説明

柑橘風味料の製造方法および食品

【課題】柑橘類の苦味質ナリンギンを除去し機能性を持つヘスペリジンを含む柑橘食品素材の製造方法とその素材により製造した食品。
【解決手段】柑橘を冷凍処理することにより、結合組織を凍結変性させ果皮中の不溶 性ペクチンと結合している苦味質のナリンギンを可溶化させ、果皮組織より容易に分離することができる。また、脂溶性フラボノイドのヘスペリジはペクチン、たんぱく質と結合して部分的に可溶化しているが、凍結変性により、その結合が破壊され、機能性のヘスペリジンは果皮組織中に残存する。
選別洗浄をして凍結処理をした柑橘を流水解凍し、果皮と果肉を分別し、果皮を加熱処理し苦味質のナリンギンを除き、目的の大きさに裁断し糖類と果汁、ホロ磨砕物,VC、クエン酸などと共に加熱加工して柑橘風味料を作ることが出来る、この素材を利用して機能性をもつ食品を製造する事が出来た。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、柑橘の加工法に関し、柑橘類の風味物質並びに、機能性を持つヘスペリジン等を保持ささせ、苦味成分のナリンギンを除去し、風味豊かで機能性を持つ柑橘風味料の製造方法およびその製造方法により製造した食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柑橘類の果皮には、花粉症やアトピー性皮膚炎に有効なフラボノイド類が含まれ食品加工原料として有用なものである。柑橘類の果皮にはヘスペリジン、ナリンギンのような柑橘特有のフラバノンが含まれ、ヘスペリジンは毛細血管強化作用が見出されビタミンPと称されたこともあり、最近の研究によれば花粉症やアトピー性皮膚炎に有効であることが確認されている。
【0003】
ナリンギンの単体は水溶性であるが、果皮の組織中にはパルプ質と複合体を形成し70%以上のものが不溶性の状態で存在し、果皮が加熱されるとこの複合体が部分的に解裂して、ナリンギン単体となり、苦味が強くなる。
苦味成分のナリンギン類縁のフラボノイドを除去する方法が種々考案され(特公昭40−848)、柑橘果皮を薄く裁断し加熱し、果皮の組織を緩め不溶性のナリンギンを加熱により可溶化させ、水洗いして除く方法がある。
【0004】
果皮をフラボノイド分解酵素で処理し、苦味質を分解除去、軽減化を図る方法が提案されている(特開昭50−123843)。しかし果肉中に酵素が十分に浸透し難いなど問題がある。
【0005】
機能性を持つヘスペリジンの単体は脂溶性であるが、果皮中の組織脂溶性フラボノイドのヘスペリジはペクチン、たんぱく質と結合して部分的に可溶化している。そのため有用な機能性を持つヘスペリジンが苦味質のナリンギンを水洗除去するときに失はれてしまう欠点がある。
【特許文献1】特公昭40−848
【特許文献2】特開昭50−123843
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は柑橘果皮中に存在する苦味質のナリンギンを除去する方法および機能性のフラボノイドのヘスペリジンを残存させる方法とこの方法により製造した食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
柑橘を冷凍処理することにより、結合組織を凍結変性させ果皮中の不溶性ペクチンと結合している苦味質のナリンギンを可溶化させ、果皮組織より容易に分離することができる。また、脂溶性フラボノイドのヘスペリジはペクチン、たんぱく質と結合して部分的に可溶化しているが、凍結変性により、その結合が破壊され、機能性のヘスペリジンは果皮組織中に残存する。
【0008】
柑橘を構成する果皮および果肉は冷凍処理を行うことにより組織が崩壊し、次の工程の加熱処理により含有する苦味質のナリンギンが90%以上可溶化する。
【0009】
柑橘を冷凍処理することにより果皮および果肉の組織が冷凍変性し軟化する。次工程の加熱時間が短縮され磨砕加工することが容易になる。加熱時間が短縮されることで柑橘類の風味成分が残存する。
【0010】
柑橘類を冷凍し組織を凍結変性させ、加熱処理し水洗を行い好ましくない苦味成分のナリンギンを除去し機能性成分のヘスペリジを保持する食品を作成する方法を案出した。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば苦味成分のナリンギンを除去できる。機能性成分のヘスペリジンを残存させることができる。さらにこの素材を利用した食品を提供することができる。
【0012】
従来あまり利用されなかった柑橘類(夏みかん・橙)を利用して花粉症やアトピー性皮膚炎に有効なフラボノイド類が含まれる機能性を持つ食品加工原料を作ることが出来る。柑橘類に含まれるカロチン、クリプトキサンチンなどの色素類と、リモネンに代表される特有のテルペン類は有効に利用できる。これらの成分は機能性を持ちヘスペリジンと共に有効に機能する。
このような柑橘食品素材は風味豊かでマーマレード・ジャム・ベーカリー製品に利用できる。この素材は利用目的により、スライス状、粒状、ペースト状等に加工し目的に合わせ味付けを行い利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では柑橘の果実を原料とする。柑橘を清浄な水で洗浄し果皮表面に付着する汚染物質を除去する。
【0014】
洗浄した果実を冷凍庫に入れ果実を完全に凍結状態にさせる。冷凍庫の機能及び果実の大きさ等により、その凍結処理時間は異なる。果実は果皮及び果肉を分別して処理することも、また切断して冷凍処理することも可能である。
【0015】
完全に凍結をした柑橘を取り出し解凍する。解凍を流水中あるいは温水中で解凍を短時間で行うことが出来る。その際解凍中に凍結変性により可溶化したナリンギンは流失、除去される。
【0016】
解凍した果実を切断し果皮と果肉に分別する。果皮は蒸煮処理を行い、次いで水洗することにより苦味物質のナリンギンを除去する。脂溶性のヘスペリジンは残存する。
分別した果皮は半解凍の状態でスライス状あるいは粒状に処理し、その後加熱処理をすることも可能である。
【実施例1】
【0017】
選別洗浄した夏みかん10kgを冷凍庫に一昼夜保管し完全に凍結させ流水中で解凍し果皮果肉に分け果肉は果汁とホロに分ける。果皮は四つ割りにして30分蒸煮後水洗し苦味質を除去する。処理をした果皮を裁断機で処理する。一方先に分別したホロは磨砕機で処理をする。処理をした果皮、ホロ、果汁、砂糖5kg(必要に応じVC、クエン酸を加える)を合わせ攪拌加熱し夏みかんジャムを作る。
【実施例2】
【0018】
選別洗浄した橙10kgを冷凍庫に一昼夜保管し完全に凍結させ流水中で半解凍し果皮と果肉にわける。半解凍した果皮をスライス状に切断する。果肉は果汁と共に完全に磨砕機で処理し、スライスした果皮と砂糖8kgをあわせ加熱し、橙マーマレードを作る。
【実施例3】
【0019】
選別洗浄した夏みかん10kgを冷凍庫に一昼夜保管し完全に凍結させる。流水中で解凍し果皮、果肉に分け果肉は果汁とホロに分ける。加熱した果皮を約1ミリ角に裁断し、果汁と砂糖10kgを加え煮詰める。これはベーカリー製品の練りこみ用、アイスクリーム、ヨーグルト、生クリームなどの風味付けに利用される。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘を原料とし凍結保蔵し、果実を構成する組織を凍結変性させ、不溶性の苦味質のナリンギンを可溶化させ苦味質を除する柑橘風味料の製造方法。
【請求項2】
柑橘を原料とし凍結保蔵し、果実を構成する組織を凍結変性させ、部分的に可溶化している機能性成分のヘスペリジン等を不溶化させ、ヘスペリジン等を残存させる柑橘風味料の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に示す方法で製造した柑橘風味料を利用して製造した花粉症やアトピー性皮膚炎に有効な機能性を持つ食品

【公開番号】特開2010−119344(P2010−119344A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296270(P2008−296270)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(301059709)株式会社丸川 (3)
【Fターム(参考)】