移動滑車31が移動可能に吊下げられている搬器2は図において左側に2×Vsec/mにて移動される。
【0078】
従って、搬器2の前端部側に一端側が係留されるスラックプリング・ライン8の捲取時の移動速度Vsec/mよりも搬器2の後端に一端が固定されているホールバック・ライン5は捲取時に2倍速の移動速度2×Vsec/mにてホールバック・ドラムD1,D′1に捲取られるので、ホールバック・ライン5は撓みを生ぜず、最適な緊張度になるため、搬器2はホールバック・ライン5に対して上下動することなく搬送される。しかも、搬器2から吊ドラム10に捲回されて吊下げられているホイスト・ライン11に一端が縛束されている被運搬物Wとしての木材の荷重がメイン・ライン7に作用しても、メイン・ライン7はスラックプリング・ライン8と等速の移動速度Vsec/mにて相反する方向に繰り出されるが、これよりも速くホールバック・ライン5はモータM1の回転速度が2倍速の移動速度2×Vsec/mにてホールバッグ・ドラムD1,D′1に捲取られるので、搬器2から伸びるホイスト・ラィン11に吊下げられている被運搬物Wは上下動することなく、所定の吊り上げ高さHを維持して運搬されて行く。このため、傾斜地、谷、川、凹面部、木株や岩等が存在する山林等において木材を集材するのに木材が、傾斜地、谷、川、凹面部、木株や岩等の障害物に接触することなく目的地に迅速かつ確実に運搬することができる。
【0079】
そして、ホールバック・ドラムD1のトルクT1は、メイン・ドラムD2およびスラックプリング・ドラムD3に対するトルクT2の2倍になるので、ホールバック・ライン5の直引力F1が、例えば1000Kgとすればメイン・ライン7およびスラックプリング・ライン8の直引力F2は2000Kgになり、小さな馬力で荷重の大きな被運搬物Wを容易かつ確実に架線運搬することができる。
【0080】
また、前述のように前記ホイスト・ライン11は、その一端11aを捲取可能に搬器2に固定される供給側の第1分割索11Aと、捲取側の第2分割索11Bとに区分され、前記第1分割索11Aと前記第2分割索11Bとは前記吊ドラム10に対して対向側の各一端20a,20bが固着手段Kにより着脱可能に固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラム10に捲回されていることにより、該ホイスト・ライン11の吊下長さLを長短調整可能に設けたので、搬器2に被運搬物Wを吊下げるためのホイスト・ライン11を搬器2に取付けるのには、区分されたホイスト・ライン11の供給側の第1分割索11Aの一端11aを搬器2に固定し、この第1分割索11Aの他端20aと第2分割索11Bの対向側の各一端20bとを固着手段K,Kにより吊ドラム10に固着するとともに、これらの固着端から少なくとも第1分割索11A、および第2分割索11Bを1捲き以上、前記吊りドラム10に捲き付けるという簡単な操作により、例えば施工現場においてホイスト・ライン11を搬器2に取付けることができる。
【0081】
この取付けには、先ず、区分されたホイスト・ライン11の供給側の第1分割索11Aの一端11aを搬器2に固定し、この第1分割索11Aの他端20aと第2分割索11Bの対向端20bに設けられた平面略T字状の係止片26を、吊ドラム10の周面に設けられた被係合孔29の開口部27に合致させて挿入し、その後、前記係止片26を前記開口部27の奥に設けた幅広の摺動溝28内に周方向Sに摺動させ、係止する。それから、被係合孔29から係止片26が不用意に抜け出さないように、閉止板30により被係合孔29を塞いで閉止、固定することにより、索張りが迅速かつ確実に行える。また、前記取付操作と逆操作により分解が容易かつ確実に行え、保守・管理が便利になる。
【0082】
同様に、前記メイン・ライン7、および前記スラックプリング・ライン8に使用される索材は、前記方向変換ドラム6に対して前記メイン・ライン7側に配索される第3分割索24と、前記スラックプリング・ライン8側に配索される第4分割索25とに区分され、前記第3分割索24と前記第4分割索25とは前記方向変換ドラム6に対して対向側の各一端24a,25aが固着手段K,Kの被係合孔29内に係止片26を係止し、閉止板30により被係合孔29を閉止、固定することにより固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が前記方向変換ドラム6に捲回されているという簡単な取扱いにて、2倍以上の長さの索材が必要となるホールバック・ライン5に対して前記メイン・ライン7、および前記スラックプリング・ライン8に使用される索材は、搬器2の前記方向変換ドラム6に対して固着手段Kにより着脱自在に取付けることができ、索張りと、分解が容易かつ確実に行える。
【0083】
<実施形態2>
図6および図7に示すものは、本発明の架線運搬装置の実施形態2である。この実施形態2では、前記搬器2に設けられる方向変換ドラム6が、前段(図示では上方)に設置される第1溝付ドラム6Aと、後段(図示では下方)に設置される第2溝付ドラム6Bとにより構成され、前記メイン・ライン7、および前記スラックプリング・ライン8に使用される索材は、一端がメイン・ドラムD2,D′2に捲回され、他端がスラックプリング・ドラムD3,D′3に捲回される1本の索材を2つ折りした略中間部分を第1溝付ドラム6Aおよび第2溝付ドラム6Bに複数回づつ捲回することにより、メイン・ライン7側に第3分割索24と、スラックプリング・ライン8側に第4分割索25とをそれぞれ配索するという構成であるほかは、前記実施形態1の架線運搬装置の発明、および架線配索方法の発明と同様の構成である。
【0084】
そして、本実施形態2では、例えば施工現場において搬器2に設けられる方向変換ドラム6に対するメイン・ライン7、およびスラックプリング・ライン8の配索を行うのには、一端がメイン・ドラムD2,D′2に捲回され、他端がスラックプリング・ドラムD3,D′3に捲回される1本の索材を2つ折りした略中間部分を第1溝付ドラム6Aおよび第2溝付ドラム6Bに複数回づつ捲回することにより、メイン・ライン7側に第3分割索24と、スラックプリング・ライン8側に第4分割索25とをそれぞれ配索するという簡単な取扱操作により、メイン・ライン7、およびスラックプリング・ライン8の配索作業が簡単かつ確実に行うことができ、補修も容易になるという効果があるほかは前記実施形態1の架線運搬装置の発明、および架線配索方法の発明と同様の効果がある。
【0085】
<実施形態3>
図8、および図9に示すものは、本発明の架線運搬装置の実施形態3である。この実施形態3では、前記第1溝付ドラム6Aおよび第2溝付ドラム6Bが、基板部50Aと該基板部50Aに対してヒンジ51,51を介して外側に枢動可能に枢着されている可動板部50Bとにより搬器2の少なくとも一方の側板50を構成する前記可動板部50Bに回転軸J1,J2の一端が着脱可能に取付けられるという構成であるほかは、前記実施形態1、前記実施形態2と同様の構成である。
【0086】
そして、本実施形態3では、例えば施工現場において搬器2に設けられる方向変換ドラム6に対するメイン・ライン7、およびスラックプリング・ライン8の配索を行うのには、先ず、搬器2の少なくとも一方の側板50を構成する可動板部50Bを基板部50Aに対してヒンジ51,51を介して外側に枢動し、側板50から第1溝付ドラム6Aおよび第2溝付ドラム6Bを取外す。次いで、一端がメイン・ドラムD2,D′2に捲回され、他端がスラックプリング・ドラムD3,D′3に捲回される1本の索材を2つ折りした略中間部分を第1溝付ドラム6Aおよび第2溝付ドラム6Bに複数回づつ捲回することにより、メイン・ライン7側に第3分割索24と、スラックプリング・ライン8側に第4分割索25とをそれぞれ配索するという簡単な取扱操作により、メイン・ライン7、およびスラックプリング・ライン8の配索作業が簡単かつ確実に行うことができ、補修も容易になるほかは前記実施形態2と同様の効果がある。
【0087】
<実施形態4>
図10は本発明の架線運搬装置の実施形態4であり、この実施形態4では、ホールバック・ドラムD1,D′1、前記メイン・ドラムD2,D′2、スラックプリング・ドラムD3,D′3の1対のドラム13a,13b;13′a,13′b;13″a,13″bを溝付きの1対の溝付ドラムを用いている点が前記実施形態1と異なり、その他は前記実施形態1と同様の構成である。
【0088】
そして、この実施形態4では、1対のドラム13a,13b;13′a,13′b;13″a,13″bに図10に示すような溝付きの溝付ドラムを用いることにより、捻れを生じたり、偏芯することなくメイン・ライン7、またはスラックプリング・ライン8を繰出したり、または捲回される時のトルクが一定し、移動スピードが定速になり、メイン・ライン7、またはスラックプリング・ライン8を規則的に整列化し、その張力やトルクが一定になり、緊張または緩みを生ずることなく、もぐりによるいわゆる乱捲き状態を防止することができ、木材等の被運搬物Wの運搬が間欠的に移動したり、吊り上げ高さHに高低差を生じて横揺れおよび縦揺れを生ずることなく、スムーズに運搬を行えるという効果を奏する点で前記実施形態1と異なる効果がある。
【0089】
<実施形態5>
図11に示すものは木発明の実施形態5であり、この実施形態5では、ホールバック・ライン5の捲取りおよび繰出しを行うためのホールバック・ドラムD1、D′1のうち、ホールバック・ドラムD′1に発電機40を接続したことにより搬器2のホイスト・ライン11に縛束した被運搬物Wを所望の目的地まで移送する時にホールバック・ライン5が捲回されたり、繰出されるホールバック・ドラムD1、D′1が回転する時に発電機40を回転して発電を行い、充電機41に充電される電力を、被運搬物Wを目的地に移送し、荷降ろしを行った後の空になった搬器2を集材のために再び集材地まで移送する場合に、モータM1を駆動してホールバック・ドラムD1にホールバック・ライン5を捲取るのに利用することができる。こうして、エネルギーの有効活用をはかることができる。
【0090】
なお、上記各実施形態では、ホールバック・ドラムD1は、ホールバック・ドラムD′1、メイン・ドラムD2,D′2およびスラックプリング・ドラムD3,D′3に対し略同径のφに形成されるものを代表的に説明したことにより直径φのメイン・ドラムD2,D′2から繰り出されるメイン・ライン7およぴスラッグプリング・ドラムD3,D′3に捲取られるスラックプリング・ライン8の移動速度Vsec/mに対してホールバック・ドラムD1のモータM1の回転数を2倍速の移動速度2×Vsec/mにすることにより捲取られ、ホールバック・ライン5の一端が結合され、上側架線部3に移動滑車31,31が移動可能に吊下げられている搬器2は、図において2×Vsec/mにて移動する場合を説明しているが、これに限ることなく、ホールバック・ドラムD1は、ホールバック・ドラムD′1、メイン・ドラムD2,D′2およびスラックプリング・ドラムD3,D′3に対し適宜倍径に形成されるものを用いてメイン・ライン8およびスラックプリング・ドラムD3,D′3に捲取られるスラックプリング・ライン8の移動速度に対して適宜倍速の移動速度により捲取られるようにしてもよい。
【0091】
また、上記説明では、ホールバック・ドラムD1,D′1を駆動するモータM1、メイン・ドラムD2,D′2を駆動するモータM2、スラックプリング・ドラムD3,D′3を駆動するモータM3は手動操作により正転、逆転、速度、停止等の制御を行うことを代表的に説明しているが、これらモータM1,M2,M3は無線操縦により遠隔操作されて自動的に駆動制御されるようにすることも本発明の適用範囲である。
【0092】
なお、図示する上記各実施形態では、ホールバック・ドラムD1、D′1、メイン・ドラムD2,D′2およびスラックプリング・ドラムD3,D′3は共通の基盤上に設けられているが、モービルタワーのような木材集材車両の台車上に、ホールバック・ドラムD1、D′1、メイン・ドラムD2,D′2およびスラックプリング・ドラムD3,D′3を搭載することにより、作業場所を異にする目的地に応じて木材を集材し、運搬するようにする場合も本発明の適用範囲である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は架線運搬装置、およびその架線配索方法に関し、例えぱ搬器の運搬に寄与するホールバック・ラインまたはスラックプリング・ラインと被運搬物の吊上げに寄与するメイン・ラインとの索材に関連するドラム相互のインターロック制御を行って馬力回生をなし、損失が少なく効率的な運転が可能であり、また索張りが容易であり、例えば山林において伐採される木材の集材を最適に行うのに使用する 用途・機能に適する。
【符号の説明】
【0094】
1 架線運搬装置
2 搬器
3 上側架線部
4 定滑車
5 ホールバック・ライン
6 方向変換ドラム
7 メイン・ライン
8 スクラックプリング・ライン
9 動力伝達部品
10 吊ドラム
11 ホイスト・ライン
12A クラッチ手段
12B クラッチ手段
13a ドラム
13b ドラム
13′a ドラム
13′b ドラム
13″a ドラム
13″b ドラム
26 係止片
27 開口部
28 摺動溝
29 被係合孔
30 閉止板
D1 ホールバック・ドラム
D′1 ホールバック・ドラム
D2 メイン・ドラム
D′2 メイン・ドラム
D3 スラックプリング・ドラム
D′3 スラックプリング・ドラム
M1 モータ
M2 モータ
M3 モータ
K 固着手段
W 被運搬物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬器を移送可能に支持する上側架線部を有し、所望間隔をおいて設置される定滑車に捲回されることにより前記搬器の後部に一端が結着されたホールバック・ラインを捲取可能になすホールバック・ドラムと、搬器に設けた方向変換ドラムに所望複数回捲回わされるメイン・ラインの一端側を捲取可能に設けたメイン・ドラムと、前記メイン・ラインの他端側のスラックプリング・ラインが捲回わされるスラックプリング・ドラムと、前記方向変換ドラムに対して動力伝達部品を介して回転可能に前記搬器に連係して設ける吊ドラムに一端が捲取可能に固定され、被運搬物を吊上げ可能に搬器から吊下げられるホイスト・ラインとを備え、前記ホールバック・ドラムと、前記メイン・ドラムと、前記スラックプリング・ドラムとは個別のモータの駆動力により回転可能に設けられ、前記ホールバック・ドラムと前記メイン・ドラム、または前記メイン・ドラムと前記スラックプリング・ドラムとの間を油圧クラッチ手段を介してそれぞれ接離自在に接続することを特徴とする架線運搬装置。
【請求項2】
前記ホールバック・ドラムは、前記メイン・ドラムと前記スラックプリング・ドラムに対して略同径に形成され、前記ホールバック・ドラムは前記メイン・ドラムと前記スラックプリング・ドラムに対して数倍速の移動速度にてラインを捲取可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の架線運搬装置。
【請求項3】
前記ホイスト・ラインが、その一端を捲取可能に前記搬器に固定される供給側の第1分割索と、捲取側の第2分割索とに区分され、前記第1分割索と前記第2分割索とは前記吊ドラムに対して対向側の各一端が固着手段により着脱可能に固着されるとともに、前記固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラムに捲回されていることにより、該ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の架線運搬装置。
【請求項4】
前記吊ドラムが、左右および中間部に設置した3つのフランジにより供給側の第1吊ドラム部と、該第1吊ドラム部に軸長方向に一体に連設される繰出側の第2吊ドラム部とよりなる2つの区分域に分割され、前記ホイスト・ラインは、一端が前記搬器に固定され、必要な所望長さを捲取可能に複数回前記第1吊ドラム部に捲回され、他端側が前記固着手段により着脱可能に固着される供給側の第1分割索と、一端が前記固着手段により前記第2吊ドラム部に着脱可能に固着されて少なくとも1回以上が捲回された繰出側の第2分割索とにより構成されることにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の架線運搬装置。
【請求項5】
前記メイン・ライン側に配索される第3分割索、および前記スラックプリング・ライン側に配索される第4分割索の対向端が、方向変換ドラムに固着手段により着脱可能に固着されるとともに、該記固着端から少なくとも1捲き以上が方向変換ドラムに捲回されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の架線運搬装置。
【請求項6】
前記搬器に設けられる方向変換ドラムが、前段に設置される第1溝付ドラムと、後段に設置される第2溝付ドラムとの複数段に構成され、前記メイン・ライン、および前記スラックプリング・ラインに使用される索材は、前記メイン・ライン側に配索される第3分割索と、前記スラックプリング・ライン側に配索される第4分割索とに区分されて前記第1溝付ドラムと、前記第2溝付ドラムとに捲回されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の架線運搬装置。
【請求項7】
前記第1溝付ドラムおよび第2溝付ドラムが、基板部と該基板部に対してヒンジを介して外側に枢動可能に枢着されている可動板部とにより搬器の少なくとも一方の側板を構成する前記可動板部に回転軸の一端が着脱可能に取付けられることを特徴とする請求項6に記載の架線運搬装置。
【請求項8】
前記固着手段が、前記第1分割索と前記第2分割索との対向端、または前記メイン・ライン側に配索される前記第3分割索と前記スラックプリング・ライン側に配索される前記第4分割索との対向端に設けられた平面略T字状の係止片と、前記吊ドラム、または前記方向変換ドラムの周面に、前記係止片が略合致して挿入可能な開口部が設けられると共に、該開口部の奥には前記係止片が周方向に摺動可能になって係止可能に連設された幅広の摺動溝よりなる被係合孔と、前記被係合孔内に前記係止片を係入後に前記被係合孔を閉止、固定する閉止板と、よりなることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の架線運搬装置。
【請求項9】
前記メイン・ドラムは、並列に配索される1対のドラムのうち、後段のドラムは、前記ホールバック・ドラムに対し第1のクラッチ手段を介して接続可能に設けられ、また前段のドラムは前記スラックプリング・ドラムに対し第2のクラッチ手段を介して前記スラックプリング・ドラムの後段に接続可能に設けられることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の架線運搬装置。
【請求項10】
前記メイン・ドラムまたは前記スラックプリング・ドラムは、必要に応じて並列に対向して配索される1対の溝付ドラムにより形成され、該溝付ドラム相互はチェーンおよびスプロケット、またはベルトおよびプーリ等の動力伝達部品を介して回転自在に連結されることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の架線運搬装置。
【請求項11】
ホールバック・ドラムにより一端が捲取可能に設けられ、所定間隔をおいて定滑車に捲回されて搬器に他端が固定されることにより、前記搬器を移送可能に支持したホールバック・ラインと、メイン・ドラムに一端が捲取可能に設けられ、前記搬器に設けられた方向変換ドラムに所望複数回捲回されるメイン・ラインと、スラックプリング・ドラムに他端が捲取可能に設けられ、前記メイン・ラインの他端側に配されるスラックプリング・ラインと、前記方向変換ドラムに対して動力伝達部品を介して回転可能に前記搬器に連繋して設けた吊ドラムに一端が捲取可能に固定され、被運搬物を吊上げ可能に搬器から吊下げられるホイスト・ラインと、を備える架線運搬装置の架線配索方法において、
前記ホイスト・ラインは、前記吊ドラムに対して前記搬器に固定される供給側の第1分割索と捲取側の第2分割索とに区分され、
前記ホイスト・ラインの供給側の前記第1分割索の一端を前記搬器に固定する工程と、
前記第1分割索と前記第2分割索とは、前記吊ドラムに対して対向側の各一端が固着手段により着脱可能に固定される工程と、
前記第1分割索と前記第2分割索とは、該固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラムに捲回される工程とにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けた
ことを特徴とする架線運搬装置の架線配索方法。
【請求項12】
ホールバック・ドラムにより一端が捲取可能に設けられ、所定間隔をおいて定滑車に捲回されて搬器に他端が固定されることにより、前記搬器を移送可能に支持したホールバック・ラインと、メイン・ドラムに一端が捲取可能に設けられ、前記搬器に設けられた方向変換ドラムに所望複数回捲回されるメイン・ラインと、スラックプリング・ドラムに他端が捲取可能に設けられ、前記メイン・ラインの他端側に配されるスラックプリング・ラインと、前記方向変換ドラムに対して動力伝達部品を介して回転可能に前記搬器に連繋して設けた吊ドラムに一端が捲取可能に固定され、被運搬物を吊上げ可能に搬器から吊下げられるホイスト・ラインと、を備える架線運搬装置の架線配索方法において、
前記ホイスト・ラインは、前記吊ドラムに対して前記搬器に固定される供給側の第1分割索と捲取側の第2分割索とに区分され、
前記ホイスト・ラインの供給側の前記第1分割索の一端を前記搬器に固定する工程と、
前記第1分割索と前記第2分割索との対向端に設けた平面略T字状の係止片を前記吊ドラムの周面に設けた被係合孔の開口部を介して該開口部の奥に設けた幅広の摺動溝内に摺動し、前記被係合孔内に前記係止片を係入後に前記被係合孔を閉止板により閉止、固定することより前記吊ドラムに対向側の各一端を固着手段により着脱可能に固定する工程と、
前記第1分割索と前記第2分割索とは、該固着端から少なくとも1捲き以上が前記吊ドラムに捲回される工程とにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けた
ことを特徴とする架線運搬装置の架線配索方法。
【請求項13】
前記吊ドラムが、左右および中間部に設置した3つのフランジにより供給側の第1吊ドラム部と、該第1吊ドラム部に軸長方向に一体に連設される繰出側の第2吊ドラム部とよりなる2つの区分域に分割され、前記ホイスト・ラインは、一端が前記搬器に固定され、必要な所望長さを捲取可能に複数回前記第1吊ドラム部に捲回され、他端側が前記固着手段により着脱可能に固着される供給側の第1分割索と、一端が前記固着手段により前記第2吊ドラム部に着脱可能に固着されて少なくとも1回以上が捲回された繰出側の第2分割索とにより構成されることにより、前記ホイスト・ラインの吊下長さを長短調整可能に設けたことを特徴とする請求項11または12に記載の架線運搬装置の架線配索方法。
【請求項14】
前記搬器に設けられる方向変換ドラムが、前段に設置される第1溝付ドラムと、後段に設置される第2溝付ドラムの複数段に構成され、前記メイン・ライン、および前記スラックプリング・ラインに使用される索材は、前記メイン・ライン側に配索される第3分割索と、前記スラックプリング・ライン側に配索される第4分割索とに区分されて前記第1溝付ドラムと、前記第2溝付ドラムとに捲回されることを特徴とする請求項11〜13の何れかに記載の架線運搬装置の架線配索方法。
【請求項15】
前記第1溝付ドラムおよび第2溝付ドラムが、基板部と該基板部に対してヒンジを介して枢動可能に枢着されている可動板部とにより搬器の少なくとも一方の側板を構成する前記可動板部に回転軸の一端が着脱可能に取付けられることを特徴とする請求項14に記載の架線運搬装置の架線配索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−101912(P2012−101912A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252643(P2010−252643)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(392003052)
【出願人】(000198293)IHI建機株式会社 (96)