説明

染み抜き剤およびその製造方法

【課題】衣類等に付着した汗や皮脂等による黄ばみ、血液、油、酒類の染みといった性質の異なる多種多様な染みを効果的に取り除くことのできる染み抜き剤とその製造方法を提供する。
【解決手段】配合成分全量に対し、エタノール5〜15重量%、重曹分解液35〜45重量%、pH調整剤15〜25重量%、酸素系漂白剤25〜35重量%を配合する。上記配合割合で、最初にエタノールを混合容器に投入し、次いで、重曹分解液、pH調整剤、酸素系漂白剤の順に投入しながらそれぞれを混合し、染み抜き剤溶液を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類やシーツ等に付着した染みを取り除くための染み抜き剤とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衣類等に付着する染みの原因や種類には、人の汗等による皮脂汚れ、血液、油、食べ物(カレーやしょうゆなど)、飲み物(ワインやコーヒーなど)、インク、口紅、ファンデーションなどがある。これらの染みは、水に溶けやすいもの、油を含んでいるもの、不溶性のものなどがあり、それぞれの性質に応じて多種多様な家庭用又は業務用の染み抜き剤が市販されている。染み抜き剤は、衣類等を洗濯する前に大部分の染みを取り除く目的あるいは洗濯後に残る染みを取り除く目的で用いられる。
【0003】
染み抜き剤としては、アルコール系溶剤に炭化水素系溶剤を添加し、輪染み現象を防ぐようにした染み抜き剤(特許文献1)、環境への影響を抑えた二液型の染み抜き剤(特許文献2)の各提案がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−181958号公報
【特許文献2】特開2003−301196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、汗による黄ばみ、血液、油、お酒類の染みといった性質の異なる多様な染みを取り除くことのできる染み抜き剤は提案されていなかった。本発明者は、鋭意研究した結果、かかる染み抜き剤の成分組成を見出し、発明を完成させるに至った。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、衣類等に付着した汗や皮脂等による黄ばみ、血液、油、酒類の染みといった性質の異なる多種多様な染みを効果的に取り除くことのできる染み抜き剤とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る染み抜き剤は、エタノール、重曹分解液、pH調整剤、酸素系漂白剤を配合してなることを主要な特徴とする。
【0008】
本発明に係る染み抜き剤は、配合成分全量に対し、エタノール5〜15重量%、重曹分解液35〜45重量%、pH調整剤15〜25重量%、酸素系漂白剤25〜35重量%を配合してなることを第2の特徴とする。
【0009】
本発明に係る染み抜き剤は、pH調整剤が界面活性剤を主成分とすることを第3の特徴とする。
【0010】
本発明に係る染み抜き剤は、重曹分解液として、重曹電気分解液または重曹熱分解液を用いることを第4の特徴とする。
【0011】
本発明に係る染み抜き剤の製造方法は、最初にエタノールを混合容器に投入し、次いで、重曹分解液、pH調整剤、酸素系漂白剤の順に投入しながらそれぞれを混合し、染み抜き剤溶液を得ることを主要な特徴とする。
【0012】
本発明に係る染み抜き剤の製造方法は、配合成分全量に対し、最初にエタノール5〜15重量%を混合容器に投入し、次いで、重曹分解液35〜45重量%、pH調整剤15〜25重量%、酸素系漂白剤25〜35重量%の順および割合で投入しながらそれぞれを混合することを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明に係る染み抜き剤によると、エタノール、重曹分解液、pH調整剤、酸素系漂白剤を配合してなるから、衣類等に付着した汗や皮脂等による黄ばみ、血液、油、酒類の染みといった性質の異なる多種多様な染みを効果的に取り除くことのできるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、本発明の染み抜き剤の製造工程を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0016】
本発明に係る染み抜き剤は、エタノール、重曹分解液、pH調整剤、酸素系漂白剤を所定の割合で配合したものから構成されている。
【0017】
エタノールは、他の配合成分、すなわち重曹電解液成分および酸素系漂白剤成分を、油性・水性いずれの染みに対しても入り込ませると共に、他の配合成分の安定剤、安定化剤としての役割を合わせ持ち、例えば消毒用エタノール(エチルアルコール/C6O)が用いられる。消毒用エタノールは、15℃でエタノール76.8〜81.4重量%、添加剤としてイソプロパノール(CO)が含まれる。かかるエタノールは、配合成分全量100重量%のうち、5〜15重量%配合される。
【0018】
重曹分解液は、油脂やタンパク質等の染みに対する重曹のもつ分解効果をより高めたもので、精製水(水道水)に重曹を混合した溶解液を電気分解または熱分解して得られる。重曹(炭酸水素ナトリウム/NaHCO)は元々弱アルカリ性(pH8.2)であり、油脂をある程度乳化し、タンパク質をある程度分解できるが、電気分解等することにより、炭酸ナトリウム(NaCO)水溶液と重曹(NaHCO)水溶液を混ぜたようなものになり、ヤスキ炭酸ソーダ(pH9.8)により近い性質になり、アルカリ剤としての効果、すなわち洗浄機能を高めることができる。重曹分解液は、配合成分全量100重量%のうち、35〜45重量%配合される。
【0019】
pH調整剤は、他の配合成分、すなわち重曹電解液成分および酸素系漂白剤成分のpHを調整するもので、界面活性剤を主成分とし、pH調整成分が含まれる。界面活性剤は、動植物油から作られる脂肪酸、アルキル、ラウリル、石油・石炭から作られるベンゼン、フェニル、フェノール、両方を合成して得られるアルキルベンゼン、アルキルフェノールなどの一又は複数の組み合わせが選択される。
【0020】
pH調整成分は、ケイ酸、炭酸、酵素などの一又は複数の組み合わせが選択される。酵素には、油脂を分解するリパーゼ、タンパク質を分解するプロアテーゼ等がある。この界面活性剤を含むpH調整剤としては、具体的には市販の中性洗剤が用いられ、中性洗剤(界面活性剤を含むpH調整剤)は、配合成分全量100重量%のうち、15〜25重量%配合される。
【0021】
酸素系漂白剤は、染みに含まれる色素や、繊維の奥まで入り込んで落ちにくくなった皮脂等の汚れを分解し落ち易くするもので、過酸化水素(H)を主成分とする弱酸性のものが用いられる。また他の成分として界面活性剤(非イオン系のポリオキシエチレンアルキルエーテル等)が含まれる。
【0022】
酸素系を用いることで、色柄物の染み抜きに好適とし、弱酸性を用いることで、毛や絹の染み抜きに好適とすることができる。界面活性剤が含まれることで、漂白剤が素早く生地に染み込み、生地から染みを剥離して水溶液(漂白剤)中に分散させることができる。酸素系漂白剤は、重曹分解液100重量%に対し60〜80重量%配合される。なお、酸素系漂白剤を配合し、塩素系漂白剤を配合しないのは、塩素系漂白剤を配合すると、塩素ガス等が発生するので、それを避けるためである。
【0023】
以上の成分から構成される染み抜き剤は、次のようにして製造される。図1に示すように、混合容器100に上記配合成分の割合で、まず最初にエタノールを投入し、次いで重曹分解液を投入して混合し、次いで中性洗剤(界面活性剤を含むpH調整剤)を投入して混合し、最後に酸素系漂白剤を投入して混合する。この順番で投入し混合することにより、乳白化することなく、染み抜き効果の威力が大きい染み抜き剤が得られる。
【0024】
上記製造方法で得られる染み抜き剤は、例えばスプレータイプの容器に充填して洗濯前の前処理剤として噴霧等して用いることができ、また、洗濯後の後処理剤として、すすぎ前に用いることができる。
【実施例】
【0025】
本発明者は、使用済みのシャツ、病院作業着、足袋等を用意し、それぞれの黄ばみ、ワイン、血液、油の各染みに対する本発明品の染み抜き効果の評価を行った。本発明品の染み抜き剤の配合成分は、染み抜き剤400ml中、エタノール40ml、重曹電気分解液160ml、中性洗剤80ml、酸素系漂白剤120mlである。中性洗剤には市販品(商品名:花王「アクアウオッシュ」)、酸素系漂白剤には市販品(商品名:ライオン「ブライト」)を用いた。
【0026】
上に述べた使用済みの衣類等について、まず、前処理剤として実施例の染み抜き剤を染みのある箇所全体に振って1〜2時間放置し、その後中性洗剤を使って洗濯した。がんこな染みに対しては洗濯前に中性洗剤を直接付けてこすった。洗濯後、乾燥させると黄ばみ等の大部分の染みを取り除くことができた。乾燥後、一部の染みが残る部分に対しては再び実施例の染み抜き剤を後処理剤として振り、しばらく放置すると、染みが消えたので、最後にすすぎを行なった。
【表1】

【0027】
表1の結果から分かるように、本発明の染み抜き剤を用いると、黄ばみ、血液、油、酒類等の染みのいずれに対しても、家庭での洗濯やクリーニングで前処理剤あるいは後処理剤として用いることにより、それらの染みをきれいに取り除くことができた。なお、後処理剤として用いてもなお染みが消えない場合には、もう一回中性洗剤で洗濯することにより略完全に染みを取り除くことができた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の染み抜き剤は、衣類等に付着した汗等による黄ばみ、血液、油、酒類等の多種多様な染みを取り除くための染み抜き剤として利用可能である。
【符号の説明】
【0029】
100 混合容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール、重曹分解液、pH調整剤、酸素系漂白剤を配合してなることを特徴とする染み抜き剤。
【請求項2】
配合成分全量に対し、エタノール5〜15重量%、重曹分解液35〜45重量%、pH調整剤15〜25重量%、酸素系漂白剤25〜35重量%を配合してなることを特徴とする請求項1記載の染み抜き剤。
【請求項3】
pH調整剤が界面活性剤を主成分とすることを特徴とする請求項1または請求項2記載の染み抜き剤。
【請求項4】
重曹分解液として、重曹電気分解液または重曹熱分解液を用いることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の染み抜き剤。
【請求項5】
最初にエタノールを混合容器に投入し、次いで、重曹分解液、pH調整剤、酸素系漂白剤の順に投入しながらそれぞれを混合し、染み抜き剤溶液を得ることを特徴とする染み抜き剤の製造方法。
【請求項6】
配合成分全量に対し、最初にエタノール5〜15重量%を混合容器に投入し、次いで、重曹分解液35〜45重量%、pH調整剤15〜25重量%、酸素系漂白剤25〜35重量%の順および割合で投入しながらそれぞれを混合することを特徴とする請求項5記載の染み抜き剤の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−107361(P2012−107361A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257480(P2010−257480)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(510305756)
【Fターム(参考)】